みんなのシネマレビュー |
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1. タルチュフ 《ネタバレ》 旅から帰宅した夫が聖なるものにかぶれているという話題は、あの『フォーゲルエート城』の再現である。脚本は同じカール・マイヤーで、階段のセットがここでも大きな役割を演じている。聖人を演じるタルチュフが階上から階段の誘惑に逆らえずに階下の肉欲へと堕ちる図は、あの名作映画『雨』(マイルストン)を連想させる。 [CS・衛星(字幕なし「原語」)] 9点(2025-05-05 15:30:15)★《更新》★ 2. 脱出(1944) 《ネタバレ》 ボギーの、躊躇というものがないひたすらスピーディーな決断と行動が全編を貫く。そんな人間はいないし、いても困る面もあるだろう(周囲の者には)。まあ、銀幕の中にしかない憧れのようなものだ。『カサブランカ』とは違って、すでに戦況が定まってきている安心感というものが大きいのかも。[DVD(字幕)] 8点(2025-05-05 13:01:23) 3. 暖流(1957) 《ネタバレ》 左幸子が回る、環境の同調圧力を振り払う独楽のようにブンブン回りながら、恋のターゲットに向かって一直線。野添ひとみも素晴らしい。きわめて動的で立体的な演出で、イマジナリーラインを絶えず踏み越えるゆえ、見交わしの都度人物の位置が左右反転する。人物が頻繁に横に動いてイマジナリーラインを跨いだり、カメラが人物の背後に回って逆サイドからも撮ったりで。もちろん人物位置の反転自体が良いのではなくて、輪郭のある人物どうしの格闘が、反転の度により深められ、映画語りの速度を上げることこそが。この『暖流』の秀逸な撮影者ということで村井博を知る、すると、彼にはあの宮川一夫を鋭く相対化する視点がある、ということに出会う(「インタビュー 村井博」『映画監督 増村保造の世界』所収)、興味津々![DVD(邦画)] 9点(2020-12-17 02:17:25) 4. タイタニック(1997) 《ネタバレ》 長蛇の列の観客をあの今は無き大きな映画館(『京都スカラ座』)が悠々と呑み込むことができたこと自体がすでに、映画の一部だった。私たちは喜々として映画館に「乗船」したのだった。空間的な大きさを時間的に捉えるやり方がいい(つまりカメラの前をこの大きな船に通り過ぎさせる)。[映画館(字幕)] 6点(2014-03-14 10:06:22) 5. ダイヤルMを廻せ! 《ネタバレ》 リアルな話をするなら、首を絞められてもハサミを探って手に取り一刺しで屈強な男をしとめるグレース・ケリーの役は、じつはレスリングの吉田沙保里さんほどの身体能力をしているわけだ。さてこの作品は、まさに大胆に堂々と「ネタバレ」から出発する、つまり「衆目(観客)環視」のなかで犯罪者の側から事件を提示し、この犯罪の顛末をそっくり言い当てるミステリー作家まで配置して事件をなぞる、なぜこんな映画が面白いのか。[DVD(字幕)] 6点(2013-09-02 10:49:39) 6. 男性・女性 《ネタバレ》 「思想では何でもできるが、感情では何もできない」。映画でそれを言うかという挑発的な言葉だが、たしかに、ゴダール映画の圧倒的に駆り立てるものは、切り分ける知性への欲求である。それはさておき、同録の雑音が台詞と同格の大きさであるのは面白い。[DVD(字幕)] 6点(2013-02-25 15:43:37) 7. ダーティハリー 《ネタバレ》 犯人があまりにも単純にクソ野郎(こんな奴はさっさと始末すべきだと誘われてつい思ってしまう)というふうに描かれるのが、結局たいへんモンダイなのだ。こんなに単純にクソ野郎の道一筋の人間はいない(皆それなりにシンコクな「理由」を抱えているはずだ)。犯人にだって人権はあるとはそういうことだ。・・・というようなマジメな見方は野暮だろうなあ。映画としては巧いな。 [ビデオ(字幕)] 6点(2012-09-03 18:24:57)《改行有》 8. 探偵物語(1951) 《ネタバレ》 「ワイラーの階段」がでたー。『黒蘭の女』のラストの肯定的な大逆転の階段もあれば、『探偵物語』の暗転の階段もあるというわけだ。『女相続人』の、駆け落ちの相手にすっぽかされた主人公が自室へと戻る際の、失望の長い階段、というのもあった。 さて「内容」だが、罪に対する厳格主義の主人公について、「父を憎んでいるから」という「精神分析的な」説明がなされるとき、観客はなんだか大きく頷いてしまう仕組みなのであろう。エディプス期を円満に「卒業」できていないゆえに、マザコン男としてバランスを欠き、過酷な超自我を模倣してみせる、のだろうか。[DVD(字幕)] 5点(2012-05-30 18:27:14) 9. 太陽がいっぱい 《ネタバレ》 こういう犯罪者に身を寄せて行動を共にすることになる観客存在とは何なのだろう。観客は、一線を越えないだけの、想像上の犯罪者なのであるが、やっと、ラストシーンのアイロニーとともに映画の外へと押し出され、目が覚める。[映画館(字幕)] 8点(2011-03-23 21:23:09) 10. 台風クラブ 《ネタバレ》 三浦友和がいい。「ああ、台風来ないかなあ」(大西結花の台詞だった?)もいい。ラストの「あ、金閣寺」(工藤夕貴)もいい。しかし、なぜ「犬神家」になってしまうのかがわからない(ぶち壊し、でも8点)。[映画館(邦画)] 8点(2011-03-23 10:30:23) 11. ダイ・ハード 《ネタバレ》 たしかにドンパチ・スペクタクルをぼーっと眺めていたいときはあるが、それはごくたまにである。当時、これこそが映画の醍醐味であって日本映画は小粒すぎる、みたいな言い方までされた(謬見である)ことを思い出すが、今はどうだろう。ところで、日本タタキのネタが入っているのはサブリミナル効果のような反則かも。[映画館(字幕)] 4点(2011-03-22 06:09:21)
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