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21.  天使にラブ・ソングを2 インディペンデントじゃなくメジャー作品で、監督や主な出演者がみな黒人てのは、いつごろから存在したんだろうか。けっこう最近だろ? これなんかハシリのころか。あの民族主義少年なんかを笑いのネタにするのなんかも、監督が黒人だからスンナリできたのかも知れない。民族と無縁にありたい、というアメリカ文化のいいところ。話は型通りなんだ。やる気なく流された日々を送っている生徒たちを導いてコンクールで一等賞にするっていう。分かっててもこういうのに弱く、ホロッとさせられる。拗ねてた子が戻ってきたり、母親の許しを得るところなんか、もうちょっと粘っこくしてもよかったか。音楽室でのデュエット、スズメがどうのって歌、あれ最後まで聴きたかったな。[映画館(字幕)] 6点(2011-01-13 10:17:10)

22.  天使の眼、野獣の街 《ネタバレ》 あんまり伏線がカッチリ組まれていると息苦しくなるものだが、場当たり的なシナリオの映画が続いた後に観ると、その息苦しさのほうが嬉しい。オーソドックスな歩く刑事の捜査もので、これまたオーソドックスに師弟もの。シナリオもオーソドックスに伏線で組み上げられている。追跡中に路上で殴られている男を放置したことが心に引っかかっていた新米は、後段で負傷した警官を介護し追跡を放棄する。冒頭の犬頭のテストが、レオン・カーファイによって反復されていく(一番ドキドキするとこ、「子豚」の普通の女の子っぽい表情が、想像される彼女の内心と擦り合わされて、緊張を生む)。犬頭の小話。頚動脈の因果応報。などなどが作品を支える網の目になっていて、その網の目の細かさがうるさく感じられるギリギリのところ。殴られていた男の再登場は、ちょっと話をゴチャゴチャさせ過ぎている気がするが、偶然と必然が渾沌としているような街だから、まあいいだろう。雨が上がるとこ。傘がたたまれ視界が開け、追跡が再開され、音声では犬頭の小話が続き…、ここらへんのオーソドックスぶりに、一作目はとにかく基本に徹してみよう、という監督の姿勢が感じられ、嬉しい。[DVD(字幕)] 7点(2010-12-24 12:14:28)

23.  天空の城ラピュタ 《ネタバレ》 巨大な樹木がラピュタの崩壊をとどめる、というところに宮崎のモチーフの統合が感じられた。宮崎には大きく二つのモチーフがあり、ひとつは大地に根を張るどっしりとした不動性、もうひとつはそれとは逆の飛翔願望。しばしば別々に描かれるこの二つのモチーフが、本作ではラストでひとつになっている。根を張ることで飛び続けられるというイメージ、これを発見したとき宮崎は嬉しかっただろう。あと、姫と悪漢が冷たいメカニックな内部に踏み込んでいくと、有機的な根や雑草が増えていくイメージ。冷たい絶対権力として君臨していたラピュタの中心部を植物が浄化していった、というイメージなのか。いや、そういった理屈を超えた本質的な感動、室内に外界が入り込むことの驚きを伴った興奮がここにはある。なにかタルコフスキーに通じるものを感じた。今でも、室内で大麻栽培してて逮捕された、ってニュース映像見ると、ラピュタを思い出しホノボノとする。善と悪の対決後、崩壊、樹木によって楽園=廃墟のみが生き残る。文明は崩れても文化は残る、ってことか。本作はまだまだ豊かなイメージにあふれていて、海賊のママと姫を「おさげ」でつないでいること、ロボットのアンバランスな顔の効果、海賊船が布製であること、水の中の廃都…。これらは、それ以前それ以後の作品に関連がありそうなものもあり、宮崎世界のイメージ索引のような映画にもなっている。[映画館(邦画)] 9点(2010-10-07 10:12:52)(良:1票)

24.  出来ごころ 《ネタバレ》 昔の労働者はいかに始業時間を知ったのか、ってのが気になってた。工場でサイレンを鳴らしただろうが、しだいに居住区が広がっていくと、この映画のように労働者が各自時計を持つようになったのだろう。富坊の部屋に時計があるのは子どもは早起きってことなのか、それとも喜八は文字盤を読めないってことなのか。昔の映画って、細部までいろいろ考えさせてくれるから嬉しい。で喜八と次郎と春江の三人の心模様が進行していく。恩の義理と心情と。「隣の大将をコケにさせるような真似はよしてくれ」なんてあたりに、かえって次郎の心情を暗示させている。ヤマ場は盆栽をめぐる場。喜八がぶつたびに富坊はそこを掻く。別に痛くもないやあ、という不貞腐れの表現。そして逆襲、「新聞も読めないで」。喜八ぶつ、富坊掻く、ののち、富坊が喜八をぶつ。やがてされるままになる喜八。子どもにぶたれるにまかせる親、ってのはしばしば小津作品に現われるモチーフだが、ここらへんの侘しさは一級品ですなあ。自分は字が読めない、この子は勉強できる、春江に惚れるのがカアヤンに笑われるほどの歳になっている、自分が惨めに見えてきて、でもその自分を父とする子どもが目の前にいて…。そういったあれこれが凝り固まった場。で「贖罪」で与えた五十銭玉で、富坊の病気を導く。病院代の工面、「こんなときでもなきゃ、あたしなんか御恩返しができませんもの」と春江。喜八は「そう言ってくれるだけでも、ガキぐれえ殺したって」、でも春江が一番言いたかったのは次郎に対する「どうせあたしなんか構わないんじゃないの」。こんなシーンは映画史上いっぱいあったと思うんだけど、段取りよく次郎と春江の愛の確認につなげていくうまさゆえか、泣けちゃう。盆栽からここまでの流れの自然さ、昔のシナリオ術ってのはこういうところが眼目だったんだろう。で北海道行き、かつて子どもに殴られるにまかせていた喜八は、次郎を殴る。しかし喜八をかっこよくし過ぎないようにと、ズボンをシワシワにして脱いでいた描写を、反復させる場を用意する。小津の喜劇の才と、侘しさを描く才とが、不可分に絡み合っている傑作。[映画館(邦画)] 9点(2010-06-22 09:58:38)

25.  ディスクロージャー 《ネタバレ》 アメリカ映画のいいところは、どんなモチーフ扱っても「個人の組織への抵抗」に絞られていくとこ。悪いところは、それが類型化しても平気ってとこ。セクハラの話というと、だいたい内容が決まってしまいがちなものだが、それをちゃんと根元の「公と私との混同」いうところまでさらってから話を作っている。どんなモチーフからも普遍性を導こうとする。これはハリウッドの美点だと思う。一週間のストーリーってのも締まってていい。一度目の解決のあとにもう一波乱、ってのもサービス精神。「将来のある男と、過去のある女ね」なんて、セリフも練る。まことに類型に収まる典型的なハリウッド映画だが、こういう安定を味わいたい気分のときもあるのだ。話の根底にあるのは、台頭する女性にますます募らせる男の被害妄想か。[映画館(字幕)] 7点(2010-05-27 12:04:57)(良:1票)

26.  デューン/砂の惑星(1984) シルバーナ・マンガーノがはげ頭になって頑張ってたけど、つまんなかったなあ。植民地の人間が立ち上がるのではなく、宗主国側の中から救世主が現れて救うという発想が、どうもね。神がかるのよね。キリスト教の根っこなのか。ワケありふうの親友が出てきてアッサリ死んじゃったり、原作知らないけど、長いのを無理に縮めて、ダイジェスト版にしちゃったんじゃないのか。声がやたら入るのも、ただややこしくしただけでしたなあ。出産のとことか、悪玉の頬のデキモノとか、気持ち悪いとこに凝るのは、監督の困った性格ではあるが嫌いじゃない。世界全体が地味な古風な手触りなのが特徴と言えば言える。つまり「公爵」とか何とか言う呼び名にふさわしいような世界になっているわけ。金属質じゃないSF。ニコゴリふうのバリヤーも珍しい。カイル・マクラクラン君はこれではさして魅力がなく、のちの『ブルー・ベルベット』や『ツイン・ピークス』での、病的な魅力での売りは予見出来なかった。[映画館(字幕)] 5点(2010-05-09 12:02:21)

27.  ディア・ドクター 《ネタバレ》 二人の場面になると、いい。多人数の公的な場では、ニセモンとニセモンに気づかない振りをしている人とが、暗黙の了解でもたれあっていられたのに、二人きりになると何か剥き出しになってしまう。八千草薫の家でぶきっちょに大葉を刻むところ、(厳密に言うと三人目の患者がうんうん言って横たわっているのだが)余貴美子が気胸を指示するところ、など。逆の意味で、剥き出しにしてるのに気がついてもらえない、瑛太に告白する場も面白い。鶴瓶のいかにも善人顔が、時折うさんくささに見えてくる。そういうホンモノとニセモンの関係といった形而上学的テーマ、それに「何にもしてもらいたくない」患者をどう扱うべきか、という倫理のテーマ、さらに無医村問題という社会派テーマ、と盛り込みすぎて焦点がぼやけてしまった感じもある。余貴美子は、今の邦画界で貴重なバイプレイヤーの位置を確保してるなあ。[DVD(邦画)] 6点(2010-04-12 11:58:43)

28.  鉄の男 《ネタバレ》 まさに現場という異様な興奮がある。どうしても撮っておきたいという切実さが感じられる。作品の構成は驚くほど『大理石の男』を踏襲していて、部外者の人間が一人物を取材してしだいに引き込まれていく、といったもの。このTVマン、裏切り者はこうなるのだ、という見せしめとして描かれていたとするならば、あんまり面白くないのだが、それにしては当局に引きずり込まれていくところを丁寧に描いていた。“連帯”の高揚に対する、なにか醒めた暗部をここに設定したことで、作品は深みを得たと思われる。興奮しているヒーローたちよりも、この男にこそ「自分だったらこうなるのではないか」というものを観ながら感じてしまうし、少なくとも批難する気にはなれない。ラストは何を言おうとしているのだろう。記者は最後、個人として連帯に加わろうとして拒絶される。自分から当局に免職を申し渡したのに、連帯はその勇気を認めてくれない。そして勝利の興奮に酔っている。ここにある苦み、真の連帯への道の険しさを感じたのは深読みのし過ぎだろうか。[映画館(字幕)] 7点(2010-02-02 11:58:46)

29.  転校生(1982) 全編のトーンを音楽が決めている。トロイメライ、アンダンテカンタービレ、G線上のアリア、と、つまり下校の音楽なんだ。学校の終わりの音楽。男女未分の子どもが学校生活を終えて、それぞれ完結した男や女になっていくんだけれども、そのとき押し込められてしまう男の中の女性性、女の中の男性性、それを確認できる最後の時間を描いた作品なんだな。一夫に比べて一美のほうがやや連続性に欠けるのは(転化するとより女々しくなってしまう)、女性の男性化は進んでいるのでより極端にしなければならなかったってことか。だから逆に、城跡へ向かう列車の中で女になった一夫(小林聡美のほう)がわざと女の口調をまねる、などというヤヤコシイことも出来やすいわけ。この映画のみずみずしさ・サラッとした感じは、どろどろ情念があふれていた邦画で本当に嬉しかったものだが、さて、オカマタレントがやたらテレビにあふれている現在見直すと、また感想も違ってくるんだろうな。[映画館(邦画)] 9点(2009-12-12 11:53:14)(良:1票)

30.  デスペラード かっこいいということがおかしくもある、ってことを知ってしまった者が、開き直って半分コメディとして活劇を仕立てるスタイル、っていうののハシリのころか。撃ち合いの果て、手近の銃を拾っては撃つが、カラ、カラ、カラ、とか。第一、撃って人が飛んじゃうってのがもうユーモアだわな。派手であるってことは、それだけでもうおかしい。ラテン音楽にそもそも似たユーモアがあるのかも知れない、やたらかっこつけ過ぎるおかしさ。タランティーノがいい顔していることに、この映画で初めて気がついた。[映画館(字幕)] 7点(2009-11-15 11:56:10)

31.  デッドマン(1995) 言ってみれば“もがり”の期間ということか。死の開始から完成までの。冒頭の機関車・主人公・風景のセットが、ラストのカヌーのシーンでも繰り返される。主人公はひたすら運ばれて、フダラク渡海にまで至るわけだ。3人組ってのが好きね、この監督。アメリカはしばらく「自然に優しく」とか、インディアンの生き方を真似ようというのが流行ってたが、とうとう死に方まで教わろうという段階になったようだ。この監督はやはり中・短編系の作家であって、オムニバスでなく2時間を越えると長すぎる印象。そもそも死生観を語ったりするのは似合わない。ちょっと出て殺されるのがガブリエル・バーンなどという贅沢はある。[映画館(字幕)] 6点(2009-11-03 11:55:08)

32.  天国の門 《ネタバレ》 冒頭の卒業式は見事だった。リパブリック賛歌がんがん鳴らして。『ディア・ハンター』もそうだったけど、今は消えた“いい時代”を描くとこの監督は熱がはいるらしい。仲間うちの、何の陰りもなかった祝祭気分。ただそうして過去から見て裁くってのは、どうしても弱く、保守的になる。あんないい時代だったのに、階級差が生まれて争いになってしまった、昔のほうがいい、という具合に建設的なヴィジョンが出てこない。それがラストの弱さにもつながったんじゃないか。主人公はこの虐殺を止めることが出来なかったことよりも、妻の死のほうによりマイってしまう。それは個人として当たり前なんだけど、監督の目もそれに寄り過ぎてしまい、虐殺そのものへのアプローチが甘くなってしまったように思った。もっとも劇場公開時の短縮版の印象だから、アレなんですけど。クリストファー・ウォーケンの控えめな愛(新聞を張った室内)の描き方などよかった。[映画館(字幕)] 7点(2009-09-14 10:12:10)

33.  ティン・カップ スポーツでは、走るもの(球技を含む)と格闘するものがやはり映画に向いており、歩行して棒振るだけのゴルフは難しい。スポーツとは言えないが、走りも格闘もしないビリヤードがけっこう映画向きなのは、キューを構えるポーズが美しいのと、狭い室内ってのがいいんじゃないか。ゴルフは広くて、そういう緊迫感狙いは無理。でこれ、アルマジロ歩く田舎の濃いめの人情世界と、都会的な紳士のスポーツってのをぶつけたあたりがミソか。克己心の話。己れの才能をフルに発揮しようとしないヤツをアメリカ映画は嫌って、チャレンジする話が好きなの。スピード感のないスポーツを見せる工夫として、木の後ろからトイレにぶつけてグリーンに乗せる、とか、刻んでいくヤツと豪快に池越えするヤツとを対比したりとか、苦労してます。[映画館(字幕)] 6点(2009-06-14 11:56:47)

34.  D.N.A. 動物保護運動に押されてアメリカを出たモローが、日本がリゾート化に失敗した島にやってきて…、と百年前の原作を現代風にアレンジしている。でも基本にあるのが、人=理性、獣=本能という、百年前の単純な二分化で、現在この話を描くのなら、やはり主人公を獣人側に据えて語るぐらいの視点変更が必要だろう。百年前だと、獣人たちの“父”への復讐、ってのに共産主義の脅威を重ねて見る気分があっただろうが、今だともっと根源的な、創造主への殺意という「フランケンシュタイン」以来の怪奇ものの伝統にのっとった深みに迫れたはずである。まあこの頃はもう、マーロン・ブランドがB級映画界のシンボルと化していた時代で、その期待されるB級精神に誠実に沿って作られた作品ではある。ショパンのポロネーズを弾くシーンなぞに味わいはあったが、タイトルの、リズム打楽器に乗って単細胞やら多細胞やら目やらがアップしていくとこが、一番興奮できた。[映画館(字幕)] 5点(2009-05-28 12:00:23)

35.  鉄塔 武蔵野線 数字の誘惑。そうなんだ、子どものころって何か異常に数を数えることが好きで、カウントダウンした果てへの興味というか、「はるかさ」への誘いというか、もうこの主人公の気持ちが分かりすぎるほど分かって、懐かしくて仕方なかった。数字の果てが、電線が連続した向こうに確かにあるんだ、という興奮。家電製品からコンセントまで、そのはるかさの入り口として誘いかけてくる。これはもうたどって行くっきゃない。これぞ武蔵野という埼玉の風景。コンクリートと緑が平然と同居している。土留めの脇に雑草が繁り、どぶ川を自転車で越え、いちいちが懐かしい。父親とのからみがやや文学臭を与えてしまったが、ラストで、父‐ラーメン‐草刈りとつなげていくあたりは自然で納得。ミッチャンと呼びかける4年生のアキラ君もなかなかいい。[映画館(邦画)] 9点(2009-02-03 12:11:20)

36.  てんやわんや はきはきした女性とウジウジした男の対比って、日本人が好んで描き続けた一つの型だが、とりわけこの戦後の時期を象徴しているみたい。それと、せわしなく変化する東京と保守的なものが残る地方の対比。この時期の地方を描くときって、石坂洋次郎ものでもそうだったが、残り続ける保守的なものを苦笑を持って見る、ってなスタンスだった、これが後の経済成長期になると、ノスタルジックな味を持ち批判性が薄れていく。淡島の床屋でのダンスレッスンシーンなどイキイキし、パチンコ台を使って何となくミュージカル的な気配も漂う。演説会のとき、川に馬が入る騒ぎのあたりの詩情に、すでにノスタルジックな味が感じられたのは、現在の目で見ているからだろうか。[映画館(邦画)] 6点(2009-01-16 12:10:20)

37.  天国と地獄 この143分てのは『生きる』と同じ長さなんだ。どちらも同じ二段構えで。何かを描くのにちょうどいい長さというものが、作家には固有にあるらしい。でもこれは私には『赤ひげ』とセットになっていて、ヒューマニズムの人としての総まとめが『赤ひげ』なら、サスペンス作家としての総まとめが本作だと思っている。そしてあちらに善の医者、こちらに悪の医者、と対になっている。黒澤は多くの作品で医者を描いていて、生命に密着した職業ということを越え、魂の治癒者といった役割りを持たされている。その医者がこの映画では、魂を沈下させていく。高台の権藤邸に憎しみの目を向けつつ、黄金町の魔窟にまで沈んでいく。こういう世の裏側の感じは、『野良犬』の楽屋裏なんかにも通じて黒澤が好んだ形而上学的な世界構造だ。この世界には一つ奥の暗い場所が隠されている、って。医者はそこを往還する職業なんだ。善い医者は下から上へ、悪い医者は上から下へと、魂を運んでいく。そういった世界観が黒澤にはあるのだと思う。この映画のサスペンスのうまさを今さらいちいち挙げてもしょうがない。好きな女優さんをひとりだけ挙げさせて。これを見るたびに印象に残るのは、山崎努と踊りながらヤクを受け渡しする女のそれらしさ。今村昌平作品なら主人公になれるような顔で、生き物の臭いはプンプンさせていながら生活臭のない女。ストイックな黒澤さんはきっとこういうタイプが嫌いなんだろうけど、それだけに見事に存在感を示していて、私はあのシーンになると異様にドキドキしてしまうのだ。[映画館(邦画)] 10点(2008-12-24 12:23:52)

38.  転々 《ネタバレ》 一人で見ているときに声出して笑うって滅多にないんだけど、岩松了のツムジが臭いってあたりのやりとりで笑ってしまった。松重豊のリアクションがいいし。でも笑った後で、声出すほどのことでもなかったなあ、うまくやられてしまったなあ、という後悔がちょっとつく。岸部一徳のあたりとか、そういう微後悔つきの笑いがいっぱいあった。こういう脱力系の笑いって体質に合ってるんだけど、でも小手先で引っ繰り返されたような、悔しい気持ちもある。もうちょっとドッシリした笑いで笑わせてくれ、と思っても、まあ笑わされたのは事実だから、敗北を素直に認めよう。花やしきのジェットコースターで「亡き王女のためのパヴァーヌ」が高鳴るところはグッときたが、これもうまくノセられてしまったという後悔がつく。ちょっと私、ひねくれすぎてるのかな。素直なところもあるんですよ。見終わって真っ先にしたのは、針金ハンガーを探してきて…[DVD(邦画)] 8点(2008-11-11 12:11:42)

39.  ディープ・ブルー(1999) 《ネタバレ》 『ポセイドン・アドベンチャー』に『ジョーズ』をミックスしたような映画で、ただ基本のモチーフはしっかりSFを守っていて、予想していたより面白かった。アルツハイマー治療の目的で鮫の脳を膨らませたら鮫が高度な知能を持ってしまい、医薬品の材料にされてたまるかと鮫が自由を求めて反乱するって話。SF小説の古典「脳波」にも通じていく設定で、自然界で人間が優位に立っていられるその基盤の脆弱さ、ってなことに思いがいく。ただ肝心の発達した鮫の知能ってのが、強化ガラスを割るために“道具”を使ったりするぐらいで、もっと被実験物が何かを考えているという不気味さを、手を替え品を替え押し出してもらいたかった。けっきょく元からある鮫の原初的な獰猛さが恐怖のメインになってしまっていたような。半分水に浸かった部屋ってのが怖い。下半身が未知の世界に浸かっている、部屋の半分が確認できない、っていうどこか異次元につながっていくようなブキミさ。そして人があっさり死んでいくその唐突さ。ヒロインは償わねばならなかったからなあ。実業家ってのは食われてもいい部類に入るらしい。[映画館(字幕)] 7点(2008-11-07 12:15:05)(良:1票)

40.  天然コケッコー ヒロインそよちゃんにとって東京は大沢君が暮らしていた場所でしかなく、それ以上でも以下でもない。そりゃ人混みに身はすくむけど、別に卑屈感なわけではない。ルーズソックスを買ってくるぐらい。新宿の街も耳を手で囲えばゴウゴウと山と同じ音をたてている。「行って帰ります」だ。この映画がいいのは、田舎の舞台を、都会人のユートピアとしての自然賛歌や人情賛歌として描いたのではなく、べつに都会と関係なくちゃんとやってま~す、っていう地方賛歌にしているところ。学校の将来はちょっと心配だし、借金自殺の「名所」もあるけど、ここで生まれたんだから、ごく自然にここにいる、って感じのヒロインなの。ここからがいいとこじゃけー、とやたらお神楽の解説をして引き留めたがる郵便局のアンちゃんが、土地の人のよさを代表する。話の区切りごとのフェイドアウトに安定感。ラストに、ワンカットの中で時間が跳ぶ、映画ならではのマジックがあった。[DVD(邦画)] 7点(2008-06-27 12:14:49)

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