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1.  捕らえられた伍長 アンドレ・バザンがもしこの映画を見ることが出来ていたならば、『小間使いの日記』以上に「悲劇と喜劇の結合」を達成した作品と評したのではないか。 悲喜劇が目まぐるしく交錯する様においては、ルノワール作品の中でも随一と思われる。 葬列に紛れて逃走するシークエンスでは、逃げおおせる者と警察に連行されるものが同一ショット内で交差する。 あるいは、歯科医での絶叫。懲罰のあひる歩き。農家からの脱走失敗。どれもこれも悲惨の中の滑稽味に笑いを誘われずにいられない。 開いたドアの奥で、伍長(ジャン=ピエール・カッセル)と歯科医の助手のドイツ娘とが交わす抱擁とキスのシンプルな描写がいとおしい。 ラスト近く、国境そばの小作農の男女が伍長らに見せる気持ちよい応対と表情も忘れ難い。 フランス贔屓の酔っ払いも、農家の主も、敵対する収容所看守に到るまで人間的魅力に満ちているところがルノワールならではの人間主義といえる。 『大いなる幻影』で賞賛された観念性にも囚われることなく、ひたすら人間本意に、俳優の魅力をありのまま写し撮ることが第一義として貫かれている。 そのための必然的な長廻し。ここぞのクロースアップ。民主的パン・フォーカス。 手段としての技法が映画の中で活きてくる。 [ビデオ(字幕)] 10点(2010-11-19 22:23:51)《改行有》

2.  突然の恐怖 《ネタバレ》 時間を可視、可聴化する振り子運動のオープニング。その予告通り、クライマックスは極上の時間のサスペンスである。 モノクロ画面の光と影と音響が相乗して緊迫感を盛り上げ、後半はもう目が離せない。 部屋に設置されていた録音機が録音していた、ジャック・パランスとグロリア・グレアムの密通と共謀の会話音声が流れる室内。 音声のみであることが、それを聞くジョーン・クロフォードの絶望感を際立たせる。 グレアムの部屋に侵入し、家探しするクロフォード。突然鳴り出す電話の着信音や、郵便配達員の影と呼び鈴にこちらもドキリとさせられる。 結婚の歓びから一転しての困惑、悲嘆、絶望、そして復讐までの神経症的な感情の流れを的確に表現するヒロインの素晴らしさ。 照明のオン・オフを駆使して黒い陰影を投げかけるチャールズ・ラングのカメラもまたその感情表現を画面に乗せている。 クローゼットに隠れた彼女の額に浮かぶ冷や汗、真っ暗なベッドの上に光る彼女の妖しい眼の光など、異様なまでに優れた出来栄えだ。 ラストのアクションもまた、坂道や隘路などの工夫を凝らしたロケーションが不安定なノワールムードを醸す中、 ジャック・パランスが次第に狂気を帯びて最後までスリリングである。 別荘の崖路を下り、階段落ちを演じ、坂道を逃げ降ったクロフォードは、ようやくラストで夜明けの陽を浴びつつ坂道を登り始める。[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2016-11-23 21:19:07)《改行有》

3.  東京公園 《ネタバレ》 奇しくも、ゾンビの劇中映画で同時期公開の『SUPER 8』と微かに繋がりあうところが面白い。 『リップスティック』、『ゾンビ』、『瞼の母』といった直接的な映画ネタが飛び交う脚本は好みではないが、榮倉奈々のリズミカルな台詞廻しは小気味よくて大変よろしい。 大福をほおばりながら、あるいはおでん、さらにはケーキや肉まんや赤ワインを美味しそうに飲み食いしながら話す姿も愛らしい。 順撮りか、中抜きか、炬燵を挟んで向かい合う彼女と三浦春馬の対話シーンで、正面からの切り返しごとに二人の多彩な表情を見せていく編集が新鮮な感覚だ。 (後半さらに反復されると共に、木登りで笑わせてくれる高橋洋と、神秘的な井川遥の「正対」切り返しショットの幸福感もいい。) それに対して、彼との正面からの相対を避ける小西真奈美。彼女は表情を隠そうとするがゆえに、三浦との抱擁シーンで見せる手のアクションは感動的だ。 今回のキャメラマンは月永雄太氏。屋内・屋外シーン共に、揺れる木漏れ日を繊細に捉えていて素晴らしい。 潮風公園、筆島のショットにおける波音、風音も聞き逃せない。 [映画館(邦画)] 9点(2011-07-03 20:29:56)《改行有》

4.  トウキョウソナタ 映画の基調色となる緑が印象深い。ハローワークの階段の壁に貼られた無機質な表示や小泉今日子を拘束するガムテープ、清掃する香川照之の前で子供がこぼすメロンソーダらしき液体、井之脇海が拘置される警察署地下のホラー風アクセント照明、あるいは小柳友が仲間とチラシを投げ捨てる橋のライティングなど等、闇や陰影が控えめとなった替わりに多様なグリーンが画面を彩る。香川と小泉の断絶の提示が画面上で決定的になるのは、居間とダイニングの段差がもたらす立位置のみならず二間を分けるグリーンとオレンジの照明の分断にもよるだろう。地平線に立つ女性主人公を照らす光と大気と風と、時刻の変化が示す奇跡的な瞬間の感動は、個人的にはロメールの『緑の光線』や『レネットとミラベルの四つの冒険』の一遍(『青い時間』)に通じる映画感覚である。随所に散りばめられた色彩効果によって、最期の演奏場面のシンプルな白い光線の揺れが一層引き立ち、輝きを増している。[映画館(邦画)] 9点(2009-07-19 16:08:59)

5.  ドリーム 《ネタバレ》 ケヴィン・コスナーからタラジ・P・ヘンソンへと手渡される白いチョークが二人を繋ぐ。その慎ましいクロースアップが 不思議と心を揺さぶってくる。 これは冒頭の少女時代の教師から手渡されるチョークのアップショットとも呼応するのだが、 こうした様々なモチーフのさりげない反復や変奏が非常に豊かな映画である。 閉じられるドアと開かれるドア。コーヒー。ネックレス。見上げる行為。歩く行為。走る行為。 ガラス張りの本部長室とトイレの鏡。 オクタヴィア・スペンサーとキルスティン・ダンストとの対話もトイレの鏡像(虚像)として交わされるシーンを 一旦挟むからこそ、ラストの二人が活きてくる。 クライマックスである打ち上げ直前の再計算のシーンは実際なら内線電話一本で済む話だが、 そこをあえてドアからドアへとヒロインを走らせ、ドアを開けて迎え入れさせるというのが映画の演出である。 ケヴィン・コスナーに怒りをぶつけるヘンソンの叫びは、言葉の意味以上に声音そのもの響きと震えで心を打たずにおかない。[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2017-10-06 23:04:44)《改行有》

6.  トゥルー・クライム殺人事件 《ネタバレ》 壁に投影される影や、揺れるレースカーテン越しの対話。 静かな出だしから次第に加速してゆくドラマのリズム。 ピアノやテーブルやレコード盤面への不安定な人物像の執拗な反射、その構図。 真正のノワールといった感覚に十分酔える。 曲がり道を猛スピードでカーブを切りながら暴走していく車のスリリングな迫力が素晴らしい。 そのままクライマックスのロケーションを活かしたカーチェイスに突入し、 ゴミ処理場での決着へと雪崩れ込む。 ラストのラジオ放送の苦味もいい。[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2017-01-09 14:41:39)《改行有》

7.  虎鮫 《ネタバレ》 殊更な表現をするわけでもないのに、リチャード・アーレンとジタ・ヨハンの出会いのシーンは後に彼らが心ならずも 惹かれ合い、エドワード・G・ロビンソンを裏切ってしまうことになるだろう予感を強く感じさせる。 さらには陽気なエドワード・G・ロビンソンの邪気の無い雄弁が哀れみを誘う。 波をかぶる船側で漁師たちがマグロを次々と釣り上げていく漁獲シーンの荒々しく、力強いショット。 そのマグロを船倉から籠で釣り揚げ、漁港から加工場へとコンベアーで運んでいくショットのドキュメンタルな迫力。 本筋そっちのけで、その瑞々しい労働シーンに魅入られ、撮り続けてしまったのだろう撮影クルーを想像して楽しくなる。 船長の風貌や、船上からのライフル射撃などのディティールはやはり後の『ジョーズ』にも受け継がれたのだろう。[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2016-12-02 23:59:39)《改行有》

8.  トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男 《ネタバレ》 とうとう密告フォームまで登場したこの国の今現在と重ね合わせず観ることは困難であるという不幸。 憲法修正第一条を巡る言及から何から引っくるめて、ただの感動的な物語映画として見終えさせてはくれない。 映画でも簡潔明瞭に語られている『スパルタカス』の顛末は、『カーク・ダグラス自伝』の『スパルタカスの戦い』の項などにも詳しく記述されているが スタンリー・キューブリックとの確執なども加わって実際はより複雑で興味深い人間ドラマがあったことがわかる。 その辺りも映像化されれば面白いのだろうが、尺的にはやはり端折ったのが正解だろう。 カーク・ダグラスが「名前を取り返してくれたこと」への感謝のエピソードは、劇場でそのクレジットを見るブライアン・クランストンの表情によって 視覚的にも印象深いものとなった。 脚本家を題材とした映画らしく、映像的な突出はないものの、台詞の妙味と劇展開の面白さで一気に見せる。 手動のタイプライターによる速筆がさらにテンポを生む。 エドワード・G・ロビンソン役やジョン・ウェイン役の俳優らも、顔貌の相似以上に佇まいと台詞を語る口跡が皆素晴らしく、 ジョン・グッドマンの啖呵には胸がすく。[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-07-28 23:56:19)《改行有》

9.  トゥモローランド 《ネタバレ》 「それ以上質問を続けると、シャットダウンする。」この遊び心が最高。 つまり観客に対して間接的に、つまらぬツッコミを入れるな、と。 コカ・コーラを2本飲み干したブリット・ロバートソンがゲップする瞬間に 手前にジョージ・クルーニーを配置して、改めて奥の彼女を画面に戻すタイミングやら、 彼女がエッフェル塔展望台で当直員を昏倒させて「human!」とやるショットの縦構図やら、 暴力描写や罵り言葉を、コードギリギリを狙ってかわしていくしたたかさやら、 人物の動かし方、構図取り、対話劇がアップテンポの中で手際よく決まっている。 ひたすら彼女をアクティブに動かす演出が奏功して、キュートなヒロイン像となっている。 格闘アクションでの割すぎないカッティング、高空からの落下と着地を全身像のアクションで捉えていく運動感覚は アニメーション出身監督ならではだ。 のみならず、光の扱い、夜の闇の活かし方も『アイアン・ジャイアント』の監督だけに巧い。 ビジョンの交錯は夜と昼の中で為され、ロケットの出発の光は夜間に煌き、 中盤のジョージ・クルーニーの表情は、あえて逆光の影の中に捉えられている。 ゆえに、ブラッド・バードは実写でも十分に通用している。 (ラフィー・キャシディーとの交流も、どこか『アイアン・ジャイアント』と響きあう。)[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-03 22:44:10)《改行有》

10.  ドラフト・デイ 電話を通しての駆け引きを満遍なく見せるのにはやはりこの方式か。 対話をしながら、仲間達に暗黙の目線と表情でリアクションを 示し、身振りで指示を出すGMら双方の芝居がスプリットスクリーンで展開する。 そのアクション‐リアクションが同時進行する画面が スリリングで飽きさせない。 [映画館(字幕)] 8点(2015-03-22 00:00:21)《改行有》

11.  とらわれて夏 《ネタバレ》 幾度も挿入される回想シーンが、ケイト・ウィンスレットのものなのか ジョシュ・ブローリンのものなのか。 瞬間的に把握しづらいところがあり、また類似場面の反復でもあって 物語を停滞させている気味があるが、それもまた 登場人物を苛むとらわれのイメージを増幅させてもいる。 時代背景を仄めかす映画ポスター類も序盤でさりげなく提示されるのみ。 ラストに活かされるパイ作りのシークエンスも思わせぶりなところが まるでない。そうした慎ましやかさが好ましい。 大団円の後日談。2人が並び歩く一本道の脇に揺れているのは何の作物だったか。 柔らかい光の中に静かに波打つ枝葉の音。 このラストショットが圧倒的に素晴らしい。 グリフィス的原風景に万感の叙情があふれている。 [映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2014-08-01 15:25:28)《改行有》

12.  毒婦高橋お伝 時計台からクレーンダウンし、活気ある明治の街並みを再現したオープンセットを捉えるファーストショットから引き込まれる。 神社の鳥居と石段、貸間、長屋の風情など、いずれのセットもぬかるみや汚しが絶妙に施され、見事な出来だ。(美術:黒澤治安) そのセットに配された襖、天窓、鏡が、狭い路地裏と共にフレーム内フレームとしてドラマ効果を発揮しており、また坂道のロケーションや俯瞰を多用したセット撮影との組み合わせの妙とも相俟って、明治の風俗が立体的に浮かび上がっている。 『無法松の一生』的な人力車のリズミカルな車輪の回転運動は日傘の回転へ、そして横浜篇の賭場のルーレットへと流転し、浴槽や川面の光の揺れや暖炉の炎、簾、雨垂れの反映といった様々な揺らぎがメロドラマを彩る。 女性、母親、そして復讐者としての多面的表情を見せる若杉嘉津子の横顔を捉えるショットの官能性もまた素晴らしく、『東海道四谷怪談』コンビの前哨としても納得の出来栄えだ。[DVD(邦画)] 8点(2011-10-23 20:46:21)《改行有》

13.  どぶ鼠作戦 まず巻頭に登場するトラックの車両ナンバー「42219」の乾いたユーモアがいい。 愚連隊シリーズ前2作と比べてドラマ中の対立構造は複雑さと多様さを増しているが、 例えば、張り手のアクションとリアクションのショットで全く別のシーンに繋いでいく、といった岡本監督独特の場面転換が鮮やかで、(濫用気味の感もあるが)テンポは快調だ。 御殿場ロケだろう、急峻な山越えあり、渡河あり、結婚式の火祭りに紛れての追跡劇は『隠し砦の三悪人』の影響も垣間見せる。(藤田進のセルフパロディもご愛嬌。) 特務隊内で対立する中谷一郎と田中邦衛も個性的だが、砂塚秀夫の繰り出すパントマイムギャグによる脱出劇は特に傑作だ。 捕虜役:江原達怡や村娘役:田村奈巳など、登場時間はわずかながら、再登場でその存在感を印象づけると共に、その再登場の意味が佐藤允のキャラクターの魅力を間接的に引き立てる点等も実に首尾が良い。 また、人気のない(砦のような)村を五人横並びとなって歩く構図や、円看板を拳銃で撃って賭けをする着想、佐藤允と中丸忠雄の最終対決の距離感覚など、西部劇へのこだわりの強さも徹底的だ。 ウェスタン活劇志向と戦争映画の思想性との拮抗と分裂も、シリーズ三作の中でもより際立っているといえる。 (婚礼の輿を日本軍が空爆することで、特務隊が窮地を脱するというやりきれない皮肉) [ビデオ(邦画)] 8点(2011-10-22 17:10:11)《改行有》

14.  塔の上のラプンツェル 《ネタバレ》 ラプンツェルが危機一髪で崖からジャンプする瞬間と、刑場に引かれていくユージーンのショット。映画の中で二箇所限定で用いられたスローモーションの沸き立つような高揚感。 あるいは的確なクロースアップ、POV、移動ショット、ジャンプカットと、洗練された映画的ショットと編集の宝庫ともいえる。落下運動の向地性と無限上昇運動としての浮遊を対比的に活かしたアクションの緩急と、光の見事さ。 ティアラの輝きと透明感の表現力は、ディズニーの伝統を着実に受け継いでいる。 画面の充実は、エンドクレジットに記されたレイアウトやライティング担当スタッフの豊かさにも明らかだ。 語りを含めた完成度の高さを十分認めた上であえて欲をいうなら、離れ離れとなった二人が塔の上で再会するクライマックスにかけてはそれに相応しいもう一段の困難と試練が欲しい。 落下と振り子運動をダイナミックに駆使した、中盤までの縦横無尽のアクションシーンがあまりに素晴らしいだけに、二人が互いを求め合うクライマックスでは塔の高低と構造を活かしたよりドラマティックなアクションが間違いなく出来たはず。 『カリオストロの城』の時計塔や、『長靴をはいた猫』の魔王城のような。 [映画館(吹替)] 8点(2011-04-26 22:32:02)《改行有》

15.  トスカーナの贋作 検閲の厳しいイランを離れ、イタリア・ルネサンスの地で表現される女性のエロティシズム。 それをジュリエット・ビノシュが艶めかしく体現する。 車のフロントガラスを流れていく街並みと空、そこに重なる車内の男女の像。ガラスや鏡を介した複写の主題も、レストランの窓ガラスや化粧室の鏡から、オートバイのミラーへの反射に到る細部まで手が込んでおり、迷宮感すら催す。 ウィリアム・シメルが登ってゆくホテルの階段の深い暗がりと、窓から差し込んでくる微かな陽光の推移など、光に対する感性あふれる画面にも魅了される。 画面奥の空間を示唆する多層的遠近感の演出も、ルネサンス絵画技法の映画版というべきか。 そして、雷鳴・風音・鳥の羽音・鐘の音色がもたらす豊かな空気の震えも聞き逃せない。 [映画館(字幕)] 8点(2011-03-05 21:51:41)《改行有》

16.  ドリラー・キラー 《ネタバレ》 盗み撮りを交えたゲリラ撮影的なマンハッタンロケと画像の粗さが、街の猥雑で荒んだ様相を生々しく伝える。 滑稽感すら漂わせる調子はずれのロックグループやホームレス達が醸しだす気だるい停滞感が、カウンターカルチャーの行き詰まりを如実に物語る。 しかし一見ラフにカメラを廻しているようでいて、蒼暗い街路とスポット的な赤(口紅、シーツ、衣類、血)の意識的配置は終始明確だ。 逆光の中に浮かび上がる主人公のシルエットと電動ドリルの芯の鈍い光の見事さ。 主人公の眼窩に落ちる黒い影の凄み。眼の見えない相貌は、生気や理性を感じさせない。 ガラス越しのイルミネーションを背景にしたドリル殺人の鮮烈なイメージ。 夜の街中、路上のホームレスたちに主人公が無差別的に襲い掛かるアクションの俊敏さ。 そして圧巻といえるクライマックスの緊迫感。 主人公が待ち伏せるベッドの側のルームランプを女性が消灯した途端、画商殺害シーンと同様の「赤」が画面を覆う。 赤一色の画面と女性のモノローグ、そして沈黙というほぼ最小限の要素が、最大限のサスペンスを発揮する。 低予算を逆手にとる積極的な消去法が実現した息詰まるラストが鮮やかだ。 [DVD(字幕)] 8点(2011-02-03 20:12:48)《改行有》

17.  ドノバン珊瑚礁 リー・マーヴィンの漂着を歓迎する島民のウェーブのアクションからしてすでに幸福感全開。 ハワイアンメロディーが流れる南洋の長閑なリズムの中で、窓枠の外に映し出される降雪や青い稲光などの印象的な細部が厳かなアクセントをもたらしつつ、土砂降りのスコールやジョン・ウェインらの殴り合い、きびきびしたジープ操作や水上スキーのスピード感、エリザベス・アレンが幾度もみせるズッコケぶりといった豪快でコミカルなアクションの要素がさらに幸福感を呼び込む。(ビールの栓抜きや、「休戦」の握手の仕草も小粋で良い。) 三人の子役たちの存在も、大きく貢献している。長女役:ジャクリーン・マルーフのナイーブなイメージ。水上スキーに出かけることになった三人の子供たちが、神父がいなくなった途端にはしゃいで踊り出す場面の無邪気な愛らしさも特筆もの。 そして様々な国籍、職種、階級、民族の老若男女がスコールに濡れながら一堂に会する教会の場面も素晴らしい。[DVD(字幕)] 8点(2010-10-31 19:46:37)《改行有》

18.  トイ・ストーリー3 序盤の列車アクション、2度のゴミ回収、飛翔による脱出、夜間の「脱獄」のシークエンス、そして溶鉱炉へ向かうコンベアーラインの活劇。いずれも縦の構図による遠近法に立体効果を活かした極上のサスペンス演出。同時に、水平軸から垂直軸へのアクションを複合させることで共通しており、空間表現としても大変充実している。(第一作でみせた、カーアクションから一転、ロケット上昇という見事な軸転換から全くぶれていない。) それら空間造形術といい、暗いナイトシーンが支配する「サニーサイド」保育園の構造的隠喩といい、ポール・グリモーから宮崎駿経由の継承が窺える。(冒頭の同時上映『デイ&ナイト』の主題とも通じ合う) 絶妙にデフォルメされた全身表現によって付与される人形たちの喜怒哀楽の感情と生命感。内気な少女の細やかな仕草・表情変化の豊かさ。脱出シーンの切れ味の良いパンショットやダンスシーンの見事なカッティング。溶鉱炉の赤から、夜明けの美しい光への推移。全編見所に溢れている。 そして、文字に拠らずに行為の画面で語ったラストは大したもの。[映画館(字幕)] 8点(2010-09-25 23:15:07)《改行有》

19.  ドント・ブリーズ 《ネタバレ》 夜の一軒家を主な舞台とすることで、屋内の構造も全面的に披露される訳ではない。 いずれのショットも黒い闇の領域が大きくとられ、それが複数にカラーリングされた限定的な照明効果と共に追うものと追われる者の関係を 立体的に浮かび上がらせる。 闇の中にスポット的に当てられるライティングは次第に傷を負い消耗していく若者らの表情の痛々しさをより強調し、 しかるべき伏線となる小道具に対し要所要所で効率的に視線を誘導する。 天窓に入った亀裂が小さく音をたてていく、硬質な物質感と音のサスペンス。 引きのショットで二つのシルエットが組んづ解れつ格闘する様も、人間を素手で連打する打擲音の地味な生々しさと共に真に迫る。 二転三転と考えられた後半のサスペンス釣瓶打ちもいい。[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2017-04-04 14:34:16)《改行有》

20.  トリプルX 再起動 《ネタバレ》 馬鹿馬鹿しくて最高。あの映画この映画のパッチワークではあるが、アクションの釣る瓶打ちによる力技でハイテンションを維持する。 だけではなく、華のある女優陣の活躍に負うところも非常に大きい。マッチョな男優陣とのバランスが絶妙だ。 それも見た目だけではなく彼女らそれぞれのキャラクターに合わせたアクションの見せ場も用意されているので、さらに魅力が増す。 温度感知によって、ヴィン・ディーゼルの指の間を通して黒幕を狙撃する女性スナイパーのクールな身のこなしがいい。 ドニー・イェンの立ち回りも勿論、素晴らしい。切れの良いカッティングが彼の美技を引き立てている。 トニー・ジャーが割を食ったが。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-02-26 19:46:22)《改行有》

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