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プロフィール |
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893 |
性別 |
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自己紹介 |
ハリウッドのブロックバスター映画からヨーロッパのアート映画まで何でも見ています。 「完璧な映画は存在しない」と考えているので、10点はまずないと思いますが、思い入れの強い映画ほど10点付けるかも。 映画の完成度より自分の嗜好で高得点を付けるタイプです。 目指せ1000本! |
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1. トラベラー
《ネタバレ》 題名からプロサッカーの国際試合を見に行きたい少年のロードムービーだと思っていたが、
そこまで尺を割いておらず、むしろあの手この手であくどい資金調達を行う悪童のバイタリティには驚かされる。
サッカー狂で後先や周囲のことなどお構いなし、それなのに如何にして一つ一つの問題をクリアしていくのか、
シンプルで淡々とした展開ながらサスペンス調の緊張感を持っていくキアロスタミの手腕の良さを感じられた。
テヘランに辿り着いたのは良いが、チケットは売り切れでダフ屋で資金使い果たすわ、
寝過ごして試合を見逃すわで踏んだり蹴ったり。
欲望のために家族にも仲間にも顔を見せられないレベルでやらかしたのだから、
帰れば体罰どころでは済まないが、そもそも有り金使い果たした彼は帰れるのか?
反面教師的なメッセージはあれど、瑞々しさと迸るエネルギーに説教臭くないバランス感覚があり、
律儀で大人しくなった現代日本から見るとその逞しさに羨ましさはある。[インターネット(字幕)] 6点(2024-06-10 22:45:06)《改行有》
2. 時計じかけのオレンジ
《ネタバレ》 半世紀近く前にも関わらず、今もなお衝撃と鮮烈さを失わず、五感を絶えず刺激させる。
あまりに背徳的で倫理性を無視した、サイコパスの不良少年アレックスの悪行が強烈であるほど、
共犯者になったような恍惚と快感を観客に見せつけ、投獄そして釈放後のアレックスの地獄巡りを追体験する。
荒療治によって変わっても、彼は被害者のように振る舞い、何故因果応報を受けたのかという反省も心からの謝罪もない。
性と暴力を封印されただけで根っこから救いようがないからである。
では、アレックスだけが酷いかと言えばそうでもない。
実は社会も我々もアレックスのような本能が眠っているのではないか。
タイトルは機械化された人間を意味するらしいが、理性を持って生きている我々も息苦しい現代社会に嵌め込まれている。
むしろ機械化された人間にならない支配者側こそ本能的に我々を上手く利用してコントロールしている。
自分の生きたいように生きられる言動は、世渡りの上手さと狡賢さから成り立つという残酷な現実を突き付けているのだ。
キューブリックの先見性は、彼の想像を遥かに超えて、現実の"未来"は映画以上にさらに酷いものになっている。
"アレックス"と"時計じかけのオレンジ"の狭間で、観客はラストの観衆と重ね合わせ、
「ハラショー!」と喝采する未来しかないのかね…[DVD(字幕)] 10点(2022-05-28 00:07:40)(良:1票) 《改行有》
3. ドン・ファン(1970)
《ネタバレ》 『ドン・ジョバンニ』との違いがよく分からない(男が悪行の果てに地獄落ちするのは共通するが)。オーソドックスな人形劇だが、屋外で撮影したり、ゴアシーンがあったり、要所にコマ撮りアニメが挿入されたりと、型にハマらないシュヴァンクマイエムらしい片鱗が随所に見られる。不意に挿入される「死ね」「えーいっ」のテロップが恐い。終盤で「子供たちよ、俺のようになるな」とメタ演出が入るあたり、子供向けだろうなと思うけど、あの表現の数々を見るに冗談がきつい(笑)。もっともホラー映画なんて当時は規制なしで見られた時代なのかもしれないが、子供には良いショック療法だったに違いない。[インターネット(字幕)] 6点(2015-07-15 21:55:43)
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