みんなのシネマレビュー |
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2. ニワトリはハダシだ 森崎東作品には、社会に対する反骨精神で貫かれている面が暫し見受けられるが、その姿勢は演出のみならず我々観客に対しても、決しておもねらない形で表れる。彼の言わんとする、あるいは描こうとする世界観は理解できるにしても、そのドラマツルギーは、一体いつの時代の話なのかと思うぐらい古臭く、表現方法は余りに稚拙である。これは演出レベルそのもを意味するものではなく、あくまでも彼独自の演出スタイルなのであるが、その散文的な演出法は、至って単純な物語を複雑で混沌とした物語へと変貌させていく。純真無垢な子供たちとカリカチュアされた悪い大人達、という単純な図式の割に、テーマが少しも見えてこないのである。だから捉えようによっては、焦点の定まらない印象の散漫な映画として見なされてしまう。いや、纏まりが無いのではなく、むしろ纏めようとしていないのだろう。人々の日常とはそういうものなのだと、ここでも彼の主張が聞こえてくるようだ。しかし達者な演技人があればこそ彼の映画の世界が構築できたとも言える。もともとは脚本家である彼の思想や哲学はプロであるが、それに見合う演出力は未だに備わっていないというのが、私の持論である。それにしても、これほど作風に変化の無い人も珍しいが、ベテランらしい演出の旨みやコクというものよりも、むしろ常に若々しい映像を提供してくれるのが、この人なりの魅力なのかも知れない。[映画館(字幕)] 7点(2005-06-29 17:46:11) 3. ニューオーリンズ・トライアル 法廷モノのいわゆる丁々発止の裁判劇の面白さよりも、その裏側で蠢く人間ドラマにより重点を置いたサスペンスドラマ。実際に起こりうる陪審員制度の様々な問題点を鋭く暴く・・などといった社会派の小難しい作品ではなく、原告と被告側双方の駆け引きや裏工作に或る復讐劇を絡めるという、我々観客を飽きさせることなく終始興味を抱かせるように構成されるという、あくまでも娯楽作品に徹して描かれている。その点で言えばそれは正解であり、見事なストーリーテリングと絶妙のキャスティングで、本作は近年にない良質のエンターテインメントとしても立派に成立している。永年実現しなかったG・ハックマンとD・ホフマンとの初顔合わせが何と言っても本作のハイライトで、ド直球のハックマンと変化球のホフマンといったそれぞれのキャラに見合った役作りはさすが。少々掴みどころの無いJ・キューザックやR・ワイズといった若手俳優たちとの対比もまた面白い。8点(2004-08-02 16:13:24) 4. 21グラム 映画製作の手法のひとつに回想形式というのがあるが、過去と現在とが巧妙に入り組んでストーリーが語れて行くという新手の方法は、タランティーノの一連の作品から見られるように、昨今の流行りのようでもある。(但し、「メメント」の場合は意味合いが根本的に違う!)その手法をいかに効果的に用いるかで作品にインパクトが生じ、より魅力的になるかどうかがポイント。本作もご多分に漏れず時間を自由自在に操る奔放な映像表現で綴られてゆくが、些かも混乱することなくストーリーの流れを十分に把握できる。その点でまずは成功の部類に属する作品であろう。まるで神の意志が働いたかのように、ちょっとした運命の悪戯に翻弄される男と女。微かな希望さえも叶わぬ救いようのないドラマが展開されてゆく。それぞれが運命の糸に引き寄せられ、やがて交差したとき露わになる人間の弱さ。その運命を受け入れなければならない彼らの哀しさがビビットに伝わり、ザラついた画面にその心の荒廃と無力感が反映される。個々のキャラを十二分に生かした感情のうねりの演技など、三者三様の持ち味を発揮した濃密な人間ドラマは、見応え十分。7点(2004-07-08 18:21:32) 5. 二重スパイ スリリングな導入部から始まるこの物語は、北朝鮮から韓国へ偽装亡命した或るスパイの行動を克明に追ったもの。終始リアルな描写としっかりとした構成で貫かれ、サスペンスフルで実に見応えのある作品となっている。仲間たちの協力や想定外の部外者からの情報収集を得て、ひたすらストイックに任務を遂行する主人公。が、非情なプロのスパイとして生きてきた男が、時折見せる人間本来の優しさ。結果的にはそれが仇となるのだが、男女の恋愛がらみというのも、今や韓国映画の定番となりつつある。ラスト、国家(韓国)の威信を賭けたオトシマエは、東映のヤクザ映画あるいはマフィアものによくある報復のパターンそのもので、ショッキングではあるが、その作劇はあまりにも通俗的で少々残念。7点(2003-08-28 23:55:06) 6. 2010年 あくまでも虚構の世界を、一種の科学ドキュメンタリーでも観ているかようなそのリアルさと壮大さに、当時驚嘆したものだった。その前作に比べてNASAの全面的協力で本物志向を目指した本作は、例えばCGで再現した木星や、この頃の人気俳優であるR・シャイダーを起用するといったように、全体の創りが余りにもウソっぽいという皮肉な結果を生じたようだ。「2001年宇宙の旅」が今尚、色褪せず輝き続けているの対して、その続編とでも言うべき本作が後年ほとんど語られることがないのは何故か。世界映画史を飾る名作と比較するのは酷というものだし、独立した一本のSF映画として観た場合、テクノロジーに頼り過ぎたきらいはあるものの、良く出来ているほうだとも思うのだが・・・。ただ大きなリスクを負ってまで果敢に挑戦したP・ハイアムスには拍手をしておきたい。6点(2001-11-25 11:43:42) 7. 日本の黒い夏 冤罪 熊井啓監督の作品意図としては、この年に起きたひとつの(あまりにも有名な)事件を記録しておきたかったに他ならない。それほどに“冤罪”というテーマは彼にとって魅力あるものなのだろう。が、しかしその描き方は通り一遍だし、どのシーンをとってみても印象はあまりにも希薄だ。それは今までにTVのドキュメンタリーや特番などでさんざん報道されてきたことを、単になぞっているだけに過ぎないからである。だからそこから何ら新しく喚起されるものも生まれてこないし、ましてや感動などあるはずもない。6点(2001-04-08 18:46:43) 8. ニューヨーク東8番街の奇跡 無邪気で可愛くてひょうきんな、これまでに見たことの無い宇宙からの訪問者。その一味違う手の平サイズの愛くるしいミニUFO(と言うよりUFO型のロボット)が人間と共存し始め、やがて奇跡を起こす。実際は老人や住宅などの社会問題を含みつつ、映画はあくまでもヒューマニズムなファンタジック・ドラマとして作られている。表情豊かに描かれるUFOたちに比べて、人間の描き方に食い込みが足りないが、コーヒー・ショップを細々と経営しながら地上げ屋と戦う、ジェシカ・タンディとヒューム・クローニンの実生活を垣間見るような、ほのぼのとした暖かさが作品に感じられる。8点(2001-03-11 23:24:53) 9. 2001年宇宙の旅 言わずと知れた、SF映画史上の金字塔。いや世界映画史上の歴代のベスト・ワンに推す方も少なくないほどの名作。初公開から35年近くも経っているのにもかかわらず、今なおその輝きは少しも失われてはいない。そればかりか、その後のSF映画に多大な影響を与え続けていることで、いかにこの作品が優れて時代を超越したものであるかが推し量られる。蛇足ですが昨今の大型パンフレットの元祖でもあるのです。10点(2000-09-08 23:28:43)
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