みんなのシネマレビュー
鱗歌さんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

◆検索ウィンドウ◆

◆ログイン◆
メールアドレス
パスワード

◆ログイン登録関連◆
●ログインID登録画面
●パスワード変更画面

◆ヘルプ◆
●ヘルプ(FAQ)

◆通常ランキング◆
●平均点ベストランキング
●平均点ワーストランキング
●投稿数ランキング
●マニアックランキング

◆各種ページ◆
●TOPページ
●映画大辞典メニュー
●アカデミー賞メニュー
●新作レビュー一覧
●公開予定作品一覧
●新規 作品要望一覧照会
●変更 作品要望一覧照会
●人物要望一覧照会
●同一人物要望一覧照会
●関連作品要望一覧照会
●カスタマイズ画面
●レビュワー名簿
●お気に入り画面
Google

Web www.jtnews.jp

プロフィール
コメント数 3859
性別 男性
年齢 53歳

投稿関連 表示切替メニュー
レビュー表示レビュー表示(評価分)
その他レビュー表示作品用コメント関連表示人物用コメント関連表示あらすじ関連表示
コメントなし】/【コメント有り】
統計メニュー
製作国別レビュー統計年代別レビュー統計
要望関連 表示切替メニュー
作品新規登録 / 変更 要望表示人物新規登録 / 変更 要望表示
要望済関連 表示切替メニュー
作品新規登録 要望済表示人物新規登録 要望済表示
予約関連 表示切替メニュー
予約データ 表示

評価順1234
投稿日付順1234
変更日付順1234

1.  日本のいちばん長い日(1967) よくこれだけのキャストを集めたなあ、という大作ですが、影の主人公は「時計」でもあります。玉音放送までの24時間、作中では何度も時計が映し出され、時刻が言及されます。着々と進めれらる、「敗戦」への準備。前半だけでも十分にスリリングで面白いのですが、後半は一部の軍人の暴走が描かれ物語はますます加速の一途、これほど手に汗握る緊張が漲った作品も、なかなかありません。もう、誰が正しいとか間違ってるとか、そんな事言ってられる事態を通り越して(もはや取返しがつかないにも程がある、という事態なのだから)、登場人物たちの必死さや焦りに、息を飲み圧倒されます。今の目からみたら狂気としかいいようのない暴走軍人たちも必死なら、NHKの加山雄三だって必死だし、加東大介ですらも(あの顔で一応)必死。鈴木貫太郎首相だって、笠智衆が演じるからノホホンといい味だしてるけど、やっぱり命がけには違いない。そんな中で、最も貫録を誇っている阿南陸軍大臣、演じるは三船敏郎、さんざん貫録を見せつけ、最後も壮絶な切腹を遂げるのだけど、この緊急事態を収めうる唯一の人物と思われた彼が、およそ何もせず、自殺というトンチンカンな行為に逃避してしまうその様は、何とも皮肉です。それにしても、何と多くの人たち、想像するのも困難な数の人たちが、死に追いやられたことか。これだけの犠牲を払った末に、かろうじて成し遂げられた終戦は、まさに一歩間違えば実現されなかったかも知れなかった、というのもまた、大きな皮肉。[CS・衛星(邦画)] 10点(2015-10-06 22:35:43)

2.  人情紙風船 人情紙風船、いや、人生紙風船。無常。作品自体は時代劇で長屋モノなんだけど・・・中身は何と、これはまさしく“現在”ではないか! 永遠にうち続く無常。永遠の現在。[CS・衛星(邦画)] 10点(2011-05-28 17:09:22)

3.  ニュー・シネマ・パラダイス/3時間完全オリジナル版 《ネタバレ》 『ニュー・シネマ・パラダイス』、あんまり評判がいいもんで何だか胡散臭く、きっとワタシには無縁の映画でしょう、と避けてきた作品なのですが・・・いや、泣けました。そんなに警戒しなくていいよ、と誰か言ってくれりゃよかったものを(笑)。取り壊し寸前の映画館で、「映画」に埋もれた自分の「過去」を必死で探す主人公の姿、これにはもう参りました。どうしたらこんなヒトの弱みにつけ込むような、泣きたくなるような、頭抱えたくなるようなシチュエーションを思いつくんですかね、プンプン(「映画」に限らない「何か」。その「何か」に埋もれてさせてしまった、幻の過去)。かつて主人公を旅立たせたアルフレードは、自らの死によって、映画館が取り壊される直前に主人公を故郷へ呼び寄せ、“過去”と対面させ、その“過去”との和解へと導く。アルフレードこそは天使。[CS・衛星(字幕)] 10点(2011-05-04 18:25:09)(良:1票)

4.  日本大侠客 《ネタバレ》 石炭積み出しに沸く明治の北九州・若松を舞台に、侠客・吉田磯吉の半生を描く。とは言っても、とても実話とは思えない点が多々あるのですが、フィクションで誇張された漢気が漲った、これぞ痛快娯楽作、という作品になってます。ユーモアもあれば悲壮感もあり、ホントに面白いんだ、これが。 磯吉オヤブンを演じるは、鶴田浩二。気が良くって無鉄砲、愛される存在ではあるけれど、身内からすれば頼りないことこの上ない。そんな彼の成長譚みたいなところもあって、いや、まあ、最後までずっと頼りないっちゃあ頼りないけれど、でも人間、こうやって周りから徐々に頼られるようになって、ジワっと成長していくもんだよね、というのが、よく出ています。 方言によるセリフがまた、何とも言えぬ人間味を感じさせるし、さまざまな人間が集まってくる港町らしく、さまざまな方言が入り混じる(関西訛りの役者たち)のも面白いところ。エキストラの動員により、町の雑多な感じや、殺伐とした争い、といったものも、映画によく表れています。 商売人としてはサッパリだけれど、舎弟たちに愛され、仲仕たちに愛され、大物オヤブンにも愛され、しかし藤純子演じるお竜との切ない関係があったりもして。その他、病弱なヒットマンとか、人が好さそうに見えて実は剣の達人のオッチャンとか、脇を固めるキャラクターも多彩で、それぞれが忘れ難い存在感を示しています。 そして、若松を牛耳ろうと企むハゲ親父・岩万こと内田朝雄との、深まる因縁。ラストはもう、殴り込みならぬ、討ち入り状態で、準備のために集結した主人公たちの姿が、どえらくカッコいい。激しい死闘、そして最後に鳴り響く銃声。シビレます。[CS・衛星(邦画)] 9点(2020-12-29 04:14:24)《改行有》

5.  2分の1の魔法 まずはこの、溢れ出んばかりのサービス精神に、ありがとうと言いたいですね。 伏線の回収、などというと安っぽいけれど、劇中に示される様々なモチーフが、思わぬ場面、思わぬ形で再登場して嵌るべきところにピタリとハマり、驚きや感動を呼び起こす。100分少々の作品に対していささか詰め込み過ぎて、オハナシがどんどん進められてしまい、もうちょっと余白とかタメとかがあってもよいのでは、とも思わなくはないですけどね。ただ、基本的にはここで再現されているのはRPG的な世界、だから展開がやや機械的になるのも仕方ないですかね。というよりここでは、ガサツで大胆な兄貴に対する、臆病で決断力に乏しい弟(主人公)、という対比があって、この本作の展開の早さから我々は「兄貴になかなかついていけない弟の気持ち」を共有することにもなります。 大体、「魔法で亡き父を蘇らせるチャンスは明日の日没まで」というタイムリミットだけでも充分に物語になり得るのに、「魔法不足で今は下半身しか蘇ってません」というヒネリ、どうやったらこんなコト思いつくんですかね。この下半身だけの父親の存在ってのがとにかくナゾで、本人はどういう状態で何を考えているのか(そもそも意志があるのか)最後までワケがわかんない存在なんですけれども、とにかくユーモラス。周囲の目をごまかすためにダミーの上半身を付けられてさらに動作がカオスとなり、笑いを呼びますが、一方で下半身だけあればダンスはできちゃって、親子共演と相成る感動も。 この作品の世界では様々な外見の登場人物が普通に入り混じって暮らしており、「外見での差別」という問題は解決(あるいは保留)されている世界なのですが、母親が付き合う男、つまり将来の父となるやも知れぬ男は、下半身が馬になっていて、主人公家族とは異質な存在。この男には無い「2本足の下半身」のみが復活するという設定は、ユーモラスでありつつも、何となく引っかかりも感じさせます。 そしてだからこそ、この将来の父も、必然的にストーリーに大きく絡んでくることになります。彼は旅に出た兄弟をこれ見よがしに心配して見せたりはしないけれど、彼らの冒険に振り回されることが、家族の一員になるための通過儀礼ともなっています。兄のポンコツ車のバンパーは簡単に外れてしまい、兄のガサツさを示す一方で、別の場面では将来の父に対する道標にもなる。1つのモチーフが複数の意味を帯びる瞬間。 あるいはポンコツ車の中に大量にある違反キップもまた、兄のガサツさの表れだけど、たくさんのそれが撒き散らされるシーンでは、何だかポンコツ車の涙のようにも見えて。 その他、様々なモチーフが様々な形で再現し、映画を彩るのだけど、そんな中でも、テーマは単純に「家族愛」というものを、ストレートに描き切っています。いや、「家族愛」と一言で言えば単純だけど、実は「家族愛」には多様な側面があるのだ、という事が、ここでは見事に描かれています。 優柔不断な弟が最後に見せる決断。この決断があってこそ、彼が、そして我々が、垣間見ることを許される、美しい瞬間・・・[映画館(吹替)] 9点(2020-08-23 12:28:34)《改行有》

6.  ニキータ 《ネタバレ》 アクション映画と言えばマッチョ系、という時代でしたから、女性を主人公にしたこの映画、とても新鮮でした。まだ「リュック・ベッソン? 誰それ?」ってな頃だったし。 主人公の成長物語と言えばそうなんだけど・・・最初の方では、不良グループの一員でラリってるだけのどうしようも無い存在、でも、まさか警官を撃たないだろうと思ってたら本当に撃っちゃったり、取り調べの最中に突然相手の手に鉛筆を突きさしたり(そういや『コロンビアーナ』にも少し似た場面があったっけ)、この頃の彼女は何をしでかすかわからない、規格外、自由奔放な存在。それが、訓練を通じ「ちゃんとした」女性となって、ついには外の世界にも出られるようになった彼女は、むしろ、がんじがらめで自由が束縛されてしまってて。 これって何だか、子供が大人に成長していく姿そのものみたいで。なんか切ないのよね。 で最後は、すべてを知ってしまって「いた」男と、ひたすら涙を流しながらひたすら抱き合う。ちょっとセンチ過ぎるかな、甘すぎるかな、と思わんでもないけど、ま、いいじゃないですか。マッチョ系では味わえない甘さ。[CS・衛星(字幕)] 9点(2018-11-15 21:01:05)《改行有》

7.  肉弾(1968) たぶん、軍国主義というもの自体が悪なのではなくって、人間の愚かさが、歴史のある場面では軍国主義と結びついて大きな悲劇を引き起こした、ということなんでしょう。人間の愚かさというものは消えることなく、今この瞬間にだって、大企業病なり、地方自治の腐敗なり、あらゆるところにあらゆる形で結びついて存在し続けている訳で。ただあの大戦では、それがどれだけ大きな喪失と悲劇をもたらしたことか。その大きさが、「平均寿命」という簡単な数字で示せてしまう皮肉。 軍国主義のせいと単純に割り切って、過去に封印してしまい、あえて忘れ去ってしまう、それもまた人間の愚かさ。何も変わっちゃいない。ドラム缶に閉じ込められたまま、人知れず波間を漂い続ける、やり場のない無念と怒り。 一方ではまた、人間の生のひたむきさというものがあり、ほんのちょっとした幸せというものがある。我慢した後の放尿のような、ちょっとした幸せ。 ちょっとシュールで(しかしそのシュールな世界は、人間の愚かさが実際に過去に生み出し、今後もいつ出現してもおかしくない世界でもある)、ひたむきな生を、寺田農がまさに身体の極限をつくして表現しきっており、圧倒されます。[CS・衛星(邦画)] 9点(2016-09-18 08:23:41)(良:1票) 《改行有》

8.  日本侠客伝 チャンバラ映画ではない、任侠映画。健さんを始めとする登場人物たちは、敵をバッサバッサと斬り倒しまくるスーパーマンじゃなくって、命がけで相手に立ち向かっていく、生身の人間なんですね。で、任侠映画であると同時に、いやそれ以上に、この作品は青春映画でもあります。片思いも含めた、幾組かの男女の物語。それぞれに、相手への想いがあり、テレみたいなものがあり、その一方で信念を貫くと言えば聞こえはいいけど要するに破滅の美学みたいなものがあって。こういうのこそ、ロマンチック、というのです。[CS・衛星(邦画)] 9点(2015-10-06 21:38:58)

9.  忍者狩り(1964) 浪人と忍者との戦い、どちらかというと私闘に近い物語ではあるけれどもこのオドロオドロしい雰囲気、まさしく東映の集団抗争モノの一本ということができます。とにかく暗いのです。そして壮絶。近衛十四郎父ちゃんが、城を失い帰属を失った浪人、他藩のためにいわば傭兵として宿敵に挑む浪人の凄まじいばかりの執念を見事に演じてます、顔のクドさにも負けぬくらい濃い役どころで、ハマリ役と言えるのではないでしょうか。他の雇われ浪人とともに、お墨付き書を狙う甲賀忍者の殲滅に挑む、という物語、タイトルは『忍者狩り』だけれども、狩られるのはどちらなのか。忍者の首領は、闇のクランドとかいう、滅法強いメチャクチャ強い謎の人物。“魔人”と言ってよいでしょう。主人公は外様の浪人の立場、味方の理解も協力も乏しい状態で敵と戦わねばならないのだけど、相手はこの恐るべき“魔人”、しかも主人公にとっては個人的な恨みを持つ宿敵でもあるもんだから、主人公の姿勢にも鬼気迫るものがみなぎってくる。そしてついに二人が相まみえるクライマックスの死闘!! 虚無感あふれるラストまで目が離せない、とにかく凄まじい作品です。[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-04-12 00:17:25)

10.  日本侠客伝 浪花篇 《ネタバレ》 第2作は大阪が舞台。そこにふらりと現れた東京ことばの健さんが混じる。他の俳優陣の関西弁はなかなか巧みで、違和感がありません。一方でムラタ英雄は九州ことばだったりして、ローカル色にも微妙な色合いを付けています。 健さんがやや唐突に暴れ始めるのでちょっと驚かされますが、この乱闘は遠距離から舞台を広くとっての長回し撮影。これにも意表を突かれます。 ライバル組の妨害で人手が確保出来ない中、果たして無事に荷出しを終えることが出来るのか?という場面で、救いの手である労働者の一群が駆けつける。エキストラ動員による群衆シーンが盛り上げる。と同時に、そこから一気に宴会シーンに飛んで、プロジェクトの成功までをテンポよく一気に見せる。別のシーンでは誰も文字が判らずに手紙を読めずマゴつく場面があったりするなど、まさに緩急自在の演出です。 宴会の直後(というか被せる形で)ムラタが襲撃され、あとは健さんが殴り込みするだけか、アレ、ちょっと映画短くないかい?と思ってたら、殴り込みではなく、ここで鶴田浩二の登場が描かれる。いわば二段構成です。 ここからまたドラマは拡がって、結局、ハデな討ち入りっぽい展開にはならないけれど、ラストシーンの主役二人の後ろ姿は、降り積もった雪景色の中に描かれて、やっぱり、イイなあ、と。[インターネット(邦画)] 8点(2021-05-15 20:47:21)《改行有》

11.  日本暴力団 殺しの盃 日本暴力団シリーズ、4作目にして早くも最終作。今回の鶴田浩二、サラリーマン風のネクタイ姿で、何となく冴えない風貌、なんですけどね。でも一応スゴ腕、らしい。 で、セリフは大阪弁。だもんで、少々聞き取りづらい。もちろん、大阪生まれの私が「聞き取りづらい」と言うのは、要するにあまり上手くない、ってことですが。相棒の大霊界こと丹波哲郎もまた、同様。でも、このたどたどしい大阪弁を交えつつトーストを分け合う2人を見ていると、ちょっと微笑ましい。そしてやっぱり冴えないサラリーマン風。それにしても大阪人のくせに、食パンと言えば5枚切りじゃないのかね(いや、時には4枚切りだって食べたくなるんです)。 それはともかく。監督変われば作品も変わる訳で、もうひとつ残念な出来だった3作目に対し、この4作目は降旗康男がメガホンを取ってて、するとどういう訳か、「日本暴力団」なのにちゃんと「男と女のドラマ」になっている、という不思議。男の意地と我儘があって、女の意地と一途な想いがあって、そうすると、「ヤクザ映画のラストはやっぱり殴り込みでしょ」という常識も、ああ、こんなクライマックスがあり得たのか、という驚きと感激に、早変わり。 のみならず、脇役では、これまた一途で、いかつい不器用さ故に観る者の心を打ち、またドラマにも波乱を呼ぶ山本麟一の存在が、とりわけ光っていて。 物語自体は、ナントカ組とかナントカ会とかが色々と登場して、正直、細かいところはよくワカラン(=面倒くさい)部分もあるのですが、別に隅々までワカラなくったって、充分に楽しめ、充分に感動的。おそらくは「組織」というものを描くことへの意識からか、画面上にやたら大勢の人物が収まっているショットが頻出するのですが、だからこそ、最後は「男と女」の二人へと収斂していく様が、印象的だったり。 いい映画です、これは。[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-06-01 19:51:16)《改行有》

12.  日本暴力団 組長 もはやタイトルを見ても、ヤクザ映画であること以外は何もわかりませんけれども。関東進出を狙う関西の巨大組織と、関東連合会とが対立する中、横浜を舞台に、しがない弱小組織たちが代理戦争を繰り広げるオハナシ。 刑期を終え出所した主人公・鶴田浩二、彼が所属する浜中組は、件の関西大手組織・淡野組と手を組んでいたが、代理戦争が激化する中で組長が襲われ、組長は淡野組と手を切るように主人公に遺言を残す。この辺りのゴタゴタの中、準主役かと思われた菅原文太が早々に死んじゃうんですが、その代わり、淡野組が次のパートナーに選んだ狂犬のごときゴロツキ軍団、あるいは関東連合会が送り込んだヒットマンが、物語に絡んできて、なかなか巧みなストーリー構成となっています。代理戦争を演じざるを得ない、吹けば飛ぶような存在の彼ら。特にヒットマンとその妻のエピソードが、印象的です。もちろんゴロツキの首領・若山富三郎も存在感を見せつけてくれますけれども。 まだ60年代の作品で、鶴田浩二の品の良さ、ってのは確かにあるんですが、そういう任侠テイストの一方で、後の実録路線を彷彿とさせるドキュメンタリタッチの部分もあって。だから、一種の「滅びの美学」ではあるのですが、キレイな「滅び」じゃなくって、もはや「破滅」の美学ですね。そういう、痛みを伴って心にしみてくるような泥臭さが、ここにはすでに兆しています。[CS・衛星(邦画)] 8点(2019-09-01 21:04:45)《改行有》

13.  紐育の波止場 《ネタバレ》 一種の恋愛物語ではあるのですが、まさにこれ、ハードボイルド。 色んな事が起こるけれど、一晩のオハナシなんですね。船員の男が女が出会って、惹かれ合って、その晩のうちに結婚までしてしまう。ああ、何て早まったことを、などと言ってはイケマセン。すべてが刹那的で、この夜の雰囲気の中では、あらゆることが起こり得る。実際にはそれぞれの登場人物が、それぞれの過去を引きずっているんだろうけれど。 しかし朝が来ると、すべてが終わる。出航する船とともに男は去ってしまう。・・・というところで終わっちゃってもアリかも知れないんですが、そこで終わらないのがミソ。出航した船から男はやおら海に飛び込み、女のもとに戻ろうとする、このシーンの衝撃的なこと。うん、たしかに、男と女が出会った際のことを思い起こすと、再会のために今度は男がここで「飛び込まなければならない」んだろう、とは思うのだけど、それ以上に、うわーホントに飛び込んじゃったよーという、このシーンの生々しさ。衝撃的ですらあります。無骨で不器用な男が貫いてみせる純愛。やっぱりこれ、ハードボイルドです。[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-10-16 22:14:49)《改行有》

14.  ニック・オブ・タイム 《ネタバレ》 おおよそ物語が進行する時間軸と映画の時間軸がおおよそ一致した(あくまで「おおよそ」であり、映画のテンポが優先されるところがミソ)、巻き込まれ型追い詰められ型サスペンス。いや~面白い。主人公が理不尽に追い詰められてナンボ、外堀埋められてナンボ、ですからね。孤立無援、これぞサスペンスの醍醐味です。娘を人質にとられた主人公は、ある人物の暗殺を強要される。その人物とは何と、カリフォルニア州知事。え~、それってもしかしてシュワじゃないの~。絶対返り討ちにあうよね。 という訳ではなくって、幸いにもこの当時はまだシュワ知事ではなく、狙われるのは女性の州知事。映画は正午に始まり、13時30分までに暗殺が実行されなければ娘が殺される。暗殺を実行すれば、自分はSPに射殺され、すべてが闇に葬られることは想像に難くない。何とか誰かに助けを求めることはできないか、と足掻くも、そうは問屋が卸さない、何しろクリストファー・ウォーケンだってこの映画の脚本を読んでいるワケだから、すっかりお見通しなのです(きっとジョニー・デップは自分のセリフの分しか読んでないからこういう目にあうんでしょう)。 一方でユニークな存在感を示すのが、靴磨きのオジサン。彼の存在自体が、物語の成り行きと密接な関係を持っていて、ラストの一撃が見事に効いてます。 人を楽しませることに関して右に出るものがない、というのが80年代のジョン・バダム監督であったなら、90年代にもその健在ぶりを見せたのが本作、と言えるでしょう。[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-12-04 09:48:19)(良:1票) 《改行有》

15.  ニュー・シネマ・パラダイス この劇場公開版と、完全オリジナル版ってのがあって、元は同じ映画のハズなのに、まーったく異なる印象の映画、それこそ真逆といっていいくらいの印象の映画になっている摩訶不思議。まるで手品のようです。さらには、「ニュー・シネマ・パラダイスの熱狂的ファン」ってのがいるけれど、実はそれぞれのバージョンに対するファンであって、場合によってはもう一方をケチョンケチョンに言ってたりする摩訶不思議(酷評されるのは多くの場合オリジナル版の方ですが)。まさに、編集のマジック、いやはや、だから映画は怖い。 コチラの方が、より肯定的な映画賛歌とでもいいますか、ひいては人生賛歌とでもいいますか。年月が経ち、すべては古び、年老いてしまった。だけど、過去は、失われてしまったものではなく、フィルムに残されている限り、またいつかどこかで出会えるもの。ラストは、ここだけ観りゃ相当おバカなシチュエーションですが、これをこの流れで見せられりゃ、やっぱり感動します。スクリーンを見つめるジャック・ペランの眼が濡れて光るその様は、どんな演技にも勝ります。 もっとも、フィルムを通じた過去との出会いと言うのは、本来は束の間のモノ、それがレンタルビデオの時代になって、我々はそれをちょっと安っぽくとらえ過ぎているのかも知れませんが。[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-05-05 16:26:56)《改行有》

16.  日本侠客伝 雷門の血斗 舞台は浅草、演劇の世界。健さん演じる主人公も演劇一座の興行主。え~ヤクザ映画じゃなかったの~というところですけれども、一座の前身はヤクザであったりして、はたまたそこに別のヤクザ一味の嫌がらせがあったりして、ちゃんとヤクザ映画路線になっていきます。これがアリなら「健さん演じる自治会長」とか「健さん演じる校長先生」とかでも日本侠客伝になりそうですが、いやいやいや。やっぱり演劇の世界を描いてこそ、本作の魅力があるのですね。少なくとも、本作の魅力は、主演の健さんよりも(実際、少し影が薄い気も)、脇を固める役者さんたちにこそありそうな。妙にツヤツヤした顔で朗々と浪曲を披露する村田英雄、まさにこれこそが「芸」だぜ、と言わんばかりのツヤツヤ顔。ほんとツヤツヤ(笑)。藤山寛美が意外にも重要な役で登場し、まあこの出演は寛美さんの破産と松竹解雇によるものかも知れませんが、いずれにしても、(多くの場面では目立ち過ぎないように控えつつ)ここぞという場面では寛美節をさく裂させて、ああ新喜劇ならここで拍手が起こるところだなあ、と。そしてそして、一番いいところを持って行ったのは、やっぱり元ヤクザとしての凄みをチラリと垣間見せる島田正吾でしょうか。こうなるともはや健さんも出る幕無しか、というところですが、最後のたち回りではダイナミックにしっかりと魅せてくれる。実際、本作で割を食ってしまったのは、女優陣ではないでしょうか(あと、長門裕之ね)。男の色気、芸の色気。[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-11-22 16:19:36)

17.  日本侠客伝 花と龍 「花と竜」を日本侠客伝の世界に取り込み、一介のゴンゾウだった主人公がやがてオヤブンになっていく、大河風の内容で、このジャンルの作品としては2時間弱とちょい長め。特に下積み時代の主人公を描く前半は、コミカルで明るい雰囲気です。主人公のタマキンがやたらと出来過ぎクンなんですけれども、健さんが演じれば、何となくイヤミが無いんですね。彼を招いたゴンゾウ仲間が二谷英明っても、一見違和感があるけれど、その後の展開を見れば、なかなかうまい配役。最初は主人公をやさしく見守るような立場で、後半主人公へそっと想いをよせる藤純子、ここが演技の見せ所とばかりムズカシイ表情を見せる場面もあれど、最後は晴れやかな表情なのが、イイんですね。モテる男とモテる女の組み合わせ、ちきしょー憎いね、と。[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-10-25 09:53:55)

18.  二十四の瞳(1954) オハナシだけに注目しちゃうとどうもピンと来ない。幼き日における学童と先生の交流があって、歳とともにだんだん皆離れ離れになって、と、そこまではいいとしても、この後、反戦丸出しになってしまうのがいただけない。かつての学童たちも戦争にとられて幾人もが命を失い、ああ悲しい、と。戦争によって奪われた過去。って、戦争さえなければ「過去」は失われない、ってな訳でもないでしょうに。誰にだって決して取り戻すことのできない「過去」がある、実際このオハナシも中盤まではそういう物語だったハズでしょ。どうしてその微妙なアヤを、「戦争」=「大勢の死」=「悲惨(なにしろ大勢だから)」という大味な方向にもっていっちゃうんでしょうか……。と、戦後の道徳教育(いわゆる「先の大戦」について、悲惨さ以外の観点で語ることを許さない流れ)にいささかウンザリさせられた世代としては、正直、こういうオハナシは苦手なんです。で、苦手なのに、映画ではちゃんと感動させられるんだから、参っちゃう(笑)。「歌」を交えることで場面場面をゆったり描くこと、それが(私の本来なら苦手な)あの戦後の同窓会のシーンに繋がってくる。取り戻すことのできぬ失われた「過去」とは、目の見えぬ者が「見る」あの写真であり、また流れてくる歌声であり。この場面を経由した後、ラストで雨の中自転車を走らせ、日常へと帰っていく大石先生の姿がたまらなくいとおしい。あと、この作品は『となりのトトロ』の原点だと思っています。大石先生が骨折し、大人を呼びに行く子供たちの走る姿、最後に画面の向こうに走り去っていく子供たちの姿は、とうもろこしを持って走っていくメイや、メイを探して走るサツキにそのまま受け継がれてます。さらには、母ならぬ大石先生を求めて迷子になってしまう子供たち、そして、そこにやって来るバス……。[CS・衛星(邦画)] 8点(2013-06-01 13:25:26)

19.  ニューヨーク1997 《ネタバレ》 カート・ラッセル演じる主人公スネークの反骨精神もさることながら、映画自体がまさに反骨精神の塊、「状況を説明してやるものか」とばかり、一人合点に映画は進み、「盛り上げてやるものか」とばかり、サクサクと映画は進む。このワケのわからなさ、とりとめの無さ、音楽の安っぽさ、それでいて網膜に焼き付いて忘れられなくなる光景の数々。これぞまさに“深夜放送映画”の王様ですな。ラストで(予想通り)カセットから音楽が流れた瞬間、ボーグナインのいかつい顔が脳裏をよぎり、ちょいと泣けてくる。[DVD(字幕)] 8点(2011-01-29 00:11:36)

20.  ニュー・ジャック・シティ マリオ・ヴァン・ピーブルズと言えば、『ジョーズ’87/復讐篇』で初めて観て、人懐っこい表情が印象的だったんですが。その後『エクスタミネーター2』を観てみたら(ええと、たぶん木曜洋画劇場です)、これまたマンガのようなスゴイ悪役ぶりで、大ウケしてしまいました。まさかこんなヒトが監督業に乗り出すとは夢にも思わなかったんですけどね。その彼の監督作品、いやがコレなかなかの意欲作。内容的に欲張り過ぎな面は確かにあって、黒人ギャングとマフィアの抗争があるかと思えば、警察側にも、人種間の摩擦や友情があり、ギャングへの個人的な憎しみがあり。虚飾に満ちた栄光、転落、そして不合理。という盛り沢山の内容で、これらを料理しきれずいささか散漫な印象は残ります。でも、いいじゃないですか。これだけ骨太な作品もなかなか貴重。丁寧な演出にも好感が持てます。監督本人も重要な脇役で登場し、端正な顔だちを見せてくれています。入魂の一作。[DVD(字幕)] 8点(2010-12-16 23:54:36)

030.08%
1190.49%
2411.06%
3731.89%
41604.15%
53629.38%
663116.35%
7121631.51%
888222.86%
93719.61%
101012.62%

全部

Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS