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1. 張り込み(1987)
うだつのあがらない刑事が「張り込み」という貧乏くじを引かされるが、そこで監視対象の女との思わぬラブロマンスが芽生える。見張る側と見張られる側とが「犯罪捜査」という一線を飛び越えて結ばれていくという、従来からありがちなストーリーをコミカルかつスリリングな演出で魅せる。
そこに警察組織におけるヒエラルヒーの悲哀や、張り込みの手口の面倒臭さ(ただし日本の刑事の張り込みのような辛気臭さはない)などが織り込まれるとともに、それらの要素を軽妙に体現してみせるリチャード・ドレイファスの千両役者ぶりが堪らない。あらためてみると、ドレイファスってかなりの美男なんだと気付かされる。
後半の派手なガン・アクションの展開は「張り込み」という主題からすれば、そこまで時間を割かなくても、という感じはしたものの、畳みかけるようなリズム感は観る者を飽きさせず、絶妙な娯楽作品である。[DVD(字幕)] 9点(2025-06-02 07:07:31)★《新規》★《改行有》
2. 晩菊
《ネタバレ》 人生の酸いも甘いも嘗め尽くしたような元芸者の熟年女性4人。
成瀬映画のお約束というべき「女の愚痴」のぶつかり合いが本作でも見どころだが、やはり男の身勝手に躓いた苦い経験がかえって彼女たちの今日のバイタリティや図太さを醸し出しているところが実に逞しい。
殊に、今やパチンコやギャンブルにうつつを抜かし、臆面もなく娘に金の無心をする望月優子のやさぐれ感はインパクト大。
中心的に描かれるのはがめつい金貸し業を営む杉村春子だが、彼女が昔の恋人と再会するとなった時に、普段はしないようなオメカシをしてソワソワするなど「乙女」の顔を取り戻すところが愛らしい。その相手である上原謙の色気たるや、男がみても惚れ惚れしてしまうほどだから無理もない。
また、みな戦中派だけに、その色恋沙汰にも「戦争」の傷跡が刻まれている点、そして「芸者」という職業の置かれた社会的地位をそこはかとなく表立たせている点が抜かりない。
全体を通して朗らかな演出であり、あえぎながらもウワバミのごとく「人生」を太々しく生きていく女たちの「強さ」が楽しめる。[DVD(邦画)] 10点(2024-12-29 21:04:12)(良:1票) 《改行有》
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