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1.  オデッセイ(2015) 《ネタバレ》 中国が米を助けると言うメッセージを勘違いしている人が多い。あれはアメリカの子分の日本が助けても意味がない。いがみあっている米と中国だからこそ意味がある。人が人を救うのは理屈じゃないというのが最大のメッセージです。だから嫉妬はやめておけ。また、原作ではたかが植物学者1人救うのに何十億の血税を使う気かよとワトニー本人が自虐的に言っていますが、それも「中国」のエピソードと同じで、人間の善意を完全肯定しているのが本作品の特徴だと気が付いてください。この物語の最大の魅力は、主役の描写が素晴らしいこと。そして彼の性格の描写はNASAとのやりとりによってはじめて浮き彫りにされていく。残念なことに映画では両者の喧嘩シーンが大幅にカットされている。NASAが主人公を飼い馴らすことができず、逆切れして「うぬぼれるなよ!」と吐き捨てるシーンや、「君の発言は全世界に生中継されているので気を付けろ」と恫喝した後に、すかさずワトニーが「おっぱい!」と返信するシーン。この反骨精神こそ、マーク・ワトニーの本質です。おっぱいは女性差別でカットされたらしいですが、それだったら「ちんぽ」でも良い。まさか男性差別にならないだろ。大事なシーンだったのでカットしてほしくなかった。ここでユーモアのなかに見え隠れするワトニーの強烈な自我が理解できるのです。強大な組織や、強大な自然にもまったく動じない彼の性格に全世界が共感し、応援できたのだと思います。さらに無人島と同じようなシュチエーションを描きながら、全世界から見られているというアイデアは抜群に新鮮。原作の楽しさは例えば「ワトニーあぶない、そっちに行くのをやめろ!まさか・・ワトニーでかした!君は天才だ!」というふうに、驕り高ぶったNASAが一喜一憂するシーンがメチャクチャ痛快で楽しいのです。この物語はもともとネット小説。ネットにはくだらない小説がクソのように存在する。そのクソのなかで3万回以上もダウンロードされて読まれたのだからちょっと普通を通り越している。原作は7ソルかけて読み終えました。この物語の最大のポイントは、世界各国の人々がマーク・ワトニーのことを、アメリカ人ではなく、地球人として見ていたことです。宇宙という存在は、人種や国家の概念を変えるほどの力はあると思います。人種や宗教や国家は違えども、同じ同胞である地球人を助けるために多くの人々が手を差し伸べたのです。そこを理解できないと、ピントのずれた不満だけが残るのでしょう。[DVD(字幕)] 9点(2016-08-16 13:45:44)(良:3票)

2.  メイズ・ランナー 《ネタバレ》 まず良かった点は4つあります。 ①3部作なので1では脱出できないと思っていましたが、ちゃんと脱出できたこと。現代社会はストレス社会です。われわれは脱出願望が非常に強い。迷路からの脱出は現実逃避のメタファーと見ることができる。現実からの脱出を映画のなかで体験しカタルシスを得ることができます。 ②この映画は15少年漂流記やロストとよく似ています。監禁状態は無人島と同じです。閉じ込められた人間集団は派閥を作ります。そしてミニ社会が形成されます。だからこういう映画はドロドロになりがちですが、思いのほかサラサラ系に仕上がっています。その理由は、脇役の韓国系俳優の存在が非常に大きかったと個人的に思います。トラブルメーカーを1人に抑えたこともよかったです。 ③シュチエーションが好みです。迷路のなかにいる謎の生物の正体が機械だったことも一層謎が深まってアイデアとしては良かったと思います。なによりも敵の正体が最後の最後まで分からない点が良い。これはキューブと同じ設定ですが、敵が何を考えているか分からずに翻弄される登場人物たちの描写がきちんと描かれています。 ④3話完結ですがちゃんと1話で完結している点は高く評価されて良いと思います。「迷路から脱出したら世界は滅びていた」というオチは悪くないと思います。たしかバイオハザード1も同じだったと思います。こういうのは好きです。 では悪かった点。 ①主人公が馬の骨だったこと。これは予算の問題もあると思います。しかしこいつは陰気くさくて共感できません。主人公が助かってほしいとは思えませんでした。 ②学園ドラマっぽいのはマイナス要素です。しかも男臭い。男は非常に臭い。全体を通してむさくるしい。窒息させる気か。 しかしあまり悪い点が見当たりません。全体的には合格の8点です。2も観たいですね。[DVD(字幕)] 8点(2015-10-12 19:31:59)《改行有》

3.  マレフィセント 《ネタバレ》 これは「ウィキッド」でしょう。ウィキッドは、誰も知らない、もう一つのオズの物語です。そして本作は誰も知らない、もう1つの眠れる森の美女です。どちらも共通するのは、歴史的に有名な悪女はじつは悪女ではなかったという点です。正直に告白すると、私はこの映画を観る前に結末を確かめました。もし、マレフィセントが死に、オーロラ姫が助かってメデタシメデタシというラストだったら私は観るつもりはなかった。それを私は心の底から恐れていた。しかし結末は完全無欠の予定調和だと知って、私は激しく安堵した。さすがディズニー。予定調和を嫌う観客もいるが、ハッピーエンドで何が悪い?リアルティが好きなら、映画を見ずに新聞でも読んでいろ。そう言いたくなってくる。映画は常にハッピーエンドであるべきだ。映画は希望だ、これが私の持論です。とは言っても、世間では罪には罰を与えよ!という意見があることも重々承知だ。つまりいくら悪人が更生しても悪人は最後にくたばってもらう。そして観客は悪人マレフィセントの死にざまに涙を流せという押し売り型の物語もよくある。私は断じてそのようなストーリーを受け入れるつもりはない。この映画のなかで悪役として登場するのはマレフィセントではなく王様だが、彼もマレフィセントを殺せるのに殺さなかった。生粋の悪ではないと思う。そういう何気ない描写も印象に残る。そしてマレフィセントの人物描写を決定づけるシーンはやはり憎むべきオーロラ姫をけっきょく愛してしまった描写だろう。オーロラ姫を憎みたいと思いつつ、どうしても憎めない。オーロラ姫は美人とは言えないまでも、どこまでも無垢な女性だ。彼女の心には悪も善も受け入れることができる純粋さがある。虚無に陥ったマレフィセントはオーロラ姫を救うことによって、自分自身が救われるという人生の1つの真実がそこに描かれている。つまり、人は人を救うことによって自分自身が救われるのだ。いずれにせよ、現実はもっと厳しいと思う人には向かない映画でしょう。いま、心が傷ついている人、将来に対する不安を抱えている人、失恋した人、優しい心を求めているすべての人に鑑賞してもらいたい。これぞファンタジー映画の王道です。久しぶりに泣きました。また、このような映画を泣ける自分の純粋さに満足しました。中年になっても私の感性はなかなかのものだ。いやぁ、映画って本当にいいもんですね。[DVD(字幕)] 10点(2015-08-16 20:32:14)(良:3票)

4.  ブルージャスミン 《ネタバレ》 セレブな姉の生き方と、幸薄な妹の生き方が対比されて描かれており、当然のことながら、貧乏な妹を幸せそうに見せています。つまり監督はこう言いたいのです→女性たちよ、背伸びして男を選ぶなかれ、妥協して男を選び、平凡なあなたの、平凡な人生を受け入れよ!というわけです。当の監督さんは凡人ではなく天才です。ですから彼は何度も女を捨てて再婚し、しまいには自分の養女にまで手を出して再婚してしまった。最近は子供の性的虐待も暴露されている。こんな監督に女性の本質は描けない。鑑賞前から私にはこのような先入観があったことを素直に認めましょう。それはさておき、この映画、身分の高いところから落ちた女性を描くことが主眼の1つですが、その描き方が実にうまい。社会の底辺をさまよう男2人組の演技が素晴らしいからです。ヒロインがテイヘン男に触られて穢された!ということが激しく実感できます。しかもK・ブランシェットと言えば、エリザベス女王のあの女優です。比喩的な表現として、このクソ2人に触れられるたびに女王様はどんどん汚されて壊れていきます。しかしよく考えてください。悪いのは元夫です。彼女は犯罪者ではありません。いったい彼女に何の罪があるのでしょうか?なぜ自業自得なのでしょうか?他人の不幸は蜜の味と言いますが、この女性の悲劇を、笑いのセンスがすごい!と、のたまいながら観られる人間にはなりたくありません。私は心が痛すぎてどうしても笑えませんでした。彼女の始めた勉強は、他人に依存しない生き方を模索しようとした一環だと考えます。失敗はしたがそれでも立ち直ろうとしていました。この映画は失恋して激しく女性を憎むようになった男が笑いながらざまあみろというための映画だと断言します。では謹んで0点を献上させて頂きます。[DVD(字幕)] 0点(2015-06-25 19:13:30)(良:1票)

5.  ゴーン・ガール 《ネタバレ》 夫に同情ができない。従って女性が悪女に見えない。この夫、例えば失業中ゲームに夢中、妻に暴力、挙句の果てに不倫、こんな自涜の習慣を持つ夫は当然法律で処罰されるべきです。もちろん離婚すれば問題解決ではない。女性の人生を台無しにした。やはり罪に対して罰は必要だ。しかし今の法律では夫を罰することができない。だから妻は悩んだあげくに不合法な方法で夫に罪を与えようとした。果たしてこの行為は悪なのか?それとも正当な報復なのか?非常に判断が難しいでしょう。1つ言えることは今の世の中、妻を傷つける夫が多すぎる。この真実に対する反論→「そんな男を選んだ女にも問題がある」→見事な責任転換です。こんな詭弁でなんの罪もない女性を悪女にするのですか?女性がDV夫に殺されるたびにこの詭弁が罷り通る。この作品のテーマは「怒り」です。男社会から虐げられてきた女性の声を代弁し、偉大なる「レンチシン」を持った1人の女性が、男社会に立ち向かう。監督の代表作「ドラゴンタトゥーの女」と共通しています。男社会には「女のくせに」という無意識の蔑視が存在します。ダメ夫はこう言う。「俺は女から批判されるのが一番むかつく!」これが女をモノ扱いにしてきた男の正体だ。「女のくせに」怖いな。「女のくせに」賢いな。黙れ、クソ野郎が。お前のようなクソ男が女性をいつも傷つけるのだ。お前こそ男社会の象徴だ。お前こそ無知の象徴だ、このような悪に対し、罰を与えようとした彼女の行動には正当性が感じられる。よって多くの観客は彼女に共感し、映像も艱難辛苦を乗り越え復讐を成し遂げようとする彼女に寄り添うものになっている。ストーカー男が殺されてかわいそう?それは男尊主義者の詭弁である。ではなぜ彼女は偉大なる目的を放棄し、夫の元に戻ったのか?それは夫を愛していたからだ。彼女が夫に正当な罰を与えようとした真の理由は、彼が己の罪を自覚していなかったからだ。しかし夫はその罪を認めた。その様子を食い入るようにTVで見守る彼女の表情は、まさに愛する女性の表情だった。それに対し、夫はまたしても妻を裏切る。くれぐれも世の中の夫たちは、妻に好かれていると勘違いしてはいけない。男社会が存在する以上、女たちのジハードは終わらない。男たちが女性から殺されない理由は、殺人の成功率の低さから生じる諦念によるものである。もし、確実に殺すことが可能ならばその権利はいずれ行使されるでしょう。[DVD(字幕)] 10点(2015-06-25 19:09:43)

6.  トランスフォーマー/ロストエイジ 《ネタバレ》 これだけ長いのに主要な登場人物の名前をさっぱり覚えることができないという恐ろしい映画でした。母親が離婚したことや、娘が思春期であることや、父娘の葛藤など、ロボット映画にヒューマンドラマを合体させることにより、私の予想を遥かに凌駕するバカ映画に仕上がっています。とくにバカ娘が恋人に対して「例のやつをやって」と言って、車でビルからダイビングするシーン。いつもデート中にやっているそうですが迷惑すぎます。こんなバカカップルのほうが人類の敵だ。お前らロボットの下敷きになれ。一番納得できないのは、何のために衆議院を解散したのか理解できない安部政権のように、なんのためにロボットが戦っているのか理解できないことです。ハゲの社長の行動も意味不明。殺意すら覚えるほど低俗なギャグを連発してイライラしていましたが、いつのまにか善人キャラになっている。私にとってこの社長の存在がバカの象徴でした。ちなみに人間の脳細胞は1日に10万個減少、多いときで14万個も減少すると言います。この映画の鑑賞後は15万個減少すると思います。今まで監督のことをバカだと思っていましたが、本当にバカでした。ここまでブレないバカを追求した監督に敬意を表し、この映画をきっかけに、マイケルバカと改名してもらいたい。 [DVD(字幕)] 1点(2015-01-04 17:02:13)(良:1票) 《改行有》

7.  シュガー・ラッシュ 《ネタバレ》  どうせアニメ、たかがアニメ、人はそう言う。しかしシュガーラッシュは大人も号泣できるヒューマンドラマだ。一度は自己嫌悪で苦しんだ観客ならば、「悪役」を職業とする主人公の苦悩に否が応でも共感してしまうだろう。しかも、誰からも愛されたことがないラルフが、図らずも逃げ込んだシュガーラッシュで、1人の少女から頼りにされてしまうという設定が神だ(泣) 嫌われ者というのは、本音では誰かに頼りにされたい。そのツボをジャストフィットしてくれた。終始、号泣だった。人生に疎外感を感じて生きている人間は絶対に観ろ。1番のミソは少女だ、もし彼女がウザイだけのクソガキだったら映画として成り立たない。しかし彼女は壊れかけたキャラなのに、恐ろしいほどかわいい。いや、壊れかけだからこそ、果かなさを感じる。本当に守ってあげたくなる。ディズニーの人物設定は、あんがい十字架を背負ったような重いキャラが多いが、それがレベルの高いヒューマニズムを生んでいる。ラルフの心理描写も抜群だ。みんなから愛されるヒーローになるために飛び出したのに、しだいに1人の少女だけのヒーローであり続けることにこだわりを見せ始める。あの手作りのバッチだけでも私は号泣できた。愛してくれる存在に気が付いたとき、ラルフは悪役である自分を肯定できるようになる。たしかにそうだ、自分を肯定できるきっかけとは結局こういうことなのだ。もはや宮崎監督にファンタジーの世界を生み出す神通力がなくなった現在では、アナと雪の女王しかり、ディズニーのファンタジーこそが日本人の心を鷲掴みにするのは自然の理である。昔、ドラえもん映画で、畳をめくるとそこは別世界という映画があったが、ファンタジーとは、現実と夢のギャップが大きいほど魅力がある。ハリーポッターでいえばダーズリー一家(現実)と魔法学校(夢)。つまりラルフの世界(現実)を厳しく描くのは意図したものなので、あまり住民の冷たさを責めてもしかたない。現実とシュガーラッシュのギャップこそが、ファンタジーの魅力なのだ。それと最近のゲームは主人公がリアルになった。体から血も流れる。しかしどんなに時代が進歩してもアニメのトリアージ(優先順位)はリアルとは別な方向にある。本作品のように最新のCG技術を駆使し、レトロなキャラを描く意味はそこにある。 [DVD(字幕)] 9点(2014-11-09 00:15:10)《改行有》

8.  チチを撮りに 《ネタバレ》 愛人を作って逃げたクソオヤジが末期がん。母親は「くたばる瞬間のミジメなオヤジの顔を写真で撮ってきて見せろ」と姉妹に命令する。ふつうはありえない。しかしこの姉妹がとにかくユルイ。「そんなの面倒だよ」と意味不明なことを言い出す。姉妹の醸し出すユルイ空気が美しい自然風景と重なって、絶妙な癒し効果を生んでいたと思う。姉の設定は水商売の女、妹は不登校生徒、ろくでもない子供だという設定にしているが、物語がすすむにつれて、この2人が母親からどのように育てられたかが分かってくる。その象徴が火葬場へ向かうシーン。「私たちはお母さんから人を恨むような育て方はされていない」「私たち2人はお父さんを恨んでいない」ということに気が付くシーン。このシーンはクソオヤジを恨んでいないという事実よりも、むしろ姉妹が母親からどのように育てられたのかということにはじめて気が付いたことに重点が置かれている。母親の無限の愛情を再確認する大切なシーンだ。しかし火葬場で姉がくたばったオヤジに対して「オヤジ、アンタには感謝していないけど恨んでもねえぜ」と言っていたことでもわかるように、けっして2人はオヤジに対して愛情が芽生えたわけではない。そこは力説しておきたい。ラスト間際で宝くじの売店で働く母親を眺める姉妹のシーンが素晴らしい。夢を買うよりコメを買うと豪語していた母親、1日も休まずに汗水たらして働く姿─、カッコ悪い母親だと思っていた。しかし今自分たちがこうやってまっすぐに誰も恨まず、妬まず、素直に生きていられるのは母親のおかげなのだ。久しぶりに泣いたと思う。それと笑いのシーンが意外と多い。深刻になりがちなストーリーだが、姉妹が道端の人に「いま、ヒマですか?早くしないとお父さんが焼かれちゃうので火葬場に連れてってくれますか?」などユルさ加減が絶妙だ。ラストで母親がクソオヤジの骨を川に放り投げて「テメエなんて食われてしまえ」と言ったら本当に魚に食われてしまうシーンがシュールで最高でした。映像は終始美しいです。[地上波(邦画)] 8点(2014-10-25 23:06:07)(良:1票)

9.  永遠の0 《ネタバレ》 「自爆テロと神風特攻を一緒にするな」と叫んでパーティーからとび出したお孫さん。これが映画のメッセージだと受け止めました。原作者はつい最近、亡くなられた偉大な女性政治家のことを「あの女は売国奴だった」と言った蛮人です。故人の悪口を言う人間は最低です。従って偏見を持ってこの映画を観たことを素直に認めましょう。ネトウヨたちは、神風は非戦闘員を殺さないからテロではないと言い張りますが、非戦闘員と変わらぬ年令の若者たちに爆弾を背負わせて自殺しろと言っていたのです。やはり同じテロ行為です。また、日本が殺人兵器であるゼロ戦や戦艦大和を美化する傾向は今に始まったことではありません。呆れます。自爆テロを行う日本人のほうを「被害者」として描くことにより、観客は問答無用に感動を誘導させられる。私は洗脳だと思う。ヒットラーは悪いがドイツ軍は被害者、オウムの教祖は悪いが、オウム信者は被害者、日本政府は悪いが特攻隊員は被害者、たしかに被害者に文句は言えない。被害者は権力者に逆らえなかった。もしくは洗脳されていた。そう思う一方で、この映画はその悲劇を逆手にとっている。いずれにせよ、世界の人々の考え方は神風=自爆テロです。もし、次のような映画ができたら共感できますか?9・11の実行犯は、聖戦(ジハード)から逃げてばかりいる臆病者と言われていたが、彼は愛する家族のために生きて帰りたかった。しかし聖戦で命を失っていく仲間たちを見殺しにできず、みずからが身代わりになろうとしてビルに突っ込んだ。そして仲間を救った。ビルに突っ込むシーンの音楽はもちろん久石譲だ。こういう映画が完成すればイスラム諸国は、涙を流してこの信者の行動に感動するだろう。しかし世界は感動しない。永遠の0も世界は感動しない。「なにかおかしいぞ」「世界の常識から逸脱しているぞ」と客観的に判断できる感性がありますか?ラストシーンで主人公が敵の戦艦に体当たりするときの憎しみのこもった目が印象に残ります。戦争は感動して観るものではありません。日本は震災や原発放射能で自信を失っている。国民が自信を失っているときは右傾化します。最近の日本はアジア諸国を挑発してばかりだ。だからこの映画に需要があるのです。私にとってこれは永遠のクソでした。[DVD(吹替)] 1点(2014-10-18 00:24:29)(笑:1票) (良:9票)

10.  それでも夜は明ける 《ネタバレ》 黒人のレブロンジェームズがキングと呼ばれ、同じく黒人のペレが王様と言われている現代ではにわかに信じられない事実ですが、白人の女性は奴隷の黒人の前では、自宅で平気で裸になったと言います。つまり、動物に裸を見せて恥ずかしがる女性はいなかった。過去の黒人は動物という認識だったのです。中には黒人に理解を示す白人もいたが、それは人間が犬に対して愛情を持つのとなんら変わらない。私は問いたい。「この映画を観て、黒人を痛めつける白人を残酷だという観客は、なぜそう思うのか?」答えが簡単です。我々はすでに黒人を動物ではなく、人間として認めているからです。だから私たちの感覚で、昔の白人はケシカランと結論付けるのは早計なのです。人は相手が動物の場合、今でも平気で自由を奪っている。たとえばロープにつるされたままの主役の黒人に驚くことなく、まわりの白人たちは淡々と日常生活を行っているシーンは、まさに動物に対する人間の態度なのです。ただしこの黒人はほかの黒人と違って自我を持っていた。黒人を動物と考える白人は、その黒人の自我に敏感に反応し、脅威を感じ、そして敵とみなした。いつしか黒人は韜晦したふりをして、生きる術を身に着けた。→「ワタシはニンゲンではなく、ドウブツです。」多くの黒人は動物のふりをし、白人はその態度に安堵した。そういう時代だったのです。人間は昔も今も残酷だ。ハンティングと言って、動物を殺すことを楽しむスポーツがある。過去も、現代も、そして未来も人間は常に動物と認めた生き物に対しては絶対的な差別を行っている。黒人は単に動物から人間に格上げされたに過ぎない。私は許さない。主役の黒人俳優は素晴らしい。同じ黒人俳優のデンゼルやスミスなどにはこういう演技は無理(かっこよすぎるから)艱難辛苦を他力で乗り越えるところは事実だから仕方ない。運命の波に翻弄されながらいつの間にか砂浜にたどり着いた人間の姿、その姿には正義も悪も、勝利も敗北もクソもありません。正当なヒューマンドラマとは、かくあるべきです。[DVD(字幕)] 9点(2014-10-05 19:49:11)

11.  ノア 約束の舟 《ネタバレ》 人間視点で見るとノアが狂人に見える。しかし、ノアは神の代理人として、人類をリセットする役目を担っていただけなのです。岩巨人の種族は滅びました。しかし観客は誰1人そんなことは気に留めません。艱難辛苦を乗り越えて、人類は愛によって救われた!という点だけが人間にとって大切なことなのです。これが人間視点です。この映画は、人間は悪なのか、正義なのか?という問いかけがあり、「やっぱり善だよ。だって愛は人間の特権だろ」と結論付け、それに上乗せするかのように、ハーマイオニーが「ノアさん。あんた、神の代理人だろ?あんたが人間を滅ぼさないと決めたのならば、それは神の意志と同じなんだぜ」と歪曲し、最後に人間万歳!と強引にハッピーエンドにもって行った。このように観客に過剰なカタルシスを与えることで、かえって娯楽作品に成り下がるケースは多い。ノアは廉恥心を持った人間でした。従って人類を滅ぼすことに意義を求めた。しかし世の中の多くの人間は廉恥心どころか、羞恥心すら失っている。実に嘆かわしい。この世の中に絶滅した生物は星の数ほど存在しますが、いかに人間はそれに関わってきたでしょうか。エサを求め、命をかけて下山したイノシシやクマを、人間は山に帰れと当然のように言いますが、言い換えるならば「おまえたちは山から下りず餓死して死ね」と言っているようなものです。しかしクマだって親なのです。お腹を空かした子クマのために命をかけて下山するのです。地球は一体誰の物でしょうか?害獣だと言ってたくさん駆除し、数が少なくなったら今度は手のひらを返したように天然記念物にして、人間のやさしさを見せつけようとする。とんだ茶番だ。動物を射殺する狩猟(ハンティング)だってスポーツである。動物をゲームのように殺して楽しいのか?冗談じゃない。人間は凶暴、残忍、非道の三拍子がそろっている。それでばつが悪いからと言って、人間自らが神や仏を創り出したのです。神は常に沈黙しているから、赦しを乞う人間たちにとっては都合良く解釈できる。ハーマイオニーが神の意志を都合よく解釈したのと同じです─。アーメン。[DVD(字幕)] 7点(2014-09-28 16:31:41)

12.  アップサイドダウン 重力の恋人 《ネタバレ》 美しい映像を楽しむための映画です。まるで大型美術館のなかに「二重重力の世界」が存在するかのようです。観客は美術鑑賞を楽しんでください。あくまでもストーリー重視ではなく、視覚重視の映画です。試されているのは観客の感性なのです。上と下の世界がそんなに遠くない距離にあるところが素敵でした。ロープを使って上から下へ。また下から上へ。面白いじゃないですか。遠そうで近い距離にある上と下の世界─。会社内ではジャンプをすれば、下の社員は上の社員にタッチできそうだ。しかし見た目は近そうでも、そこにはルールが存在し、実質的には遠いのですね。この上と下の、曖昧模糊とした距離感が絶妙です。もはやこのシュチエーションは芸術だ。恋愛の描写は素直にかわいいと思います。スパイダーマンよろしく、いつしかダンストは、アクロバットなキスをする女優と呼ばれるでしょう。それと青年のほうは必死すぎて笑えます。お前は体が燃えているのに彼女を追いかけるのかよ。残酷な現実が二人を引き裂けば、より一層強く惹かれ合う(by宇多田)というのは、天地開闢以来の恋愛の真実のようです。重力の都合でアクロバットなキスが多かった2人ですが、しっかりとセックスもしていたようです。さぞかしアクロバットなセックスだったのでしょう。やはりロープでどちらかを縛ってやったのでしょうか。さすがに映像化はできなかったようです。いずれにせよ、できちゃった婚で、メデタシ、メデタシ。ご存じの通り、この映画には矛盾が多いです。しかし私はこういう想像力に富んだアイデアを素直に面白いと思える感性を持った観客でありたいと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2014-09-21 20:47:22)(良:1票) 《改行有》

13.  ビザンチウム 《ネタバレ》 物語の本質は、共依存の母娘です。野蛮な男たちに虐待されて生きてきた母親は、自涜の習慣(娼婦)から抜けられません。彼女の自涜の念が我が娘には同じ道を歩ませたくないという強い思いにつながっているのだと思います。しかし娘を守るつもりが、逆に娘を精神的な牢獄に閉じ込めていることに気が付きません。従って娘の最大の親友は母親であり、母親だけが人間関係のすべてであり、母親以外には他人を愛する選択肢がありません。母親のほうは「私がいないと、この子は生きていけない」と妄念妄想にとりつかれています。ラストで母親が娘を手放したのは、母親自身が、娘から自立できたことを意味します。このラストシーンに未来の燈芯を感じます。また、この映画の吸血鬼は、己の力を誇示する生物として描かれているのではなく、あくまでもマイノリティとして、虐げられる存在として描かれています。悪の存在ではありませんが、人間を殺さないと生きていけないというジレンマがあります。そのために死を望んだ人間からのみ血を吸うという清貧な吸血鬼娘、遠慮せずにじゃんじゃん吸えよ。人間なんて、同族以外の生き物を殺しても、器物破損にするようなバカな連中なのだから情けをかけなくて良い。そういうわけで生きているだけで罪を感じている彼女の存在そのものが果かないです。その果かない存在と、美しい映像が見事に諧和しています。間違っても十字架が弱点の吸血鬼バトル映画だとは思わないでください。私は心が癒されました。弱者に救いの道が開かれる物語はやはり心があたたかくなりますね。[DVD(字幕)] 8点(2014-09-14 23:53:29)(良:1票)

14.  故郷よ 《ネタバレ》 ヒロインの仕事はチェルノブイリの観光ガイド。それだけでもこの映画を観る価値はあります。人の住めない場所に観光客が来るの?いずれ福島も観光名所になるの?不謹慎じゃないの?と思う人がいると思いますが、これをダークツーリズムと言います。ユダヤ収容所のアウシュビッツや、私がつい先日訪れた広島の原爆ドームも同じです。今も広島の平和祈念館は、崇高な目的を持った外国人観光客や、物見遊山な外国人がたくさん観光に訪れる場所です。天地開闢以来、人間は常に愚かな行為を繰り返してきました。その人災を語り継ぐことは、高遠な意義があると思います。ただし、ヒロインは長年その場所にいるせいで髪の毛が抜け落ちる後遺症で苦しんでいます。目に見えない放射能の怖さが伝わってきます。この放射能とは、空気感染するウィルスと似ている。今はまだ痛くもかゆくもないのに、北斗神拳のケンシロウに秘孔を突かれた時のように、おまえはすでに死んでいると宣告されるに等しい。映画の中で、男が傘をまとめ買いして、黒い雨を浴びる住民に配るシーンがありました。俺はもう死ぬのか?それともまだ生きられるのか?その不安な状態が一番こわい。即死のほうがマシに思えてくる。それほど放射能は怖い。放射能の汚れを落とすために観光客がシャワーを浴びるシーン。デブなおばさんの裸体がずっと映されていましたよね。あれは意味がないようで、おぞましいということを、隠喩として伝えたかったのでしょう。のんきに結婚式をやっている光景とは裏腹に目に見えない放射能の恐怖が迫っている描写も巧い。また、ゴーストタウンと化した街並みの映像は、あたかもゾンビ映画の世界のようだ。日本の場合、マスコミたちが、絆、絆と、事故のことを、能天気に感動物語にしている。やはり日本が現実を見つめるには時間が必要です。負の遺産を、負の遺産として描くことも改めて大切だと感じました。[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-08-23 21:59:30)

15.  ファミリー・ツリー 《ネタバレ》 家庭を顧みないクルーニーパパが、妻の死を悟ってようやく改心する内容。こんな夫に愛想をつかした妻は、本当に愛する男性と一緒になろうとした。しかし自業自得であるはずの夫が、死のうとしている妻に突然逆切れ!われわれ観客からすると、夫の八つ当たりが不思議に見えます。この夫は、妻のことを「所有物」としか見ていなかったのだと思います。だから自分のモノが他人のモノになろうとしたから激怒した。浮気された原因は、自分の責任だと考えていない。自分勝手な男です。妻のお父さんが怒る気持ちも分かります。女性を幸せにできなかった男には罪が存在し、その全責任を負う必要があるのです。娘たちがやばいです。子供を妻におしつけて放置したから当然の報いですが、このダメオヤジは妻が死なないと子供と向き合えないのでしょうか?娘の彼氏なんてドラッグ漬けで相当やばい奴です、俺の娘に手を出すなと言ってぶん殴るのが父親の役目じゃないですか。性格がいい?冗談じゃありませんよ。私が親だったらコイツは絶対に娘に近づけない。あげくのはてにこの夫、妻が死ぬ時「さよなら、わが妻、わが親友」というキザなセリフ。これで世の中のダメオヤジたちは、自分の奥さんがこん睡状態になったら同じセリフを言ってやろうと喜んで妄想しているに違いない。困ったものだ。死人に口なしと言いますが、もし妻が喋ることができたら、この自分勝手な夫になんと言うでしょうか?「あなたを赦してあげるわ」そう言うでしょうね。そうすると夫はまた激怒するでしょう。だってやっぱり、この夫、自分が悪いと思っていないから。許してやるという感情はそれほど傲慢なのです。じゃあ私もこの映画を許してやるとするか。 [DVD(字幕)] 5点(2014-08-20 19:49:51)(良:1票) 《改行有》

16.  そして父になる 《ネタバレ》 福山パパは、はっきりいって悪役です。金持ちで、エリート社員で、貧乏なご両親に対して常に上から目線で、悪徳弁護士と手を組んで、子どもを金で買おうとする、最高級のクソ男です。それに対してリリーパパは常に子供たちから愛されている。だから私はリリーパパには興味がない。やはり人間性が破壊されている福山パパに興味が湧く。福山の子供時代、突然母親がチェンジする。「俺はお前を母親と認めるつもりはない」←これは子供の立場からすれば正論だ。しかし今度は自分が突然チェンジする父親になる。新しい子供は憎々しい目で福山パパを睨む。「俺はお前を父親と認めない」という目だ。まさに因果応報!ここで福山パパは母親に電話をかけ、子ども時代の自分の態度を謝ろうとする。子供の人生を振り回す身勝手な親は死罪に値する。トラウマは一生付きまとう。子供が親を憎む権利は日本国憲法で保障されるべきである。しかし、親だって人生に振り回されながら生きている。被害者なのかもしれない。世の中はリリーパパのように子供から愛されるパーフェクトな父親ばかりではない。そう思うと勝ち組の福山が負け組に見えてきて応援したくなってくる。1つポイントがある。ケイタはひそかにカメラで福山パパをたくさん撮っていた。それを見てなぜ福山パパは泣くのか?彼は我が子から愛されていたことに気が付いたのだと思う。何を今さら、と思うかもしれない。しかし、幸せとは失ってから気が付くというのが人生のセオリーである。これが真の人間の姿だ。ラストはどうなったか?「時間」が勝ったのか?「血」が勝ったのか?子供を返すのか?返さないのか?くだらないことだ、事実(オチ)しか興味がないなら新聞で確認しろ。「物語」では結論は重要ではない。福山パパが、自分の愚かさに気が付き、悩み、暗中模索の中、前に進み、そして父になる、物語の本質はそこにある。私は福山の演技を非常に高く評価する。紛れもなく素晴らしい作品です。 [DVD(字幕)] 9点(2014-08-12 20:19:36)(良:3票) 《改行有》

17.  凶悪 《ネタバレ》 世の中には自分の罪を棚に上げて他人の罪を弾劾する人間が多すぎる、それは凶悪なピエールさんであり、あの偽善者の記者であり、そして私たち観客なのです。先生が記者に対し、俺をもっとも殺したがっているのはお前だ、と指摘するシーンは、お前=観客を暗示させているのだと思います。なぜ人は、人を裁きたがるのか?という視点から映画を解説します。凶悪なピエールさんと、凶悪な先生の罪よりも、むしろ偽善者の記者の罪が目に付く。母親を見捨てないというパフォーマンスをすることにより、悪人になりたくないと思っている記者の偽善、その偽善のせいで犠牲になる妻。決して自分の手を汚さないヤツだ。そう思わせておいて、しかし、じつは君たち観客も同じだろ?という問いかけがある。我々人間は、自分の罪には鈍感なくせに、他人の罪には敏感である。これこそあの先生が、記者に指摘した人間の本質なのです。キリスト教徒は神を愛する時間よりも、悪魔を憎む時間のほうが長い。同様に偽善を抱える記者は、汚れなき自分を愛し、汚れきった人間を憎む。ヤクザですら、俺は人殺しだが、じつは寅さんのように情にもろいタイプだよな~なんて善人きどりでほざいてやがる。アーメン。偽善者の記者が、偽善者の先生を裁こうとし、そんな光景をみて、偽善者の君たち観客が登場人物を断罪する。罪の自覚が無い人間に「赦し」の感情は芽生えません。だから嫌いな映画には、精一杯ブッコミをいれてください。自分のことを公平な人間だと思わないでください。常に自分は欠点のあるレビューワーだと自覚してください。そうすれば愚かなレビューを憎む感情は和らぐのです。やさしくなれるのです。この映画で監督が言いたいことは己の罪に対する自覚なのです。[DVD(邦画)] 7点(2014-08-08 22:10:16)(良:1票)

18.  風立ちぬ(2013) 《ネタバレ》 嫌がる子供にたいして、母親が無理やり宮崎作品を見せようとする光景がいずれ社会現象を起こすと予言したことがあります。いつしか、宮崎アニメは、芸術や子供の学習教材へと変貌し、無垢なる子供たちが、宮崎作品が出るたびに、泣きながら、親の接待をさせられる。まさにこの作品は、親にとっては「立派な作品」であり、子どもにとって「最低のアニメ」と言えるでしょう。むしろ、これを面白いと言うガキは末恐ろしいと思う。精密な殺人マシーンは大好きなのに、人殺しは大嫌いって、子どもに対するジョークとしては悪質すぎる。真に受ける子供さんもいるだろう。そもそも戦闘機や大和など殺人の道具でしかないものをカッコいいとほざく輩は頭が悪すぎる。今の時代、そのカッコいい戦闘機に殺されるのはいつだって小さな子供なのだ。1つ確かなことは、72歳の老人には、子供が愛するアニメを創作する気はさらさらないということです。しかもファンタジーとは正反対に、厳しい現実「死」が描かれている。結核で口から血を飛ばしながら、のたうちまわって苦しむ妻の前で、平気でタバコをガンガン吸う主人公。お前こそ肺がんでくたばれよ。彼の興味は殺人マシーンを作り上げることのみ。それを「夢」と称し、正当化している姿に怒り心頭だ。あげくのはてに、死期を悟った象のように、ひっそり姿を消す妻と対比して、殺人マシーンが完成して飛び上がって狂喜する主人公。どうか貴様に罰が当たりますようにと祈ってしまった。主人公の棒読み口調がさらに私のイライラをヒートアップさせてくれる。これを純愛とのたまうならば、完全に男尊女卑である。本来、宮崎作品とはすなわち、女性たちの、女性による、女性のための物語である。シータ、ナウシカ、キキ、クラリス、宮崎監督を一躍有名にさせた輝かしいヒロインたち。主人公が女性であることが宮崎作品の生命線だったのだ。その恩をあだで返すように、引退作品でまさかのヒロイン殺し。私が許せない点はこの一点に尽きる。[ブルーレイ(字幕)] 1点(2014-07-31 21:21:21)(笑:1票) (良:5票)

19.  ウルヴァリン:SAMURAI 《ネタバレ》 この映画は監督の諧謔心を笑い飛ばせるかどうかで評価が異なる。タイトルは狙い過ぎのサムライ。日本では野球選手もサッカー選手もすべてサムライにさせられる。今の日本、弱いくせにサムライが多すぎる。また、ウルヴァリンが逃避行の女性と突然セックスするが、どうしても恋愛に見えない。やはり日本=女性は従軍慰安婦扱いにしたいのだろう。ラブホテル火星探検は、世界最高レベルの日本のアダルト産業を暗示させている。日本人がいかにイマジネーションに富んだ変態なのかハリウッドが証明してくれた。さらに日本は女性軽視の国だ。従軍慰安婦、痴漢映像、レイプ映像、アダルト漫画など、日本男性独特の「変態」に反感を持っている外国人は非常に多い。赤パンツの法務大臣は日本の政治家の象徴だ。こういう奴が国会で女性にヤジを飛ばし、世界に恥を晒すのだ。極めつけは世界から異質の目で見られているパチンコのシーンだ。ギャンブルは必ず負けるが、負けると分かって戦うのが日本人の美学らしい。殺されると分かっていながら、真田が不死身の主人公に睥睨しながら向かっていく切ない姿はその象徴だ。こうやって1つ1つのシーンを紐解いていくと、犀利な洞察力を持った監督の視点から見た日本観が見えてくる。褒めているのか貶しているのか微妙なところだ。それから日本で起きる殺人の5割以上が家族内殺人である。監督はその統計をちゃんと考慮している。ヒロインは父親から命を狙われ、ラスボスの祖父はヒロインに爽快に殺される。いずれにせよ、この映画では日本の男は全員人間のクズなので、死ぬ価値は充分ある。さらに原爆の投下後のシーン。アメリカ人が原爆を落とす→そのアメリカ人から日本人が助けられる→涙を流して感謝する日本人。アメリカンジョーク、ここに極まれり!そして助けてもらったのに、義理人情の欠片もなく裏切る極悪非道な日本男児─。出てくる日本男児は悪人と変態のオンパレード。しかし私は日本人に媚びない監督の日本観が気に入った。しかも肝心な点は日本の真実を捉えていた。[DVD(吹替)] 7点(2014-07-28 20:37:17)

20.  スノーピアサー 《ネタバレ》 超のつく氷河期のため、外では誰も生きられない設定で、無理やり「人類」を、列車の中に詰め込んでしまうという大変イマジネーションに富んだ作品です。この映画を新聞の広告で知って、久しぶりに映画を鑑賞しようと思いました。最大の見どころは世界観の構築です。列車の扉を開けるたびに、新たな敵と、新たな世界が観客の視界に飛び込んでくる。奇抜な水族館、名勝庭園、なぜか寿司屋、それに学校、そして授業を受ける洗脳されたクソ生意気な生徒たち、次の扉を開けると、どんな世界が現れるだろうかと思わせてくれる。私は豪華客船や、豪華列車に興味がある。それは乗り物というよりも1つの居住空間であり、1つの世界だからです。そんな私の欲求をこの映画は満たしてくれる。同じ人がいたら是非この映画を観るべし。惜しむらくは、ラストが饒舌すぎる点です。親切に説明をするから、揚げ足を取る観客が増えやがるのだ。いっそのこと、こうしたらどうか?「なぜ列車に食料があるのか?」「なぜ武器があるのか?」「なぜ列車は壊れないのか?」「列車を動かす真の理由は?」と、主人公に言わせる。そのうち、観客も一緒になってその謎を考えるようになるだろう。そして、いよいよ主人公が最後の扉を開ける瞬間、エンドクレジットを流してやれ。最後の扉を半分開いたところで映画を終わらせるのだ。支配者も当然のことながら謎のままにしておく。観客ごとき、甘やかさずに、放置するのも1つの手である。過去にそういう映画があった─。ご存じの人もいると思うが、あのカナダ映画です。ただ、実際には、饒舌すぎる支配者が、延々と、主人公と、われわれ観客に、意味不明な演説をぶつわけだ。しかし、列車の中の身分制度のアイデアは世界観を構築するうえで重要だった。列車の中にちゃんと首相まで存在する。もしかして大臣もいたかもしれない。つまり列車の中に「国家」があり、そして「社会」が存在する。このように細かい個所までしっかり描くことで、より一層、この列車は、「人類を詰め込んで走っている」というファンタジックな感覚を、観客は味わうことができるのである。私はこの映画の映像美的センスを買う。[DVD(字幕)] 9点(2014-06-09 22:57:26)(良:1票)

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