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プロフィール
コメント数 1275
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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221.  トランセンデンス(2014) 《ネタバレ》 生命倫理の問題や、テクノロジーが神の領域にまで達しようとすることの是非、環境問題など、この映画にはとにかくいろんなトピックが盛られています。監督と脚本家は恐らくこれら全部を語りたかったんでしょうけど、キャリアの少ない彼らではこれを扱いきれず、ただのひとつも観客の興味を引くことなく終わっています。難解な題材を華麗に調理するクリストファー・ノーランという天才の下でしばらく働いてきた撮影監督が、「ノーランほどではなくても、それに近いものは自分にも撮れるのではないか」と考えてしまったことは致し方ないところですが、もっと地に足のついた、まずはワンイシューで勝負するところから始めていれば、映画としてはきちんとまとまったのではないかと思います。 監督はあまりに多い構成要素を捌くことにいっぱいいっぱいで、血の通った物語にしきれていません。元は人質として囚われていたポール・ベタニーにどんな心変わりがあってエコテロリストの参謀を務めているのかが不明だったり、一貫して自己中の悪人にしか見えないエコテロリストのケイト・マーラが途中から正義の扱いになることの違和感、モーガン・フリーマンの存在意義など、キャラクターの動かし方が総じておかしいのです。何より問題なのは、誰がどう見ても怪しさ全開の行動をとるAIウィルが、実は良い人でしたというオチに納得感が薄いこと。超越的な知能を持ち、文明社会の森羅万象を動かす力を持っているのだから、人類から猜疑心を抱かれないよう、もっとうまくやれよと思ってしまいました。これと併せて、遠隔操作可能な改造人間を作り始めるに至って、ようやく「最近のウィルって何だか気持ち悪いわ」と感じるようになったエブリンの異常な鈍さにも付いていけず、バカ夫婦の起こした珍騒動という印象が強くなっています。 そんな感じでトピックの扱いでも、人間ドラマでも失敗している本作ですが、救いはビジュアルの美しさで観客の目を楽しませることには成功していること。ノーランの映像美を最前線で支えてきた監督は、ここではきっちりと仕事をしています。 また、脚本レベルでは中盤以降、FBI、民間セキュリティ会社、エコテロリストの連合軍がウィルの要塞に攻めてくるという何とも燃える展開を準備してきますが、この下世話な部分が面白かったので、本作は憎めない作品となっています。人類側は「ハイテク兵器ではウィルに乗っ取られるから、旧式の銃火器で乗り込むぜ!」とやってくる。対して、ウィル側は障害者を改造して作り上げた不死身の強化人間軍団で陣地防衛。前半の真面目な雰囲気をぶち壊すこのバカさ加減には、私の中のB級魂が騒ぎました。また、結構真剣にテクノロジーを扱ってきた作品なのに、このパートではナノマシーンがほぼ魔法の道具扱いになっていて、このヤケクソ加減も私のツボでした。キューブリックの脚本をマイケル・ベイが監督したかのような歪さを楽しめるかどうかが、本作の評価を分ける点なのでしょう。私は嫌いじゃありません。[ブルーレイ(字幕)] 6点(2016-01-28 19:24:07)(良:1票) 《改行有》

222.  マシニスト 《ネタバレ》 脳内オチ系の話であることは冒頭から察しが付くのですが、監督もそこを隠すつもりはなく、観客にあらゆる点を疑ってかかられることを想定して全体が組み立てられています。オチを隠そう隠そうとして失敗する作品が多い中で、本作はある程度の割り切りのもとで作られているため、作り手と観客との間での温度感の差ができていません。これは見事な判断だったと思います。 虚構と現実の混ぜ方がよく、観客の先読みをうまく利用して仕掛けを作っています。例えば、主人公を取り巻く女性たちの扱い。本作には2人の女性が登場しますが、この手の作品を見慣れている観客ほど、主人公と二人っきりでの登場場面しかないスティービーを妄想の産物であると疑うのではないでしょうか。ネタが割れてしまうと、スティービーは物語の真相とは無関係なデコイであることが分かるのですが、そこにジェニファー・ジェイソン・リーをキャスティングし、ヌードまで披露させて何かしら重要なキャラクターであると錯覚させた辺りの騙し方はうまいものだと思いました。 細かい点では、何気ない日用品に現実と妄想との間の橋渡しの役割をさせている点も興味深く感じました。例えば冷蔵庫。あれだけガリガリに痩せたトレバーはこの1年まともな食事をとっていないことが推測され、ならばあの冷蔵庫は1年間ほとんど開かれていないはず。トレバーの生活において冷蔵庫はタイムカプセルのような役割を果たしており、その中には彼の妄想の源流となる何かが詰まっていると見せかけているのです。観客の深層心理においても、しばらく開けていない冷蔵庫には底知れない気味の悪さがあります。外食が続いた後で久しぶりに冷蔵庫を開くとカビの生えたごはんですよが出てくるような経験は誰もが身に覚えがあるだけに、開けてみたいけど、中にはとんでもなく怖い過去の遺物が眠っていそうで開けたくない、できればフタをしたままにしておきたいというトレバーの心境とうまくシンクロさせています。 そんなミスディレクションの一方で、妄想に入る前には主人公がうたた寝をしかける描写を毎回きちんと入れており、演出面でインチキをしていない点が好印象でした。物語は一定の法則性の中で描かれており、すべてのピースがきちんと嵌るように作られています。監督は自分自身に制約をかけて「なんでもアリ」を許していないため、見終わった後にも納得感の高い作品となっているのです。[DVD(吹替)] 7点(2016-01-26 16:22:12)(良:1票) 《改行有》

223.  アレクサンドリア 《ネタバレ》 拡大期にあったキリスト教が、現在のイスラム国やタリバンの如く多神教の文化や建造物を破壊しまくるという、かなり衝撃的な内容となっています。黎明期にローマ帝国より迫害を受けた歴史はしばしば語られるものの、一定の権威を獲得した後に従前の文化の破壊者となっていたという歴史はよく知らなかっただけに、本作の内容には驚かされました。 また、キリスト教の不寛容を描いた本作がカトリック国のスペインで製作されたという点も驚きなのですが、少しでも不備があれば文句がつきそうなセンシティブな題材にあって、監督のアレハンドロ・アメナーバルは文句のつけようのないほど徹底した完成度でこれに対応しており、作り手の気迫が画面ごしにも伝わってきました。CGに頼らず巨大なオープンセットを建設するという本物志向ぶり、モブシーンのド迫力など、歴史スペクタクルとして申し分のない仕上がりとなっているのです。 内容についてもどちらか一方の勢力を悪役に仕立て上げるのではなく、従前のローマ社会に大きな歪みがあって、社会システムからこぼれ落ちた弱者の受け皿としてキリスト教が拡大したという歴史がきちんと描かれています。基本的には人格者として扱われている主人公・ヒュパティアですら無意識のうちに差別的な言葉を使うという描写もきちんと挿入されており、歴史を多面的に描いて観客に問題提起しようとする姿勢も好印象でした。 問題点といえば、ヒュパティアがあまりに常人離れしていて、私を含めた一般の観客にとっては感情移入が難しいということでしょうか。信仰心はないものの、形式上はキリスト教に入信して批判をうまくかわしながら新旧文化の融和を図ろうとする弟子のオレステスと比較すると、敵対者にわざわざ攻撃材料を与えるかような言動をとるヒュパティアはうまくないなぁと思うし、その頑なさは、キリスト教側の強硬派・キュリロスと変わらないものではないかとの印象を受けました。[DVD(吹替)] 8点(2016-01-26 16:21:14)(良:1票) 《改行有》

224.  ラースと、その彼女 《ネタバレ》 かなり深刻な題材を扱いながらも、たまに笑いを入れて重くなりすぎないよう微妙な温度感まで調節された脚本と演出が素晴らしく、高評価にも納得の作品となっています。 ただし、面白かったかと言われると微妙。ラースの抱える心の闇がほとんど描かれておらず、また、ラースの異常行動に対する住民たちのリアクションも行儀が良すぎて、もうひと山を作れていないような印象を受けるのです。ドロドロの葛藤を描くべきとは言いませんが、たまにラースを傷つける人が現れて、順調に進んでいた治療が逆戻りするかもしれないというハラハラ感を出してもよかったのではないかと思います。 また、ラースの心境にフォーカスしても、マーゴとの距離が近づいた途端にビアンカを葬るという解決方法には違和感を覚えました。彼にとってラブドールのビアンカは現実の女性と同等の存在。都合が変わったからと言って、ビアンカを殺してしまうという選択肢はモラルに反しているように思いました。ビアンカはラブドールであることをラースに認識させた上で、次のステップに進ませるという解決にした方が、個人的にはスッキリしたと思います。[DVD(吹替)] 6点(2016-01-26 16:20:03)《改行有》

225.  ザ・ウォーク IMAX3Dにて鑑賞。 3D映画の第一人者と言えばジェームズ・キャメロンという風潮がありますが、10年以上前、2時間の映画を3Dで撮るという試みにもっとも熱心だったのはロバート・ゼメキスでした。彼の努力は技術的には一定の成果を挙げ、従来は数分間のアトラクション用だった3D技術を本格的に映画館へ持ち込み、ストーリーテリングと両立させることに成功しました。私は『ベオウルフ/呪われし勇者』を公開時に映画館で鑑賞したのですが、遊園地で見るような3D映像が2時間も続くことに大興奮したものです。ただし、ゼメキスが撮った3本の3D映画は高コストを回収できず、2009年の『クリスマス・キャロル』を最後にゼメキスは3D映画から離れてしまいました。その後、3D映画がどのように発展したのかは周知の通りです。 そんなゼメキスが3D映画に戻ってきたのが本作ですが、研究開発段階から3D技術に関わってきた御大だけあって、そこいらの監督の仕事とはレベルが違います。キ○タマが縮みあがるような映像の連続で、鑑賞後には手汗も凄いことになっており、特殊な状況を観客に疑似体験させるという点で、本作は究極のライド映画となっています。その没入感は『ゼロ・グラビティ』にも並ぶほどであり、これは史上最高クラスの3D映画と言えるでしょう。 脚本・演出は思い切ったもので、ドラマというものをほとんど描こうとしていません。自らの命をかけ、逮捕されるリスクを冒してまでもWTCで綱渡りしようとする男の気持ちなど観客に伝わるわけがないので、彼の心境を描くということを監督は完全に放棄しているのです。また、彼には多数の協力者が現れるのですが、彼らがどういう意図で集まったのかも詳しく描かれておらず、何となく人が集まってWTCに綱を張ったという荒っぽい展開となっています。とはいえゼメキスは『フォレスト・ガンプ』や『フライト』を撮った監督なのでそもそもドラマの扱いには長けており、適度にユーモアを入れながら、それなりに見られる形にドラマの体裁を整えているので、件の荒っぽさは鑑賞中にはさほど気にはなりませんが。[映画館(字幕)] 7点(2016-01-23 22:59:22)《改行有》

226.  インベージョン 《ネタバレ》 原作未読、1956年版未見、1978年版・1993年版は鑑賞済です。 おおよそ15~20年毎に映画化され、それぞれの製作年代の社会背景を色濃く反映するこの企画ですが、私が過去に鑑賞した1978年版・1993年版と比較して世相がもっともストレートに反映されたのがこの2007年版だという印象です。 「自我を捨てれば暴力も混乱もない平和な世界が待ってるよ」と言う侵略者に対して、「自我を失えば私は私じゃなくなる。そんな平和に価値は見いだせない」として断固抵抗するのが主人公なのですが、ここで興味深いのが、侵略者側の理屈ってアメリカ合衆国がイラクやアフガンでイスラム教徒に対して言ってることで、「民主主義は良いよ。男女平等は良いよ。欧米の価値観でみんな幸せになれるよ」と宣伝して回り、一見不合理であるイスラム教徒の価値観を頭ごなしに否定して紛争国を無理矢理にでもハッピーにしてやろうとする姿そのものだということです。一方、それに断固対抗する主人公は、「私たちには私たちの価値観があるのだ。それは何ものにも代えがたい」と言って一歩も引かないイスラム教原理主義者の姿と重なります。 思想による侵略の恐怖を描いた1956年版に始まって、この企画はアメリカ社会を被害者の位置に据えることが暗黙の了解となっているのですが、本作は初めてそこを逆転させ、アメリカ合衆国が他国に対して行っている侵略行為をSFというフィルターを通して描く企画となっています。SFを現実社会の合わせ鏡として考えると、これは最高のSF映画ではないでしょうか。さらには、過去の映画化作品を利用して観客の側に先入観を抱かせ、それとは正反対のものを見せてくるという裏切り方もよく、観客の知的好奇心を刺激するという点で、きわめて優れた作品だと思います。この驚天動地の発想の転換は、第二次世界大戦後にアメリカによる占領政策を受け、前世代のやってきたことを全否定する代わりに平和と繁栄を得たドイツ人監督ならではのものではないでしょうか。 ただし、上記の趣旨が上層部の逆鱗に触れたのかどうか分かりませんが、本作は完成後にワーナーから大幅な撮り直しを命じられ、それを拒否した監督は解雇。当時『Vフォー・ヴェンデッタ』でワーナーと仕事をしていたチームがピンチヒッターとして雇われ、ウォシャウスキー兄弟が脚本を、ジェームズ・マクティーグが監督を担当して後半部分をまるまる撮り直すという措置がとられました。その結果、スケールの大きな見せ場は追加されたものの、社会的な考察は薄められたように感じます。前半と後半で作風がまるで変わってしまうことの違和感は相当なもので、これだけ不自然な映画はブライアン・ヘルゲランド監督が解雇された『ペイバック』以来です。オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督が最初に完成させたディレクターズ・カット版を見てみたいのですが、興行的にも批評的にも大敗した本作では、それも難しいのでしょうか。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2016-01-19 15:01:08)(良:1票) 《改行有》

227.  SF/ボディ・スナッチャー 《ネタバレ》 過去4度の映画化作品の中でも最も印象的で、『ボディスナッチャーズ』と言えば本作を連想する人が恐らく最も多いであろう作品。確かにその完成度には素晴らしいものがあります。 問題が顕在化する前でも不安定なカメラワークや耳障りな環境音、薄気味の悪いキャラクターの挿入等で観客に何ともいえない不快感を与えており、この内容にふさわしい雰囲気が醸成されています。社会が変貌していくことの恐怖、知り合いが別人格となっていくことの恐怖、そして自分自身も望まぬ変化に襲われるという恐怖の描写は克明かつ的確だし、睡眠不足に耐えながらの逃避行という主人公たちの疲労感までが観客に伝わってくるため、一種のライド映画としても機能しています。70年代の社会派SFでありながら見世物映画としての面白さも兼ね備えており、さらには観客を絶望感で打ちのめすオチのつけ方も秀逸で、極めて上質な娯楽作となっているのです。 ただし話の展開は遅く、「すでにネタが割れてるんだから、早く次に行ってよ」という部分でも相変わらずもったいぶった演出をされて、説明的な部分では少々退屈させられることがマイナス。製作年代を考えれば仕方のないところではありますが、もう少しテンポアップして欲しいところでした。[DVD(字幕)] 7点(2016-01-19 15:00:00)《改行有》

228.  イングリッシュ・ペイシェント 《ネタバレ》 文芸作品としての上品な風格とハリウッド映画らしい大作感を両立した作品であり、そのルックスはほぼ完璧。「これは何か賞をやらなければ」と思わせるだけの仕上がりだし、一方で同年には他に突出した作品がなかったこともあって、作品賞を始めとするオスカー大量受賞には納得がいきます。アカデミー会員が求めるものを、ほぼパーフェクトに充たした作品なのですから。ただし「面白いか?」と聞かれると、これはちょっと微妙と言わざるをえません。 ざっくり言うと不倫で身を持ち崩した男の話なのですが、その舞台が第二次大戦前夜というキナ臭い時代だった上に、登場人物達の背景に国際的な諜報戦も絡んできたことから悲劇は雪だるま式に折り重なっていき、最終的には大勢の人の死に繋がっていくという劇的な展開を迎えます。そのまま映画化すればさぞや面白かろうという内容なのですが、厄介なことに、監督とプロデューサーは恐らく意図的に娯楽性の高くなりそうなポイントを外してきています。本作の評価はこの点をどう受け止めるかにかかっており、この手の文芸作品が好きな人にとってはストーリーテリングにおけるこの独特な取捨選択がハマったのかもしれませんが、それ以外の観客にとっては、盛り上がりそうで盛り上がらない中途半端な展開にフラストレーションが溜まる結果となっています。 具体的には、足を負傷したキャサリンを砂漠の洞窟に残して救助を求めに出て行ったアルマシーが、その国籍ゆえにスパイ容疑をかけられてキャサリンを助けに戻れなくなるというくだり。タイムリミットサスペンスの要素とも相まって、詳細に描けばかなり面白くなったであろう展開なのですが、監督は驚くほどアッサリとこのパートを流してしまいます。その過程において売国行為にまで手を染めるという、アルマシーにとって分岐点となったイベントも簡単なナレーションのみで片付けられており、その意思決定の時点でアルマシーが抱えていたジレンマはほとんど描かれません。監督によるこの取捨選択には大きな疑問を持ちました。 他方、無駄に感じたのが看護師ハナの物語全般です。映画は現在パート(1944年)と回想パート(1938年)を行き来しながら進行するのですが、現在パートにおけるハナと爆弾処理兵キップとの恋愛が本筋にうまく絡んでいない上に、この物語がさして面白くもありません。ハナとキップは登場させず、間接的に加害者となってしまったアルマシーと、アルマシーの売国行為によって重大な損害を受けたカラヴァッジョの対話を現在パートの基礎とした方が全体的な話の通りは良くなったような気がします。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2016-01-18 19:18:00)《改行有》

229.  リピーテッド 『メメント』と同様に前向性健忘(新しいことを覚えられなくなる記憶障害)を扱った作品なのですが、本作ではさらに設定が追加され、主人公は40歳であるが意識は20歳の状態で、間の20年間の記憶がないというお話となっています。新しいことを覚えられない上に、過去の記憶も大幅に失われている。これはなかなか怖い設定で、例えば私は30代なのですが、朝目覚めた時には自分は中学生だと当然に思い込んでるわけですよ。でも鏡を見ると、確かに自分なんだけど異常に老けた顔があると。そして隣で寝ていた知らない人から「君はもう30過ぎなんだよ。で、うちらは夫婦なんだよ」と言われる。さらに、いかにも怪しい医者から電話がかかってきて、「僕らは秘密の治療をやってるから、今日も迎えに行くね」と言われる。何を信じていいのか分からないが、疑っていても物事が進まないから、とりあえず言われるがままに動く。しかし、自分は良いように操られているだけではないのかという不安は常に付きまとう。自分のバックグラウンドを解明しようとしても、記憶は一日しかもたないから情報の積み上げができない。本作冒頭は、この「何が何だかわからん」という空気感や主人公の抱く不安が見事に描写されており、なかなかの滑り出しとなっています。 ただし本編に入ると、短い上映時間の割には退屈さを感じさせられる内容となっており、サスペンス映画特有の緊張感も作り出せていません。序盤の素晴らしい空気感は維持されているし、メインキャスト3名の演技も素晴らしいので作品は破綻していないものの、大きな山場を作り出せておらず、すべてが淡々と進んでいくのです。 本作の問題点のひとつとしては、寝ると記憶がリセットされる主人公に焦りがないという点が挙げられます。寝たら終わりというサスペンスは、過去にキッドマンが主演した『インベージョン』と同様のものなのですが、生物にとって避けられない睡眠というイベントからどうやって逃げるのかにフォーカスしてなかなかの緊張感を生み出していた『インベージョン』と比較すると、本作の主人公は睡眠を普通に受け入れているため、ひとつの山場を逃しているのです。 また、上記の通り記憶の積み上げができない以上は、一日で真相まで辿りつかねばならないというタイムリミットサスペンスの要素も持った作品でもあるのですが、そんなおいしい部分も素通りしてしまっています。過去20年間の主人公の歴史を辿る物語に重きを置いてしまったために、前方性健忘というもうひとつのコンセプトが希薄化したという印象を受けました。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2016-01-15 12:03:37)《改行有》

230.  ラスト・リベンジ 元はニコラス・ウィンディング・レフン監督、ハリソン・フォード主演で製作される予定だったものの、レフンが離れたことからポール・シュレイダー監督、ニコラス・ケイジ主演に落ち着いたという本作。メンバーのグレードが下がったことの影響は作品にはっきりと表れていて、「もうちょっと何とかならんかったかなぁ」という結果に終わっています。 まず、ニコラス・ケイジがミスキャスト。主人公の設定年齢とケイジの実年齢があまりにかけ離れているため、ドラマへの感情移入が難しくなっています。50代になったばかりのケイジではまだまだ若々しくて、死の迫ったヨボヨボの老人が国際テロ組織に潜入するというサスペンスがまったく表現できていません。銃を撃つ時の立ち姿なんて『フェイス/オフ』の頃からさほど変わっておらず、あれだけシャキっとアクションをこなされると、作品の趣旨を見失いそうになります。他方、かつてのジャック・ライアンであり、現在は小走りするだけでも「大丈夫か」と心配になってしまうハリソン・フォードが主人公を演じていればどれほどハマっただろうかと考えるにつけ、このキャスティングが残念で仕方ありません。 ポール・シュレイダーの演出も、相変わらず垢抜けしません。脚本家としては一流でも監督としては残念なことの方が多い御大ですが、本作についても主題を効果的に描くということができていません。健忘症で怒りっぽい主人公が、たまに目的そのものを忘れながらも私怨からテロリストを追いかける様は、対テロ戦争を戦う現在のアメリカ合衆国の暗喩なのだなぁということは分かるのですが、「だから何?」という、暗喩の先にある主張がよく伝わってこないので、意義のある鑑賞にはなりませんでした。作品の要となるような印象的な見せ場も作れていないし、ドラマとしてもアクションとしてもまるで見所のない作品となっています。監督は、スタジオから作品を取り上げられて勝手に編集されたことを嘆いていましたが、出来上がったものを見る限りではそもそも高いポテンシャルがあったようにも感じられず、この出来であれば監督自身が仕上げてもスタジオが仕上げても、どちらにしても大したものはできなかったのではないかと思います。[ブルーレイ(吹替)] 4点(2016-01-15 12:02:25)《改行有》

231.  チャイルド44 森に消えた子供たち スターリン政権下のソ連を舞台としたサイコサスペンスという極めて異色の作品なのですが、言論の自由がなく、うっかり正論を言えば強制収容所送りが待っているという閉塞的な雰囲気作りには成功しており、設定はきちんと活かされています。 舞台となる1953年はスターリンが死去した年に当たり、そのスターリンは当時のソビエト連邦を社会主義の完成形として位置付け、そこは理想的な社会なのだから社会問題などあるはずがなく、不平不満を訴える者は須らく反革命分子であるとの対応を行っていました。他方、彼の死後に政権を引き継いだフルシチョフは現実路線をとっており、社会問題の存在を認識した上で、それをどう解決するかという方向性での国家運営をしていました。外形上のジャンルは刑事ものでありながら、こうした国家体制の大きな流れも作品内に取り込んでおり、なかなか含蓄ある作品に仕上がっています。当初はリドリー・スコットが監督することを想定して企画が進められていただけに、決して甘い作りにはなっていないのです。 ただし、ファーストカットの上映時間は5時間30分を越えていたという噂が示す通り、膨大な構成要素の処理に失敗してあらゆることが不完全燃焼のまま終わってしまい、いろいろと納得感の薄い仕上がりとなっています。連続猟奇殺人の捜査、官僚達によるパワーゲーム、仮面夫婦だった主人公夫婦が真の絆を獲得する物語、これらが作品の3本柱となっているのですが、そのすべてを2時間強で収めることには相当な無理があったようです。 そもそも、身の危険を冒してまで主人公が殺人捜査にこだわる動機付けがないため、ドラマへの感情移入が難しくなっています。主人公の上司となるゲイリー・オールドマンにしても、彼は「将軍」と呼ばれ、かつては実力者だったが何らかの理由で権力者と衝突して閑職へと追いやられたことが仄めかされるものの、その背景については具体的に説明されないため、こちらもどう捉えていいのか分からないキャラクターとなっています。敵役となるジョエル・キナマンが主人公を陥れることに固執する理由もよく分からず、その奥さんに色目を使い始めることも唐突であり、すべてのドラマがうまく流れていません。 クライマックスではトム・ハーディ、ゲイリー・オールドマン、チャールズ・ダンスという良い顔の男達が揃って殺人課が新設され、これがエピソード1だったことが判明するのですが、本作が興行面でも批評面でも成果を挙げられなかったことを考えると、シリーズ化は難しいようです。このメンツであれば続きを見てみたい気もするだけに、本作の不発は残念でした。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2016-01-12 20:24:30)《改行有》

232.  日本のいちばん長い日(2015) 《ネタバレ》 太平洋戦争を描いた戦争映画として見ると不満が出るようですが、政治劇としてこれを見ると、なかなかの完成度で満足させられます。本物志向のセット、質の高い演技、時系列に沿って丁寧にまとめられた脚本と、映画としてよくできているのです。本物志向すぎて一部よく分からないセリフがあり、私はブルーレイで日本語字幕を表示しての鑑賞としたのですが、そのような難解なセリフは本編における重要性の低い部分に集まっており、肝心な部分でははっきりと聞き取れる言葉が選択されているという配慮もありました。実に丁寧に作られた作品なのです。 本編中、もっとも感情的となるであろう阿南の自害場面においても大袈裟な音楽などは流さず、また、その死に際して部下にも家族にも感傷的なことを言わせず、全員が涙も流さずに死を受けいれた辺りに、本作の姿勢がよく表れています。戦争もの、特に太平洋戦争を扱った作品では情緒を全面に出したものが多い邦画界において、ここまで淡々と事実(と思われる事項)の描写に特化した作品は稀少であり、その点は非常に高く評価できます。 結論は明らかであるが、実行者がいない。本作は意思決定のプロセスを描いた映画でもあります。満身創痍の海軍は一刻も早い終戦を望むが、一方で本土決戦用に温存されていた一部の陸軍将校達は、自分たちだけが無傷であることへの負い目もあってか、本土決戦を主張します。しかし、本土決戦をやったところで戦況は好転せず死者が増えるだけであることは誰の目にも明らかであり、こうした一部の過激派の暴発を抑えながら、どうやってあるべき結論にまで辿りつくかが作品の焦点となります。毎日大勢の死者が出ている中で、意思決定機関は何を悠長なことをやって時間をムダにしていたんだと虚しくなりますが、日本人の国民性って、結構こんなもんだったりします。冷静な判断が必要な局面に限って、精神論を唱える一部のグループの意見が優先され、あるべき結論が遠のいていく。仕事で自分自身が出席している会議等に置き換えて本作を鑑賞すると、果たして自分は鈴木貫太郎や阿南惟幾のような立場をとれるだろうかと不安になります。 以上、基本的にはよくできた作品なのですが、不満を挙げるならば、陸軍将校によるクーデターの経過が分かりづらかったという点でしょうか。陸軍将校達は首都圏に所在している様々な軍にクーデターへの参加を求めますが、軍同士の力関係や、それぞれの組織が誰に意思決定を支配されているのかという説明、陸軍将校達がどの軍を味方に引き入れればクーデターの目的が達成されるのかといった成功ラインの提示がなかったため、ラスト30分は劇中で何が起こっているのかを掴み損ねました。[ブルーレイ(邦画)] 8点(2016-01-12 20:21:36)《改行有》

233.  ブリッジ・オブ・スパイ 視覚的な見せ場が売りの作品ではないものの、それでも時代の再現度は壮絶なレベルに達しているし、U2偵察機撃墜場面やベルリンの壁構築場面の迫力は凄まじく、スピルバーグはスペクタクルの巨匠であることを再認識させられました。 他方、肝心のお話しの方はイマイチでした。正義漢でもない主人公が、なぜ汚名を着せられてまでソ連のスパイの弁護を引き受けたのか。命の危険を冒してまで東ベルリンへと飛んだのか。その辺りが明確に描かれないため、掴みどころのないドラマとなっているのです。 また、法廷闘争や人質交換交渉においては、目的に対して何が問題になっているのか、そしてそれをどうクリアーするのかという形で論点が整理されていないため、そこにスリルやドラマを醸成しきれていません。主人公があっちからこっちへと動き回って、何人かの人と話しているうちに何となく問題が解決していくという流れであるため、感情的な引っ掛かりが少ないのです。この辺りは、もっと引き締まった作りにして欲しいところでした。[映画館(字幕)] 6点(2016-01-09 02:44:50)《改行有》

234.  ブラックハット 《ネタバレ》 マイケル・マンと言えば昔気質の職人的な犯罪者の描写を得意とする、というかその手のキャラクターしか扱えない監督であるにも関わらず、本作では遠隔操作での戦いが見せ場のハッカー映画を撮るという大冒険をしていますが、結果は「やべ、俺向いてねぇわ」という監督の脂汗が見えてきそうな映画になっています。 内容は支離滅裂。とはいえ元からこれだけおかしい企画が通ったとは思えず、そもそもはちゃんとした内容だったが、監督が素材を扱いきれなくなったことから突貫での書き換え作業が始まってメチャクチャになったのではないかと推測します。つっこみどころがあまりに多いため、以下に箇条書き。 ・囚人ハッカーに捜査協力を依頼するなら、レクター博士みたいに鉄格子の向こう側で作業させればいいのでは。なんでわざわざ現場に出すの。 ・FBIは、囚人ハッカーと中国から送り込まれた女プログラマーに国内捜査をほぼお任せ状態で、彼らに対してロクに監視も付けない ・NSAは、いま時うちの母親でも騙されないようなフィッシング詐欺に引っかかって極秘扱いのスーパーコンピューターを不正使用される ・香港にスリーマイル島と同じ型の原発がある。アメリカ人がイメージする原発は須らくあの形なんでしょうか。 ・中国政府は、原発事故の現場に外国人の囚人ハッカーを出入りさせて、状況を丁寧にレクチャー。原子炉の管制室に入って極秘情報がたっぷり詰まったサーバーを回収するという作業まで外国人にお任せする。 ・テロリストの行動が、そもそもの目的と一致していない。インドネシアの錫鉱山を水没させる計画の予行演習で中国の原発をメルトダウンさせようとか、どういう判断基準してるの。普通逆でしょ。 ・そもそも金儲けが目的なら全世界の証券取引所をハッキングし、目立たぬよう広く薄く稼げばいいのでは。アメリカ政府と中国政府を同時に怒らせるという、地球上で最大のリスクをとった理由が分からない(一応、敵ハッカーにはドでかい事件を起こして世界に存在をアピールしたいという個人目標があったようなのですが、そんなものに付き合ってリスクを冒すテロ集団なんていないでしょ)。 ・テロリスト、市街地で銃撃ちすぎ。対戦車ロケットランチャーまで持ち出すし、香港は無法地帯か。これではテロ捜査関係なく、地元警察に普通に逮捕されるでしょ。 ・米中双方の捜査官が全滅した後、なぜか犯罪捜査に関してはド素人の囚人ハッカーとプログラマーカップルが勝手に捜査を引き継ぐ。両国の捜査機関に駆け込んで事情を説明する方が早くて確実なのでは?捜査官が殺された以上、捜査機関も真剣に動くし。 ・お尋ね者の囚人ハッカーが、捜査機関からのバックアップもなしに簡単に入出国する ・戦闘については素人のはずの囚人ハッカーが異常に強い。銃を持った複数人のテロリスト相手にドライバー一本で勝利してしまうという、どこのジェイソン・ボーンですかという大活躍。 主人公が囚人であることと、ハッカーであることという企画の骨子部分が製作途中で邪魔になったのか、普通のFBI捜査官を主人公にしてしまった方がスッキリしたのではという仕上がりに落ち着いたことはマズかったと思います。また、米中が共同で捜査をするという設定をとった以上、相容れぬ立場にある者同士の確執や、捜査の壁等も織り込むべきだったと思うのですが、中国政府の製作協力を取り付けたいという事情でもあったのか、劇中の中国当局がとにかく物分りがよくて何にでも快く応じてくれるため、本来あるべき展開がスッポリと抜けてしまっています。これではアメリカ国内に舞台を限定しても、同様の作品ができてしまいます。 確かに『コラテラル』にだっておかしな点は多くありましたが、あの映画は男の寓話であり、設定の整合性やリアリティを多少犠牲にしてでも語りたいドラマがちゃんと見えたので、一本の映画として評価できました。しかし本作には、そういったものすらありません。一応はアメリカ人ハッカーと中国人プログラマーのロマンスが作品の要になっている様子なのですが、二人がどうやって惹かれあったのかが不明確で、いきなり関係がスタートするため、感情移入は難しいものになっています。結果、ちょっと長めの上映時間で、ありえない話を延々と見せられる。これはしんどかったですね。[ブルーレイ(吹替)] 3点(2016-01-05 14:48:51)《改行有》

235.  フォーカス(2015) 《ネタバレ》 思いもよらぬオチを用意するだけでなく、直前までオチの存在に気付かせないこともドンデン系の映画には必要だと思いますが、その点で本作は完全に赤点。本編中に盛り込まれた仕掛けの数々は確かに凄くて、よくぞこれだけ考えたものだと感心したし、伏線の回収にも成功していて決して甘い作りの映画ではないのですが、冒頭から小細工の連続では観客側もすべてを疑ってかかるため、ドンデンをかまされても「ああ、そうですか」としか思えません。そもそも、これだけウソが横行し、「さっきのやりとり、実は○○でした」みたいなことを短時間のうちに何度も何度もやられてしまうと、映画を真面目に見ようという気が失せてしまいます。私の集中力が継続したのは前半のニューオーリンズパートまでで、後半のブエノスアイレスパートになると完全に飽きてしまいました。 本作には詐欺師とカモとの間でのウソと、詐欺師同士のウソのふたつがありますが、後者のウソはドンデンまで伏せておくべきでした。詐欺師同士の会話では真実を語っていると見せかけておいて、最後にこれをひっくり返す。こういうメリハリが必要だったと思います。 また、ロマンティックコメディとしてもイマイチ。せっかく詐欺師を主人公にしているのだから、いくら相手に思いを伝えても額面通りに受け取ってもらえないというすれ違いのドラマにすればいいものを、主人公二人はアッサリと恋に落ちてしまうため、これといった見せ場がないのです。一般人にとっては感情移入の難しい詐欺師カップルがくっついたり離れたりを何度か繰り返して、最終的に一緒になれてめでたしめでたしというお話では、何の面白みもありません。 最近パッとしないウィル・スミスは得意とする伊達男役に復帰し、22歳も年下でフェロモン全開のマーゴット・ロビーの隣に立っても見劣りしないほどの色気を漂わせているものの、映画の出来がこれでは、せっかくの彼の存在感と必然性がないのに執拗に強調される肉体美がムダになっています。[ブルーレイ(吹替)] 4点(2016-01-04 15:48:24)(良:1票) 《改行有》

236.  誘拐の掟 『96時間』の大ヒット以降は暗い過去を抱えた暴力オヤジ役をひたすら演じ続け、もはやどれがどれだか分からなくなりつつあるリーアム・ニーソン。本作の主人公マット・スカダーもその系統のキャラクターであるためニーソンはいつものニーソンではあるのですが、80年代にもジェフ・ブリッジス主演で映画化されたことのある人気ハードボイルド小説を原作とし、『アウト・オブ・サイト』や『マイノリティ・リポート』で知られるスコット・フランクが脚色を担当したことから、作品のクォリティは従前のニーソン作品と比較して格段に優れたものとなっています。 ひょんなことから舞い込んだ依頼や、思わぬ相棒の登場など、前半部分は探偵ものの定石に当て嵌めた作りとなっており、これら一種の様式美が微笑ましく感じられます。点と線をつないでいく捜査過程にはビジュアル的な刺激が少ないため少々退屈させられるのですが、この部分ではかなりの情報量がコンパクトにまとめられており、ひとつのセリフを聞き逃すと全体を見失うおそれがあるため、まったく気が抜けません。この辺りはただ情報をまとめるだけではなく、もっと動きのある展開にしてくれると良かったのにという点が不満でした。 ただし、新たな誘拐事件が発生し、犯人との直接交渉が始まると、映画は急速に熱くなっていきます。ゲスな犯人に対抗する主人公のタフネゴシエーターぶりがとにかくかっこよく、切れ味抜群な言葉の応酬戦だけで、ド派手なアクションを見せられているような高揚感があるのです。この辺りはスコット・フランクの面目躍如、素晴らしいものをみせていただきました。クライマックスに向けて妙に説教臭くなっていくのが玉にキズですが、事件が解決しても「めでたしめでたし」では終わらない陰鬱な空気感は最後の最後まで維持されており、探偵ものとしては優れた作品だったと思います。[DVD(吹替)] 7点(2016-01-03 01:38:27)《改行有》

237.  パージ:アナーキー 《ネタバレ》 前作には低い評価を下したものの、続編である本作は実にいけるバイオレンス映画として仕上がっていました。 籠城戦だった前作からは一転して、本作では無法地帯となったロス市街地が舞台となり、ガトリング砲で人をミンチにするわ、固まって避難していたホームレスを火炎放射器で焼き殺すわのやりたい放題。主人公は射撃や格闘に精通し、状況判断にも長けたザ・ヒーローという感じの男で、その活躍は文句なしにかっこよく、「そう、こういうのが見たかったんだよ!」と頑固なバイオレンスファンを納得させるだけのビジュアルを叩きつけてきます。お話の方もユルユルだった前作からは一転してソリッドな仕上がりとなっており、なかなか気が抜けません。状況が悪化し、観客側のフラストレーションが最高潮に達したところで反撃!というテンポの作り方もよく、なかなか見入ってしまうのです。また、これだけの残虐ショーを繰り広げておきながら、クライマックスでは暖かさすら漂うというドラマ部分の味付けも絶妙であり、前作で感じた不満がほぼ解消されてお釣りがくるほどの仕上がりとなっています。 あえて不満点を挙げるなら、政府による介入や、反政府組織の登場など、ちょいと世界観を拡大しすぎで扱いきれていない設定があったかなということは気になりましたが、これについては現在企画中の『The Purge3』の仕上がり次第でしょう。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2016-01-02 00:24:06)(良:1票) 《改行有》

238.  パージ 《ネタバレ》 1年に一度、12時間だけあらゆる犯罪が罪に問われないという着想は独創的で素晴らしかったし、年一度のガス抜きにより残り364日の治安が飛躍的に向上するという社会的な利点や、自己防衛手段を持たない弱者の間引き手段でもあるという裏の機能までがきちんと考えられており、突飛な基本設定でありながら、あの世界では受け入れられた法律であるということを観客に納得させるに至っている点でも感心しました。 ただし、良かったのは設定がテンポよく説明される冒頭15分のみであり、よくできた設定とは裏腹に本編の方はユルユルでガッカリさせられました。バカな奴がバカなことをしでかして事態が悪化していくという、この手の映画で一番やって欲しくない方法で物語が進んでいくため、いちいちストレスが溜まります。娘の恋人が突如親父に発砲してきた。さらには正体不明の人間が家に紛れ込んでどこに潜んでいるか分からないという状況で、娘が一家からはぐれてしまった。こんな逼迫した局面でありながら、残された一家はチンタラと会話をしたり、バラバラに行動して隙を作りまくったりで、見ていてイライラさせられっぱなしなのです。一刻も早く娘を回収して防御態勢を築くべき状況にありながら、一向にそれを実行に移さないというのはどういうことなのかと。 そもそも、一家の息子がホームレスを匿ったために惨劇が始まるのですが、あの子が見ず知らずの人を助けようとした背景がまったく描かれないため、「なぜそんなことを」と誰しもが思ってしまいます。本作では人命の扱い方がメインテーマとなっているにも関わらず、主要登場人物が元来それをどのように捉え、そして極限状態でどう変わっていったのかが明確に描かれていないためそこにドラマが発生しておらず、納得できなかったり、突飛に感じたりする展開が多くなっています。もっとも不自然に感じたのは主人公たる親父の心変わりで、このままではパージャーの群れに襲われてホームレスも一家も皆殺しにされるという状況下にあって、いったんはホームレスを突き出そうという意思決定を下すものの、直後にそれを覆します。この判断がどう考えても不合理であり、ショットガンや自動小銃で武装した十数人の若者を相手にした戦いに嫁・子供を巻き込んでまでホームレスを守ろうとした理由がサッパリわからないため、本編中もっともドラマチックであるべき箇所で疑問符の嵐となってしまいます。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2015-12-31 01:10:26)(良:1票) 《改行有》

239.  スター・ウォーズ/フォースの覚醒 IMAX3Dにて鑑賞。 全銀河に及んだ戦争もスカイウォーカー家のドラマもEP6で綺麗に終わり、これから先にどんなドラマがあるんだと不安だったEP7ですが、相変わらず銀河は内紛状態で、依然として権力を掌握しているのは暗黒の勢力であるという基本設定には少々ガックリきました。EP6のラスト、帝国倒れてよかったね!のお祭り騒ぎは一体何だったのかと。 しかし、そんな苦しい基本設定を流せば、本編はドラマとアクションが見事に調和した、完成度の高い娯楽作に仕上がっています。物語の大枠はEP4をなぞったものなのですが、ドラマと見せ場の密度、話のテンポは70年代とは比べ物にならないほどのレベルであり、やや長めの上映時間にも関わらずダレ場は一切なし。演出の絶倫ぶりには驚かされました。新キャラクター達はみな魅力的だし、事前の予想以上に旧キャラクター達の見せ場も多く、キャラクター劇としてもよくできています。また、劇中いくつか提示される謎についてもおかしな引っ張り方はせず、本作である程度ネタを明かしてくれるのでストレスなく鑑賞することができました。EP6の続きを作れと言われて出て来る、ベストの作品が本作ではないでしょうか。それほど面白かったです。 細かい点で言うと、兵器やガジェットのデザイン、世界観や用語についてはEP6まででルーカスが構築したものを基礎としており、本作オリジナルの要素を極力持ち込まなかったという点も良かったと思います。EP1~3が不評だった理由をきちんと分析し、ファンが望むスターウォーズを作り上げているのです。 失敗した点としては、観客の興味を引くほどの強烈な悪役がいなかったという点でしょうか。予告の時点で期待されていたカイロ・レンは、登場場面こそ死ぬほどカッコよかったのですが、その後どんどんヘタレキャラと化していき、ラストでは『マイティ・ソー』のロキをも下回るほどの醜態を披露。投影でのみ登場するファースト・オーダーの大親分にもかつてのパルパティーンのような重厚さがなく、頼みのルークが出て来てくれれば簡単に勝ててしまうのではないかという無用な安心感があります。[映画館(字幕)] 8点(2015-12-19 14:06:46)(良:2票) 《改行有》

240.  ワイルドカード(2014) 《ネタバレ》 情に厚い用心棒が、女に暴力を振るう極悪マフィアと全面戦争!かと思いきや、ギャンブル依存性のステイサムが、「人生って何じゃろねぇ」とか言いながらラスベガスを彷徨う珍妙な映画でした。マフィアとのトラブルは意外とアッサリ片付くし、ラストでは、数日行動を共にして仲良くなった優しいIT成金から50万ドルをポンともらって(お前は猪瀬元知事か)人生のやり直しをさせてもらうという超ご都合主義。アクション映画としてもドラマ作品としてもこれといった見所がなく、見て損したと思うレベルの作品でした。 気の良い悪人役のステイサムはいつもながらのハマり具合であり、抜群の安定感で作品の基礎となっていますが、本作についてはステイサムが演じるからこその不満点もありました。いつものステイサムなら大暴れして敵をなぎ倒し、観客に溜飲を下げさせる場面であっても、本作では実力行使にためらいがあって、見ている側からすると何ともスッキリとしないのです。この辺りの欠点は、監督が作品のカラーを決め兼ねたことが原因ではないかと思います。例えば『ハミング・バード』も本作と同傾向の作品でしたが、そちらはドラマ畑のスティーブン・ナイト監督の色がはっきりと出ており、「これはアクションを見るための映画ではありません」という共通認識が作り手と観客との間で自然と出来上がったおかげで物足りなさは感じませんでした。他方、本作の監督はサイモン・ウエスト。よほど気が合うのか『メカニック』『エクスペンダブルズ2』に続きステイサムとは三度目のタッグとなりますが、そのフィルモグラフィを見ればわかる通り、アクション映画しか撮れない監督です。裏街道の人間模様を描くことには不慣れだったし、たまに出てくる殴り合いも血生臭いバイオレンスではなく、ステイサムの身のこなしをカッコよく見せるための華麗なアクションとして撮られているため、ドラマの方向性と見せ場の印象がバラバラになっているのです。ラストの大立ち回りなんか最悪で、主人公があれだけ強いのなら最初から暴れてればよかったのにと、余計にモヤモヤが残る結果にしかなりませんでした。 唯一面白かったのは冒頭。ハゲのステイサムが他人のヅラをむしり取り、ハゲ頭を笑いものにするという倒錯したやりとりのみ楽しめました。[ブルーレイ(吹替)] 4点(2015-11-30 09:16:10)《改行有》

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