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プロフィール
コメント数 2251
性別 男性
ホームページ https://twitter.com/BM5HL61cMElwKbP
年齢 52歳
自己紹介 あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

2024.1.1


※映画とは関係ない個人メモ
2024年12月31日までにBMI22を目指すぞ!!

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241.  白ゆき姫殺人事件 《ネタバレ》 夕子の言葉『みんな自分に都合の良いように言う』は、なにも赤星の取材対象者に限った話ではありません。彼女自身は元より、物語上『謎解き』に該当する城野の回顧文にさえ当てはまります。嘘偽りだけでなく、自身すら気づかない改編もあるでしょう。事実を認定することは出来ても、それが真実とは限りません(だから「真実はいつもひとつ!」と能天気に断言する探偵さんにモヤるんですけど)。斯くもあやふやな『真実』が流通しているのが実態です。こうなると『信じたいものを信じる』のもアリな気がしますが、おめおめ騙されるのも癪な話。少しでも真実を見極めたいのが人情です。この際大切なのは自分の頭で判断すること。権威、宗教、思想等の『ものさし』を機械的に利用するのは要注意です。これらもまた『自分に都合の良いように言う』の例外ではありません。城野父のように『世論』という『ものさし』に踊らされぬために。疑問を持つこと、反省すること、広い世界を知こと。意識して自らに負荷をかけ、健全な心身を保つことが、後悔しない明日に繋がると考えます。人間、楽に慣れるとロクなことがありませんから。おっと、今日も日課のウォーキングに出かけなければ。 SNSと対比されるのが、アンとダイアナによる灯交信でした。情報量、スピード、伝搬力、どれをとっても蝋燭の火と比べるべくもありません。ただ、唯一勝る点があるとすれば、それは「相手を思いやる心」なのでしょう。ここに居る。あなたを気にかけている。それだけのメッセージで救われる命もあります。「昔は良かった」とは思いませんし、進んだ文明の針を戻すことも出来ません。SNSに限らず、包丁だろうが、原子力だろうが、あらゆるテクノロジーの基本は同じ『諸刃の剣』です。私たちに出来るのは『正しい目的』で使用すること。危険性を知ること。トラブルの対処法を身に付けておく事も肝要であります。主人公に降りかかった災難は、今や交通事故と同じ。いつ誰が被害者だけでなく加害者になっても可笑しくありません。ラスト赤星が城野に轢かれかけたのはそういう意味。SNSに規制をかけることも必要ですが、それ以上に使用法の教育が重要なのは言うまでもありません。本事件を『他山の石』としない手はありません。 ネットの声やマスコミにより『世論』が形作られていく過程は、私たちが経験している日常と相違なく、十分なリアリティと恐怖をもって物語に望めました。そんな観客の思いを受け止める当事者・城野美姫を演じたのが井上真央さん。証言者ごとに『城野美姫』は姿を変え、実体を掴ませません。この演じ分けはお見事でしたし、美人女優が平凡・地味女を演じる違和感がまるで無かった事にも驚きました。演技派女優の実力を思い知りました。『八日目の蝉』を越えて、本作を井上真央さんの代表作としても良い気がします。[インターネット(邦画)] 8点(2020-10-10 17:23:40)(良:1票) 《改行有》

242.  ミッドナイト・バス 《ネタバレ》 ネタバレあります。ご注意ください。 家族の終焉を描く物語。妻は嫁姑問題でいち早く離脱、娘は起業し家を出て、息子は異国へ旅立って行きました。寂しい事ではありますが、遅かれ早かれどの家族にも訪れるイベントです。たんぽぽの綿毛が飛び立つように、今居る場所から別の場所へ。辿り着いた先で根を張り、また新たな家族をつくります。多くの生物がその種族を繁栄させるために採用しているシステムとも言えます。さて、最後に残されたのは夫でした。大仕事終えた男の、今後の身の振り方や如何に。残りの人生、自由気ままに謳歌する道もあったでしょうが、彼が望んだのは新たな家族の構築だったようです。余力があるオスとして正しい選択に思えますが、如何せんタイミングが遅い。遅すぎます。一つ仕事をやり終えてから、次の仕事に取り掛かりたい気持ちは分かりますが、自分の都合だけで仕事は出来ません。ましてや協働必須の家族構築であれば尚更のこと。初婚ではないにしても、若い女性の貴重な時間を無為に奪った罪を、彼はきちんと理解しているでしょうか。今カノに別れを告げた件は、確かに彼女の将来を慮っての事でしょう。でもその背景には、元妻と復縁の青写真がチラつきます。要するに男は“独りになりたくなかった”だけでは。パートナーは元妻でも今カノでも、どちらでも良かった気がします。そもそも元妻との離婚も、夫が真剣に家族と向き合っていたら避けられた話。コニタン、そんな男がいいんですか。生活拠点はどこにする?家計の分担は?子どもを望む?本気で2人の将来を見据えていたら、課題を放置などしません。物分かりのいいコニタンは「一定の距離を保ってくれて楽だ」と言いますが、男に覚悟が無いだけです。コニタンほどのイイ女であれば、誠意のない男など袖にして問題なし。コニタンには情に流されぬ賢明な判断を期待します(注:本文中のコニタンとは小西博之ではありません)。 物語を整理してみて、改めて「良いお話じゃないな」と思います。泰造はダメ男でしょう。でもこれが結構標準的な男の姿という気もします。私も面倒な案件は後回しにしますし。そういう意味では、模範的ではありませんが、リアルな人生の有様が描かれていたと思います。それに子どもがちゃんと巣立ったのですから、十分合格点の『家族』ではありますし。さて、これからの2人について。結局コニタンは泰造を受け入れる気がします。やっぱりモテ男は強いですから。悔しいなあ。私が脚本家なら、「復縁なんて、許可しません(ハート)」でワインを頭から掛けてやりますけども。で、そのあとチューな(ツンデレだな)。 見慣れた景色が多数出てくるご当地映画で、本作の深夜便はライブ遠征等で大変お世話になった路線です。という諸事情込みで、若干甘目に採点しております。[インターネット(邦画)] 8点(2020-09-25 18:54:48)(良:1票) 《改行有》

243.  TENET テネット 《ネタバレ》 数式は単純なのに難解を極めるのがシェーン・カルース監督の『プライマー』とするなら、複雑な数式なのに何となく分かった気にさせるのが本作『テネット』という気がします。難解であっても絶妙なさじ加減で理解を促し、娯楽性を担保するのがのノーラン監督の流儀です(注『プライマー』も難解ですが傑作ですのでみんな観てね!)。とはいえ、そこは『インターステラー』『インセプション』『プレステージ』の監督さん。単純に「面白かったね」で終わらせられる代物ではなく、作品世界の底は計り知れません。また、これらの作品と比べても格段に敷居が高いのは間違いないでしょう。いや正確には敷居が高いというより、わざと解りづらく仕立てている気がします。省略が多く説明不足。台詞は言葉足らずです。これは観客に複数回の鑑賞を促すためではないかと。鑑賞2周目以降に少しずつ意味が分かる仕組みです。本来なら誉められた趣向ではありませんが、こと本作に限ってはこれ以上ない価値ある仕掛けと考えます。過去に鑑賞した自分と、これから2回目を観る自分で挟み撃ちをするのですから。観客もまた現実世界でテネットの世界を体験する仕立て。これぞ極上のエンターテイメントではありませんか。とは言いつつも、やや敷居を高くし過ぎた気がしないでもありません。ブブカでも躊躇する位。でもノーラン監督は信じていい監督です。チャレンジすれば必ずや飛び越えられように出来ているはずです。テネットとは、主義・信条のこと。本作もまた、世界の理を人で説くノーラン的人道主義の映画でした。いち個人が幸せを掴むことでさえ、莫大な労力と知恵、周りの人たちのサポートが必要であると本作は訴えている気がします。[映画館(字幕)] 8点(2020-09-20 13:27:56)

244.  ツングースカ・バタフライ ―サキとマリの物語― 《ネタバレ》 『副題が付いている映画に名作なし』が私の持論。外国作品を輸入する場合、副題を採用するのは戦略として理解しますが(でも『一期一会』って何だ?)、自国映画で副題付きは基本的にアウトです。ワンセンテンスでビシッと決めなくちゃ。野比のび太~健やかに大きくどこまでも伸びて欲しい~とか無いでしょ。情報を追加したいなら、キャッチフレーズを利用すればいい話。わざわざ副題で内容を説明するのはカッコ悪いです。で、本作の場合。観客へのプレゼン3点セット(タイトル、ビジュアルイメージ、キャッチコピー)から、亜紗美主演のアクション映画ということが分かります。副題は“ヒューマンドラマあります”のアナウンスでしょう。しかしながら、この情報必要ないのです。ビジュアルイメージ(ポスターデザイン)とキャッチコピーから容易に推測できるのですから。つまり無駄な情報。無駄は嫌いってDIOも言ってましたよね。3点セットで発信できる情報は限られているのに、厳選していない時点で企画の作り込みが不十分と判断します。案の定設定は甘々で、ハードボイルドには程遠い半熟ゆで卵のようなお話でした。脚本メインなら高評価は望むべくもないつくり。しかし、本作の主演はあの亜紗美嬢なのです。B級の中のB級、アクション・ホラー・スプラッター界隈で異彩を放つ一番星。牛丼チェーンのペラペラ駄牛に混じったA3和牛。そんな彼女なら、ポンコツB級映画を特別な映画に変えることが出来るのです。体躯の仕上がりも見事なもの。以前よりずっと鍛えられています。それでいてシェイプされ過ぎずイイ感じの肉付きが素敵。シルエットはまるでミシェル・ロドリゲスじゃないですか。綾瀬はるかやガッキーのような知名度やスター性は無いかもしれませんが、彼女たちに亜紗美譲の代わりも務まりません。要するに唯一無二の存在なのです。そんなB級アクションの女王の主演作であり引退作でもある本作に低い点数を付けられるはずもなく、私お得意の『亜紗美加点』なる下駄を履かせまくって8点献上いたします。あと引退なんていつでも撤回してもらって構わないので(プロレスラーなんて引退復帰は日常茶飯事ですヨ)、また劇場のスクリーンで雄姿を見せてくださいな。[DVD(邦画)] 8点(2020-08-25 19:47:42)

245.  アス 《ネタバレ》 ネタバレあります。未見の方はご注意ください。 分身の言い分のみを聞いて『リアリティが無い』と判断するのはちょっとお待ちを。客観的事実は、『分身が大挙出現した』『分身は本体を殺戮した』『遊園地を入り口として地下に居住スペースがあった』『分身はハンズ・アクロス・アメリカを実行した』。これら確定事項に、分身の証言、そして状況証拠(ヒント)を加味し、『誰が』『何のために』『このような事態を引き起こしたのか』を『自分なりに』推理するのがミステリーの醍醐味と考えます。たとえば分身が言う『クローン』について。この言葉には『科学技術で創り出された』という枕詞が付くのが常識。しかし私たちが知るクローンは、遺伝子的に同一であっても、同じ行動を取ったりしません。つまり前提が間違い。彼女の証言は勿論のこと、『既知の科学』とか『我々の常識』を基準とするから『リアリティが無い』と感じるワケです。ここは発想を転換して『非科学』に論拠を求めたら如何でしょうか。一連の事件は『神の御業』によるものだと。一応、聖書の第〇節みたいな看板を持っていた男も居ましたから。何なら『神』は『宇宙人』や『創造主』でも構わない気がします。『SF(サイエンス・フィクション)』ではなく『SF(スゴく無茶する・ファンタジー)』。結論。分身は科学的に生成されたクローンにあらず。地下空間に広がる未知なる世界(有り体に言うなら並行世界。当然我々の常識は通用しません)からやってきた「もう一人の自分」。この世に同じ人間は2人不要なので(神の意志と言ってもいいでしょう)、片方は抹消される。手繋ぎパフォーマンスは、分身がこの世界を手に入れた証。なお、何処の世界に居ようと自分=自分。その真理を唯一理解している主人公は、救い出した偽息子の存在を瞬時に肯定した。以上が私なりの理解です。推理というより最早妄想ですけど。物語における『リアリティ』とは、『現実感』ではなく『納得性』と考えます。社会風刺があからさまなのが少々鼻に付きますが、局地的な厄災が爆発的に拡大していく様や、『自分自身と向き合う』恐怖の提示はお見事。現状を理解しない呑気なお父さんキャラが秀逸でした。考える余白が存分にある知的サスペンスホラーとして一級の出来栄えであったと判断します。[インターネット(吹替)] 8点(2020-06-30 19:27:13)《改行有》

246.  ミッドナイト・アフター 《ネタバレ》 (ネタバレ含みます。未見の皆様はご注意願います。あと長文になってしまいました。ごめんなさい。) それでは謎解きを。嘘です。テキトー妄想解釈です。参考程度でお願いします。 バスはデロリアン号に同じ。核燃料未搭載なれど、性能は遥かに上。瞬きする間に6年後の未来にタイムスリップしました。行き付いた先は人気の無いまるでゴーストタウン。ライフラインが機能していることから、直前まで人々が生活していた事は明らか。近くで原発事故が起き急遽避難したため、街はもぬけの殻だった。これが事象の外郭と考えます。 次に詳細をつめましょう。まず彼らが死んだ理由。これは飛び越えた6年の間に、本来各人に起こるはずだった出来事と解します。それが遅れてやって来た。発火した者、体が崩れた者=火葬されるはずだった人(こちらは原発事故とは無関係)。死斑の方は疫病の可能性を示唆します。捕えたガスマスク男の異常な怯えの理由も、放射能というよりこちら。何なら、原発事故も疫病に起因する人災かもしれません。つまり彼らが知らない6年間に、香港で凶悪な疫病が流行し、直近には原発事故も起きた。ガスマスク集団は政府の救助班でしょう。ほとんど輩ですが。と、ここまでは常識的?な推測が可能な範囲。 問題は以下のワケワカラン要素です。「一斉電話」「赤い雨」そして「ユキちゃん」。ついでに「タイムスリップ」も含めましょうか。ここからは大いに妄想力を働かせてみましょう。電話の主は、かつての流行歌の歌詞をモールス信号で送って来ました。典型的な「宇宙からのメッセージ」。赤い雨=血の雨。『宇宙戦争(2005)』でも同様のシーンがありましたね。ユキちゃんには記憶障害が見られ、時折人ならぬ雰囲気を醸し出していました。もしかして『カイル・マクラクラン状態』では。タイムスリップなんてそもそもあり得ません。でもそんなテクノロジーを持った知的生命体がいたならば・・・。 ではまとめます。「事件の黒幕は宇宙人。彼らの目的は人類を捕食すること。まずは疫病で弱らせよう。でもその前に保護に値する種族か見極めてから。サンプルはマイクロバス乗客。宇宙人は若い女性に憑依し乗客に紛れ込むことに。タイムスリップにより彼らを隔絶・極限状況下へ。そこでの行動を観察しよう。結果、蛮行を働く者。そしてそれを咎めるための蛮行。保護する価値なしと判断された人類は、宇宙人に捕食され血の雨を降らすことになりましたとさ」ちなみにヤク中男もその不死身ぶりから宇宙人の可能性あり。占いおばさんの自説通りと考えるのも面白いと思います。以上です。 このように宇宙人説を採用してしまうと、本作に限らずほとんどのミステリーが意味を為さなくなります。宇宙人って無敵。超便利。だからこそ丁寧な説明や、繊細な伏線が必要だと思うのですが、本作の場合悪ノリで突っ切った感があります(そこが魅力でもありますが)。とはいえ、「バス乗客全員死亡説」を最初に口にすることで、如何にもありそうなオチを真っ先に排除するあたり、意外と親切な面も見られます。バラエティに富んだキャラクター造形もお見事でした。私的には、“投げっ放しと見せかけ、実はしっかりクラッチされた綺麗な放物線を描くジャーマンスープレックスホールド”との印象です。このニュアンス、伝わりますか。[インターネット(吹替)] 8点(2020-05-20 18:50:33)(良:1票) 《改行有》

247.  ビッグ・バグズ・パニック 《ネタバレ》 隙だらけの設定、ご都合主義なストーリー、アク強めのキャラクター、やっぱり欠かせぬ家族愛。どれを取ってもB級映画のクオリティです。そう、A級ではありませんが、CやDでもありません。何と言うか、間違いのないB級なのです。サービスヌードも、ちゃんとシリコンおっぱいですし。でもそれが丁度いいのです。楽しく色々突っ込め、最後は何故かほんわかしてしまう、私が求めるB級映画を久々に観た気がします。相席スタートの丁度いいブスとか、B級グルメと同じ。高級より劣るのではなく、魅力が違う別ジャンルの趣です。いやはや、思いの外、満足いたしました。ところでラストについて。吹替版では、主人公の台詞は『無視(虫)しよう』なので、別の巣からきた昆虫あるいは人型ハイブリッド昆虫の大群を見た、なんて理解で宜しいのでしょうが、余韻も余白もある良いオチの付け方だなと思いました。単なるダシャレオチとも言えますけども。[インターネット(吹替)] 8点(2020-05-05 18:57:38)(良:1票)

248.  空飛ぶゆうれい船 《ネタバレ》 宮崎駿氏の源流のひとつとして本作の存在は認識していましたが、この度某インターネット定額サービスを利用し、初鑑賞しました。まず気になるのは、基本設定に対する説明が甚だ不足していること。ただこれは、近年の作品が設定や世界観を丁寧に説明していることの裏返しとも言えます。それだけ現代は、何にでも「説明責任」を求める社会になったと言えるかもしれません(それが良いか悪いかは別として)。細かな説明を省いている分、全体的に大雑把な印象は拭えませんが、整合性やリアリティといった“足枷”のない自由さが、娯楽作品としての力強さに直結していると考えます。それでいて、堂々と社会風刺を入れ込んでくる骨太な一面もあり、流石だなあと。メインとなる「幽霊船」の秀逸なビジュアルといい、物語終盤の“滅びの美学”といい、後世の作品に与えた影響は計り知れないでしょう。こと完成度という観点では難ありかもしれませんが、今や失われてしまった感のある『正しい冒険活劇』に低い点数はつけられません。欲を言えば『未来少年コナン』に心奪われていた、子供の頃に観たかったです。[インターネット(邦画)] 8点(2020-04-30 18:19:17)(良:1票)

249.  ハッピー・デス・デイ 《ネタバレ》 『ファイナル・○スティネーション』あるいは『オール・ユー・ニード・イズ・○ル』のような“死に方コレクション“が見どころかと思いきや、さにあらず。極めて真っ当な(嘘です。言いすぎました。まあまあちゃんとした)青春ドラマ&サスペンスドラマで驚きました。しかもコメディとしても上等で、結構笑えるのです。B級ホラーにありがちな、安易なグロテスク&ゴア描写に逃げなかった点も気に入りました。同じ日を何度もループするというアイデア自体は目新しくないものの、練られた脚本に感心することしきり。物語にどんどん引き込まれていきました。もちろん、それに比例するように主人公の好感度もうなぎ登り。クソ女とはいえ、もともとキュートな美人さんですから、そりゃおじさんはイチコロですがな。この完成度なら広げた風呂敷を畳まず終わってもOKと思っておりましたら、なんと続編できちんと畳んでくれているじゃないですか!本作まるごと伏線(前ふり)扱いと知り二度びっくり!実質2部作と考えて良さそうですが、素晴らしいのは本作単独で見事に完結していること。これはイイ映画ですよ。『ハッピー・デス・デイ 2U』の感想へ続く。[インターネット(吹替)] 8点(2020-03-25 20:23:20)(良:3票)

250.  ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を 《ネタバレ》 『全編台詞無し』の特異な仕掛けが如何にも洒落臭く、ブラジャーというアイテムの選び方にそこはかとないハイセンス風味を感じ(だってパンティじゃないんですもの。この設定なら普通はパンティでしょうよ)、きっといけすかないおサレドラマなんだろうなと高をくくっておりましたが(←イヤなら観るなって話ですが苦笑)、これがどうして、面白い!きっちり、しっかり、コメディでありました。それも結構なナンセンスぶり。不条理を押し通すために、不合理な『台詞無し』をぶつけてバランスを取る作戦。というか、登場人物に不条理の釈明をさせない為に、台詞を消したのでしょう。これは『Mr.ビーン』でも採用されている手法ですが、かの作品はローワン・アトキンソンという唯一無二のコメディアンがギミックの拠り所として存在しているのに対し、本作は純粋にナンセンス行為そのものを“無言の言い訳“の対象としている分、高難易度な構成と考えます。いずれにしても技ありの、見事な演出法でありました。ヒューマンドラマと社会風刺という二つの山に、ナンセンスコメディを被せた、まさにブラジャースタイルの映画(ちょっと上手いコトを言ったよ!赤面)。主人公が探していたのは、果たして本当にブラの持ち主だったのでしょうか?『幸せの青い鳥』ならぬ『魅惑の青いブラ』に導かれ、主人公が辿り着く至福のエンディングに、どうぞ涙してください。前述したように、やや気取った感もあり、取っつきは悪いかも知れませんが“こんな趣向の映画もある”という意味でも観ておいて損はないと思います。いやー反芻する度、旨味が溢れてくるお麩のような後味。いい映画です。 なお、便宜上鑑賞環境を【映画館(字幕)】としていますが、字幕、ありません。[映画館(字幕)] 8点(2020-02-17 20:55:58)(良:1票)

251.  セブン・シスターズ 《ネタバレ》 この設定、普通なら主人公は双子でしょう。それを7つ子でやろうとした”チャレンジ精神“にまずは拍手を贈りたいです。よくぞ『常識』や『リアリティ』の壁を乗り越えたものだと感心します。勿論、無茶した分ツッコミに対する耐性はゼロ。物語的には”あり得ない“のオンパレードです。人口分配法のオチにしたって初めから分かっていたこと。しかしです!エンターテイメントで一番大切なのはリアリティにあらず。そうワクワク感。魅力的な嘘の力でお話に引き込めれば何の問題ありません。7人の主人公がガチに、アッサリ、死にまくる展開に痺れました。“主人公は死なない”お約束が通用しない恐ろしい世界。でも本来はそれが当たり前なのに。普段は考えないようにしているだけの話です。エンタメで楽しんでいたはずなのに、不意にシビアな現実を突きつけられて震えると。なかなかやってくれますなあ。7人がそれぞれ個性豊かな人格を有しているのが素晴らしいです。パブリックな人格や人生を共有していても、命の重さが7分の1に目減りなどしません。主人公が死ぬ度に、私もまた命を奪われました(これは本作と同じく主人公が死にまくるトムクルーズ主演の某作や、クローン祭りのバイオ4とは全く別物の感覚であります)。リアリティを排除したエンタメだからこそ響くリアリティ。これぞ正しい娯楽作品の在り方に違いありません。[インターネット(字幕)] 8点(2020-02-05 18:28:40)(良:1票)

252.  ヘレディタリー 継承 《ネタバレ》 良い映画は上手に嘘をつくものです。例えば自動車事故の件。あの状況で、物理的にアレがああなるワケ無いですよね。少し想像すればわかる話。でもショッキングな出来事で冷静さを奪われた観客は、不自然だとは微塵も感じません。もう既に作品世界の空気に取り込まれている証。驚愕の結末へ向け、そこかしこの場面で小さな事実(後の証拠)が積み上げられていきます。亡くなった祖母に纏わる逸話、再現ミニチュア、玄関マット、お茶に含まれていたもの。ミステリー的に言えばヒント。二度鑑賞してみて、その丁寧な仕事ぶりに感心します。また、オカルトホラーのセールスポイントとも言える『霊現象』や『殺人描写』『儀式』といったマストアイテムは、質の良いものを要所に集中させており、安売り感がありません。だから物語に起伏が生まれると同時に、衝撃が心に刻まれるのだと思います。これぞA級映画の趣。褒めたい箇所は多々ありますが、中でも特筆すべきは役者の「顔」でしょうか。母親アニー役のトニ・コレット、娘チャーリー役のミリー・シャピロの存在感が圧倒的です。まさにホラーフェイス祭り!彼女らが纏う不吉さは只事ではありません。視覚で圧倒し、不可解さで心を惑わし、いつの間にか自由を奪われ最悪の結末に誘われています。地獄の王ペイモンが降臨した事実が恐ろしいのではなく(そもそも悪魔が本当に彼の体内に宿ったのかさえ未確定事項)、邪教の崇拝者たちに取り込まれ、家族を失った状況に絶望するのです。さあ、みなさんも正統派オカルトホラーの深淵を覗いてみてください。[DVD(吹替)] 8点(2019-12-20 20:59:10)(良:2票)

253.  ハード・コア(2018) 《ネタバレ》 『間違った世の中』『孤独』『童貞』。本作を端的に表すキーワードから漂う、そこはかとない閉塞感。キラキラとは程遠い、でもこれもまた“青春”の一面と考えます。おっと、そのメンタルの未熟さとは裏腹に、本作の登場人物はそう若くもないですね。“停滞”の方が適当かと。狭い価値観の中で完結する閉じた世界で生きる彼ら。それは息苦しいことでしょう。風通しが悪いのですから当たり前。そして、女日照りが彼らを大いに苦しめている事実も見逃せないポイントであります。しかしその反面、この状況は心地良くもあるはずなのです。生きる方針を他者に委ねてしまえば、自己責任の重圧から逃れられますから。さらに報われない境遇の原因を外部に求めるならば、自尊心が傷つく恐れもありません(左近は右近に居酒屋で指摘されておりました)。戦わなければ、負けもない理屈。まるでゴールド免許のペーパードライバー。でも本来の目的って何?って話なんですが。これは右近と牛山だけでなく、実は金城や水沼親子にも当てはまるでしょう。あるいはエリートである左近にも。そんな2人の元に現れたのは、デクのバーチックなドラえもん=ロボ男。その見た目からは想像できない超絶ハイテクマシンでした。そう、決めつけも世界を閉ざしてしまう一因です。そういう意味では、常識度外視でロボ男を仲間に受け入れた事が、2人の人生を動かすターニングポイントとなりました。果たしてロボ男は2人の窮地を救い、空を飛び、外の世界へ彼らを連れ出しました。2人の純真さが、自身を救ったワケです。さて、エンディングについて。お話として「完」が打たれた後の描写を“続き”や“現実”と解して良いのか悩ましいところです。左近のみた夢(希望的観測)との見立てが正しい気もします。でも、ここは素直にハッピーエンドと受け取りたいです。もっとも、あの場所は外の世界かと問われれば微妙なところ。ちょうど外界(社会)と内輪(お家)の中間みたいな場所でしょうか。そもそも外の世界で生きられない性分ならば、それも仕方がないのでしょう。これもまた適材適所。まずは生きること。生き抜くこと。それが私たちに与えられた使命です。それに億万長者より幸せなことって確かにあるのですから。絶対にあるはずですから。原作未読ですが、マイナー(失礼)コミック独特の空気感の再現はお見事でした。さらに山田や佐藤(なんて普通の名字なんだろう)が纏う色気は絶品でした。正直たまらんです(変な意味ではなく)。テーマもかなり好きな部類。もう少し若かったら、ガッツリ刺さった気がして、少し怖くもあります。[DVD(邦画)] 8点(2019-09-25 00:28:11)(良:1票)

254.  旅のおわり世界のはじまり 《ネタバレ》 言葉で語らず、情景で観客に問い掛ける、これぞ黒沢清作品の真骨頂。お馴染みサスペンスミステリーでも、ホラーでも、難解映画でもありませんが、計算し尽くされています。注意深く観察し想像力を働かせながらご覧になると、きっと楽しめると思います。以下は私なりの勝手解釈。お時間あればお目通しください。 小柄で華奢、幼さを残した表情の中に垣間見える疲労と苛立ち。見た目どおり、主人公のパーソナリティは子供以上大人未満です。そんな葉子の現在地を前田敦子が見事に体現しています。彼女のキャスティングは、まさに神レベルでした。流石元祖神7。歌手になる夢を持ちながら、今は足踏み状態でイライラ。本当は目標に真っ直ぐ向かいたい性分なのです。だから道無き道もなんのその。行き方(生き方)が分からないなら、アドバイスをもらえばいいのに、妙なプライドが邪魔をします。無理なら断るのも勇気。助けてもらうのは恥ですか?独り善がりな判断で行動し大失敗、挙げ句逃避なんて馬鹿丸出しです。自分の中の浅い知識、狭い了見だけで完結しようとするから空回り、行き詰まりを繰り返します。彼女の内面はまだ幼いのです。その端的なエピソードは、やはり山羊解放でしょう。家畜に自身を投影し、野に逃がして自由だバンザイなんて、そんなアホな。でもラスト、野犬の餌食との予想を覆し、山羊ちゃんは野生下で逞しく生きていました。これが意味するのは一体何でしょうか?常識が正しいと決めつけるのは、もしかしたら大人の悪い癖かもしれません。行動力だけは人一倍。それは紛れもなく彼女の長所です。間違いを犯し、恐怖を覚え、恥をかき、己が無力さを知り、人は成長していきます。経験は宝。行動することを恐れてはいけません。そして導いてくれる人生の先輩に感謝する事も。監督は彼女の未熟さを肯定してくれている気がしました。正確なタイトルは、『(子供の)旅のおわり(大人の)世界のはじまり』です。以下余談。ローカル遊園地のアトラクションが半端なくヤバそうで身震いしました。あれ演出なしで実在するなら、死人が出てもおかしくないような。ウズベキスタンの遊具恐るべし。[映画館(邦画)] 8点(2019-08-04 17:16:09)(良:1票) 《改行有》

255.  時時巡りエブリデイ 《ネタバレ》 ネタバレしています。ご注意ください。鑑賞後にお目通し頂けると嬉しいです。 善意のいし(石と意思)の力でタイムリープ。最短15分~のショートレンジですが、手軽に人生をやり直せます。ただし、連続リープは不可。また利己的な理由(例:金儲け)でのリテイクは大変なしっぺ返しを受けるのでご法度(ここ最重要ポイント!)。タイムリープの源となる石ころは、物理的に減っていくので無限にやり直しが出来ないこと、また主人公以外もタイムリープ出来てしまうところがミソ。制約付きの「こじんまり」した設定ゆえ、タイムトラベルものとしてのスペクタクルは皆無ですがSF的な充足感は十二分で、人生の機敏が味わえる不思議なドラマに仕上がっています(各キャラクターの後日談が垣間見えるエンドクレジットは必見です!)。さて、終盤怒涛のカオス展開について。明らかに妄想・幻想の類に思えますが、ここは視点を変えてみる事をお勧めします。個人単位のミクロの視点から、地球や宇宙単位のマクロの視点へ。そもそも善意の石は何処にあったのでしょう。意思があるのは人間だけでしょうか。もしかしたら時々感じるデジャブって・・・いやいや、なかなかどうして立派にSF、堂々と哲学ですよ。しかしながら本作最大の魅力は、コメディパートに違いありません。主人公・美鳥(鳥居みゆき)が既に破壊力抜群の飛び道工なれど、彼女を取り巻く一癖も二癖もあるサブキャラクターの皆さんが良い味出しまくりでニヤケまくりでした。特にお気に入りは、アゴなし“ペッシ”広子に、ライクア“ホラーヒロイン”婆さん、そして“ザ・イーグルアイ”安藤兄弟のデブ(弟の方)。見事に劇薬級ばかり。あの鳥居みゆきと存在感でタメを張ります。絶妙な空気感とワードセンス、そして先制攻撃上等のハードヒッティングなラブコメで、久々にドストライクに笑えました。こういう映画に当たると、役者に求められるのは演技力より役作り、作品に必要なのは制作費より企画力と再認識させられます。期待していなかった為、完全に不意を突かれました。掘り出し物のグッドSF、ナイスコメディ。素晴らしかった! 以下余談。広子役の仁後亜由美さん。お笑いコンビ『フタリシズカ』の女芸人の方だとばかり思っておりましたが、調べたところ女優さんでした。『かしこい狗は、吠えずに笑う』にも出演されていたそうで。・・・大変失礼いたしました。[DVD(邦画)] 8点(2019-07-15 07:59:21)《改行有》

256.  ペンギン・ハイウェイ 《ネタバレ》 『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』がホラーの看板を掲げた青春ドラマとするならば、本作もSFを纏ったジュブナイルと言えましょう。それにしてもSF設定が結構本格的なんですね。ファンタジー色が強めのようでいて、しっかりサイエンスしているところが気に入りました。“ペンギンで世界の穴を塞ぐ”という奇想天外かつロマン溢れる仕立てにも好奇心がくすぐられます。私のような物知らずにも丁寧に考え方のヒントを教授してくれているのも有難い限り(巾着袋の裏返しは実に解りやすい!)。予断なく、偏見なく、物事を観察することが研究の始まりなんですね。少年の成長物語としても、また王道のつくり。主人公がいささか出来過ぎ(良い子過ぎ)という気もしますが、無理矢理屈折させる必要もないですし、何より事象に真っ直ぐに向き合える素直さがなければ、世界を救うことは叶わなかったでしょう。世の中に誘惑や落とし穴は多いですが、彼には今の志を忘れないで欲しいものです。最後に蒼井優さん、ご結婚おめでとうございます。ご祝儀込みで8点進呈です。[CS・衛星(邦画)] 8点(2019-06-20 19:28:20)

257.  散歩する侵略者 《ネタバレ》 (以下私なりの解釈です。黒沢清映画を楽しむ為のお約束ですので、誤読解等あるかと存じますが何卒ご容赦ください…) 本作の宇宙人は実体を持ちません。いわゆる『思念体』系。物質を生命の拠り所としないので、寄生する肉体に対して無頓着です。宿主が死ねば別の人体に乗り換えればよし。というより、生死の概念についても我々とは根本的に異なるのでしょう(ついでに言うなら、物質主義でないため、通信装置を製作するにも大層な部品を必要としない理屈。だから針金でOK。コレ斬新ですね)。ここから、彼らの言う『侵略』の正体が見えてきます。人類は命を奪われるとは思えません。侵されるのは頭の中。人類滅亡とは、精神の乗っ取り及びオリジナルの人格消去と推測されます。エピローグで小泉の口から語られる『宇宙人による侵略が中止された』が真とするなら、元人格抹消を止めた事を指すのでしょう。真治の説明「一つ賢くなった」=「愛という概念を知った」の効用と言えます。先発調査隊が各自収集してきた数々の概念を集積し、統一概念として流布したことで、結果的に人類は共通の価値観を手にしました。もう争いが起こることも無いでしょう。真治が持ってきた「みかん」を仲良く分け合う避難者たちの幸せそうな顔。人類悲願の『世界平和』が遂に実現されたのです。ならば侵略も悪くない?でも、人類は自ら進化することが適わず(何という敗北感でしょう)、多様性を失ったマイナスは計り知れません。さて、鳴海について。「愛」を提供し人類滅亡の危機を救った代償として、彼女は人間性を失いました。そんな彼女に寄り添うことが、NEW真治(宇宙人と人間のハイブリッド)が示す“愛のかたち”ということ。愛の概念に沿った正しい行動です。でもマニュアル通りの作業を人は愛と呼びません。 宇宙人による人類侵略という壮大なSFでありながら、描かれる世界は日常を半歩踏み出す程度のもの。日常と非日常の描別け(出し入れ)が絶品で、不意に恐怖を喚起させられます。流石ホラー上手の監督さんです。なお、空爆、自衛隊の出動、天から降りてくる火の玉、野戦病院等は『侵略』『戦争』を端的に表すアイコンであり、リアリティ云々を求める類のものではありません。厚生労働省を騙る謎の集団も、抵抗する人類(自我)の象徴と考えられます。この徹底した象徴(記号)主義が黒沢清監督の流儀であり、時に難解と捉えられる所以でもあります。本作は黒沢清節が炸裂しつつも、意味不明には陥らぬ大変バランスの取れた一作でした。[ブルーレイ(邦画)] 8点(2019-05-05 18:27:14)(良:1票) 《改行有》

258.  劇場版 SPEC~結(クローズ)~ 爻(コウ)ノ篇 《ネタバレ》 『天』の感想にて、“回収する気のない伏線”や“どうせ畳めやしない大風呂敷”等と書いてしまった事を、まずは謝罪させてください。いやいや監督、御見それしました。ちゃんと特大の風呂敷を綺麗に畳みましたね。何なら完全放置だった『ケイゾク』まで一緒に畳んでしまうとは(まあ、コチラはドサクサ感半端ないですが苦笑)。この結末はTVドラマの時点から決まっていたと考えて差し支えないでしょう。当麻のスペックはこのラストに繋がる伏線でしたか。お見事です。もっとも元ネタが元ネタなので、壮大かつぶっ飛んだ結末も腑に落ちるというもの(まるで『石作りの海』の結末の如し)。またデヴィッド・クローネンバーグ監督の某傑作SFを彷彿とさせる“報われぬ正しい行い”も個人的には大好物であります。瀬文が着せられた汚名は、世界が救われた証に他なりません。私情は厳禁。大義に生きる。これぞシリーズを通じて主張してきた『刑事魂』そのものです。そして何より当麻と瀬文の絆の深さに涙しました。救いなどあるはずもない無限地獄の中の一筋の光。魂で繋がる2人が尊いこと。この余韻は絶品です。『ケイゾク』の柴田・真山、『トリック』の山田・上田、そして『スペック』の当麻・瀬文。堤監督のキャラクター造形は一流。それだけは疑いようもない事実です。お話の方は悪ふざけが過ぎたり、インチキオカルトで煙に巻こうとしたりする悪癖がありますけれども。TVドラマ監督としての信頼感は絶大でも、映画監督としては信用ならぬという(私の中の)基準をそろそろ見直そうかなと。『12人の死にたい子どもたち』も良かったですし。お詫びも込みで8点進呈です。[DVD(邦画)] 8点(2019-04-20 09:24:02)(良:1票)

259.  日々ロック 《ネタバレ》 (ネタバレあります。未見の方はご注意ください) ザ・ロックンロールブラザーズ(以下RRB)はそもそも自慰バンドでした(ボーカル背中の空気人形が動かぬ証拠)。自分が気持ち良くなればいい典型的なアマチュアです。宇田川に童貞を指摘されたり、プロデューサーに歌う意味を問われたりしたのも無理からぬこと。プロなら相手を楽しませてみろ。お金を頂くとはそういうこと。「女のひとりも抱かずにロッカーを名乗るな」は、あながち間違っていません。そんなアマチュア風情に何故スーパーアイドルは惹かれたのでしょうか。たぶん奴らにかつての自分の姿を見たから。仲間と共に音楽を奏でる楽しさと喜び。スターになる為に、自分が捨ててきたもの。余命幾ばくもない宇田川には、馬鹿たちが輝いて見えたのでしょう。そんな彼女は、ロックに、華々しく逝きたいと口にしました。きっと強がり。しかし病に侵された体は、彼女の願いを受け入れてはくれませんでした。弱っていくのは体だけではありません。遠路はるばる日々沼がオリジナル曲を届けに来てくれたのに、受け取る気力すらない有様。思い届かず…か。しかしこんな時頼りになるのは仲間。あるいは腐れ縁。バンドメンバーは勿論のこと、盟友「犬レイプ」(酷いネーミングセンス!)や、地元のクソ馬鹿ヤンキーに干物工場の先輩。きっと誰か一人欠けても、日々沼があのステージに立つことは適わなかったでしょう。友情と我武者羅さ。豪雨と感電と。おそらくこれがロック。これこそがロック。RRB激情の一曲は偶然か奇跡か、あの娘の心を捉えました。生きろ、生きてくれ。気力を振り絞り、サンキューひよこを頬張る宇田川。食べること=生きようとする意思。その美しい笑顔に涙しました。エピローグは記念写真。バカ3人と美女1人。このワンカットに辿り着くために物語は在り、一曲の感動だけで本作の価値が保たれています。音楽の力って偉大だなあと。ほとんど反則級のエモーションでありました。やっと目の前の一人に思いを届けられたRRB。今度はライブハウスの観客相手に、そして見えない大衆に対して、彼らは思いを届けられるでしょうか?まだ今はポンコツ。自走すら危ういもの。でも若者には未来があります。それで十分ではないですか。 芸能人に疎い私は、日々沼役の野村周平はロックミュージシャンだとばかり思い込んでおりましたが、役者さんだったのですね。役作り的には『北の国から』の五郎さんのエッセンスが強い気がしますが、気のせいかもしれません。繰り返しになりますが、楽曲の力が映画の評価に直結する音楽映画って、ホントずるいです。良い映画の気がしてなりません。気のせいかもしれませんが。[DVD(邦画)] 8点(2019-03-05 19:58:48)《改行有》

260.  十二人の死にたい子どもたち 《ネタバレ》 連帯保証人にはなるな。夜中にラーメンを食べるな。と同じレベルで、『堤監督のサスペンスに期待をするな』との自身の中の鉄の掟を破って、久々の劇場鑑賞でありましたが、これが思いの外面白くて。正直びっくりいたしました。オフザケを封印した堤監督やるじゃんと(イニシエーションラブでも同じような感想を書いてましたね。監督、本当に失礼しました陳謝)。と前置きはほどほどにして、本題の感想に入りましょうか。集団自殺志願者の中に、紛れ込んだ殺人犯は誰か?この謎解きが主軸となって物語は展開いたしますが、まるで『金田一少年の事件簿』の如きノリ。ちゃんと探偵役までいるという親切設計です。種明かしをしてしまえば何ということも無いですし、そもそも推理が成立しているかも怪しいのですが、サスペンスミステリーの空気感創出は見事なものでした(監督、よくぞいつもの悪戯を我慢してくれました!)。真摯に役と向き合ってくれた若手役者の皆さん全員に拍手を送りましょう(個人的にはロリータパンクの子の方言と、金髪今どき娘が好印象!)。また、12人全員にバランス良く見せ場が用意されていた事にも感心しました。メッセージも定番ながら良いんじゃないでしょうか。ひとりで死ねない時点で、本当は生きたいと願っているのは明白ですから。最近いろんな面で行き詰まっていたので、元気を貰えた気がします。そんなこと全然期待してなかったのにね苦笑。エンディングスタッフロールでの時系列整理は秀逸なサービス。ジャッキーのNGシーン集のように不要なサービスとは違い、本当の意味での心遣いを感じました。エンドクレジット最後の注釈『未成年者の喫煙は、法律で禁止されています。』の皮肉が最高に効いていたので、座布団1枚ぶん点数上乗せします。[映画館(邦画)] 8点(2019-02-10 13:24:59)(良:1票)

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