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301.  ドラゴン危機一発 《ネタバレ》 敵役のやることなすことが、すべておバカですね。子供の売る饅頭を食べて金を払わない。氷の中から袋が出てきたらそれがヘロインだとすぐばらしてしまう。目算もなく仲間に誘い、断られらたら即刻殺す。遺体を氷づめにして倉庫に放置。あとさき何も考えていません。それを3度も繰り返している。そもそも氷の中にヘロインを入れて運ぶっていうのはどうなんですか?そんな馬鹿な、でしょ。途中で氷が溶けたり、割れたらすぐにばれてしまう。それにそんなに大量のヘロインがあることが不思議です。挙句の果てに失踪した四人の行方をごまかしきれなくなって、一家殺害に及ぶ。娘は拉致してラスボスに提供。行き当たりばったり、無闇やたら、支離滅裂、無軌道すぎです。こんな組織が存続できたのが奇跡。個人による復讐、勧善懲悪型の映画の場合、適役が強くて、悪賢い程盛り上がるのですが、この映画は途中で投げ出したくなります。 ◆主人公のチェンですが。この人もおバカです。警察に相談すれば良いものを敵側の策略にまんまとひっかかり、籠絡されそうになります。武闘型英雄が酒に弱いというのはダメでしょう。刃物を多用するというのもいかがなものか。刃物を持った相手に対して拳で立ち向かって勝つというのが英雄の常道でしょう。子供も殺してしまい、後味が悪いです。 ◆ラスボスが武術の達人という設定ですが、どうみてもそこいらにいるおっさんにしか見えない。もうちょっと何とかならなかったのか。首をかしげます。これでタイトルが「唐山大兄 THE BIG BOSS」ですからね。ずさんとしか思えません。恋愛パートですが、チェンは屋台の女が好きだったのか、メイが好きだったのか?すっきりしないですね。ちなみにすさまじいほどの怪鳥音はオリジナルには無くて、死後に世界配信するときに挿入されたもの。[地上波(吹替)] 5点(2011-10-25 22:39:37)《改行有》

302.  御用金 《ネタバレ》 武士の世界の不条理を描いた作品。藩の財政難を救うために、佐渡の金を運ぶ幕府の船を沈め、その金を横領するという策謀。そのために目撃者である集落の漁民を全員抹殺し、「神隠し」と呼ばれる。孫兵衛はそんな侍暮らしに嫌気がさして脱藩したが、三年後江戸で藩の刺客に狙われる。問いただせば再び「神隠し」を行うという。孫兵衛はこれを阻止するために帰郷する。途上で神隠しに遭った漁民の娘おりはに遇う。きな臭さを嗅ぎつけた隠密もついてくる。奇縁で結ばれた孫兵衛、おりは、隠密の三人で船の遭難を回避。巨悪の根源である老中も倒す。◆随所で監督の映像美が堪能できる。構図、背景、殺陣が美しい上に、俳優陣に個性があり、重厚感ある時代劇に仕上がっている。また人間が能く描けている。特に村娘から転落して、鉄火肌の賭博師となり、孫兵衛を助け、助けられ、密かに孫兵衛を慕うおりはという役どころは秀逸。特に神隠しに遭った漁村に帰って、それを発見して絶望する場面は実に丁寧で好感が持てる。孫兵衛にしても決して正義感が強く無垢な男ではなく、意図しなかったとはいえ、自分に立ち向かってきた漁民を殺している。この挿話により彼の人間としての苦悩が描けている。そしていつまでも自分を慕ってくれている愛妻との再会。これならクールな彼にも感情移入できようというものだ。◆一方で脚本構成は荒っぽい。財政難を救うためというが、その実態が描けていない。どれほど困っているのか不明なので、「神隠し」は短絡的な強奪・殺戮にしか思えない。又船を遭難させる方策だが、そう簡単にいかないと思う。そもそも都合よく夜に岬を通過するとは限らない。満月だったらどうする?沖で沈没したら金の回収はどうするのか?などと疑問点が湧く。老中の手下に囲まれた孫兵衛をおりはが救う場面もしかり。町のやくざを敵対するやくざがそこにいるとけしかけて、侍とヤクザを闘争させるが、やくざと侍の区別は容易につく筈だ。そして隠密の扱い。最後にあっさり、もう隠密はやめるというオチはしっくりこない。この人の苦悩が伝わってこない。もうひと波乱あってしかるべだ。この人物だけ妙に明るくて、浮いている。。三船敏郎と仲代達也がケンカして三船が降板、急きょ代役として三日間だけ出演という背景がそうさせたのだろう。残念である。ちなみに御用金は出雲崎で荷揚げされ、北国街道で江戸に運ばれた。[インターネット(字幕)] 7点(2011-10-25 15:19:58)(良:1票)

303.  醜聞(1950) 《ネタバレ》 画家と声楽家が恋人同士であり、旅館に同泊したなどと、でっちあげ記事を雑誌に書かれる。雑誌社にしてみれば、真実かどうかは重要ではなく、売れればよいわけで、二人の談笑写真があるのが強みだった。画家は正義感が強く、泣き寝入りはせず、雑誌社を告訴する。声楽家は最初は消極的だったが、心なきファンレターがを受け取った事と、画家の熱意にほだされ、告訴に同意。ここから法廷対決のはずが…、話は卑劣弁護士の改心譚に転調する。弁護士は雑誌社に金で抱きこまれ、会社側に有利になるように仕組む。弁護士はうだつが上がらず、寝たきりの娘を抱えて経済的に困窮している。画家と声楽家は弁護士の娘に会い、その清らかな心に触れ、その父親の誠心を信じた。裁判は雑誌社優位に進んだが、最終的に弁護士が自らの買収を暴露する事により二人の勝利となる。二人にとって裁判の勝利より、弁護士が改心し、真人間になった事の方が嬉しかった。 ◆脚本に一貫性がない。無責任な雑誌記事により「醜聞」に曝された被害者の憤慨と苦悶、どうやって「醜聞」に対抗するかという問題が、後半になると「醜聞」はどうでもよくなっている。又二人の「醜聞」なのに声楽家の扱いが等閑なのが奇妙だ。後半になると会話はほどんどなく、裁判でも一切発言しない。刺身のツマ扱いだ。二人が協力しあい、その過程で恋愛も芽生えるというのが自然の流れだろう。協力の結果、裁判に勝ち、弁護士も改心し、恋愛も進展することでカタリシスが得られた筈だ。 ◆弁護士が改心した理由だが、これは本人が何かを経験したとか、誰かに影響を受けたという事ではなく、ただ最愛の娘を失くした事が契機となっている。問題の解決策としては、実に安直である。 ◆この映画は当然描くべきことを描いていない。第一に娘の死ぬ場面だ。最大の泣かせ場であり、弁護士がどれほどショックを受けたを示す絶好の機会なのに。「いきなり死にました」では観客もどん引きである。その伏線があってしかるべきである。 次に告訴を逡巡していた声楽家が告訴を決意する場面。心の推移を見せてこそ感情移入できるというもの。弁護士が酒場で皆と「蛍の光」を合唱する場面がある。正しいことをしようと心に念じているが、それがなかなか実行できないもどかしい心情を巧に演出していて見事である。このような演出を声楽家にもすべきだった。バランスが悪いのである。法廷闘争も緩くて魅力薄。[ビデオ(邦画)] 6点(2011-10-11 20:43:44)《改行有》

304.  白痴(1951) 《ネタバレ》 妙子=絶対不幸者で魔性の女。少女時代から愛人生活。金で売られそうになる。妙子は綾子を自分にないものすべてをもっていると思っていた。綾子=恵まれた環境で育ったお嬢さん。気分の起伏が激しい。妙子に嫉妬する。亀田=聖者。善の象徴。戦犯となり死刑直前から奇跡的に生還するが後遺症で癲癇発症。純粋すぎて嘘がつけず、心に思ったことをそのまま口にする。他人の心を見抜く力、直観力に優れている。赤間=俗人、悪の象徴。妙子に恋をし、結婚を阻むためお金を出す。恋敵の亀田を殺そうとする。 ◆戦争の副産物といえる、珍奇な聖者亀田。彼は一瞬で妙子の不幸を見抜き、彼女の心をとらえてしまう。妙子の傷を癒したい一心で、結婚を申し込む。妙子は亀田はあまりに純粋すぎて、汚れた自分にふさわしくないと考え、綾子と結婚させようとする。綾子の心は揺れ動くものの、最終的に亀田との結婚を承諾。妙子は亀田が結婚したら、自分も赤間と結婚するつもりだった。しかし綾子は亀田が本当に自分だけを愛しているか知りたくて、亀田と共に妙子と対面、感情が噴出し、絶縁宣言をする。妙子は嫉妬する綾子を見て、亀田にはふさわしくない女と確信し、亀田に自分を選ぶか綾子を選ぶか迫る。亀田は戸惑うばかり。綾子は家を飛び出し、雪中をさ迷い、倒れて高熱を出す。妙子はその場で失神。嫉妬に狂った赤間は妙子を独占するために妙子を刺殺、精神を病む。亀田は精神は破綻する。純粋な心の鏡は欲望を曇りなく映し出す。亀田の純粋すぎる精神を媒介に、各人の欲望が増幅され、凶器となって跳ね返ってきた。全員が破滅するというショッキングな結末。純粋すぎる心はこの世に存在することは許されないのか? ◆男女入り乱れての息つまる心理戦。見えにくい心の動きを窓、吹雪、積雪、風、樹などの背景や仮面、悪魔像、服装、蝋燭などの小道具、そしてライティングで豊かに表現する。構図もビシビシ決まる。映画の技術教科書のような映画。 ◆純粋すぎる心というのは得てして人を傷つける。原作に共鳴して純粋な心で映画制作した監督も又打撃を受ける。フィルムは短縮され、客は入らず、批評も散々、会社から馘首を宣言される。落胆甚だしく電車にも乗らず、徒歩で家まで帰っ監督を待っていたのが羅生門グランプリ受賞の報せだった。本人は映画祭に参加していることも知らなかったのに。奇跡はある。[インターネット(字幕)] 6点(2011-10-06 09:34:46)《改行有》

305.  續・姿三四郎 《ネタバレ》 三四郎の活躍際立たせるためには敵を魅力的に見せる必要がある。桧垣兄弟がそれである。道場にやってきて壁板を突き破って帰って行く。ここは挨拶代わりなのでこれでよい。しかしその後がいけない。門人を次々を闇討ちするも、その姿を見せない。倒された門人の姿を見せる。観客に敵の強さをアピールしないでどうする?「想像させる」のはよいが、「想像させるだけ」では手抜きだ。格闘技を描く場合、相手がいかに強いか、どんなに凄い技をもっているか、どんなに厳しい練習をしているかを見せることで観客の気持ちは否が応でも盛り上がる。対して迎え撃つ三四郎が猛練習等を通じて、新しい技を編み出すなり、新心境に達するなどして試合に臨むのが常套。これらが一切無い。最後の決闘場面まで桧垣兄弟の空手が見れないのでは、決闘が盛り上がる筈がない。もっと言うと、勝つのは三四郎に決まっているのだ。観客の誰もがそれを知っている。故に期待させ、気分を昂揚させる演出がどうしても必要だ。◆かてて加えて、唯一技を見せた檜垣弟が決闘に参加しない。観客を馬鹿にするにも程がある。能楽の弱法師をイメージした異形の出で立ちで登場、時折奇声を発する。「あいつの残忍さには手を焼いた」「奴は本当の病気だ」と兄が語る伏線があり、どれほど凶暴な人物かを期待をさせておいて、「決闘しません」では納得がいかない。始末書ものだ。「三四郎の笑顔を見て改心しました」など噴飯ものである。あれだけ粗野、凶猛に描いておいて、笑顔がオチ。「負けた」などというが決闘していないのである。三四郎の天真爛漫さなどに何も感じないのがこの男の気質だ。◆納得いかないのは他にもある。三四郎の押し掛け弟子になった形の左文字。脇物語は彼の成長物語かと思わせておいて、後半ぷっつり出なくなる。ダメ脚本の典型だ。大きな伏線を張って置きながら、回収出来ていない。破門の件もそうだ。破門はどうなったのか?恋愛は?何もかも投げっぱなし!◆格闘技ものとしてもう一つの欠点は三四郎と敵の力量がありすぎると事。闘いは伯仲してこそ見ごたえがある。ボクサーとの格闘を前にしても三四郎に何の緊張もない。当たり前に登場し、当たり前に勝つだけ。賞金がいらないなら返せば良いものを非礼にも敗者に渡す始末。負けた相手にお金を恵んでもらってどんな気持ちになるだろうか。人間失格である。桧垣兄弟との決闘前にしてもほとんど練習しない。[ビデオ(邦画)] 4点(2011-10-04 22:45:19)

306.  素晴らしき日曜日 《ネタバレ》 あまりに貧しく、惨めな境遇のため夢を失いかけていた男が、恋人の一途な愛と励ましを受け、本来の自分の姿と夢を取り戻す話。男の心の再生譚である。お金はないけど、精一杯休日を楽しもうとする二人に惨めなことが起る。貸室を見に行くが家賃が高すぎる、草野球でホームランを打って饅頭代を弁償、友人(キャバレー社長)を訪ねるとタカリ扱い、戦争孤児に現実を見せつけられる、雨になる。名曲公演に行くが切符がダフ屋に買占められる、文句をつけたら暴行を受ける、恋人を下宿に連れこむが逃げられる。恋人と仲直りして喫茶店に入るがぼったくられ、お金が不足。だがここで不思議が起きる。あまりに惨めな体験と酷い珈琲を飲まされたおかげで、男は二人で喫茶店を開くという夢を思い出し、意地でも実現させる気になったのだ。落ちるとこまで落ちて上昇に転じたわけである。ふっきれた男は今日の埋め合わせをしようとする。聞けなかった公演の「未完成を」想像で聞こうというのだ。男がタクトを振ると二人の心の中に確かに音楽が流れだした。奇跡が起きたのだ。 ◆男がどんなに惨めな生活をしているのかは言葉で語られるだけで実感が湧かない。最低でも職場の場面が必要。冷静に考えれば、仕事はあるし、友達はいるし、恋人はいるしで、戦争孤児の何倍も恵まれている。戦争孤児は家もないのだ。男が唐突に指揮者のまねをするが、クラッシック好きだとか、元音楽家等の伏線が必要。未完成の場面は音を消しても楽しめる。 ◆ヒューマニスト黒澤は、社会の底辺でもがく庶民の姿を繰り返し描くが、これはその最初。悲惨な環境から善の道、悪の道どちらにも進むのが人間。黒澤は常に暖かい目線で彼らを見守り、どうすれば善の道へ進めるのかを考えさせる。社会の底辺を描いた作品が「酔いどれ天使」「どん底」「赤ひげ」「どですかでん」、そこから派生した善と悪の対照を描いたのが「野良犬」「天国と地獄」「悪い奴ほどよく眠る」 【告白】この映画を見て素直に感動できる人を尊敬します。間違いなく心がきれいな人です。数多ある恋愛映画の中で最も魅力に乏しいヒロイン。男があの女に欲情し、接吻や貞操を奪ったりしようとするのを見て、本当に男が惨めに思いました。別れた方が幸福なのでは?こんなひどい事を思ってしまった私にはこの映画を語る資格などないのだと思います。私の心は未完成そのものです。[地上波(邦画)] 5点(2011-10-03 22:44:11)《改行有》

307.  静かなる決闘 《ネタバレ》 軍医の藤崎は野戦病院での手術中に誤まって梅毒に感染した。手袋を途中で脱いでおり、明らかな医療過誤である。婚約者美佐緒と6年間も婚約しているが結婚の意思はない。結婚すれば梅毒が感染ってしまう。それでも真実を言えないのは、もうすぐ完治するではなかというかすかな希望があり、事実をありのままに美佐緒の性格からすれば「いつまででも待ちます」と言うに決まっているからだ。結局父が真相を知り、婚約は破棄する。女性を抱きたくても抱けない懊悩。藤崎は病気と同時に良心とも戦っている。◆長い婚約の理由が知りたい。戦時中は子孫繁栄を第一とし、出征が決まってからあわてて結婚することも珍しくない。五年間も出征していたのか。◆藤崎はどうして梅毒のことを父親に話さなかったのかということ。二人は同じ医者どうしでもある。適格なアドバイスが受けられた筈だ。又それだけひた隠しにしているのに、見習い看護婦峯岸には治療薬を注射している姿を隠さない。二人が話す声を父親が立ち聞いて、初めて知れた。不自然である。藤崎が本当に誠実ならば婚約者に真実を話すだろう。 ◆藤崎の苦悩は察してあまりある。恋愛の末、結婚と考えていたら戦争にとられ、結果若い身空で梅毒もち。終戦で帰ってきても、結婚どころか、完治するまで性交渉は出来ない。完治もいついなるかわからない。しかし彼は医者という職業に身をおいていることで救われる。自分を不幸だと思うが、周囲に彼が助けなければならない患者が常にいるからだ。人を救う職業の人は高潔になる傾向がある。◆藤崎と対照的に描かれるのが中田。梅毒の感染源だ。中田は藤崎のアドバイスを無視して、療養に努めず、結婚。妻は感染し、死産となった。死児見せられて正気を失う。◆峰岸はダンサーだったが、客の子を孕む。男には逃げられ、堕胎する金もなく、自殺未遂。藤崎にひろわれ、看護婦見習い。最初は人生に幻滅していたが、藤崎の生き方に心酔。子供を育て、看護婦になる道を選ぶ。◆主題としては、不運にして不幸を背負った場合に真の人間性が問われるということ。良心に則って人間として正しい道を進むのか、自棄を起し、堕落の道を進むのか。藤崎は前者であり、結果として峰岸を立ち直らせた。後者は中田であり、妻も子も健康も失った。美佐緒も不幸だが、結婚が決まり希望がある。ヒューマニスト黒澤監督の面目躍如。ただ演出が大人しく、弾けていない。[ビデオ(邦画)] 6点(2011-10-02 22:08:20)《改行有》

308.  わが青春に悔なし 《ネタバレ》 野毛という人物がよく分らない。性格や思想は分るが、肝要の行動、「運動」の様子がわからない。大学で教授が追放さたのに反発し、集会やデモを起こすが、音声は無い。野毛は何度か逮捕され、偽転向して、経済研究所を立ち上げたが、その裏で何をしていたのか?彼は左翼運動家で共産主義革命を夢みていたのか?単純な反ファシズム、反政府の自由主義者なのか?それともアナーキスト?野毛は日本を救いたくて、それは戦争を回避する事らしい。具体的に何をしたのか?スパイ?彼が働きかけるのは日本の政財界、軍部に対しての筈だ。日本の機密を米国やロシアに流していたのか?だがそれなら却って戦争の契機になる場合がある。単純に共産思想を吹き込んでいたのか?それがスパイ行動とどうして結びつく?そして10年間両親に会っていないのはどうして?連座を恐れていた?何をしていてのかさっぱり分らない人物に共感はできないし、彼の妻であることを唯一の矜持にして生きていく幸枝にも共感できない。ちなみにゾルゲは二重スパイで祖国を売った。 ◆最初は幸枝は理屈ばかり云う野毛を煙たがっていた。だが野毛が転向するとがっかり。野毛を追って東京に行くも何年も会わず。自立した姿を見せたかったのだ。会うと「秘密があるのね。それをわたしに下さい」と逆プロポーズ。幸枝は野毛の人間性に惹かれているようです。 ◆野毛は逮捕されてから登場しなくなる。彼の行動や信念が正しいと漠然と描かれているだけだ。彼の試みは失敗して、彼は英雄ではない。代わりに幸枝が讃えられる。だが幸枝の信念は夫を信じることだけだ。野毛の信念は明らかにされてない。彼が本当に正しかったのか疑問は残る。野毛は幸枝を巻き添えにしたくなくて、運動の事は何も話さなかった。裁判でも明らかにされなかった。二人の間には断絶がある。幸枝は野毛の表の顔しか知らず、ただ直観的に正しいと信じているだけ。幸枝は野毛の理解者ではなく信奉者だ。「夫は正しかったと信じたい」一念だ。何とも煮え切らない脚本だ。◆「野毛が逮捕されたときの検事が糸川」はありえない。二人は知り合いなので担当になる事はない。◆川を渡る学生を最初と最後に登場させてのシンメトリー構造。黒澤映画特有の粘着質な演出が、田植場面で初めて登場した。幸枝の静から動への変化。野毛父の沈黙から怒りの爆発。目ぼしい場面はいくつかあります。 [インターネット(字幕)] 6点(2011-10-02 01:22:06)《改行有》

309.  虎の尾を踏む男達 《ネタバレ》 この映画は能楽『安宅(あたか)』を原作として制作された。筋はほとんどそのままで、地謡の部分をニュージカル仕立てにしている。エノケンの強力を加えてコミカルにしてある他、エノケンが飛び六方の真似事をするなど、歌舞伎の「勧進帳」の影響も強い。黒澤流古典の換骨奪胎で、枯淡な能舞台をそのまま映像に写したような静かで落ち着いた趣がある。淡麗な水墨画の巻物を見るようだ。歌舞伎では見得を切ったり、六方を踏んだり、大袈裟な演出で観客を惹き付けるが、本作ではあくまで抒情的演出を貫く。弁慶の勧進帳の披瀝と山伏問答の場面は実に見事。役者としての品格がある。現在この役を演じきれる役者がいるだろうか?◆戦時中は検閲官がいて、監督は常に彼らと丁々発止やりあっていた。やれアメリカ的だ軟弱だと文句をつけられ、様々な理由を以て企画した作品、脚本がことごとく中止決定となり、半ばヤケになって、遂に誰にも文句のつけようのない古典に題材を求めた。フィルムや予算の制限があり、ロケは撮影所の裏山でするという簡易方式。シーンも3つしかない中編。元々次の作品につなげる為の中継ぎの意味しかなかった。一種の逃げである。監督は無意識の内に自分を判官に見立て、判官贔屓に自らの心を慰めていたのではないかと想像する。撮影中に終戦を迎え、間もなく完成したものの、今度は「主君への忠義」の内容がGHQコードに触れ、発表禁止扱いに。つくづく運の無い作品である。◆まだ駆け出し監督にとっては経験を積んだという意味が大きいだろう。初めての時代劇。エノケン強力のキャラは、「乱」の狂阿弥につながる。山中の場面は「羅生門」の予習。機転で関所を通る場面は「隠し砦の三悪人」にも出てくる。経験がよい財産になっているのだ。 [インターネット(字幕)] 6点(2011-10-01 02:10:31)《改行有》

310.  怪獣総進撃 《ネタバレ》 怪獣映画に必須の3K(巨大さ、脅威、恐怖)が伝わらない。人間の目線で見上げるようなアングルで撮ればよいものを怪獣目線や俯瞰が多い。これではすぐ飽きてしまう。一歩一歩あゆむときの重量感が無い。怪獣が町を破壊しているとは思えず、ただセットを破壊しているとしか映らない。住民が逃げ惑う場面はあるものの、フィルム合成の演出が冴えず恐怖が伝わらない。円谷英二は特技監督ではなく監修だけ。名前貸しだろうか?◆宇宙人が地球を侵略するのに怪獣達を操るという設定は面白い。怪獣達が暴れる舞台が世界中に広がりを見せているのは評価できる。遺憾なのは怪獣たちが人間に飼われて怪獣ランドにいること。野生のライオンは獰猛で怖いが、サーカスのそれは怖くない。眠っていた怪獣たちを宇宙人が一頭一頭目覚めさせるようにすれば、怪獣の紹介にもなったのに。怪獣ランドは安直すぎる。未来社会の設定だが、町並みは新しくない。◆宇宙人が地球人そっくりの可愛らしい女性であることに萎えたが、後半になり、実はそれは仮の姿であり、本当の姿は鉱山生命体であることが判り、納得できた。一応の説明はできている。宇宙人の言葉使いが妙に親切なのも新鮮だ。◆月基地にある怪獣遠隔操縦装置が破壊され、怪獣たちは本能から富士の裾野にある宇宙人の地球基地を襲うようになる。ぎりぎり了解できる説明だ。ただそこで秘密兵器である宇宙怪獣キングギドラがあっけなく倒されるのは如何なものか。3,4頭は倒すべきだろう。少なくとも最初は怪獣を圧倒しなければ、誰しも納得できないだろう。ギドラが倒れた後に最終兵器、ファイヤードラゴンが登場。とても意外な展開だった。プロットだけたどるとさしたる穴もなく、良い出来の方だといえる。だが肝心なファイヤードラゴンが期待に反して弱く、正体を現せば何ども登場した宇宙船そのものなのだ。所詮は仇花であったのが悲しい。◆バランは保存していた着ぐるみの状態が悪くて使えず、人形のみが作られた。やっつけ仕事です。[インターネット(字幕)] 4点(2011-09-30 14:10:40)

311.  陽炎座 《ネタバレ》 男に弄ばれた女の魂の怨念をこの世とあの世、現実と幻想、生と死が表裏一体、万華鏡のように入り混じる世界として描く。◆品子は老婆から死女の魂入りの鬼灯を買う。山崎は縁あってそれを引取る。二人は死者が見えるようになり、二人に絆が生じる。品子の亭主玉脇は遊びの限りを尽し、生きる興味を半ば失い、いつ魂を抜かれても不思議でない状態。妻に飽きた玉脇は妻と山崎に心中させようと企む。二人は、男女の契りを結ぶ。◆松崎は品子そっくりの女イネに会う。玉脇の前妻でドイツ人。髪と眼の色を変え、和装して夫の好みに合わせる。玉脇にとってイネは月光で変化する姿を愛でる人形でしかなかった。松崎が会ったとき、イネは既に死んでいた。◆品子から恋文を貰った松崎は金沢へ向かう。舟に乗る品子とイネを目撃。玉脇は二人を心中させようとするが山崎の拒否に会い失敗。山崎は和田という男に不思議な人形を見せられ、人形の裏に死後の世界があることを知る。◆品子とイネは不思議な友情で結ばれ、表裏一体の関係。品子の恋にイネは嫉妬し、山崎に迫る。恋文を送ったのはイネ。玉脇から幻扱いしかされず、山崎と情交し、もう一度生きてみたいと願う。死者と交わった山崎はあの世へ近づく。◆山崎は陽炎座という芝居小屋に入る。玉脇も品子もいる。そこの狂言方(脚本家)は魂入りの鬼灯で、魂の半生を役者に演じさせていた。イネの魂が現れ、苦悩と怨念の半生を演じる。玉脇は堪らず鉄砲を撃って退席するが、その鉄砲にはイネの灯籠が付いていた。芝居は続き、イネは生き返った。品子は芝居の先が知りたくなったが、今度は品子が演ずる番だという。品子は夫への復讐心から不義をしたと告白。死んで決着つけると言う。愛憎の一念が小屋を崩壊させ、品子は棺桶で怨念の鬼灯を吐き出す。その頃現実の世界で玉脇と品子は心中した。夢の世界が現世を変えた。「うたたねに恋しき人を見てしより夢てふものは頼みそめてき」は復讐の和歌だった。精神崩壊した山崎は万華鏡の先に死後の世界の自分と品子の姿を見る。ドッペルゲンガーを見た山崎は死期が近いことを悟る。◆鬼灯を売る老婆、品子の髪を掴む老婆、芝居小屋の老婆が脚本家であり、現実世界での脚本家でもあった。○△□は現世で表現不能なあの世文字。品子が帳面に書き、人形の中の女が男の背中に描き、万華鏡の中の品子が山崎の背に描き、山崎の最後の言葉。美しいが残虐絵が不快だった。[ビデオ(邦画)] 7点(2011-09-28 17:24:01)

312.  宇宙戦争(2005) 《ネタバレ》 違和感が強い。人類と宇宙人との戦争を描いたSF娯楽大作の筈が、離婚別居中の父子が破綻しかけた親子愛を取り戻すシリアスドラマになっていて取り合わせが悪い。路線は斬新だが娯楽性は薄れる。肝心の人間ドラマが薄っぺら。父は子供たちに関心がなく高圧的だが、彼なりに愛情はある。泊りに来る子供達に食料も用意していないが、仕事は断った。息子は反抗期で、娘とは心が通じない。そこへ宇宙人襲来。父が命がけで自分達を守る姿を見て、子供達が心を開く。その企図は分るが、息子は心を開きかけたが、勝手に戦場へ行ってしまう。娘は恐怖に震えるのみ。ラストでも娘は母と抱き合う。息子と再会しても、彼がどう過ごしたか不明なので感動に至らない。父子関係に大きな変化がなく、感情移入ができず、何とか助かって欲しいとは思えない。宇宙人が劇的に倒れたのと同様に人間ドラマも劇的な変化が欲しい。父が娘のために人殺しするのは本末転倒。◆トライポットの攻撃シーンは迫力あり。地割れや火だるま電車シーンは秀逸。軍との戦闘場面がほとんどないのは残念。空を飛んだり、宇宙船がいないのも不本意。空襲による圧倒的な軍事力を見せれば、人類の絶望感が表現できたのに。1家族の視点で描く弊害だ。大統領も軍司令部も学者も登場せず、群像劇もない。地球規模の戦闘が局地に留まっている。その象徴が、家族が潜む地下室に宇宙人が侵入するシーン。田舎の廃屋に侵入して何の情報を得ようとするのか。宇宙服もなし、武器も持たずに。◆遥か昔からテトラポットで地球を観察していたという設定は不用。何のために何万年も待つのかという解けない疑問を抱かせるだけ。最初は光線で人を蒸発させていたが、後半では人を捕捉、集血。一貫性がない。赤い植物は宇宙人の繁栄に必要なもの(テラフォーミング?)なのだろうが、地球環境で生息できるかの実験を怠っていた。◆有名なオチは変更のしようがない。だから視点を変えて家族愛を描いた。だがもっと説明のしようがあるだろう。宇宙人をおばかさんにしたのでは台無しである。映画を否定するようなもの。宇宙人なりに高度な対策を練ってきたが、地球の細菌やウイルスには彼らの科学を越えた神秘の性質があり、それに破れたという風な後づけが欲しい。あっけないのが悪いのではなく、説明がないのが悪い。ちなみに父がクレーンを操縦する姿はトライポットを操縦する宇宙人に擬していて興味深い。[DVD(吹替)] 7点(2011-09-25 20:19:08)(良:1票)

313.  そして誰もいなくなった(1974) 《ネタバレ》 豪華なディナーを食べたり、ワイン飲んだり、連続殺人事件が起きているのにみんな妙に落ち着いているのが気になる。最初が毒殺なのにみんな飲み食い平気なんだね。みんなが同じ部屋に集まって監視し合えばよいのに。銃殺が起これば手の硝煙反応調べるとか、ピストルは誰も使えないようにどこかへ置いておくとか、それくらいの事はしてほしい。死体もどう処置したのやら。謎解きもお粗末。最後毒をどうやっていれたの?「そして誰もいなくなったと」という原作は、そして誰もいなくなるから面白いのに、そして誰もいなくならないこの映画、これを観て面白いと思う人は、そして誰もいなくなった。 追記:この映画は戯曲版を元にしているようだ。戯曲版では最後はインディアンの寓話は「首をくくる」ではなく「結婚する」となる。発売当初の原題は「Ten Little Niggers」で米国では差別用語であったため「And Then There Were None」と改題され、やがて原作者もそう改題した。戯曲版を書くにあたり、生存者を残すことにした。原作者にとっては、全員がいなくなる事が重要ではなく、寓話に基づいて殺人が起こることを重要視していた事がわかる。以上の事が判ったからといって映画が面白くなるわけでもない。監督がどうして小説ではなく戯曲を元にして映画を作ったかを理解するものは、そして誰もいなくなった。[地上波(吹替)] 2点(2011-09-25 05:32:05)《改行有》

314.  誰が為に鐘は鳴る 《ネタバレ》 165分版で鑑賞。内容は不出来。先ず主人公のロバートという人物が不自然。スペイン内戦なのにアメリカ人。外国人のこのこやってきて、命をかけて共和国派に肩入れする理由が希薄。そしてこの人が英雄的行為をしないんですね。線路爆破では倒れた仲間を助けずに射殺。橋爆破作戦で山岳ゲリラを仲間にするが、リーダーシップが取れない。味方が敵と交戦しているのに見殺し。変態のパブロに言われ放題。パブロに裏切られ、起爆装置を失くす。「女と一緒にいる時間はない」などと言う舌の根も乾かぬうちからいちゃつき放題。戦場であんなことされたら憎まれますよ。士気が保てない。ロバートが英雄的人物として描かれてないので、クライマックスも盛り上がらない。最後は自己犠牲というより自業自得。◆作戦がよくわからない。そもそも山岳のあの橋を爆破するのは敵の補給を絶つため。飛行機の奇襲攻撃と同時に爆破せよとの命令だが、その必要はなく、確実に夜に爆破すればよい筈。ロバートは敵の動きを味方に知らせ、橋を爆破しても意味が無いと言うが、どうして?手紙を見た将軍は、この奇襲は失敗するというが、どうして?すでに敵の多くが橋を渡ってしまったということだろうか?まだ戦車は残っていたけど。味方に連絡するのに7時間!無線はないのか。もやもやしますね。山峡に小さな橋があって、それが戦術的に大きな意味があるとは思えないんですよ。そのあたりの説明がない。そんなに重要なら大人数で実行すればよいのに。橋一つ爆破するのに駄目男達がぐずぐずしているだけの映画に思える。やれ雪が降ったらどうだとか、パブロを殺せとか、殺したら逃走出来ないとか、ピラーは醜いとか、手相が悪いとか、パブロが味方を殺すとかぐだぐだですね。作戦に無関係のことや仲間割れを描いてばかり。ストレスはピークに達します。雪はだいぶ積もったけど、1日経つと嘘のように消えてしまうのは手抜きですか?◆恋愛部分についてはそこそこの出来ですが、女が泣きながら辛い過去を告白しようとしているのにそれを止めるのはどうかと思う。見る側のストレスになります。全て聞いてあげないと気が晴れないでしょう。話すことが癒しになるのだから。「もういい、いやな忘れるんだ」はアドバイスとしては失格です。両親が殺され、暴行された女なのに尻軽女っていう印象です。「初めてのキスよ」は絶対嘘。原題の「鐘」は教会の死を知らせる鐘のこと。[DVD(字幕)] 4点(2011-09-24 06:10:30)

315.  駅馬車(1939) 《ネタバレ》 単純明快な物語。人間ドラマ、恋愛、格闘シーン、スカッとするラスト、どれも秀逸で、娯楽映画としてのエッセンスが詰まっている。足りないのは芸術性くらいだが、アパッチ襲撃シーンは芸術の域に達していると思う。フィルムのコマ数を落して馬の疾走感を出す、馬車がカメラの上を駆け抜ける、俯瞰撮影、フィルム合成、危険なスタントシーン、賭博師が撃たれるシーンを見せない選出など、どれも素晴らしい。 ◆人間ドラマはもっと掘り下げることが可能。①医者は医者として自信を失う事があり、トラウマを抱え、酒浸りになった。出産と治療を通じて、医師としての自信を取り戻す。②賭博師は判事の息子だが放蕩者になった。そのきっかけの一つがかつて貴婦人に失恋したこと。偶然再会して護衛を申し出る。③銀行家は厳格すぎる妻との生活に嫌気がさしていた。その日の大喧嘩する。そのとき大金が持ち込まれ、アパッチの襲撃で電信が途絶えた。チャンスとばかり駅馬車で脱出を試みる。命からがら助かった彼は、かわいい息子がいたことを思い出し、自首する。④娼婦は足を洗ってこの町に来て真面目に働いていたが、婦人会から追い出される。唯一の友人がリンゴで、無理と知りながら、彼との結婚を夢みていた。⑤貴婦人は騎兵隊の大尉と駆け落ちをして一緒になった仲。夫が重傷との連絡を受け取り、身重の身を押して、単独夫の元へ駆けつけるところ。賭博師と大尉は恋敵だった。⑥リンゴは無実の罪で刑務所に入れられた。3兄弟が嘘の証言をしたためだ。しかもリンゴの父、弟を殺したのは3兄弟だと判る。リンゴは脱獄し、復讐を誓う。◆アパッチが馬車の馬を撃たなかったのは、馬の強奪が目的だったからと解釈しましょう。アパッチにとって馬は通貨と同じです。残念なのはせっかくやってきた騎兵隊とアパッチの対決シーンがなかったこと。終わってみれば2名負傷したものの犠牲者は1名のみ。3兄弟との決闘はあっけないです。3兄弟は逃げずに堂々と勝負しますが、もっと悪者キャラにして、リンゴをだまし討ちにするが、返り討ちに会う方がカタルシスがあります。保安官が結婚の約束をしたリンゴと娼婦を見逃してやるという粋な計らいで終了。「一杯おごろう」「一杯だけな」誰でも祝杯をあげたくなります。ところでリンゴと娼婦はこの日が初対面ですが、女が娼婦ということを知っているのでしょうか。 [DVD(字幕)] 9点(2011-09-24 01:18:19)《改行有》

316.  アンナ・カレニナ(1948) 《ネタバレ》 アンナは貴族の妻として平穏な暮らしを送っていた。愛する息子にも恵まれていた。運命のいたずらで、そんなアンナが青年将校ブロンスキーと恋に落ちる。初めて知った燃え上がるような恋。アンナは全てを捨ててブロンスキーの元へ走る。だがその代償は大きかった。夫は離婚してくれず、息子とも会えない。ブロンスキーの子を宿すが流産して、生死の間をさまよう。アンナの夫の寛大な態度にショックを受けたブロンスキーは拳銃で自殺未遂する。二人は出奔し、ヨーロッパを旅行したが夫を裏切り、子供を残したきた思いが心に影を落として楽しめない。帰国したアンナは夫に内緒で息子に会うが、夫に見つかり、離婚は絶対しないと宣言される。二人は社交界からも見放され、孤立を深める。精神的に追い詰められた二人の心は離れて行った。アンナは二人が初めで出会った駅で自ら電車に轢かれ死亡する。 ◆アンナは優雅で美しく、誰にも優しく寛容で、何自由なく暮らしている貴婦人でした。それが不倫の恋に落ちます。総てをなげうっても悔いの無い情熱的な恋でした。しかしすべてがうまくいかず、アンナは顔に悲愴さを漂わせ、皮肉屋で、打ち解けない女になります。そしてブロンスキーの心が離れていったのと悟った彼女は死を選ぶのでした。二人だけでなく、アンナの夫の苦悩も描かれています。他に、ブロンスキーに婚約破棄させられた娘が幸せな結婚生活を送る事。不倫は秘されているうちは明るい噂話に過ぎないが、大っぴらになると非難を招く事。アンナは兄の不倫の仲裁にやってきてブロンスキーと出会うが、そのときは不倫をたしなめる役だった事等皮肉たっぷりです。汽車の事故を最初に見せる伏線もうまいですね。ドラマティックな展開はあるのですが煽情的に描かれておらず、あっさりと進み、見ていて少々退屈ですが、文豪の長編をダイジェストで見せてくれるだけでもありがたいと思いましょう。ビビアンとローレンス・オリビアの実生活での「ダブル不倫、結婚、破局、精神を病むビビアン」もこんなだったのかという穿った見方もできます。ある意味貴重かもしれません。[DVD(字幕)] 6点(2011-09-23 20:07:30)《改行有》

317.  アンナ・カレニナ(1935) 《ネタバレ》 アンナ(A)は夫カレーニン(K)、息子セルゲイ(S)と平穏に暮らしていた。軍人ヴロンスキー(V)がAに一目惚れ、人妻と知っても恋の炎は消えない。当惑していたAもいつしかVの愛情にほだされ、Aを愛していることを告白する。二人の関係は噂になり、最初は気にもかけなかったKだが、落馬したVを気遣うAを見て不貞を確信する。Kは妻を責めるが、妻の気持ちは変わらない。かえって仕事と世間体ばかり気にする夫を責める始末。二人の間にもともと愛情はなかったのだ。怒った夫は離婚は許さず、家を追い出し、息子に合わせないという。一方Vは将軍からこれ以上醜聞が続くと退役させるとの警告を受ける。Vは軍隊より愛を選び自主退役する。AとVは欧州へ旅行に出かける。自由と心の解放を感じていたAだったが、Sのことを考えると憐れでならない。二人は帰国する。AはSに会うが、Kに見つかり、出入り禁止となる。二人は社交界から締め出されていたが、Aが勝気なところをみせ、堂々と二人でオペラに出かける。Vは無為の暮らしに不満を覚え、義勇軍に参加し軍隊復帰する。それを聞いたAはVの心が自分から離れてしまったとのを嘆き自殺する。今は天国で安らいでいるだろうと慰める共に、「誰が知るだろうか」と自問する。 ◆Aの兄嫁の妹キチィはVとの結婚を夢みていた。しかしVがAに恋してしまったので、地方地主リョーヴィンの求愛を受ける。 ◆Aの兄スティーヴァは妻を愛しているが、女遊びがやめられない。妻を愛することと、愛人を愛することは別の事だと信じている。スティーヴァの妻は半ばあきらめ、泣き寝入りの日々を送っている。 【感想】原作では恋のため不貞を犯し悲劇的な死を迎えたAと望まぬ結婚をしたが子供に恵まれ幸福に暮らすキティを対比して描く。そして不倫は罪だが、享楽にふける世間(貴族)にAを責めることができるのかを問う。表情や感情表現に乏しい女優のせいで物語は盛り上がりもなく、淡々と進む。AがVの子供を産み、Vが苦しんで自殺を図るなどの挿話を省略しているのも響いている。Vは真実の恋を見つけたと信じ、Aもそう信じた。二人は世間体を気にせず、自分達の気持ちに正直に生きようと誓った。恋の炎を燃え上がらせる二人。だがそれは様々な苦悩を生み出す源泉ともなった。やがて二人の心は離れ、Aは自殺、Vも戦場へ赴く。そういった壮大なドラマの一端しか窺えない。 [DVD(字幕)] 5点(2011-09-23 16:11:22)《改行有》

318.  戦争と平和(1956) 《ネタバレ》 「貴族の恋愛」と「戦争」を描く長編。貴族の生活はパーティ、乱痴気騒ぎ、遊びの恋、オペラ、舞踏会、田舎の別荘、狩などで光陰が過ぎる。そこへ戦争勃発、国家存亡の危機である。ピエール(P)伯爵は非摘出子という出生の影響か、気真面目な一方で、虚無的な一面がある。正しいことをしようと思っても、放蕩をしてしまう。戦争や暴力を憎んでいたが、決闘する。矛盾だらけだ。Pは愛されていないと思っていた父と臨終に和解。家を継ぎ、美女エレン(E)と結婚。性格が合わず、別居となり、Eは浮名を流す。PはEを愛していると思っていたが、そうではなかった。彼の信念はぐらつく。Pは戦争の実際を知りたいと思い戦場へ赴く。目の前で繰り広げられる殺戮。負傷兵を救護所に運ぶも既に息絶えていた。戦場の悲惨さを実感して侵略者ナポレオンを憎悪。仏軍はモスクワに進行、露軍と民衆は撤退、放火により首都は燃え上る。Pは首都に留まり、ナポレオン暗殺の機会を待つ。その機会が訪れたが、ナポレオンが火事鎮火を命じる声を聞いて留まる。殺したいほど憎む人間に思えなくなったのだ。彼は捕虜となる。十代の若者が処刑されるのを見る。冬が訪れ仏軍は撤退、捕虜も連行される。歩けなくなれば射殺される雪中行軍。仲良くなった楽天家の農民は途中で落伍。露軍の攻撃で開放されるが、戦闘で親戚のペーチャは死ぬ。まだ戦争が遊びに見える年頃だった。隊長は奇しくもかつて決闘し重傷を負わせた相手で、Eの死を知らせてくれた。隊長の怒りで、仏軍捕虜は全員射殺。◆ペーチャの姉ナーシャ(N)は無邪気で魅力的。かつてPに恋をしたが失恋。その後Pの友人で軍人のアンドレイ(A)と恋に落ち婚約するが、Aの父が難色を示し、結婚は一年延期される。婚約中Eの弟アナトーリと情熱的な恋に落ち駆け落ちを決意。アナトーリには妻がいると知ったPは二人を別れさせる。NはAに謝罪の手紙を送るがAの怒りは消えない。やがてAが重傷を負って帰還。親身に看病するN。Aは心からNを愛していたと知るが逝去する。◆戦争が終り、N一家は家に戻る。家は半壊状態。帰還したPが立ち寄る。抱き合う二人。Nが言う「あなたはこの家のように苦しみ傷つきながらも立っている」。戦争を経験した者にとって平和のもつ意味はとてつもなく大きい。「成し難いが大切なのは命を愛し、苦難の時も愛し続けること。何故なら命が全てだからである」[DVD(字幕)] 7点(2011-09-23 03:04:17)

319.  プレデターズ(2010) 《ネタバレ》 そこそこ楽しめましたが、ダメなところを挙げたいと思います。 【メンバーが弱い】地球で選りすぐりのメンバーが集められた筈が、選定に手違いがあったようです。 ロシア兵は近距離から密かに二人に向けて銃を発射しますが一発も当たりません。M134ミニガンで毎分6000発も発射できる優れものですが、絶望的な射撃ベタです。傭兵諜報部員、女兵士、メキシコマフィア、ヤクザは武装していますが、他の二人は持っていない。ヤクザは刀の達人なのに所有してない。仲が悪いのもいただけない。喧嘩したり、仲間を囮にしたり、見捨てたり。挙句の果てに医者が女兵士を襲う。そんなところを見せてどうする。皆Pとの戦闘を期待しているのに。せめて見た目を強そうにしましょう。ちなみにプレデター(P)は、医者が殺人鬼だとどうやって知ったのか?探偵でも雇ったんでしょうか。 【ノーランド】 10年も生き延びたのに太っている!Pの戦闘服や銃器を所有、経験も豊富、基地らしき所もある。さあこれでPと戦える準備が整った、二回戦戦闘開始、と思ったら、あれれ、焚火で皆を窒息死させようとしている。寝てるところを撃てばいいじゃん。結局皆に逃げられるは、Pには気付かれるはで、ジ・エント。とほほ。 【人間ドラマ】戦闘がメインですが、人間が描けてないと空疎なものになります。人物に感情移入させてこそ戦闘シーンが生きるというもの。ところがリーダーである傭兵は自分だけ助かればよい派。ラストでも人間がパラシュートで降りてきてるのに背を向けますね。レイプ犯は戻れたらレイプしたいと言い出す。ヤクザは無言。医者は殺人鬼で女を襲う。話を面白くしようとして個性的なキャラにするのはよいが、それだけではだめ。仲が悪くても危機を乗り越えならが、徐々に友情が育まれていくことを描くことによって感情移入できる。どうでもいいと思ってみるのと、助かって欲しいと思ってみるのとでは天の地の差がある。ここが映画に惹き付けるコツ。ロシア兵がわが子の写真を見せたように、各人に感情移入できるような挿話をもたせるべきだった。 【戦闘】さすがは軍事のプロと思わせる作戦がない。人間は圧倒的に弱いので、捕虜Pと組んで共同戦線を張ればよかったのに。武器もPのものを利用して、そうすれば対等になって面白くなった。 【疑問】太陽が全然動いてない、なんて言ってるのに夜になってる。[地上波(吹替)] 6点(2011-09-22 21:47:28)(笑:1票) (良:3票) 《改行有》

320.  PUSH 光と闇の能力者 《ネタバレ》 謎が次々に提示され、めまぐるしく変わる展開を手ぶれカメラと高速多カット編集で息つく暇なく一気に見せる演出が新感覚。殺されかけたキラがディビジョン(D)から逃げ出し、ニック(N)の元にDの二人が現れ女を探していると告げ、次にキャシー(K)が現れ600万ドルの儲け話をもちかけ、NとKが市場で中国の超能力家族から攻撃され、傷ついたNはKの母の友人に助けられ、その頃キラは港で目を覚ます。観客を惹き付けますね。特に冒頭、患者の手から落ちたボールが、ドアに当たって向きを変え、絶妙のタイミングで扉に挟まりキラの脱走を助けるシーケンスに痺れました。この映画は面白い!その後の怒涛の展開。期待は膨らみます。ああ、しかし、鑑賞後自分は”ウォッチャー”じゃなかったことに気付かされます。広げた謎が収束しないですね。加えてKの母を取り返す計画、ディビジョンの軍隊化計画が全く動かない。延々三つ巴でキラとスーツケースの取り合いに終始するドタバタ劇に成り下がっています。Nは父から「花をくれる少女を助けろ」言われますが、この大伏線の決着がついていない。父は何をしたかったのか?キラが殺人をするのも後味が悪い。本物のウォッチャーならこの映画は見ない! 【スーツケースの謎】Kがスーツケースの薬を追うのは母のため。薬とKの母と交換するDとの交渉に用いる。Dを憎むNはKに協力。Dは取り返したい。中国人は金のため。薬の作用は超能力を倍増させるがほんどの人が死ぬというもの。この薬はキラが脱走するときに盗んだ。だがKの話では母が自分が生まれる前からの計画という。Dにとっては薬はいくらでもあるのだから、タイプゼロであるキラの方が大切。だが国家機密のため中国人に渡るのは困る。最終的に薬はNとKの手に渡ったところで終了。肝心の母を助け出す場面がない。冷静に考えると大して重要なものじゃないですね。キラにしか効かないのだから。恋人がプッシャーだと騙されっぱなし? 【疑問】 ①最高のウォッチャーであるKの母は何故捕まったのか? ②ウォッチャーは宝くじ、競馬、株などで金儲けしないの?他の能力者も使いようでなんとでもなりそう。 ③Dの二人が最初にNの元に現れて室内を嗅ぎまわったとき、Nの元恋人であるキラのことに何故気づかなかったのか? ④Nはカーバーが香港にいるのをどうして知ったか? ⑤Nはキラにあったとき「捜した」というけど本当か?[DVD(字幕)] 6点(2011-09-22 14:46:28)《改行有》

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