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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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341.  ゴーストライダー ものすごく偏差値の低い映画で最高でした。メラメラと燃えてるガイコツがバカ笑いしながら大好きなバイクで爆走。スーパーマン・リターンズやバットマン・ビギンズが描いていたような苦悩や葛藤、トラウマは一切なく、バカなヒーローがうれしげに腕力を振るうのみという素晴らしい内容でした。特に最初に変身した後の豪快な暴れっぷりは見もので、父親とのドラマや悪魔との契約や業というそれまでの話がコンマ1秒で飛んでいくほどのバカさ加減を披露していました。こんなバカのためにえらいもったいぶっていたメフィストもバカに見えました。また、こんなバカにあっけなく倒される敵もバカに見えました。同様に、こんなバカに振り回される警察もバカに見えました。何より、あれやこれやと気を揉み、将来を約束した恋人を捨てるほど悩んでいた姿がこれかいと、ニコラス・ケイジがすごいバカに見えました。頑張って苦悩の演技をすればするほど、「夜になればアレに変身するんでしょ」と本当にバカに見えます。とにかくバカに溢れた映画ですが、それがあまりに突き抜けており、かつ脚本のレベルの低さと反比例してビジュアルが丁寧に作りこまれているので嫌いになれません。メラメラと燃えるバイクがビルの壁を垂直に登る!水の上も走る!馬も燃える!怪力でヘリコプターを振り回す!こんなどうしようもない場面をきっちりと実写で見せてしまうわけです。技術スタッフの努力の賜物と言えますが、同時にこの監督のビジュアルイメージも実に達者だなと感心させられました。今回は敵が弱いこともあって「ゴーストライダー誕生篇」という感じでしたが、ぜひともシリーズ化して次回作は「死闘篇」として、もっとすごい戦いを見せてくれればなぁと思います。[DVD(吹替)] 7点(2007-09-08 20:11:56)

342.  トランスフォーマー 子供の頃に大好きだったトランスフォーマーがハリウッドでまさかの実写化!しかもマイケル・ベイ&スピルバーグ!全世界ですさまじい大ヒット!公開日を指折り数えるほど期待しつつ見に行ったのですが、ここまでつまらないとはと愕然としました。正体不明のヘリがロボットに変形し、突如カタールの米軍基地を襲うイントロは最高。また冴えない主人公のために愛車(実はトランスフォーマー)がお節介を焼く前半部分もほほえましく、最初の1時間は本当に楽しめました。「宇宙戦争」や「ET」の良いところを合わせた感じで、スピルバーグの味がよく出ているなと。しかし話のテンションを上げていかねばならない中盤以降になってもくだらないギャグは止まらず、ダラダラと緊張感のない展開に辟易。マイケル・ベイ印のアクションは毎度音だけはデカイものの、細かいカット割りで訳が分からず。キャラクター物って、立ち姿やファイティングポーズをこれでもかとかっこよく見せてあげるのが大事だと思うのですが、その美学が完全に抜けていました。またトランスフォーマー達に個性がないのも重大な欠点。アニメのトランスフォーマーがヒットしたのは、それぞれのロボットに個性があったことです。トランスフォームする前の乗り物やアイテムに沿った性格付けがなされ、トランスフォーム後もアイテムの特性を引き継いだ強み・弱みがありました。また同じような強みを持つ個体が敵の集団にもいて、各キャラクターにライバルがいました。このようにキャラクターが面白いことで話も面白くなっていたのですが、今回の実写版ではどのキャラクターも同じようなデザインでオプティマス・プライム以外はほとんど判別がつかず、一応性格や特技の設定は設けられていたものの、いざバトルに突入してもその特技が活かされることがまったくないという状態。否定的な意見はもっぱらマイケル・ベイに向けられているようですが、この実写版はトランスフォーマーへのそもそもの理解の部分で失敗しているように思います。アニメではあれほど強烈だったスタースクリームの個性がなくなっていたり、メガトロンをあっけなく殺してしまったり(しかも人間の手で)と、オリジナルが好きな人が作ったとは思えない部分が多々ありましたし。[映画館(字幕)] 3点(2007-09-08 19:11:56)(良:1票)

343.  デス・プルーフ in グラインドハウス 期待して見に行ったのですが、あまりに面白くなくてガッガリでした。そもそも「グラインドハウス」は上映形式が先立った企画のはず。上映時間が短く内容も薄いB級映画だが、2本同時に見られて、おまけにいかがわしい予告編もあって妙な満足感がある。いわば新橋のそば屋の「カツ丼&そばセット」のようなものです。ひとつひとつのメニューは誉められたものではないが、ふたつを同時に味わえるからそれはそれでいいじゃないかという。そんなチープなボリューム感を復活させることが趣旨の企画であり、それぞれの作品も同時上映を前提に意図的に安っぽく適当に作られているだけに、一本ずつに切り離されてしまうと相当ツライ。しかも本来内容のない映画を一本の上映作品として成立させるため、オリジナルにはなかったシーンを追加して上映時間を水増ししてしまったのがさらに裏目に出ているように感じました。ダラダラと続く会話が退屈で仕方なく、内容からするとこの映画は90分程度が限界だったと思います。商売に合わせて作品を勝手に編集することで有名なワインスタイン兄弟ですが、ここでも兄弟の儲け主義が作品の価値を失わせてしまっていて本当に残念です。本編開始前に流れた「プラネットテラー」の予告が相当面白く期待が膨らんだのですが、「デスプルーフ」がこの状態では「プラネットテラー」も推して計るべしだなという感じです。「プラネット・テラー」はあえて劇場に行かず、DVD発売の際に「デス・プルーフ」との同時上映にして「ひとりグラインドハウス」を楽しみたいと思います。[映画館(字幕)] 4点(2007-09-08 18:14:41)(良:1票)

344.  サンシャイン 2057 《ネタバレ》 死にゆく太陽を復活させるというあらすじ、おまけに主要キャストに日本人俳優と聞けば映画の出来がクライシスだった「クライシス2050」を思い出しますが、こちらはハードSFとして相当レベルの高い仕上がりです。破壊的な太陽光と常に隣り合わせで宇宙をポツンと航行しているという、想像するだけで背筋が凍るようなシチュエーションを見事に映像で表現しており、特に前半などは「2001年宇宙の旅」や「エイリアン」などと比較してもまったく遜色ないほどの仕上がり。人間関係がひたすら淡々としていることも、かえって不気味さを煽ります。「地球を救うために絶望的なミッションを引き受けたクルーはどうなっていくのか?」ということを突き詰めて考えた結果がこれなのでしょうが、いちいち心情の説明をしてもらわないと話を理解できないような客層をはっきりと切り捨て、終始ドライに徹することで作品の味を保っていると言えます。また科学考証についても同様で、かなり厳密な科学考証に基づいて書かれた隙のない脚本ですが、説明的な描写が入らないので知的好奇心の高い人でないとついてくることは難しいのではと思います。このように明らかに客を選ぶ映画であり、娯楽という呪縛から解き放たれたおかげでハードSFとしては成功しているのです。そして、クールな前半から一転して後半は演出・脚本・編集のすべてが大暴走をはじめ、観念的な世界に突入します。監督&脚本家の前作「28日後…」同様ここで一気に作品が崩壊をはじめるのですが、本作ではより確信犯的に作り手たちが作品を破綻させています。要は「イベント・ホライゾン」とまったく同じ末路なのですが、「5人いる…」から一気にテンションを上げてこの見せ方というのが実にうまい。娯楽的なわかりやすさを徹底的に排除することで、作品が陳腐になることを回避できているのです。一応はミッションの成功という形で締めくくられますが、イカロス2号であれほどの事があったとは知らず太陽の恵みを受ける地球の人々を描くことで、見終わった後もいろいろ考えさせる映画になっているのも見事。SF好きは要チェックの映画だと思います。[映画館(字幕)] 8点(2007-04-20 16:01:53)(良:7票)

345.  ブラッド・ダイヤモンド 「ラスト・サムライ」では時代劇で日本人を感動させるというウルトラCをやってのけたエドワード・ズィックがまたしてもやりましたね。綿密な研究により極めてリアルにアフリカの問題を描いた良作です。ダイアモンド争奪戦を軸に、政府軍とゲリラ勢力の対立、虐殺、少年兵、先進国の無関心、貧困につけこむ大企業・傭兵とさまざまな要素をぶち込み、これを破綻させることなく上質なドラマにまとめ上げ、さらに娯楽作としても満足の仕上がりにしてみせる手腕は相変わらず見事としか言いようがありません。ロケーションにこだわった映像の説得力は抜群でアフリカの悲惨な現実を浮き彫りにするし、アクションも見ごたえ十分。少年兵のくだりなどは特に恐ろしかった。また、主人公3人がそれぞれの思惑を持ってダイアモンドを目指すあたりにも感心しました。なんだかよくわからない理由でアクションをやる主人公の映画が多い中、本作の登場人物たちはそれぞれにしっかりとした動機を持っているので、余計な疑問を持たずにドラマに集中できましたから。「アミスタッド」「グラディエーター」とアフリカ人役でおなじみジャイモン・フンスゥ、頭の良い美人をやらせたら天下一のジェニファー・コネリー、「ハムナプトラ」「24シーズンⅣ」など胡散臭いえらいさんにピッタリのアーノルド・ボスルー、各自よくハマっていました。ただし唯一残念だったのがディカプリオで、確かに彼はよく頑張っていました。超現実派のひねくれ者が次第に人間味を取り戻す過程を嫌みなく巧みに演じていたし、アクションも非常によかった。ただ、アフリカの内戦を戦い抜いた百戦錬磨の傭兵にはどうしても見えないという大きな弱点が。体の線が細いし、あの童顔ではヒゲを生やしてもあまり強そうには見えません。同世代の俳優であればマーク・ウォルバーグあたりの方がより傭兵らしく見えたと思います。こういうとこ、顔のいい俳優は損ですよね。本人がいくら頑張っても、ルックスのせいでできる役柄が相当限られてしまうので。トム・クルーズもブラッド・ピットも苦労しているところですが、ディカプリオは兄貴分のジョニー・デップのように演技とルックスを両立できる俳優になれるのか。とりあえず今は成長過程だと思います。[映画館(字幕)] 7点(2007-04-13 01:41:28)(良:2票)

346.  デジャヴ(2006) 《ネタバレ》 【予備知識一切なしで見るべき映画なので、未見の方がレビューを読まれる際にはご注意を】ブラッカイマー&トニー・スコット&デンゼル・ワシントンとくれば「いつもの無難なアクション大作だろ」と思いきや、史上空前のとんでもない仕掛けがぶち込まれた異様な映画となっていました。タイムスリップを題材としたSF映画は数あれど、アクション映画のメインアイテムとして大真面目にタイムマシンを登場させる大胆不敵さには驚きました。誰も思いつかなかったこの一発芸は、実に巧みな脚本と卓越した演出センスによって、映画として十分成立するレベルにまで到達しています。多くのヒット作の脚本を手がけてきたテリー・ロッシオは、このすさまじい題材がどうすれば観客に受け入れられるかを見事に計算してきます。いきなり「これはタイムマシンです」と言うのではなく、デンゼル・ワシントンが謎のマシンの正体を暴くという展開を入れることで説得力をぐっと増しているのです。また、トニー・スコットのハイテク描写の巧みさにも舌を巻きます。「好きな場所に入り込んで過去を覗き見ることができるが、膨大な情報処理には4日を要するため常に4日前の映像しか見ることができず、しかも一度に見られるのは一つのアングルだけで巻き戻しはできない」という煩雑な基本設定を観客に受け入れさせるというウルトラCに挑み、言葉と視覚を交えることで見事それに成功しているのです。装置がタイムマシンであることが暴かれる一連の描写も、脚本レベルの驚きのみに留まらず映像的な面白みも十分。右目で現在を、左目で過去を見ながらのカーチェイスという荒唐無稽な見せ場では、知的な面白さと映像的な興奮でテンション上がりっぱなし。ここまで煩雑な設定を映像で饒舌に語れる監督は他にいないでしょう。確かに細かいアラはいくつか目に入ります。タイムパラドックスの処理に矛盾があったり(爆発した救急車や血のタオルのくだりは時系列上明らかに矛盾が…)、犯人の扱いがやたら適当だったり(目的が最後まで不明、人物像も適当、爆弾魔なのになんでマシンガン持ってんだ…)、ヒロインがデンゼルを受け入れる過程の葛藤が単純だったり。こうした細部の甘さにより傑作となる詰めを外しているような気もしますが、このとんでもないアイデアを実行し、成功させたこと自体を評価しようではありませんか。[映画館(字幕)] 8点(2007-04-03 12:49:42)(良:1票)

347.  トム・ヤム・クン! さらわれた象を探して悪党を倒すという狂った話でありながら、これが実に当たり前のことのようにマジメに描かれている辺り、タイのみなさんの象への愛情と愛着が感じられました。象をいじめるやつは死ねばいいんだというネイチャーへの熱い思いが日本人の私にも十分伝わり、野生動物を食材としか思わない中国人を倒しまくる場面には大興奮。敵に対する容赦のなさではスティーブン・セガールを超えているトニー・ジャーの魅力がよく出ていました。こういった単刀直入な展開とカンフー(この映画ではムエタイですが)の相性は抜群にいいですね。Xスポーツ軍団にはじまり、カンフー、カポエイラ、剣術、プロレス、オカマというマンガのような異種格闘技バトルはもう最高。トニー・ジャーの圧倒的な身体能力に頼りきった「マッハ!」よりさらに進化し、夢のような対戦カードを準備。それぞれの敵が十分にキャラ立ちしているのがうまいところで、また各自の特性を活かしたアクション演出にも目を見張ります。スタントだけでなく撮影や編集も相当に高度でセンスがあり、格闘バトルをここまでうまく撮るのはハリウッドでもちょっと難しいレベル。絶賛された「007/カジノロワイヤル」冒頭の肉体アクションよりも、こちらの対Xスポーツ戦の方が良くできていたと思います。とまぁカンフー映画としては大満足なのですが、マッハで成功した監督が色気を出そうとしたために映画のバランスが悪くなっているのが残念。前述したようにカンフー映画はシンプルであればあるほど面白いのですが、本作では警察の汚職やマフィアの権力争いなどの不要な展開が盛り込まれてしまっています。またそれが面白ければいいのですが、あまりにもシナリオが下手くそすぎて意味がよくわからないのが致命的。タイ人警官やタイ人コールガールが味方として登場するものの(良い人はたいていタイ人)、結局何の役にも立たないのではいない方がマシ。特にコールガールなどは登場の仕方はいかにも重要なヒロインという感じだったのに、その後何の役割も果たさず、トニー・ジャーを含む主要登場人物との絡みもなく、画面にもほとんど登場しないという素敵な状態。あの女優さんに撮影の途中で何かあったのかなと、こちらが心配してしまうほどでした。[DVD(字幕)] 7点(2007-03-31 17:41:53)(笑:1票) (良:2票)

348.  A.I. この映画は出来が良い悪いの次元ではなく、恐ろしいまでに異常で理解ができないという評価が適切ではないかと思います。クリス・ロックロボが笑いながら破壊され、とんちんかんな命乞いをするフリークロボが容赦なく溶かされるという残酷ショーのあからさまな異常性だけではありません。デビッドが家族を心を通わせるという、本来は暖かくあるべきシーンからしてすでにおかしいのです。終始無機質な笑顔を浮かべ、気がつけば音もなしに背後に立っているデビッドは文句なしに怖いですよ。あのうざい言動と言い、こいつには一秒たりとも家にいて欲しくないと思える稀有な主人公です。一方、彼と母の愛情を争うこととなる実の子のキャラクターもムチャクチャで、終始意地悪なことか卑怯なことしかしないという、どこぞの安い少女マンガよりもレベルの低い憎まれ役です。そんな彼らが見せるドラマは、かつて子役を使わせると天下一品と言われたスピルバーグのやることとは到底思えないほど稚拙であり、登場人物に感情移入させないようわざと仕向けているのではないかとすら思えます。そもそも本作は天才スピルバーグが誰よりも得意としてきたジャンルであり、普通に撮っていればそれなりにレベルの高い感動作にできたはずです。なのになぜ、あえて自分の得意技を封印してまでこのような出来にしたのか?売れ線から外れてまで一体何がしたかったのか?その見当がまったくつかない、作り手の意図が何も見えないというあたりが何とも怖いですね。キューブリックの真似事をしようとして失敗したのか?自身の残虐性をもはやコントロールできなくなっているのか?家族向けの感動大作を装いながらこれほど残酷で不気味な話を見せてくること自体が、スピルバーグにとって何かの挑戦だったのか?まぁ一から十まで理解不能な映画ですが、これを額面通り感動作と勘違いし、世界で唯一大ヒットさせた日本の観客も理解不能。なんとなくいいものを見た気にさせる見事なラストを除いて、本作に感動できる場面はないように思うのですが、にも関わらず感動作だとありがたがった日本人…。「アルマゲドン」でも思ったのですが、テレビCMで感動作だと言われれば何でも感動作だと思ってしまうほど映画を見る力がないのかなと、最後に何となく感動できれば2時間半の長丁場を耐えてしまえるのかなと、学力低下の影響はこんなところにも出ているのかなと。[映画館(字幕)] 2点(2007-03-26 23:08:14)(笑:1票)

349.  ホステル 日本以外では空前の大ブームとなっているスプラッタホラーの代表的な1作ということでブルーレイディスクを購入して鑑賞しましたが、あらすじから想像されるよりもスプラッタは少ないように感じました(もちろん、ホラーに免疫のない人が見ると卒倒する作品ではありますが)。顔を半分焼かれた女の子の特殊メイクがやたらチープ等、映像的に群を抜くほどショッキングというものでもないでしょう。むしろこの映画からは、イーライ・ロスという人物の素晴らしい才能が感じられました。見せない部分の怖さ、これから起こる惨劇への不気味な兆候の表現が実にうまく、復讐へとなだれこむ後半の盛り上がりも絶好調で、この人の脚本・演出は完璧に計算されているなと感心しました。ピーター・ジャクソン、サム・ライミと現在ハリウッドを引っ張っている監督がふたりともホラー映画出身ということからも、優秀なホラー映画を作ることは監督としてのポテンシャルのひとつの証明だと言えます。観客を怖がらせるには、どのようなバイオリズムで鑑賞されるかを先回りして脚本・演出を仕掛けていくという能力が必要となりますが、このイーライ・ロスという人物はそれに非常に長けているように感じました。この人はただ気持ち悪いものを見せるだけの人物ではないなと。今後の成長が非常に楽しみな監督さんだと思います。[DVD(吹替)] 7点(2007-03-22 00:25:03)(良:1票)

350.  エターナル・サンシャイン 《ネタバレ》 極めて特殊な設定ですが、その中身は非常に単純。①感情は記憶を超えうるのか?、②ラブラブだったふたりが別れに至るまで。この映画がテーマにしているのはこの2点だけです。①については、恋愛感情とは巡り合わせで起こるものなのか(=偶然)、それともまったく違うシチュエーションで出会っても恋愛感情は起こるものなのか(=運命)という問いかけですが、本作の出した答えはYes。ジョエルとクレメンタイン、メアリーとミュージワック博士の2組のカップルが記憶消去を体験しますが、どちらも記憶消去の後にもう一度恋愛感情を抱きます。ですが恋愛が一度失敗に終わっていることを知ると、メアリーは博士との報われない恋愛を終わらせることを決め、一方ジョエルとクレメンタインはお互いの欠点を認識し、自分がそれを許容できなかった事実を受け止めつつも、また恋愛しようと決めるのです。ジョエルとクレメンタインの決断はいかにも映画的なきれいごとのような気もしますが(あんな告白テープを聞かされて付き合う気になりますか、普通)、その根拠となる②が非常に秀逸なのです。ジョエルとクレメンタインの恋愛は私たちの身の回りにも転がってるような本当に普通のもので、だからこそふたりの葛藤には誰もが身につまされる思いをさせられます。私は彼女と鑑賞したのですが、ふたりがケンカする場面になると自分まで気まずい思いがしたし、一方ラブラブの場面では妙に照れくさかった。それほど恋愛というものがよく描けているんだと思います。感情が記号のように並んでるだけの映画や、ありえない主人公の泣けるラブストーリーなんかではこんな気持ち味わえません。その描写において、時間を逆行させるという掟破りが尋常ではない効果を発揮しています。お互いの欠点がどうしてもガマンできなくてケンカを繰り返しているところからはじまり、ラブラブだった頃へと戻っていくという驚天動地の脚本。あれだけ罵ってた相手が自分にとってかけがえのない存在だったのだと再認識する過程が押し付けがましくなく本当に自然でした。さらにこの映画、幼少時代へのノスタルジーまで盛り込んでみせます。どこまで凄いんだと感心しっぱなしでした。ともすれば難解となる脚本をわかりやすく、かつ刺激的なビジュアルでまとめてみせた演出もさすがで、芸術的にも感情的にも得るものの非常に大きい作品だと思います。[DVD(吹替)] 9点(2007-02-13 02:25:02)(良:2票)

351.  スーパーマン リターンズ 《ネタバレ》 9.11やアフガン・イラク攻撃などアメリカにとって波乱の21世紀においてなんでも解決してくれる無敵のヒーローは成立するのだろうかという難題に挑み、そこに突破口を作ってみせたブライアン・シンガーの手腕は相変わらず見事でした。かつての恋人に「スーパーマンはなぜ不要なのか?」という論文を書かれ、それがピュリッツァー賞まで受賞するほど変わってしまった世の中。町の人助けやちんけな犯罪者の成敗はやってくれても、テロや戦争など人類が抱える本当の困難には立ち会ってくれないじゃないかという大きな矛盾を前提としてこの作品は作られていますが、それに対する答案をきちんと準備しているのが立派なところ。スーパーマンは神のごとき力を持って世界を救うヒーローというよりも、目の前で困ってる人をほっておけない気の良い超人というスタンスを明確に出してきているのです。最初から最後まで基本的に彼は知り合いを助けるために戦っていることからも、彼の戦いの目的が個人的な方向へシフトしていることがよくわかります。また、スーパーマンに救われた人たちが感謝と尊敬を示すリアクションが丁寧に描いているあたりからも同様の意味が感じられます。墜落する飛行機を救う大スペクタクルの後に、スーパーマンの華々しい帰還を大歓声で迎える観衆が映し出される場面はまさに象徴的で、彼が観衆に支えられる市井のヒーローである(だから難しい世界情勢ではなく目の前の事件に立ち会うのみ)ことがよく描かれています。スーパーマンが病院に運ばれるというヒーローものとしてはありえない展開も、21世紀のスーパーマン像を確立する大博打だったと思います。徹底的なリアル路線にシフトしたバットマンよりも、ヒーローへのロマンと現実のうまい折衷をやってのけたスーパーマンの試みの方を私は評価します。そういえば劇中スーパーマンの活躍を報じるテレビの中から「ゴッサムでも目撃されており」という発言がチラっと聞こえるのですが(字幕では未訳)、バットマンの町にまで人助けに行っちゃダメでしょ。映画全体は恐ろしいまでに丁寧に作りこまれており、テンポも遅いのでやたら冗長に感じますが、それはスーパーマンに対する思い入れの違いだと思います。ガンダムが普通のアクション映画になっていたら日本人としては許せないのと同じ感覚で、アメリカ人にとってのスーパーマンはこのボリュームがふさわしいのでしょう。[映画館(字幕)] 7点(2007-02-11 17:28:45)(良:1票)

352.  トゥモロー・ワールド 《ネタバレ》 おもしろくなりそうなアイデアや展開がぶちこまれているわけでもない、前代未聞の斬新な見せ場があるわけでもない、しかしこの映画にはとてつもない「何か」が宿っています。絶望的で陰惨で、それでいて皮肉に溢れとてつもなく人間的という独特な世界を完璧なまでに作り上げており、映画全体が生き物のように躍動しています。ストーリーらしきストーリーなど必要ない、というよりもこの世界を味わうためにはストーリーすら蛇足と言えます。人類になぜ子供ができなくなったのか、ヒューマン・プロジェクトとは何者なのか、確かに娯楽作としておもしろくなりそうな要素を相当切り捨てています。普通の監督であれば当然描いたであろうことを一切無視し、あくまで主人公セオの目線のみで作られています。しかしそれで正解。世界の謎を解き明かすことも、未来のために戦うこともなく、行く先々で出会う人から言われるがままに動き、ただ危険から逃げることしかできない。こうしたヒロイズムの否定は、人類全体が死へと向かっている世界で何もできはしないという絶望感をさらに煽ります。これでいいのです。そしてその絶望の対極にある希望の描き方も実に秀逸。クライマックス、軍隊による殺伐とした掃討作戦が開始され、兵士達は銃を無差別に乱射し、テロリストは狂気にとりつかれたかのようにそれに応戦、一般市民はただただそれにおびえるばかり。しかしひとりの赤ん坊が人々の心にあった共通の人間性を呼び起こし、戦闘を止めてしまうのです。アクション、スリル、ドラマ性、メッセージ性、哲学性などがすべて頂点に達したかのような素晴らしいシーンで、映画史上これほどの場面は稀有だといえます。アルフォンソ・キュアロンという監督にはあまり馴染みがないのですが、自ら脚本も手がけてこの作品を作った手腕は神業的としか言いようがありません。娯楽的な要素を相当切り詰めた上に、立派な人物や印象的なセリフが出てくるわけでもないのに、ここまでおもしろくかつ含蓄のある作品を自分のセンスのみを頼りに作ってしまえるというのは恐るべき才能だなと。キューブリックですらこのレベルは作れなかっただろうほどの超絶な傑作です。映画館はガラガラでしたが(笑)、後の世では不動の傑作との評価を受けるであろう作品だと思います。[映画館(字幕)] 10点(2006-12-12 23:55:55)(良:8票)

353.  007/カジノ・ロワイヤル(2006) 《ネタバレ》 何度目かとなるリニューアル作ですが、過去のシリーズからの連続性を完全に断っているという意味では史上最大のリニューアルといえます。次回作は本作の続きになると言われていますから、カジノロワイヤルをスタートとして新生007を作る、ドクター・ノオやゴールドフィンガーといった往年の作品も現代風にアレンジして再映画化する計画でもあるのだろうかとも推測されます。だからこそ歴史を捨て去り、007の誕生をテーマにしているとのではないかとも思われます。また従来のボンド像にまったくそぐわないダニエル・クレイグを起用したのも、新シリーズ構築に対する計算があってのことではないかとも推測されるのです。そのような事情があってか本作に対するスタジオ側の熱意は並々ならぬものが感じられ、シリーズ中でもトップクラスの仕上がりだと評価できます。純粋に映画としての完成度が高いうえに、シリーズへの目配せも充実しており、ファンも初心者も両方納得させられる映画になっているのです。冒頭、トイレで裏切り者を始末するシーンはシリーズ中異色なほどの荒っぽさですが、007は殺しのライセンスを持った殺し屋なのだという本来のジェームズ・ボンド像を再確認させるのに十分な効果をあげており、また殺しとは鮮やかに決められるものではないというリアル路線を決定的に印象付ける素晴らしい場面だといえます。そこからいつもとは違ったアレンジでの「銃口」→主題歌となるのですが、定番を踏襲しつつも新しいというセンスのよさには唸りっぱなし。序盤ではチンピラのようなジェームズ・ボンドが、カジノロワイヤルに潜入するために服装の着こなしや酒の選び方を覚えていって007になっていくという流れも実に良くできています。それと同時に精神面の変化も大変な説得力をもって描かれており、ジェームズ・ボンドという個人が007というスパイに変わっていく過程がドラマチックに描かれています。そしてラストでは、個人を振り払い007となったジェームズ・ボンドがついに姿を現し、普段であれば第一声であるはずの「ボンド、ジェームズ・ボンド」の定番セリフを、本作ではクライマックスになって初めて口にするという粋な演出。そしてこれまた定番のジェームズ・ボンドのテーマがエンディングになってはじめて流れるのもこれまた粋。次回作への期待も一気に高まりました。[映画館(字幕)] 8点(2006-12-11 00:59:10)(良:1票)

354.  ソウ2 《ネタバレ》 まぐれでヒットした低予算映画の続編はたいていロクなものがないのですが、本作はその珍しい例外。前作の公開からわずか1年で企画→脚本→撮影→編集→公開という凄まじいハイペースで製作されただけに前作の恩恵に預かっただけの駄作になるかと思いきや、前作と同等のクォリティを維持しているのに感心しました。一瞬たりとも飽きさせずハラハラさせっぱなしの演出は見事です。ジグソウの正体がわかっている以上本作に謎解きの要素は少なく、即別的な展開やスプラッタで内容のなさを補っていると言えなくもないですが、過剰なスプラッタがあってこそこのスリルは出せたとも言えるので製作側の姿勢に間違いはなかったと思います。ただし、前作の時点ですでに怪しかったジグソウの行動原理が本作ではさらに危なくなっており、「生の悦びを自覚させるためのゲーム」という体裁がほとんど崩壊寸前のところにまで来ているのは問題だと思います。自分の命を軽んじたり、倫理的に誤った生き方で人生をムダに費やしている者に生死をかけたゲームをさせ、生きていることへの感謝を再認識させるというのがジグソウの目的であり、そのゲームには被験者達の普段の行動を皮肉った仕掛けが準備され、苦痛に耐えてでも生き延びるか、そのまま死ぬかの二者択一を迫られます(セブンのジョン・ドゥと似てますね)。ここでポイントなのがジグソウの要求に耐えれば必ず生き延びる道が準備されているということなのですが、今回のサバイバルゲームには生き延びる道がなかったように思います。死ぬと予定されていた者は死ぬしかない展開でした。また、今回のゲームの最終的な目的は刑事を罰することにありましたが、この刑事が命を奪われねばならないほどの悪人だったとも思えないし。確かに彼は証拠をでっち上げて多くの人間を刑務所に送っており、その行動のツケを払わせると言うのならジグソウの行動も理解できますが、彼がかつて刑務所に送り込んだ犯罪者達をジグソウ自身もサバイバルゲームで罰する対象に選んでおり、つまり彼らが罪人であることはジグソウ本人も認めるところだと言えます。法で裁けない罪人を個人の裁量で罰したという意味ではジグソウも刑事も同じ行為をしたのに、なぜ刑事が処刑の対象になるのかという論理的な矛盾があります。2代目ジグソウが個人的な恨みをぶつけただけの話なら、それこそ説教キラー・ジグソウの名が廃ります。[DVD(吹替)] 7点(2006-11-26 16:13:10)(良:1票)

355.  イーオン・フラックス(2005) 大コケぶりに妙な期待をしたのですが、実際に見ると意外とあなどれない作品だなと思いました。話がわかりづらく世間一般に認められる映画ではないと思いますが、映画好きや批評家から酷評を受けるほどのものでもないでしょう。とにかく映像美に感心。ブレードランナーからマトリックスまでSFといえば闇。テクノロジーの無機質さと闇は抜群の相性なのですが、この映画はそれを覆す試みをしており、かつ成功させているのです。雲ひとつない真昼間に緑いっぱいの庭園を走り抜けてSFを成立させているのです。また、通常のSFではテクノロジーを感じさせるマシーンや建造物が登場するものですが、この映画では代わりに小道具でそれを表現しているので独特な印象となっています。それらを見せる監督の美意識も大したもので、独特なデザインをうまく作品に取り込んでいます。外敵を感知するとトゲになる芝生や、足に手のひらを移植している暗殺者等の突飛なアイデアもダサくすることなく映像化に成功させており、なかなかセンスの良い人だなと感心しました。一方でストーリーはいまいち弱く、陰謀の根幹がクローン技術でしたなんてのはSFではよくある話で、またテクノロジーに生命の神秘性が追いつくというテーマもSFの常套句なのでアイデア自体は別段特殊なものではありません。また、脚本に舌っ足らずなところがいくつも目につきます。まずイーオンがなぜレジスタンス活動を行っているかの説明がないので、彼女がトレヴァーと心を通わせていく過程のドラマが引き立っていません。人類はたったひとつの都市に密集して暮らしているのに、イーオンは兵士をボコボコ倒せるような訓練をどこで受けたんだというそもそもの疑問もスッキリしないし。都市上空を旋回している飛行船が実はクローン製造工場だったというどんでんも、そもそもあんなものがどういう理由付けをされて飛んでたのかの説明がないのでどんでんになってないし。また、政府トップの暗殺があまりに簡単なのも納得できず、その上その暗殺犯がいとも簡単に逃亡し、しかも再びトレヴァーに接触しに行けちゃうという安易さは回避すべきだったと思います。とまぁ脚本には穴が多いのですが、これはビジュアルを見せるための映画なんだと割り切ってみると、バカみたいな話でビジュアルを台無しにせずきちんと硬派な印象を残しているので、良くはありませんがそれほど悪くもないと思います。[DVD(吹替)] 7点(2006-11-25 23:39:00)

356.  ジェヴォーダンの獣 フランス貴族に並んでインディアン風の男が立っているポスターを見た時点で「これはバカ映画だ」と確信したのですが、いざ鑑賞すると意外にも時代劇としてまっとうな出来なので驚きました。ヴァン・ヘルシングのように「設定だけは時代劇ですが」みたいな軽いものではなく、衣装やセットも手がこんでいるし演出にも重厚感があってよくできているのです。登場人物の演技やセリフもバカっぽくなく、怪しい時代の怪しい田舎の雰囲気も良く出ていて、少なくとも前半はどこの大河ドラマかとでも言わんばかりの仕上がりとなっています。問題のカンフーインディアンも撮影や編集がよかったためか視覚的にはそれほど浮いて感じられず、マニという人物もキャラクターとしてきちんと完成されているので、フランス貴族とカンフーという無茶苦茶な組み合わせなのに巧く見せるなぁと感心しました。ただし話の展開が単調なので後半になると猛烈に退屈になってきます。確かに後半は獣がついに姿を現し見せ場も増えるのですが、話自体が求心力を失っているので見ていてもまったく盛り上がらないのです。「実は○○は~~でした」などという短絡的な怒涛の展開が起これば起こるほどチープ加減に拍車がかかり、クライマックスに行き着く頃には完璧なB級映画になってしまいます。監督もその自覚があるのかないのか、最後のバトルは無茶苦茶で笑ってしまいました。文科系の学者さんで得意の武器は銃だったフロンサックが、インディアンばりのフェイスペイントして二刀流で大暴れ。ブレイドばりに敵のど真ん中へ飛び降りて大見栄を切ると、武闘派マニですら勝てなかった敵一味をひとりで殺しまくります。あんた、そんなに強かったのか?と驚いていると、今度はヴァンサン・カッセルが伸びる剣で対抗。重厚な時代劇としてはじまった話のクライマックスがこれかと、高級フランス料理のデザートがガリガリくんだったような気持ちになりました。安易にアクションで決着をつけるよりも、ジェヴォーダンの獣に関する陰謀や駆け引きをもっと見せて欲しかったような気がします。モニカ・ベルッチの正体をもう少し早く暴いて、闇の勢力とバチカンとの知的な駆け引きを後半の山場にすれば良い映画になったと思うんですけどね。[DVD(字幕)] 5点(2006-11-25 19:42:54)(笑:1票)

357.  ティアーズ・オブ・ザ・サン アントワン・フークアという人物は良い監督なんだか悪い監督なんだかよくわからない人です。この人はマイケル・ベイやサイモン・ウェストらと同じプロパガンダ・フィルムズの出身で映像は確かにMTV風なんですが、ベイのような軽さやバカっぽさがなく、意外とどっしりとした映画を作ってみせます。そういった意味では本作に適任と言える人物で、火薬大量消費のアクションパートと重苦しいドラマパートの色合いを違和感なくまとめられたのは彼の手腕あってこそだと言えますが、一方でストーリーテリングに無頓着なところが見られます。困難な作戦に挑む特殊部隊の物語なのに、人数もさほど多くない隊員ひとりひとりの名前すらよく確認できないという見せ方はさすがにないと思います。せっかく個性的なメンバーが揃っているのに、彼らが誰だかよくわからないまま死んでいくというのは実にもったいない。また難民の描き方も中途半端で、最初から最後まで彼らはお荷物でしかないのでは感情移入できません。特殊部隊にはない土地勘を活かして協力関係が築かれるという話にすれば、彼らの存在感や見せ場のバリエーションも増えたはずです。そしてなんといっても最悪なのがケンドリックス医師の扱いで、せっかく助けに来てくれた特殊部隊に文句しか言わないバカ女にしか見えません。ウォーターズ大尉の行動にはケチをつける一方で、敵に追われてるのに休憩させてくれなどと危機意識ゼロのことを言い出したりで、本当にイライラしました。確かに、彼女の連れている難民は子供や病人が多数いて、彼女は自分のためではなく彼らを気遣って無理を言ってるのですが、そういった面が伝わる描写がまったくないのでバカ女にしか見えないのです。そんな感じでツメの部分で失敗しているのがもったいない限り。基本的にはそれほど悪い映画だとは思いませんでしたから。また、多くの方が指摘されているようにアメリカ万歳的な部分もありましたが、あれは製作側が意図したものではなくアメリカ人の地が出たものだと思います。私が一番不自然に感じたのは越境に成功した難民が「自由だ!」と叫ぶところで、自由を絶対の価値観とするアメリカ人ならではの発想だなと。また、大統領の息子が「私の父は民主主義の普及に努めていまして」なんて語るシーンもやはりアメリカ的。アメリカ人は自由や民主主義が世界的な価値観だと信じ込んでるんだなというのがよくわかります。[DVD(吹替)] 6点(2006-11-23 19:12:30)

358.  フレイルティー/妄執 ビックリしました。ビル・パクストンというぱっとしない俳優の初監督作で、しかもサイコサスペンスという難しいジャンルに挑戦なんて誰が期待するんだって思いますが、これが大変な出来で本当に驚かされました。確かに脚本の出来が秀逸というアドバンテージもありますが、監督の采配が驚くほど的確であることも否定できません。何を見せて何を見せないべきかという判断が非常に的確だし、役者から良い縁起を引き出しているのも自身が俳優のビル・パクストンならではと言えます。この映画が独特なのはサイコキラーの父親を持った子供達の物語ということであり、狙われる被害者や犯人を追う刑事を主役としてきたこれまでのサイコサスペンスとは一線を画しているところにこれまでにはない面白さがありますが、こうした前代未聞の題材だけに従来のサスペンスとはアプローチが大きく異なります。「羊たちの沈黙」のレクター博士や「セブン」のジョン・ドゥなどはおおよそこの世のものとは思えぬ異常性を発揮して作品の要となりましたが、ここでのサイコキラーはただ異常なだけではいけないのです。愛する父親が殺人鬼となった時に子供達はどんな反応を示すのかがテーマだけに、異常性を発揮する前の親子関係がきっちり描けていないと題材は価値を失います。そこに来て監督ビル・パクストンはこの特殊な親子関係を違和感なく見せてくるのですから大したものです。同時に俳優ビル・パクストンは良い父親と狂気のサイコキラーを多重人格ではなく同一人物の中で見せるという難しい演技も成功させているし、まさかここまで才能のある人だとは思いませんでした。知られざる傑作とはこのことなんだなと思わせる魅力的な映画です。[DVD(吹替)] 9点(2006-11-18 01:32:10)(良:1票)

359.  フライトプラン 《ネタバレ》 力技の面白い映画でした。「飛んでいる飛行機という完全な密室で娘が姿を消し、機内の誰もが娘のことを知らないと言う」このようなとんでもない話をきっちりと映画の形に押し込め、かつちゃんとしたオチもつけてきた脚本のアイデアは非常に秀逸と評価できます。確かに「娘が誰にも見られていない」というトリックはあまりに杜撰で、ジョディ親子が機内の誰かと一言でもあいさつを交わしていれば崩壊する大変な危うさ。こんな無茶な計画はありえません。がしかしこの荒唐無稽な前振りありきでこれをどう料理するかがこの映画の味とも言えるわけで、できれば目をつむってあげるのがいいかと思います。スーパーマンを見て「そんなやつはいねぇよ」なんてつっこまないのと同じだと思ってあげてください。製作側もこの大きな欠点については十分承知していたようで、だからこそ97分というすさまじい短時間で観客に考える余裕を与えずに見せ切ったのでしょう。前振りが無茶すぎるということを除けばかなり良く練られた脚本で、これ以上は求められない完成度だと思います。ただし、監督の演出がいま一歩追いついていないような気はしました。ジョディ・フォスターをただワーワー騒がせるだけでなく、彼女の追い詰められた心境や中盤での迷いをより観客に伝えることも必要だったし、飛行機内という特殊な密室の特性を映像的に面白く撮れていないのも残念。特にジョディの描き方が終始平板だったのは致命的で、「こんな人が同じ飛行機にいたらやだなぁ~」と思わせて共感どころか反感を抱かせるような人物にしてしまったのは監督の計算ミスだったと思います。「娘は実在しないのでは?」という中盤のひねりも、ジョディの迷いの描写が薄かった為に映画全体におけるひとつの山の役割を果たしていなかったし。このすさまじい設定の映画を卒なくまとめているということで監督は十分に仕事を果たしたとも言えますが、デ・パルマやヒッチコックらはこれ以上に荒唐無稽な脚本を名作に仕上げていることを考えると、監督の采配次第では傑作になった可能性があったと思います。[DVD(吹替)] 7点(2006-11-13 21:38:29)

360.  ジャーヘッド 前作ロード・トゥ・パーディションがいかにも優等生的でつまらない映画になってしまったので、その反省とばかりにサム・メンデスは本来の持ち味である斜めの視点で本質をえぐり取るという皮肉精神を取り戻しています。ディア・ハンター以降、戦争映画と言えば主人公が「俺は殺人行為をやったんだ」と悩み、戦争で抱えた苦悩を背負う作品ばかりになってしまいましたが、この映画は四半世紀ぶりにその傾向に風穴をあけるような面白い姿勢で作られています。主人公が厳しい体験の中で成長するわけでもなく、悲惨な現実の中で何かの教訓を学ぶわけでもなく、「戦争行ったけど特に何もなかった」ということがテーマの変な戦争映画です。上官に向かって「俺の手で敵を殺させてくれ」と兵士が泣いて頼むという常識はずれのシーンまであります。監督も自分の試みに自覚的だったのか、ドラマ路線の戦争映画として最高の評価を受けるディア・ハンターのビデオにポルノまがいの不倫映像がダビングされてるくだりがあり、一方で「戦争映画としては非現実的だ」との批判を受ける地獄の黙示録を見て兵士が最高潮に盛り上がったりと、「『これが本当の戦争だ』と言ってた今までの戦争映画だって所詮脚色されたもんでしょ?」とでも言わんばかりの挑発ぶり。確かにこの映画の異色ぶりは相当なもので、これまでの戦争映画がどれも判を押したように「悲惨の連続」だったのに対し、この映画が描くのは「退屈の連続」。延々と退屈が続きそこに生死を分ける一瞬が突然やってくるというのが戦場の実態のようですので、「生死」並に大きな要素でありながらこれまで映画が取り上げてこなかった「退屈」という側面をはじめてテーマにしたところにも、この映画の価値はあると言えます。ただしこの監督、挑戦的な内容を扱いつつも映像や語り口に良くも悪くも「えげつなさ」がないという特徴を元々持っており、アメリカン・ビューティーにおいては過激な内容をうまくまとめてさらっと見せる手腕が良い方向で現れたものの、戦争映画においては刺激不足の原因となり、後半に猛烈な長さを感じさせられました。また最初と最後のモノローグは完全に蛇足で、何か意味ありげなあのモノローグは「何もない」がテーマのこの映画の本質をかえって見えづらくしています。[DVD(吹替)] 7点(2006-11-12 21:55:05)(良:1票)

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