みんなのシネマレビュー |
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341. スパイ・ゲーム(2001) 《ネタバレ》 レッドフォード扮する退職間近のベテランスパイが回想する過去の敵は外国人。そして現在の戦うべき相手はなんと同僚。CIAの人たちも年季の入った悪そうな顔をしていてスリリングです。 いかなる時も沈着冷静なレッドフォード上司は間違いがなくて、でもその分「情には欠ける」ので部下のブラピは反発し思春期よろしく無茶な行動に出て結果親(上官)に世話を焼かせることになるのでした。あーあレッドフォード長年貯金してきたのにねえ(涙)。 過去パートと現在パートが入り組んでいる上、現在軸ではブラピ救出の策謀も同時進行しているので結構忙しい。忙しいけれど、ややこしくないというのが脚本の凄いところで、こういう親切設計はトニー・スコットらしさを感じます。 個人的には過去パートの「東ドイツからの亡命者」の物語を一本分の映画で観たいです。シャーロット・ランブリング雰囲気抜群なのにあれだけでは勿体ない。ああそしてシャーロット姐さんはいつでも血まみれで死ぬのね・・。[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-07-03 18:04:03)《改行有》 342. 美しき結婚 《ネタバレ》 いやはやロメール作品にはレギュラー出演の「情緒不安定女子」のなかでも本作のサビーヌは真打ちですなあ。 情緒不安定によるヒステリーの度合いも既出のメンツより二割増し。根拠の無い自信がそこに加わって自己中暴走ぶりもロメール他作品をはるかに凌ぐ過激さです。正直引きます。 まあかなりデフォルメされた女子像ではあるのですけど誰でも少ーしずつサビーヌなのはたしか。彼女のイタさを受けて我が身を顧みましょう。 ところでサビーヌには恋愛相談のキーパーソンになる親友クラリスがいまして、この取り合わせ「レネットとミラベル」に良く似ています。片方は都会的に洗練されていて気分も安定、もう一方は垢ぬけなくて若干こじらせ気味気性。 クラリスの着こなし、素敵でした。パーティ衣装より普段使いのスカーフやコートの方がおしゃれ。ロメールの映画はモードや灯りの撮り方がいつでも眼福です。 さて弁護士から「大人のあしらい」でフラれたサビーヌ、立ち直りも早い早い。さっそく次のターゲットを決めたようでこのガッツ、ちょっとアッパレにも感じますね。[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-07-01 23:39:48)(良:1票) 《改行有》 343. スターリンの葬送狂騒曲 《ネタバレ》 旧ソ連の指導体制を笑おう、という演出にキレはあると思います。冒頭、スターリンの無茶指示に慌てふためくモスクワ放送局長には心から同情しつつ笑ってしまいますし、政権中枢幹部らのスターリンへの媚びへつらいぶりったら、もう。ウケたネタ、ウケなかったネタを表にしておさらいしているなんざ、高潔さを失った人間とはかくも滑稽である、の見本です。 だけど、人間の扱いのあまりの軽さ描写には肝が冷えて笑うどころではありませんでした。 笑い飛ばすことができないのは、血なまぐさい政争も市民への弾圧も極めてノンフィクションであるからで、あのおっかないソ連時代からさほど時が経っていないことをつくづくと思いました。[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-28 23:39:05)(良:1票) 《改行有》 344. エクスカリバー(1981) 「昔々~」で始まりそうなイングランド昔話、もといアーサー王伝説。外国人のわたしにとっては良い入門編になりました。その名を耳にしたことのある魔法使いや騎士らがちゃんと体系立って頭に入りました。 伝説のおはなしの多分に漏れず出来事が箇条書きになっている印象で、映画作品としては物足りなさを感じます。美術も学芸会の演目を見ているようだし。 ‶映画作品”にしようと思ったら、やはり「グラディエーター」のような画が必要になりますよね。それこそリドリー・スコットが手掛けたら、アーサー王もどんな出来になるでしょうか。[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-24 23:40:00)《改行有》 345. 女優フランシス 《ネタバレ》 ハリウッド女優の悲劇は色々聞きますが、代表格マリリン・モンローより数年先輩にフランシス・ファーマーという女優さんがいたのですね。精神不安定と決めつけられて病院送りにされるところなどマリリンとそっくりです。ジェシカ・ラングが強烈な体当たり演技をこの作品に残したことで、フランシスの記憶も後世に刻まれることになりましたね。 ジェシカの熱演はともかくとして、映画は脚本の整理の仕方が上手くないと感じました。フランシスの女優人生を初めから順々に追ってゆかなくても良いのです。エピソードの羅列になってしまっていて、散漫な印象です。精神病院に出たり入ったり三度も繰り返したのは実話らしいけれど、律義に全部突っ込むから尺が長くなり、飽きます。 演出も過剰では。ロボトミー手術は施術されていないというのが事実らしいですし、病棟の内部も半裸だったりヤク中の廃人溜まりのような描き方はどうなんだろう。必要以上に露悪的で気分悪いです。 友人ハリーとの関係も描き足らず。あんなに重要な役回りなのにフランシスの彼に対する心情はほぼスルーされていて、?ばかりが募りました。この人実在したのかしらと疑ってすらいるワタシです。[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-22 23:56:40)《改行有》 346. メン・イン・ブラック2 点低めのレビュワーさんらの意見と一緒です。酷評であっても皆さん言葉少なめなのは語ることがさほど無い、ということでもありましょう。 人気コンテンツに乗っかっただけの続編。新規のアイデアも無いまま前作と基本同じパターンでお茶を濁していますが、これで喜ぶ熱心なファンはわずかでしょう。悪役のキレも処理もなんか雑だし。 全く初見だったのでマイケルだけはちょっと笑ってしまいましたが。[CS・衛星(字幕)] 4点(2021-06-20 23:41:21)《改行有》 347. 13F 《ネタバレ》 仮想世界の構築に成功したと思い込んでいた自らが仮想世界の人物だった、というプロットは連環モノの高度SFですし‶アイデンティティの喪失と再構築”という難解な命題すらはらんでいて、事と次第によってはどえらい傑作になったかもしれません。 でも本作はきわめてライトな仕上がり。というか、中盤までの盛り上がりで話の面白いトコは終了してしまいました。 せっかく過去世界まで行ったのにやってることが買春と殺人。「現実の」世界から来た本家の女は夫が殺人者だとカミングアウト。姿も見せないそいつから逃げ惑う後半はありがちなB級サスペンスで萎えます。 電子の集合体に意志があるのか否か、という議論はハナからする気もないという姿勢ですがいやー、でもそこわりと引っかかっちゃったんですけどね私は。意志があるならあるで、そこんとこの描写がも少し丁寧にあっても良かったんでは。[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-19 23:15:01)《改行有》 348. グリーンブック 《ネタバレ》 良いですねえ。大好きです。もうヴィゴ・Mのトニー・リップが良いですもん。単純かつ腕っぷし(のみ)が取り柄の、よくしゃべりよく食べるイタリア系アメリカ人のおっさん。この映画がよくある‶被差別黒人と白人との友情話”より一段精彩を放っているのは、信頼に値するメタボ腹のトニーがいるから。 トニーは精神の根っこに差別意識の無い奴。周囲の人間が黒人蔑視のノリなので、特に考え無しに同調していたのでしょう。だからギャラをもらえるなら黒人がボスでもさほど抵抗は無いのだった。 なにしろシンプルで腹の底まで透けて見えるトニー相手だからこそ、ドクは(怒りに任せてだけど)内なる心情を吐露したのですね。おそらくトリオの二人にも内面の最も深い面をさらしたことなどなかっただろうと思います。状況に対して脊髄反射するトニーは、教養のある連中のように感情を包み込んで体の良いことを言わないから。 出番は少ないけど奥様のドロレスも素敵。お見通しの手紙の一件にはふふっとなりますね。わたしはトニーオリジナルの手紙も好きでしたが。 ヴィゴ・モーテンセンにアラルゴンの面影など限りなく残っていないことに初めこそ衝撃を受けましたけど、別人トニー・リップも彼の見事な仕事のひとつに数えられることになるでしょう。イタリア訛りとか言葉遣いの悪さを聞き取れたらなあ、と自分が残念でした。[CS・衛星(字幕)] 9点(2021-06-18 23:47:12)(良:1票) 《改行有》 349. ベン・ハー(1959) 《ネタバレ》 どえらいお金がかかっている壮大な映画ですが、内容は‶小学校中学年向き偉人伝”です。なにしろ人物描写がシンプル。感情パターンが「裏切られる」→「悲嘆に暮れる」or「復讐に燃える」→「奇跡を前にして歓喜」、と情感のひだが少なめ。人間がこんだけ単純ならキリスト教のみならず各宗教布教は容易に広まったことでありましょうが、二千年経った現在人類の思考はもう少し複雑なのでした。戦争はいっこうに収まらんし。 映画は前例の無いほどに作り込まれていて、セットや衣装のまばゆさにパワー負けしそうです。ただ、あくまで‶舞台上のお芝居”を観ているようでリアリティは低い。世を忍び廃屋に隠れ住んでいる元従者の娘の髪が綺麗にセットされていて、肌ツヤも良くメイクもばっちりというあたりとか。 長尺なドラマの締めを、それまで観客と共に苦難を分かち合ってきた主人公ベン・ハーが担わない、というのには感動どころかずっこけた21世紀の客(=わたし)でありました。 ともあれ、C・ヘストンの隆々たるスターの風格といい、制作への熱量といい、当時のハリウッドの隆盛をつくづくと知る作品です。[DVD(字幕)] 7点(2021-06-13 22:39:33)《改行有》 350. 薔薇の名前 《ネタバレ》 難解なことで有名な原作に近づく気はなく、もちろんタイトルの意味もさっぱりだけど、映画が見せる世界観に圧倒された印象のある作品。陰気で暗い雰囲気が中世の暗黒っぷりをあますことなく伝えてくる。魔女にせむし男。人を拒絶するかのように石壁はひんやりと冷たくスペインの冬は荒涼として寒々しい。禁じられた蔵書庫は迷宮のようでおどろおどろしい舞台効果満点。死体も期待に応えて(?)グロい。謎解きに加えてキリスト教の宗派争いにも巻き込まれるS・コネリーが毅然としているうえに渋い。陰気パワーに負けない存在感。だけどもあの彼女、食べ物にも事欠く下層民の女があんなに肉付きの良いプロポーションなのはヘンだよなあ。我ながら「そこ?!」とは思うけど気になったので記しとく。[映画館(字幕)] 7点(2021-06-12 23:40:13) 351. デス・レース(2008) 《ネタバレ》 もう設定からして無茶苦茶なB級映画ですが、ジェイソン・ステイサムだというのでつい観てしまった。見どころはジェイソン・ステイサムが出ているというところ(だけ)です。 いくら定番の「荒れた近未来」といったって、刑務所長が自己利益のために一般市民を殺害して夫に濡れ衣を着せたうえ殺人レースに参加させる、ってそりゃないよ。イモータン・ジョーだってもう少し理屈が通っていた(たぶん)。それはまあいいとして(いいのかい)、カーレースが見せ場の映画であるのは間違いないんですがガチャガチャとクラッシュが多くて何がどうなってんのかよく見えないや。高速でトバしているのはCGまたはスタントだということがまるわかり。運転席の二人の乱れの無さ、緊張感の乏しさ、振動の無さ。女の子の髪も乱れない。 ラストのオチのつけ方にはツッコミ必至。アンタが所長を殺んのかい。[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-06-11 23:45:45)《改行有》 352. リード・マイ・リップス 仏版トゥルー・ロマンスの感もちょっぴりあるけれど、でも男女の造型がクリスチャン&アラバマとだいぶ違う。カルラとポールは互いにツンデレを繰り返し、自分のために相手をうまいこと利用しようとする打算もあったりでカップルというにはとても危うい二人。こんな微妙な男女関係をサスペンスとミックスさせたラブストーリーに仕上げるとは、さすがにフランス映画だなあと感嘆。 特にカルラ演じたエマニュエル・ドゥヴォスが巧い。見た目は地味な事務員で職場の中でも軽んじられる立場に甘んじています。でもそれは外見だけで、理不尽なことにキレると反社会的行為スレスレ技で反撃をかますぐらい肝の据わったキャラなのでした。地味で非モテな女に案件をリードされて気圧されるヴァン・サン・カッセル、という痛快な構図が二度三度と繰り返され、まあポールもたいがい粗野で横暴なんだけどこの二人なかなか絶妙なバランスをキープしていて目が離せません。 現金略奪のストーリーもシンプルながらサスペンスフルなこと、冷や冷やの山盛りです。全般にわたって演出も構成も無駄が無くすっきりと観られる・・、と言いたかったところですが皆さんご指摘の通り「保護司のエピソードの唐突さ」がいかんとも。説明が極端に少ない分、びっくりの大きさも半端ないのではありますが。[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-06-10 23:42:41)《改行有》 353. ノマドランド 《ネタバレ》 「圧倒的」、この映画を表現するならこの言葉です。広大でむき出しなアメリカの原風景、孤独、フランシス・マクドーマンドの演技。 定住する家を持たず、自動車生活を余儀なくされている人々。もちろん社会問題として捉えることもできるのですが(初めはそっち系の話だと思っていた)、監督の意図するところはそこではないみたい。 人が生きること、その原点・あるべき心の整理をマクドーマンド演じるファーンを通して私たちは見るのです。ファーンはじめ、同じ境遇の季節労働者の人たちは平均年齢が高く、皆痛みや喪失を抱えて生きています。人との関わりは保ちながら、でも結局は一人で死ぬのだと腹を据えて日々を重ねているその表情は諦念というのでもなく、静かにきっぱりと‶受け入れている”ようでした。 マクドーマンドの乾いたノーメイク顔はもうそれだけで演技を超越しています。ドキュメンタリーと言えそうなほどです。 ノマドの果てに生を終える人、ノマドをやめて屋根の下で暮らす人、それぞれです。過去を大切に抱きしめながら一人きりで大地を踏みしめるファーンの後ろ姿は決して哀れではないけれど、彼女の抱く喪失の悲しみ、痛みが少しでも和らいでほしいと切に願いました。[映画館(字幕)] 9点(2021-06-06 18:02:47)(良:1票) 《改行有》 354. 127時間 《ネタバレ》 うおおお、痛い。短めの上映時間ですが、痛描写がきつくて充分長く感じてしまった。 突然「死」を突き付けられたら、人は何を思うのか。脳内映像ならいろんな形で描写してきたダニー・ボイルの真骨頂ともいえる、主人公の走馬灯。その走馬灯巡りに付き合わされる1時間半です。 痛みと絶望のためか記憶は幻想のようでもあり、そんな中でもわずかな正気でここに至るまでの人生を反省したり。 辛くて痛くて気が気でない鑑賞モードだったですが、これが実話と知らずにいたので救助が来るのだろうと思っていたんです。ですから、あの極限の場面に至った時のわたしの驚愕をご想像ください。各国の上映会で失神者が出たというのもむべなるかな。 一人の登山家の強靭な精神ドキュメンタリー的な本作。極めて制約のキツイ撮影条件下でダレることなく見せきった監督も天晴れなら、迫真の演技で肉体の痛みと意志の尊さを伝えたJ・フランコも素晴らしいです。[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-06-04 23:12:29)《改行有》 355. ミスティック・ピザ 《ネタバレ》 田舎の女の子たち3人の青春模様。他愛のない恋バナが三編で、とりたててドラマチックでもないしとても「普通な」エピソードです。でもなんとなく見入ってしまう。‶よくある”話ゆえ、同級生らとおしゃべりをしているような親しみを感じる空気感が心地よいのです。 女優3人がまた適度に「普通」で、丁度いいあんばいに華やかではないというのも親しみポイントが高い要素です。(もっともジュリアは一段上の容貌ですけどキラキラを抑えるガサツな性格設定が効いています) それぞれの恋愛話のオチのつけ方がなかなかリアル。結局ジョジョは生活感にじむ結婚に収まり、キャットの不倫は破綻し、デイジーの階級違いの彼氏との先行きは不透明と、甘くないシナリオは極めて現実的。ビターだけど決して不幸せではなく、3人ともちゃんと前を向いて生きている、そんな描き方が好感を呼んだのでしょうね。[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-03 23:25:11)《改行有》 356. 我輩はカモである 《ネタバレ》 一言でいうと「脱帽」です。マルクス兄弟、偉大なる先駆者であります。 米国文学史のテキストにもなり得る、じつに90年も前の映像喜劇。ドリフの全員集合を1時間10分にわたって鑑賞しているという感覚がぴったりなのを思うと、いかに後世のコメディアンらに多大な影響を与えたか分かるというものです。 さんざん使い倒された感のあるギャグと洗練されていて古びていないセンスが混在しているので、鑑賞中びっちり抱腹絶倒というわけにはいかないですが、ただもう天才に畏敬の念を抱く70分でありました。 グルーチョ・マルクスが個人的に一番好き。冒頭で「新首相」のキャプションと共に新聞に紹介されただけで、そのすっとぼけた顔つきに笑わされましたもん。あの顔はズルイよなあ。 人を小馬鹿にした毒入り台詞の数々、伝説のシンクロ合わせ鏡、すれ違いのなめらかさと正確さ。コントとはかくあるべし、と人類史上に燦然と打ち立てた金字塔でありますね。 開戦後「援軍を頼む!」の電信→兵士→マラソン選手→動物の群れ、と画が切り替わるのには涙出ちゃった。ああ、馬鹿々々しきは尊きことなり。[CS・衛星(字幕)] 9点(2021-05-31 23:25:24)《改行有》 357. アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場 《ネタバレ》 フィンランドでは誰もが知る戦争古典だそうで。かの国の「継続戦争」については、ほぼ知識なく鑑賞したのですが。戦地の実態はどの国の戦争であっても大差なく過酷で、やりきれなさのみが残るのも同じでした。 新婚の将校も若い一兵卒もベテランも次々斃れてゆく怒涛の終盤は、すぐそばで爆撃を受けたかのような臨場感といい圧倒的なリアリティがあります。 兵士目線と謳っているとおり、休暇を取って家に戻り束の間畑をおこしてまた戦地へ戻る者や、敵国の娼婦に恋をする若い兵士といった等身大の人間の心情、行いを細かく丁寧に拾っています。辛くも生き残り、帰還したベテラン兵士の顔にしかし安堵といった安らぎ感がなかったことに戦争の大きな罪を感じます。[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-05-28 23:52:58)《改行有》 358. バッド・ディシジョン 終わりなき悪夢のはじまり 《ネタバレ》 猟奇サスペンスのジャンルなのでしょうが、どうにもB級感から抜けられないのは何故なのかつらつら考えてみました。 まず犯人のサイコな迫力が今ひとつ。顔はイッちゃってて充分怖いんだけどやってることが「常識内の暴力」にとどまっており、50年前ならいざしらず数々の秀でた(?)サイコパスを経験してきた21世紀においては ちと存在圧が不足です。 それと主人公。タイトル原題は「Good Samaritan=良きサマリア人」のもじりなのは明らか。なにがBADかというと頭かしら、と思わざるを得ないほどこの青年頼りないし受け身一方。まあ中盤まではビビりなのもしょうがないかと思って見守っていたのだけど、終盤には被害者の女子にまで胆力で圧倒されるシマツ。 この辺のあっけなさやコミカルと言えるほどの軽いクライマックス~安っぽいラストシーンの幕切れ方等が一級サイコランクレベルから大いに下回った原因かと思います。[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-05-28 00:15:34)《改行有》 359. 海辺のポーリーヌ ‶恋愛感情をこじらす男女”を描けば天下一のマエストロ・ロメール。本作も色とりどりの男女が登場してこちらの野次馬根性を刺激します。今作はこじらせ度は浅く、まあ人物らがほとんど30前後かそれ以上と大人なので男曰く「色恋沙汰には飽きた」年頃ですからね。 (でもやってることはかなり幼稚) 10代は女子と男子がひとりずつ。フランスのティーンはこういう大人の男女事情を見て育つのか・・。我が国との距離の遠いことを感じるなあ。むこうの女子らは「身体をさらす」ことに抵抗が無いんだね。マリオンはともかくポーリーヌは15才でしょ?ワタシが中学生だった頃は体育で短パンになることすら、初めのうちはクラスメートの多くが照れていたものですが。裸体の一割しか隠れていない水着で男性と戯れる15才かー。うーん距離を感じるやっぱり。 ロメール作品は繊細な心理描写に大きく同意することも多いですが、今作はどの年代層のヒトたちともあまり気が合わなかったな。みんな自己主張強すぎ。映像はいつも通り綺麗です。[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-05-23 22:16:28)《改行有》 360. ウエストワールド 《ネタバレ》 すんごく先進的な、逆に50年経った現在の方がより身近な恐怖に感じるテーマですね。 AIの暴走といえば1968年のSF金字塔キューブリックの「2001年宇宙の旅」を思い起こしますが、本作はテーマパークで起こる殺人事件という気楽さですので、件の名作が提起していた哲学的命題の解釈に悩むことは一切無く、見やすいです。 アメリカって73年当時で「テーマパーク」という娯楽施設のコンセプトがこうも進んでいたんですね。日本の地方都市に住んでいた子どものワタシにとって、当時娯楽施設は動物園に併設された遊園地かせいぜいデパートの屋上くらいのもの。ディズニー・ランドの情報を少女雑誌で読んでまさに夢の国だと圧倒されていた、そんな時代に今でも実現すれば大当たりしそうな過去世界体験型のテーマパークを(映画の中にしろ)創り上げ、それだけに留まらずコンピュータが人間の手を離れる恐怖をも織り込んだとはこりゃすごい。 やりっぱなしで後片付けせず、なラストもオチの無い怪談を聞かされたような恐さの余韻が残ります。 ユル・ブリンナーがターミネーターの原型だったとは知らなかったなあ。[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-05-22 23:25:35)(良:1票) 《改行有》
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