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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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21.  キング・コング(2005) ピーター・ジャクソン作品におけるVFXは他の監督のものとは異質な印象を受けます。作り物の映像をいかにリアルに見せるかがVFXの勝負所ですが、この人の作品のVFXはCG&ミニチュア丸出し。カメラは巨大建造物をすり抜け、恐竜の肩越しに人間を見下ろし、自由に空を飛びますが、この見せ方では絶対にリアルに見えません(エアフォース・ワンの飛行機大破シーンにおいて、カメラがありえない動きをしたためにCG丸出しになったのと同じ理屈)。とはいえVFXに精通している監督さんですから、恐らく意図的にこれをやっているはず。つまりハナからリアルに見せる気がないのです。ではこの人の映画がダメなのかと言うとその逆で、CGのひとつの使い道を実践しているように思います。CGはリアルな映像を作ることがひとつの使い道ですが、同時に監督の脳内にある映像を自由にビジュアル化するツールでもあるはず。指輪物語では本の挿絵や読者の脳内にしかなかったイメージを見事に映像化しました。決してリアルには見えませんでしたが、イメージの映像化という意味では完璧でした。そしてキングコングでは、伝統的な特撮の魅力を復活させています。昔ながらの特撮映画は、いかにも作り物な映像が味だったりします。ストップモーションのモンスターはチラチラとぎこちない動きでリアリティのかけらもありませんが、そんなキャラが人間臭い動きをすることに愛着を覚え、ミニチュア丸出しであっても大破壊に興奮しました。それは「良いものを見せてもらった」というサービス精神に対する感動も多かったように思います。ピーター・ジャクソンはCGを本物っぽく見せることではなく、怪獣映画に必要なイメージをどう伝えるかに重きを置きました。JJ・エイブラムスがクローバーフィールドにおいて絶対に避けた「神の視点(現実的にありえない俯瞰ショット)」をあえて選択しているのです。怪獣映画においてはリアルに見えることは決して重要ではなく、大量破壊をもっとも見えやすい場所から見せるサービス精神の方が大事だとわかっているようです。また、コングの仕草や表情、巨大昆虫達のいやらしい動きなど、モンスターに味のある動作をさせることで独特の存在感を与えている点もストップモーションの良さを継承しています。本流の大作映画の作りではないため批判的な意見もあるようですが、伝統的なモンスター映画の継承者という意味では完璧な作品だったと思います。[映画館(字幕)] 9点(2009-01-03 19:00:18)(良:3票)

22.  ノーカントリー 《ネタバレ》 "No Country for Old Men"...「年寄りの住める国はなくなった」?世も末だとボヤくベル保安官は、極めつけの事件に遭遇していよいよ愛想尽かし、保安官を引退します。しかし本当に世の中は悪くなったのか?祖父の代に保安官補をやっていた老人は、自分の叔父が殺された時の話をします。1909年、強盗に家を襲われ家族の前で叔父は殺されました。また、ベルは昨日みた夢の話をします。登場するのは彼と彼の父親で、父は若くして死んだから息子の自分の方が老けていたと言います。つまりベルは父親よりも長生きしているのです。本当に社会は昔よりも悪くなったのか?今も酷いが昔だって酷かった。タイトルは「年寄りが懐かしむ古き良き社会などなかった」ということでしょうか。ではその社会の本質とは何か?それは殺し屋シガーが象徴する理不尽で絶対的な力。同じ標的を追う同業者、親切にしてくれた一般人、さらには雇い主まで殺してしまう彼の行動には理屈も合理性もありませんが、人の運命とはそういうもの。立派な人でも事故や病気で命を奪われるし、長生きする悪人もいる。運命の前で人の考える理屈やモラルなど取るに足らぬもので、その無目的さゆえ、それはコインの裏表のようにシンプルである。コイントスで自覚のないまま生きる道を得たおやじに、シガーは「この幸運を大事にしろ。みんなこれを分かっていない」と言います。運命とは予告もなくやってくるため、これを回避しても多くの人はその幸運に気付きません。しかし何十年も何事もなく生きていることが不運に捕まらなかった証なのだから、それを大事にしろとシガーは言うのです。そんなシガーに追われるモスは、幸運に対して無自覚な私達の代表。目撃者なしで大金を拾う幸運を一旦は掴むものの、その偶然性の分からないモスは現場に戻るミスを犯し、素性を知られてしまいます。また、シガーに追い付かれる寸前で発信器に気付き、待ち伏せする機会を得て襲撃から生き延びますが、またしても彼は幸運を認識できず、自分の力で切り抜けたと勘違いして対決姿勢を強め、それが自分だけでなく妻の命も奪う結果となります。一見頭の弱そうなモスの妻は、シガーと対峙した瞬間に運命を理解し、取り乱すことなくこれを受け入れました。シガーはその帰り道で交通事故に遭い、無敵の殺し屋は呆気なく重傷を負います。運命の前に人の能力など意味を持たないと言わんばかりに。[ブルーレイ(吹替)] 9点(2008-12-21 00:42:08)(良:4票)

23.  イースタン・プロミス 《ネタバレ》 バイオレンスを自称する他のすべての作品に対して「あんたら、本当の暴力をわかってないな」と言えるほどの強烈なバイオレンス作品。これに比べれば、スカーフェイスやグッドフェローズすら甘く感じられます。直接的なバイオレンスシーンはサウナでの死闘のみなのですが、暴力的でギラギラとしたオーラを作品全体が放っており、100分間すべてがバイオレンスシーンと言える状態となっています。コッポラやマイケル・マンが美学をもって描く闇の組織像もここにはなく、平然とモラルを侵し、人の不幸の上で生活する理不尽な縦社会がこれでもかと映し出されます。家族を大事にし孫をかわいがる一方で、10代の少女たちを売春宿に閉じ込めるセミヨンの憎々しさといったらありませんが、これがヨーロッパや、もしかしたら日本でも現実に起こっていることなのですから恐ろしい。監督と脚本家にはマフィアを糾弾したいという意思もあったようですが、現実社会の問題がよく物語に昇華しており、製作者たちがアンナやニコライに託した怒りに私たちも自然と共感できる形となっています。カタギからヤクザの世界を垣間見るアンナが私たちの視点となりますが、彼女の行動原理や直面する事態への反応が非常に自然なので、話に違和感がありません。口数の少ないニコライの人柄を僅かな行動や言葉からきちんと描けているのも見事。キリルから強要されたSEXのあと、情けなさと絶望感から泣くこともできない売春婦の少女に「まだ死ぬなよ」と声をかけるくだりは、作品の世界や彼の人柄を端的に示していました。また、本作の特徴である過激な暴力描写も決して露悪的ではなく、重みと必然性と作り手の責任感が伝わってきます。監督の手腕は神業の域に達していて、オリバー・ストーンあたりだと3時間以上かけそうな情報量を100分程度で無理なく片づけています。物語の進行と登場人物の感情が必ず同時に描かれ一切のムダが省かれており、駆け足も間延びもなく観客のバイオリズムにピタリと一致した構成となっています。テーマから逆算して描くべきものとそうでないものの取捨選択も的確に為されており、例えばFSB絡みの展開はいくらでも膨らませそうなものの、テーマの上では重要でない為触れる程度となっています。この監督は変な映画ばかり作ってるイメージがありましたが、いざシンプルなものを作らせても並の監督ではマネできないレベルにするのですから大したものです。[DVD(字幕)] 9点(2008-12-19 01:11:27)(良:1票)

24.  ボーン・アルティメイタム 《ネタバレ》 観客を飽きさせないよう派手なアクションをやればやるほど「んなアホな」のスパイラルに陥る作品が多い中、本作は見せ場の連続なのにバカっぽくなく、そこにリアリティを感じさせる作りとなっています。特に素晴らしいのがロンドン駅での追っかけで、追っ手の配置や視界を先読みしながら対象を的確にナビゲートする様はあまり見たことのない珍しい見せ場。ボーンはただの強い殺し屋ではなく、状況判断やとっさの決断力にも長けた人間であることをちゃんと画で見せてきているのです。「陰謀のセオリー」「ロング・キス・グッドナイト」等、記憶を失った政府の殺し屋映画はいくつもあり、ボーンシリーズもネタ的にはありふれた作品なのですが、そんな中で新しさを発揮しているのは、世界を股にかけるエージェントに必要であろう知性を描いているためでしょう。目の前の危機を腕っぷしで乗り切るかつての主人公達とは違い、二手先三手先を読んで行動し、衝突はなるべく避けるという「当たり前」のことをきっちりやっているのです。またボーンが相手とするCIAも同様で、きちんとした官僚機構として描かれているので、悪役としての存在感を発揮しています。「CIAは巨大な官僚組織である」のは当たり前なのですが、これまでのアクション映画は見事なまでにこのおいしい部分をスルーし、その結果ボスと手下数人が勝手に暴走して主人公に倒されるという、何ともこじんまりとした組織となり下がっていました。そこにきて本シリーズは、個人の通話でも自由に盗聴できるハイテク機器を操り、世界中即座にエージェントを送りこむ豊かなネットワークを持ち、警察機構に指示を出すこともできる強大な権限を持った組織として描いています。そこに従事する人々も魅力的で、その切れる頭で出世したと思われるパメラ、現場の叩きあげで汚れ仕事をしているうちに感情も麻痺してしまったアボット、組織のためなら何でもやってしまう出世の鬼ヴォーゼンら、「官僚組織にいそうな人々」の熱いやりとりも見ごたえ十分です。賛否の分かれる細切れアクションについてですが、画面も話も「リアルに見えること」を意識した本作においては、その必要性があったように思います。アクションの中にリアリティを感じさせたい場合、「仮に現場に居合わせればこのように見えるだろう」という雰囲気を作り出せる手ぶれ映像や細切れの編集は、やはり威力を発揮しているのです。[映画館(字幕)] 9点(2008-08-26 02:26:24)(良:4票)

25.  バンド・オブ・ブラザース<TVM> 《ネタバレ》 1話1話が充実していて、1時間とは思えないボリュームを全話に渡って味わえます。また全10話を通した時のバランス感覚も見事で、訓練の第1話にはじまり、そこいらの戦争映画を軽く超える圧巻の戦闘シーンを見せる2~4話(戦場における戦車の圧倒的なパワーが描かれた『補充兵』は特に気に入ってます)、エピソードごとに主人公を変え、毎回違った切り口でドラマを見せる5~8話(無能な司令官に振り回される『雪原の死闘』にはサラリーマンとして共感を禁じえませんでした)、第二次大戦の悲劇をシリアスに描いた第9話、そして締めくくりの第10話。どのエピソードも素晴らしいのですが、最終回の第10話には特に意義を感じました。戦場における友情や英雄物語を描きたいのなら8話で終ればよかったし、第二次大戦の歴史を描くのであれば9話まででよかった。しかし戦争が終わって占領軍となったアメリカ兵達の姿を描いた10話を終わりに持ってきたことで、この作品は他にない奥行きを得たように思います。ナチスが残した高級品を「戦利品」と言って勝手に持ち帰り、敗戦国民に対して横暴に振る舞い、元ナチスと言われる老人(真偽は不明)を不確かな情報から射殺する、そんな姿を最終話できっちり見せてくるのです。そしてラスト、ウィンターズからE中隊に対して言われるべき言葉を、ナチスの将校に喋らせるという演出も見事。このシリーズに対しては「アメリカ万歳ではないか」という否定的な意見もあります。確かに第9話まではアメリカ兵の視点のみで描かれており、悪役であるドイツにとっては公平性に欠ける描写もあったように思いますが、この非常に冷静な締めくくりを持ってきたことで、普遍的な物語になったように思います。あえて難点を言えば、戦争ものの宿命として個人の判別が難しかったことでしょうか。10話見ても顔と名前が一致しない隊員が何名かおり、「で、いま死んだの誰だっけ?」ということが毎話あったのが残念。「これが登場人物ですよ。みなさんしっかり覚えてくださいね」という意味で第1話があったんだなと、10話全部見て気付きました。ま、この混乱を逆手にとれば1周目は圧巻の映像に驚き、2周目は緻密なドラマを発見する、そんな楽しみ方もできそうなわけで、これは何度も見返し、そのたびに新しい楽しみに気付く作品になりそうです。[DVD(吹替)] 9点(2008-08-21 02:06:16)

26.  ダークナイト(2008) 《ネタバレ》 ビギンズには辛い評価をした私ですが、それを撤回せねばならない続編が出てきました。スパイダーマンと比較してヒーローの見せ方がなってないなどと批判したのですが、この新生バットマンは他のアメコミ映画とは目指すものがまるで違うようです。マンガの世界を巧く作りあげ、ヒーローものならではの荒唐無稽なアクションを見せ、そして実写化した時の違和感をうまいトンチで乗り切ることが他のすべてのアメコミ映画のキモとなっていますが、このシリーズが目指すのはそれとは正反対。バットマンや敵のフリーク達を現実の世界に引っ張り出し、現実世界で彼らがどのような意味を持つことになるのかがこのシリーズの追うところです。なのでCG丸出しのヒーロー大暴れなどは一切なく、バットマンやフリークとはいえあくまで生身の人間が戦ってるよう見せることにこだわっています。前作では視覚的に未完成だった為この狙いがイマイチはっきりしませんでしたが、本作では見事にスクリーンに反映されています。そこいらの刑事ものよりもリアルに、しかもバットマンという非現実が真ん中に立っていても変に見えないようにという絶妙なバランスで作られているのです。またそんな生真面目なアクションの中でも、バットモービルからバットポッドが分離するというかっこいいギミックも見せてくれるので、監督も相当小慣れてきてるなと感心しました。脚本の充実ぶりも見事。たったひとりの狂人が大都市をパニックに陥れていく過程に疑問や違和感を覚えさせないのは、話が良く練られている証拠。そんな「よく出来た脚本」からさらに二歩も三歩も突っ込んで、ドラマとしての面白さ、「正義とは?ヒーローとは?」という問いかけまで盛り込み、かつ大量に仕掛けたネタをどれひとつ破綻させていないという神業的な仕上がりとなっています。特に素晴らしいのが二隻のフェリーの駆け引きで、戦いの当事者が「正義とは?」と悩む映画はいくつもありますが、傍観者である市民にその姿勢を問うというありそうでなかった展開を挟んできたことで、この作品の価値はぐっと上がりました。今回点数を9点としているのは、映画館で一度鑑賞しただけでは、情報量の膨大な本作の全貌を掴んだ自信がないからです。それにしても、このような観客に対して相当レベルの観賞力や集中力を要求する映画が史上空前のヒットとなっているのですから、アメリカというのもバカにならない国です。[映画館(字幕)] 9点(2008-08-15 03:36:58)(良:2票)

27.  エターナル・サンシャイン 《ネタバレ》 極めて特殊な設定ですが、その中身は非常に単純。①感情は記憶を超えうるのか?、②ラブラブだったふたりが別れに至るまで。この映画がテーマにしているのはこの2点だけです。①については、恋愛感情とは巡り合わせで起こるものなのか(=偶然)、それともまったく違うシチュエーションで出会っても恋愛感情は起こるものなのか(=運命)という問いかけですが、本作の出した答えはYes。ジョエルとクレメンタイン、メアリーとミュージワック博士の2組のカップルが記憶消去を体験しますが、どちらも記憶消去の後にもう一度恋愛感情を抱きます。ですが恋愛が一度失敗に終わっていることを知ると、メアリーは博士との報われない恋愛を終わらせることを決め、一方ジョエルとクレメンタインはお互いの欠点を認識し、自分がそれを許容できなかった事実を受け止めつつも、また恋愛しようと決めるのです。ジョエルとクレメンタインの決断はいかにも映画的なきれいごとのような気もしますが(あんな告白テープを聞かされて付き合う気になりますか、普通)、その根拠となる②が非常に秀逸なのです。ジョエルとクレメンタインの恋愛は私たちの身の回りにも転がってるような本当に普通のもので、だからこそふたりの葛藤には誰もが身につまされる思いをさせられます。私は彼女と鑑賞したのですが、ふたりがケンカする場面になると自分まで気まずい思いがしたし、一方ラブラブの場面では妙に照れくさかった。それほど恋愛というものがよく描けているんだと思います。感情が記号のように並んでるだけの映画や、ありえない主人公の泣けるラブストーリーなんかではこんな気持ち味わえません。その描写において、時間を逆行させるという掟破りが尋常ではない効果を発揮しています。お互いの欠点がどうしてもガマンできなくてケンカを繰り返しているところからはじまり、ラブラブだった頃へと戻っていくという驚天動地の脚本。あれだけ罵ってた相手が自分にとってかけがえのない存在だったのだと再認識する過程が押し付けがましくなく本当に自然でした。さらにこの映画、幼少時代へのノスタルジーまで盛り込んでみせます。どこまで凄いんだと感心しっぱなしでした。ともすれば難解となる脚本をわかりやすく、かつ刺激的なビジュアルでまとめてみせた演出もさすがで、芸術的にも感情的にも得るものの非常に大きい作品だと思います。[DVD(吹替)] 9点(2007-02-13 02:25:02)(良:2票)

28.  フレイルティー/妄執 ビックリしました。ビル・パクストンというぱっとしない俳優の初監督作で、しかもサイコサスペンスという難しいジャンルに挑戦なんて誰が期待するんだって思いますが、これが大変な出来で本当に驚かされました。確かに脚本の出来が秀逸というアドバンテージもありますが、監督の采配が驚くほど的確であることも否定できません。何を見せて何を見せないべきかという判断が非常に的確だし、役者から良い縁起を引き出しているのも自身が俳優のビル・パクストンならではと言えます。この映画が独特なのはサイコキラーの父親を持った子供達の物語ということであり、狙われる被害者や犯人を追う刑事を主役としてきたこれまでのサイコサスペンスとは一線を画しているところにこれまでにはない面白さがありますが、こうした前代未聞の題材だけに従来のサスペンスとはアプローチが大きく異なります。「羊たちの沈黙」のレクター博士や「セブン」のジョン・ドゥなどはおおよそこの世のものとは思えぬ異常性を発揮して作品の要となりましたが、ここでのサイコキラーはただ異常なだけではいけないのです。愛する父親が殺人鬼となった時に子供達はどんな反応を示すのかがテーマだけに、異常性を発揮する前の親子関係がきっちり描けていないと題材は価値を失います。そこに来て監督ビル・パクストンはこの特殊な親子関係を違和感なく見せてくるのですから大したものです。同時に俳優ビル・パクストンは良い父親と狂気のサイコキラーを多重人格ではなく同一人物の中で見せるという難しい演技も成功させているし、まさかここまで才能のある人だとは思いませんでした。知られざる傑作とはこのことなんだなと思わせる魅力的な映画です。[DVD(吹替)] 9点(2006-11-18 01:32:10)(良:1票)

29.  Mr.インクレディブル ディズニー映画はあまり好きではないのですが、そんな私をもってしても面白いとしか言いようのない出来です。脚本の出来がまず完璧で、感動話を突然ねじこんで無理やり感動させるようなことはせず、感情的な伏線をどうやって張っていくか、観客を興奮させるにはどういう紆余曲折でクライマックスに持っていけばいいのかが完璧に計算されています。アクションパートの見せ方も丁寧かつ的確で、各キャラクターの能力を活かしつつスピード感ある面白い見せ場の連続となっています。面白い設定は準備したものの、キャラクターに特殊能力は与えたものの、各種アイテムは配置したものの、それらを活かせていない作品がマンガ、アニメ、実写関わらず大変多いことからも、ここまできっちりと各キャラクターを使い切れている作品は大変に稀有と言えます(スパイダーマンですら「予知能力」という伏線を完全に放棄しているくらいですから)。ともすれば「子供向け」ということで安きに逃れることもあるアニメという体をとりながら、実写と比較しても驚くほどマジメに作られているのです。しかも単なるマジメではなくヒーローものの遊び心もきちんと備わっていて、個性豊かな登場人物や荒唐無稽かつかっこいいシンドロームの秘密基地などにそれはよく現れています。きちんと理屈を追うことと、理屈を越えた面白さやかっこよさを見せることの両方をしっかりとやっているのです。最近は実写においてもヒーローの映画化が人気ですが、その反面で時代はヒーローものというジャンルが成立するギリギリのところにまで来ているような気がします。映画の語り口が進化した結果見ている側の目も数十年前の観客より確実に肥えてきており、ヒーローが正義のために戦うという単純な構図が素直に受け入れられる時代はすでに終わっているのです。なぜヒーローが存在するのか、どういう原理でスーパーパワーを持っているのか、現実にヒーローが力を振るうとどうなるのか、細かい辻褄合わせは不可欠であり、そのため「これぞヒーロー」という醍醐味の再現は非常に困難な状況となっています。そこに来て本作はヒーローもの本来の醍醐味を十分に味わわせてくれます。しかも昔ながらの演出ではなく、「存在意義に悩むヒーロー」という新世代の基準もきちんと踏まえつつ。新しい設定の中で古いものの良さを描く、これってなかなか難しいことではないでしょうか。[DVD(吹替)] 9点(2006-11-03 23:26:45)(良:1票)

30.  ブラディ・サンデー 大して有名な映画でもないし、ポール・グリーングラスという人もさして有名監督ではないのであまり期待せずに見たのですが、ほとんどの日本人が知らないうちにこんなすごい映画が作られていたことに驚きました。1972年に起きた実話をきわめてマジメに再現する作品で、映画的な脚色やドラマティックな演出はことごとく排除され、音楽すら使わないという徹底ぶりなのですが、だからと言ってこの手の映画にありがちな企画倒れや製作者の自己満足に終わることなく、映画として十分におもしろく作られているのがすごいところ。この映画はもはや「ドキュメンタリータッチ」という生易しいものではなく、1972年1月30日という日を丸ごと再現することに挑み、成功しています。あたかもその日その場にカメラが居合わせたかのような映像やセリフが続いて空気感まで再現してみせ、観客もその場にいたかのような臨場感を味わわせてみせます。ドラマ的な脚色は廃されているため前半の話は淡々と進むものの、無作為なように見えて実は巧みに話をまとめていくので退屈さは感じさせず、見る側のテンションを落とさないまま「血の日曜日事件」へと突入していきます。「血の日曜日」での監督の手腕は本当に圧倒的で、平和的に行われるはずだったデモが徐々に混乱していき、やがて丸腰の市民への発砲へ至っていくまでの様子をデモ隊、イギリス軍の双方の視点を巧みに交えながら、きわめて的確に描いていきます。また画面作りもしっかりしていて、実際のデモの中にカメラがいたとしか思えないほどリアルな映像であの事件を観客にも追体験させる一方で、同時に映画的な見せ場としての機能も十分果たしており、不謹慎ながら見ている側を興奮させるのです。このポール・グリーングラスという監督はタダモノではありません。画面作りに並ではない才能を見せると同時に、インテリジェントな題材の脚本を自ら書き、もっとも適切な手法で見せてくるのですから。ウィリアム・フリードキンが今の世代の監督なら、多分こんな風になっただろうなと思わせるようなすごい監督です。[DVD(字幕)] 9点(2006-10-24 22:32:18)(良:1票)

31.  X-MEN:ファイナル ディシジョン 《ネタバレ》 これは面白かったです!ブライアン・シンガー監督がスーパーマンに乗り換えたことを受け、急遽ブレット・ラトナー(スーパーマンの監督をクビにされた人)に監督が決まった時にはイヤな予感がしたのですが、この交代が完全に良い方向へ作用していました。ブライアン・シンガーの良い点は極めて徹底した世界観の構築にあり、見せ場ひとつにもこだわりまくってマンガ映画にも知的であなどれない風格を持たせるという才能を持っていますが、その反面素直に楽しめる娯楽作を作ることには不向きなところがあります。X-MEN2やスーパーマン・リターンズなどを見るにつけても、目を見張るような素晴らしいシーンが多くある一方で、最後まで観客のテンションを維持する見せ方ができていませんでした。そこに来て、卒なく娯楽作を作れるもののこだわりのない演出しかしないという対照的な才能を持ったブレット・ラトナーという監督の当番は、「良く出来てるけどいまいち面白くない」というこのシリーズの欠点を完全に補っていました。前作まででブライアン・シンガーが世界観の構築を細かく細かくやっていたおかげで、本作はとにかく戦って戦って戦いまくってればそれで良し。細かいことにはこだわらないブレット・ラトナーの大味采配のおかげで、大決戦が次々とテンポ良く見せられていき、本当に気持ちのいい娯楽作に仕上がっていました。サイクロプスやミスティーク、果てはプロフェッサーXまで、シリーズで主役を張っていたキャラクター達を「おいおい、いいのか?」と思うぐらいアッサリと切り捨て、ぞろぞろ登場する新キャラ達の紹介も最小限にとどめ、すべてをクライマックスの大決戦へ向けてテキパキと話をまとめていくのは薄味監督ならではの巧さでした。マグニートー軍団の襲撃を受け陥落寸前のアルカトラズに「X-MEN参上!」と言わんばかりにウルバリン達が駆けつけ、それぞれが一番かっこいい顔をしてファイティングポーズを決める場面は、まさにマンガ映画の真骨頂。アメコミ映画はいろいろ作られていますが、こういうストレートにマンガ的な演出をしたのはこれがはじめてだと思います。バットマン・ビギンズのようにヒーローにもリアリティを持たせることを重視する傾向が主流となっていますが、こういうバカバカしくもかっこいいシーンを見せてこそのマンガ映画だと私は思います。[映画館(字幕)] 9点(2006-10-22 19:09:54)(笑:1票) (良:4票)

32.  ホテル・ルワンダ これはすごいです。非常に政治的な映画なのですが決して説教臭くはなく、紛れもない感動作なのですが押し付けがましい感動やあざとい泣かせはなく、恐るべき完成度の傑作です。多くの社会派映画のように作り手の大声の主張があるわけでもないのにここまで考えさせられる映画ってすごいことですよ。この映画が描こうとするのは部族問題の難しさや虐殺の恐ろしさ、人間の勇気と残酷さなどという「定番」のものだけではないのがすごいところ。他国の惨状を見捨てるということがどういうことなのかも肌で感じさせるのです。石油も宝石も出ないルワンダなどに関わりたがらなかった西欧諸国の怠慢が虐殺を拡大し、最初から最後まで国連は無力。結局ツチ族自身の手によって止められるまで虐殺は続いたのですが、これは西欧だけではなく日本にとっても重い教訓ではないでしょうか。虐殺などという不条理の起きうる国がこの世界にはまだ存在しているのに「うちの国は平和主義なので国際貢献は後方支援だけで」などという鎖国状態の平和主義がいかに無責任なことか、交戦権も与えず戦地へ兵を送り出すことがどれほど危険で残酷なことか、これを見れば一発でわかります。「武器を持たない、使わない=立派なこと」という簡単なことではないのです。とまぁこの映画を評すると必ず政治的な話になってしまいますが、映画としての出来も非常に高いです。オリバー・ストーンのようにアジビラの如く主張するわけでもなく、スピルバーグのようにこれでもかと衝撃的な残虐シーンを見せるわけでもないのに、ここまで心に残り、考えさせられる映画を作るというのは大したものです。展開も終始ダレることなく、実にうまいタイミングで次々と危機が訪れる構成も、不謹慎かもしれませんがハラハラさせられました。要するに、社会派映画としても娯楽作としても非常に良く成立しているのです。これぞいい映画の見本ですね。[DVD(字幕)] 9点(2006-09-03 00:40:18)

33.  フライト・オブ・フェニックス これはすごいです。超地味なキャスト、超地味なお話のためにほとんど注目されなかった作品ですが、鑑賞後には「本物の映画を見たなぁ」と大満足できる傑作でした。オーソドックスで新しいものは何もないものの、話やキャラクターをちゃんと追いかけることでここまで面白いものができるんですね。あれこれ揉めながらもみんなで力を合わせるという展開はまさに直球勝負ですが、そこに小エピソードを適度なタイミングで挿入して話の緊迫感を維持するという計算の巧みさもあり、これはまさに理想的な脚本のあり方でしょう。そうした話の構成のうまさがあったからこそ、ラストがあれほど爽快だったんです。映画を好きになった子供の頃に感じていた、あの映画の本質的な楽しみを久々に味わったって感じです。そんな極上の脚本に加えて、ジョン・ムーア監督のビジュアルセンスも炸裂。「エネミーライン」のような駄作においてすら独特のビジュアル意匠を見せ付けていたジョン・ムーアのセンスがここでは大きく作品に貢献しています。思わず「もう一回見せて」と言いたくなるほどの圧倒的な墜落シーンの後はすべて砂漠。砂漠を延々2時間も見せられるわけですが、ジョン・ムーアの映像は砂漠の美しさや恐ろしさをあますところなく伝え、2時間の映像を単調にはしていません。「ドーン・オブ・ザ・デッド」のザック・スナイダー、「コンスタンティン」のフランシス・ローレンスと並んで、これからのハリウッド大作を引っ張って行きそうな才能だと思います。願わくば、マイケル・ベイではなくデビッド・フィンチャーのように育って欲しいものです。[DVD(吹替)] 9点(2005-11-19 19:29:58)(良:1票)

34.  バタフライ・エフェクト/劇場公開版 映画館で見て、そしてDVDであらためて見直したんですけど、DVDに収録されてるディレクターズ・カット版が大変なことになってますね。劇場版ではいくつか不明な部分があったんです。冒頭、警備員から逃れてメモを残すシーンの伏線がいまいちつながっていなかったり、7歳のエヴァンが残虐な絵を書いたり包丁持ってたりする理由がよくわからなかったり。ディレクターズ・カット版ではそのあたりの伏線もきちんと回収されていて、実に納得のいく出来となっていました。そして問題のクライマックス。(あえて詳細は書きませんが)劇場版とはまったく異なるこのクライマックスこそが冒頭につながっていくわけで、確かにディレクターズ版のクライマックスこそ正当、劇場版はとってつけたものと言えます。映画館で「え、これで終わり?」と思った私は、すっごく納得ができました。がしかし、確かにあんなオチを映画館で上映はできませんよね。そんなわけでいろんな意味で納得できるディレクターズ・カット版ですので、DVDをお持ちの方はぜひ見比べてみてください。ちなみに私はディレクターズ・カット版の方が好きです。[DVD(字幕)] 9点(2005-11-13 22:28:22)

35.  MUSA-武士- 韓国映画のたぎるような熱いドラマは、時代劇でこそ真価を発揮するようです。とにかく燃えさせられましたとも。男達がやたらカッコよすぎです。槍の猛者ヨソルのクールさはアラゴルン、隊正チン・リプの老練なシブさはガンダルフ、そしてチェ・ジョン将軍はボロミアとして見ました。ボロミアに弱い私は、やっぱりチェ・ジョン将軍にもやられてしまったのです。家柄のおかげでえらいさんなだけの彼、最初はプライドばかりのイヤミなやつで、空回りばかりしている彼ですが、追いつめられてはじめて自分の無力さや愚かさと向かい合うわけです。そしてそこから一転、彼は仲間と力を合わせ、己が憧れていた真の武士として復活するのです。これぞ男のドラマではないですか!クライマックス、獅子奮迅の活躍を見せる彼にメインテーマが被さるシーンでは、もう立ち上がりそうなくらいに興奮しましたとも。「チェ・ジョン、あんたは本物の男だ。この男の復活記念日には、とにかく斬って斬って斬りまくれ!」ってなもんですよ。しかも、演じるチュ・ジンモが木村拓哉似の男前なのです。これまたやられましたね。その他、ホビットに相当する農民キャラたちにもちゃんと個性や見せ場が与えられてるのが立派です。しかも登場人物の個性というのが、旅の過程とともに明らかになっていくんです。やっぱりこれはキャラ造詣の巧みさだと思います。典型的なハリウッド映画のように「こいつはこんなやつ、あいつはあんなやつ」と最初に個性を明かし、その上でコマのようにキャラクターを配置する方法とは根本的に違うのです。おかげで、とくにヒネリのない、先が簡単に予測できてしまうストーリーラインの弱さも全然気になりません。しかし韓国の役者は、みんないい顔してますね。目とか表情にすごく力があって、本当に男前な人達なんです。日本の役者には見られないスゴ味があるのがうらやましい限りです。そんでまた悔しいのは、韓国にはこの「MUSA」、中国には「HERO」があるのに、一方日本はハリウッドに作ってもらった「ラスト・サムライ」ですからね。日本映画界はもうちょっとシャキっとしてくれないもんでしょうか。そういえば音楽の評判がよくないようですけど、私はあの独特な響きがすごくいいと思いますよ。って思ってると、音楽を担当したのはエヴァンゲリオンの人だったんですね。どうりであんな感じだったわけです。9点(2004-11-21 23:54:46)(良:1票)

36.  ソウ 《ネタバレ》 《注意!ものすごくネタバレしています。結末を言ってしまってます。未見の方は決して読まないでください。後悔しても私の責任ではありません。》これはすげぇっス!予備知識もほとんどなしで何げなく見に行ったら、これが今年最大の拾い物でした。全編に渡る張り詰めた緊迫感がすさまじく、久々に躍動しまくってるサスペンスに出会いました。サスペンス映画ってのは基本的に「静」の展開をベースにしているものですが、この映画は徹底的に「動」。画面の展開がとかアクションがという意味ではなく、この映画は話が終始動き続けてるんです。次第にベールが剥がされていくような謎解きが全編に渡るのですが、その情報量の割りに破綻を招かない絶妙なテンポ、知らず知らずのうちに張り巡らされていく伏線の数々、そして至る驚愕のラスト。やってくれますよ。映画を見てて久々に「やられた」って思いました。さらに残虐描写が話の緊迫感をフォローし、恐るべき緊迫感を生み出します。スプラッターのキツさで言えば「ハンニバル」など言うに及ばず、「テキサス・チェーンソー」をも越えていると思います。そんな素晴らしい傑作なのですが、欲を言えばもっと登場人物の葛藤を描いてほしいかったです。なにせジグソウの狙いはそこにあった上に、結局この映画はジグソウの思惑通りの結末を迎えるわけですから、やっぱりそこはきちんと落とし前つけとくべきでしょ。主人公達が犯人に怒り、そこから自分の運命に絶望し、そして己の過ちを悔いる場面もきちんと見せてくれれば、ラストがさらに意味深いものになったと思います。それにしてもラストは悲惨でしたけど。妻と娘に危険が迫っていることを知り、ついにゴードンは家族の大切さを思い知るわけです。一方、何とか危険を脱した妻はゴードンの無事を確認するために電話をするのですが、ゴードンはそれを助けを求める電話だと勘違いし、自分の足首を切断してまで脱出を図るのです。しかし、恐らくゴードンを待っていたのは死でしょう。出血多量で死んだか(ワイヤーで死んだデブは脱出時の出血多量が死因とありましたから、それが伏線に当たると考えられます)、そうでなければジグソウに殺されたか。正しいことに目覚めた主人公が、その瞬間に死を迎えるだなんて、これほど悲惨な話はありません。9点(2004-11-05 01:06:10)(良:1票)

37.  ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 この映画をWASP思想に絡めて批判する意見をたまに聞きますけど、それは的外れもいいところです。「指輪物語」は英国にも新たな伝説をってことで、ヨーロッパのさまざまな民間伝承や英雄物語を研究して作られた物語なので、その映画版が白人中心になるのは当たり前。桃太郎や一寸法師に日本人以外が出てこないからって、それが民族主義になりますか?魔法使いや英雄に有色人種がいないのがそんなに不満ですか?私の場合、有色人種が大活躍する「ロード・オブ・ザ・リング」を想像する方がゾっとします。黒人や黄色人種が出てきた時点で、雰囲気も情感も吹っ飛びますからね。そしてオークやウルク・ハイなどの異形の者たちが有色人種の象徴だとする考え方も、それはそれで不自然です。善の対極に悪がいるのが物語の基本だし、その悪がなぜ有色人種につながるのか?その根拠がわかりません。オークが仏教徒だったり、ウルク・ハイが漢字の読み書きができるなら、私も有色人種だと認めますけど。白人による差別という被害者意識ありきで妄想が飛躍してるように思います。これは娯楽作なんですから、もっとピュアに楽しみましょう。ちなみに私は9点をつけていますが、残りの1点は年末のSEEのためにとっておきます。本格的なレビューもSEEで行うつもりです。9点(2004-09-10 04:24:28)(良:6票)

38.  アンブレイカブル あまりにむごたらしい批評の数々ですが、これはスゴイ映画だと思います。史上最も丁寧に描かれた仮面ライダー第1話、「その手があったか!」とビックリ仰天でした。こんな話を思いつく人が世界でどれだけいます?そのアイデアだけでも買いですね。シャマランの映画って不思議で、テーマ自体は幼いのに、その実オトナの空気が充満してるんです。なんと言うか、ガンプラのパッケージが高級桐箱だったみたいな、メッキ部分のパーツが金箔だったみたいな。それってのは、シャマランの脚本から出るうまみだと思います。そんじょそこらのドラマ以上に人間を丁寧に描けているので、荒唐無稽な主題にも味が出るんですね。「私の体は生まれつきもろい。ならばその対極としてアンブレイカブルも存在するはずだ」というイライジャの説くアバウトかつ強引なヒーロー論も、「なるほど~」って思いながら聞きましたから。シャマランのドラマの特色は「静」にあります。一方普通の映画の描くドラマは「動」、つまり何か事件があって主人公が成長していく、主人公が何かを変えていくという話で、そこにはドラマのダイナミズムがあります。しかしシャマランのドラマはもっと地味で、彼が常に描くのは再生の物語。大筋では主人公たちに想像力の限りを尽くした大事件が起こりますが、その実、彼らの終着点は失われた関係の復元にあります。大事件を通して登場人物は自分を見つめ直し、何かを変えていこうとするのではなく、むしろあるべき姿へと帰ろうとするのです。思えば現実世界もそんなもので、そこにドラマの描くようなダイナミズム、つまり何かを変えていこうとする主体的な姿などなく、あるのは「自分に合った仕事は?」「自分に合った人間関係は?」「自分に合った生活は?」という、受動的な居心地の探求のみです。何かを目指しているようでいても、実際は自分のあるべき道を模索しているものです。そんな現実を踏まえているからこそ、シャマランの映画にはリアルな庶民が生活し、その延長としてサプライズがあるのです。9点(2004-09-08 01:40:05)(良:2票)

39.  リディック 《ネタバレ》 ここでのすんごい酷評ぶりに、「ものすごいヒドイ映画なんだろうな。でも罪は憎んでも映画だけは憎むまいね」と思いながら見に行ったのですが、見終わってビックリ。ものすごく気に入ってしまいました。今年のベストにも本気で選んでしまいそうです。あの重っ苦しい世界観が私にはピッタリ来たんですね。世界観に付随する美術デザインも最高で、展開がどうのとかってよりも、ひとつひとつの場面に食い入るように見入ってしまいました。とくにネクロモンガーの神殿兼宇宙船のあの仰々しさが最高です。マザーシップから戦闘機がバラバラと分離していくシーンには大興奮。未来のくせにローテクってのも大変OK。だって惑星間を移動してる連中がローソク使ってるんですよ。そんな夢のビジュアルが2時間に渡って展開されましたから、「トリプルX2よりもワイルドスピード2よりもこれがやりたかっただなんて、ヴィン・ディーゼル、あんたは男子の鑑だ」と感謝の念でいっぱいでしたね。多くの方が指摘されてる通り、これは「砂の惑星」です。あれもほとんどの人に嫌われた映画ですから、これも相当に客を選ぶ映画ですね。ちなみに私は「ブレードランナー」より「砂の惑星」というセンスの人間です。ただし完璧に神話だった「砂の惑星」に対し、こちらのお話は「ドラゴンボールZ」。フューリア族=サイヤ人、ロード・マーシャル=フリーザ、リディック=カカロットってところです。勝手な世界観に基づいて話される冒頭ナレーションの意味不明ぶり、ヘリオス惑星、フューリア族などかっこいいんだかダサいんだかなネーミングセンス。どれも私の心を捉えました。イマムはえらい坊さんに出世し、ジャックも立派なヤンキーに成長。しかしどちらもあっけなく死ぬのがこの映画のいいところ。そしてラスト、リディックは偶然にもネクロモンガーの王位を手にしますが、普通の映画ではその権力を利用して悪の軍団を解散させるなり、悪い連中を捕まえたりするもんです。しかしリディックはちゃっかり王座に居座り、クライマックスでは銅像にまでなってました。こういう不敵な所がまたいいのです。絶対に続編はないでしょうけど、でもこの2時間でお腹いっぱいになりました。とりあえず9点をつけておきますが、DVDで見返してもアラが気にならなかった場合は、10点に昇格する可能性もあります。そんなお気に入り映画。9点(2004-08-31 22:12:42)(笑:2票) (良:2票)

40.  リベリオン ばればれの「マトリックス」フォロワーであるにも関わらず、そんな二番煎じ感をピュアなハートで乗り切ってみせた、これぞ男子必見の傑作です。ありきたりな未来、トンチの利いた展開もなし、その上つっこみ所満載と、脚本レベルでは滑りまくってるわけですが、やっぱりガンカタですよ。これ以外には語るべきものはありません。ただひたすらガンカタがかっこいい、それだけで9点あげちゃいます。その他の要素は、すべてガンカタで見栄を切るためのお膳立てにすぎないのです。それにしてもこの監督さんは、なかなか「道」というものをわかっておいでです。「道」とは剣道とか柔道とかの「道」ですね。ガンカタを漢字で書くと「銃型」なわけで、身体の体系化された動きとしての柔道、剣の体系化された動きとしての剣道、その延長として銃の体系化された動きとしてのガンカタ。そんな「道」の基本は一撃必中、つまり瞬間の勝負です。そのためかこの監督、アクションでは徹底的に必中にこだわってますね。物量を重んじるハリウッドにおいて、スポットにこだわるアクションは貴重ですよ。その弊害として、ひとつひとつのアクションがどうしても短くなってしまうわけで、その薄味感をフォローすべく、見せ場のタイミングにはこだわりが感じられます。ためて、ためて、ためて、ガンカタ!みたいな。このあたりの見せ方って、どこか時代劇みたいですね。水戸黄門がラスト15分までチャンバラしないみたいな。9点(2004-08-04 12:40:34)(良:4票)

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