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プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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21.  七人のおたく cult seven 《ネタバレ》  これは七人のおたくを描いた映画……というより「内村光良のアクション映画」ってイメージが強かったりしますね。  そのくらい終盤の格闘シーンが衝撃的だったし、実に痛快。  ウッチャン演じる近藤に対し、それまで散々「弱いぞコイツ」って印象を与えておいて、それがいざ本気で戦ったら強かったっていう、そのカタルシスが半端無いんです。  本作はメインとなる七人全員、ちゃんとキャラが立っているし、群像劇と呼べる構成なんですが……  それでもなお「ウッチャンが全部オイシイとこ持っていってる」って、そんな風に感じちゃいます。  監督や脚本家が苦心して整えたであろうバランスを、一人の演者さんのパワーが引っ繰り返してみせた形であり、ここまで来るともう、その「バランスの悪さ」が気持ち良いし、天晴と拍手を送りたいですね。  そんな訳で「ウッチャンのアクションが楽しめるだけで満足」「それ以外の場面は、正直微妙」って評価になっちゃいそうな作品なのですが……  一応「おたく達が仲良くなって、夢を叶える青春映画」としての魅力もあるし、全体のストーリーや雰囲気も、決して嫌いじゃなかったです。  とにかく作りが粗くて、脚本のツッコミ所も多いんだけど、何となく庇いたくなるような愛嬌があるんですよね。  例えば、山口智子演じる湯川リサは、設定上はレジャーおたくって事になってるけど、明らかに「普通の人」であり、この時点で「七人のおたく」って看板に偽り有りじゃないかって話になるんですけど……  劇中にて、主人公の星が「キミも同じ目になろう」とリサに計画書を渡す場面があるし、今回の冒険を通して「彼女も、おたくの仲間入りを果たした」って事なんだろうなと、好意的に捉えたくなっちゃうんです。  他にも、ダンさんの秘密基地で模型作りする場面とか、皆で竹筒の皿を使って食事する場面とかも、妙に好きなんですよね。  「仲間で集まって、ワイワイ遊ぶ楽しさ」が、しっかり描かれてたと思います。  飛行機の玩具で始まり、玩具のような飛行機で終わる構成も綺麗だったし、空から見た島の景色が、ダンさんと作った模型そっくりだった事にも感動。  最後に「皆、同じ目になった……」と満足気に呟く星に対し、他のメンバーが「そんな目はしてない」とツッコんで終わるのも、仲良しな雰囲気が伝わってきて好きですね。  自分にとっての映画もそうなんですが、おたく趣味の持ち主って「それが面白いから」というより「それが好きだから」ハマってしまい、おたくになったってパターンが多いでしょうし……  本作も「おたく映画」らしく「面白い」って言葉よりも「好き」って言葉が似合うような、そんな一本に仕上がってると思います。[DVD(邦画)] 7点(2022-10-21 20:54:12)(良:1票) 《改行有》

22.  波の数だけ抱きしめて 《ネタバレ》  とんねるずのパロディコント「波の数だけ抱きしめて2」も秀逸でしたが、元ネタである本作も、中々の傑作。  当初は別所哲也演じる吉岡卓也が主人公だったとの事で、言われてみれば序盤でヒロインに一目惚れする辺りが、それっぽいですね。  脚本を読んだ織田裕二の「最後に告白する男の方を演じたい」って意見を反映させて、本来は脇役だったキャラが主役になってるのですが、それによって「ヒロインに惚れてる男二人」の出番が同じくらいの比重になり、結果的に良い三角関係が出来上がったように思えます。  そんな三人だけでなく、メインの五人組は全員キャラが立っていたし、青春群像劇としての魅力があるんですよね、本作って。  「湘南中に聴こえるラジオ局を作る」という夢を叶える為に、皆で頑張る姿が眩しいくらいだったし、馬場監督の作品の中でも一番「若者達の青春」を感じさせる内容になってる。  現代がモノクロで、懐かしい過去がカラーという構成に関しても「初恋のきた道」(1999年)に先んじていたりするし、この辺りにも監督のセンスを感じますね。  しかも最後に仲間達と再会し、青春の輝きを取り戻してモノクロからカラーに変わるという「鮮やかな終わり方」な辺り、自分としては本作の方がより好みだし、上手くカラーとモノクロを使い分けてるなって感じたくらいです。  馬場監督の映画の中で、主人公とヒロインが結ばれないのは本作だけであり、そんなビターな味わいが評価を分けそうなんですけど、個人的には今回の味付け、大正解だったと思いますね。  「同じ女に惚れた男同士の、奇妙な友情」も良かったですし、ラジオを使っての告白が、ギリギリで彼女に届かなかったという切なさも、凄く好み。  それまでシャイで告白出来なかった主人公が、勇気を振り絞って「好きだ!」と何度も叫ぶ姿には、胸打たれるものがありました。  最後にエンディング曲ではなく、波や鳥達の「湘南の音」を聴かせて終わるのも良い。  過去を懐かしんで、ノスタルジーに浸るだけでなく「たとえヒロインが去っても、主人公には仲間達がいる」「味気ない灰色の世界から、もう一度輝ける」「湘南の海も、優しくそれを見守っている」と感じさせるような、最高の終わり方だったと思います。  何だか褒めてばかりになってしまいましたが、一応欠点も述べておくなら「群像劇としての魅力がある」っていうのは、裏を返せば「主人公が誰なのか曖昧」って事であり、その辺りが気になる人もいるかも知れませんね。   また、バブル期における馬場監督の三部作は、本数を重ねる毎に「物語の面白さや完成度」は増して「オシャレな雰囲気と、バブルの匂い」は薄れていく傾向にあるので、デビュー作の「私をスキーに連れてって」(1987年)が好きな人にとっては、この三本目は物足りないというか「こういうのが観たい訳じゃない」って気持ちになってしまう可能性もあるかも。  でもまぁ、バブル期に拘りの無い自分としては、上述の三部作は徐々に映画として成長していく様が楽しかったし、本作もお気に入りの一本ですね。  2016年のインタビューにて、監督は 「携帯電話の普及した今なら『お前のこと好きだよ』ってメール送って『じゃあ戻るわ』で終わっちゃう」 「今またこういう話を作るんだったら、ラジオ局を作るんじゃなくて、どこかの海岸でフェスをやろうって話になるんじゃないかな」  と語っているのですが……  海岸でフェスをやろうとする映画、是非観てみたいなって、そう思えました。[DVD(邦画)] 8点(2022-10-12 00:11:49)《改行有》

23.  メッセンジャー(1999) 《ネタバレ》  これは好きな映画です。  バブル期の若者を主役に、オシャレな青春映画を撮り続けてきた馬場監督が「バブル崩壊後、肉体労働で生計を立てる主人公」を描いてみせたという、その舞台背景も面白いし、そんな予備知識無しで、シンプルに作品を観賞するだけでも面白い。  初見の際には、主人公の尚実に感情移入出来ず「何だ、この女は」と呆れる思いもあったんですが、今となっては彼女の存在ひっくるめて好きな映画になったんだから、本当に不思議ですね。  理由としては、もう一人の主人公である鈴木が尚実に反発しつつも、少しずつ認め、惹かれていく過程が、観客である自分の心境と、上手くシンクロしてくれたのが大きいかと。  とにかく最初の印象は最悪で、車で人を轢いておきながら相手よりも先に車の傷を心配する場面なんてもう、正直ドン引き。  それでも「携帯電話を届ける依頼」をやり遂げてみせた辺りから、徐々に見方が変わってくるんです。  ここの演出が上手くて、それまで日焼けを気にして着込んでいた上着を「邪魔」と言って脱ぎ捨てるシーンを挟むなど、視覚的にも分かり易く「彼女は生まれ変わった」事を示しているんですよね。  また「ありがとうの一つも言われないような最低の仕事」という台詞が伏線になっており「ありがとう」と言われる事で、初めて彼女がメッセンジャーとしての喜びに目覚める形でもある。  これまた凄く分かり易くて、その分かり易さが心地良い。  「ビール」と「シャンペン」を巡る一連のやり取りも面白かったですね。  汗水垂らして働いた後はビールに限るという鈴木と、高級なシャンペンが一番という尚実。  中盤にて、尚実の方が労働後のビールの美味しさを認め、それによって彼女が正式にメッセンジャーの仲間入りを果たす訳ですが、この映画はそれだけで済まさないんです。  鈴木もこっそりシャンペンを注文してみせたり、ラストにて皆でシャンペンで乾杯したりするという、素敵なオマケを付け足しているんですよね。  それによって、単なる肉体労働賛歌だけに終始せず、高級品の魅力もキチンと認めてるのだという、作り手のバランスの良さが伝わってきました。  バランスと言えば、尚実が一方的に「汗水垂らして働く喜びに目覚める」という受け身な立場に終始せず、元キャリアウーマンの経験を活かし、メッセンジャー業の改革に貢献していく流れも気持ち良いんですよね。  その他にも、憎まれ役と思われた尚実の元恋人や、取引先の太田さんなども「実は良い奴」オチが付くものだから、非常に後味爽やか。  そんな中、最後まで悪役の座を貫いたバイク便の「セルート」は実在の会社との事で、イメージダウンを覚悟で悪役を演じ切ってみせた、その懐の深さにも拍手を送りたいところです。   ラストの競争にて、チーム内で封筒の受け渡しを行う際の演出も、逐一恰好良い。  「何も言ってないだろ」「自転車よりバイクの方が速い」「楽勝」という台詞の使い方も上手いし、鉛筆や無線機などの小道具の使い方も上手い。  演者さんの棒読み率が高い事、エンディングでのアマチュア感漂うラップなども、普通なら減点対象となったかも知れないけど、本作に関しては「愛嬌」に思えてくるんですよね。  最初はメッセンジャー業を恥じらい、元同僚に対し「別の仕事をしている」と見得を張っていた尚実が、誇らしげに働く姿を見せるようになる様も良いし、鈴木が尚実を後ろに乗せて、自転車に二人乗りして帰るシーンなんかも、凄く好き。  全体的に「分かり易い面白さ」に溢れている中で、唯一つだけ「尚実は鈴木に何を言ったのか」という謎掛けが残されているのも良かったですね。  自分としては、凄ぉ~くベタだけど「アンタが好きだから」が正解だったんじゃないかな……と思いたいところです。[DVD(邦画)] 9点(2022-10-10 18:10:32)(良:4票) 《改行有》

24.  息子(1991) 《ネタバレ》  何といっても、終盤における次男のアパートでのシーンが素晴らしかったですね。  息子が良い娘さんと結婚してくれるのが、もう嬉しくて嬉しくて眠れなくて、思わず唄い出してしまう老父の姿が、何とも微笑ましい。  それまでが結構「しんどい」描写も多かったりしただけに、あそこで一気に救われたというか、心が晴れやかになるのを感じられました。  息子達は「出来の良い長男」「出来の悪い次男」という対比になっている訳ですが、後者の方に同情的というか、真に父親想いなのは次男の方であると感じられる描き方にしている辺りは、如何にも寓話的。  長男だって父親や弟の為を思って、色々考えて行動しているのに、どうにも空回りしていたのは、ちょっと可哀想でしたね。  次男目線では非常に幸福な映画なのですが、長男の側にも、もう少しフォローが欲しかったところです。  そんな長男が、父親に対しては方言で話すのに、会社で同僚や部下に接する際には標準語に切り替わる描写を自然に挟んでいる辺りは、実に上手い。  中々方言が抜けなくて、その事にコンプレックスを抱いている様子な次男とも、良い対比になっていたと思います。  また、次男が鉄工所に務めるようになった後、お風呂場で気持ち良さそうに汗を洗い流し「働く喜び」を感じる描写なんかも良かったですね。  序盤にて「汗水垂らして働く事」を軽侮していた台詞があっただけに、余計に響いてくる形。  やれ「あの頃の方が良かった」だの「どうなるのかね、この国の将来は」だのと、こんな昔の映画の中でもオジサン連中が愚痴っている事には苦笑しちゃいますが、何時いかなる時代でも見受けられる風景なのだろうなと思えば、何だかほのぼの。  戦中は部下に対して厳しく接し、手を振るう事もあった伍長さんが、何十年振りかに部下と再会したら、ひたすら低姿勢で謝るだけというシーンなんかも、シニカルな笑いを感じられましたね。  上述のように、老父がアパートで眠れぬ夜を過ごすシーンは本当に大好きなのですが、ラストにて、実家へと帰り、誰もいない部屋で一人「家族みんなが、この家にいた頃」を懐かしんで終わる形だったのは、ちょっと受け入れ難いものもあったりして、残念。  「次男が孫を連れて、里帰りしてくる未来」を思い描き、父も生きる希望を取り戻した様子だったのに、結局は過去の出来事こそが最も幸せであったかのような描写で終わってしまったのが、何だか凄く寂しかったんですよね。  勿論、未来だけでなく、過去も大切にするのは良い事だと思います。  ただ、個人的な好みとしては、駅に着いた後の、地元の知人とのやり取り 「息子と会って来たか。幸せだな、おめぇは」「……あぁ、幸せだ」  という台詞で終わってくれた方が、より傑作に仕上がったのではないかな、と思えました。[DVD(邦画)] 7点(2022-09-26 04:01:05)(良:1票) 《改行有》

25.  失踪(1993) 《ネタバレ》  「ザ・バニシング-消失-」(1988年)は以前に一度観たっきりなのですが「後味が悪い」「殺人鬼を美化してる感じが苦手」という印象が残ってます。  そんな本作は過去作とは対照的に「ちょっと強引なくらいのハッピーエンド」「殺人鬼を美化したりせず、ちゃんと悪役として描いてる」って内容になっており、自分としては嬉しかったですね。  1988年版が好きな人にとっては「あの独特の絶望感、魅力が消え失せて凡庸な映画になってしまった」という事になるんでしょうけど……  自分にとっては「凡庸な、在り来たりで面白い映画」という形であり、意外と満足出来ちゃいました。  監督は1988年版と同じジョルジュ・シュルイツァーであり(同じ人が同じ原作小説から、こうも異なる映画を撮ってみせたのか……)って事にも感心しちゃいましたね。  そんな二つの映画、最大の違いは、ヒロインのリタの存在にあると思います。  一応1988年版にも彼女に相当するキャラはいるんですが、もはや別人と言って良いくらいに変わっていますし、1993年版の「失踪」は、彼女が主人公と言えそうなくらい。  被害者であるジェフも、犯人であるバーニーも、どちらも異常者という歪んだ世界の中で、彼女だけが唯一まともであり「何を馬鹿な事やってんのよ」とばかりに乱入してきて事件を解決しちゃうのが、凄く痛快なんですよね。  ジェフのようにリタも言い包めてやろうとする犯人を、問答無用で角材で殴り黙らせる姿とか、もう最高。  陰鬱なバッドエンドだった過去作を、一人のキャラクターがハッピーエンドに変えてみせたという形であり、自分としては断然、彼女が存在するハッピーエンド版を支持したいです。  そもそも1988年版にて「計画も杜撰で不器用で、頭も悪い犯人」を、さも「特別なカリスマを備えたキャラクター」であるかのように描いてるのが、無理があったと思うんですよね。  腕にギブスを付けて女性を騙そうとする手口とか、恐らくはテッド・バンディが元ネタなんでしょうけど、模倣犯というより劣化版って感じ。  この犯人って、誘拐犯としても殺人犯としても徹底的に無能であり「偶々目撃者がいなかったから犯行がバレなかっただけ」というんだから、自分としては(何だ、そりゃ)としか思えなかったんです。  こんな奴を主人公格に据えて「殺人犯の勝ち逃げエンド」見せられても困っちゃうし、ちゃんと最後には負ける悪役に据えた本作の方が、ずっと自分好みなんですよね。  終盤にて、ジェフと格闘になったらアッサリ負けちゃう犯人の姿にも(そりゃそうだ、元々か弱い女性を狙って殺そうとしてた卑怯者だもん)と納得出来るし、大いに溜飲が下がりました。  正直、ジェフが地中に埋められるまでの展開は(1988年版の方が、丁寧に作ってあるな)と思っちゃいましたが……  ラスト二十分ほどで、一気に評価を逆転させてくれたと思います。  それと、犯人の不気味さという意味では1988年版に及ばないかも知れませんけど、被害者側のジェフが狂気に陥っていく様は、本作の方が上だなって思えた辺りも、忘れちゃいけないポイント。  「失踪したダイアンを助けたい」ではなく「ダイアンがどうなったのかを知りたい」という歪んだ好奇心に囚われた男を、決して観客から遠ざける事無く、適度に感情移入出来る存在として演じていましたからね。  流石はキーファー・サザーランドだなって、大いに感心させられました。  最後の最後「コーヒーは遠慮するわ」がオチというのは、ちょっと弱いんじゃないかと気になりましたけど……  まぁ、事件をネタにしたジョークを言って笑えるくらいに、主人公二人が「平和な日常」を取り戻したって事なんでしょうね、きっと。  あと、自分は1988年版を先に観てバッドエンドに落胆し、その後にコレを観て追加要素に驚いたって形だったので好印象だったけど、観る順番が逆だった場合は、また違う印象になってたかも知れません。  その場合、本作終盤の展開にカタルシスを感じる事も無く(何この無理矢理な逆転劇)と白けてた可能性もあるでしょうし……  「映画を観る順番」「タイミング」「巡り合わせ」って大切だよなって、しみじみ思えた一本でした。[DVD(吹替)] 6点(2022-09-21 21:34:33)《改行有》

26.  6デイズ/7ナイツ 《ネタバレ》  映画「ファンボーイズ」(2008年)にて本作が「失敗作」ではないかと揶揄するような場面があったのを思い出し「そんなに酷い出来だったかな?」と考えて、此度再観賞。  結論からいうと、確かに「傑作」とは言い難い内容でしたが、自分としては好きなタイプの映画でしたね。  お気楽な無人島ロマンス映画として、しっかり楽しめるように作ってあるし、娯楽作として一定の基準は満たしているんじゃないかな、と感じました。  「エボリューション」(2001年)や「ドラフト・デイ」(2014年)を手掛けたアイヴァン・ライトマン監督だし、元々この監督の作風が好みに合ってるんだと思います。  「この島から多分ずっと出られない」と言っていたはずの主人公が、その後「無線用の信号機のスイッチを切れば、修理班が島にやって来るはず」と言い出すのは一貫性に欠けるとか、敵役となる海賊が間抜け過ぎて(せめて服をロープ代わりにして手を縛るとかしろよ。そんなんじゃ逃げられて当然だろ)と呆れちゃうとか、脚本にはツッコミどころが多いけど、何となく笑って許せちゃう。  無人島の雄大な自然を捉えた上空からのカットとか、崖から飛び降りるシーンでのスローモーション演出だとか、そういう細かい部分がしっかりしているからこそ「脚本の粗を気にせず、何も考えずに観ている分には楽しい」って気分になれる訳で、そこは素直に凄いと思います。  五十歳を越えているだろう主人公と、若々しい金髪美女のロマンスって時点で、結構トンデモない内容のはずなのに、男側をハリソン・フォードが演じる事によって(まぁ、これなら有り得るかも……)と思わせてくれる辺りも嬉しいですね。  男にとって都合の良い、妄想を具現化したような映画だからこそ、最低限の説得力は欲しくなる訳ですし、その点でもこの映画は合格だったように思えます。  でも、上述の通り「傑作」とは言い難いのも確かであって……やっぱり欠点も多いんですよね、この映画。   そもそも「妻を親友に奪われた」って過去がある主人公なのに、最終的には「婚約済みであるヒロインを主人公が奪う」って展開になる訳だから、実は凄く後味が悪い話なんです。  「主人公とヒロインだけでなく、婚約者も浮気していた」「お互いに浮気していたから無罪」みたいな展開になるのも、ちょっと都合が良過ぎるかと。    アン・ヘッシュ演じるヒロインが「乳首の形が透けて見える恰好」だったり「胸の谷間が丸見えな恰好」だったりと、あまりにも扇情的なファッションな点も、観ていて気恥ずかしいものがありましたね。  好みの女優さんだし、サービスシーンがある事自体は喜ばしいのですが、あからさま過ぎて面食らうという形。  (どうせ胸をアピールするなら、もうちょっと控えめな形にしてくれた方が嬉しいなぁ……)なんて、つい思っちゃいました。  水場も簡単に見つかるし、壊れた飛行機も簡単に直せちゃうしで、漂流難易度が低過ぎるのも気になるし「タヒチに運ぶ貨物」がサバイバル生活にて役立つかなと思ったら、そうでもなかった辺りも残念。  特に後者に関しては「キャスト・アウェイ」(2000年)において「一見すると役に立たないような貨物を、何とか利用して生き延びてみせる」様が見事であった為に、どうしても比べたくなっちゃいます。  調味料以外にも明確に「貨物が無人島生活に役立った」と思える描写があれば「この映画はキャスト・アウェイの元ネタになっているのでは?」なんて推論も書けたでしょうし、実に惜しい。  最後はお約束通り「文明社会に帰って来た二人が、無事に結ばれる」ハッピーエンドだし、エンディング曲も好みだったしで、ある程度の満足感は得られるんですが「本当にそれで良いのか?」ってツッコみたくなる部分が多過ぎるんですよね。  良かった部分と、悪かった部分とで、差し引きゼロみたいな形になるんだから、つくづく勿体無い。  「恋愛の69%はレストランで終わる」「砂糖にくるんだ嘘」など、印象深い台詞もありましたし、好きか嫌いかと問われたら好きな映画になるんだけど、高得点を付けるのは憚れる……  もどかしい一品でありました。[DVD(字幕)] 5点(2022-09-16 19:57:48)(良:2票) 《改行有》

27.  ハムナプトラ/失われた砂漠の都 《ネタバレ》  「ミイラ再生」(1932年)のリメイク……というよりは、それを元ネタにしたオリジナル映画って感じですね。  元々はジョージ・A・ロメロが監督する予定もあったとか、過酷な撮影現場で主演のブレンダン・フレイザーは死に掛けたとか、面白い裏話も満載。  そして映画本編の方も、裏話の数々に負けないくらい、面白く仕上がっていたと思います。  そんな本作の魅力といえば、何と言っても登場人物達。  何せミイラ映画であるにも拘わらず、ミイラが甦るまでに一時間以上も掛かる構成になってますからね、これ。  じゃあ前半は何やってるのと言えば、主に人間同士が争ってる訳なんだけど、それがキチンと面白く仕上がってる。  それもこれも、魅力的なキャラクターが揃っているからこそ。  そして、ミイラ映画という枠組みに囚われない、柔軟な発想の監督だからこそ出来た事ではないでしょうか。  そもそも本作を「ミイラ映画」と評するのすら躊躇われるくらいで、どちらかといえば「冒険映画」という、そんな懐の大きいジャンルの方が、より似合う気がしますね。  鏡の角度を変えるだけで、暗かった部屋が明るく照らされる仕組みとか「ハムナプトラの遺跡」にも魅力たっぷりであり、観ていて少年心をくすぐられます。  監督の前作「ザ・グリード」(1998年)同様に、主人公にはお調子者の相棒がいるのかと思わせておいて、冒頭でその相棒ベニーに逃げられちゃう展開には驚かされたし、話作りも上手かったですよね。  思えば、あれで一気に物語に惹き込まれたし、たとえ監督に関する予備知識が無くとも、充分に「話の掴み」として成功してた気がします。  自然というか、面白い流れで「このヒロインは古代エジプト語の読み書きが出来る」「ヒロインの兄にはスリの才能がある」と説明してる辺りにも感心。  脚本だけでなく、視覚的な演出も優れており、刑務所長が体内をスカラベに侵食される場面なんかも、ショッキングで良かったです。  派手な出血や内臓露出などのグロ描写を用いずとも、こういう形で「エグい場面」を描けるのって、凄い事だと思います。  主人公のリックが二丁拳銃使いなのも新鮮だったし、何より恰好良い。  ヒロインのエヴリンもキュートであり、武闘派の主人公と、知性派のヒロインって形で、綺麗に色分けされてるのも良かったですね。  二人が冒険を通して結ばれて、ラストには財宝よりも価値のある「愛」を手に入れてハッピーエンドになるっていうのも、文句無しの終わり方。  そんな具合に、とにかく優等生というか、ほぼ全編に亘って面白い映画なんですが、あえて欠点を探すなら……  主人公が頼もし過ぎて、緊迫感に欠ける(窮地に陥っても簡単に脱出するので、拍子抜けしたりする)って事くらいかな?  「観客を楽しませる映画」という意味では、本当に王道な作りであり、お手本になりそうなくらい、完成度が高い。  良い映画でした。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2022-09-11 15:38:54)(良:1票) 《改行有》

28.  プロジェクト・イーグル 《ネタバレ》  「サンダーアーム/龍兄虎弟」に続く「アジアの鷹」シリーズ第二弾。  始まって早々、お馴染みの「ガムを食べる」シーンを挟んでくれるのが、ファンとしては嬉しい限りですね。  (あのアジアの鷹が帰って来た!)と思えて、大いにテンションが上がりました。  「原住民達との追いかけっこ」「旅の移動時間に曲を流す演出」なども前作と共通しているのが嬉しい一方で、アランやメイといったキャラクター達が出て来ないのは寂しいですが……まぁ、バノン伯爵が続投しているだけでも良しとすべきでしょうか。    そんな本作は無論、アクション重視の冒険活劇なのですが、ストーリーに関しても優れていたと思います。  「宝石よりも水の方が価値がある」と、冒頭のシーンで伏線が張ってある事には感心させられるし、敵となる集団が仲間割れして「ラスボス」枠かと思われたアドルフが味方になってくれるという意外性も良い。  前作において「俺が信じる神の名は『金』さ」と嘯いていた主人公が「人間にとって、一番必要な物は何なのかな」と呟き「金」の無価値さ「水」の大切さを実感しつつ砂漠を彷徨って終わるというのも、皮肉が効いてて良かったですね。  そして何といっても……エンディング曲が素晴らしい!  数あるジャッキーソングの中でも、一番好きな曲じゃなかろうかって思えるくらいですね。  「世の中は、空気と水に満ちている」「無欲ならば、どこでも楽園さ」という歌詞は心に響くものがあり、映画の内容とも完璧に合っていて、実に味わい深い。  普段は笑いながら観賞する事が多いエンディングのNG集なのですが、この曲のお蔭で、涙が滲んでくる事さえあるほどです。  それと、本作の特色としては、もう一つ。  お色気要素が豊富な点も見逃せないですね。  キャリアウーマン風のエイダに、金髪お嬢様のエルサ、不思議な雰囲気漂う旅人の桃子と、個性豊かな三人の美女が揃っており、実に華やか。  彼女達の立ち位置が、これまた絶妙であり「主人公の存在感を食ってしまうほどには目立たない」「全くの役立たずという訳じゃなく、適度に活躍してくれる」っていう形に仕上がっているんだから、お見事です。  鉄の装備で身を固め、敵兵をボコボコにして倒しちゃう件は痛快だったし、ジャッキーに水を飲ませてもらう場面なんかは妙にエロティックで「ハーレム」な匂いすら漂っていたのも、凄く魅力的に思えちゃいました。  序盤のバイクに、巨大な送風機を駆使したラストの大立ち回りと、アクションパートの面白さも文句無し。  そういった「ジャッキー映画お馴染みの魅力」と「感動」「お色気」という本作独自の魅力とが、非常にバランス良く交じり合っている。  傑作と呼ぶに相応しい一本だと思います。[DVD(吹替)] 9点(2022-09-10 12:36:17)(良:2票) 《改行有》

29.  キャンディマン(1992) 《ネタバレ》  最後のオチありきの映画ですね。  作り手側も、あそこの部分をやってみたくて制作に踏み切ったんじゃないかな、と思えました。  しかも、そこをあっさり描かないで「鏡の前でヘレンの名前を何度も呟いてしまう」というシーンを適度に勿体ぶって描いているから(あっ、これもしかして……)と観ている自分も気が付けたし、キャンディマンの代わりにヘレンが出てきた時には(ほぉら、やっぱり!)と、予想が当たって嬉しくなったのを憶えています。  基本的なストーリーラインとしては、主人公のヘレンが酷い目に遭い、最後は都市伝説の中の怪物になってしまうという悲劇なのですが、それほど後味は悪くなかった点も好み。  これに関しては作中で「人質に取られた赤ちゃんを救う事は出来た」という救いが示されているのが大きいのでしょうね。  わりと良い人そうだったヘレンの元彼氏が殺されてしまう件に関しても、作中で何度も「ヘレンが入院する前から実は浮気していた」という伏線が張られていた為(可哀想だけど、まぁ自業自得な面もあるか)と納得出来る感じに纏められており、脚本の巧みさが窺えます。  その一方で「本当にキャンディマンは実在するのか?」「全ては精神を病んだヘレンの妄想ではないか?」と思わせるような展開もあり、これが中々迫真の展開ではあるのですか(いや、明らかにキャンディマンの仕業でしょうよ)と思わせる情報が事前に多過ぎたので、何だかチグハグな気がしましたね。  例えば、冒頭にてキャンディマンの声で「血は、流す為にあるのだ……」なんて観客に語り掛ける演出がある訳だから、彼女の妄想の産物であるとは、ちょっと考えにくいんです。  このような展開にするなら、もっと序盤でキャンディマンの実在性をボカす演出(インタビューで聞いた話の中でのみ登場する、など)にしておいた方が良かったんじゃないかな、と。  あとは主人公のヘレンの存在感が強過ぎて、怪物役のキャンディマンの影が薄くなっている点なども気になりますね。  とはいえ、全体的な印象としては程好いサプライズが味わえた、中々面白い映画でありました。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2022-09-05 14:22:18)《改行有》

30.  激流(1994) 《ネタバレ》  シンプルな邦題の「激流」ってのが、凄く恰好良いですね。  内容に関しても、画面に広がる雄大な自然を眺めてるだけで楽しいし「崩壊の危機にあった家族が、試練を乗り越え強く結ばれる」という王道展開も備えているしで、満足度は高いです。  一応サスペンス色も強い作りなんですが、血生臭い場面は出て来ないし、主人公一家の中から死人が出たりもしないという、安心設計。  程好い緩さの、程好い緊張感を味わえました。  旦那の命令は全く聞かないけれど、妻に命令されたらすぐに聞き入れる飼い犬の存在も、良いアクセントになっていましたね。  上述の描写は「旦那さんは仕事で忙しく、家を留守にしがち」「だからこそ、犬も旦那さんを家族として認めていない」と、さりげなく伝える効果があり、それだけでも感心していたのですが、実は終盤に掛けての伏線になっていたというんだから、もう吃驚。  共に協力し、危機を乗り越え「初めて私の言いつけ通りにしてくれたな」と、旦那さんが犬を抱き締め、喜ぶ展開に繋がってたんですよね。  「父と息子」「夫と妻」の和解は描かれるだろうと予測済みでしたが、この「主人と飼い犬」の絆に関しては予想していなかっただけに、気持ち良いサプライズ感を味わえました。  川下りの途中、釣りをする描写があるのも嬉しいし「一家は手話が使える」という設定の使い方も上手い。  メリル・ストリープも、流石の目力と存在感。  如何にも頼りなさそうな、眼鏡着用の旦那さんが、家族の為に奮起して超人的な活躍を見せちゃうというのも、観客としては応援したくなるし、良い脚本だったと思います。  そんな本作の不満点としては……やはり、ケヴィン・ベーコン演じるウェイドの扱いが挙げられるでしょうか。  勿論、良い悪役だったと思うんですけど、ちょっと勿体無い気がしたんですよね。  主人公一家の幼い息子、ロークと心を通わせる序盤の展開が好みだっただけに「結局は単なる悪人でした」というオチな事が、凄く寂しい。  ロークに拳銃の秘密をバラされた時に、傷付いた表情を浮かべたりするのが良かっただけに「悪人だが、子供には優しい」というキャラで通して欲しかったなと、つい思っちゃいます。  例えば「十徳ナイフ」の存在にしても、犯人達がそれをロークから取り上げておかないのって、凄く不自然なんですよね。  でも自分としては(ウェイドはロークが好きだから、誕生日プレゼントのナイフを取り上げるような真似はしたくないんだろう)と解釈し(十徳ナイフで危機を脱する展開を、自然にしてみせたな)と感心してたくらいなんです。  でも、クライマックスにてウェイドの本性が暴かれ「ガキも捕まえて殺せ」とか平気で言い出すもんだから(……じゃあ、あれって単に迂闊なだけかよ!)と、大いに失望。  自分の読み違いに過ぎないんですけど、それにしたってコレは落胆しちゃいました。  終盤の難所「ガントレット」を乗り越えるシーンに関しても、迫力があって良かったんですが(いや、旦那さんは陸路で先回り出来たんだから、無理して水路を選ばなくても良いのでは?)と、そこが気になっちゃうんですよね。  多分「犯人二人は、ガントレットを越える以外のルートは無いと、元仲間のフランクに騙されていた」「ローク達もそれを察し、陸路の事は口にしなかった」って事だとは思うんですが、それならそうで、もっと分かり易く説明して欲しかったです。  そもそも、登場人物達は「ガントレット」を越えた際に凄く盛り上がっている訳だけど、前提として「ガントレットを無事に越えたとしても、その後に犯人二人をどうにかしなければいけない」って課題が残っている訳だから、観客目線だと一緒に喜べないんですよね。  「犯人達と協力して難所を越えた事により、絆が芽生えて分かり合うなんて有り得ない」「勧善懲悪な結末であるべき」という真っ当な作りゆえに、映画の一番の山場で、カタルシスを得られなかったように思えます。  全体的には好みな作風ですし、家族の絆が深まるハッピーエンドなので、後味も悪くない。  それでも(最後、もうちょっと上手く着地してくれたらなぁ……)と、欲張りな気持ちを抱いてしまう。  そんな一品でありました。[DVD(吹替)] 6点(2022-09-04 09:54:57)(良:2票) 《改行有》

31.  ビバリーヒルズ・コップ3 《ネタバレ》  前作を「同窓会映画」と評した自分としては、タガートの不在が何とも寂しい。  そして、レギュラーキャラであるトッド警部が撃たれて死んじゃうというのも、受け入れ難いものがありましたね。  そりゃあ、このシリーズは「誰かが悪人に撃たれ、主人公は仇討ちを誓う」って導入部なのがお約束ではあるけど、1のマイキーは登場して数分での退場なので観客としても受け入れ易いし、2で撃たれたボゴミルは一命を取り留めていますし。  視点を変えて考えれば「1や2を越えるほどショッキングな導入部」として評価する事も出来るんでしょうけど……  それならそれで、もっと「トッド警部の死」を物語に深く絡め、ラストは警部の墓参りで終わらせるとか、やりようは幾らでもあったと思います。  他にも、ヒロイン格のジャニスとロマンスが芽生えるのも、このシリーズらしくない点であり(これ、ビバリーヒルズ・コップでやる必要あった?)と思えちゃう内容なんですよね。  「遊園地で銃撃戦を繰り広げる刑事物」ってアイディア自体は良かったし、アトラクションを駆使した楽しい場面も色々あったんだけど、それが結果的に「1や2と全然違う」って違和感も生み出してる。  マンネリ回避の為に、新機軸を打ち出そうとしたのかも知れませんが、それが成功したとは言い難いかと。  あと、せっかく新キャラのフリント刑事を登場させておきながら、彼と主人公のアクセルに友情が芽生えていく過程を描いていないのも、実に勿体無い。  「ビバリーヒルズの警官」とアクセルが仲良くなって、一緒に事件解決するのが本シリーズの華だろうに、何でそれをやらないんだよって、もどかしく思えちゃうんですよね。  FBIのフルブライトが黒幕って種明かしも、アッサリし過ぎていてカタルシスに欠けるし……  (アイディアは悪くないんだから、もっと細部を丁寧に作れば良いのに)って、歯痒くなっちゃいます。  そんな訳で「ビバリーヒルズ・コップ」シリーズの一作と考えたら失敗に思える作品なんですが……  これ単品として考えたら、そこまで悪くない仕上がりなんですよね。  上述の「このシリーズらしくない」っていう不満点に関しても、例えば「アクセル・フォックス」っていう単品映画だったとしたら、全然気にならなかったと思いますし。  本作の白眉であろう「子供達を助けるスタント場面」なんかも、初見では(アクセルらしくない。どっちかっていうと「ポリス・ストーリー」のチェン刑事がやる事)と思えて、戸惑ったもんですが、純粋にその場面だけを評価すれば「良い場面」って事になる。  あと一応、シリーズのファンに対するサービスとして「セルジュの再登場」ってサプライズもありましたし、作り手の誠意のようなものが感じられて、憎めない作りなんですよね。  それが単なるファンサービスだけで終わっておらず、ちゃんと物語の中で機能しており、彼に貰ったキーホルダーなどの発明品が、しっかり活躍してるのも嬉しい。  スタローンの母がデストロイヤー2000を買ったという「刑事ジョー/ママにお手あげ」を踏まえたようなネタがあるのも、ニヤリとさせられましたね。  元々「ビバリーヒルズ・コップ」ってスタローンとは縁深い作品ですし(2でも「コブラ」や「ランボー」のポスターが映り込んでる)こういうネタが盛り込まれてる辺りは、信頼出来る作り手さんだなって思えました。  結果的に「1」は8点「2」は7点「3」は6点と、尻すぼみな評価になってしまったのは寂しいけれど……  自分としては、この「ビバリーヒルズ・コップ3」も、充分に「好きな映画」って言えると思います。  三部作まとめて、定期的に観返したくなるシリーズです。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2022-08-27 03:56:00)《改行有》

32.  ザ・グリード 《ネタバレ》  「乗客の殆どが消えた豪華客船に、主人公達が遭遇する」という、マリー・セレスト号事件のような粗筋なのですが……  この映画には「怪談」「謎解き」的な要素なんか皆無で、ひたすら分かり易いモンスター映画として作ってあるのが痛快でしたね。  上述の「乗客が消えた理由」に関しても、普通なら途中まで謎にして不気味な雰囲気を漂わすもんなのに、本作に関しては「怪物が豪華客船を襲撃する場面」を、序盤で描いちゃってるんです。  これには本当、驚かされました。  低予算の映画であれば間違いなく省略してたはずの場面を、惜しみなく見せるというサービス精神。  「観客の想像に委ねる」という形で「逃げる」事も許されたはずなのに、それを良しとせず「観客の想像より、もっと凄いのを見せてやるぜ」とばかりに、迫力満点な襲撃シーンを描いてみせた作り手の心意気には、もう感服するばかりです。  映画オタクって、つい低予算な映画を評価したがるものなんですけど、本作に関しては(予算があるって、良いもんだな……)と思えたし「必要な場面の為に、必要な予算を確保してみせた」というのは、立派な長所の一つなんだなって、蒙を啓かせてもらった気分。    そんな怪物襲撃の場面だけでなく、怪物と対峙する人間側の描写も、魅力たっぷりで良かったですね。  特に、主人公であるフィネガンの描き方が良い。  金の為なら怪しい仕事も引き受ける船長という、アウトローな人物なんだけど、部下を救う為に危険を冒したりとか「良い人」としての面も、ちゃんと描いてる。  強さや頼もしさも程好いバランスであり、銃を持った強盗達に一歩も退かないタフガイっぷりを見せた後「寿命が縮んだぜ……」と、小声で弱音を吐いたりするんですよね。  何とも憎めなくて、この手の映画の主人公としては、理想形の一つとすら思えました。  脇を固める部下のパントゥッチに、ヒロインである女怪盗のトリリアンも良い味を出しており、この三人が生き残るハッピーエンドであった事は、本当嬉しかったです。  他人を犠牲にして助かろうとした結果、悲惨な末路を辿る強盗犯のボスも印象深いし、本作が「勧善懲悪」を重視した映画であった事が窺えますね。  主人公達が生き延びた事を素直に喜び、悪人達が死んだ事に関しては「自業自得」と思えるのって、本当に理想的。  他にも「敵の本体が姿を現す際の、怪獣映画みたいなBGMが素敵」とか「怪物の目玉をショットガンで撃ち抜く場面が最高」とか、褒め出したらキリが無い映画です。  ただ、終わり方に関しては……  出来れば「主人公達三人が生き残ったハッピーエンド」という、爽やかな形で終わらせて欲しかったですね。  「ようやく辿り着いた島には、更なる怪物が待っていた」って暗示させる終わり方も、まぁ悪くはないんだけど、せっかく「怪物を退治してみせた達成感」を上手く描けてた訳だから、そのまま終わっても良かったと思うんですよね。  「今度は何だ?」という主人公の決め台詞で終わるのに、その「今度」を描かず仕舞いっていうのが、何とも意地悪に思えて仕方無かったです。  総評としては「終わり方に難有りだけど、中々の傑作と呼べる一品」って感じに落ち着くでしょうか。  この作品の一年後、ソマーズ監督は「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」(1999年)をヒットさせ、その続編も手掛けた訳だけど……  自分としては「ザ・グリード」の続編も、是非観たかったです。[DVD(吹替)] 8点(2022-08-24 23:31:31)(良:2票) 《改行有》

33.  パラサイト 《ネタバレ》  所謂「ボディ・スナッチャー」系の映画なのですが、舞台を高校とその周辺に絞ってティーン・ホラーとして成立させているのが上手いですね。  なんせ「盗まれた街」の映画化に限っても四回以上は行われている訳であり、どうしても陳腐な内容となりそうなところを、演者と舞台設定によって新鮮に思わせる事に成功してる。  イライジャ・ウッドとジョシュ・ハートネットの共演が拝めるのも楽しいし、冒頭に流れるオフスプリングの曲をはじめとして、今観ても「若々しいセンスの良さ」を随所に感じる事が出来る、時代を越えて愛されるタイプの映画だと思います。  ただ、自分としてはヒロイン格であるデライラに魅力を感じなかったもので……ラストで主人公ケイシーが彼女と結ばれても、全然祝福する気になれなかったのが残念でしたね。  見た目は物凄い美人なのですが、性格が「嫌な女」としか思えなかったというパターン。  寄生される前から「ガリ勉じゃ私に釣り合わない」なんて言い出す傲慢さだし、ラストにて「学園のヒーローになったケイシー」と結ばれたのも「これでようやく私に釣り合う存在になったから付き合ってあげた」と言わんばかりの態度に思えちゃうしで、どうも好きになれなかったです。  もう一人の主人公ジークと、女教師のエリザベスとの関係性は好みだったので、もっとそちらにスポットを当てた構成だったら、印象も違っていたかも。  あとは、体育館の巨大な座席が閉じる仕組みを駆使してラスボスを倒すのは痛快だけど、事前に伏線を張っておいて欲しかった(座席が閉じるシーンを見せておいて欲しかった)という事。  コーチに誘われていたのはケイシーで、メアリーベスと因縁があったのはジークの方なので「ジークがアメフトを始める」「ケイシーがメアリ―ベスを倒す」というオチの付け方は、互い違いじゃないかと思えてしまった事……と、気になるのはそれくらいでしたね。  自分の好みを言わせてもらうなら「コロッと態度を変えて言い寄って来たデライラを袖にして、ケイシーはアメフトを始める」「ジークは自らがトドメを刺したメアリ―ベスに憐れみを感じながらも、エリザベス先生と結ばれる」って着地の方が良かったんじゃないかと思えますが、実際の終わり方も、そこまで嫌いじゃなかったです。  とにかく、細かい不満点が色々あったとしても、それらを吹き飛ばすくらいに「好きな部分」が多いもんだから、観ていると気にならなくなるんですよね。  特にジークがファーロング先生を倒す場面は恰好良くて、少年時代に観た時は、本当に痺れちゃったのを憶えています。  オタク少年だった自分にとって、ジークは理想的なアウトローだったし、いじめられっ子なケイシーも等身大で感情移入出来る存在だったしで、この二人が主人公ってだけでも、もう「好きな映画」になっちゃうんです。  「僕は目にペンでも刺すかな」というファーロング先生の台詞など、細かな伏線が効いている作りなのも良い。  「貴方は優しくしてくれた。嬉しかったわ、とても」というメアリ―ベスの台詞は演技ではなく、本音だったんじゃないかと思える辺りとか、妄想の余地を与えてくれる脚本なのも良かったですね。  主人公グループの中に裏切者がいるんじゃないかと疑心暗鬼になる件は、今になってみれば「遊星からの物体X」が元ネタだって分かるけど……  初見の際には知らなかったもので、凄くドキドキしながら観賞出来たし、元ネタを知った今観ても、ちゃんと面白かったです。  完成度は高くないし、物凄い傑作という訳じゃありませんが、色んな世代の「映画好き」に観てもらいたくなる。  そんな、オススメの一本です。[DVD(吹替)] 7点(2022-08-05 21:12:33)(良:1票) 《改行有》

34.  ブルー・ストリーク 《ネタバレ》  「ビバリーヒルズ・コップ」(1984年)に影響を受けた映画なんて、星の数ほどある訳ですが……  その中でもオリジナルに比肩するほどの傑作は何かと考えたら、真っ先に本作が思い浮かびますね。  単純に「面白い」「出来が良い」っていうのもありますが「元々は犯罪者という経歴を活かし、型破りな捜査を行う主人公刑事」っていう面白さを「ビバリーヒルズ・コップ」以上に描いてる点が素晴らしい。  次々に事件を解決し、周りから「アイツは凄い刑事だ」と誤解されていく様も愉快だし、この一点においては間違い無く元ネタを越えてると思えます。    それと、本作には二面性の魅力があり「マローン刑事による事件捜査パート」だけでなく「泥棒のマイルズによる侵入窃盗パート」も、しっかり面白く描けてるんですよね。  冒頭、ダイヤを盗みに入る場面だけでもワクワクさせられるし、なるべく人を傷付けないよう行動してるから、観客に不快感も抱かせない。  この辺りのバランスが絶妙で、ホントに理想的な「悪党主人公」であったように思えます。  ……先程「悪党主人公」と断ずる事によって気付かされましたが、本作って主人公のマイルズが「刑事を演じている内に正義感に目覚め、罪を悔いて改心する」なんて展開には全くならず、一貫して「悪党」のままであるっていうのも、凄いポイントですよね。  カールソン刑事達とは友情が芽生えているけど、彼らの為にと自首したりはせず、最後もダイヤを持ち逃げしちゃう。  それでも(こいつ、酷ぇ奴だな)とは思わなかったし、鮮やかに逃げ切った姿が痛快ですらあったんだから、もう御見事です。  脚本と演出、どちらも高いレベルにあったからこそ成し得た偉業と、そう呼んでも差し支えないくらい、凄い事だと思います。  一応、欠点も述べておくなら「女っ気も出しておこう」というサービス精神ゆえか「恋人のジャニース」「グリーン弁護士」などを登場させているのは、ちょっと無理矢理な感じで、浮いているように思えた事。  あと、ラストに仇敵のディークを殺す場面は、如何にも恰好付け過ぎで、違和感あった事が挙げられそうですね。  それまでのマイルズのキャラとも合ってないと思うし、事前に「ディークを殺すのを躊躇い、銃を持つ手が震える場面」があったのとも矛盾してる。  監督としては「最後を恰好良く〆て、ギャップに震えさせたい」って意図があったのかも知れませんが、正直ハズしてた気がします。  それと、マイルズとの別れの際にカールソン刑事が「その内、会えるかも」と言ってるのも、ちょっと残念。  続編を意識させるというか、期待を煽るような台詞だったのに、2022年現在「ブルー・ストリーク」の続編は作られていない訳ですからね。  これって、実に残酷な描写だと思います。  本当、今からでも続編を作って欲しいな、再びこの映画の世界に浸ってみたいなと思わせてくれる……  そんな一品でありました。[DVD(吹替)] 8点(2022-07-23 11:14:14)(良:1票) 《改行有》

35.  ラッシュアワー 《ネタバレ》  米国におけるジャッキー人気を決定付けたという、記念すべき一本。  そう考えると、映画史においても重要な品のはずなのですが……  そんなアレコレを加味しなくとも、単純に刑事物のバディムービーとして、良く出来てると思います。  この手の映画の場合、主人公は「常識人タイプ」と「型破りタイプ」に分かれがちであり、本作も一見するとリー刑事が「常識人」カーター刑事が「型破り」なのかと思えるのですが、映画が進むにつれ、徐々にその関係性が逆転していく様が面白いんですよね。  カーターの方は「ビバリーヒルズ・コップ」(1984年)的な「陽気な黒人刑事」というキャラクターであり、どう考えても相手を振り回す側のはずなのに、無口で真面目そうなリーに振り回されるという意外性。  旧来のバディ物、そして刑事物に慣れ親しんだ観客であればあるほど、この展開には意表を突かれ、新鮮な魅力を味わえたんじゃないでしょうか。  監督のブレット・ラトナーがジャッキーのファンだったので、アクション・シーンもジャッキーが好きなように演じる事が出来たという、その一点も素晴らしいですね。  クライマックスにて描かれる「展示品を壊さぬように、必死にフォローしながら戦う場面」「絨毯ダイブ」などの魅力は、如何にもジャッキー映画的であり、彼のファンとしても、大いに満足。  そんなジャッキー演じるリーだけでなく、相棒となるカーターが魅力的なキャラクターであった事も、忘れちゃいけないポイント。  「誰にでも出来る、下らない任務」としてリーの接待を任されたカーターだけど、見事に誘拐事件を解決してみせて「高慢なFBIの鼻を明かす」って痛快さを描いてるんですよね。  リーの側だけでなく、カーターの側に感情移入して観ても面白いって辺りは、続編の「2」や「3」では失われてしまった長所であり、本作のバディムービーとしての完成度の高さを証明してる気がします。  「カーターは銃を二丁持ってる」「リーから銃の奪い方を教わっている」などの伏線が、きちんと張られている事にも感心しちゃうし、反目する主人公達が仲良くなるキッカケが「歌と踊り」っていうのも、お約束な魅力がありましたね。  幼女のスー・ヤンに、爆弾処理に長けたタニアといった具合に、魅力的な脇役が揃ってる点も良い。  商業的な成功が、必ずしも傑作の条件という訳ではありませんが……  本作に関しては、ヒットしたのも納得。  そしてシリーズ化したのも納得な、魅力のある映画だったと思います。[DVD(吹替)] 7点(2022-07-07 14:18:39)《改行有》

36.  生きてこそ 《ネタバレ》  実話という衝撃が大き過ぎる映画なのですが、単純にサバイバル物として考えても、良く出来てますよね。  完全なフィクションとして提供されても「これは凄い、傑作だ」と唸るくらいに面白い。  本作には「実際に起こった悲劇を風化させない為、後世に伝える為」という制作意図もあったのでしょうけど「観客を楽しませる娯楽映画」としても、立派に成立してると思います。  序盤にて飛行機が墜落する場面も迫力があり、映画としての「掴み」に成功してる辺りにも、感心しちゃいましたね。  他にも「普通の道だと思って足を踏み出したら、実は崖の上に雪が積もっていただけで転落死しそうになる場面」もあったりして、視覚的なスリルを味わえる作りになってる。  「明日救出が来ると勘違いして、配給制にしていたチョコやワインを一気に消費しちゃう」とか「新しいスーツケースを見つけ、その中の歯磨き粉を夢中で貪る」とか、極限状態ならではの可笑しさ、面白さを丁寧に描いている点も良かったです。  最初はギターを弾く余裕があったのに、後に暖を取る為にギターを燃やしてしまう描写なんかも、徐々に状況が切迫してる事を伝える効果があって、印象深い。  それと、実際にあった墜落事故について調べてみると、宗教的な色合いが強く「仲間の遺体を食べる」事が可能だったのは「彼らがキリスト教徒だったから」「聖体拝領という儀式が存在したから」こそと思える感じなのですが、本作はそういった説明を必要最小限に止めてるんですよね。  それによって、キリスト教徒ではない観客にも感情移入させる事に成功してるし、この辺りのバランス感覚の巧みさが、本作を傑作たらしめているように思えました。  主人公格と思われたキャプテンのアントニオが中盤で死亡してしまったり、最初は眼鏡姿で頼りない印象だったナンド・パラードが皆を救う為の脱出行を成功させたりといった具合に、群像劇としての魅力が詰まってる作りなのも良い。  こういったサバイバル物において「誰が生き残るのか分からない」と思える作りになってるのは、物語としての大きな強みですからね。  「前半はアントニオが主役と思わせておいて、実はナンドが主役だったと後半に明かす」「全体を通してメインになる存在としては、医学生のロベルト・カネッサを用意する」という構成にしているのは、本当に上手かったと思います。  捜索が打ち切られた事を「良い知らせだ」「これで自分の力で脱出しなきゃならん事が、ハッキリした」と語る場面や、山を越えた後に更なる山脈が広がってるのを目にしても「歩いてみせるさ」と諦めず前進を続ける場面にも、感動させられましたね。  思えば上記二つの場面とも、主人公のナンドの魅力が光る場面でしたし「途中まで脇役かと思われた人物が、実は主人公である」という変則的な手法なのに納得させられたのは、彼の魅力に依るところが大きいように思えます。  それだけに、そんなナンド達の「奇蹟の脱出行」の描写が短く「絶対無理と思ってたけど、意外と何とかなった」としか思えない描き方になってるのが気になっちゃうんですが……  まぁ「そこに尺を取り過ぎても、冗長になってしまうから」という判断ゆえなのでしょうね、きっと。  ちなみに、本作は群像劇であるがゆえに、ナンド・パラード目線で書かれた「アンデスの奇蹟」(2006年)とは受ける印象が違っており、その差異に関しても興味深いものがありました。  脱出を成し遂げた二人に関しても、本作では「無謀で我の強いナンドに苦労させられる、常識人のカネッサ」って対比になってるのに対し「アンデスの奇蹟」を読んでみると「一途で誠実なナンドと、有能だが毒舌で偏屈なカネッサ」っていうコンビになっているんです。  自分としては後者の方が魅力的に思えたくらいなので、こちらのキャラクター像に合わせた映画も、何時か観てみたいですね。  それと「アンデスの奇蹟」においては「ナンドが旅立つ際に、片方だけ残していった子供靴の由来」「目を保護する為のサングラスの作り方」に関しても詳細な説明が為されており、映画で気になってた部分の答え合わせが行われているのも、見逃せないポイント。  本作は紛れも無い傑作であり、これ単品でも満足出来ちゃう仕上がりなのですが……  原作となったドキュメンタリーの「生存者」(1974年)そしてナンドの自伝と言うべき「アンデスの奇蹟」を併読すると、より楽しめると思うので、オススメしておきたいです。[DVD(吹替)] 8点(2022-06-05 17:32:16)(良:2票) 《改行有》

37.  イベント・ホライゾン 《ネタバレ》  とにかく既視感のあるシーンが多過ぎて、さながら「最終絶叫計画」や「羊たちの沈没」をギャグ無しで大真面目に撮ってみせたかのような一品。  宇宙に関連したSF映画という狭い範囲に限っても「エイリアン」「ギャラクシー・オブ・テラー」「禁断の惑星」「2001年宇宙の旅」「ブラックホール」「惑星ソラリス」などのパロディとしか思えない内容となっており、オリジナリティが全く感じられなくて、困ってしまいます。  勿論、全部が全部「どこかで見たような場面」という訳でもないのですが、全体の七割くらいは無知な自分ですら「これって○○が元ネタじゃん」と気付いてしまうような仕上がりなんですよね。  だから、たまに「これは元ネタ分からないな、もしかして本作独自の発想なの?」と思えるような場面に遭遇しても、ただ単に自分が元ネタを知らないだけな気がしてしまうのです。  こういったパロディというか「元ネタありきの品」は決して嫌いではないのですが (映画なら「スター・ウォーズ」漫画なら「鉄人兵団」なんかも元ネタあってこそですからね)  本作に関しては、いくらなんでも過去映画の寄せ集め感が強過ぎて「そこまでやるか」と呆れる思いが強かったです。  とはいえ「ヘル・レイザー」をパロった地獄の拷問描写を見せる際には、わざわざ博士をピンヘッド風の形相に変えたりしている訳だから、多分これって意図的に元ネタが分かるような演出にしているのでしょうね。  ちょっと失礼な表現になってしまいますが「バレないようにパクるつもりなら、もっと誤魔化して上手くやるだろう」という気がします。  「フラットライナーズ」そのままな過去のトラウマに悩まれる描写然り「シャイニング」そのままな血の洪水も然り。  である以上、監督さんとしても本作にオリジナリティがあるなんて考えていないと思われるのですが、怖いのは「この映画の元ネタを知らない人々」がコレを観て「なんて斬新な映画なんだ」って誤解しそうな辺りでしょうか。  実際、この映画の制作年度が1950年辺りだったとしたら、凄く革新的で後世に多大な影響を与えた品だと思います。  こういう品に触れる度(もしかしたら自分も、元ネタを知らずに「○○は斬新な映画だ」と絶賛しているかも知れない)と考えてしまうんですが、そういうのって凄く恥ずかしいし、いたたまれなくなっちゃいますね。  別に元ネタだから後続の作品より無条件に優れているという訳でもないし、そんなの気にせず楽しむのが一番だとは思うのですが、この辺りは「Aという映画はBという映画のパクリなんだぜ」と知識自慢したくなるようなオタク気質が、我が身に染み付いてしまっているのかも。  映画そのものについては、上記の通り「どこかで見たようなシーンを継ぎ合わせたパロディ作品」としか思えず、面白いとは言い難いです。  それでもあえて良かった部分を探してみるなら、サム・ニールとローレンス・フィッシュバーンという、力のある俳優さんを起用しているのは大きかった気がしますね。  この二人が真剣にヘル・レイザーごっこしてくれている訳だから、凄く貴重な映像。  当初はウェアー博士が主役かと思われたのに、終盤にて悪役に回るストーリー展開なんかも、中々意外性があるかと。  ……ですが、そんな脚本についても「惑星ソラリスとヘル・レイザーだけじゃなく、シャイニングも元ネタにしているんだから、当然そうなるよなぁ」と思えたりして、やっぱり褒めるのが難しいですね。  元ネタありきの内容でも面白い映画は沢山ありますが、残念ながら本作はそれに該当しないように思えました。[DVD(吹替)] 3点(2022-04-27 15:59:49)(良:1票) 《改行有》

38.  25年目のキス 《ネタバレ》  この手の「年齢を偽り学校に潜入する」ネタ、好きですね。  もう一度学生時代に戻ってみたい、青春の日々を味わいたいって願いを叶えてくれる形になっており、観ていて心地良い気分に浸れました。  本作は「恋のからさわぎ」(1999年)「O」(2001年)「アメリカン・ピーチパイ」(2006年)など、2000年前後に流行った「シェイクスピアを現代の学園物に置き換えた品々」の一種であり、1999年公開という事を考えれば、先駆的な作品と評価する事も出来そうなんですが……  とかくラブコメの「王道」「お約束」を重視した作りでもある為、あんまり「斬新な内容」とは感じられないのが、ちょっと勿体無い。  最後も観客の期待通りのハッピーエンドを迎えるんだけど、それも「ラブコメの終わり方といえば、ハッピーエンドに決まってるから」という予定調和に頼った感じで、なんか完成度が低いんですよね。  起承転結の「転」までは丁寧に作ってあるんだけど、肝心の「結」が締まらない感じであり (……で、どうして国語教師のサムは彼女を許し、キスしてくれたの?)  って思えちゃって、スッキリしないんです。  ここをもっと綺麗に仕上げてくれていたら、胸を張って傑作と呼べたかも。  そんな具合にラストで失速した感はありますが、全体的には楽しめたし、好きな映画でしたね。  この手の映画の場合「主人公は皆に馬鹿にされる負け犬」であり、ともすれば極端な「負け犬賛歌」に終始してしまいがちなのですが、そこから一歩踏み込んで「学園の人気者達」も肯定する内容になっているのは、文句無しで長所だと思います。  これは主人公が「最初は冴えない子達と仲良くなるけど、取材の為に人気者グループに接近するのを強要される」という展開だからこそ生み出せた流れだと思うし、ちゃんと「取材の為に潜入した」って設定を活かす形にもなってますからね。  「負け犬を差別してはいけない、彼らだって素晴らしい人間だ」というのであれば、この手の学園物で悪役にされがちな「人気者」にだって、当然その言葉は当てはまる訳で、ラブコメ映画において不遇極まる彼らに救いの手を差し伸べた事には、素直に拍手を送りたいです。  「ミセス・ロビンソン」って単語が「未成年に手を出す大人の女性」の代名詞になってるとか、主人公の弟のロブが「卒業白書」(1983年)のコスプレをしたりとか、映画好きなら嬉しくなっちゃう小ネタが散りばめられてる辺りも、良いですね。  本作は主演のドリュー・バリモアが製作総指揮を務めた作品であり「完成度は高くないけど、何だか愛嬌がある」って辺りは「美人じゃないけど可愛い」っていう彼女らしさが反映されているようにも思えました。  数ある主演作の中でも、非常にドリュー・バルモアらしい映画の一つとして……  そして何より、可愛い映画の一つとして、記憶に残る事になりそうです。[DVD(吹替)] 6点(2022-03-24 20:57:52)(良:1票) 《改行有》

39.  トラックス<TVM>(1998) 《ネタバレ》  こういった代物の場合「○○のリメイクとして考えると微妙だけど、映画単品として考えれば面白い」ってパターンもある訳ですが……  残念ながら、映画単品として評価しても微妙な出来栄えでしたね。  全体的なクオリティは五十歩百歩なのに「地獄のデビル・トラック」(1986年)にあった「馬鹿々々しさ」「愛嬌」が失われてるというのが、何より残念。  爆発シーンも控えめになってるし、今回の籠城場所には拳銃が一つあるだけなので「人間と機械が戦ってる」感じも薄いしで、どうもテンションが上がらない。  陰鬱な作風と併せて考えるに「地獄のデビル・トラック」はアクション映画だったが、本作はホラー映画であると解釈する事も出来そうなんだけど、それにしては「一応拳銃も出てくる」「終盤には爆発シーンもある」って形なので、何か中途半端なんですよね。  元ネタとは違う魅力を出そうとしたのであれば、変に媚びるというか、元ネタにあった要素を少しだけ再現するような真似はせず、もっと「陰鬱なSFホラー映画」という方向性に振り切った作りにすべきだったと思います。  機械からのモールス信号を解読した訳でもないのに「やっと分かったぞ」「奴らが欲しいのは燃料なんだよ」って言い出す場面も不自然だったし、脚本も褒めるのが難しいんですよね。  元ネタにあった馬鹿々々しさが薄れてる分だけ「脚本の整合性」という意味ではアップしてるだろうと思ってたのに、全然そんな事は無かったというか……  全体的に「長所は失われ、欠点はそのまま」って形に思えちゃって、非常に残念でした。  それでも、あえて良かった箇所を探すとしたら……  ロズウェル事件と絡めて、一応は「機械が暴走した理由」に説得力を与えようとしてる所。  「有害なガス」という要素で、危険度を高めてる所。  あと「防護服が勝手に動いて、殺人鬼のように襲ってくる場面」は中々感心させられたとか、そのくらいになっちゃいそう。  最後も「助けに来てくれたヘリは無人だった」=「主人公達は決して助かった訳ではない」と感じさせるバッドエンドで後味悪いし、どうも好みじゃないです。  ……とはいえ、能天気なハッピーエンドだった「地獄のデビル・トラック」とは真逆のオチなので、こちらの方が好きという方もいそうですよね。  「トラックス」の方が先に作られており、後から「地獄のデビル・トラック」が作られていたとしたら「真面目なSFホラー映画が、馬鹿映画にされてしまった」って印象になってたかも知れないですし。  やはり、こういうリメイク物は評価が難しいし、どうしても厳しい目で見ちゃうから不利だなって思わされた一品でした。[DVD(吹替)] 4点(2022-02-05 01:43:23)(良:1票) 《改行有》

40.  マウス・ハント 《ネタバレ》  人間にとってネズミは害獣だけど、ネズミにとっては人間が害獣という、そんな当たり前の事に気付かせてくれる映画ですね。    圧巻なのは「釘打ち機」の場面であり、人間による何気無い大工仕事が、ネズミにとってはトンデモない災害となる事を描いていて、これには感心しちゃいました。  日常生活で見慣れたはずの「釘」が、ネズミ目線だと凄まじい殺傷兵器になっちゃうんだから、もう吃驚です。  こういう「視点や発想の切り替えによる面白さ」って、観ていて嬉しくなっちゃいますね。  ベッドや時計もあったりして、居心地が良さそうな「ネズミの寝床」の描写も好きだし、カップの取っ手を潜ったり、ピアノの鍵盤を走ったりと、家を駆け回るネズミの描写が、きちんと面白かった点も評価したいです。  ただ、ネズミの糞を食べたりとか、観ていてエグい場面もある事。  そして、終盤の展開が唐突過ぎて、流石に白けちゃった事が残念ですね。  特に後者は致命的であり (えっ……なんで主人公兄弟とネズミが仲良くなってるの?)  って、全く納得出来ないまま映画が終わっちゃう訳で、置いてけぼり感が凄かったです。  弟のラーズは「糸」に拘りがあったはずなのに、最後は製糸工場からチーズ工場に変わってるのも、何かスッキリしないし……  気になって計ってみたら、主人公兄弟が家を失い疲れ果てて眠るシーンから、僅か三分で無理矢理ハッピーエンドにしてるんですよね。  これは流石に急展開過ぎるし、説明不足でもあったと思います。  ネズミがシェフになるオチとか「レミーのおいしいレストラン」(2007年)を先取りした感じでもありますし、一見の価値はあると思いますが……  最後の最後で、絡まった糸のようにモヤモヤが残ってしまう。  そんな一品でした。[DVD(吹替)] 6点(2021-12-08 06:35:11)《改行有》

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