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プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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21.  バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 《ネタバレ》    馬場監督の映画ではお馴染みの「田中真理子」と「吉岡文男」の名前が出てくるという、それだけでもファンとしては嬉しくなっちゃいますね。  インタビューによると、元々は「タイムマシンを題材にした映画を撮りたい」という気持ちがあり、バブル要素は後付けで話を作り上げたとの事ですが、それも納得。  終わってみれば「タイムスリップした先はバブル景気の頃でした」というのは大して重要ではなく「タイムマシンによって過去を変えた結果、現代の状況が良くなる」という、王道なハッピーエンドストーリーでしたからね。  とかく世間では「馬場監督」=「バブル映画」というイメージで語られがちだけど、一番の傑作と言える「メッセンジャー」(1999年)はバブルと関係無い内容だったし、少なくとも監督当人は、そこまで「バブル」に拘ってる訳では無いんじゃないかなって気がします。  実際どうだったかはさておき、馬場監督がバブル期に手掛けた過去作よりも「贅沢過ぎて有り得ない世界」が描かれており、意図的に「バブル」をギャグとして描いてると分かる辺りも、興味深いポイント。  監督自身も「俺なんかがそういうストーリーを考えたとき、最高! っていうバブルは思いつかない。絶対」と語られていますし、誇張されまくってるであろうバブル期の描写が、ナンセンスギャグっぽくて面白かったですね。  案外、本当にバブル期を経験した年代の人こそ「有り得ねぇ」「こんなんじゃなかった」と笑いながらツッコみ、自分みたいにバブル期を直接知らない世代ほど「当時は凄かったんだ」と真に受けちゃう人も多いんじゃないかなって、そんな風に思えました。  「百円玉」「髪を掻く仕草」などの伏線が、ちゃんと分かり易いのも親切だし「クラブ」や「ヤバい」という言葉の意味が、時代を経て変わってるのを示す場面なんかも、如何にもタイムトラベル物っぽくて、ニヤリとしちゃいましたね。  かと思えば、首相に「話せば分かる」と訴えるという五・一五事件をパロった場面もあったりして、本当に幅広く色んなネタが散りばめられているので、観ていて飽きなかったです。  主演の阿部寛は実際に「バブルのド真ん中にいた」との事で、バブル期の世界を遊び過ごしてる姿に説得力があった辺りも良い。  ヒロイン格の真弓を演じた広末涼子も、わざとらしい仕草や演技が愛らしく、2007年当時は無かったであろう「あざと可愛い」って言葉が似合うような魅力がありましたね。  当初は「女を口説こうとする男」として彼女に接していた主人公が、その正体を悟った途端に「娘を守ろうとする父親」に変貌する様も微笑ましく、個人的には、ここの「軟派男が父親の顔になる瞬間」が、本作の白眉だったように思えます。  そんな具合に、色々と良い部分もある映画なんですが……  正直に告白すると、総合的な満足度としては、決して高くなかったんですよね。  この度、馬場監督の映画五本を通して鑑賞し、デビュー作から徐々に面白さがアップしていく様を見守ってきていたもので(あの「メッセンジャー」の次に撮った映画となれば、さぞ傑作だろう)と、勝手にハードルを上げ過ぎてしまったのかも。  作品全体の演出が、やたらコメディタッチ……というより漫画的なのも(何か、馬場監督らしくないな)と思えて戸惑ったし、台詞の切れ味も鈍ってた気がします。  上述の「父親の顔になった主人公」って場面が好きだっただけに、ラストにて「結局、今も愛人を囲ってるような浮気者のまま」と示唆して終わるのも、ガッカリしちゃったし……  ここまで「何もかも上手くいくハッピーエンド」にした訳だから、そこは変に捻ったりせず「家族を大切にするパパになりました」で良かったと思うんですよね。  「国の景気なんかより、家族の絆が大事」って結論を出したはずなのに、最後の最後で「景気は上向いたけど、家庭不和の火種は残ったまま」になるだなんて、どうにも受け入れ難いものがありました。  そんな訳で、結果的に「最新作がデビュー作の次につまんない」って評価になってしまった事が、本当に残念。  でも馬場監督って、まだまだ現役で2022年にもドラマの監督を務めてる訳だし……  自分としては映画の新作にも、是非期待したいですね。  以前チラっと語っていた「波の数だけ抱きしめて」 (1991年)の続編っぽい話とか、何とか実現させて欲しいものです。[ブルーレイ(邦画)] 5点(2022-10-11 19:21:30)(良:1票) 《改行有》

22.  お買いもの中毒な私! 《ネタバレ》  「主人公に感情移入出来ない」というのは、映画にとって致命的な欠点だと思います。  本作のレベッカが正にそれに当てはまり(お買いもの中毒とか、そういうのを差し引いても性格に難有り)ってタイプだったんだから、困っちゃいますね。  借金取りをストーカーと言って誤魔化すくらいなら笑えるんだけど「親友の結婚式の為のドレスより、テレビ出演の為のドレスを優先させる」って場面とか、流石に身勝手過ぎて呆れちゃいます。  一応、最後に「お買いもの中毒」では無くなるハッピーエンドを迎えるんですが、何か「良い子に生まれ変わった」というよりは単に「浪費癖が無くなって、人生が上手く転がっただけ」って感じであり、根本的な解決には思えなかったのも痛い。  (この主人公の一番の問題点って、そこじゃないのでは?)って、映画とのズレを感じてしまう結末だったから、どうもスッキリしなかったです。  ただ、脇役には魅力的なキャラが揃っており、その点は良かったですね。  親友のスーズなんて、主人公より良い子で美人に思えたし、特にお気に入り。  父親役のジョン・グッドマンや、クリスティン・スコット・トーマスなど、見慣れた顔触れが揃っているのも、画面に安心感を与えてた気がします。  それと、典型的な「王子様」キャラであるルークに対しても、普通なら(こういうタイプ、女性は好きそうだよね)って斜に構えちゃうはずなのに、何か嫌いになれなかったんですよね。  それというのもレベッカが傍迷惑過ぎて、それに振り回されるルークが不憫に思えたからだろうし、そういう意味では貴重な感覚を味わえた気がします。  主人公ではなく、彼等の方に感情移入して「レベッカに呆れつつも、見捨てられずに見守る目線」で楽しむ事が可能って意味では、中々良く出来た映画だったのかも知れません。  後は……「BGMのチョイスや使い方も良かった」「金融の知識なんか無かった主人公が、ハッタリと強運で成功していく様は中々面白い」「買いもの依存症のセラピーグループも、良いキャラが揃ってた」とか、そのくらいかな?  こうして列挙してみると、意外と長所も盛り沢山な映画だなって、驚かされますね。  根本的に自分には浪費癖が無い為、主人公のレベッカと相性が良くないのは当たり前って気もするんですが……  別に人殺しの経験が無くとも、殺し屋の主人公に感情移入する事は可能な訳だし、やっぱり主人公の描き方には、もうちょっと気を遣って欲しいです。  「浪費癖に悩まされてるけど、友達は大切にする優しい子」ってタイプの主人公だったら、もっと好きになれた映画だと思います。[DVD(吹替)] 5点(2022-09-30 00:42:55)(良:1票) 《改行有》

23.  ナイト ミュージアム 《ネタバレ》  ベン・スティラーという俳優を初めて意識したのが、この映画だったように思えますね。  コミカルな演技を軸としつつも「決める時は決める」恰好良さに痺れて (この人、良いなぁ……)  と惚れ惚れしちゃったのを憶えています。  後に彼の主演作をチェックする事となり、その中には本作より面白いって感じるような品もチラホラあったりしたんですが……  やはり「初めての映画」として、本作は印象深いです。  そんな具合に、自分としては主演俳優ばかり注目しがちな品なんだけど、映画全体で考えても、やっぱり「面白い映画」「良い映画」なんじゃないかって思えますね。  冒頭に色んな展示物を映し出し、予備知識を持った観客には「こいつらが動き出すのか」とワクワクさせる作りになってる辺りなんて、特に良い。  観客の喜ばせ方を分かってるというか、夢や期待を裏切らない作りになってると思います。  本作の特徴としては「女性ヒロインが不在である」って事も挙げられますが、それもまた自分好みなんですよね。  一応、それっぽい存在としては同僚のレベッカがいるんだけど、彼女とはロマンスに発展せず、あくまで同僚止まりで終わっちゃう。  主人公は夜警として頑張り、それが最終的にハッピーエンドに結びつく訳ですが、その姿を「女にモテたいバツイチ男」ではなく「息子に認められたい父親」として描いてるのは、本当に良かったと思います。  ここで作り手が欲張って「レベッカとも結ばれた」なんてオチにしていたら、話の軸がブレちゃいますからね。  色恋沙汰の要素を排し「頼りない父が、可愛い息子を笑顔にしてみせる物語」として纏めたのは、もう大正解だったんじゃないかと。  他にも「ミニチュア模型好きには嬉しくなる場面が多い」とか「自分は歴史上の偉人ではなく、それを模して造られた人形に過ぎないと語るテディの姿が切ない」とか、色んな長所が備わってる映画なんです。  敵が老人三人組じゃあ脅威として弱いなと思っていたら「石板の力で強くなる」って展開になり (ほほう、そう来たか)  と感心させられる辺りなんかも、観ていて気持ち良い。  嫌味な感じの上司は、最終的には主人公を認めてくれるし、悪人とは言い切れない老人三人組も博物館に復職する後日談が付くしで、鑑賞後の後味が爽やかなのも良いですね。  最後の「博物館の夜」も本当に楽しそうだし「楽園を守り抜いた」という主人公の感慨が伝わってくる、最高のエンディングだったと思います。  そんな本作の難点としては……色々と説明不足で、モヤモヤしちゃう辺りが挙げられそうかな?  監禁されたマヤ族へのフォローは無いし、ラジコンの車に関しても何故か人形が乗り込み操縦出来ちゃうしで、観ていて気になる箇所が多いんです。  正直、作品の完成度は高いとは言えないかも知れません。  でも、そんな「説明不足」という欠点に関しても (マヤ族の人形達は、あの後なんだかんだで皆の仲間入りしたんだろう) (ラジコンの車は、ジェデダイア達が改造したんだろう)  って具合に、あれこれ考えて補いたくなるというか……  ある意味では、凄く想像力を刺激される作りになってるんですよね。  「作りが丁寧で、観た後に何のモヤモヤも残らないような傑作」ともまた違う、独特の味わい。  「想像力を刺激される」「それによって、色んな夢が広がる」という意味では、非常に博物館らしい映画と言えるかも知れません。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2022-09-29 20:29:51)(良:1票) 《改行有》

24.  ダウン 《ネタバレ》  自分が所持する円盤の棚を眺めてみると「昔の映画版は無くて、近年のリメイク版のみ持ってる」ってパターンの品が幾つかある訳ですが、これもそんな一品。  勿論「昔の方だけ持ってて、リメイク版は無い」ってパターンもある訳だけど、そういう場合って、やっぱり「所持してる方」が面白いから、自然とそうなっちゃうんです。  本作に関しても同様であり、自分としてはホラー色が強い「悪魔の密室」(1983年)より、こちらの方が好み。  二作とも監督はディック・マースなんですが(別の人が撮ったのでは?)って思えるくらい、毛色の違う品に仕上がっているんですよね。  ホラー映画というよりアクション映画、あるいはエレベーターパニック映画という感じです。  1983年版で印象深かった「ドアに首が挟まって、そのまま斬首される」場面もちゃんとあるし、かと思えば「底の抜けたエレベーターが暴走して、屋上を突き破る」場面とか、新たに追加された見せ場があるのも嬉しい。  主人公が元海兵隊という設定を活かし、最後は「バズーカでエレベーターの心臓部を撃ち抜く」という派手なフィニッシュを決めちゃう辺りも、良かったです。  あと、映画の本筋には全然関係無いんだけど、主人公がジュークボックスの愛好家であり、自宅にわざわざジュークボックスを置いてるって設定なんかも、妙に好きなんですよね。  こういう細かい部分で「作り手と波長の合う映画」って、それだけでも憎めないし、観ていて楽しくなっちゃいます。  導入部から色んな人物が登場する為、主人公が誰なのか分かり難いとか「来るかと思ったら来ない」という肩透かしな演出が多いとか、不満点も色々あるし、決して出来の良い映画とは言えないんですが…… 「まぁ、そこまで悪くないよ」 「俺は結構好きだよ」  と庇いたくなるような、愛着のある映画です。 [DVD(吹替)] 6点(2022-09-23 14:09:00)《改行有》

25.  ファンボーイズ 《ネタバレ》  良くも悪くも、スター・ウォーズオタク目線の映画ですね。  劇中にて「ホバ・フェットの強さ」「ルークはレイア姫を好きだったか」について真剣に言い争っちゃう辺りなんて、実にそれっぽい。  元ネタを知っていればニヤリとするようなパロ台詞も盛り込まれてるし、何より「夢を追い続けるオタクではなく、現実的なサラリーマンの道を選んだ若者」を主人公に据えているのが上手かったと思います。  それによって、オタク気質ではない観客も物語に入り込み易くしているし、その一方で「俺はもう大人になったんだ」と達観するだけの主人公で終わらせず「かつて熱狂していた世界に、再び戻っていく」様を描いているから、オタク映画であるという大前提にも反していない。  自分は熱狂的なスター・ウォーズ好きという訳ではありませんが、大人になりきれないオタク人間である事は間違いないと思いますし、そんな立場から見ても「この主人公の設定は絶妙だな」と、大いに感心させられました。  とはいえ、そんな「オタク」の悪い部分も如実に表れているのがこの映画であり……ちょっと、観ていて辛かったですね。   「スタートレック」のファンを作中で貶したり、エピソードⅠにも文句を付けるような形で終わったりと、やたら攻撃的で排他的。  「ウィリアム・シャトナーを大物っぽく描いているからセーフ」「駄作と断定した訳じゃないからセーフ」という作り手側のフォローというか、最低限の配慮も感じられましたが、ちょっと受け入れ難いです。  そもそも、作り手から「エピソードⅣからⅥまでは好きだけど、エピソードⅠは嫌い」ってメッセージが窺えちゃうんだから、これって「スター・ウォーズ愛を描いた映画」としては致命的な欠点だと思うんですよね。  エピソードⅠのキャラであるジャー・ジャーやらダース・モールやらを「美人局の悪党」「意地の悪い警備員」に仮託させている辺りなんて、非常にやり切れない。  それに対し、ⅣからⅥまでのキャラはレイア姫やランドなどを「良い人達」「主人公の味方側」として出しているんだから、あからさま過ぎてゲンナリです。  主人公の父親に対するコンプレックスを、ダース・ベイダーの存在と重ね合わせておきながら、結局は対話する事無く終わった辺りも残念でしたね。  オタクらしく現実逃避して旅に出る様を描いておきながら、その現実と向き合って乗り越えなきゃいけないという辛い過程は省き、努力も無しに夢を叶えて漫画家になれたという結果だけ見せられても、カタルシスは得られません。  そんな欠点が明らかな作りであるだけに、劇中の「欠点も必要さ」という感動的な台詞も「スター・ウォーズ」を擁護する為の台詞ではなく「ファンボーイズ」に対する自己弁護のように聞こえちゃって、凄く格好悪かったです。  主人公が描いた漫画を「最悪」と酷評する読者に対し、主人公達が「お前はクソッタレだ」と徹底的に馬鹿にして溜飲を下げて終わるのも、これまた酷い。  他の映画やファンを馬鹿にするような作りであるくせに「俺達は他の作品を批判するが、俺達の作品を批判するのは許さない」と主張しているようにも思え、どうにも居心地が悪かったです。  そんなややこしいアレコレを考えず、純粋に青春映画として観れば綺麗に纏まっていたと思いますし、仲の良い友達連中で車に乗り込み、旅する楽しさなどは味わえただけに、非常に勿体無いですね。  ファルコンの模型を人質(?)に取る件や「右手をレイア姫と呼ぶ」件は笑っちゃったし、予想以上にスカイウォーカーランチの壁が低くて「侵入する為のフックって、別に要らなかったじゃん」とツッコまされる辺りも面白かったです。  何より、エピソードⅠ公開当日の「皆でワイワイ集まって、お祭り気分で騒ぐ」雰囲気は凄く心地良くて、そこの場面だけでも(観て良かったな……)と思えたくらい。  それだけに、余計なオチなどは付けず、あの楽しい盛り上がりのまま、亡き友に乾杯し、待ちに待った新作映画が上映される場面にて、ハッピーエンドを迎えて欲しかったところです。  作中にて「6デイズ/7ナイツ」(1998年)が失敗作じゃないかと揶揄されていましたが、自分としては、その「6デイズ/7ナイツ」に付けたのと同じ点数を、この映画に進呈したいと思います。[DVD(字幕)] 5点(2022-09-16 20:05:54)《改行有》

26.  ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝 《ネタバレ》  始皇帝暗殺を題材にした「HERO」(2002年)を踏まえた上で鑑賞すると、今作でジェット・リーが始皇帝を模したキャラを演じてるのって、感慨深いものがありますね。  敵の強さや、スケールの大きさという意味合いでも今作がシリーズで一番だろうし、貴重な「悪の親玉であるジェット・リー」が拝めるってだけでも、一見の価値有りな映画だと思います。  ただ、面白さという点に関しては……正直、結構厳しいです。  エヴリン役が他の女優さんに変わってるとか、アレックスが幼児から大人に急成長してるのに戸惑うとか「続編映画ならではの違和感」も大きいんだけど、そういうの抜きで単品として評価しても(えっ、何で?)と思っちゃうポイントが多いんですよね。  上述のジェット・リー演じるハン皇帝にしたって、中盤で見せる三つ首の竜の姿が迫力満点だったのに、終盤では竜に変身せず、人型のまま倒されちゃうというんだから、もうガッカリ。  唐突に出てきて「雪山以外じゃ活動出来ないから」とばかりに、唐突に姿を消しちゃうイエティも、また然りですね。  せっかく魅力的なモンスターを登場させてるのに、それを活かし切れていなかったと思います。  他にも、前作と違って「死に際まで互いを救おうとする悪のカップル」を描いてるのは良いんだけど「彼らが強く愛し合ってる」という伏線が無いから、唐突で感動出来ないんですよね。  最後のオチが「ペルーでミイラが発見された」っていうのも、凄く微妙。  ガッカリした気分のまま映画が終わっちゃうので、何だか映画全体の印象まで悪くなっちゃいます。    そんな訳で、三部作の中では明らかに見劣りする出来なんだけど……  シリーズのファンとしては、文句ばかりじゃ寂しくなるので、以下は良かった点を。  まず「リックが二丁拳銃で戦う場面がある」って事に関しては、素直に嬉しかったですね。  時代設定に合わせ、主武装はマシンガンになっているのに、ちゃんと序盤で二丁拳銃姿も見せたっていうのは、ファンサービスとして正解だったと思います。  中華街を馬車で暴走したりとか、前作のようなカーチェイス場面があるのも嬉しい。  新たなヒロイン格となるリンも可愛かったし、特に「不死の命を捨てて」と言われ、嬉しそうに微笑む場面なんかは、胸がときめくものがありましたね。  アレックスと彼女の恋路が、悲劇に終わったりせず、無事に結ばれる結末であった事にも、ホッと一安心です。  やっぱり、このシリーズにはハッピーエンドが似合うと思います。  なお、2022年現在「ハムナプトラ」の四作目は作られておらず「ペルーのミイラ」がどうなったかについては、謎のままとなってる訳ですが……  きっとリック達なら、何時ものようにミイラを倒して、そして世界を救ってみせちゃうんでしょうね。  更なる続編があるのなら、アレックスとリンの間に生まれた子供。  つまりは、リックの初孫なんかが登場する事にも、期待したいものです。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2022-09-14 07:52:20)《改行有》

27.  ハムナプトラ2/黄金のピラミッド 《ネタバレ》  前作のファンとしては、あの後リックとエヴリンが結婚したという、その一事だけでも嬉しくなっちゃいます。  しかも可愛い息子まで産まれてるんだから、もう言う事無し。  続編で主人公とヒロインが別れてるとか、下手すりゃ主人公が死んでるとか、そんなパターンも結構あったりするだけに、本作のような「幸福な続編世界」に仕上げてくれた事には、心から感謝したいです。  そんな「可愛い息子」ことアレックスが、ちゃんと魅力的なキャラに仕上がっていた点も良いですね。  生意気過ぎず、良い子過ぎずってバランスで可愛かったし、頭の良さには感心させられるしで「続編から登場した新キャラ」なのに、異分子って感じが全くせず、自然に馴染んでる。  特に「母と同じように物をドミノ倒しにしちゃう場面」には笑っちゃったし、こういう形で前作のファンを和ませ(この子は間違いなく、エヴリンの子供なんだ)って感じさせる演出が、本当に上手かったと思います。  囚われの身でも「お前なんか、ボクのパパに敵うもんか」と言い張る姿も健気だったし、自分としては彼をMVPに推したいくらい、お気に入りの存在ですね。  ザ・ロック演じるスコーピオン・キングも迫力あったし、味方側だけでなく、敵側にも魅力的な新キャラが揃ってるっていうのも良い。  そして何より「続編の魅力」の一つである「強くなった主人公達」の姿を拝めるのが、ポイント高いんですよね。  単なる司書だったはずのエヴリンも、何度も冒険して鍛えられたゆえか、雑魚敵なら蹴散らしちゃうくらいに強くなってて、前作から彼女を見守ってきた身としては、もうニンマリしちゃうんです。  主人公のリックもますます強くなり「投げられたナイフを空中で掴む」なんて芸当を見せる程になってるんだけど、それがラスボスを倒す伏線だったりするから(おぉ、なるほど!)と思えて、観ていて気持ち良い。  中盤にて「実はリックは、人類の守護者メジャイという特別な存在だった」と明かされるんだけど、あまり戸惑わず(まぁ、リックだしな……)と納得出来ちゃうのは、その強さや特別性を、きちんと描いておいたお陰だと思います。  「貴方のキスって嫌いよ、貴方の言いなりになっちゃうから」とボヤくエヴリンとか、夫婦がイチャつく描写も良かったし、二階建てバスを用いたカーチェイスも面白いしで「1には無かった、2ならではの魅力」が盛り沢山だった事も、嬉しい限り。  そんな本作の欠点としては……クライマックスが納得いかないって点が挙げられるでしょうか。  例えば、スコーピオン・キングと並ぶボス格だったはずのイムホテップが「アヌビス神の横槍によって超常的な力を奪われる」って展開になるのは流石に唐突だったし、敵が理不尽に弱体化してから倒す形になるので、何かスッキリしないんですよね。  最後の最後で、命を懸けてリックを救おうとするエヴリンと、イムホテップを見捨てて逃げるアナクスナムンって形で「愛し合う男女」の明暗が分かれちゃうのも、ちょっと納得いかないです。  これって、2単体で評価すれば良い脚本かも知れないけど、やはり1の冒頭から「悪のカップルかも知れないけど、二人は確かに愛し合ってる」って事を感じてきた身としては「観客の幻想への裏切り」に思えてしまうんですよね。  自分としては「悪のカップル」も愛し合ったまま、心中のように退場する結末の方が、より好みだったかも。  その他「リックの二丁拳銃属性が薄まったのは寂しい」とか「ラブロマンスとしての魅力が失われてる」とか、細かい不満点もあるんだけど……  まぁ、それらに関しては「代わりにショットガン使う場面が増えてて恰好良い」「妖艶なエジプト美女の姿を拝める場面が増えてて眼福」といった具合に、また違う良さが生まれているので、差し引きゼロって感じでしょうか。  不思議とバランスが取れてるというか、かつての良さが消えてる分だけ、新たな良さも生まれてるって形。  「文句無しにパワーアップして、1より面白い映画になった」とまでは言えないけど……  「2も1と同じくらい面白くて、しかも新鮮な魅力がある」っていうのは、充分に凄い事ですよね。  続編の成功例として、大いに評価されて良い映画だと思います。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2022-09-11 15:40:38)《改行有》

28.  幸せがおカネで買えるワケ 《ネタバレ》  「ユニークで愉快な宣伝家族」を描いた品かと思いきや、死者まで発生する陰鬱な展開に吃驚。  とはいえ、急転直下に作品の空気が変わる訳ではなく、少しずつ悲劇を予兆させるのが上手かったもので、違和感は無かったですね。  序盤にて (この家族、なんか変だぞ?)  と観客に思わせる描写も丁寧であり、すっかり映画の中に惹き込まれちゃいました。  「偽りの家族の中で、主人公のスティーヴだけは本当の家族になりたがっている」という設定も絶妙であり、自分としては大いに感情移入。  チームが崩壊しかけた時「家族に問題は付き物さ」と場を繕おうとするも「家族じゃないわよ」と、妻役のケイトに素っ気なくされる場面なんか、凄く切なかったですね。  単純に「ケイトを愛しているから、本当の夫婦になりたい」というだけでなく「皆で本当の家族になりたい」と願っているのが、絶妙なバランスだったと思います。  それだけに、好成績を認められて他のチームと組むよう上司に命じられても、それを拒否して「今の家族と一緒に頑張る事」を選ぶ場面が、凄く痛快。  スティーヴとケイトが、失恋した娘を慰め「家に帰ろう」と促す場面も (偽物なんかじゃなくて、立派な家族じゃないか……)  と思えて好きです。  終盤にて、隣人のラリーが自殺する場面もショッキングだったし、そこからスティーヴが「ご近所さん」に真相を告げる流れも、不思議なカタルシスがあって良かったんですが……  そこが最高潮で、その後に失速しちゃったというか、ラストの纏め方が強引だったのが残念ですね。  「スティーヴとケイトが結ばれ、前々から話してたアリゾナ行きを実現させる」って形なので、この二人にとってはハッピーエンドなんだけど (……で、息子と娘は置いてくの?)  って事が気になっちゃうんです。  息子と「父子のような抱擁を交わして」別れる場面は良かったんですが、その分だけ (娘とはロクに会話もしてないけど、寂しくないのか)  って疑問も湧いてくる。  他にも「同性愛者な息子の恋人ナオミ」についても放ったらかしで終わってるし、どうも風呂敷の畳み方が拙かった気がします。  エンドロールにて「まだまだ他にも宣伝家族は沢山いる」って示すのも、後味が悪くなっただけなんじゃないかと。  個人的には「夫婦」ではなく、四人揃って「家族」としてハッピーエンドを迎えて欲しかったですね。  総評としては「隠れた良作」って感じで、充分楽しめたんですが……  一抹の寂しさが残ってしまう映画でした。[DVD(吹替)] 7点(2022-09-10 12:58:06)(良:1票) 《改行有》

29.  フィリップ、きみを愛してる! 《ネタバレ》  「愛」と「脱獄」を描いた映画として、非常に良く出来ていると思います。  始まって十分程で「言い忘れてたけど、俺はゲイ」と主人公が告白し、本作における「愛」とは「同性愛」であると分かるんですが、それでも戸惑いは最小限で、楽しく観賞出来ちゃうんですよね。  冒頭、自分を養子に出した母親との対面シーンだけでも「ジム・キャリーだからこその魅力」を堪能出来ましたし「可憐な乙女」としか形容しようのないフィリップ・モリスを演じ切ったユアン・マクレガーも、これまた素晴らしい。  この二人が主演だからこそ「男同士のカップル」という際どい役どころでも、自然に感情移入出来た気がします。 ・それまでの恋愛対象は髭を生やしたタイプだったのに、女性的なフィリップに主人公が一目惚れするのには戸惑う。 ・「叫び屋」を殴らせた件でフィリップが感激しちゃうのは、違和感あり。 ・ゲイの男性って、ゴルフを毛嫌いするのが普通なの?  などなど、不可解さを感じる部分もありましたが、それらを差し引いても面白い作品でしたね。  フィリップと出会う前の恋人であるジミーが、死の床にて「僕は生涯の恋人と出会ったけど、君は未だ出会ってない」と語り、自分の死後に出会うパートナーを大切にして欲しいと訴える場面は、特に感動的。  作中にて「フィリップ、きみを愛してる」と告げるシーンが二回ある訳だけど、最初の場面は思い切りドラマティックに叫び「燃え上がる愛」を感じさせて、二回目の場面では「愛の終わり」を連想させるような、静かな雰囲気の中で呟かせるという対比も、凄く良かったです。  そんな「愛」に比べると「脱獄」の方は添え物というか「フィリップに愛を伝える為には、脱獄する必要がある」という程度の描かれ方なんですが、これがまた滅法面白いんですよね。  最後の大技と言うべき「エイズ詐欺」も良かったけれど、ハイテンポで描かれる「判事の書類を偽装して保釈させる」「刑務所内で働く医療スタッフに変装して逃げ出す」「セクシー(?)な職員に変装して逃げ出す」という三つの脱獄シーンも、同じくらいお気に入り。  本当に、あの手この手で刑務所を抜け出そうとする様が愉快で、痛快でさえありました。  「約束を守る」事に拘って、看守達に止められても最後まで音楽を流そうとする囚人仲間も良い味出していたし、食堂にて特別に豪華なメニューを食べる事になり、フィリップが喜んでいる場面なんかも印象的。  ラストシーンにて、愛しい彼を忘れられない主人公が、再び脱獄騒ぎを起こし、笑いながら走る姿で終わるというのも良かったです。  実際の「フィリップ・モリス」が主人公の弁護士役としてカメオ出演している為「決定的な嘘をつく訳にはいかない」という配慮もあってか、最終的にフィリップ側は主人公に愛想をつかしたとしか思えない作りになっているのは、悲しいけれど……  それもまた、本作の魅力の一つと言えそうなんですよね。  実話ネタだからこその、ハッピーエンドになりきれない切なさが、物語に上手く作用していたように思えます。  たとえ愛を否定されたとしても、それでも求めずにはいられない男の愚かさ、滑稽さを、空に浮かんだ不思議な雲が、優しく見守っている。  この映画に相応しい、惚けた魅力のある終わり方でした。[DVD(吹替)] 8点(2022-09-10 12:46:26)(良:1票) 《改行有》

30.  ハリウッド的殺人事件 《ネタバレ》  映画好きなら誰しも「世間の評価は芳しくないけど、自分は好き」という映画を胸に抱えているものだと思いますが、本作が正にそんな一本。  副業で不動産を扱っているベテラン刑事に、俳優志望の若手刑事という二人によるバディムービーなのですが、彼らの年齢差が丁度親子くらいで、会話にも何処となく疑似親子めいた匂いが漂っているのとか、凄く好きなんですよね。  若手の方が「刑事を辞めて、本格的に俳優をやりたい」と将来についての展望を語ったり、初老のベテラン刑事の女性関係を心配してみせたりと、二人のやり取りが実に微笑ましい。  特に、若手刑事のコールデンを演じたジョシュ・ハートネットに関しては、本作が歴代でもベストアクトだったんじゃないかと思えるくらいですね。  「このまま刑事を続けていて良いのか」という作中の悩みが、現実世界の彼が当時抱いていたという「このまま俳優を続けていて良いのか」という悩みとも重なり合っているように思え、非常に説得力があったかと。  ラストにて「役者の才能は無いみたいで……刑事止まりかな」と、何処か照れくさそうに語る辺りなんかも、コールデンの「なんだかんだ言っても、刑事という職業が好き」という気持ち、そしてジョシュの「俳優という職業が好き」という気持ちが伝わってくるかのようで、凄く良い場面だと思います。  脚本担当の方も「実際に不動産の副業をしつつ刑事をやっていた」「その時の相棒は俳優志望だった」というキャリアの持ち主のようであり、そういった現実とのシンクロ具合が、本作に適度なリアリティを与えていた気がしますね。  破天荒な設定の、コメディ仕立てな刑事物なのに、地に足が付いている感じで安心して楽しめたのは、そういった裏付けがあったからこそなのかも知れません。  ハンバーガーのトッピングに、携帯電話の着メロといった小道具の使い方も上手いし、マジックミラー式の取調室のシーンなんかも、コミカルな魅力があって好きですね。  カーチェイスや銃撃戦に迫力が無いという、根本的な欠点もあるのは分かりますが、それさえも 「女の子用の自転車や、タクシーを使って追跡するのが面白い」 「俳優志望だからこその演技力を駆使し、相手を騙してから撃つのが痛快」  なんて具合に、好意的に捉えてしまうんだから、本当に自分と相性の良い映画なんだと思います。  115分で終わるのが勿体無くて、この二人を主役とした刑事ドラマを、何十話分でも観てみたくなるような……独特の魅力を備えた一品でありました。[DVD(吹替)] 8点(2022-08-15 14:25:46)《改行有》

31.  THE 有頂天ホテル 《ネタバレ》  「グランド・ホテル」形式の作品である以上「出演者が有名人だらけのオールスターキャスト」である事が要求される訳ですが、その点は間違いなくクリアしていましたね。  (あっ、オダギリジョーだ)(唐沢寿明だ)といった感じに、脇役も見知った顔ばかりなのだから、実に贅沢。  大晦日を舞台としている事も併せ、お祭り映画としての楽しさが伝わってきました。  ……ただ、自分としては主人公であるはずの副支配人のエピソードが好みではなかったりして、そこは残念。  とにかくもう、見栄を張って元妻に嘘を吐く姿が痛々しくて、観ているこっちが恥ずかしくなっちゃうんです。  映画の最後を締める「おかえりなさいませ」の一言にしても、妙に滑舌が悪いもんだから(いや、これは撮り直せよ)とツッコんじゃったくらい。  この時点で「好きな映画」とは言えなくなってしまった気がします。  でも、そこは群像劇の強み。  複数の登場人物、複数のエピソードが用意されているもんだから、その中から自分好みのものを探す事が出来るようになっており、有難かったですね。  自分の場合、香取慎吾演じる「夢を諦め、故郷に帰ろうとしている青年」の憲二君がそれに該当し、このキャラクターのお蔭で、最後まで退屈せずに観賞出来た気がします。  歌手を目指していたという設定の為、終盤で絶対唄う事になるんだろうなと思っていたら、やっぱりそうなるという「お約束」「ベタさ加減」も心地良い。  ホテルの壁が薄い事が伏線になっており、彼の歌を聴いて、隣室の客が自殺を思い止まる展開になる辺りも良かったです。  演歌歌手を演じる西田敏行も魅力的だったし、そんな彼に「プロにはなるな」「君程度の歌手は五万といる」と諭され、意気消沈するも、やっぱり夢を諦め切れずに再びギターを手にする憲二君という流れも(そう来なくっちゃ!)という感じ。  かつて手放したはずのラッキーアイテムが、結局は手元に戻ってくる流れなんかも、非常に綺麗に決まっていたと思います。  そして何より、周りの人物、かつて夢を叶えられなかった人々が「夢を諦めないで」とエールを送る形になっているのも、実に素晴らしい。  ここの件だけでも(観て良かったな……)と、しみじみ感じ入りました。  そんな人々の想いと、叶わなかった夢の数々を背負って、憲二君がラストに熱唱する姿を、是非観たかったのですが……結果的には、YOU演じるチェリーさんに見せ場を奪われた形でしたね。  この辺りは「群像劇であるがゆえに、色んな人物に見せ場を用意する必要がある」という事が、マイナスに作用してしまった気がします。  最後をチェリーさんで〆るなら、もっと事前に「歌に対する彼女の想い」を描いておくべきだったと思いますし、そういった積み重ねが足りていないから、ラストに彼女が唄ってもカタルシスが無い。  逆に「歌に対する想い」が濃密に描かれていた憲二君に関しては「もう充分に見せ場を与えたから」とばかりにクライマックスで唄ってくれないので、結果的に両者ともに浮かばれない形になっているんです。  いっそ最初はチェリーさんが単独で唄い、途中から憲二君がギターを弾きつつ参加して合唱する流れにしても良かったんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょう。  どちらかといえば、もっと長尺のテレビドラマ向きの題材じゃないか、とも思えたので、そちらのバージョンをアレコレ妄想してみるのも楽しそうです。[DVD(邦画)] 6点(2022-08-11 00:15:40)《改行有》

32.  カランジル 《ネタバレ》  実際に囚人虐殺事件が起こったカランジル刑務所を舞台にして撮影されており、ラストはその刑務所が爆破される場面を映し出して終わるという、凄まじい映画。  そんな「本当に事件が起こった刑務所で撮影している」という強みゆえか、劇映画とは思えないほどのリアリティを感じ取る事が出来ましたね。  特にラスト30分の虐殺風景は圧巻の一言であり、観ている間、単純な嫌悪感だけでなく「ここまで凄い映像が撮れるものなのか」という、恐怖なのか感動なのか良く分からない感情まで芽生えてきたくらいです。 ・収容可能な人数は四千人の刑務所に、七千五百人もの囚人が押し込まれている。 ・選挙が近いから、警察側は暴動を徹底的に鎮圧して政治的アピールを行いたかった。 ・囚人にはエイズ患者が多数存在しており、鎮圧部隊には彼らに対する差別意識と偏見があった。  などなど「虐殺が起こった理由」について、丁寧に描いている点も上手い。  その為、観ている間も「どうしてこんな事が起こってしまったんだ……」という戸惑いに包まれる事も無く「これは、起こるべくして起こった悲劇なんだ」と納得した上で、より深く諦観と絶望を味わう事が出来たように思えます。  囚人のカップル(両方とも性別は♂)の結婚式を描き、幸せなムードに浸らせた後、囚人同士の殺人事件→暴動→虐殺と、段階を踏んで観客を負の世界に誘っていく構成になっているのも、お見事でした。  聖書とイエスの肖像画を手にして無抵抗だった男が躊躇なく射殺される場面も印象的でしたが、その一方で「息子に似ているから」という理由で警官に見逃してもらえた囚人や、咄嗟に死体の振りをして助かった囚人など、虐殺の中にも微かな「救い」があるというか「何とか助かった人もいるという安堵感」を与えてくれる作りになっているのも、嬉しかったですね。  特に、上述の「結婚式を挙げたカップル」が助かった事には心底ホッとさせられましたし「生存者となる人物を予め重点的に描いておき、観客に少しでも救いを与えるようにする」という作り手の配慮が窺えるかのようで、凄くありがたい。  「実際に起こった虐殺事件だから」と開き直り、ひたすら陰鬱で救いの無い話に仕上げる事だって出来たでしょうに、そこを踏み止まって「奇跡的に生き延びた喜び」も感じられる作りにしてくれた事には、大いに拍手を贈りたいです。  人間の死体まみれな刑務所の中で、犬と猫とが静かに見つめ合い「犬と猫は種族が違えど争ったりしないのに、同じ人間同士で虐殺を行っている」という皮肉さを醸し出している場面なんかも、実に味わい深くて良いですね。  「鎮圧部隊、万歳!」と連呼させながら囚人達を中庭に連れ出し、全員を裸にして整列させる場面なども圧倒されるものがあり、ここまで来ると一種の「悲惨美」すら感じちゃうくらいです。  比較するのは適当では無いかも知れませんが「虐殺を芸術的なまでに凄惨に描いた」という意味合いにおいては、かの高名な「オデッサの階段」に近しいものがあるんじゃないか、とすら思えました。  ただ……そんな「オデッサの階段」を描いた「戦艦ポチョムキン」と同じように、本作にも「虐殺の場面は衝撃的だが、映画全体としては退屈な場面も多い」という欠点があるように思えて、そこは残念でしたね。  虐殺が起こるまでの「刑務所の日常」が長過ぎて、二時間近くも「前振り」を見せられては流石に飽きて来ちゃうし、主人公である医師が不在の間に虐殺が起こる形になっているのも、ちょっと拍子抜け。  後者に関しては「実話ネタだから仕方無い」「その医師の著書が原作なんだから仕方無い」って事は分かるんですが、やはり映画として考えるとマイナスポイントになっちゃうと思います。    「囚人達の多くは、少しも罪悪感を抱いていない」と分かった上で、それでも医者として彼らを救うべきかと悩む姿などは良かったですし、診察の合間に囚人から身の上話を聞く件なども面白かったので、医師を主人公に据えたのが間違いって訳じゃないんでしょうけどね。  (出来れば医師の他にもう一人、虐殺の現場に立ち会う主人公格のキャラクターを配置しておくべきだったのでは?)と、そんな風に考えてしまいました。  そういった諸々を含め、総合的に判断すると「面白い映画」「好きな映画」とは言い難いものがあるのですが……  本作が「一見の価値あり」な映画である事は、間違い無いと思います。[DVD(吹替)] 7点(2022-08-05 21:21:55)(良:1票) 《改行有》

33.  キューティ・バニー 《ネタバレ》  「元々は地味なタイプの子だった」「児童養護施設の出身である」という主人公の過去が、物語の進行をスムーズにしている点が上手いですね。  それによって、華やかなグラビアモデルだった彼女が、地味な「ゼータ」の子達に肩入れするのも、介護の仕事をしているオリバーに惹かれていくのも、自然に感じられるという形。  主人公の影響を受け「ゼータ」の子達が美しく着飾ってみせた場面では(……いや、元の方が可愛いじゃん)とノリ切れずにいたのですが、それがキッチリ伏線になっていた辺りにも感心。  周りにチヤホヤされる事によって増長し、彼女達も「見た目で他人を判断するような、嫌な女」になってしまうという、非常に皮肉の効いた展開になっているんですよね。  そこから改心し「元のままの、ありのままの自分の方が良い」と気が付いていく流れはとても心地良くて、ここが本作の白眉であったように思えます。  着地の仕方に関しても「綺麗になる事なんて意味は無い」とまで極端な結論には至らず「着飾るのは、それなりで良い。自分を見失わないまま綺麗になるのが大事」という辺りに留めているのが、これまた絶妙なバランス。  「変わる前の自分」と「変わった後の自分」の、良いとこ取りをしちゃおうという感じで、彼女達が下した答えに、自然と賛同する事が出来ました。  とはいえ「招待状を盗まれた」という件に関しては(今からでも事情を説明して呼び込めば良いのに、何で悔しがって見てるだけなの?)とツッコんじゃうし、ゼータ存続を決定付ける「三十人目」の存在については、もっと伏線が欲しいと思っちゃうしで、脚本の粗も色々と見つかってしまうのは、非常に残念。  特に後者の「三十人目」については致命的で、映画のオチに相当する部分にしては、インパクトが弱かった気がしますね。  これなら、観客に先読みされるのを覚悟の上で彼女の出番を増やし「本当はゼータに入りたいのに、周りの目を気にしてミューに所属している」などの描写を挟んでおいた方が良かったんじゃないかと。  後は……マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」を上手に歌えず、皆に馬鹿にされる場面が中盤にある訳だから、エンディング曲も「ライク・ア・ヴァージン」にして、今度は上手に歌ってみせるという展開にしても良かったかも知れませんね。  全体的には好きな作風ですし、楽しめたのですが「ここ、もっとこうしても良いんじゃない?」と口を挟みたくなる部分が、一杯ある。  魅力的だけど隙も多い、もっともっと綺麗になる可能性を秘めた女の子のような、そんな映画でありました。[DVD(吹替)] 6点(2022-08-03 21:58:45)(良:2票) 《改行有》

34.  イーグル・アイ 《ネタバレ》  面白かったはずなのに満足度は低めという、不思議な感覚が残った作品。  内容としては、コンピューターによる人類への反乱という「コロッサス」から連なる王道ネタを扱っているのですが「携帯電話の誘導に従って、窮地を乗り越えていく」というテイストを盛り込む事により、上手く独自色を出していましたね。  シャイア・ラブーフも、お得意の「事件に巻き込まれた若者」を好演していますし、嫌味なタイプの主人公なのに、しっかり感情移入させてくれる辺りなんかは、本当に凄かったです。  じゃあ何故「満足度は低め」なのかというと……まず、終盤のカタルシスに欠けるんです。  クライマックスに用意されているのは「主人公の自己犠牲によって、政府高官の暗殺を阻止してみせる」という展開な訳だけど、その前の段階で「息子を人質に取られた母親に対し、自分を撃てと諭す主人公」というシーンが、既に存在している。  つまり「自己犠牲展開」を二度やる形になっており「あの自分勝手な主人公が、他者の為に命を投げ出している」という衝撃も、二回目の場面では薄れてしまうんです。  おまけに「主人公は命を投げ出し自己犠牲を行ったけど、結局は助かった」というオチまで二連続になっている訳だから、これは流石にキツかったですね。  その他にも「絵を描く趣味がある」「息子の誕生日を憶えていない」などのネタが、大した伏線になっていないのも寂しいし、黒幕であるアリアを倒すのが主人公じゃなく、脇役の少佐と捜査官というのも、ちょっと乗り切れないものがありました。  最後はハッピーエンドである事自体は嬉しかったし「携帯電話の謎の声に、人々が導かれていく」パートは、本当に面白かったんですけどね。  特に「電車の中で、乗客の携帯電話が一斉に鳴り出し、主人公が指名手配されていると告げる」場面なんかは、かなりゾッとさせられるものがあって、忘れ難い。  色々と粗はあるけれど、何だかんだで内容を忘れた頃に再見したくなるような……そんな、不思議な魅力のある一品でした。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2022-08-03 16:07:27)(良:2票) 《改行有》

35.  DEATH GAME デスゲーム(2006) 《ネタバレ》  あるゲームをプレイ中に、自分の操作キャラが死亡すると、現実世界で自分も同じように死亡してしまう……という設定、非常に好みですね。  こういった馬鹿々々しいような思い付きを、そのまま形にしてみせた映画って、どうも憎めないです。  登場人物達は所謂ゲームオタク揃いなのですが、美男美女が演じている為か、あまり内向的な感じがせず、画面が華やかだった辺りも良い。  しかも、主人公の周りにはゲーム好きの友人が沢山いて、職場の上司までゲーム好きで仲良くやっているというのだから、何とも羨ましい話です。  そんな友人が次々に死んでしまう展開な訳ですが「主人公」「ヒロイン」「男友達」と、メインの三人は生き残る事が出来たし、ハッピーエンド色が強めでしたね。  その後に問題のゲームが市場に出回ってしまうオチも付く訳ですが、一種の予定調和という感じで、後味が悪くなったりはしませんでした。  怖がらせる為の演出も「車のバックミラーを調節したら、そこに謎の女が映り込んでおり、そのまま車内で襲われる」といった感じで、ベタゆえの安心感があります。  ゲームの世界で扉を開ければ、現実世界で開かない扉を開けられるようになるという形で、主人公側が「ゲームと現実のリンク」を逆手に取ってみせる辺りも、面白かったですね。  こういう「不条理で非現実的なルール」を強いられるタイプの作品で、そのルールを主人公達が活用し、普通なら出来ない事をやってみせる描写というのは珍しい為、大いに感心させられました。  そんな具合に、好きな部分が多かった映画なのですが……  終盤にて脚本が破綻しているというか、面倒になって細かい部分は投げ捨てたかのような作りになっている辺りが、非常に残念。  GAME OVERになったはずの男友達のスウィンクが生きていたり、ヒロインのアビゲイルが唐突に花占いを始めたりと「?」と思わされる場面が多かったのですよね。  自分が伏線を見落としていただけかも知れませんが、ちょっと納得出来なかったです。  それから、折角主人公達は助かった訳だから、その余韻というか「生還した喜び」あるいは「ゲームをクリア出来たけど、失った友達は帰って来ないという喪失感」のようなものを描くシーンがあれば、更に良かったんじゃないかと思います。  もっと丁寧に作っていたら、若々しい感性のホラー映画として傑作になっていた可能性を感じさせるだけに、惜しい一品でした。[DVD(吹替)] 5点(2022-08-03 15:32:47)《改行有》

36.  アメリカン・パイ in ハレンチ・マラソン大会<OV> 《ネタバレ》  主人公が自慰を家族に見られる場面から始まるのは「原点回帰」って感じがして良かったんですが……  そのショックで祖母が死んじゃう形なので、全然笑えないし、ノリ切れなかったんですよね。  思えば、その躓きが最後まで尾を引いて、本作を残念な印象にしてしまった気がします。  その他にも「目に見えて画面が安っぽい」とか「主人公エリックの父が嫌な奴のまま終わるので、スッキリしない」とか、色々と欠点が多いんです。  前作「バンド合宿」の分を取り戻そうとするかのようにパーティー描写が濃厚なのも、個人的には嬉しかったけど……ちょっと下品過ぎて、ウンザリしちゃう人もいるかも。  とはいえ、自分としてはやはりアメリカン・パイシリーズが好きなもので、評価も甘くなっちゃうんですよね。  「主人公とヒロインが、最初から恋人同士である」って設定にして、過去作との違いも打ち出しているし、大学生達が全裸で校内をマラソンするという「ネイキッド・マイル」って発想も面白いしで、どうも嫌いになれない。  そして何といっても、ジムの父親が出演しているのが嬉しくって……「お前はジムの父さえ出ていれば満足なんだろ」って、自分にツッコミを入れたくなったくらい。  そんなジムの父が、大学時代には「歴代最高のハジケ野郎」「ネイキッド・マイルの創始者」であったと明かされる辺りなんかも、色々と妄想をかき立てるものがあって、良かったと思います。  「走って揺れる巨乳を、スローモーションで映す場面」には正直興奮しちゃいましたし、そんなエロティック要素だけでなく、青春映画としての要素も、ちゃんと盛り込んであるんですよね。  親戚のドワイトが「家名に恥じぬ生き方をするのは大変だ」と本音を漏らす辺りは、思わずしんみりしちゃったし、それがラストシーンにて「スティフラー」と呼ばれ「エリックで良い」と応える主人公の姿にも、きちんと繋がっている。  家名に囚われたりせず、前向きに、自由に生きる事を決意した主人公って感じがして、爽やかで良かったです。  美女のブランディ相手に、童貞喪失出来そうになったのに「好きな子がいる」と誘いを断ってみせる場面も(良くぞ言った!)って気持ちになれましたし、良い場面だったんじゃないかと。  「低予算である」「欠点も多い」という事は重々承知だし、誉め言葉に負けないくらい、悪口も浮かんできそうな作りではあるんですが……  「映画としてチャーミングな部分」も、ちゃんと備え持っている。  そんな、憎めない一品だったと思います。 [DVD(吹替)] 6点(2022-07-23 15:50:17)《改行有》

37.  アメリカン・パイ3:ウェディング大作戦 《ネタバレ》  ラブコメというのは基本、主人公とヒロインが結ばれて「めでたし、めでたし」で終わるものだから、そんなラブコメのその後、二人が結ばれた後の結婚式まで描いた本作は、とても貴重だと思います。  前二作を鑑賞済みの身としては、ジムとミッシェルに思い入れたっぷりなもので、そんな二人が結婚するというだけでも、感慨深いものがありましたね。  アメリカン・パイシリーズでは「前作まで付き合っていたカップルが、別れてしまっている」というパターンも珍しくないだけに、シリーズ中で一番好きなカップルの二人が結婚してくれた事が、もう小躍りしたくなるくらいに嬉しい。  結果的に「1で二人が出会い、初体験」「2でカップル成立」「3で結婚式」という流れになった訳で、ここまで丁寧に結ばれる過程が描かれたカップルって、映画史においても稀な例となるんじゃないでしょうか。    本作においてはシリーズ恒例の「パーティー描写」が「独身さよならパーティー」となっている訳だけど、ここの件も凄く面白い。  特に、ゲストのストリッパー達がメイドと婦警のコスプレをしていた辺り(米国だろうと日本だろうと、男の好みなんて大して変わらないんだな……)って思えて、興味深いものがありましたね。  そんな二人が花嫁の両親に見つかってしまい「本物のメイドさん」「本物の婦警さん」と言って誤魔化そうとする流れも秀逸であり、コント的な魅力があって楽しかったです。  出演者達に関しては、これまで脇役だったスティフラーが主役格となっているのが嬉しい一方、オズをはじめとした面々が多数欠席しているのが寂しいんですが……  まぁ、それに関してはカメラに写っていなかっただけで、本当は彼らも結婚式に招待され、二人を祝福していたんだと思いたいですね(「結婚式に行けなかった」と8で明言されているオズも、ビデオメッセージか何かは送ったはず)  ジムの父親も、相変わらず魅力たっぷりであり「困った時は何時も父が助けてくれた」というジムの言葉を聞いて、嬉しそうにする時の表情なんか、もう最高。  (本当に息子想いの、良い父親だよなぁ……)って思えて、微笑ましくて仕方無かったです。  「チョコ」の件は流石に引いちゃったとか、ダンス対決を見せられた際は(えっ、これってそういう映画だったの?)と戸惑ったとか、欠点と呼べそうな部分も色々あるんだけど……  シリーズに共通する「登場人物に対する、作り手の優しさ」「下品なギャグだけでなく、真面目な感動もあるバランス」が、しっかり踏襲されていたので、決定的な違和感にまでは至りませんでしたね。  「真面目な感動」に関しては、ジムが仲間達に感謝を述べる場面が顕著であり「トラブルが起きても何とかなったのは、何時も皆が助けてくれたからだ」「ありがとう」という言葉には、本当にグッと来ちゃいました。  実際に、前二作にて「何とかなった」のを見守ってきたからこその感動があり、シリーズ物の強みを存分に活かした台詞だったと思います。  二度ある事は三度あるとばかりに、最後はスティフラーのママが登場して〆るのも最高。  結果的には、この後に五本も続編が作られている訳ですが、作り手としても一旦はコレで完結という事を意識した内容だったんじゃないか……って気がしましたね。  そういう意味では「三部作」の最後を飾る品として、見事な出来栄えだったんじゃないかと。  「シリーズに興味はあるけど、流石に八本も観るのは大変」って人も、とりあえず3までは観て欲しいなと思える、そんな節目の一本でありました。[DVD(吹替)] 7点(2022-07-23 15:43:47)(良:1票) 《改行有》

38.  レッド・ウォーター/サメ地獄<TVM> 《ネタバレ》  (夏だなぁ……サメ映画観なきゃ)という想いで鑑賞。  ルー・ダイアモンド・フィリップスが主演だし、割と期待値は高めだったんですが……  どうもチグハグというか「予想も期待も裏切る内容」って感じだったのが残念ですね。  これは低予算のサメ映画では結構ある事なんだけど、本作でも「銃を持った悪人の方が、サメより脅威」という現象が起きてしまっているんです。  それ自体は決して悪い事じゃないんですが、本作の場合は「銃を持った悪人を倒すカタルシス」が描かれていないのが問題なんですよね。  盗まれた金を探しに来た悪人達に、主人公グループが監禁される流れな訳だけど、主人公が頑張って反撃しようとしても、あっさり鎮圧されちゃう。  で、形勢逆転のキッカケになるのが「悪人達の仲間割れ」であり、それに乗じて主人公達が逃げ出すって形なので、何ともスッキリしないんです。  しかも悪人達の中で、最も有能でボスキャラと思われた人物が、無能な仲間に殺されるって形なので「強敵を倒した達成感」も得られず仕舞い。  流れとしては「一番有能な敵が不意打ちで無能な敵に殺される」→「その無能な敵もサメに殺される」→「主人公がサメを殺して事件解決」って形であり、どうもややこしいというか……  こんな複雑なストーリーの品よりも、最後の「主人公がサメを倒す」という一点に特化した映画が観たかったなと、つい思っちゃいました。  他にも「嫌味な憎まれ役だったジーンが死ぬ場面は感動的に描く」「良い人枠なハンクはアッサリとサメに喰われ、その後に笑いを取ったりしてる」ってのも、何ともチグハグな演出。  普通は「憎まれ役をサメに喰わせて、観客をスッキリさせる」「良い人が死ぬ場面は感動的に盛り上げる」ってのが、サメ映画のお約束ですからね。  意外性を狙ったのかも知れませんが、結果的には「ベタで王道な魅力」が失われてしまっただけに思えました。  そんなこんなで、褒めるのは難しい作品なのですが……  ラスト数分で、思い出したようにサメ映画らしい内容になり、しかも「石油採掘用のドリルでサメを倒す」っていう痛快なクライマックスを見せてくれたのは、嬉しかったですね。  これまで色んなサメ映画を観てきたけど「ドリルで倒す」ってパターンは初めてだし、何かもうそれだけで(良いもん見たな……)って満足しちゃいます。  その後にダラダラと引っ張る真似もせず、警察のヘリが現れて「助かった……」という安堵感と共に終わる辺りも気持ち良い。  主人公の船の名前は「ビターエンド」だったけど、ハッピーエンドと言って良さそうな、スッキリとした終わり方でしたね。   終わり良ければ全て良し……ってのは大袈裟かも知れませんけど、一応「サメ映画を観た」って気持ちにはさせてくれたので、満足です。[DVD(吹替)] 5点(2022-07-16 19:56:06)《改行有》

39.  ラッシュアワー3 《ネタバレ》  シリーズを重ねる毎に「ダブル主人公」ではなく「主人公のリーと、その相棒のカーター」って形に変化していった二人。  自分としては元々リーの側に肩入れする気持ちが強かった為、さほど違和感を抱かずに済んだけど……  これってカーターの方が好きな観客にとっては、結構辛かったんじゃないかって思えますね。  前作のヒロイン格であるイザベラがリーと疎遠になったのも「カーターが悪い」って事になってるし、その辺ちょっと厳しいというか、ファンに優しくない作りだった気がします。  そんな明確な欠点がある映画なんですが、2に続いて3でも魅力的な敵役を用意してみせた点に関しては、素直に評価したいです。  本作でカーターの影が薄いのって、コイツのせいじゃないのかって思えるくらい、真田広之演じるケンジが魅力的。  「主人公リーの弟分」「今は敵対し、かつての兄貴分に愛憎入り混じった想いを抱いてる」って設定だけでもオイシイし、日本刀を鮮やかに振るう姿も恰好良い。  そんなケンジとの「エッフェル塔での戦い」は、間違いなくシリーズ屈指の見せ場だったと思います。  リーが弟分のケンジから「孤独な男」と断じられた場面で「孤独じゃないわ」と女装したカーターが助けに来る場面はグッと来るし「やるじゃん、シスター」「任せて、ブラザー」ってやり取りも面白かったしで、こうして感想を書いてみると(あれ? 意外と良い映画だな)って、鑑賞後の印象とのギャップに、自分でも戸惑っちゃうくらいですね。  では、何故そんな本作の「鑑賞後の印象」が悪かったかというと……  やっぱり、終わり方のせいだと思うんです。  本当、今観返してみても「唐突過ぎる」「呆気無い」「何でこんなブツ切りで終わらせたの」って、理解に苦しむくらい。  ……ただ、上述の「唐突の終わり方」に関しては、劇場公開版&ソフト版に限った話であり、地上波放映版では、未公開だったラストシーンが追加され、グッと自然な終わり方になっていたりもするんですよね。  劇中(扱いが酷いなぁ)と思えたイザベラに関しても、リー達と再会する場面が描かれ、しっかりフォローされていますし。  狙撃されたハン大使が無事に退院した事も明かされ、文句無しのハッピーエンドになってる。  そして何より「1や2と同じく、リーとカーターが休暇に旅立つ終わり方」「俺達は相棒じゃなく、兄弟だと認め合う終わり方」であった事が、本当に良かったです。  残念ながらNG集は拝めないってマイナスを考慮しても、自分は地上波放映版の終わり方を支持したいですね。  ちなみに、本作の劇中では「ケンジのタマ取って妹にしちゃえ」という台詞がありますが、ドラマ版(2016年)では実際にリーの妹が出てきたりもするので、気になった人は是非チェックして欲しいですね。  「映画版と殆ど変わらないカーター」「寡黙な美男子という独自の魅力を出してるリー」という主人公二人の描き方も良かったし、最後も綺麗に終わってるしで、この手の「人気映画をドラマ化してみた」パターンの中では、かなり良く出来てる方だと思うので、オススメしておきたいです。[地上波(吹替)] 6点(2022-07-11 20:40:06)(良:2票) 《改行有》

40.  ラッシュアワー2 《ネタバレ》  ラッシュアワーシリーズって、三部作全てブレット・ラトナー監督のはずなんだけど……  (あれ、もしかして監督交代した?)と思えちゃうくらい、続編物としての欠点が目立つ作りなのが寂しいですね。  一応、1にあった楽しい雰囲気は維持されてると思うんだけど、何ていうか「1と2の繋げ方が雑」なんです。  前作のラストで「カーターは中国語を話せる」ってオチになったはずなのに、実際は手帳に書いたワードを読み上げる事しか出来ないって設定になってるし、1ではビーチボーイズを馬鹿にしてたカーターが「ビーチボーイズ最高!」と言ってる辺りも、1と2の間に何があったんだよと気になっちゃう。  シークレットサービスになれたと喜ぶカーターっていうのも、1のラストにてFBIになる事を拒否し「俺はロス市警で良い」と恰好良く啖呵を切った場面を考えると、違和感があるんですよね。  この辺に関しては、監督というより脚本家の交代が原因かとも思えるんですが、真相や如何に。  そんなこんなで、ちょっと褒めるのが難しい一本なんですが……  一応「1には無かった、2独自の良さ」も、ちゃんと備わっていたと思います。  何と言っても最大の長所は、悪役美女のフー・リを演じる、チャン・ツィイーの存在。  林檎にナイフを投げる場面とか、戦う前に鮮やかな動きで髪を結う場面とか、もう惚れ惚れしちゃうくらい魅力的でしたね。  凛々しさと可憐さ、その双方を備え持っており、爆発で死んじゃうオチなのが悲しく思えたくらい。  リーが口の中にある爆弾を作動させない為、フーにキスする場面も可笑しかったし……  父の仇であるラスボスのタンを撃つべきか、それとも正義の為に自制するかでリーが迷う場面にて、相棒のカーターが「撃て」と急かすのも、新鮮で良かったです。  こういう場合、相棒は撃たないようにと諭すか、わざと露悪的な事を言って思い止まらせるもんなのに「俺達以外には誰もいない」とか言い出す始末ですからね。  本作の主人公二人が、型通りの「バディ物」には収まらない魅力を持ってると示した、印象深い場面です。  前作と同じように「休暇に旅立つ二人」という、楽しい雰囲気のまま終わってる辺りも、嬉しいポイント。  上述の通り、続編映画としては色々と不満もあるんですが……  これ単体で評価する限りでは、中々良く出来た映画だったと思います。[DVD(吹替)] 6点(2022-07-07 14:14:33)《改行有》

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