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521.  ドリームハウス ヒーローを演じつつもどこか邪まさを匂わせるダニエル・クレイグの キャラクターイメージが次第に活きてくる作劇の転換が サスペンスを呼び込んで面白い。 夜の窓外に蠢く人影より何より、主人公の変貌ぶりにインパクトがある。 家の映画としても、二階に続く階段、地下への階段がそれぞれドラマの舞台に 組み込む配慮が為されていて如才ない。 ラストの業火の中、レイチェル・ワイズとのやり取りが感動的で、 温かい余韻を残す。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2012-12-30 00:29:56)《改行有》

522.  ゴモラ 映し出される登場人物と同等以上の存在感をもって、 独特な構造をもった居住空間や街の景観が、深いパースペクティブを活かした 画面の中に印象深く捉えられている。 被写体をひたすら粘り強く追っていくハンディカメラによって、 画面の中の都市空間はより立体性を増して迫ってくる。 その中で、突発的に起こる銃撃のバイオレンスが幾度か繰り返されることで、 何気ない日常のシーンがそれだけで張り詰めたものとなっていく。 罠に嵌って郊外へとおびき出される青年たちのバイクの迷走を 後方から見下ろすように追うカメラ。 それだけで、ただならない不穏と緊張が漲らせている。 さらに、凄惨なシーンに被さる軽快な音楽も対位的に効いており巧い。 防弾着で銃弾を受ける度胸試しの順番を待つ少年たちの、 演技には見えぬ迫真の表情などは忘れ難い。 [DVD(字幕)] 7点(2012-12-22 23:52:43)《改行有》

523.  トラス・オス・モンテス 夕暮れどき、真直ぐに伸びる一本道を父親が去っていくのを見送る少女。 夕陽を背にした彼女の影が長く伸びている。 父親が小さな点となり、その姿が見えなくなるまで、 彼女は延々と立ちつくしながら何度も手を振る。 その何度か繰り返される小さな身振りと光の推移が、寡黙な時の流れを意識させる。 ラストの宵闇の中を走る列車の望遠ショット。 薄暗い画面の中に列車の吐く白煙が拡がり、滲んでいく。 ショットの長さがそうさせるのか、それとも静寂ゆえか、 寡黙な本作の中でもこの二つのイメージは特に鮮烈で忘れ難い。 ポルトガル北部の山岳地帯。 機織りのリズムや、川遊び、寺院での祈祷など、 映される風土、風物、衣装はそれぞれ極めてローカルでありながら、 同時にその情景は時代と場所を超えた普遍のノスタルジーをもって迫ってくる。 [映画館(字幕)] 7点(2012-12-11 22:14:05)《改行有》

524.  巨神兵東京に現わる 劇場版 加東大介『南の島に雪が降る』の中で、南方戦線の兵士たちは、 演芸分隊による作りものの雪や柿に涙する。 実物の雪でないのは明らかであるにもかかわらず彼らの心を打ったのは、 そこに人の手作りによる文化の感触があったからではないか、と長谷正人氏は云う。 CGアニメーションの動画が最新技術によって いかに滑らかに軽やかに表現されようが、 コマ撮りアニメの独特のタッチと動きがいまだに新鮮さを失わないのは 実物らしさの問題ではなく、丹念な手作りの感覚の中から 作り手の人間性や心意気が伝わるからこそだろう。 コストだけでは計れない贅沢な職人技、だからこそ現在的な意義がある。 作り手の後ろ向きな回顧趣味では為し得るわけが無い。 光線に貫かれたビルの被弾部が一瞬間を置いて溶解し、炎が噴出する。 寺院をなめた背後の建築物が爆発すると共に散乱する大小様々な破片。 舞い上がる火の粉。巨神兵の姿を揺らめかせる陽炎の効果がさらに禍々しい。 崩れ落ちるビルは、内部まで高精度に作り込まれており、 安っぽい発光を用いないので鉄塊の物質感は満点である。 細部に至る作り込みとハイスピード撮影との相乗効果が生み出す即物感と重量感。 それこそが、CGには出せない具体的な味の最たるものだ。 [映画館(邦画)] 7点(2012-12-09 01:43:17)《改行有》

525.  悪の教典 《ネタバレ》 屋上でキスをする伊藤英明と女生徒の前景と、後景の校舎。 人影は映らないものの、間違いなく誰かに見られている、という感覚で シネスコ画面が効果的に活かされているが、 どちらかといえば広がりよりも、奥行きや深さを強調した画面が印象的だ。 (吹越満の乗る電車車両の揺れる悪夢的感覚。 廊下奥や教室奥の外光で薄暗く浮かび上がる伊藤の姿など) 一方で、AEDレコーダーや救助袋の伏線シークエンスなどは あたかも取ってつけたようで、 回収地点でかえって作り手の逆算が露呈し、大いに興ざめである。 これなら、余計な伏線など無いほうがよほど気が利いているし、 インパクトもあるだろうに。 回収のための伏線張り。それは単に観客に辻褄合わせの納得を促すだけで 何ら驚きをもたらさない。 ついでに、盗聴器を仄めかすコンセント口等のショットのくどい反復や、 伊藤の来歴のフラッシュバック。 これらの無駄を省いただけでも、 110分程度には引き締まったはずだろう。 [映画館(邦画)] 7点(2012-11-11 23:49:08)《改行有》

526.  愛と誠(2012) ミュージカルシーンに映画を感じたのは、 大野いとの『夢は夜ひらく』と、安藤サクラの『また逢う日まで』。 動きのとれないトイレ個室内での歩調と、 大野の決して上手くない歌がシュールでいい。 雨に濡れた夜の歩道を走る安藤の躍動と笑顔、そしてそれを追う横移動のカメラがいい。 武井咲も斎藤工も、 一青窈・市村正親コンビの達者な身のこなしなどと比較してしまうと可哀相だが、 シンプルな振付と頻繁なカットつなぎにも助けられて健闘している。 そのミュージカルの少し硬い感じが逆に味となって後半のドラマに活きており、 特にこの二人がそれぞれ違うシチュエーションで土下座をして 必死に懇願するシーンではその熱演と表情が一気に輝き出して素晴らしい。 ただ、妻夫木聡のワイドショー番組的な安っぽい突っ込み台詞の数々は もう少し工夫が欲しかったところ。 [映画館(邦画)] 7点(2012-07-01 22:39:33)《改行有》

527.  左側に気をつけろ スラップスティックとしてのスピード感と破天荒ぶりでは 『チャップリンの拳闘』に敵わないが、 その軽快で飄々とした緩いペースこそジャック・タチらしさだろう。 郵便配達の自転車の軽快な疾走に始まり、走り去る自転車に終わる、 全編通してののどかな屋外のロケが瑞々しく、 陽の降り注ぐ野外のリングで行われるボクシングや、 いたるところで登場する沢山の動物たちのランダムな動きと共演が大らかでいい。 ヌーヴェルヴァーグの先駆けともいえる。 軽いフットワークでボクサーの動きを模写をする ジャック・タチのコミカルなパントマイム。 後に『右側に気をつけろ』を撮るゴダールが 自作中でよく取り入れるシャドーボクシングの身振りの原型がここにある。 トーキーだが台詞は相当に省略され、 手引書の図解を利用したギャグを始め、 サイレント的な身振りによる語りが冴えている。 [ビデオ(字幕)] 7点(2012-06-27 23:57:36)《改行有》

528.  とべない沈黙 撮影は鈴木達夫。 白と黒のシャープなコントラストを基調に ドキュメンタリーと観念的ドラマがせめぎ合う画面は、 季節や気温、湿度、人物の体温の感触まで余すところなく掬い取っており、 素晴らしい。 少年が白樺林で蝶を追うシーンの浮遊感(北海道篇)や、 駅ホームから地上出口までの雑踏を追うカメラ(大阪篇)。 反核集会の人混みの合間を縫っての移動(広島篇)。 あるいは、喫茶店2階の乱闘から階下へ、 そして雨に濡れた路上での銃撃までを延々と追うゲリラ撮影的長回し(東京篇)などの 動的なハンドカメラが時に詩的で、時に生々しく、安定と不安定の按配も絶品である。 そうしたダイナミックな動的ショットと端正な静的ショット、 あるいは緊密なクロースアップと望遠ショットの対照が利いている。 ヘッドライトを原爆の光に模した観念的なショットが登場するかと思えば、 様々なニュース映像やインタビュー音声までが奔放に入り乱れる雑然ぶりは 後の『原子力戦争』のゲリラ撮影へと連なっていく大胆さだ。 とくに映画の後半、香港篇が入って来る辺りで映画が破綻気味に変調しかかるが、 松村禎三の主旋律と加賀まり子の美しい佇まいが 映画に一貫したトーンを保たせている。 [DVD(邦画)] 7点(2012-06-25 00:10:35)《改行有》

529.  チャップリンのカルメン チャップリンが編集したオリジナルは2巻物(約20分)だったが、彼のミューチュアルへの移籍後にエッサネイ社が4巻物に水増しし、「でっち上げた」のが現行のバージョン。 (チャップリン自伝) つまり、映画の約半分は監督チャップリンの不服とするNGショットだ。 この苦い経験もまた、後に彼の完璧主義を形成していく一因となったのだろう。 確かにジプシー側の描写の多い前半部分などは活劇性も薄く、 人物の出入りを繋ぐ編集テンポも悪い為、短い時間を長く感じてしまう。 一方で、オリジナルからあっただろうショットもその充実ぶりからある程度察しがつく。 テーブル上でジプシーのダンスを踊る艶やかなカルメン(エドナ・パーヴィアンス)。モブシーンの猥雑とした活気。 邪魔が入って彼女となかなかキス出来ないチャップリン。 剣戟のコミカルで秀逸なアクション等々。 身も蓋もない云い方をすれば、彼の終生のパートナーともなるエドナ・パーヴィアンス との仲睦まじい絡みの全般であり、 自身の渾身のギャグシーン全般だ。 その釣瓶打ちとなる後半は、一気に映画を盛り返している。 バ―レスク(文芸作品のパロディ)とはいえ、悲劇「カルメン」の喜劇化それ自体が ラストのオチも含めて無理矢理感いっぱいだが、 ラストのツーショットで見せる二人の笑顔は幸福感に満ちて感動的だ。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2012-06-04 22:15:56)《改行有》

530.  ダーク・シャドウ(2012) 《ネタバレ》 アバンタイトルからベラ・ヒースコートが屋敷内に案内されるまでの流れは、あたかも彼女が主人公であるかのように思わせる展開だが、それは屋敷内の様子と登場人物を効率的に観客に紹介していくためのものであった事がわかる。 中盤からクライマックスにかけて彼女の影が薄くなるため、三角関係のドラマとしては些かバランスが悪くなってしまうのだが、そうした破綻とアンバランスさがバートン本来の病理的であやうい魅力と云えなくもない。 スタジオのしがらみが顕著な前作は、程よくユニークでウェルメイドで小器用で教訓的で無害でしかないが、本作の不健康ぶり・インモラルぶりこそ彼の本領に近い。 愛情と憎悪、煩悩と理性、異質な他者と一般人、その間で分裂するそれぞれのキャラクター。(エヴァ・グリーンの最期の表情の素晴らしさ。) 屋敷内や崖のシークエンスで印象的な、焦点深度の深い映像。(遠近を惑わすヒ―スコートと彼女の肖像画のパンフォーカスこそ、ラストの予告だ。) 伏線や整合性や現実的倫理といった小細工を取り払っているゆえに、作り手の特異な症候とその治癒への試みとでもいうべきものがバートン流「再構築」映画の中で際立つ。 [映画館(字幕)] 7点(2012-06-02 10:48:19)《改行有》

531.  ハンナ シアーシャ・ローナンと、彼女が道中で知り合う少女がテントの中で横になりながら語り合うシーンは、二人が向き合っているはずでありながらカメラに対して二人が同一方向に身体を傾けているという、一般的にはあり得ない切り返しで撮られている。 同じく、走るキャンピングカー内でオリヴィア・ウィリアムズと対話する際もそれぞれ左右の窓際席の切り返しとなるが、 何故かどちらの窓外にも太陽光が輝いているという具合だ。 共に光の加減が見事な画面であり、自己との対話といったニュアンスを仄めかしたのか、ともあれ、整合性を無視した繋ぎをあえて選択している事は間違いない。 前半のICA施設のダクト、中盤のコンテナ置き場、後半の遊園地内といった舞台設定や、随所に現れる円形や回転のモチーフも含めて、映画に夢幻的な迷路感覚を呼び込むよう施された演出の一環だろうか。 縦横無尽の移動を絡めたバスターミナルから地下通路までの超ロングテイクや、太陽光の人物への当て方・屋内人工照明の印象的な用法といったジョー・ライト印の技巧も、その意味では効果を挙げている。 シア―シャ・ローナンの俊敏な疾走と、徒手格闘。そして、ケイト・ブランシェットの凄みは流石だ。 [DVD(字幕)] 7点(2012-05-26 23:57:54)《改行有》

532.  BLACK & WHITE/ブラック&ホワイト(2012) 計算された予定調和的な長回しほど撮影の裏舞台を想像させてしまい、説話にとっては妨げとなりがちである。 『ターミネーター4』でもそれが気取りにも見えかねない逆効果を生んでいたが、本作中盤でリース・ウィザースプーンが自室で音楽に合わせて踊り動き回る中、彼女の視界の外で部屋を物色するトム・ハーディ&クリス・パインの動きを組み入れた縦横無尽の移動長回しなどは、あえて作り手の段取り臭さを誇張したようなユーモアがある。 「荒唐無稽を真剣にやる」というドラマ内容と撮影スタイルが合致した相乗効果もあるだろう。 スタッフ・キャストの息の合った仕事ぶりを見せつけて心地いい。 そうした作り手の熱意を露呈させる長回しも、レンタルDVD店のシーンを始めとする様々な映画ネタも、一種のご愛敬。 それらの無邪気な作為性は明らかにシリアスパートの緊張感まで削いでいるのだが、それも狙いなのだろうから、アクションシーンの雑なカット割りに耐えつつひたすら予定調和を楽しむしかない。 対話劇のテンポ、特にヒロインの親友役:チェルシー・ハンドラーの話術は傑作である。 [映画館(字幕)] 7点(2012-05-04 03:16:05)《改行有》

533.  僕は戦争花嫁 戦禍の生々しく残るドイツの街並みを往くサイドカー。 その狭いシートに押し込められたケイリー・グラントとその横で颯爽と運転するアン・シェリダンの図が、このスクリューボール・コメディの女尊男卑を端的に物語る。 前半はドイツの農村の牧歌的なロケーションの中で繰り広げられる異性間闘争が軽妙で楽しいが、後半は結婚した二人と「男性社会的」組織との闘争となる。 狭いサイドカーや浴槽に押し込められ、ペンキ塗りたての柱に登らされ、さらには干し草の山に突っ込み、と散々な目に遭わされ続け、ベッドでゆっくり眠る事すらままならないケイリー・グラントの被虐の連続に、後半は笑いも少々弾けづらい。 その反面、結婚申請を邪魔した男性士官を派手に盆で殴り、グラントをリードしていくアン・シェリダンがひたすら痛快だ。 [DVD(字幕)] 7点(2012-04-17 23:54:22)《改行有》

534.  ドラゴン・タトゥーの女 音入れの工夫が際立っている。 映画は男女それぞれのシーンが交互に展開していくが、次のシーンからの音を前のシーンの最後に挿入する、いわゆるズリ上げが随所でシーン間の浸透とアクセントの効果を挙げており、長丁場のドラマをスムーズに繋いだ秘訣の一つだろう。 そして心臓の鼓動のような、環境雑音のような微妙な音響の活用。レイプシーンに重なる廊下の掃除機の不協和音、あるいは過剰なまでに悲痛な絶叫が前面に出ることで、画面に不穏の様相が与えられていく。 拷問シーンにかかる挿入曲「オリノコ・フロウ」によって不気味さを増す対位的な効果、静寂の丘に響き渡るライフルの銃声のインパクトなども絶妙だ。 オープニングとは対比的な叙情性に富んだ静かなエンディングのサウンドトラックがヒロインの切ない姿に被り、一際耳に沁みる。 一方では、写真フィルムの流れやルーニー・マーラの手際の良い仕事ぶりを表すハイテンポのカッティングが説話のリズムを創り出し、無機質な邸宅内の廊下を歩くダニエル・クレイグと資料室の書架の間を歩くルーニー・マーラの一体化された構図のクロスカッティングは静かな緊迫感を醸し出す。 サウンドのズリ上げ・ズリ下げだけでなく、構図的連続を擬したシーン転換の技巧も、交互に語られる二人のシーン間のモンタージュを滑らかにし、二人の関係性を映画的に強調する効果まで挙げており秀逸だ。 それら精密に設計された編集による緩急もまた音楽的と云える。 [映画館(字幕)] 7点(2012-02-24 18:34:54)《改行有》

535.  東京島 《ネタバレ》 導入部の大胆な省略と、蛇を捕獲する木村多恵のインパクトあるショットで一気にドラマに引き込む語りの妙は原作の出だしにも負けていない。 現代風刺や寓意性を殊更に強調しない節度も原作の精神の尊重だろう。 したたかと脆弱、善良と狡猾と、ヒロインのみならず個々のキャラクターも多面的かつ複雑な諸相を見せる点に、人間描写へのこだわりの意思が伺える。 キャストとは対照的に原作を始めとする主要スタッフには女性が多く、特に出産シーン以降は反逆光を活かして力強さと繊細さと色彩美を湛えた芹澤明子の撮影が印象的だ。 サヘル・ローズと木村が洗濯する水辺のシーンにおける水面の光の照り返し。 岩場の影で、生まれた赤子を懐に抱く二人のショットの自然な光。 後日談での、東京の夜景を背景にした食卓のキャンドルの暖かな灯りなどは格別に美しい。 窪塚洋介が背負う亀の甲羅のユーモアが秀逸で、10年後のエピローグにもさりげなく登場することで物語に映画オリジナルの膨らみをもたらしている。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-02-23 20:43:32)《改行有》

536.  婚前特急 「感情移入」なんてものを受け付けないスクリューボール(=常軌を逸した変人)的主人公を演じる浜野謙太の風貌とズレた台詞がいい。 一般性と特殊性が綯い交ぜとなったユニークなキャラクター造形だ。 拘置室の「壁」を挟んだ男女間の闘争は、スクリューボールコメディ(SC)第一号『或る夜の出来事』の「エリコの壁」の変奏とも云えよう。 それも最終的には恋愛の成就(女性の勝利)に帰着する点や、具体的恋愛表現をほとんど短いキスだけに留めている自主検閲的側面なども伝統的SCの王道を踏襲している。 四人が囲む会食シーンや、浜野のアパートでの取っ組み合いシーンを始めとする然るべき長廻しは、場の空気の変容を捉えるための然るべき個所で的確な構図とともに用いられており、巧みだ。 どこかアドリブ感も感じさせる吉高由里子の豊かな芝居も楽しい。 忍び込んだ浜野のアパートで大慌てする様などは最高だ。 [DVD(邦画)] 7点(2012-02-11 18:02:37)《改行有》

537.  チャールストン 球形の飛行船や類人猿の登場もユニークなルノワール唯一のSF映画、というよりほとんどダンス映画であり、何といっても大股開きで当時流行のチャールストンを踊る娘カトリーヌ・ヘスリングの奔放なエロティシズムにつきる。 女性のダンスは最初期の映画から登場する原理的かつプリミティブな題材であり、 本作の彼女はエジソンのキネトスコープに登場する『Serpentine Dance』(1895)のごとき振り付けで身体をくねらせ、脚を跳ね上げるのだが、より大胆な衣裳と野性的な動きがとにかく強烈だ。 球体から降りてきたジョニー・ヒギンスを尻餅つきながら興味深々に追いかけ回す彼女の動きがコミカルで楽しい。 やがて踊りによって意思疎通出来た二人のダンスセッションとなる。その即興感覚もルノワール的といえるだろう。 二人のダンスシーンに用いられるスローモーションとコマ落としもまた躍動感とリズムとエロティシズムを相乗させていい味を出している。 大らかな動きの楽しさに溢れた17分間だ。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2012-02-07 20:39:54)《改行有》

538.  東京のヒロイン 《ネタバレ》 劇伴音楽ではなく、流しのバイオリン弾きや轟由起子のピアノ演奏によるミュージカル演出。 森雅之と轟がデートする川沿いの公園からクレーンアップし、東京の夜景を俯瞰するカメラワーク。 バーの前の歩道でクリーニング店の配達員や潮万太郎が繰り広げるサイレント風&スラップスティック演出。 さらには横文字の看板があふれる街路の風情と、全篇に溢れるルネ・クレール風の洒落た味わいが楽しい。 会いたくないときには鉢合わせ、会いたいときにはすれ違いの連続の二人。そんな二人を取り持つのが「座席に置かれたハンチング」と花束という粋。 劇場でのすれ違いのカッティングや、写真や手紙のエピソード等はもっと工夫が欲しいところだが、潮万太郎のコメディ・パートはそれを帳消しにするくらい笑わせてくれる。 そして、香川京子が何度か披露するバレエのお辞儀(レヴェランス)も爽やかで可愛らしい。 菅井一郎のバーテンが、彼女に作ってあげたのはレモンスカッシュだろうか。 [映画館(邦画)] 7点(2011-12-18 20:28:37)《改行有》

539.  壁の破壊 『列車の到着』においては、画面左手前に向かって進入してくる列車と、右手前に向かって歩いてくる乗客たち。 『リュミエール工場の出口』においては、画面奥から左右両方向へと拡散してくる登場人物、犬、自転車。 そして『壁の破壊』では、画面右手に倒れる壁と、主に画面左前方に白く舞い上がる土煙。 ルイ・リュミエールはここでも、画面奥から手前に向かっての「放射状の運動」を演出する。 豪快な土埃のスペクタクルを観客に体感させる為に風圧の方向性までを的確に想定し、あえて埃を被る位置を選びとった、厳密な構図といえるだろう。 塀が倒れることで背後にあった光景が現れ、画面にはさらに深度が導入されることにもなる。 画面を「意味」として単に読み取っていくばかりの、あるいは3Dグラスという外部ツールに拠らねば奥行きを感知できない現代の大多数の観客にとっては「ただ」壁を壊す「だけ」という事象の意味でしかない1分弱のワンショット。 それを具体の画面としてひたすら図像的に捉える感性を持ちえたときに初めて、倒れる分厚い塀の質感や吹き上がる土煙の風圧やツルハシの槌音といった豊かなディティールを、時代を超えて触覚的に感知することが出来る。 生き生きとした人間の姿とアクションを映し出したリュミエールの作品は、「映画を観る」ことの原初的な快楽を改めて教えてくれる。 [ビデオ(字幕)] 7点(2011-11-27 18:55:55)《改行有》

540.  ウィンターズ・ボーン タイトルバックの仰角ショット。 絡まりあう黒い枝々の合間から光を放つ薄日のイメージが映画の中で象徴的にリフレインされる。 生活感を滲ます家屋の質感と、中西部の寒々しい外気を伝える自然光主体の画面の感触がいい。 一癖も二癖もある登場人物たちの実在感と凄味。その佇まいだけで、主人公を取り巻くシビアな生存環境を語りしめる。 その過酷さの頂点にあるのが、壮絶なリンチを受け、左頬を無残に腫れ上がらせたジェニファー・ローレンスの痛々しい「顔」だろう。 それでも尚、擦り切れたミリタリー柄のジーンズにハーフコートを羽織り闊歩する彼女のタフで凛々しい相貌が素晴らしい。 淀んだ暗い沼の水面に落ちる月光の冷たい光と、チェーンソーのモーター音が苛烈に響く夜を彼女は越え、父の形見となった白いバンジョーを弾く幼い妹・弟と玄関前に寄り添い合う。 その三人のショットはナイーヴさを宿しながらも心強い。[映画館(字幕)] 7点(2011-11-21 23:45:32)《改行有》

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