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561.  アフロ田中 《ネタバレ》 『モテキ』の絶叫モノローグが使いどころとバリエーションを心得て より効果的に使われているのに対し、 その二番煎じのようなこちらは終始一本調子であり、 終いにはいい加減飽き飽きしてくる。 そして、あくまで森山未來のアクションやダンスによって映画を弾けさせる 『モテキ』に対してこちらは松田翔太の顔芸と奇怪な挙動と、 原作由来だろうダイアログのギャグ頼みだ。 それはやはりテレビの笑いに近く、映画の笑いとは云えない。 蓮實重彦の『バットマンビギンズ』評ではないが、 自動車で並走しながらの愛の告白という絶好の映画的シチュエーションをつくりながら、 そこに流れる風景を画面に収めて走行感を出す才もないために 情動が喚起されることもない。シーンを停滞させ失敗している。 佐々木希の演技が不十分ならそれこそダンスの見せ場でも作ればよいものを、 その知恵もなく、単にファッション着せ替えのモデルでしかない。 彼女に関しては、かろうじてラストの上段蹴りのショットが救いである。 [DVD(邦画)] 3点(2012-12-16 23:44:40)《改行有》

562.  トラス・オス・モンテス 夕暮れどき、真直ぐに伸びる一本道を父親が去っていくのを見送る少女。 夕陽を背にした彼女の影が長く伸びている。 父親が小さな点となり、その姿が見えなくなるまで、 彼女は延々と立ちつくしながら何度も手を振る。 その何度か繰り返される小さな身振りと光の推移が、寡黙な時の流れを意識させる。 ラストの宵闇の中を走る列車の望遠ショット。 薄暗い画面の中に列車の吐く白煙が拡がり、滲んでいく。 ショットの長さがそうさせるのか、それとも静寂ゆえか、 寡黙な本作の中でもこの二つのイメージは特に鮮烈で忘れ難い。 ポルトガル北部の山岳地帯。 機織りのリズムや、川遊び、寺院での祈祷など、 映される風土、風物、衣装はそれぞれ極めてローカルでありながら、 同時にその情景は時代と場所を超えた普遍のノスタルジーをもって迫ってくる。 [映画館(字幕)] 7点(2012-12-11 22:14:05)《改行有》

563.  巨神兵東京に現わる 劇場版 加東大介『南の島に雪が降る』の中で、南方戦線の兵士たちは、 演芸分隊による作りものの雪や柿に涙する。 実物の雪でないのは明らかであるにもかかわらず彼らの心を打ったのは、 そこに人の手作りによる文化の感触があったからではないか、と長谷正人氏は云う。 CGアニメーションの動画が最新技術によって いかに滑らかに軽やかに表現されようが、 コマ撮りアニメの独特のタッチと動きがいまだに新鮮さを失わないのは 実物らしさの問題ではなく、丹念な手作りの感覚の中から 作り手の人間性や心意気が伝わるからこそだろう。 コストだけでは計れない贅沢な職人技、だからこそ現在的な意義がある。 作り手の後ろ向きな回顧趣味では為し得るわけが無い。 光線に貫かれたビルの被弾部が一瞬間を置いて溶解し、炎が噴出する。 寺院をなめた背後の建築物が爆発すると共に散乱する大小様々な破片。 舞い上がる火の粉。巨神兵の姿を揺らめかせる陽炎の効果がさらに禍々しい。 崩れ落ちるビルは、内部まで高精度に作り込まれており、 安っぽい発光を用いないので鉄塊の物質感は満点である。 細部に至る作り込みとハイスピード撮影との相乗効果が生み出す即物感と重量感。 それこそが、CGには出せない具体的な味の最たるものだ。 [映画館(邦画)] 7点(2012-12-09 02:05:02)《改行有》

564.  人生の特等席 《ネタバレ》 ベネット・ミラー『マネーボール』では裏方に徹する功労者を表わすように、 ブラッド・ピットの像は濃い陰影が強調されていた。 イーストウッド&トム・スターンなら更にロー・キーかと思いきや、 ストーリーの明朗さとロケーションの解放感にあわせて、 ポジティヴな画調が爽やかだ。 暗闇が活かされるのは、 エイミー・アダムスからの電話をそれと知らずに悪態をついてしまう イーストウッドを照らすランプの灯や、夜の漆黒の湖、 忌わしい過去を仄めかす短いフラッシュバック映像くらいである。 その回想の中に一瞬現れる彼の禍々しい形相はやはり 『タイトロープ』からのものだろうか。 スコープサイズを活かした横並びの対話劇。 それを捉える奇を衒わない構図と編集。その堅実な語り口に品がある。 視力の衰退した静のイーストウッドに対し、 ビリヤードにダンスに投打にと、颯爽とした動が 魅力的なエイミー・アダムスが彼の球を打ち返す。 楽しげにグラウンドを駆ける娘と、彼女を眩しそうに見る父親。 そこで緩やかに旋回するカメラと、 静かに流れる音楽によって豊かな情感が流れてくる。 そして、彼女は何の躊躇もなく携帯電話を軽やかに投げ棄てる。 その決断のアクションのシンプルさ・軽快さこそが素晴らしい。 [映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2012-12-04 07:16:12)《改行有》

565.  悪の教典 《ネタバレ》 屋上でキスをする伊藤英明と女生徒の前景と、後景の校舎。 人影は映らないものの、間違いなく誰かに見られている、という感覚で シネスコ画面が効果的に活かされているが、 どちらかといえば広がりよりも、奥行きや深さを強調した画面が印象的だ。 (吹越満の乗る電車車両の揺れる悪夢的感覚。 廊下奥や教室奥の外光で薄暗く浮かび上がる伊藤の姿など) 一方で、AEDレコーダーや救助袋の伏線シークエンスなどは あたかも取ってつけたようで、 回収地点でかえって作り手の逆算が露呈し、大いに興ざめである。 これなら、余計な伏線など無いほうがよほど気が利いているし、 インパクトもあるだろうに。 回収のための伏線張り。それは単に観客に辻褄合わせの納得を促すだけで 何ら驚きをもたらさない。 ついでに、盗聴器を仄めかすコンセント口等のショットのくどい反復や、 伊藤の来歴のフラッシュバック。 これらの無駄を省いただけでも、 110分程度には引き締まったはずだろう。 [映画館(邦画)] 7点(2012-12-02 22:56:39)《改行有》

566.  希望の国 警察官と揉み合いながら、封鎖を突破していく清水優と梶原ひかりのロングショットや、 村上淳と神楽坂恵の記念写真といった、ふとしたシーンの軽妙なユーモアがいい。 生真面目一辺倒の『生きものの記録』路線でないのが救いだ。 『ヒミズ』の貸ボート店のソファも良かったが、本作の縁側や花壇や牛舎なども、 身近な生活空間が魅力的で切実な舞台として映えている。 背景の花と手前で打ち込まれる杭を組み合わせたショットなど、 意味性が強く観念的すぎる箇所も多いが、 逆光を効果的に使った白バックのシンプルなショットが要所要所で印象強い。 花壇中央にそそり立つ立木を包む光。 夏八木勲への感謝を電話で伝える神楽坂恵を包む光など、 今作の園子温はかなり照明に意識的である。 あるいは、透明ビニルシートを背景に父親に電話する中村淳の横顔。 一面の雪の中で踊る夏八木勲と大谷直子の夫婦の楽しげな様。 いずれも白をバックとした画面が、人間の像を一層引き立てている。 [映画館(邦画)] 8点(2012-12-02 22:55:51)《改行有》

567.  北のカナリアたち 《ネタバレ》 パズルの如く図式化しながら構成を練っている脚本現場が目に浮かぶようだ。 例えば、唐突に挿入される小池栄子の不倫のエピソードなどは、 恋愛のままならなさといったものを弁明するために安直に取ってつけている事が 見る傍から判ってしまう。 つまり、彼女は程よく込み入らせたストーリーの辻褄合わせの都合から 象られたキャラクターでしかなく、単なる説明の道具でしかない。 そのように頭でつくった露骨な作為が見えてしまうと、 当然ながらその人間味などは薄れ、 彼らの合唱も単に上手い歌でしかなくなってしまう。 様々な歩行や移動のアクションで何とかバリエーションをつけているものの、 吉永小百合と各生徒との再会をことごとくワンパターンな台詞とリアクションで 反復させてしまう芸の無さは救いようがない。 いかにも日本アカデミーあたりが撮影賞を与えそうな、 いかにもの絵葉書的景観ショット、 助演賞を与えそうな森山未來の吃音演技がまた打算的な感じが勝って心に響かない。 さらに、いかにも時宜にかなった優等生風のメッセージからして、 作品賞あたりも目論んでいるかも知れない。 [映画館(邦画)] 3点(2012-11-26 07:47:49)《改行有》

568.  009 RE:CYBORG CGを介してアニメに近づいていく実写映画と、同様に実写に近づいていくアニメ。 本作における人物やメカニックの動作も照明と陰影のかけ方も、 いわゆるリアリズムが志向されており、アニメ的なデフォルメされたアクションや 構図は時折に差し挟まれるといった感が強く、 正直のところ(CG)アニメーションであることの必然性や戦略は見えづらい。 ビル爆破、核爆発、サイボーグの特殊能力といったCGスペクタクルも、 現在なら十分に実写画面に加工することが可能なわけで、 そこをあえてセルアニメーション風でやるからには、アニメならではの特性がもっと欲しい。 そして、作中の核爆発などが単に小奇麗な光とスピード感による スペクタキュラ―な見世物でしかないのはかなり気になる。 人間不在のカタストロフィでは何の感慨も起きようがない。 平和やら善やらを語りながら、そこに焼かれる人間の痛みも悲惨も まったく描けていないのは、CGアニメという手段の問題ではなく 視点と想像力の問題である。 記憶の操作に関するあからさまな説明台詞など、脚本も無駄が多い。 [映画館(邦画)] 3点(2012-11-08 01:05:29)《改行有》

569.  ガメラ3 邪神<イリス>覚醒 《ネタバレ》 赤道付近の密林から、京都駅構内、そして生命体内奥へと舞台を狭めていくように、 物語においても画面においても、拡がりよりも深さと垂直性が志向されている。 人間が怪獣を見上げる視点。その仰角もシリーズ中で最も大きく、 ほとんど真上を見るようなショットの多用によってスケール感が出されている。 渋谷のシークエンスでの、デフォルメ造型されたガメラの巨大な足が キャメラの眼前に迫るショットのパースなどは絶品だ 。 ミニチュアセットでは貧相になりかねない「火炎」の合成への 果敢な挑戦と成功にも拍手したい。 炎や破片、逆巻く細かな雨滴のスペクタクルも圧倒的だ。 特撮映画は、記憶に残る物語など無くとも、 強烈に印象に残るショットさえあれば十分に勝ちと云って良い。 ラストの炎に包まれる京都の超ロングショットも、 まるで『関の彌太っぺ』のように感動的だ。 [映画館(邦画)] 8点(2012-11-05 22:14:39)《改行有》

570.  アウトレイジ ビヨンド 『アウトレイジ』の主要な顔でもある黒塗りの車体と、 北野映画の「海」とが組み合わさるタイトルバックから一気に惹き込まれる。 前作にも引けをとらない俳優陣の面構えの強さと、 暗闇に浮かび上がるブルーがかった街路と黒塗り車の光沢の艶。 舞い上がる土埃。そして暗転した画面に響く銃声もまたフェティッシュな感覚を纏う。 今回はどのように煙草を使うかと見ていれば、 「煙草は止めた」との台詞で主人公の変化を提示し、 新井浩文・桐谷健太二人の遺影の前に置かれた二箱の煙草のショット一つによって、 乾いたドラマの中にさりげなく情緒を潜ませるあたりが熟練である。 ほとんど顔を見せない高橋克典の身のこなしも凄みがあり、いい。 映画の締め方にも痺れる。 [映画館(邦画)] 8点(2012-11-04 21:32:51)《改行有》

571.  エクスペンダブルズ2 序盤でのブルース・ウィリスとシルヴェスター・スタローンの対話を、 それぞれ別撮りしたかのような単調な切返し編集で焦らしながら、 シーンの最後ではしっかりと二人を横並びに収めてみせるあたりが憎い。 複数のスターを同一画面内にどう配置し、どういうアングルと距離で引き立てるか。 如何に編集で邪魔せずに、ジェイソン・ステイサムが「classic」と呼ぶ スター自身による体技をフルショットで見せるか。 そうした見得の切り方、ケレンの利かせ方が前作より格段に良く、 静のシーンを短く配置した緩急のバランス感覚もいい。 その静の中にも、朝霧・硝煙・葉巻の紫煙の動が演出され、 粒子の粗いザラついた感触の残る画面によく映えている。 そして、重低音の銃撃と爆発も祝砲と花火のように華々しい。 [映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2012-10-24 07:57:14)《改行有》

572.  ボーン・レガシー 《ネタバレ》 序盤、二階建てのレイチェル・ワイズ宅の外壁を身軽に登ったジェレミー・レナーが、 階上の採光窓を蹴破って二階廊下の侵入者を拳銃で狙撃する。 家屋の構造と空間を活かした、アクション映画らしきアクションは後にも先にもこの1ショットのみと云っていい。 それ以外は、前三部作を踏襲した高速カット割りがことごとく映画の運動を殺す。 マニラロケによる車線無視の乱雑なカーチェイスも頑張ってはいるのだが、 そこで終わりでは締まらない。 少しは徒手格闘の見せ場も無くては、敵暗殺者の脅威が際立たないだろうに。 何よりも、延々と続く近視眼的なアップの連続、その芸の無さが耐えがたい。 [映画館(字幕)] 3点(2012-10-21 23:06:17)《改行有》

573.  ハンガー・ゲーム 表情のアップを主体とする手持ちカメラは、 ヒロインの主観に寄り添うという趣旨なのだろう。 舞台上のインタビューのシーン、弓を引くシーンの接写では それなりに効果を見せるのだが、全般的に1ショットが極端に短く、 寄りすぎ且つ不安定で、とにかく見苦しい。 折角のジェニファー・ローレンスの魅力を削いでしまっている。 撮影監督トム・スターンであるにもかかわらず、 マスターショットの不足で場の状況の説明すら覚束ない始末である。 人工の猛獣の襲撃や、格闘場面などでは、カメラの振り回しすぎで 肝心の俳優のアクションも判然としない。 本来なら、森の中を人物が疾走するショットなどは アクション映画の格好の素材のはずなのだが。 語りも冗漫すぎる。この程度の内容で、143分は無い。 [映画館(字幕)] 3点(2012-10-19 06:27:23)《改行有》

574.  アイアン・スカイ 月面の硬質な近未来空間と、黒づくめのユニフォームを始めとする 旧態依然とした第四帝国の武骨なレトロ感覚。 両者がモノクロ画調の中でよくマッチしている。 そのナチズムの形式主義を茶化したギャグは ルビッチの『生きるべきか死ぬべきか』を少し思い出させてそれなりに面白いけれど、 こちらは若干くどい。 クライマックスの決戦ではヒロイン:ユリア・ディーツェを もっと活躍させる事が出来たはずだし、 クリストファー・カービーとの協調と連携も淡白すぎる気がしないでもないが、 二人の微妙な関係性は本作の面白味だ。 宇宙間戦闘のSFXも健闘している。 [映画館(字幕)] 8点(2012-10-16 07:25:38)《改行有》

575.  恐怖分子 夕景の街中にあるガスタンク。十字の格子が浮かび上がる部屋。木々のざわめき。 半透明なレースカーテンの白の揺れ。風にはためく、壁に貼られたモノクロ写真。 何気ない風景のようでいて、その佇まいだけで不穏な気配を濃密に湛える画面の 息遣いがことごとく心をざわつかせる。 そして人物の表情が見えるか見えないかの半逆光の加減が絶妙で、 その無表情と陰影はキャラクターの心理を読み取らせない。 ゆえに本作は、物語的にも画面展開的にも全く予断を許さない。 それだけに、突発的な暴力が炸裂する刹那のインパクトは見る者を戦慄させ、 静かに流れ出す『煙が目に沁みる』のレコード音の情感に 訳も分からないまま心を動かされてしまう。 80年代の空気をすくい取りながら、まるで古さを感じさせない。 [ビデオ(字幕)] 10点(2012-10-06 00:04:09)《改行有》

576.  おおかみこどもの雨と雪 映画に登場する母親の子育てのスタンスを批判するのは実に容易い。 だが、フィクション映画の登場人物が賢くあるべき必要などまったくない上、 子育ての正論などそもそも映画とはなんの関係もない。 人間が不完全で愚かなのは当たり前の話。 あいにく、こちらはご立派で正しい子育て論など アニメーション映画に求めてはいない。 作り手が試みているのは、主人公が愚かであるなりに、間違っているなりに、 子への情愛とその試行錯誤を映画という動態の中でどう表現するかである。 愚直に読書に頼り、独学にこだわる未熟で愚かなキャラクターだからこそ、 睡眠不足で身体を泳がせる様、息を切らしながらの農作業、 涙と鼻水を流しながら瀕死の息子を抱き締める姿、 そして嵐の山中を必死に捜し回る歩みが愛しむべきものとなる。 その中で、『時をかける少女』でも不可逆性の象徴として使われた 坂道や勾配がアクションとドラマの場として活きてくる。 中盤の雪山を延々と滑降するシーンが作画的クライマックスとして印象深いのは、 そこにあるのが自立的な疾走感・爽快感だけでなく、 己の意思ではどうしようもない自然の力が作用しているからであり、 それが親離れのドラマ展開の予告ともなっているからだ。 そして細田印の蒼(空)と白(雪と雲)もまた印象的なシーンである。 [映画館(邦画)] 6点(2012-09-24 05:50:42)《改行有》

577.  リリオム 《ネタバレ》 自殺者として天国で裁きを受けるリリオム(シャルル・ボワイエ)。 彼が生前に妻ジュリー(マドレーヌ・オズレ―)を殴ったときの記録映像が 証拠として映し出される。 ドイツから亡命したフリッツ・ラングがフランスで撮ったファンタジー作品で、 表現主義的要素などは希薄だが、劇中のシーンが証拠映像として用いられるといった 趣向が「裁き」の主題系と共に渡米後の作品との繋がりも感じさせて面白い。 回転木馬上で出会う二人の、花一輪を巡る手のやりとりから、 リリオムがナイフを自分の胸に突き刺した瞬間、自分の胸に手をやるジュリーの手の動き、 そして運び込まれた瀕死の彼の手を優しく撫でる彼女の手の動きと、 相手への想いを語る手のアクションが全編通じてとても豊かだ。 ルノワ―ルが担当した音楽は、遊園地での陽気な歌の部分だろうか。 仲間だったリリオムの死を悼んで、その遊園地の面々が黙祷を捧げる静かなシーンや、 死んだ彼が夜空を昇天していく幻想的な特撮シーン、 ラストの二人の表情も美しい。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2012-09-24 05:44:32)《改行有》

578.  踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望 《ネタバレ》 『映画は映画的であるほどドラマから遠ざかる』と、 本広克行が尊敬しているらしい押井守が書いている。 ドラマの本質はダイアログと状況設定にあり、 映像的主張はドラマを停滞させるから、というわけだ。 バストショット主体の対話劇でドラマは十分に機能するが、 劇場用作品となるとそうはいかない。映画的な見せ場こそ肝要だからである。 となると、既に盛んに批判されている荒唐無稽なバス突入や、 織田裕二の直感的判断と疾走こそ、 ドラマ的には不正解、映画的には正解だと見る事が出来る。 合理的動機に拠らない活劇であり、スペクタクルだからである。 あるいは、膨大なエキストラを統制しまとめあげた署内セットのモブシーンの活気、 充実した空撮、盛り上げどころで目一杯活用されるクレーン撮影の快いリズム感、 そして事件解決後の織田と柳葉のツーショットに 適切に差し込まれた朝陽の演出なども同様だ。 一方で、戒名を巡るギャグやラストの織田の演説などは、 ドラマ的には妥当であり、映画的には妨げでしかない。 活字、言語が機能するシーンだからである。 そうしたドラマ―映画のバランスの中途半端さは、 テレビドラマを始点とするシリーズ映画ゆえの性質にも拠るのだろう。 ステマを含む局の様々なしがらみ、制約、ファンサービスにも折り合いをつけながら、 映画的こだわりが伝わるのが何よりである。 [映画館(邦画)] 6点(2012-09-17 22:19:28)《改行有》

579.  しあわせのパン いくら寓話とはいえ、この度を越してメルヘンチックで空虚で生活実感のない 主人公夫婦のキャラクターの空々しいあり方は何なのか。 いくら絵空事とはいえ、この度を越して退屈で幼稚で深みのない 妄想エピソードの漫然とした並べ方は何だろう。 生計であるとか労働であるとかは、ことごとくオママゴト以下の描写でしかなく、 山や湖は単に観光向けの小奇麗な風景でしかない。 そしてカップに注がれるコーヒーを、皿に盛りつけられる野菜スープを 単に真上から撮って良しとする安直なショットからは、 食の魅力というものがまるで伝わらない。 そもそも肝心のパンが大して美味しそうにみえないという、 褒めどころのない映画である。 [映画館(邦画)] 2点(2012-09-11 00:06:06)《改行有》

580.  プロメテウス 美術畑出身のリドリー・スコットは俳優以上に背景・セットを重視するあまり、 『ブレードランナー』を主演のハリソン・フォードが嫌っているというのは有名な話。 この作品もまた、主演俳優はひたすら無様に走り廻り、活躍らしい活躍もなく、 極めて魅力が薄い。 「デザインも映画の脚本」の弁のとおり、、 監督にとって主役は異世界のランドスケープと云っても良さそうだ。 従来からスコットは濃いバックライトとインセンス・スモークの活用、 そして奥行きのある構図取りによって三次元的な効果を創り出してきた。 ここで主にそれを担うのは山間の雲であり、巨大な砂嵐であり、 宇宙船の上昇と落下に伴う砂塵である。 ただ既出のデザインも多い上、3Dによる3Dホログラム映像といった趣向など、 そのままデジタル加工に拠っている部分もあり、 光と霧と建築物そのものを駆使して演出した『エイリアン』や 『ブレードランナー』の立体感の味わいにはどうしても欠ける。 即物的な迫力だけを狙った立体感ではつまらない。 [映画館(字幕)] 5点(2012-09-02 23:22:49)《改行有》

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