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41.  細雪(1983) 《ネタバレ》 いやーよかった。大阪弁でおっとりした吉永小百合も石坂浩二も。皆さりげない演技で心地がいい。そして失われてしまった日本らしさがこの映画の中にはある。人も家も服も道具も変わったいまの日本の良さって何があるんやろ。ふと自分の部屋を見渡して情緒の欠片も見つからないことに驚いてしまう。とまぁ危うく懐古主義に陥ってしまうぐらいの作品。全編通じてユーモアのセンスも良く、色使いもなかなか。作品としては140分で一段落ついたものの、昭和13年というとこれから戦争が激化するわけで、観終わった後になんともいえない哀しさが残る。唯一、最後の雪はもっと綺麗に撮ってほしかったけど[ビデオ(邦画)] 9点(2006-04-15 13:17:49)

42.  父/パードレ・パドローネ 《ネタバレ》 原作者の一人称プロローグという強烈な異化効果で幕を開けるこの映画はその教育的主題とともに牧歌的でありながら非実存主義的な感覚の二次的創作が安定的に織り込まれている。アコーディオンの音色をオーケストラの演奏として感じ取ることは言うまでもなく、「息子を殺してくる」と羊に告げ帰路を早足で歩く父親を捉えたあの俯瞰の移動撮影が妙に感動的なのもそのためだろう。引き離された2つの事物が反発し共振しながら近付いていくその様は、その動機がたとえ「殺す」ためであってさえもなお涙を誘う。[ビデオ(字幕)] 8点(2008-02-07 14:05:07)

43.  はなればなれに あまりに気楽な犯罪映画、あるいはあまりに原初的欲求に忠実な冒険映画である。自身『勝手にしやがれ』について、主題がなく、何をやってもいいそういった種類の映画だった と語っているように、物語の映画を作るゴダールは実に愉快である。ゴダールをして括弧は必要ないと言わしめる明々白々さとは愛したから愛し、金が欲しいから奪い、無茶がしたいからインディの真似事をするといった、映画的な、あまりに映画的な論理によって裏付けされてしまう。美女と犯罪、シャープな画面と無為な会話や動作。優れたB級犯罪映画であり、偏愛の垣間見れる何とも愛しい作品である。[ビデオ(字幕)] 8点(2008-02-07 14:02:07)

44.  小さな兵隊 《ネタバレ》 アルジェリア戦争と当時問題視されていた拷問に関するゴダールからの問題提起。至って真面目な主題設定と取り組みであり、本人曰く「『勝手にしやがれ』後に、よりリアリズムに具体性に近づこうとした試み」でもある。主人公である小さな兵隊はフランス語を話す美しき外国人に語り続けるのだが、ここで重要なのは彼が正しいことも誤ったことも口にしている点だろう。議論の余地のある映画。観客が自分に疑問を投げかけることをその目的とする映画(これはまるでブレヒトの演劇理論ではないか!)。世界の混乱を国内の混乱を体内の混乱をありのまま提示し、しかし主人公を暗殺へと向かわせてしまうこの映画と未来の美学、倫理を戦わせてみる。そうして24倍の真実である映画の可能性を感じてみるのもまた愉しき体験である。それだけで途方もないような美しい画面は存在しないが、素早いパンや小回りの利いた話者の追跡は主題と撮影方法の合致といえるだろう。[ビデオ(字幕)] 8点(2008-02-07 13:59:33)

45.  ヘカテ ファム・ファタルを体現するかのような傑作である。だがキアロスタミほどは風や土や壁の呼吸を捉えていない。室内の、外からの照明が素晴らしい。畸形でない『ベニスに死す』なのだが、身体的にも精神的にも性への渇望が力強く、また映画に恵まれている。[ビデオ(字幕)] 8点(2008-02-07 13:58:48)

46.  中国女 《ネタバレ》 正真正銘主題の映画であり、提示の映画であるのだが、掲題に収斂されない輝きを持つ、サトエリによるところの良質の中国映画である(笑)音楽を聴きながらの別れ話など、主義に対して非常に実践的なのだが、背後で奥行きを打ち消す壁が彼らの空論を暴いており、おそらく作中最もサスペンスに富んだ教授との議論が背景の開かれた列車の窓によってなされていることもまた象徴的である。[ビデオ(字幕)] 8点(2008-02-07 13:57:58)

47.  汚名 《ネタバレ》 これと「めまい」はヒッチの作品史上稀有に堅実な傑作である。つまりはシナリオに支えられ、偉大な演技者たち(ケイリー・グラント、バーグマン、クロード・レインズ)に支えられ、無駄のないシンプルな外見を仕立て上げている。特に俳優に関して言えば、それぞれが目で語らしめる実力を備えており、実際ヒッチコックもこの作品に関しては目で語らせることを相当意識して作っている。ケイリー・グラントの真意の読み取れない奥深い眼、パーティシーン等でたびたび注視されるクロード・レインズの疑いの目、コーヒーの毒に気付いた際にバーグマンが見せた隠しきれない動揺の目。とりわけこのシーンではクロード・レインズ、母、バーグマン、それぞれの意図を反映した目のクロースアップが次々とカッティングされることで展開の変化を告げる素晴らしき映画の躍動に満ちている。この作品はいかにもヒッチコック風の視覚的エモーションの緊密性には縛られていないが、やはり随所でその鋭利な演出を見せ付けられている。バーグマンが鍵を隠し持つシーンがそれであり、積極的に転落へと向かうワインボトルのカッティングがそれであり、絶望のなか屋敷への階段を上るクロード・レインズ、その陰影の美しきシンメトリーの静謐な緊迫がそれである。 またクロード・レインズの最期を省略したことや、ブフカの死を見せなかったこと、バーグマンに対する遅効性の毒を考えてみても、発狂の瞬間よりもむしろその過程、溺れて死ぬまでの息苦しさをこそ描きたかったのだということもよく分かる。 [ビデオ(字幕)] 8点(2006-12-29 02:41:44)(良:1票) 《改行有》

48.  夜の蝶(1998) いずれの作品にも言えることだが、彼が時折見せる整理されたシンメトリーの無機質さにはらまれるテンションの迫力が凄まじい。それは定型化された映画文法ではあるのだが、その一方で隅において大事な演出をしたりするのだから、彼がどれほど画面を意識し、画面を最大限に生かそうと徹底しているかがわかる。ラストショットで右端奥の鏡に女たちが映っていないという物静かな語りはいい例である。 これはフェミニズムな作品である。無機質である“物”が動き出すというアイロニーが問題なのではない。男社会の中で無機質に仕立て上げられた“女”が一時の生命を与えられるという強烈なアイロニーが問題なのであり、だからこそ男は有機的(実写)であり、だからこそ女たちの踊る姿はこれほど幻想的なのである。 [DVD(字幕)] 8点(2006-12-29 02:40:29)《改行有》

49.  blue 《ネタバレ》 魚喃の描く線は細い。いや実際は筆圧の強い画風なのだがその潔さゆえに細くさえ感じられるその線と、限りなく排除された背景はそのある種の詩的世界を構築しているし、その細い線で描かれた人物の顔は豊かであり個性を持ちながらも、ある種の匿名性を帯びている。「遠藤」や「桐島」は単なる記号に過ぎない。記号に過ぎないからこそ、その名前が発された時そこには虚しさの空白が流れ込み、また自らを混同せずにいられないのだと私は思う。 さて映画はどうだろう。ここでの問題はもちろん市川実日子なわけだが、私はこの顔を見せられた瞬間「桐島」が記号ではなく名前になるのを感じた。美的感覚ではなく詩的感覚の問題である。 だがまぁ魚喃の言うようにこの作品は双子ではなく“いとこ”か“はとこ”なのだから仕方ない。独立した個としての評価に移るとしよう。市川実日子を採用した理由は間違いなくドラマティック性の拡大にある。つまり桐島と遠藤との関係性に見た目にも明らかな優劣を施すことによってその関係性の変化(厳密に言えば入れ替わり→変化)を強調するためである。そしてそれによって桐島が絵画に打ち込むという新しい情動を生み出し、岡崎京子から引用したと思われる庭での水撒き、浄化という素晴らしい映像言語的展開にも立ち会えたわけであるから、個として捉えた場合あながち外れた選択でなかったことは確かである。加えて、対比を求める強い嗜好がこの監督にはあるのだろう。極力自然光で撮影された画面は黒を強調させ光を共存させる手法であるし、固定を軸にし長回しされるカメラと間の豊かな会話の静けさを明らかに強調するサウンドトラック(雑音)、といった具合である。その数々の対比は機能し合い、映画として完成されていたわけだが、最後に至ってその執拗なまでに貫いてきた対比の法則を捨て去るところがこの監督の度量というか、素晴らしいところである。あのホームビデオのブルーはそれほど巧妙に観客の脳に焼き付き、原作blueの冒頭の一節をまるで海が映像言語を持って語らしめてしまっているかのようである。   “濃い海の上に広がる空や 制服や 幼い私達の一生懸命な不器用さや      あのころのそれ等が もし色を持っていたとしたら それはとても深い青色だったと思う。” [ビデオ(邦画)] 8点(2006-12-29 02:38:04)《改行有》

50.  裁かるゝジャンヌ 言うまでもなく映画史にその名を刻むクロースアップの映画なのだが、問題なのは顔のクロースアップによって構成されているという点にある。裁判という言語的な題材をサイレントで撮る。顔で撮る。表情で撮る。それはけして非言語的ではなく極めて言語的な試みである。精神的事実を、魂を、敬虐に語るには表面的な言語では限界があり、表情という抽象性にこそ術がある。ただの切り返しショットではない。精神性を抉り出すかのようなローアングル、行き交う視線、静観するハイアングル。室内にも拘らずあまりに動的な映像は言語的積極性に溢れており、そのモンタージュによるところの動は火刑にいたって至高のものとなり、情動を与える。その精神性を唯一の術によって顕在化した非のない映画である。 [ビデオ(字幕)] 8点(2006-12-29 02:25:41)(良:1票) 《改行有》

51.  勝手にしやがれ 洒落っ気だとかアンチ・ヒーローだとかかっこいいだとか、そんな陳腐な言葉でしか観客に評価されなかったゴダール。映画という概念の捉え方、映画の本質へと向かう姿勢を示すために、教示的姿勢を気付かせるために、大衆性を排除せざるを得なくなってしまう、これ以後のゴダール作品の方向性を決定付けてしまった呪われた一本である。映画は物語の善し悪しでは決まらない。たしかに物語が良質と思える傑作は多くあるのだが、それは物語を映画的に解体し語っているから面白いのであって、決して物語が面白いのではない。 「8数えるまでに笑わなかったら絞め殺す」 パトリシアの部屋で行われる長回し、アフレコによって自由に一瞬のジャンプカットを挟み、不必要にパンして凱旋門を映したり、奇跡的に美しい車のライトを映したりする。それは要するに阿呆でも気付くところの洒落っ気ではあるのだが、その洒落っ気だけで映画が映画として成立することが重要なのであり、そのことを意識的に観客へ教示しようとする姿勢こそゴダールの特別たるゆえんなのである。映画を構成する要素に「物語」なんてものは存在しない。人、モノ、映像、音、言語、これらを使って物を語ること、それが映画なのである。 [ビデオ(字幕)] 8点(2006-12-29 02:24:16)《改行有》

52.  天国の日々 《ネタバレ》 映像が綺麗な作品? そうだ、だがこの作品は「映像がキレイ」で片付けられない。そう、映像集ではないのだから。皆さんはあの狂気の瞬間を目に入れただろうか。保ってきた人間性が崩壊する瞬間に訪れたこの映画の躍動を。幾度となく映されていた動物に虫がついて回るという変化を。 イナゴをつかまえて笑っていた少女がそれを叩き出したその瞬間。イナゴの生々しいクロースアップ。はっきりと見えてしまった瞬間。農場主の気品ある穏やかな顔が歪むその瞬間。 画が画でなくなり、ショットがショットでなくなる。 全てが映画へと還元されるその瞬間。  「世の中には持てる者と持たざる者がいる。」少女のナレーションが語る。持てる者がいる以上、持たざる者について回る劣等感。拭い去ろうとすることが持たざる者の人生なのか。 であるならば、狂気とは何と身近なことだろう。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-09-24 12:29:57)(良:2票)

53.  シャンプー台のむこうに 《ネタバレ》 余命少ない人間が崩壊した家族を取り戻そうとする。いわば定番のプロットだが、美容師コンテストと絡ませることで映画としての魅力をそちらに転嫁し、佳作となり得ている。シドニー・ポラックはこういったごまかし気味に良質のドラマを仕立てるのが巧い。「自分で家族崩壊させたくせに何をいまさら・・・プゲラ」といった批判を正面から受けずにすむ術を知っている。この作品では洗練されたスタイリングという期待を裏切らず(サンドラの変貌ぶりは見事)、ベタだが心躍らされる音楽、次第に姿を変え調子付いてくる市長ら脇役の魅力がそれであり、「せめて男と逃げるべきだ」「栄冠を隠す気か」といった粋な台詞も勿論それである。   というか何というか、レイチェル・リー・クック。 一回戦でヘアブローされる洗練されたレイチェルもいいけど、何といっても最終戦直前、自ら髪を切り捨て、短髪、無言で父親を見詰めるリー・クックは別格。小動物のような骨格と、つるんとした肌、怯えながら責め立てるような少し潤んだ瞳。 あぁ、レイチェル。 あぁ、リー・クック。そんな目で見ないで。そんな目で見られちゃったら僕はもう・・・ っと、危ない危ない。 もうちょっとでシャンプー台のむこうに行ってしまうところやった。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-09-24 12:28:05)

54.  汚れなき悪戯 《ネタバレ》 子供を捨てちゃうような母親は地獄に堕ちちゃっているので、マルセリーノが天国に行っても会えないんじゃないか とか 病の少女にこんな話したら、私やっぱ死ぬんだ、って落ち込んでしまうんじゃないか とか考えてしまうおれとは対極に位置しそうなこの作品。 がしかし、真相を突き止めるべく潜んでいたお粥さんの指が組まれるその瞬間ばかりは崇める心を共有し、「マルセリーノが あの子が 神に召された」という台詞で信仰が少しだけ沁みこんでくる。汚れなき天使が呼び起こす理解を超えた奇跡。そして汚れなきものがそれを語ることにより私たちが胸を震わす小さな奇跡。この作品は正に神の僕たる修道僧として、忠実な語り部としての立場を保っている。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-09-24 12:26:11)(良:1票)

55.  スターシップ・トゥルーパーズ 《ネタバレ》 確かにこの徹底ぶりを見ると勘違いする観客や批評家がいても仕方がない。“これは逆に反戦映画なんじゃないか”と。 だが違うだろう。バーホーベンは語っているではないか。武力でしか解決できない状況、武力によって重ねられた歴史があるという事実を。アメリカの積極的介入をただ純粋に批判できるような能天気な人間には理解が及ばないだろうが、そう、これから先、全生物が滅亡するまで武力はなくならないのだ(否応なく)。  そしてもうひとつ。「共存はできないのでしょうか!?」「両親を殺されたんだ。皆殺しにしてやる!」 虫が相手とは言え、この台詞に共感してしまうという事実を。 人間の命は尊いと言う。なぜ?――考えるからだ。だが、考える虫の命を尊いとは思えまい。空腹をシンナーでごまかす貧窮国家の人間の子どもは救っても、空腹で農作物に手を出す虫は救うまい。 適当な論理や道徳という脆い柱に支えられた平和主義。バーホーベンはただその現実を誇張し、映し出したに過ぎない。惜しみのない虫の大群。惜しみのない裸体。惜しみのない殺戮描写。恥じらいを感じさせないヒロイック。定石を貫くストーリー展開。 反戦?昂揚?知るか、んなもん。でもお前ら、こんなん好きだろ!? おれにはそんな声しか聞こえない。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-09-24 12:20:33)

56.  田園に死す 《ネタバレ》 田舎を、田を、畑を母を、切り離そうと考えるばかりに、土着的な人格、習慣や因習を卑しいものと捉えすぎる、また作品内に取り込みすぎている嫌いがあるが、それもまた寺山の回帰への抵抗と考えれば可愛らしいものである。 過去を捨てるということ、過去があり現在の自分があるということ、記憶(映画)の中で母を殺し、故郷を捨て現在の自分と異なる自分を求めたこと。思い通りに動いてくれない20年前(記憶の中)の自分、映画(記憶)の中ですら田園を捨てることのできない寺山、少年の童貞を奪うことで父なし子を捨てさせられた復讐となし村を捨てようとする女、息子を捨てない母、世を捨てる男女。 雛壇は川を流れ、空の色は明暗を彷徨う。暗闇で映えるタバコの煙。支配する赤。支配する舞台装置。新宿区新宿字恐山。魔術はまだ完成を見ぬが、それでも尚頭一つ抜けた演出の才。寺山修司とは、事件である。[ビデオ(邦画)] 8点(2006-09-24 12:15:39)(良:1票)

57.  赤い風船 《ネタバレ》 ピカピカの大きい風船が灰色の街並みに赤く映える。 犬のようになつくバルーン。先生をおちょくるバルーン。狭い路地で左右の壁にぶつかりながら少年と走るバルーン。 そして無音の中で輝きを失うバルーン。 悪童たちに仕返しするわけでもなく、ただ、少年と空をゆく。 何と優しい。 何とファンタジー。 もしこのラストが、悪童たちの首をくくって空に飛んでゆく画だったら・・・それはそれで面白いが。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-05-18 01:17:33)(笑:3票)

58.  ラルジャン 《ネタバレ》 行き過ぎたリアリズム作家ロベール・ブレッソンの魅力がここぞとばかりに詰まった良作。淡々とした静の演技と画作りで瞬間的な緊迫感や抑揚を連続させる演出力には驚くばかり。斧とピアノとグラスと犬の鳴き声だけで、ありのまま映し出す以上のものを生み出す。ほんと無駄がない。 一枚の偽札が引き起こす悪の連鎖といったそそられる展開。連鎖に巻き込まれた青年は出所後に優しい老婦人の世話になるが、結局殺して、金を奪う。優しさや無償の愛も、金という絶対的物質にはかなわない。――と、ここで一つの結論に達する(青年の心の中でも)わけだが、その後青年は自首をする。これって矛盾しているのではないだろうか?すぐに自首してしまうぐらいなら、彼の行動は『結論』から導き出されたものではなく、ただの『衝動』であったと言わざるを得ない。だが、わざわざこんなラストカットを入れたからには何かしらの意図があったに違いない。自首したほうが画的にも分かりやすいでしょ、ってな安易な考え方ではないと信じたい。意図があるとするならば、これは、先ほどの結論に疑問を投げかけていることに違いないだろう。つまりブレッソンの出した結論はこうであるはず → 優しさや無償の愛も、金という絶対的物質にはかなわない・・・のかなぁ?[ビデオ(字幕)] 8点(2006-05-12 16:18:11)

59.  恐怖の報酬(1953) 《ネタバレ》 序盤のかったるい展開が見事に活かされている。この暑苦しい土地を抜け出すには高い金払って飛行機に乗るしかない。だがこの土地に仕事なんてほとんどなく、あっても飯が食えるギリギリの額しか貰えない。絶望感にみちた男達を丹念に描くことで、危険への挑戦にリアリティを与えている。マリオと同居人ルイージの間に、マリオと同じパリ生まれのジョオが入ってくることで生まれた妙な三角関係も、ジョオの強気で自信に溢れた行動も、緊迫した状況での人間ドラマに深みを与えている。後半。ニトログリセリンの威力はすでに視覚を通して伝えられているので常に緊張に支配される。10km/h以下か40km/h以上でしか走れない波板で体を温められ、次に岩壁での切り返し。バックしすぎやーー!と叫び、横滑りに、ちょっ!と呟く。さらに石は飛散するわ、巻きタバコは飛ぶわ。 ジョオはヘタレになるし、マリオはキレる。マリオとルイージは仲を取り戻す。そしてラスト。調子に乗った蛇行運転と、安居酒屋でのダンスがクロスカッティングされ・・・そして・・・まぁ・・・さすがにこれは王道すぎる、というかやりすぎやけど、ご愛嬌って事で。 ただやっぱり、ルイージが導火線とめるとか言って走ってくのは無茶しすぎ。あと「この仕事をやり遂げた奴を見たことがあるが、帰ってきた時には髪が真っ白になってたぞ!」って台詞には爆笑した。漫画じゃねぇんだから。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-05-12 10:20:15)(良:1票)

60.  生きるべきか死ぬべきか 《ネタバレ》 展開の再活用。ナチの会話が舞台上の演技だったという冒頭のシーンが、本物の教授と偽者のエアハルトのシーンに活かされる。本物の教授と偽者のエアハルトでの“収容所のエアハルト”のくだりが、偽者の教授と本物のエアハルトの会話に活かされる。この展開の妙をいちいち文章にするとややこしすぎる、っていうぐらいのめまぐるしい展開。ルビッチのような作家性の強い監督の稀少さ、偉大さは鑑賞した人にしか分からないし、鑑賞したならば誰もが感じるものだろう。 ただ、一方的なプロパガンダ色の強い作品だということも確か。ドイツ人だって槍でつけば血が出るし、飛行機から飛び降りるのもめっちゃ怖いからね。恋愛や下心や役者の夢、といったエッセンスで半分近くを構成し、色を薄め、さほど気にさせないあたりがこれまたルビッチの巧さでもあるわけやけど。夫への愛は明言し、それでもふらついちゃうっていう憎めない奥さんの役柄も素晴らしい。エアハルトの「シュルツ!」も絶妙。だが、本作に限らずルビッチの作品はリズムに余裕がなく、心地よく笑い続けることができない。展開が速いだけに、演技もしくはカッティングで緩急をつけてほしかったところ。  (追記) 戦時中に最も多く公開される映画が国策映画であることは周知の通り。自国を貶す論調の作品を公開することは検閲その他の面で非常に難しく、また勇気を伴うことかもしれませんが、他国を貶すことは実に簡単です。戦時中云々といった付加価値でこの作品を評価するならば、それをコメディという形で仕上げたということ、監督の狡猾さのみ評価されるべきでしょう。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-05-09 05:44:37)(良:1票)

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