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プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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41.  80デイズ 《ネタバレ》  「八十日間世界一周」をジャッキー主演で映画化したという、正に夢のような映画。  その分、ちょっとファンタジー色が強過ぎるというか、映画版「八十日間世界一周」(1956年)のリメイクと考えたら違和感が大きいけど、自分としては満足でしたね。  あくまでも、ジュール・ヴェルヌの小説を翻案した「ジャッキー映画」として楽しむべきなんだと思います(エンディングのNG集は無いけど)  物語の大オチ「日付変更線を越えたから期限に間に合った」は変えてないし、世界一周の旅を通して「金や名誉よりも大切な人を得る事が出来た」という、原作で一番大切な部分を、きちんと踏襲しているのも嬉しい。  随所にアクションも盛り込まれているし、急造飛行機以外にも「色んな機能を備えたステッキ」「車輪を付けた靴」など、ワクワクさせられるアイテムが揃ってるのも良かったです。  主人公格のフォッグを発明家キャラにした事に、ちゃんと意味があったと思います。  ゴッホやライト兄弟にウォン・フェイフォンなど、史実におけるビッグネームが登場する事と「俳優としてのビッグネーム」が登場する事をシンクロさせている作りも面白い。  この辺りは「さりげなくスターを出演させる」という1956年版の遊び心に通じるものがあるし、ただ真似をするだけでなく、一歩先に進んでみせた感もありますよね。  特に「ジャッキー・チェンとシュワルツェネッガーの共演」には胸躍るものがあって、本作が「夢の映画」である事を実感させてくれました。  万里の長城を徒歩で移動する場面なんかも、旅映画らしい切なさを感じられて好きだし、パスパルトゥーの故郷の描写も「懐かしき我が家に帰ってきた……」って感じがして、良かったですね。  敵と戦っている内に、自然とキャンパスに絵が完成しちゃう場面も可笑しくって、コメディ部分としては、ここが一番お気に入りかも。  そんな具合に、様々な長所が備わっている映画なんですが…… ・船を材料として提供した船長達が、その後どうなったかについて描かれていない。 ・「また腕が取れた」と笑いを取って終わるのは、ちょっと微妙。  といった具合に、終盤において短所が目立つのが残念ですね。  最後の最後で、テンションが下がって終わっちゃう形。  これって「終わり良ければ全て良し」の逆の現象であり、作品全体の印象も微妙なまま終わっちゃう訳だから、凄く勿体無い。  せっかく旅の途中までは楽しかったのだから、その勢いのままハッピーエンドまで駆け抜けて欲しかったものです。[DVD(吹替)] 7点(2021-04-15 17:19:01)《改行有》

42.  幸せがおカネで買えるワケ 《ネタバレ》  「ユニークで愉快な宣伝家族」を描いた品かと思いきや、死者まで発生する陰鬱な展開に吃驚。  とはいえ、急転直下に作品の空気が変わる訳ではなく、少しずつ悲劇を予兆させるのが上手かったもので、違和感は無かったですね。  序盤にて (この家族、なんか変だぞ?)  と観客に思わせる描写も丁寧であり、すっかり映画の中に惹き込まれちゃいました。  「偽りの家族の中で、主人公のスティーヴだけは本当の家族になりたがっている」という設定も絶妙であり、自分としては大いに感情移入。  チームが崩壊しかけた時「家族に問題は付き物さ」と場を繕おうとするも「家族じゃないわよ」と、妻役のケイトに素っ気なくされる場面なんか、凄く切なかったですね。  単純に「ケイトを愛しているから、本当の夫婦になりたい」というだけでなく「皆で本当の家族になりたい」と願っているのが、絶妙なバランスだったと思います。  それだけに、好成績を認められて他のチームと組むよう上司に命じられても、それを拒否して「今の家族と一緒に頑張る事」を選ぶ場面が、凄く痛快。  スティーヴとケイトが、失恋した娘を慰め「家に帰ろう」と促す場面も (偽物なんかじゃなくて、立派な家族じゃないか……)  と思えて好きです。  終盤にて、隣人のラリーが自殺する場面もショッキングだったし、そこからスティーヴが「ご近所さん」に真相を告げる流れも、不思議なカタルシスがあって良かったんですが……  そこが最高潮で、その後に失速しちゃったというか、ラストの纏め方が強引だったのが残念ですね。  「スティーヴとケイトが結ばれ、前々から話してたアリゾナ行きを実現させる」って形なので、この二人にとってはハッピーエンドなんだけど (……で、息子と娘は置いてくの?)  って事が気になっちゃうんです。  息子と「父子のような抱擁を交わして」別れる場面は良かったんですが、その分だけ (娘とはロクに会話もしてないけど、寂しくないのか)  って疑問も湧いてくる。  他にも「同性愛者な息子の恋人ナオミ」についても放ったらかしで終わってるし、どうも風呂敷の畳み方が拙かった気がします。  エンドロールにて「まだまだ他にも宣伝家族は沢山いる」って示すのも、後味が悪くなっただけなんじゃないかと。  個人的には「夫婦」ではなく、四人揃って「家族」としてハッピーエンドを迎えて欲しかったですね。  総評としては「隠れた良作」って感じで、充分楽しめたんですが……  一抹の寂しさが残ってしまう映画でした。[DVD(吹替)] 7点(2021-03-25 08:17:04)(良:1票) 《改行有》

43.  幸せになるための27のドレス 《ネタバレ》  オチの良さありきというか、それがやりたい一心で映画撮ったんじゃないかと思えるような品なんですが……  自分としては、過程も含めて楽しめましたね。  例えば、話の流れとしては冒頭の「タクシー運転手とのやり取り」が面白くて、もしや彼が恋人候補かとも思える感じなのですが、ちゃんと配役や演出でケビンこそが「ヒロインと結ばれる王子様」だと分かるよう作ってあるんです。  上司のジョージを(良い人だけど、何か違う……)と観客に思わせる辺りも絶妙で、たとえヒロインが彼に恋い焦がれていても、最終的に結ばれるのはケビンの方なんだろうなと、予想も出来るし、納得も出来ちゃう。  「先が読める展開」「安易な脚本」ではあるんだけど、ちゃんと丁寧に作られていたと思います。  主人公カップルに「結婚式が大好きな女性」と「結婚式が嫌いな男性」を据えて「相性最悪かと思われた相手が、実は運命の相手だった」というラブコメ王道の魅力を描いている点も良い。  それと「ドレスを着たままおしっこする際は、誰かの補助が必要」とか、男性からすると(そうなんだ)と思える場面があるのも良いですね。  女性向けのラブコメ映画だからこその、意外な魅力って感じです。  「要領が良くて、周りに愛される妹」「それに対する、姉としての複雑な感情」を描いている点も、女性主人公ならではって感じがして、これまた楽しめちゃいました。  終盤、主人公が妹の結婚をぶち壊して憎まれ役になる訳だけど、そこで親友がキチンと「こんなの間違ってる」と諭してくれるのも良いですね。  観客が主人公から心を離してしまうのを繋ぎ止める効果があり、ラブコメの親友キャラとして、良い仕事したなって思えました。  アン・フレッチャー監督は「あなたは私の婿になる」(2009年)も良作でしたし、こういう細かい部分の作り込みが自分好みなんでしょうね、きっと。  そんな本作の欠点は……  「姉妹が仲直りする場面に、無理がある」って事でしょうか。  ここに関しては、些細な部分ではなく、映画の中で重要な部分だと思うので、ちょっと看過出来ないです。  妹のベスは、彼女なりに色々考えて「ジョージに相応しい女性になろうとした」と告白するんだけど、具体的に何か努力したという訳じゃないので、説得力に欠けるんですよね。  その辺に関しては、作り手側も気になったのか「実は仕事をクビになったばかりだし、元カレに振られていたりで、妹も挫折を経験していた」「妹は妹で、姉にコンプレックスを抱いていた」と、様々な要素を用意してはいるんですが、どれも和解に至る決定的な材料とは思えず、残念でした。  せめて「喧嘩の切っ掛けになった母親のドレスについて、妹が謝る」って場面があれば、印象も変わったかも。  とはいえ、冒頭にて述べた通り「ブライズメイドを務めてあげた友達27人が、ドレスを着て結婚式に来てくれた」というオチが凄く良かったもので、鑑賞後の満足度は高め。  (これまでの主人公の行いは、無駄じゃなかったんだ……)って感慨を抱けるし、映画のクライマックスと共に完結する構成が美しかったです。  新聞記事に擬したエンドロールも御洒落だし、ラスト数分で一気に評価を高めてくれた一本でした。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2021-03-16 22:46:47)(良:2票) 《改行有》

44.  あなたは私の婿になる 《ネタバレ》  これ、好きですね。  「偽りの恋が、いつしか真実の愛へと変わっていく」という既視感満載なラブコメ物なのですが、適度なサプライズがあり、ちゃんと新鮮な魅力を味わえるんです。  その最たる例が「心臓発作で倒れる祖母」であり(これは彼女を死なせて盛り上げる展開か)と、観ていてまんまと騙されちゃいました。  それが「家族を仲直りさせる為の演技でした」と判明する訳だけど、全く嫌味が無いし「悲劇を回避出来た」「お陰で皆が仲良くなれた」という形の嘘なんだから、不快感が無いんですよね。  「観客を騙す映画」って沢山あるけれど、ここまで気持ち良い騙され方をした例は、ちょっと他に思いつかないくらい。  アンドリューの元カレが復縁を迫るのかと思いきや「このままマーガレットと別れても良いの?」と言い出す場面も、凄く良かったですね。  本当に脇役が良い人達ばかりだから、彼らに支えられる形で主人公二人が結ばれる流れが、観ていて心地良い。  そんな「サプライズ」が巧みな一方、序盤でヒロインのマーガレットが「泳げない」と言う伏線があったら、ちゃんと後に溺れそうになる場面を用意したりとか、観客の予想や期待を裏切らない構成になっているのも、お見事でした。  あとは、男性目線で観ると「美人な女上司の弱みを握り、言いなりにする」という邪な願望を満たす内容になっているし、女性目線で観ると「実家が金持ちの彼と結ばれる玉の輿展開」になっているしで、その辺の「男女どちらが観ても楽しめる」というバランスの良さも、絶妙でしたね。  孤独だったマーガレットが「家族の温もり」に触れ、アンドリューの家族を騙す事に耐えられなくなり、結婚式での告白に至る流れも丁寧に描かれており、説得力がありました。  そんな本作の不満点を述べるとしたら……  冒頭にて登場する「毎朝ラテを用意してくれる店員」が可愛くて、メインキャラかと思ったら違ってたのが残念とか、男性ストリッパーの場面は観ていてキツかったとか、精々そのくらいかな?  サンドラ・ブロック主演のラブコメ映画は色々ありますが、自分としては本作が一番好きですね。  エンドロールの質問にて「婚約者は誰?」と問われ、嬉しそうに「アンドリュー」と答える姿も可愛らしいし、彼女の魅力が存分に味わえる一本でした。[DVD(吹替)] 7点(2021-02-11 16:50:27)(良:2票) 《改行有》

45.  ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月 《ネタバレ》  前作が「これから面白くなりそうって所で終わる映画」だったもので、自分としては嬉しい続編映画。  元々、ラブコメ映画の続編って代物自体が珍しい訳で、そういう意味でも新鮮でしたね。  映画一本分をかけて結ばれた背景があるもんだから、前半部分にてブリジットとマークがイチャついている様も、とても微笑ましく感じられて良かったです。  ジェーン・オースティンの「説得」が下敷きだったり、マークが濡れたシャツ姿を披露したりと、基本的には「元ネタありきの映画」なのですが……  個人的には、元ネタを知らずとも充分楽しめるんじゃないかと思えましたね。  例えば、タイの刑務所にて女囚達と一緒にマドンナの曲を歌う場面なんかも、原曲を知らずとも十分に楽し気な雰囲気が伝わってくると思いますし。  前作は「高慢と偏見」ありきの映画だな、って印象でしたが、本作に関しては「元ネタよりも面白い映画」とすら思えちゃいました。  妊娠検査の最中に、二人が喧嘩しちゃう件なんて、特に面白い。  ここ、ほんの数分間なのに「二人の価値観や、育った環境の違い」が如実に伝わる作りになってるんですよね。  ラブラブな二人だったのに、徐々に擦れ違いが生じて喧嘩別れしちゃう流れに、自然に繋がっていたと思います。  他にも「そろそろ不幸じゃない事が起こるはず」と言った途端に、ブリジットが空港で逮捕されちゃうとか「引きずり出せるならどうぞ」と挑発したダニエルを、マークが本当に引きずり出して外で喧嘩しちゃうとか、台詞の使い方が上手いんですよね。  前作以上に「ブリジットがダニエルを選ぶ訳無い」「マークと結ばれるに決まってる」と分かり切ってる内容なのに、それでも楽しめたのは、こういう細かい部分が面白いお陰だと思います。  新キャラとなるレベッカも、非常にキュートで良かったですね。  「ブリジット→マーク←レベッカ」という関係と思わせておいて、実は「マーク→ブリジット←レベッカ」という関係だと判明する件は驚きましたし、ストーリーの面白さにも凄く貢献してる。  色んな映画に出てくるレズビアン女性の中でも、五指に入るくらい好きなキャラになりました。  妙な仮定になりますけど、もし自分がブリジットだとしたらレベッカを選んだかも知れないな……って、そう思えたくらいに可愛かったです。  煙草を吸う理由は「もっと悪い事が起きる前に死ねると思うと、心が安らぐから」と語るブリジット父も良い味出してましたし、前作以上に脇役の魅力が光ってた気がします。  そんな本作の難点としては……  タイの女囚達に見栄を張る形で「マークには酷い事された。暴力を振るわれたり、薬漬けにされたり」と嘘を吐く辺りは、流石に引いちゃった事。  あとは、中盤にてマークに部屋の鍵を渡すのが伏線かと思いきや、全然違ってて拍子抜けしちゃった事とか、そのくらいかな?  ブリジットを主役にした映画は現在三本ありますが、自分としては本作が一番好きですね。  作中の台詞にある通り「ハッピーエンドの、その先」を描いた映画として、しっかり楽しむ事が出来ました。[DVD(吹替)] 7点(2020-11-11 10:22:20)《改行有》

46.  ブリジット・ジョーンズの日記 《ネタバレ》  この映画に関しては、元ネタである「高慢と偏見」を知っているかどうかで評価が分かれそうな感じですね。  それというのも、文学少女の憧れである「ダーシー様」を1995年のドラマ版で演じたコリン・ファースが「マーク・ダーシー」役を演じている訳だから、本作のブリジットは彼と結ばれるって事がバレバレなんです。  一応、ストーリーラインとしては「マークとダニエル、どちらと結ばれるのか分からない三角関係」って形になっているので、これはかなり致命的なネタバレ。  作り手側としては、もう配役の時点で開き直り、最初から「三角関係」要素を薄めて「ブリジットとマークが紆余曲折を経て結ばれるラブコメ」として仕上げているんでしょうけど……それでも消しきれない「三角関係」要素が、重荷になってる気がしましたね。  ダニエル役にヒュー・グランドが起用されているのも「豪華」というよりは「準主役でもないのに、勿体無い」と思えちゃいました。  そんな訳で、自分としては「悪い意味で結末が分かり切ってる映画」という、大きなハンデを背負った上での鑑賞だったのですが……  それでもしっかり楽しめた辺りは、流石という感じ。  本作が2000年代を代表するラブコメというだけでなく「ブリジット・ジョーンズは2000年代と寝た女」と思えちゃうくらい、彼女が魅力的に描かれていたんですよね。  ちゃんと仕事は頑張ってるから「彼氏がいないのを嘆いて、自堕落な休日を過ごしてる姿」も微笑ましく思えたし「ぽっちゃりとした女性の色気」が、視覚的に描かれていた辺りも良い。  特にカメラに向かってブリジットの巨尻が落ちてくる場面なんて、ギャグタッチにも拘らず昂奮しちゃったくらい。  メールでは強気な態度を取れるけど、いざ相手と目が合ったら愛想笑いしちゃうとか、そんなところも憎めない。  そんな彼女を愛でる「萌え映画」として考えれば、本作は満点に近い出来栄えだったと思います。   「人生やり直せるなら、今度は子供を作ったりしない」と母に言われる場面では鼻白んだとか、ブリジットの友人達の存在意義が薄いとか、不満点も色々あるんだけど、まぁ御愛嬌。  どちらかというと、終わり方がアッサリし過ぎていたのが気になりましたね。  これは欠点というよりは「マークと上手くいきそうになって、これから面白くなりそうだってところで終わるのが残念」っていう類の不満点です。  結果的に三部作になったので、この不満も続編で解消される訳だけど、本作単体で考える分には、どうしても「物足りない終わり方」って評価になっちゃうと思います。  後は……上司にカッコいい啖呵を切って辞職する場面が痛快だったとか、頑張って新しい自分に変わろうとするブリジットに「ありのままのキミが好き」とマークが言ってくれる場面にはグッと来たとか、そのくらいかな?  こういったシリーズ物の場合、初代が一番面白くて続編は蛇足ってパターンも多い訳ですが……  本作に関しては、続編の方が面白いんじゃないかと思えましたね。  興味がおありの方は、是非チェックして欲しいです。[DVD(吹替)] 6点(2020-11-11 10:02:42)(良:1票) 《改行有》

47.  マンイーター 《ネタバレ》  地に足の付いた、王道のモンスターパニック映画って感じですね。  オーストラリアの奥地を舞台としており、適度な「旅気分」を満喫させてくれるし、始まって十分もしない内に皆を乗せた舟が「クロコ探し」に出発するのもスピーディーで、良い感じ。  川下りの際に「アフリカの女王みたいだ」って、自分が思った事を劇中人物が口にしてくれるのも、妙に嬉しかったです。  ワニに襲われる恐怖だけでなく「緊急避難先の小さな島も、やがて満潮になれば水没してしまう」っていう恐怖を付け足してる辺りも上手い。  救助を待つべきか、危険を承知で脱出を試みるべきかという二択問題に「制限時間」が設けられている形であり、緊迫感を高めていたと思います。 ・遭難者の中で最も頼りになりそうな人物が、真っ先に喰われてしまう。 ・嫌な奴が「実は良い奴だった」と判明した直後に喰われてしまう。 ・餌にされずに済んだかと思われた犬が、結局は喰われてしまう。 ・喰われたかと思われたヒロインのケイトが、実は生きていた。  って具合に「誰が生き残るのか」を読めなくする、適度な意外性を盛り込んでいる辺りも上手かったですね。  主人公についても、途中で手を喰い千切られる場面があるもんだから(もしや?)と思えて、最後まで油断せずに観ていられましたし。  「自らを囮にして、木の杭で串刺しにする」っていうワニの倒し方も、派手で良かったです。  翻って、短所を述べるなら……  やはり「島から脱出した後が、少し冗長」って辺りが挙げられるかな?  これを欠点と言うのは可哀想な気もしますが「小さな島に漂流してしまい、周りにはワニがいるので逃げられない」ってシチュエーションが魅力的だっただけに、島からの脱出に成功した後は、もっと手早く纏めて欲しかったんですよね。  漂流者グループの人数が多かった割に、島の脱出後は主人公以外が殆ど出てこなくなるってのも、流石にバランスが悪い。  お陰で、主人公とワニが戦ってる最中にも(他のメンバーはどうなったの? 無事に逃げ切れたの?)って事が気になって、折角のラストバトルに没頭出来なかったですし。  結局「途中で別れたメンバーは全員無事に助かった」ってオチになるので、ハッピーエンド色を強める効果はあるんですが、マイナスの方が大きかったんじゃないかと。  「中盤までは面白くて、終盤ちょっと退屈」って構成なので、鑑賞後の印象という点では不利になってしまうのが残念ですね。  呑気なエンディング曲も味わい深いし、憎めないというか、愛嬌のある映画ではあるんですが、傑作とは言い難い……そんな一品でありました。[DVD(吹替)] 6点(2020-09-30 08:39:10)(良:1票) 《改行有》

48.  タッチ CROSS ROAD 風のゆくえ<TVM> 《ネタバレ》  これ、結構好きです。  少なくとも「タッチ」のアニメとしては、劇場版三部作&テレビスぺシャル二本の中でも最も綺麗に纏まっているし、面白かったんじゃないかと。  冒頭に流れる歌も哀愁があって、異国の地で一人ぼっち夢を追いかける主人公に合ってるし、この度久し振りに鑑賞して(良い曲だなぁ……)と、しみじみ浸っちゃったくらい。  それと、本作のストーリーラインについては人気野球ゲーム「パワプロ10」でもオマージュされているんですよね。  「日本の若者が一人渡米し、金髪そばかす娘とロマンスを繰り広げつつ、マイナーリーグからメジャーへの昇格を狙う」って話の流れは、文句無しで魅力的だし、これを殆どそのままゲーム中に流用したスタッフの気持ちも、良く分かります。  ただ、そんな「パワプロ10」に取り入れられなかった部分「主人公達也と、ヒロイン南との遠距離恋愛」については……正直、蛇足に思えちゃいましたね。  原作が「タッチ」である以上、この二人のロマンスは外せない訳なんだけど、今回はそれが枷になってた気がします。  そもそも南が新体操を辞めてカメラマン目指してるって設定自体、劇中の人物同様に「なんで?」と戸惑っちゃうし……  南に「自立した女性」的な魅力を与えようとした結果、空回りしてるように思えました。  他にも「ライバル打者のブライアンが凡退する場面が多過ぎて、凄みが薄れてる」「達也とホセが終盤に和解する流れが唐突」などの作り込みの甘さに「バンクシーンや曲の使い回しが多い」という、アニメとしての根本的なクオリティの低さも見逃せないし……酷評しようと思えば、いくらでも出来ちゃう品なんですよね、これ。  ただ、それでもなお自分は好きというか……粗削りだけど、光る部分も多いんです。  現地娘のアリスは可愛らしくて、南より魅力的に思えたくらいだし、オーナー夫妻も良い人達なもんだから、主人公チームの「エメラルズ」を、自然と応援したくなるんですよね。  「かつては名門チームだったが、今は没落している」「球団の解散が決まった事を知った選手達が奮起し、快進撃の末に優勝する」などのお約束展開も、王道な魅力があって良い。  町から町へ、オンボロバスで移動しながら野球するという、マイナーリーグらしい描写もしっかり挟まれていたし、開幕戦ではガラガラだった客席が、最終戦では満員になっていたのも、凄く気持ち良かったです。  「弟の代わりに投げた」発言からすると、本作は「背番号のないエース」から続く時間軸なのでしょうが、原作漫画しか読んでない人でも、そこまで混乱しないよう配慮した台詞回しになっている事にも感心。  キャッスルロックという地名が飛び出す小ネタなんかも、ニヤリとしちゃいましたね。  「頑張って夢を叶えようとしたら、その過程で他の選手の夢を奪ってしまった」場面を挟み「優し過ぎる兄貴」だった達也に相応しい苦難を用意しているのも、原作漫画が大好きな身としては、妙に嬉しかったです。  そして何といっても、ラストシーン。  達也が最後の一球を投じる直前に「和也……見てるか!」と胸中で叫ぶ場面には、本当にグッと来ちゃったんですよね。  思えば原作においても「好きなんでしょ、野球」「和也くんと、ずっと同じ環境に育ってきたんだもの」という台詞がありましたが、そんな達也の「野球を好きな気持ち」を、とうとう素直に表せる場所に辿り着いたんだという充足感、そしてそんな自分の姿を「和也に見せてやりたい」と思った達也の心意気に、もう観ていて心を鷲掴みにされちゃったんです。  そんな独白の後、幼い和也と達也とがキャッチボールしてる場面が回想で流れるもんだから、もうたまらない。  ここのワンシーンだけでも、本作は観る価値があったと思います。  欲を言えば「和也の力を借りない、達也と新田の真剣勝負」も見せてくれたら文句無しだったんだけど……  まぁ、それは本作から数年後、メジャーリーグの舞台で実現したんだと、妄想で補いたいところですね。  それと、恐らく本作のアリスは新田の妹である由加ちゃんが原型なのでしょうが「達也が好き」「そばかす属性」「一人称オレ」「ピッチャー」って共通点がある事を考えると、吉田君もモデルの一人だったのかなって、そんな事が気になりました。  他にも、あだち漫画で見た事ある顔が、色々と登場していたりするので……  その「元ネタ探し」をしてみるだけでも、それなりに楽しめちゃう一品だと思います。[DVD(邦画)] 7点(2020-07-25 05:54:50)《改行有》

49.  タッチ(2005) 《ネタバレ》  冒頭のモノローグからして、ヒロインの南目線で進むのかと思いきや、何だかんだで達也が主役でしたね。  原作でも主人公は達也なのだから、当然と言えば当然なんですけど、それなら無理して南の比重を増すような真似しなくても……と、つい思っちゃいました。  この映画、それ以外にも「無理してる」部分が多々あって、ちょっと褒めるのが難しいんですよね。  ラストの告白台詞に関してもそうなんだけど「無理して名場面を挟んでる」「無理して名台詞を言わせてる」感が強くって、観ていて気恥ずかしかったです。  そもそも原作コミックス26巻分を116分に収めるって時点でキツい訳だけど、それに関する原作エピソードの取捨選択も、あまり上手くなかった気がします。  南が新体操やらないとか、その辺は納得なんだけど……やはり、柏葉英二郎の不在が痛い。  「タッチ」で一番魅力的なキャラクターといえば彼だと思うし、せめて明青の監督は彼にして欲しかったですね。  グラサン掛けた強面の監督で、達也に厳しく接しつつも最後は彼の実力を認めるとか、その程度の描写でも充分嬉しかったと思うし……完全にいなかった事にされちゃうのは寂しいです。  そんな柏葉監督だけでなく、西村に吉田といった魅力的な脇役陣も出てこないっていうのに、映画オリジナルキャラである小百合ちゃんを出して、彼女に尺を取ってるというのも悲しい。  序盤から達也に好意を示し、デートしたりもするんだけど、終盤になってからは全く出てこないというチグハグっぷりだったし……  彼女に関しては、あまり存在意義を感じられませんでしたね。  同じオリキャラでも、原田くんと良い雰囲気になるソノコちゃんは画面の賑やかし役に徹していたし、小百合ちゃんもあんな感じで、主筋には絡ませない方が良かったと思います。  決勝戦前日に和也が草野球で投げてるとか(ちょっと無理があるのでは?)と思える描写が散見されるのも辛いところです。  でも、本作にはそんなアレコレも霞むほどの大きな欠点があって……  原作漫画が大好きな身としては、こんな事を書くのも辛くなっちゃうんだけど、この映画って「和也が死んでも悲しくない」んですよね。  映画の中盤、始まって一時間くらいで退場しちゃうし、それまでの尺も達也と南のキスシーンとかに費やしているもんだから、根本的に和也を応援したり、感情移入したりする気持ちになれないんです。  達也と和也の性格の対比も中途半端で、達也は毒舌属性がやたら強化されて「嫌な奴」としか思えない一方、和也の「良い奴」っぷりは全然伝わってこないというんだから、困っちゃいます。  南とのキスシーンや、オリキャラ女性の出番よりも、もっと和也の魅力を表現する事に尽力して欲しかったですね。  「タッチ」という物語の構成上、和也の死が悲劇でなければ面白さの根底が崩れちゃいますし、そこだけはキチンと押さえておくべきだったと思います。  ……以上、色々と不満を述べる形になりましたが、それだけじゃあ寂しいし、何やら申し訳無い気分になるので、以下は良かった点を。  まず、主人公達三人が子供の頃から野球をやってたって設定にしたのは上手かったですね。  ちゃんと幼い南が背番号2を付けてて、その後に捕手となって達也の球を受ける場面にも自然に繋がってますし、南の見せ場って意味ではここの「捕手」の場面が一番良かったと思います。  原田くんに孝太郎など、男っぽい脇役陣が気を吐いて、画面をビシッと引き締めてくれたのも嬉しい。  高校一年で140キロのスライダーが投げられる和也とか、打率が七割五分以上で甲子園七本塁打の新田とか、具体的な数字が出てくるのも、野球好きとしてはテンション上がるものがありましたね。  それと、先程自分は「映画オリジナルの女性キャラ」に尺を取るのを否定しましたけど、映画オリジナルの展開そのものについては、結構良かったと思うんです。  達也が秋季大会で滅多打ちされてコールド負けするのも、その後の躍進が「ドン底から這い上がった」感が出て好みですし、雨の中で原田くんに殴られ、再び野球を始める流れも「泥臭い青春物」って感じがして良い。  和也に命を救われた子供と、その母が命日に上杉家を訪れる場面も、何だか救われるものがありましたね。  新田の最終打席にて、和也と同じスライダーを投げた後、達也らしいストレートを投げて勝利するというのも「和也の幻影を振り切った」「達也として甲子園出場を決めた」感があって、良かったんじゃないかと。  そんなこんなで、原作と比較しちゃうと不満も多々ありますが……  青春映画として一定のクオリティはあったんじゃないかな、と思います。[DVD(邦画)] 5点(2020-07-16 10:33:11)(良:3票) 《改行有》

50.  ラッキーナンバー7 《ネタバレ》  所謂「巻き込まれ」系かと思いきや、実は主人公が黒幕だったというオチの映画。  出演者が吃驚するくらい豪華だし、伏線も丁寧に張ってあるし、画作りも上手いしで、普通なら好みの品のはずなんですが……  本作に関しては、どうも肌が合わなくて、観ていて辛かったですね。  復讐計画が偶然に頼り過ぎとか、種明かしの件が長過ぎてダレるとか、色々と欠点が目に付いちゃったし……  中でも「主人公達に魅力を感じない」「復讐に正当性を感じない」ってのが、この手の映画としては致命的だったと思います。  そもそも主人公の父マックスが殺されたのだって「闇賭博に手を出して大敗した」って背景がある以上、自業自得感が強くて、復讐の動機として弱いんですよね。  でもって、復讐の方法がまた酷いというか、無関係のフィッシャーを殺してるもんだから、全然スッキリしないんです。  殺した後、まるで主人公達は悪くないという言い訳のように「十四歳の少女に暴行して、八年間更生施設に入ってた」「君は死んだ方が役に立つ」「死んでも惜しむ者のいないクズだ」なんて台詞が挟まれる訳だけど、それで納得出来る訳ないというか……  (無関係の人間殺してるアンタらの方が、よっぽどクズだよ)って思えちゃって、復讐者としての主人公に、全く魅力を感じなかったです。  大体、フィッシャーを殺す必然性も無くて、誘拐監禁しておくだけでも計画としては成立したと思うんですよね。  「それは面倒だし、殺す方が簡単で確実だ」という考えの主人公であるのなら、やっぱり最低な奴だとしか思えない訳で、困っちゃいます。  ポール・マクギガン監督は、自分の大好きなドラマ「SHERLOCK」の主要スタッフでもあるし、腕は確かな人だと思うんですけどね。  正直、映画に関してはパッとしないというか、観た後ガッカリしちゃう品の方が多い気がします。  それでも、あえて良かった点を探すなら……  ヒロインが可愛かったとか「ジェームズ・ボンドといえば、この俳優」と語り合う場面はロマンティックだったとか、そのくらいになるかな?    何よりも、主演のジョシュ・ハートネットが大好きであるだけに、こんな主人公を演じさせた事が、恨めしく思えちゃいます。  自分とは、相性の悪い映画でありました。[DVD(吹替)] 4点(2020-06-18 11:47:13)(良:1票) 《改行有》

51.  アメリカン・パイ in ハレンチ教科書<OV> 《ネタバレ》  中盤までは、とにかく退屈。  「自慰を家族に見られる」「恥ずかしい動画が拡散しちゃう」っていう過去作のネタをなぞりつつ、淡々と物語が進んでいく感じで、全然ノリ切れなかったんですよね。  初代に出てきた「性書」が再登場した際には(おっ……)と思いましたが、それも読める部分が殆ど無くて役立たずっていうんだから、観ているこっちもガッカリ。  唯一魅力的なキャラである「主人公の母」は出番少なめだし、山場となる「下着の万引き」「お婆さん娼婦の死」に関しても、あんまり笑えなかったです。  そんな訳で、これはシリーズでも最低の作品ではないかって失望すら浮かんできちゃったんですが……  そこで颯爽と、ジムの父親が登場!  前作の「ハレンチ課外授業」での失態を帳消しにするくらい、一気に映画を面白くしてくれたんだから、もう嬉しくって仕方無かったですね。  ボロボロになった「性書」を復元していく様はスピーディーな演出で楽しかったし、結婚生活が35年続いた秘訣について「妻を愛し、妻を尊重してきたからだ」と演説するジム父の姿も良かったです。  本作においては「若者達を優しく見守り、アドバイスを与えてくれる」というジム父の魅力がしっかり描かれており、その点でも自分泣かせというか(ちゃんと、このシリーズの魅力を分かってる人達が作ってくれたんだな……)って、感激させられるものがありましたね。  そんなジム父が退場した後の、スキー旅行のパートも面白くって、序盤~中盤にかけてのグダグダっぷりは何だったのと不思議に思えちゃうくらい。  それまで全然魅力を感じなかったヒロインのハイジについても「スキー場の女性は綺麗に見える」の法則で、スキーウェア姿が実にキュートだったし、それまで「嫌な奴」だったスコット・スティフラーには天罰が下り、反省して「憎めない奴」に変わっていくしで、それまでの欠点の数々が、悉くプラスに転じているんですよね。  「魅力を感じないヒロイン」「不愉快なだけで愛嬌皆無のスティフラー」が、一本の映画の中で、こうも変わるものかと感心しちゃいました。  それと、前作で失われた「青春映画の切なさ」が復活している点も、忘れちゃいけない魅力。  空中で止まったゴンドラにて言葉を交わし、結ばれる男女の姿なんて、実にロマンティックでしたからね。  最後に「性書」の貸し出しカードにサインして、元の場所に戻すのも「童貞からの卒業」「青春の終わり」を感じさせて、良い場面だったと思います。  冒頭にて述べた通り「中盤までが退屈」っていう明確な欠点がある為、総合的に評価するなら6点くらいになっちゃうんですけど……  後半で一気に挽回してくれた為、鑑賞後の印象は良かったですね。  やはりアメリカン・パイシリーズって良いよなぁと、しみじみ思わせてくれた、そんな一品でした。[DVD(吹替)] 6点(2020-05-16 08:51:38)《改行有》

52.  アメリカン・パイ in ハレンチ課外授業<OV> 《ネタバレ》  「彼女をイケメンに取られた」という一言だけで、前作ヒロインとの絆を無かった事にされる導入部にガッカリ。  主人公エリックの父親も、相変わらず嫌な奴のままフェードアウトしちゃうし……せっかく「エリックが主人公の物語」を二作続けてやった形なのに、それを全然活かせてないのが勿体無いですよね。  「ヒロインと復縁する」とか「父親が改心する」とか「カリフォルニアに行ったライアンと再会し、友情は不滅だと語る」とか、続編だからこそ出来るオイシイ展開を全部放り投げた感じ。  それでも、大好きなジムの父さえいてくれたら問題無いだろうと思っていたんですが……  遂にその神話も崩れたというか、本作に関してはジムの父にすら魅力を感じられず仕舞いで、参っちゃいましたね。  何時ものように優しいアドバイスをしてくれるのかと思いきや「(私なら)オタクどもを叩き潰してやる」なんて物騒な事を言い出すもんだから、これにはもうホント、がっかりです。  この辺、めんどくさいファン特有の反応になっちゃうんですが(ジムの父は、そういうキャラじゃないだろう)って、つい思っちゃいました。  一応、敵役のエドガーに優しい声をかける場面もあったんだけど、それも結局は「ありがた迷惑」で終わっちゃうし……こんな扱いなら、出演してない方が良かったかもと思えたくらいです。  「地獄の黙示録」や「ディア・ハンター」のパロディにもノリ切れなかったし、射精をスローモーションで表現するとか、ゲロのぶっかけ合いとか、悪趣味な描写が散見される点もキツい。  話の大筋も「敵対していた友愛会に勝利し、ハッピーエンド」ってだけなので、意外性も何も無くて、エンドロールが流れた際には(えっ、これで終わり?)と戸惑ったくらいでしたね。  前作までは保持されていた「青春映画としての切なさ」が無くなってるのも寂しいし……正直、本作を褒めるのは難しいです。  それでも、あえて良かった点を探すとしたら「大学の寮生活ならではの楽しさ」は伝わってきたとか、その辺が挙げられるかな?  美女のステイシーが股間でビールの栓を抜くのも面白かったし、ブラ外し対決の件も、結構好きです。  あと、本作はジム父の台詞通り「オタク男子」が敵役となっており、これは新鮮に感じましたね。  かつては迫害される立場だったのに「将来金持ちになるのはオタクだから」という理由で、エリートのオタク男子がモテるようになっている。  劇中の台詞通り「時代が変わった」訳だけど、オタク男子が迫害される時代を描いた「ナーズの復讐」(1984年)を踏まえて考えると、かなり感慨深いです。  この手の映画で敵役(=恵まれた上流階級)になれるくらい、オタク男子に対する認識も変わったという訳ですからね。  似たような例としては「21ジャンプストリート」(2012年)などもありますが、本作の方が五年も先に発表されていますし、そう考えると価値が高い一本なのかも。  そんなアレコレも含め、基本的には「楽しい映画」「ハッピーエンドの映画」として作ってありますし……  「アメリカン・パイシリーズならではの魅力」を求めたりせず、これ単品として鑑賞する分には、そこそこイケる品なんじゃないかな、と思います。[DVD(吹替)] 5点(2020-05-16 08:49:50)《改行有》

53.  アメリカン・パイ in ハレンチ・マラソン大会<OV> 《ネタバレ》  主人公が自慰を家族に見られる場面から始まるのは「原点回帰」って感じがして良かったんですが……  そのショックで祖母が死んじゃう形なので、全然笑えないし、ノリ切れなかったんですよね。  思えば、その躓きが最後まで尾を引いて、本作を残念な印象にしてしまった気がします。  その他にも「目に見えて画面が安っぽい」とか「主人公エリックの父が嫌な奴のまま終わるので、スッキリしない」とか、色々と欠点が多いんです。  前作「バンド合宿」の分を取り戻そうとするかのようにパーティー描写が濃厚なのも、個人的には嬉しかったけど……ちょっと下品過ぎて、ウンザリしちゃう人もいるかも。  とはいえ、自分としてはやはりアメリカン・パイシリーズが好きなもので、評価も甘くなっちゃうんですよね。  「主人公とヒロインが、最初から恋人同士である」って設定にして、過去作との違いも打ち出しているし、大学生達が全裸で校内をマラソンするという「ネイキッド・マイル」って発想も面白いしで、どうも嫌いになれない。  そして何といっても、ジムの父親が出演しているのが嬉しくって……「お前はジムの父さえ出ていれば満足なんだろ」って、自分にツッコミを入れたくなったくらい。  そんなジムの父が、大学時代には「歴代最高のハジケ野郎」「ネイキッド・マイルの創始者」であったと明かされる辺りなんかも、色々と妄想をかき立てるものがあって、良かったと思います。  「走って揺れる巨乳を、スローモーションで映す場面」には正直興奮しちゃいましたし、そんなエロティック要素だけでなく、青春映画としての要素も、ちゃんと盛り込んであるんですよね。  親戚のドワイトが「家名に恥じぬ生き方をするのは大変だ」と本音を漏らす辺りは、思わずしんみりしちゃったし、それがラストシーンにて「スティフラー」と呼ばれ「エリックで良い」と応える主人公の姿にも、きちんと繋がっている。  家名に囚われたりせず、前向きに、自由に生きる事を決意した主人公って感じがして、爽やかで良かったです。  美女のブランディ相手に、童貞喪失出来そうになったのに「好きな子がいる」と誘いを断ってみせる場面も(良くぞ言った!)って気持ちになれましたし、良い場面だったんじゃないかと。  「低予算である」「欠点も多い」という事は重々承知だし、誉め言葉に負けないくらい、悪口も浮かんできそうな作りではあるんですが……  「映画としてチャーミングな部分」も、ちゃんと備え持っている。  そんな、憎めない一品だったと思います。 [DVD(吹替)] 6点(2020-05-16 08:48:08)《改行有》

54.  アメリカン・パイ in バンド合宿<OV> 《ネタバレ》  アメリカン・パイシリーズの四作目にして、主人公達も世代交代を果たした、仕切り直しの一作目。  8でジム達が復帰するまでの4~7に関しては、外伝色の強い内容だし、予算面でも見劣りする感じなのですが……  意外や意外、この4に関しては、前三作に決して見劣りしない出来栄えなのです。  1や2では子供だった「スティフラーの弟」ことマットが成長し、立派に主人公を務めているというのも、シリーズのファンとしては嬉しかったですね。  まるで親戚のおじさんのような目線で(大きくなったなぁ……)と感じ、微笑ましい気持ちになっちゃいました。  元々アメリカン・パイシリーズの魅力って、そういう微笑ましさというか「主人公の若者達に対する、優しい眼差し」にあると思うんですよね。  その象徴がジムの父親であり、たとえ世代交代しようと彼だけはレギュラーとして出演させ続ける事にしたのは、もう大正解だったんじゃないかと。  実の息子相手でなくても、悩み多き若者には優しく接し「ピントがズレているけど有益」という独特なアドバイスをしてくれる姿が、本当に良かったです。  その一方で、兄のスティフラーに関しては「みんな彼を嫌ってた」という発言が飛び出し、ちょっと可哀想になるんですが……  実際、彼が「良い奴」になったのは3以降の話だから、高校時代はジム達から嫌われてたってのも、間違いではないんですよね。  上述のジム父といい、学校のカウンセラーになってるシャーマンといい、過去キャラの扱いに関しては、概ね良かったんじゃないかと思います。  それと、本作は主演のダッド・ヒルゲンブリンクも、良い味を出していましたね。  主人公のマットって「如何にも頭の軽い体育会系」に思わせておいて「実は真面目な好青年であり、兄の真似をして悪ぶってるだけ」と途中で明かされるという、非常に難しい役どころなのですが、見事に演じ切っている。  これに関しては、彼個人の演技力だけじゃなく、演出というか、監督の構成も良かった気がしますね。  最初の内こそ(なんか……ショーン・ウィリアム・スコットに比べると、無理して「スティフラー」を演じている感じだなぁ)と違和感を抱かせていたのに、実はそれが伏線であり「本当に、無理して演じていただけ」と分かる形になっているんだから、もう脱帽です。  そういった仕掛けが施されている為、主人公のキャラクター性にも説得力があったし、彼が改心して「良い奴」になる展開も、自然と応援する気持ちになれたんですよね。  もしかしたら、作り手にそんな意図は無く、偶々そういう形になっただけなのかも知れませんが……  もしそうだとしたら、かなり幸運な偶然だったんじゃないかと。  バンド合宿にて同室になった眼鏡少年と、少しずつ仲良くなっていく様も微笑ましかったし、ヒロインのエリスとの関係性も良かったですね。  エリスに関しては、これまでのシリーズには無かった「幼馴染」型のヒロインであり、新鮮な魅力を放っていたと思います。  そんなエリスと一緒に寝そべって、雲を眺める場面。  少しずつバンド仲間と打ち解けていた中で、つい強がって「体育会系のスティフラー」を演じてしまう場面。  エッチな盗撮映像なんかより、仲間達と過ごした時間の方が、ずっと大切だったと気が付く場面。  どれも忘れ難い味があり、本作を良質な青春映画に仕上げていたと思います。  最後は、しっかり演奏シーンで盛り上げて、ヒロインと結ばれるキスで終わるのも、文句無し。  この後、シリーズは更なる世代交代を重ねつつ続いていく訳ですが……  (マットやエリス達の物語も、もっと見たかったな)と思えるような、そんな一品でありました。[DVD(吹替)] 7点(2020-05-16 08:46:11)《改行有》

55.  アメリカン・パイ3:ウェディング大作戦 《ネタバレ》  ラブコメというのは基本、主人公とヒロインが結ばれて「めでたし、めでたし」で終わるものだから、そんなラブコメのその後、二人が結ばれた後の結婚式まで描いた本作は、とても貴重だと思います。  前二作を鑑賞済みの身としては、ジムとミッシェルに思い入れたっぷりなもので、そんな二人が結婚するというだけでも、感慨深いものがありましたね。  アメリカン・パイシリーズでは「前作まで付き合っていたカップルが、別れてしまっている」というパターンも珍しくないだけに、シリーズ中で一番好きなカップルの二人が結婚してくれた事が、もう小躍りしたくなるくらいに嬉しい。  結果的に「1で二人が出会い、初体験」「2でカップル成立」「3で結婚式」という流れになった訳で、ここまで丁寧に結ばれる過程が描かれたカップルって、映画史においても稀な例となるんじゃないでしょうか。    本作においてはシリーズ恒例の「パーティー描写」が「独身さよならパーティー」となっている訳だけど、ここの件も凄く面白い。  特に、ゲストのストリッパー達がメイドと婦警のコスプレをしていた辺り(米国だろうと日本だろうと、男の好みなんて大して変わらないんだな……)って思えて、興味深いものがありましたね。  そんな二人が花嫁の両親に見つかってしまい「本物のメイドさん」「本物の婦警さん」と言って誤魔化そうとする流れも秀逸であり、コント的な魅力があって楽しかったです。  出演者達に関しては、これまで脇役だったスティフラーが主役格となっているのが嬉しい一方、オズをはじめとした面々が多数欠席しているのが寂しいんですが……  まぁ、それに関してはカメラに写っていなかっただけで、本当は彼らも結婚式に招待され、二人を祝福していたんだと思いたいですね(「結婚式に行けなかった」と8で明言されているオズも、ビデオメッセージか何かは送ったはず)  ジムの父親も、相変わらず魅力たっぷりであり「困った時は何時も父が助けてくれた」というジムの言葉を聞いて、嬉しそうにする時の表情なんか、もう最高。  (本当に息子想いの、良い父親だよなぁ……)って思えて、微笑ましくて仕方無かったです。  「チョコ」の件は流石に引いちゃったとか、ダンス対決を見せられた際は(えっ、これってそういう映画だったの?)と戸惑ったとか、欠点と呼べそうな部分も色々あるんだけど……  シリーズに共通する「登場人物に対する、作り手の優しさ」「下品なギャグだけでなく、真面目な感動もあるバランス」が、しっかり踏襲されていたので、決定的な違和感にまでは至りませんでしたね。  「真面目な感動」に関しては、ジムが仲間達に感謝を述べる場面が顕著であり「トラブルが起きても何とかなったのは、何時も皆が助けてくれたからだ」「ありがとう」という言葉には、本当にグッと来ちゃいました。  実際に、前二作にて「何とかなった」のを見守ってきたからこその感動があり、シリーズ物の強みを存分に活かした台詞だったと思います。  二度ある事は三度あるとばかりに、最後はスティフラーのママが登場して〆るのも最高。  結果的には、この後に五本も続編が作られている訳ですが、作り手としても一旦はコレで完結という事を意識した内容だったんじゃないか……って気がしましたね。  そういう意味では「三部作」の最後を飾る品として、見事な出来栄えだったんじゃないかと。  「シリーズに興味はあるけど、流石に八本も観るのは大変」って人も、とりあえず3までは観て欲しいなと思える、そんな節目の一本でありました。[DVD(吹替)] 7点(2020-05-16 08:42:12)(良:1票) 《改行有》

56.  アメリカン・サマー・ストーリー 《ネタバレ》    初代では自慰の現場を両親に見られたのに対し、本作では女性と本番真っ最中な姿を見られてしまうっていう導入部が凄いですね。  こういう形で「前作よりパワーアップした事」を伝えてくれちゃう映画って、ちょっと他には思いつかないです。  そんな下ネタ部分だけではなく、青春映画としてもしっかりパワーアップしており「夏休みの楽しさ」を存分に感じられる内容になっているのが嬉しい。  前作で宙ぶらりんだったジムとミッシェルの関係に、きちっと決着が付いている点も良いですね。  「主人公の恋路を応援してくれる女友達」枠が好きな自分としては、実に好みな展開であり「憧れのマドンナ」枠のナディアではなく、ミッシェルと結ばれると分かった時には、思わずガッツポーズ取っちゃったくらい。  二人の関係性という意味では、前作からの繋げ方が強引だし、初見の際には(ミッシェルって、こんなに良い子だったの?)と戸惑う気持ちもあったりしたんですが……  何度目かの鑑賞となった今回は、そんな違和感も消え去り、素直に祝福する事が出来ました。  愛する彼女が出来たお陰で、すっかり真面目になったオズの変貌っぷりも面白かったし、前作にて「人生で一番楽しいのは、今だよ」と語っていたケビンが、高校時代の思い出に囚われる事から脱して、大人へと成長してみせる流れも良い。  アメリカン・パイシリーズって、基本的には能天気なコメディなんだけど、青春ドラマとしても良質なんだって事を、オズやケビンが証明してくれた気がしますね。  ケビンを励まし、夕暮れの中、主人公四人組のシルエットが並んで歩く場面にも、本当にグッと来ちゃいました。   そんな主人公達だけでなく、振られたナディアに、憎まれ役のシャーマンなど、脇役陣にも優しい眼差しが注がれており、それぞれを幸せな結末に導いてくれるのも、本作の長所ですよね。  シリーズ通してのMVPと呼べそうな「ジムの父」も、存分に存在感を発揮しており「息子想いだが、どこかズレてる」感じが、面白くって仕方無かったです。  病院でのやり取りには笑わせてもらったし、その後、気まずい思いをしているジムに対し「お前は自慢の息子だ」と優しく伝える姿なんかも、凄く好き。  笑いと感動の緩急があって、二つの要素が、互いを引き立て合う効果があったと思います。  賑やかなパーティーが終わり、これで「めでたし、めでたし」かと思われたところで、スティフラーのママが颯爽と登場して〆てくれるのも、お約束な魅力があって良いですね。  (そう来なくっちゃ!)とテンション上がったまま、笑顔のままで、エンドロールを眺める事が出来ました。  学生時代を卒業し、大人になった後も、夏が来る度に観返したくなる。  クライマックスとなる告白シーンだけでなく、皆で別荘に向かう場面や、だらだらとトランプ遊びしたりする場面を、もう一度観たくなる。  理想の「夏休み映画」と呼べそうな、良い映画です。[DVD(吹替)] 8点(2020-05-16 08:34:52)(良:1票) 《改行有》

57.  ディスタービア 《ネタバレ》  2020年の春。  自宅待機しながら観るにはピッタリの映画じゃないかと思ったので、久々に再鑑賞。  言わずと知れた名作「裏窓」の系譜の品なのですが、主演がシャイア・ラブーフというだけでも、一気に現代的な魅力が出るから凄いですよね。  良い奴過ぎず、嫌な奴過ぎず。  二枚目過ぎず、不細工過ぎずって感じで、等身大で感情移入しやすい若者を、今回も好演していたと思います。  ただ、内容については……  肝心の「裏窓」要素が微妙というか、なんていうか(これなら「裏窓」をなぞらなくても良かったじゃん)って感じなんですよね。  「ずっと覗き見していた近所の美少女と、紆余曲折の末に結ばれる」という展開も、男に都合良過ぎで説得力を感じないし、女性がコレを観て、ときめくとも思えなかったです。  序盤にあった「父親の死」も意味が無くて、作中で「悲しみを乗り越え、成長する主人公」に繋がる事も無かったし……  「因縁のある警官」は全く活躍せずに退場するし「家から30m離れたら警報が鳴る装置」も犯人との対決で何の意味も持たなかったし……  色んな要素をアレコレ詰め込んだは良いけど、それらを活かしきれないまま「元ネタの『裏窓』と同じように犯人を退治して、めでたしめでたし」で終わらせているので、凄く中途半端なんですよね。  正直、作品の完成度という意味では、かなり低いんじゃないかと。  そんな具合に、短所を挙げだすと止まらなくなるような品なのですが……  好きか嫌いかで言うと、何故か「好きな映画」になるんですよね、これ。  いやホント、自分でも不思議。  一番の長所を挙げようとしても「主人公三人組が、張り込みごっこをする様が楽しそう」とか、そのくらいになっちゃうレベルなのに、何か好きなんです。  理由を考えてみるに「ヒロイン、男友達、母親と、死んで欲しくないと思えるキャラが全員無事に生き残る事」「血生臭い描写が少なくて、安心して観ていられる事」が大きいのかな?  あとは、音楽の使い方が良いとか、カメラワークもベタではあるけど、お約束を押さえてる(冷蔵庫のドアを閉めたら、それまで見えなかった人影がカメラに映り、主人公も驚く)とか、その辺が良かったのかも。  こういう細かい良さが色々あったので、上述の欠点についても、観ている間はそこまで気にならなかったです。  かつての自分もそうでしたが「血生臭いホラー物が苦手な青少年」に、適度な怖さとスリルを与える映画としては、合格ラインに達しているんじゃないかな……と、そんな風に思えましたね。  「自宅監禁は楽そうだけど、ストレスでおかしくなる人も結構多いの」って台詞が劇中にありましたが、少なくともこういう映画を楽しめている内は、おかしくなる心配をしないで済みそうです。[DVD(吹替)] 6点(2020-04-27 07:41:39)《改行有》

58.  ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い 《ネタバレ》  既に三部作を鑑賞済みで再見した為 (1は意外と出だしがシリアスで、サスペンス物にも思えるような作りだ) (この頃はダグも主人公の一人だし、チャウは端役でしかなかったんだな……)  といった具合に、色んな発見があって面白かったですね。  本作の場合「新郎のダグは、何処にいるのか?」という謎がキーとなっているので、その答えを知っている状態で観たら楽しめないかもという不安もあったんですが、それを見事に吹き飛ばしてもらえました。  あと、1の時点だとアランの駄目人間っぷりも控えめで、観ていて不愉快に思える場面が無かった事も、非常にありがたい。  三部作の中では本作が最も優れていると思うんですが、その理由としては「長所が多い」という以上に、後の二作よりも「短所が少ない」という事が挙げられそうなくらいです。  特に感心したのが「昨夜の出来事を何も憶えていない」という設定にも「酒の飲み過ぎ」だけで済まさず「ドラッグの効果」という理由まで付け足し、リアリティを補強している事。  そして「ドアは開けておけよ」という、序盤の何気無い一言が伏線になっている事ですね。  後者は短いながらも印象的な場面ですし、真相が判明した際(そうだ、屋上のドアは中からじゃないと開けられないんだ)と観客に思い出させる効果があるしで、とても良かったです。  こういう部分がしっかりしていないと「設定に無理がある」「伏線が弱い」っていう欠点に繋がってしまう訳で、本作はそういう欠点を生まないように、丁寧に作られているのが窺えました。  足を引っ張ってばかりのアランが、実はカードカウンティングが可能な天才だったと判明する流れも、非常に気持ち良い。  三部作の中では、本作が最もアランの主人公っぷりが薄いんですが、活躍度では随一だったと思いますね。  義兄となったダグを「お兄ちゃん」と呼んでハグする場面も、幼い男の子なら感動的になりそうなんだけど、実際は髭っ面の良い歳した男性なのでシュールな絵面にしかならない可笑しさがあったし、自分としては本作のアランが一番好きです。  「虎」「赤ん坊」「パトカー」といった謎掛けアイテムの数々も魅力的だし、車を飛ばして結婚式場に向かう場面はカーチェイス的な魅力もあったしで「掴み」と「盛り上げ方」が上手かった点も、お見事。  「屋上での乾杯から記憶を失う」「実は、ダグの居所も屋上」っていう構成になっているのも、凄く良いですね。  盲点を突かれたというか「答えの場所を予め示しておいた」というフェア精神のようなものが感じられて、観ていて心地良かったです。  そんな中、数少ない欠点を挙げるとしたら……  フィルが生徒達から金を騙し取り、ベガスで遊ぶ為の資金にしている冒頭部分が、不要に思える事(カードカウンティングの際の資金にしたのがコレと示すとか、予想以上に儲けたので生徒達に豪華な見学旅行をプレゼントする後日談を付け足すとか、もっと上手い活かし方があったはず)  次作以降で明かされる「アランは歌が上手い」「スチュはジェイドと結ばれない」などの情報とは、矛盾した描写が目に付く事とか、そのくらいかな?  勿論「無茶をやり過ぎ、車の修理費だけで凄い額になる」とか「鶏は虎の餌にする為に連れてきたの?」とか、細かいツッコミ所や疑問点はあるけど、観ている間は気にならなかったです。  「その後のシリーズと比べると矛盾がある」って点に関しても、コレ単体で評価する限りでは欠点とは言い難いですし、本当に良く出来ていると思いますね。  「実際には、どんなパーティーだったのか」を明かしてくれるエンドロールに至るまで、楽しい時間を過ごせました。[DVD(吹替)] 7点(2020-04-16 17:25:04)(良:2票) 《改行有》

59.  刑務所の中 《ネタバレ》  この映画に対する礼儀のような気分で、コーラとアルフォートを携えて鑑賞。  結論としては、ほぼ文句無しの出来栄えだったのですが……  数少ない不満点が導入部にあるってのが残念でしたね。  それというのも、原作漫画では「拘置所で朝食を食べる主人公」という場面から物語がスタートしており、読者は自然と囚人生活を疑似体験出来るような作りになっていたんですが、本作は導入部で十分近く掛けて「主人公はミリタリーマニアであり、銃を不法所持していた」事を描いてしまっているんです。  これには流石に出鼻を挫かれたというか……ミリタリーマニアの人じゃないと「まるで自分が刑務所に入ったような気分になる」って感覚を味わえない気がするんですよね。  序盤から主人公の情報を明かし過ぎてしまったのは、構成としてマズかった気がします。  恐らく監督さんとしては「この主人公は悪い奴じゃないよ。誰かに危害を加えて刑務所に入った訳じゃないよ」という事を冒頭で描いておく必要があると考えたのでしょうが、自分としてはやはり「刑務所の中」もしくは「拘置所の中」から物語をスタートさせ、状況説明はその後に行って欲しかったです。  あとは、ハードボイルド色の濃い短編「冬の一日」も映像化して欲しかったんですが……まぁ、これは主人公を「漫画家の花輪和一」に統一する以上、仕方無かったんだろうなと納得出来る範囲内。  登場人物が幼女化するという漫画的演出などもスッパリ切り捨てていますし、その辺りの取捨選択は上手かった気がしますね。  不満点もあるにはあるんだけど、それが致命的になってはいない、というバランスなのは嬉しかったです。  そもそもこの映画って、オリジナル要素が冒頭の「軍隊ごっこ」と「避難訓練」くらいしかなく「原作には無い独自の魅力を生み出した」っていう褒め方は出来なかったりするんですが……  その分「原作漫画の良さを忠実に映像化した部分」が素晴らしくって、それだけでも傑作認定したくなっちゃうんですよね。  原作で「ムショオタク」を自認していた主人公が「刑務所の中」を楽しんでいる様子もしっかり描かれていたし、刑務作業の際のキビキビした囚人達の動きなんかも、如何にも映画的で面白い。  「パン食」「正月の御馳走」「2級者集会」の場面についても、良くぞここまでやってくれたと、思わず拍手したくなるくらいの出来栄え。  「殺人犯が周りの囚人から憧れの目で見られる」「教官に媚びを売る者は嫌われる」などの刑務所事情を、さり気無く描いている辺りも良かったです。  それと、原作と違って懲罰房の件をクライマックスに持ってきたのも上手いですよね。  原作では拘置所(個室)のエピソードの後、すぐ懲罰房(個室)で過ごすエピソードを描いている為、あまり違いが分からないという欠点があったんですが、映画では「五人部屋での生活」をたっぷり描いた後、個室に隔離される形になっており、懲罰房が凄く新鮮に思えるんです。  先程自分は「映画版独自の魅力が無い」という書き方をしちゃいましたが、何も独自の場面を追加せずとも、こういった「順番の入れ替え」だけでも、充分に面白さはアップするんだなと、大いに感心させられました。  映画のオオトリを飾るのが「醤油ご飯とソースご飯の話」というのは、原作の「一生無縁」に比べると、インパクトが弱いんじゃないかとも思えたんですが……  何度も鑑賞している内に(この終わり方も、シュールな味わいがあって良いな)と、考え方が変わってきましたね。  脱獄する訳でも無いし、裁判で無罪を勝ち取る訳でも無い、刑務所の中の日常を描いてるだけなんだけど、それが面白いし、それが良い。  文字通りの「刑務所映画」として、価値のある一本だと思います。[DVD(邦画)] 8点(2020-04-05 22:07:41)(良:1票) 《改行有》

60.  10日間で男を上手にフル方法 《ネタバレ》  ドナルド・ペトリ監督作のラブコメって「女性が観ても、男性が観ても楽しめる内容」な事が多い気がしますが、これもまたそんな一本。  男の自分としては「住んでる部屋が煉瓦の壁でオシャレ」「職場にビリヤード台があるなんて羨ましい」と思えて、主人公のベンの描写は観ていて気持ち良かったですし、恐らく女性が観ても、ヒロインであるアンディの「仕事が出来る、自立した女性」って描き方には好感が持てるんじゃないかな、って気がしました。  それと、ベンには「料理が得意」アンディには「スポーツ観戦が趣味」って属性が付与されており「女性にとっても魅力的な男性像」「男性にとっても魅力的な女性像」が、自然に描かれている辺りも上手い。  これらの属性を「せっかく料理を作ったのに、菜食主義者の振りしたアンディに突っぱねられてしまう」などのコメディタッチな場面で、自然に描いているもんだから、全く嫌味に感じられないんですよね。  これって、一歩間違えれば「ラブコメらしい、男に都合の良いヒロイン像だ」「女に都合の良い主人公像だ」なんて印象に繋がってしまいますし、それを感じさせずに仕上げてみせた手腕は、本当に見事だと思います。  主人公のベンが「バイク乗り」という伏線が、序盤から張り巡らされている事。  相手の嘘を見破るゲーム「馬鹿こけ」が効果的に活用されている事など、脚本も丁寧で良かったですね。  ラブコメではお約束の、ハッピーエンド前の喧嘩についても「互いの文句を、替え歌で熱唱する」って形にしており、重苦しい印象を与えず、笑って観られるような感じに仕上げてある。  その一方で「やっと目論見通りに別れられるとなった際に、寂しそうな顔になるヒロイン」の場面ではグッと来るものがあったし、そういった「決めるべきところは決める」作りなのも心地良かったです。  クライマックスにて、アンディを追っかけバイクで街を疾走する場面も良かったし、予定調和なハッピーエンドに着地してくれるしで、終わり方も文句無し。  よくよく考えてみたら「こんな相手の心を弄ぶような賭けするのって、どうなの?」という疑問も湧いてきたりするんですが、観ている間はスピーディーで楽しい作りゆえに、全く気にならなかったんですよね。  中には上司の悪口を言ったりする場面もあるんだけど、そこも陰湿な印象は受けなかったし、やはり監督の魅せ方、役者の演じ方が上手かった、って事なんだと思います。  それでもあえて不満点を述べるなら……ヒロインのアンディが職場でハンバーガーに齧り付いてる時に見せる「髪を後ろに結んだ姿」が非常にキュートだったので、出来ればアレをメインの髪型にして撮ってもらいたかったとか、そのくらいかな?  ラブコメ好きには安心してオススメ出来る、良質な一品でした。[DVD(吹替)] 7点(2020-02-20 14:20:10)(良:2票) 《改行有》

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