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プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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41.  きみがくれた未来 《ネタバレ》  こんなに可愛くって、しかもレッドソックスのファンな弟がいるだなんて、全くもって主人公が羨ましい。  一応、本作には女性のヒロインも登場しているのですが、明らかに「男女のロマンス」よりも「兄弟の絆」を重視した作りになっていますよね。  大人な自分としては、自然に兄の側に感情移入し (こんな可愛い弟がいたら、そりゃあ楽しいだろうな)  と思えた訳ですが、多分コレ、幼い子供が弟の側に感情移入して観たとしても (こんな恰好良いお兄ちゃんがいたら、きっと楽しいだろな)  って思えたんじゃないでしょうか。  そのくらい「理想の兄弟像」が描けていると思うし、兄を演じたザック・エフロンも、弟を演じたチャーリー・ターハンも、素晴らしく魅力的だったと思います。  「主人公は幽霊と会話出来るし、触れ合う事も出来る」という設定の使い方も上手かったですね。  特に序盤の、サリバン中尉殿とのやり取りなんて、凄く好き。  出征して戦死した友人に対し「俺も一緒に行けば良かった」と悲し気に訴える主人公と「来なくて良かったんだ」と笑顔で応え、静かに立ち去る友人。  ベタなやり取りなんだけど、じんわり心に沁みるものがあって、とても良かったです。  「実はヒロインも幽霊だった(正確には、仮死状態による生霊?)」というドンデン返しについても、彼女が墓場で眠っていたという伏線なども含めて、鮮やかに決まっていたんじゃないかと。  それと、この映画って「何時までも死者に囚われていないで、前を向いて生きるべき」という、ありがちなテーマを扱っている訳だけど、それがちっとも陳腐に思えなかったんですよね。  何せ本作においては「主人公は幽霊と会話出来るし、触れ合う事も出来る。たとえ幽霊でも弟と一緒にいれば、弟が生きていた時と何も変わらない、楽しい日々を過ごせる」という設定な訳なのだから、主人公が世捨て人のような暮らしをしていても納得出来るし、自然と感情移入出来ちゃうんです。  この手の映画の場合、いつまでもウジウジ悩んでいる主人公に共感出来ず、むしろ主人公を励ます側の目線で観てしまう事が多い自分ですら、本作に限っては完全に主人公側の目線で観る事が出来た訳だし、これって何気に凄い事なんじゃないでしょうか。  「良くあるタイプの映画でも、設定や描き方に一工夫加える事によって、独特な味わいになる」例の一つとして、大いに評価したいところです。  弟とのキャッチボールに、恋の悩み相談、雨の森ではしゃいで遊ぶ姿なんかも非常に楽し気に描かれており  (このままずっと、兄弟一緒の世界で生きていくのも、それはそれで素敵な事じゃないか……)  と思わせる作りになっているのも、凄いですよね。  「死者に囚われて生きる事」を決定的に否定するような真似はせず、むしろその生き方の魅力を存分に描いておいたからこそ、終盤における主人公の決断「弟と共に過ごす日々よりも、愛する女性の命を救う事を選ぶ」行為にも重みが出てくる訳で、この前後の繋げ方は、本当に良かったと思います。  約束の森で、一人ぼっちになった弟が「兄は自分よりも大切な存在を見つけたんだ」と悟ったかのように、寂しげに立ち去るも、恨み言などは一切口にせず「お兄ちゃん」「好きだよ」と呟いてから消えゆく様も、本当に健気で……観返す度に瞳が潤んじゃうくらい。  ラストシーンにて、以前のように会話する事も、触れ合う事も出来なくなってしまった兄弟が「それでも、何時かまた会える」「会えない間も、いつまでも俺達は兄弟だ」と約束を交わす終わり方も、凄く好きですね。  冷静になって考えてみると、肝心のヒロインには魅力を感じなかったとか、弟がお兄ちゃんにしか執着してないので両親の置いてけぼり感が凄いとか、色々と難点もある映画なんですが……  眩しいくらいの長所の数々が、それらを優しく包み込んで、忘れさせてくれた気がします。  「面白い映画」という以上に「好きな映画」として、誰かにオススメしたくなる一品でした。[DVD(吹替)] 8点(2019-11-07 06:36:42)(良:1票) 《改行有》

42.  タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら 《ネタバレ》  イーライ・クレイグ監督のデビュー作にして、現在僅か二本しかない監督作の内の一本。  本当、こう書いていて自分でも「何故?」と戸惑っちゃうくらいですね。  これだけ面白い映画でデビューを飾った監督さんが、七年後に発表した「リトルデビル」(2017年)を除いては殆ど仕事していないだなんて、全くもって不思議。  名優サリー・フィールドの息子さんだし、経済的にも余裕があって、無理して働く必要は無いって事なのかも知れませんが……  自分としては「もっと色んな映画を撮って欲しいなぁ」って、切実に思っちゃいます。  で、この度、感想を書くに当たって久々に観賞したのですが、初見の衝撃を抜きにしても、やっぱり面白かったですね。  スラッシャー映画をパロった内容なんだけど、既存のスラッシャー映画を馬鹿にして笑いを取るような真似はせず、むしろ愛情を感じる作りになっているのが、実に嬉しい。  例えば、タッカーがチェーンソーを振り回す場面は「悪魔のいけにえ」(1974年)が元ネタだろうなと思えるし、唯一生き残った女性を殺人鬼が妊娠させるというのは「罰ゲーム」(2006年)が元ネタだったりするのかなぁと思えるしで、古今東西、メジャーからマイナーまで幅広く色んな品を研究して作ったのが窺えるんですよね。  作り側と観客側とで「オタク心の共有」「仲間意識」のようなものを感じられて、観ていて楽しかったです。  残酷な場面も多いはずなのに「よそ見して走ってたせいで串刺しになる男」にも「ウッドチッパーに自分から飛び込む男」にも、思わず笑っちゃうようなユーモアを感じられて、不愉快にはならないというバランスに作ってある点も凄い。  本作は「色んなスラッシャー映画を観ている人」ほど楽しめるように作られている訳ですが「殆どスラッシャー映画を観た事が無い人」が観ても、意外と楽しめるんじゃないかなぁ……って思えるくらい、その辺りの配慮が上手かったです。  本来なら主人公になってもおかしくない「キャンプにやってきた学生達のリーダー格」であるチャドが、殺人鬼に変貌するという捻った脚本なのに、裏切られた感じがしない点も良いですね。  序盤から「田舎者を見下す」「ヒロインに無理やり言い寄る」などの場面を描いておき、チャドが「嫌な奴」である事を匂わせておいたからこそ、急展開になっても納得出来た訳で、本当に丁寧な作り。  冒頭の「殺人鬼が暴れる後日談」にて、火傷したチャドの顔を見せておき、別荘が焼け落ちてチャドが火傷した場面にて(あぁ、あの殺人鬼はコイツだったのか……)と観客に覚らせる構成なのも、上手かったと思います。  彼の父親も武器を投げて獲物を仕留めるスタイルだった為、作中にてやたらと「チャドが武器を投げる場面」が挟まれていた事も、正体判明シーンへの、良い繋ぎになっていたんじゃないかと。  そんな殺人鬼側の描写だけでなく、主人公となる二人組「タッカーとデイル」の描き方も、凄く良かったですね。  巨大な鎌を持ったままで女の子に話し掛け、怯えさせちゃう場面とか「見た目は怖いけど、中身は純朴」と、観客に納得させる力がある。  「駄目男なデイルを、タッカーが色々フォローしてあげている」という二人の関係性を描いておいた上で、タッカーがデイルに「お前は本当は凄い奴なんだ」と諭し、奮起させる展開に繋げるのも上手かったです。  ボーリング場にて、デイルの知人であるB.J.も美女とトラブルを起こしてしまい(デイルみたいに、これがキッカケで彼女と結ばれるのでは?)と予感させて終わる辺りも、良い〆方でしたね。 ・「聞いたことは全部覚えちまう」というデイルの特技が「お茶の成分で急性アレルギーを引き起こさせる」くらいの使われ方しかしなかったのは残念。 ・チャドというキャラクターが「蛙の子は蛙」「殺人鬼の子は殺人鬼」というメッセージ性を秘めているように思える辺りは、観ていて居心地悪い。  といった感じに、気になる点もあるにはありましたが……まぁ、この辺りを突っつくのは「不満」「文句」というより「贅沢な要求」って感じですね。  そんな本作が「殺人鬼の子は殺人鬼」という形で終わってしまった事は、監督の次回作「リトルデビル」にて「たとえ父親が誰であれ、人はなりたい自分になれる」というテーマを扱っている事と、無関係ではないのかも知れません。  興味がおありの方は、是非「リトルデビル」も観賞して、その辺りについても確かめて欲しいものです。[DVD(字幕)] 7点(2019-10-01 18:50:50)(良:2票) 《改行有》

43.  リトルデビル 《ネタバレ》  明らかに「オーメン」(1976年)の亜流作なのですが、単なる模倣で終わらず「たとえ悪魔であろうと、我が子である以上は守ろうとする主人公」という物語に昇華してみせたのが、お見事でしたね。  中盤までは「義子のルーカスが悪魔であると知り、殺そうとする主人公」という「オーメン」そのまんまな展開であっただけに、途中で主人公が思い直し、全く違った方向性へと舵取りするのが、実に痛快。  監督は前作の「タッカーとデイル」でも、王道スプラッター映画をパロった上でハッピーエンドな着地を迎えてみせ(そう来たか!)と唸らせてくれたものでしたが、本作もそれに近しい魅力を備えており(やっぱりイーライ・クレイグ監督の映画は良いなぁ……)って、しみじみ感じさせてくれました。  2019年現在、僅か二本の映画しか発表していない寡作の人というのが、非常に惜しまれます。  配役も絶妙であり、特に子役のオーウェン・アトラスは「無表情だと不気味なのに、笑うと可愛い」というルーカス役を、見事に演じ切っていましたね。  この映画のストーリー上、主人公だけでなく観客にも「ルーカスは不気味に思えたけど、実は可愛くて良い子なんだ」と感じさせる必要がある訳なのですが、その点に関しては、文句無しでクリアしていたと思います。  プールで父子が仲良くなる件も微笑ましかったし、笑顔を見せる場面では、主人公同様に観ているこっちまで(笑うと、こんなに可愛かったのか……)と、ドキッとしちゃう。  アイスを舐めながら、主人公の事を初めて「パパ」と呼ぶ姿なんて、もう抱きしめたくなるくらいに愛らしかったです。  レズビアン(?)な同僚のアルも良い味出してるし、出番は少なめながら、主人公の妻に女性としての魅力が感じられた辺りも嬉しかったですね。  モンスタートラックや、最優秀パパのボールなど、伏線の張り方や、回収の仕方も鮮やかだったと思います。  主人公自身が「父親に捨てられた」という過去を持っている為、ルーカスに幼少期の自分の姿を重ね合わせ、自然と心を開いていく流れにしたのも上手い。 「お前の本当の父親が誰でも関係無い」 「お前はお前だ。何時だってなりたい自分になれる」  という台詞は、ルーカスに語り聞かせる以上に、自分に言い聞かせる効果もあったんだろうなと、自然と納得する事が出来ました。  主人公が「息子殺し」な自分ではなく「息子を守ってみせる」自分になる事を選ぶ展開にも繋がっている訳で、この辺りの脚本は、本当に巧みだったと思います。  「義理の父親です」という、ルーカスの父親である事を間接的に否定する台詞を何度も繰り返しておいた上で、クライマックスにて「絶対に離さない、お前の父親だから」と主人公に言わせる構成にも、グッと来ちゃいました。  難点としては、意味ありげな双子の少女が、本筋に絡まず終わってしまうのは寂しい事。  ルーカスの言葉で飛び降り自殺を図った理科教師が、どう見ても死んでるので、入院くらいで済ませた方が良かったんじゃないかと思えた事。  終盤に集結したパパ友が全く活躍しておらず、存在意義が感じられなかった事とか、その辺りが挙げられそう。  それと、プールでルーカスを救う場面では、出来れば「神の啓示」ではなく、完全に自分の意思で助けに飛び込んで欲しかったなと思えたのですが……  これに関しては、何度も観賞している内に(たとえ神様から「見殺しにしろ」と命じられても、主人公なら助けたはずだ)と、次第に考え方が変わってきましたね。  上述の「なりたい自分になれる」という台詞もありますし「神様のお蔭で、息子を殺さずに済んだ」という訳ではなく「神様は、悩める主人公に助言をしてあげただけ」って事なんだと思います。  父子で出場した丘下りレースにて「スピードを出し過ぎるな」と言われても聞き入れず、笑顔ではしゃぐルーカスの姿を映し出し(やっぱりこの子、悪魔だな……)って感じさせて終わるのも、非常に御洒落。  期待値の高い中で観賞したのですが、そんな高いハードルすらも飛び越えてくれた、気持ちの良い一品でした。[インターネット(吹替)] 8点(2019-09-25 16:53:08)《改行有》

44.  ネイバーズ2 《ネタバレ》  前作同様、ラドナー夫妻のセックス場面から始まる構成には笑っちゃったけど、その後のリアルな嘔吐描写にはドン引き。  それで出鼻を挫かれちゃったせいか、前作ほどには楽しめないまま終わってしまい、残念でしたね。  クロエ・グレース・モレッツ演じるシェルビーも、可愛いは可愛いんだけど「魅力的なキャラクター」とまでは思えず、存在感が薄かったです。  なんせ後日談でも、マックとテディは「二人目の子供が生まれ、父親として更に成長する」「結婚式のプランナーという天職を見つける」という成長が描かれていたのに対し、彼女だけは姿を見せないままでしたからね。  やはり本作の主人公はマックとテディの二人であり、彼女はその中に割って入る事が出来ないまま終わってしまったんだな……と思えてしまいました。  不満点は他にもあって、前作ラストにて「仲間のハグ」をして和解したはずのマックとテディが、何故か再び仲違いしてるのも、如何なものかと。  その後、二人は前作以上に仲良くなるのだから、その為に必要な前振りだったのかも知れませんが「前作のラストを台無しにされた」感もあったりして、どうにも受け入れ難いんですよね。  こう言っては何ですが、あまり必然性が感じられませんし、これなら「1と違って2では、ずっと仲良し」という設定にしても良かった気がします。  前作に比べると、隣人と決定的な対立に至る理由が「パパを呼ばれたから」っていうのも弱いですし、終盤でキーアイテムになるエアバックの伏線が分かり難いのも気になります。  特に後者に関しては、前作を未観賞の場合「なんでエアバック?」と思っちゃいそうだし、もっと丁寧に描いて欲しかったですね。  例えば、テディに「アンタ達のせいで俺は逮捕された」と言われた際「君が仕掛けたエアバックの悪戯のせいで、俺は怪我した」とマックが言い返すとか、そんな感じでも良かったでしょうし。  そうやって、序盤の段階で分かり易く説明しておけば、終盤にエアバックを使おうと言い出した際に、もっと盛り上がれたんじゃないかなって思います。  「男性主体のフラタニティと違って、女性主体のソロリティはパーティーを開けない」という理不尽さに対するウーマンリブ運動のような流れも、男性の自分としては今一つピンと来なくて、ノリ切れず仕舞いでした。  翻って、良かった点はといえば……やはり、テディのキャラクターが挙げられそうですね。  元々自分は前作を観た段階で「マックよりもテディの方が魅力的だ」と感じていたのですが、2を観てもその感覚が揺らがなかったのは、何だか嬉しかったです。  友達が社会的に成功している中で、自分だけが取り残されている寂しさとか、同居していた親友が結婚して、家から追い出されてしまう悲しさとか、凄く感情移入しちゃうんですよね。  友人の前では強がって、笑顔で別れたけど、その後に裸足で外に飛び出し、泣きながら走り続ける場面なんて、特にお気に入り。  そんな落ちこぼれのダメ人間なはずのテディが、学生グループのリーダーとしては極めて優秀であり、シェルビー達をアシストして「出来る男」っぷりを見せ付けていく流れなんかも、実に気持ち良かったです。  年齢やら性別やらがキッカケとなり、結局シェルビー達とは別れてしまい、ラドナー夫妻の家に居候する事になって、テディもまた「家族の一員」に加わる流れも、凄く好き。  その他、前作では赤ん坊だったステラが成長して幼女になっているのも、微笑ましくて良かったですね。  シェルビー達が大金を手にして、家を二件借りる事になり、ラドナー夫妻に大家になってもらうという完璧な和解エンドを迎えたのも、意外性があって良い終わり方。  総評としては、前作には及ばないまでも、充分に「好きな映画」と呼べそうな……そんな一品でありました。[DVD(吹替)] 6点(2019-09-18 07:41:47)《改行有》

45.  ネイバーズ(2014) 《ネタバレ》  バットマンといえば「クリスチャン・ベール」世代なテディと「マイケル・キートン」世代なマックとが仲良くなって、喧嘩して、仲直りするという、とても楽しい映画です。  一応、本作の主人公がどちらかといえば、太り気味のオジサンなマックとなるはずなのですが……自分としては、マッチョな若者のテディの方に感情移入しちゃいましたね。  大学では皆のリーダーでも、社会に出たら学力不足の落ちこぼれに過ぎない。  成績優秀な親友だけが立派な会社に就職して、自分は取り残されてしまう。  そんな若者特有の切なさを、ザック・エフロンが鮮やかに演じ切っており、敵役であるにも関わらず共感を抱かせてくれたんだから、お見事でした。 「赤ん坊が生まれた結果、若い頃のようにパーティーに参加出来なくなったマック達は、テディの事が羨ましかった」 「テディはマック達のような大人になりたくなかったから、現実逃避の意味を込めて嫌がらせしていた」  等々、作中に出てきた「心理学を専攻している学生」よろしく「両者の対立の原因」について推理するのも楽しいのですが……  そういった難しいアレコレを考えなくても、シンプルに面白い映画だったと思いますね。  とにかく分かり易く、丁寧に作られており、序盤で(この二階に置いてある花火が伏線なんだろうな……)と思ったら、本当にそうだったりするのが気持ち良い。  視覚的にも派手な「エアバックの悪戯」には笑っちゃったし、デニーロの物真似をはじめとして「元ネタを知らずとも面白いし、知っていたらニヤリと出来ちゃう」小ネタが散りばめられているのも、楽しかったです。  それと、これが一番大事だと思うんですが、本作は序盤にてテディとマックが意気投合する描写に、ちゃんと説得力があったんですよね。  大人になりきれない二人が、世代の壁を越えて「男友達」になる一夜を、丁寧に描いている。  だからこそ、観客としても(この二人は本来、物凄く気の合う奴らなんだ)と理解出来る訳だし、ラストにて二人が「仲間のハグ」を行うハッピーエンドも、笑顔で祝福する事が出来たんだと思います。  テディが仲間を庇って逮捕される場面では、ちょっとした感動を味わえたりもして、程好いサプライズ感があったのも嬉しかったですね。  楽しい映画だし、それ以上に、好きなタイプの映画でした。[DVD(吹替)] 7点(2019-09-18 07:37:21)(良:2票) 《改行有》

46.  ロマンティックじゃない? 《ネタバレ》  作中にて幾つかのラブコメ映画の名前が挙げられている訳ですが、その殆どを観賞済みな身としては、とても面白かったです。  主演のレベル・ウィルソンは太っているけど、美人でチャーミングな存在だし「ラブコメとしての見栄え」という点を考えても、充分に満足出来るキャスティング。  それに対し、彼氏役のアダム・ディヴァインも「美男子ではないけど、愛嬌があって優しい男」を好演しており、凄くバランスが良かったと思います。  「単純な美男美女ではないけど、魅力的な主人公カップルの映画」という形であり、作中で「美男美女が織りなす、王道なラブコメ映画」をパロっている事と併せて考えても、非常に相性の良い組み合わせだったんじゃないかと。  仕事中にラブコメ映画ばかり観てる同僚のホイットニーに、アパートの隣人なゲイ男性など、脇役がキュートなキャラクター揃いだった点も嬉しい。  この「キュートな脇役」達の中に、後に本命彼氏となるジョシュが自然と紛れ込んでいる形なので、お約束のはずの「親友と結ばれるエンド」に関しても、適度な意外性を味わえたんですよね。  「親友のジョシュを愛するべき」→「いいえ、やっぱり本当に愛すべきなのは他人ではなく自分」という、自己啓発的なエンドかと思わせておいて「でも、やっぱりジョシュが好き!」という三段仕掛けオチになっていたのも、上手い構成だったと思います。  ただ、終わり方に関しては「脱け出したと思ったラブコメ映画の世界から、実は抜け出せていない」というオチにも思えてしまい……そこが、ちょっと気になりましたね。  「汚い言葉を使おうとするとピー音が入る」という伏線があった為、ヒロインが汚い言葉を使えるようになったのは、現実世界に戻った証だとも思えるのですが、最後の歌って踊る展開は完全に「ラブコメ映画の世界」そのままなんです。  推測するに、ヒロインが迷い込んだ世界は「PG13指定の、健全なラブコメ映画」で、元いた世界は「大人向けの、普通のラブコメ映画の世界」だったと、そういう事なのでしょうか?  自分としては「結局ラブコメの世界から抜け出せていない」というバッドエンドではなく「実は元々ラブコメ映画の世界にいて、それに気付いていないだけだった」という、ハッピーエンドなのだと思いたいところです。  それと、本作は「王道なラブコメ映画」をパロってるというか、茶化して馬鹿にしているようなテイストもあるんだけど、そんな「王道なラブコメ映画」らしい場面を、ちゃんとロマンティックに、魅力的に撮っているというのがポイント高いんですよね。  ゲイの隣人にスクーターに乗っけられ、出勤する場面なんかは凄くオシャレだったし、音楽の使い方なんかも洗練されてる。  花びらに書かれた電話番号を繋げてみせる場面には感心しちゃったし、夜のアイス屋に忍び込んで二人で盗み食いする場面なんかも良い。  「君の目には愛が映らない」というジョシュの台詞には切なくなったし、窓の外の広告に見惚れてばかりいると思われた彼が、本当はずっとヒロインを見つめていたんだと分かるシーンも、実にロマンティック。  つまり「ラブコメをパロった映画」としての面白さと共に「王道なラブコメ」の魅力も同時に味わえる形になっている訳で、これは非常にお得感がありましたね。  皮肉な目線を備えつつも、ちゃんと「ラブコメを愛する気持ち」があるからこそ作れた映画なんじゃないかな……と、そう思えました。[インターネット(吹替)] 7点(2019-09-18 03:49:12)(良:1票) 《改行有》

47.  なんちゃって家族 《ネタバレ》  こんなタイトルとあらすじである以上、結末は「なんちゃって家族が本物の家族になる」しか有り得ない訳ですが……  その予定調和っぷりも含めて、充分に楽しむ事が出来ましたね。  主人公一家となる四人は全員魅力的だったけど、自分としてはジェニファー・アニストン演じるローズのキャラが、特にお気に入り。  「本業はストリッパー」であり「なんちゃって妻」であり「なんちゃって母親」でもあるという、とても複雑な存在のはずなのに、非常にシンプルで女性的な魅力が伝わってくるんですよね。  ちょっと生活に疲れた感じとか、ストリップで生計を立てているけど売春はやらないという明確な線引きを行っている辺りとか、とても良かったと思います。  喧嘩ばかりしてた一家が歌を通じて仲良くなるっていうのも王道な魅力があるし、その一方で、スレた態度の「なんちゃって娘」が花火にはしゃぐ姿が可愛らしいとか、適度な意外性を与えてくれる場面があるのも、良いバランス。  息子の恋路を応援したり、娘の彼氏候補に質問責めしたりと、主人公とヒロインとが段々「父親」と「母親」らしくなっていく様も、実に微笑ましかったですね。  クライマックスにて、主人公が敵役の銃の前に立ち「家族」を守る為に立ち向かう姿にも、グッと来るものがありました。 ・冒頭で金を奪ったチンピラ連中に罰が当たらないまま終わるので、スッキリしない。 ・キャンピングカー好きとしては、主人公達が乗り込む際に車内がどんな構造なのかも映し出して欲しい。 ・「ビビった時は三つ数えてから実行しろ」っていう父から子への助言が、殆ど役に立たないまま終わるのは拍子抜け。  等々、欠点やら不満点やらも色々見つかるんだけど、まぁ御愛嬌。  ラストシーンにて、互いに愚痴りながら「家族」としての生活を続けてる姿で終わるっていうのも、良いまとめ方でしたね。  (そんなこと言って、本当は家族になれて嬉しいんだろう?)と、観終わった後にも口元が綻ぶような、後味爽やかな映画でありました。[DVD(吹替)] 7点(2019-08-26 07:29:26)(良:2票) 《改行有》

48.  ある日モテ期がやってきた 《ネタバレ》  大前提となる「ヒロインのモリーは、誰もが完璧と認めるほどの美女である」って設定に対し(えっ? そうなの?)と思ってしまった事が痛かったですね。  彼女は勿論美人ではあるけど、いくらなんでも作中で絶賛され過ぎで違和感があったし(女友達のパティの方が美人じゃん)と思えたりもして、最後まで映画の世界に没頭出来なかった気がします。  「ホッケーに詳しくて、一緒に観戦して盛り上がれる」「笑顔で家事を手伝ってくれる」などの、内面的な魅力に関する描写は良かったですし、あまり容姿ばかり絶賛するような真似はせず「見た目は美人だし、中身はもっと良い女」的な描き方をしてくれていたら、もう少し自然に思えたかも知れませんね。  主人公の人の良さにモリーが惹かれていく描写も説得力あったし「キャラクターの内面の魅力」の方は確かに感じ取る事が出来ただけに、勿体無かったです。  あと、これは意図的にそうしたんでしょうけど、主人公の家族や元恋人の描写が酷くて、全然救いが無いんですよね。  「主人公の兄は意地悪だけど、なんだかんだで弟想いな一面もある」って描写があるだろうなと思ったのに、兄は最後まで意地悪なまま。  作中で散々「嫌な女」扱いされてるマーニーにも、少しはフォロー入るだろうなと思っていたのに「嫌な女」のまま。  最終的に主人公とヒロインは結ばれるんだけど、その辺の脇役の扱いが酷いせいで、どうもハッピーエンドを祝福する気持ちになれなかったです。  クライマックスとなるはずの「元恋人と家族に啖呵を切って、主人公が飛行機を降りようとする場面」でも、その後に「主人公は飛行機会社からの罰金を恐れて、結局は元の席に戻る」っていう恰好悪過ぎるオチが付くもんだから、これにもガッカリしちゃいましたね。  捻った展開にして笑いを取ろうとしたのかも知れませんが、そこは素直にスカッとさせて、観客にカタルシスを与える展開にして欲しかったです。  「周りから見て釣り合わないカップルのラブコメ」という、中々珍しいテーマの作品でしたし、観ていて退屈はしなかったのですが……  どうも「好きな映画」とは言い難い、作り手との壁を感じてしまうような一品でした。[DVD(吹替)] 5点(2019-05-15 10:04:02)《改行有》

49.  サバイバル・ソルジャー 《ネタバレ》  虎に襲われる場面にて(これはもしや、ヴァン・ダムは序盤で退場して出て来なくなるパターンなのでは?)と危惧しちゃいましたが、そんな事は無くて一安心。  鮮やかな蹴りを披露してボスキャラを倒してくれるサービスシーンもありましたし「ヴァン・ダムは主演じゃないけど、彼のファンも満足出来るように作ってあるよ」という制作側の配慮が感じられましたね。  でも、映画自体は色々と粗が目立つというか……正直、観ていて退屈する時間の方が長かったです。  大人版「蠅の王」といった趣のストーリーなのですが「登場人物を子供から大人に置き換えたからこその魅力」のような物が全く感じられず、本当に舞台設定やプロットを拝借しただけって形なのが、如何にも寂しい。  「地獄の黙示録」や「コマンドー」をパロった場面でも、どうもテンションが上がらなくて「独自の魅力を打ち出せないから、他の作品の真似をしてみただけ」とすら思えたくらいです。  敢えて言うなら「会社では冴えない主人公が、無人島で活躍して同僚を見返してみせる」というカタルシスが本作独自の魅力なのかも知れませんが、その辺りも上手くやれてなかった気がするんですよね。  「日頃はダメ人間扱いされている主人公だけど、実は凄い奴だった」とは思えなくて、敵役になる同僚のフィルが無能で酷い奴だから、相対的にマシに見えるだけって感じなんです。  こういう「ダメ人間にとって都合の良い妄想映画」的なストーリーは自分も好きなんだけど、それだけに上手くやって欲しいというか……  (ダメ人間の自分から見ても、これは都合が良過ぎて嘘っぽいよ)と思えてしまったんだから、かなり辛かったです。  これなら「実は凄い奴だった」パターンじゃなくて「不器用ながらも無人島で頑張って成長し、周りに認められるようになる主人公」ってパターンの方が、もっと感情移入出来た気がしますね。  あと、これは我ながら贔屓目が過ぎると思うんですが、道化役を演じるヴァン・ダムが「恰好良い」「頼もしい」ってオーラを隠し切れていなかった事も、映画としてはマイナスポイントかも。  そんなヴァン・ダムを差し置いて、スター性に乏しいルックスの主人公が「恰好良くて、頼もしい存在」として描かれているもんだから、余計に説得力が薄れるし、胡散臭いキャラクターに思えちゃったんですよね。  本作はヴァン・ダムの出演が売りの映画なんでしょうけど、どちらかというと彼がいない方が完成度は高まったんじゃないかな、って気がしました。  ラストにて、フィルの偶像に火を放って救援の狼煙を上げる件は中々良かったし、詐欺師として逮捕される間際「刑務所宛てに手紙を書いて、面会にも来て欲しい」と主人公に頼みつつ敬礼して別れるヴァン・ダムはやっぱり良い味出していたしで、好きな場面も色々あるんですけどね。  「ヴァン・ダム出演映画は、一通りチェックしておきたい」という熱心なヴァン・ダム好きなら、ある程度は満足出来るかも知れませんが……  自分としてはオススメし難い、物足りない映画でした。[DVD(吹替)] 4点(2019-05-02 23:03:51)《改行有》

50.  小悪魔はなぜモテる?! 《ネタバレ》  色んな映画や小説のオマージュが散りばめられており、それらの答え合わせというか「元ネタ探し」をするだけでも楽しい映画ですね。  (あぁ、ここはあの作品が元ネタなんだな)とニンマリ出来ますし、そういう意味では「映画好き」よりも「映画マニア」ってタイプの人が喜びそうな内容に思えました。  それでいて「元ネタを知らないと楽しめない」っていう訳でもなく、きちんと万人向けの娯楽映画として仕上げている辺りも、実にお見事。  個人的には「緋文字」や「ジョン・ヒューズの映画」だけでなく「グリース」(1978年)の影響も色濃いというか「してもいない性体験を自慢する主人公」「強がって悪ぶってみせる自分と、本当の自分との葛藤で悩む主人公」って意味で、かなり参考にしているんじゃないかと思えたので、劇中で「グリース」の曲を流すだけでなく、もっとハッキリ言及してくれると、より嬉しかったかも。  黒人の義弟に、色んな経験談を語ってくれる両親など、主人公家族が「良いキャラ」揃いな事。  主演のエマ・ストーンが非常に可愛らしい事。  噂が広がる様をテンポ良く描いてみせる演出や、音楽の使い方が良かった事。  その他にも、数々な長所が備わっている映画なのですが……  ちょっと終盤のまとめ方が雑というか、色々と曖昧なまま終わった感じなのが残念でしたね。  なんていうか「主人公が誤解を受けて迫害されていく」までの流れは上手いし「この後、彼女はどうなってしまうの? どうやって救われるの?」と観客を釘付けにするまでは良かったんだけど、その解決法に説得力が無かった気がします。  ビデオ越しに主人公が真相を一方的に語るだけじゃあ、殆どの人には信じてもらえないと思うし「たとえ信じてもらえなくても、私には最高の彼氏が出来たから平気」って結論を出すなら、わざわざ真相を暴露するような真似しなくても良かったじゃんと思えるしで、どうも中途半端なんですよね。  同情の余地はあるにせよ、嘘を吐く見返りとして男達から代金(ギフト券)を受け取っている訳だから、それを「困ってる人を見捨てられないので、嘘を吐いてあげた」って感じに、まるで善行みたいに描かれるのも、ちょっと違和感。  「じゃあ代金を受け取ったりするなよ」とツッコむしか無かったです。  あと、親友のリーやマリアンヌとは和解出来たのか、グリフィス先生夫妻は今後どうなってしまうのかってのも気になるし……どうもカタルシスに欠けていた気がします。  主演のエマ・ストーンは好きな女優さんなので、最後の最後で疑問符が付いちゃう終わり方になったのが、返す返すも残念。  祖母からの贈り物であるメロディーブック「ポケットに太陽を」をすっかり気に入って、シャワーを浴びながら唄ったり、着メロに設定したりしている様もキュートだったし、彼女が画面の中でアレコレしているのを眺めるだけでも楽しかったので、それなりの満足感は得られたんですが……  観ている間だけでなく、観終わった後も「映画の続き」が気になってしまうという、そんな物足りなさも残る一品でした。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2019-03-28 00:40:39)(良:2票) 《改行有》

51.  空飛ぶペンギン 《ネタバレ》  家族の絆が再生する様を描いた映画なんだけど、そのキッカケとなるのが「ペンギン」っていうのが珍しいですね。  主人公は離婚した身であり、今は別居中な子供達の気を引く為にペットのペンギンを飼う流れとなるのですが、そんな「子供達と上手くやる為の道具」に過ぎなかったはずのペンギンに対し、愛着を抱くようになる流れも、ちゃんと描かれている。  高級な家具に囲まれていた部屋を、ペンギン達の為に雪まみれにする流れは微笑ましいものがあったし、公園でペンギンや息子達と一緒にサッカーして盛り上がる場面なんかも良かったです。  邦題の通り「空飛ぶペンギン」という、ビジュアル的に派手な見せ場も用意されているし「餌の魚ではなく、主人公を選ぶペンギン達」という場面によって、息子達だけでなく、ペンギン達も主人公の家族になったんだと示して終わる辺りも、上手かったと思います。  そういった「ファミリー映画」「動物映画」としての魅力を感じさせる場面がしっかり用意されてあった点は、文句無しで素晴らしかったです。  ただ、この映画は色々と気になる点も多かったりして……  一概に傑作とは言えない出来であったのが、非常に残念ですね。  基本的には好きな作風の品なので、それらの点も「愛嬌の内」と捉えたいところなんですが、ちょっと気になる点が多過ぎて、許容量をオーバーしてしまった気がします。  まず、根本的な話になってしまうんですが、ペンギン達を可愛いとは思えなかったりしたんですよね。  アップになると顔も怖いし、鳴き声だって、耳に心地良い響きとは言えない。  おまけに糞をするシーンをギャグとして何度も描いたりするもんだから、これには正直ゲンナリです。  ペンギンが主軸となる映画において、その可愛さを殆ど感じられなかったっていうのは、致命的なマイナスポイントでした。  主人公の部屋から聞こえる鳴き声や足音に迷惑している隣人に、元嫁の現恋人である男性など、主人公にとって都合の悪い存在の影がやたら薄いし、悪人っぽく描かれている点なども、何だか偏っている気がして、観ていて居心地が悪くなりましたね。  白頭鷲はアメリカの象徴であり、主人公の父親のニックネームも白頭鷲であるとか「アメリカは勝負に勝った者を逮捕するような国じゃない」って台詞だとか、やたらアメリカって国を意識した作りなのも、どうもノリ切れない。  こういうファミリー映画兼動物映画にまで、そういう愛国心みたいものを持ち込んで欲しくないなって、つい思っちゃいました。  で、最後に、これは短所ではなく長所に分類される事だと思いますが……  実は本作において一番キュートに感じられたのが、子供達でもペンギン達でもなく、脇役である「パ行が好きな秘書」のピッピだったりもしたんですよね。  単純に女優さんのルックスも愛らしいし、パ行の言葉ばかり好んで用いるというギャグキャラなのに、秘書としては意外と有能っていうアンバランスさも、非常に魅力的だったと思います。  彼女にスポットを当てた続編なり外伝なりが存在するのであれば、是非観てみたいものです。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2019-03-22 21:54:44)(良:1票) 《改行有》

52.  ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春 《ネタバレ》  ゾンビを主人公にした映画は何本もありますが、自分にとっての「ゾンビ主人公映画」初体験がコレだった気がします。  正確には「半分ゾンビ」という設定であり、主人公は「人間を食べたい」という欲望は全く抱いていない為「食人鬼の苦悩」的な物は描かれていなかったりするので、その点については拍子抜けでしたね。  他にも「途中で死んだ仲間のクリフはゾンビ化しないの?」「ラストで主人公はヒロインと結ばれたけど、子作りとかは可能なの?」と気になる点が多く、本作における「ゾンビの生態」があまり説明されずに終わってしまうのは、かなり残念。  せっかく劇中にて「ゾンビを研究する集団」まで登場させているのだから、彼らの口を通して、もっと詳しく説明して欲しかったです。  監督であるピアース兄弟の父親は、あの名作「The Evil Dead」(邦題:死霊のはらわた)にスタッフとして参加していたとの事であり、その縁もあってか、劇中のドライブインシアターにて「The Evil Dead」を流したりと、過去のゾンビ映画に対するオマージュ描写が散見される辺りは、同じゾンビ映画好きとして嬉しかったですね。  「主人公はゾンビである」という設定が、劇中でキチンと活かされており「ゾンビを退治しようとする人間達から逃げる主人公」という、通常とは真逆の面白さが味わえる辺りも良かったです。  普通のゾンビ映画であれば、如何にも主役になりそうな黒人青年がゾンビハンターと化して主人公達を追ってくるって点も、面白くて好きですね。  この辺り、主人公のマイクが「冴えない眼鏡のモブ顔」って感じなのに対し、黒人青年は「精悍な二枚目」っていうビジュアル面の対比もあって「普通なら主人公のはずのキャラクターが敵役」「普通なら無数にいるゾンビの中の一人に過ぎないはずのキャラクターが主役」という設定の妙味を、より深く楽しめるようになっていたと思います。  同じ「半分ゾンビ」仲間である相棒のブレンドが、頭の軽いチャラ男と思わせておいて、要所要所で名台詞を吐いてくれるという意外性も、実に心地良い。  ゾンビになった事を悲観する主人公に対し「そりゃあ個性っていうべきだ」と元気付けたり「彼女の気持ちは分からなくたって良い。でも、お前の気持ちは確かなんだろう?」と告白を後押ししてくれたりする様が、凄く良かったんですよね。  彼の他にも、半分ゾンビではない完全にゾンビなチーズに、元軍人のクリフなど、道中で一緒になる仲間達が三人とも魅力的だったりするもんだから、ゾンビ映画としてだけでなく、青春ロードムービーとしても、しっかり楽しむ事が出来ました。  途中までは苦みを含んだ展開が多く(これは主人公とヒロインが結ばれずに終わる可能性もあるかな……)と思わせておいて、意外なハッピーエンドで終わってくれるって辺りも、嬉しかったですね。  上述の通り、細かい点について考え出すと(半分ゾンビの主人公と、人間のヒロインとで、本当に上手くいくんだろうか?)って疑念も湧いてきたりするんですが、そんな野暮な観客に対し「愛さえあれば大丈夫だよ」と言わんばかりに、それまで敵だった人間達にまで二人を祝福させて、有無を言わさず終幕させている。  その強引さと、能天気なほどの人間賛歌&ゾンビ賛歌っぷりに、初見では戸惑う気持ちもあったんですが……  (この映画は、そこが良いんだ)と、今ならそう思えちゃいますね。  明るく、和気藹々としたNG集に至るまで、ゾンビ映画らしからぬ陽性な魅力を味わえた、とても貴重な一本でありました。[DVD(吹替)] 7点(2019-03-21 17:22:21)(良:1票) 《改行有》

53.  アイアン・スカイ 《ネタバレ》  これは面白いっていうよりは、観ていて楽しい映画ですね。  月の文明を発見する件や、宇宙船同士の戦いを描いた場面なんかは純粋にワクワクさせられるし、各所にシニカルな笑いも散りばめてある。  円盤型の宇宙船に、ハーケンクロイツを模った月面建造物など、魅力的なビジュアルが次々に飛び出す辺りも良かったです。  一歩間違えば「正義のアメリカ」VS「悪のナチス」な映画になっていてもおかしくなかったのに、ちゃんとアメリカ側も悪役っぽいバランスで描いているので、違和感無く観賞出来たのも、非常にありがたい。  軍服姿の金髪美人に、眼鏡の女性大統領(サラ・ペイリンがモデル)など、オタク心をくすぐる女性キャラクター達まで登場しているので、所謂「萌え映画」として楽しむ事も可能なんじゃないかな、って気がしました。  チャップリンの「独裁者」を効果的に活用し「月世界の住人は偏った教育を受けている」と分かり易く説明している点も上手いですね。  120分以上もある反戦映画が大幅にカットされ、月世界ではヒトラーを称える十分間の短編映画として扱われているとの事なのですが、その十分間バージョンの「独裁者」も是非観たいなぁ……なんて思っちゃいました。  他にも、手を震わせながら眼鏡を外す「ヒトラー 最期の12日間」のパロティ描写など、クスっとさせられる場面が多かったです。  ただ、どうせ「独裁者」と「最期の12日間」を劇中で扱うなら、いっそヒトラー本人を復活させても良かったんじゃないかとも思えたんですが……  まぁ、そちらのネタに関しては続編の「アイアン・スカイ:ザ・カミング・レース」に持ち越し、という事なんでしょうね。  でも、映画単体として考えると「この流れならヒトラーも出るんじゃないかと思ったのに、結局出ない」って辺りの肩透かし感は、欠点になってしまうかも。  その他にも…… 1:地球のスマホに驚いたりして、文明レベルは月の方が劣る描写があったのに、軍事力では互角に近いバランスだと終盤明らかになるのは違和感がある(せめて、もっと早めに説明しておいて欲しい) 2:国家を流すとナチス兵達は敬礼してしまう習性を利用して形成逆転する流れを、二度もやるのは流石に白ける。 3:ヴィヴィアンとアドラーの因縁を描いておきながら、両者を対決させずに終わるのは残念。  といった具合に、色々気になる点や、不満点も多かったりするんですよね、この映画。  黒人の主人公が白人に改造されてしまう件はショッキングだったけど、終わってみれば(別に白人に改造されなくても、話としては成立したのでは?)と思えちゃうしで、どうにも消化不良。  この辺りは正直、設定倒れというか、面白い設定を思い付いたら全体のバランスなど考えずに詰め込んじゃうという、オタク映画の悪い部分が出ちゃってる気がします。  あとは「女性大統領が、ナチス式の演説を取り入れて支持率をアップさせる」って件が一番シニカルで面白かったですし、月育ちのアドラー准将と婚約者のリヒター伍長が大統領の側近となり、月と地球のカルチャーショックに戸惑いつつ馴染んでいくという「三ヵ月」の件も、出来れば省略せずに描いて欲しかったですね。  ナチス兵達が地球のヌード雑誌に興奮する件なんかも良かったですし、もっと「月と地球のギャップの面白さ」を押し出した脚本にしてくれていたら、より楽しめたかも。  ラストも「博士の異常な愛情」のパロディっていうのは分かるんですが、世界中で核戦争が起こっている様を描いて終わりっていうのは、ちょっと微妙でしたね。  「月と地球との戦争によって、月の住民は大変な目に遭った」→「それでも主人公とヒロインは力を合わせ、月を復興させる」という、悲劇からのハッピーエンドの流れが心地良かっただけに、その後に更に「悲劇」を上乗せするブラックユーモアなどは付け足さず、あのまま気持ち良く終わって欲しかったです。  それこそ、続編に繋がるような「ヒトラーは生きていた!」という衝撃を与える終わり方でも良かったかも知れませんね。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2019-03-13 17:26:18)(良:3票) 《改行有》

54.  映画ドラえもん のび太の月面探査記 《ネタバレ》  自分には「アニメのドラえもんは原作漫画に敵わない」「原作大長編の存在する映画の方が、原作無しのオリジナル映画より面白い」という偏見があったのですが、前者を「恐竜2006」が、後者を本作が徹底的に打ち砕いてくれた気がしますね。  オリジナル映画としては間違いなく一、二を争う出来栄えですし、ドラ映画全体で考えても、これより上と言えるのは「恐竜2006」「新・鉄人兵団」「新・大魔境」「新・日本誕生」の四つくらいになるんじゃないでしょうか。  しかも「南極」「宝島」という傑作が二つ続いた後に、またまた凄いものを拝ませてもらった訳なのだから「映画ドラえもんは、オリジナルでも面白いものを作れるようになった」と潔く認め、脱帽する他無かったです。  本当にもう、作り手の皆さんに「参りました」「ありがとう」という言葉を送りたい気分。   小説版を読んだ際に一番の懸念となっていた「定説バッジの効果を、小さい子供でも分かるように描くのは大変じゃないか」って部分を、視覚的に分かり易く、面白く描いてクリアしている辺りなんか、特に見事でしたね。  「月世界旅行」に「キングコング」などの古典映画や「恐竜2006」「緑の巨人伝」のオマージュ描写が散見される辺りも、ニヤリとさせられるものがあって、良かったです。  他にも、教室に勢揃いしたクラスメイトの顔触れに、まさかのペロ登場など、ドラえもん好きなら嬉しくなっちゃう描写が多くて、本当に観ていて楽しい。  月世界にて、異説バッジが外れた途端に無音になる演出がゾクッとしたとか、出木杉くんとルカが話す場面が凄く特別感があって良いとか、細かい部分の「良かった探し」を始めたら、止まらなくなっちゃうくらいです。  それでも、これだけは書いておかずにはいられないという意味では、やはり気球での旅立ちの場面が挙げられます。  もう二度と帰ってこられないかも知れないという恐怖を乗り越え、友情が芽生えたエスパル達を救う為、約束の場所に皆が集まる流れだけでも感動しちゃうし、ここのジャイアンとスネ夫の描き方が、本当に素晴らしいんですよね。  スネ夫は来ないのかと諦めかけている他の面子に対し「頼む。もうちょっとだけ待ってくれ」と訴え、最後までスネ夫は来ると信じているジャイアン。  そんな信頼に応えるかのように、時間ギリギリでやって来て「前髪が決まらなくてさ」と照れ隠しを口にするスネ夫。  (あぁ、良いなぁ……こいつら、良い仲間だなぁ)って思えたし、それから(良い映画だな)って、しみじみ感じ入る事が出来ました。  月に向かって気球で旅立つという浪漫溢れる景色に、微かな寂寥感を伴ったBGMも最高で、本当に忘れ難い、特別な場面だったと思います。  じゃあ、そこが本作のクライマックスなのかというと、然に非ず。  ディアボロとの最終決戦や、ルカ達を「普通の人間」にして別れを交わす場面も、同じくらい素晴らしかったというんだから、本当に参っちゃいますね。  モゾは宇宙一硬い甲羅の持ち主、ノビットは「あべこべ」な道具を作る天才、という伏線を、ギャグシーンで笑わせつつ張っておいたのか、という驚き。  ムービットや怪獣達という「月からの援軍」で形成逆転する痛快さ。  空気砲ラストシューティングの迫力。  あえて涙は見せず「もう一度会える日が、きっと来る」と笑顔でルカと別れるのび太の、強さと優しさ。  そのどれもが心地良くて、観ていて幸せな気分に浸る事が出来ました。  一応難点というか、気になった点を挙げるなら「いつか、月へ行く事が当たり前になる、その日まで」という台詞でルカ達と別れるのは、なんていうか、勿体無い気持ちに襲われましたね。  これって、勿論良い台詞なんだけど、原作における「のび太の息子ノビスケは、新婚旅行で月に行く」って設定を知っていると「良い台詞」から「凄く良い台詞」に昇華されるんです。  つまり「のび太とルカは、再会するんだ」「何時かまた会えるという言葉は、嘘じゃなかったんだ」と分かって感動する形になっている訳で、凄く上手いんだけど、凄く勿体無い。  ここは、もうちょっと分かり易く描いて、原作を読んでいる人が受ける感動を、読んでいない人にも伝わるようにして欲しかったなぁ……って思わされました。  ちなみに、予告の映像からすると、来年は今井監督。  内容は「新・竜の騎士」か、あるいは恐竜を題材としたオリジナル映画となりそうで、これまたワクワクさせられましたね。  また一年、あれこれと想像力を働かせながら、楽しく過ごす事が出来そうです。[映画館(邦画)] 9点(2019-03-01 13:31:14)(良:2票) 《改行有》

55.  BLACK & WHITE/ブラック&ホワイト(2012) 《ネタバレ》  凄腕のCIA捜査官である男二人が、一人の女性を奪い合うという御話。  こういった粗筋の場合、最終的には男側が二人とも振られてしまうか、明確な結論を出さぬまま女性にとっての両手の花的なエンドを迎えるパターンが多いように思えますが、本作は明確に片方を選んで終わる為、驚きましたね。  大体映画の三分の二くらいの段階で(これはFDRの方と結ばれるな)と観客に分からせる形になっており、この辺りの時間配分も良かったと思います。  それと、タックには元妻と息子がいるのに対し、FDRは完全に独り身って時点で後者の方が有利なんですが、本作に関しては「最初にローレンスとデートしたのはタックの方である」というアドバンテージを与えて、二人のスタートラインが互角になるよう、上手く調整してあるんですよね。  これによって二人の内、どちらがヒロインと結ばれるのか読めなくなっているし、結果的にFDRとローレンスが結ばれた後も「タックは元妻と復縁する」って形で、主役の三人誰もが幸せになる結末へと着地する事にも成功している。  この手の三角関係で明確に答えを出すと、どうしても一人あぶれ者が生まれて、可哀想になってしまうものですが……  本作に関しては、そんな感情を全く抱かずに観終わる事が出来たし、ここは上手かったんじゃないかと。  男側の二人がCIAである事を活かした会話のギャグや、アクション場面も適度に盛り込まれており、特に後者に関しては「流石マックG監督」と思わせるような仕上がりとなっているんだから、嬉しい限りでしたね。  タックの息子が、父親から教わった技で柔道の組み手に勝つ場面も爽快感があったし、個人的にはココが一番好きな場面です。  そんな具合に、良いところも色々ある映画なんだけど……  残念ながら、欠点もそれと同じくらい見つかっちゃうというんだから、困り物。  まず、ヒロインのローレンスに、どうしても魅力が感じられなかったんですよね。  それは演じているリース・ウィザースプーンが老けていて、美女とも言い難いとか、そんな外面的な理由じゃなくて、もっと深い内面的な理由で(嫌な女だなぁ……)と思ってしまったんだから、キツかったです。  決定的だったのが、FDRと初エッチを済ませた後の展開。  FDRの方は、それまでプレイボーイ気質であったにも拘らず「彼女が出来たから」と他の女の誘いを断っていたのに、ローレンスの方は悩みつつもタックとデートしたり、キスしたりしていたというんだから呆れちゃいます。  自分だって二股を掛けていたくせに、彼らが友達同士と知った途端に「騙された被害者」全開に振る舞うっていうのも酷い。  そこは三者共「ごめんなさい」するところだろうに、何で彼女だけが怒って男達が謝らなきゃいけないんだと、理不尽なものを感じちゃいました。  他にも、意味ありげな「バケツを頭に被って回る少年」は何か重要な役割を果たすのかなと思ったら、本当に単なる小ネタに過ぎなかったのが残念とか「バルカン超特急」(1938年)を「二流の作品」と断じる場面があったので、後でフォローが入るかなと思ったら貶したままで終わっちゃったとか、細かい不満点も色々多いんですよね。  自分は、この監督さんと主演の三人が好きなので、それらも含めて(まっ、良いか)とばかりに、一定の満足感は得られましたが……  そういった思い入れが無かったら、かなり厳しかったかも。  好きな顔触れが揃っているだけに、勿体無く思える一品でした。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2019-02-04 10:12:15)(良:2票) 《改行有》

56.  ソルジャーズ・アイランド 《ネタバレ》  この映画、結構好きです。  好きなんだけど……それを差し引いても欠点の多さが気になっちゃいましたね。  金持ち連中が自慢のタネを得る為、節税の為にレジャー感覚で軍隊に参加するという「富豪部隊」の設定は面白いのに、それを活かし切れていない。  例えば冒頭、如何にも「普通の戦争映画っぽい場面」から始まって、それがあんまり面白くなかったりするもんだから、気勢を削がれる形になっているんです。  しかも、後に映画のラスボスとなる相手が冒頭にて主人公に一度倒されていたりするもんだから、緊迫感も失せてしまうという形。  これなら冒頭の部分はカットして、主人公が「富豪部隊」の護衛役に雇われる場面から始めた方が良かったんじゃないかな、って思えます。  主人公が「伝説の軍人」って割には「弾を避ける為に、ジグザグに走って逃げるべき」ってアドバイスを武器商人からされたり、内通者がいると分かっているのに基地を移動させようとしなかったりと、その能力に疑問符が付いてしまう辺りも残念。  物語を面白くする要因なはずの「内通者の正体」に関しても、どうも扱いが下手だった気がしちゃうんですよね。  作中で特にヒントも出していないから「犯人探し」を楽しむ事も出来ないし、犯人のキャラ付けに関しても「嫌味な金持ちその1」という没個性的な代物でしかなかったので「良い奴だと思っていたのに、裏切り者だったのか……」という意外性も無し。  そんな裏切り者を殺す際に「クソ銀行屋め」と言わせたりするのも、如何にもって感じがして、ノリ切れませんでしたね。  この手の「皆もサブプライムローン問題には怒ってるでしょ? だから映画の中で銀行屋を懲らしめておいたよ」というパターンは流石に食傷気味で、ちょっと興醒めしちゃったくらいです。  そんな欠点の多さに比べると、良かった部分を探すのは大変だったりするのですが……その数少ない「良かった部分」が、かなり自分好みなんですよね。  主人公が戦友と交わす会話「国のために戦ったのに報われない」「金のために戦おう」にはグッと来ちゃったし「今はトレーラーハウス暮らしの無精髭な主人公が、実は伝説の軍人だった」って設定も、男の浪漫をくすぐるものがあります。  ナイフを用いての決闘で、敵にトドメを刺すシーンも恰好良く決まっていたし、水上バイク同士を衝突させて爆発させるとか、アクション映画として見栄えの良い場面がしっかり詰まっているのは、文句無しで長所だと思いますね。  ラストシーンにて、花火を打ち上げたり、争いの種となっているレアメタルを海に投げ捨てたり、水鉄砲で子供達と遊んだりしている光景を描き「島を独裁者の手から解放した」喜びを感じさせて終わる辺りも、ハッピーエンド感があって良かったです。  そういった具合に、確かな魅力も秘めている映画であるだけに(ここは、もっとこうすれば良かったのに……)って、歯痒くなっちゃいますね。  せめて「富豪部隊」の面々が善意に目覚めていく流れだけは、もうちょっと丁寧に描いて欲しかったです。  例えば、事前に島民の子供との交流を描き、この子達を救いたいと思って金持ち連中が立ち上がるとか、そういう展開にしておけば、もっと感動出来たろうし、胸を張って「隠れた傑作」と言えた気がします。  「クリスチャン・スレイターが主演で、彼の恰好良い場面がちゃんとある」というだけでも、自分にとっては「良い映画」なのですが……中々他人には薦めにくい一品でありました。[DVD(字幕)] 6点(2018-12-04 14:43:17)《改行有》

57.  コップ・カー 《ネタバレ》  観終わった後に上映時間を確認し(えっ、88分しかなかったの?)と思ってしまった事が印象深い。  体感としては二時間越えの映画に思えた訳ですが、中身が濃かったというよりも「一時間以内に片付けられるストーリーを、無理矢理引き延ばした」感があったりしたのが辛いですね。  とにかく演出の「間」が長くって(早く次の展開に移ってくれないかなぁ……)って、じれったい気持ちになる場面が多かったです。  それが最高潮に達するのが、ケヴィン・ベーコン演じる警官が車泥棒する場面であり、ここは本当に観ていてキツかったですね。  窓の隙間から靴紐の輪っかを通して、それで車内のロックを解除しようとする流れなんだけど、観客を焦らすように繰り返し失敗したりするもんだから、やりきれない気分になっちゃいました。  それだけ時間を掛けた訳だから、成功の際の達成感も大きくなる……って訳でも無くて、成功の寸前にカメラが切り替わり、次の瞬間には靴紐の輪っかが不自然に小さくなっていたりしたもんだから(あっ、ズルしたな)と思えて、作り手の不誠実さに幻滅しちゃったくらい。  この場面に関しては、もうちょっと上手く撮って欲しかったです。  少年達が家出した理由を「義理の父親」「お婆ちゃん子」などの断片的な情報だけで片付けたり、警官達が具体的にどういう理由で殺し合ったのかが謎だったり、終いには負傷した少年の生死も曖昧なままエンディングを迎えたりと、やたら説明不足なのも気になりますね。  この辺りは「無駄な説明を削ぎ落とした、スタイリッシュな話作り」「観客の想像力に訴えかけ、余韻を残す終わり方」と褒める事も出来そうなんだけど、自分としては「投げっぱなし」って印象の方が強かったです。  ……とはいえ、良かった部分も色々あって、一概に「嫌いな映画」とも言えないんだから、全くもって困り物。  主人公となる少年二人が「悪ガキなんだけど、愛嬌があって憎めないタイプ」だった訳だけど、この映画も丁度そんな感じだったりするんですよね。  自分としては「間延びした演出」「説明不足なストーリー」は明らかに欠点だと思うんですが、それを補うだけの長所も備え持っているという形。  何と言っても「男の子達がパトカーを手に入れて、好き勝手に乗り回す」という楽しさを、きちんと描いている点が良かったと思います。  映画でこういう展開があっても、すぐに大人に見つかって止められたりするものなんですが、本作はたっぷりと尺を取って「子供がパトカーを使って遊びまくる」場面を描いているんですよね。  何せ二人きりの「子供の時間」が破られ、トランクの中から大人の男が出てくるのが88分中48分を過ぎてからというんだから、凄い話です。  作り手側にとっても、後半の銃撃戦やら何やらは余戯に過ぎず「子供がパトカーで遊ぶ」場面の方をメインにしたかったんじゃないかなぁ、と思えてきます。  少々ブラックな内容ではありますが、ある意味では「子供の夢を叶えてくれる映画」と呼ぶ事も出来そうな感じですね。  敵役のはずの警官に関しても、演者であるベーコンの力量ゆえか、妙な魅力があったりして、これまた憎めない。  身の破滅を悟り、自宅に隠しておいた金塊やら何やらを掻き集めて逃げ出そうとする件なんて、特に好きですね。  この場面では、つい彼を応援しちゃって、無事に逃げ延びて欲しいなと思わされたくらいです。  中盤「そんな風に銃で遊んでいたら危ないぞ」と観客に思わせておき、終盤にて「それみた事か」とばかりに、少年達の片方が弾を受けて負傷する展開になるのも、上手い伏線回収の仕方でしたね。  ラストシーンに関しても「友達を救おうとしてパトカーを運転し、それまで出せなかった速度を出してみせる」「大人に背を向けて家出した少年が、無線に応答して、今後は大人と話し合っていく未来を示唆する」といった感じの演出が行われており、投げっぱなしな終わり方ではありますが「独特の味わい深さ」のようなものは、確かにあったかと。  総評としては、才能ある若手監督の作品に相応しい「粗削りで欠点も目立つが、光るものを秘めた映画」って感じになるでしょうか。  正直「楽しかった」「面白かった」って印象は然程残っていないんですが、忘れ難い魅力を秘めた、記憶に残る一品ではあったと思います。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2018-12-02 09:47:38)《改行有》

58.  ライジング・ドラゴン 《ネタバレ》  「アジアの鷹」シリーズの第三弾……なのですが、ちょっと毛色が違うというか、外伝のような印象も受けましたね。  それというのも、本作の主人公は「JC」と呼ばれており、彼が「アジアの鷹」であると判明するのは終盤も終盤、クライマックスの空中戦においてだったりするのです。  自分としては観賞前から「プロジェクト・イーグルの続編」という気持ちでいたもので、その辺ちょっとチグハグというか、ノリ切れないものがあって残念。  多分これ、作り手側としても意図的に「主人公の正体は不明」にしておき、ラスト間際にて「主人公は、あのアジアの鷹だった」と種明かしして、驚かせる構造にしていたんじゃないでしょうか。  過去二作における主人公のトレードマック「ガムを食べるシーン」が登場するのがラスト三十分ほどになってから、というのもそれを裏付けており、ここで(あのガムの食べ方は、もしかして?)と観客に思わせた後(やっぱり、そうだった!)というカタルシスを与えるつもりだったんじゃないかなぁ……と予想します。  基本的には単独で仕事をこなすイメージのあった「アジアの鷹」が、チームワークを活かして盗みを働く存在になっている事、何時の間にか奥さんまでゲットしていた事など、戸惑う展開が多い辺りも困り物。  さながら「プロジェクト・イーグル」と本作の間に何本も作品があって、その間に仲間が増えたり、ライバルの「禿鷹」と出会ったり、結婚したりしたかのようで、置いてけぼり感がありました。  そんなこんなで、中途半端な予備知識が仇となってしまったパターンなのですが……それでも充分楽しめる作品に仕上がっている辺りは、流石という感じ。  「世界に四枚しかない切手」の内の三枚を破り捨て「世界に一枚の切手」にして価値を高めるシーンなど「物の価値とは何だろう」と考えさせる脚本になっているのは、如何にも「アジアの鷹」シリーズっぽくて、嬉しかったですね。  税関を用いた本物と偽物を入れ替えて盗むテクニックには感心させられたし「薔薇を大切にしろよ」という台詞が伏線になっており、それが黒幕の逮捕劇に繋がっている流れも良い。  「戦争によって奪われた国宝を取り戻す」という、やや堅苦しいテーマの作品なんだけど、愛国心やら戦争犯罪やらを訴える役割は新キャラのココが担っており、主人公は「中国という枠組みに囚われず、時には英国贔屓な見解を示す事もある」「昔の過ちを今の考えで裁くなんて不可能だと主張する」という中立的な描き方をしている辺りも、上手いバランスだなと思えました。  全身ローラースーツや、カメラと脚立を駆使したアクション。  それに、画面を華やかに彩る美女達の存在も、忘れず盛り込まれており、このシリーズにおける「お約束」「娯楽性」を忘れていないなと感じさせる辺りも嬉しい。  また「戦っていた敵であっても、目の前で死にそうになると、咄嗟に助けてしまう」「最初は敵対していた相手とも、なんだかんだで仲良しになる」というシーンが印象的に描かれているのも本シリーズの特徴であり、その点はヒューマニズムならぬジャッキーイズムといったものを体現していた気がしますね。  生まれてきた赤ん坊に「世界平和」という意味の名前を付ける辺りも、如何にもジャッキーらしくて好きです。  一作目においては「何よりも金が大事」という考え方だった主人公。  そんな彼が、二作目において「金よりも大事なものがあるんじゃないか?」と疑問を抱くようになり、三作目において「金よりも家族が大事だ」という結論に着地する。  三つの映画を使って、少しずつ主人公の考えが変わっていく様を描いてきたからこその感動があり、妻と仲間に囲まれて幸せそうな「アジアの鷹」を描いて終わる本作は、やっぱり嫌いになれないです。  アクション大作からの引退を決意しての、記念すべき一品という事で、主人公の妻役にジョアン・リン(=私生活においてもジャッキー・チェンの妻である女優さん)を起用する遊び心なんかも「そう来るか!」という感じがして、ニヤけちゃいましたね。  自分としては(妻になったのは誰? メイ? エイダ? エルサ? 桃子?)と、過去作の女性キャラクターを色々思い浮かべていただけに、完全に意表を突かれた形。  この「主人公の妻」のチョイスに関しては、それだけ「アジアの鷹」というキャラクターがジャッキーに愛されており、文字通りの意味で「ジャッキーの分身」と呼ぶに相応しい存在である事を証明してくれたかのようで、ファンとしては感慨深かったです。  妻だけでなく、ジャッキーとしても、これまで頑張り続けてきた自分に「お疲れ様」と伝えてあげる……そんな意図があった映画なんじゃないかな、と思えました。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2018-10-18 11:43:47)(良:2票) 《改行有》

59.  ジャックとジル 《ネタバレ》  映画に関するジンクスの一つとして「ゴールデンラズベリー賞を取った映画は、意外と面白い」というものがあるのですが、これもそんな一本。  とはいえ「傑作」と断言出来る程ではなく「意外と面白い」の範疇に止まってしまうのが寂しいですね。  下品なギャグが多いし「おたのしみ箱」やアル・パチーノ(本人役)といったキャラの言動が不自然に感じられるしで、もうちょっと脚本を煮詰めてから映画化した方が良かったんじゃないかなーと思ってしまうのも事実です。  でも、ちゃんと面白かった部分もあって、自分としては結構満足。  マッチョな男性陣が苦労して上げていたバーベルを、ジルが簡単に持ち上げちゃう件なんかは、ベタだけど微笑ましいギャグだったし、本物のジルを女装したジャックと勘違いして胸を触った男が、豪快に殴られちゃう場面なんかも良い。  養子の少年も良い味出していたし、ドン・キホーテに扮したパチーノが風車ならぬ天井のファンを怪物と勘違いして、戦いを挑むシーンも好きですね。  最後は家族愛に着地して、ハッピーエンドで終わってくれるし、後味も爽やか。 「そりゃあ好きだけど、離れている時はもっと好き」 「君を愛しているのは間違いないが、死の間際に気付く愛だ」  等々、心に残る台詞が散りばめられている辺りも良かったです。  それと、自分はクルーズ旅行の描写がお気に入りだったので、あそこをもっと尺を取ってやって欲しかったという想いもあるんですが……まぁ、コレは我が侭というものでしょうか。  欠点を論ったらいくらでもあるんだけど、なんとなく本作に関しては「好きな部分」をメインに語りたくなる。  憎みきれない、愛嬌のある映画でした。[DVD(吹替)] 6点(2018-09-23 20:48:55)(良:1票) 《改行有》

60.  SAFE/セイフ 《ネタバレ》  「パソコンは何を記憶させても探り出されてしまう」という台詞が印象的。  ハッキングやら何やらを警戒する余り「大切な情報は、記憶力の良い人間に憶えさせておくのが一番安心」という時代錯誤な結論に行き着くのが、実に皮肉が効いていましたね。  そんな「記憶力の良い人間」が幼い少女というのは非常に漫画的だけど、あんまり美少女過ぎない子役を起用しているのが、適度なリアリティを生み出していたと思います。  ちょっと目が細過ぎて、典型的な「欧米人から見たアジア人」ってルックスの子なんですけど、笑うと愛嬌があって可愛らしいし、映画を観終わる頃にはかなり好きになっていました。  こういったストーリーの映画である以上、子供の事を「守ってあげたくなるような存在」として描くのは大切だと思うし、それは成功していたんじゃないかと。  それと、本作は彼女の養父となるチャンを演じるレジー・リーも、凄く良い味を出していましたね。  悪人だし、ボスの命令には逆らえないんだけど、養女のメイの事は彼なりに大切に思っているというバランスが、実に魅力的。  彼がメイに対し「きっといい父親になってみせる」と語り掛け、笑ってみせる場面は、本作の白眉であったように思えます。  不器用ながらも愛情を示して、彼女の為に少しでも「良い人間」になろうとした事が伝わって来て、好きな場面です。  それだけに、その後すぐ彼が殺されてしまう展開になるのがもう、残念で仕方ないんですが……  やはり、この辺りは「一度でも娘を殺そうとした奴が、本当の父親になんかなれる訳が無い」って事なんでしょうか。  「怖いものから、目を背けたりするな」という彼の教えを、メイが守ってみせて「彼とメイが過ごした時間は、無駄じゃなかった」という落としどころになっただけでも、良しとすべきなのかも。  その一方で、ジェイソン・ステイサム演じるルークに関しては「タフガイ」「アウトロー」の王道を行く主人公となっており、安心して観賞する事が出来ましたね。  浮浪者として生活しなければいけない悲壮感、靴を譲った相手すらも「ルークと関わったから」という理由で悪人達に殺されてしまうという「誰とも親しくなれない」という孤独感が、ひしひし伝わって来て(やっぱりステイサムって良い役者さんだなぁ……)と、惚れ惚れさせられました。  ただ、そんなルークがメイを必死に守ろうとする動機が弱いようにも思えて、そこはもっと説得力が欲しかったですね。  自殺を止めるキッカケになってくれた恩返しというなら「たまたま目が合ったお蔭で、思い止まれた」という展開ではなく、もっと積極的にメイが彼の命を救ってみせた展開にしても良かったんじゃないでしょうか。  あるいは、冒頭にて殺されたのが「ルークの妻」ではなく娘だったという事にして、娘と同じ年頃の子だから助けずにはいられなかったとか、そんな形にしても良かった気がします。  一番悪どい存在に思えた中国マフィアのハンおじさんが、結局大したダメージを受けず「尻尾を巻いて中国に帰る」くらいで終わっちゃう事。  そして、黒幕のアレックス刑事とルークとの素手のタイマンが始まるかというところで、メイが銃でアレックスを撃ち、決着を付けちゃう事なんかも、欠点と言えそうですね。  そこは、もっとスッキリする形で〆て欲しかったです。  観賞前に期待していた「ジェイソン・ステイサムの骨太なアクション」は充分に堪能出来たし、ルークとメイが「父娘」ではない「友達」になるハッピーエンドは良かったしで、決して嫌いな映画じゃないんですけどね。  気になる点も多くて「そこそこ満足」くらいの感じで観終わってしまった……  そんな一品でありました。[DVD(字幕)] 6点(2018-07-04 11:02:09)(良:1票) 《改行有》

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