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プロフィール |
コメント数 |
43 |
性別 |
女性 |
年齢 |
60歳 |
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41. エスター
《ネタバレ》 「怖さ」というのは色々あるわけで、単純に追っかけられる体育会系の恐怖もコワ楽しいが、本作はヒロインがじわじわと精神的に追い詰められる文化系の恐怖描写が秀逸。
孤児院から養子として引き取られたエスターが、父親に取り入り、妹を手なずけ、対立する兄は恐怖で押さえつけ、母親のことはとことん翻弄して痛めつける・・・といったエピソードが実にうまい。ヒロインである母親(ベラ・ファーミガ)のトラウマ体験など、人としての「弱み」に付け込み、家族間の隙間をグイグイついてくる、その「やり口」のエグさったらない。直接に攻撃するのではなく、「共感」を寄せて懐柔したり「愛情」を装って傷つけたりと、実に巧妙。思わず「ぬぉおおお~」と身もだえしてしまう。
一見、可愛らしい少女が大人を徹底的にイジメ抜くという、その恐怖はまじホラー。被害者は母親なのに、エスターの方が一枚も二枚も上手で、周囲の人間を操作し「悪いのは母親のほう」と思わせてしまうのだ。この辺のヂグジョ~感たっぷりなところをM気質の人には是非、堪能していただきたい。(?)
そして、なんといってもオチが素晴らしいです。私は最後まで読めなかった!「犯罪者像」としては適度にリアリティを持たせつつフィクションの荒唐無稽さも絶妙に加味され、実に魅力的なモンスター。エスター役のイザベル・ファーマンという子がまた上手いというか合ってるというか、とにかく彼女の存在があってこそ、という気も。撮り方も上手いんでしょうけど非常に説得力があって物語を強化していたと思う。
とにかく、ここまで魅せてくれたので、ラストのグダグダも許せる。DVDには特典で「もう一つの結末」が付いていて、私はこっちの方が好きでした。「サンセット大通り」(50)の味わい。[DVD(字幕)] 8点(2017-07-23 14:33:41)(良:1票) 《改行有》
42. 偶然の旅行者
《ネタバレ》 ローレンス・カスダンという職人監督が好きだ。作品全体の手触りが心地よい。何と言っても人物造形が自然で上手だと思う。初めのうちはどういう人物なのかよく分からない登場人物たちが、エピソードを追う毎に肉付けされキャラの深みと魅力を増していく。分かりやすい薄っぺらな善人もいなければ、万人が嫌うような悪人もいない。イヤな奴が最後に劇的にイイ人に変身することもない。皆それぞれに欠点や弱さを抱えながらも「その人らしさ」がキラリと輝く、そんな実のある人間像を見せてくれて気持ちいい。
本作の場合、陰気でシニカルな主人公とその家族の変人ぶりなど、描き方次第で愛されるキャラになるかドン引きされるかがハッキリ分かれてしまう気がするがその辺りのさばき方が上手いから物語が破綻しない。主人公に付きまとう「ヘンな女」ジーナ・デイヴィスにしても、個性的で魅力ある女性なのか自分勝手でウザイ奴なのか難しいところなんだけど、彼女自身の素養も加わって可愛く見えてくるのが、やはり演出の妙と思える。ジーナの衣装にも注目したいところ。チープシックでちょっとヘンテコなお洒落がこの女性の性質を饒舌に物語っている。
ビジネス旅行(出張)とは自宅から出なければならないアクシデント(不測の出来事)なんだと言って、その数日間を心安らかに過せる方法を伝授する、そんな旅行記を書いている主人公なんだけど、実は人生そのものがアクシデントの連続、生きていくって偶発的な出来事にあふれた世の中を旅していくことなんだよね、誰もがアクシデンタル・ツーリストなのさ、ってそんなオハナシ。子供を亡くして心の内に引き籠ってしまっていた主人公が、新しい人生に一歩を踏み出す勇気を得たラストの笑顔がグッとくる。最強のパスポートは「誰かから必要とされる自分」であること、なのです。[DVD(字幕)] 8点(2017-07-23 00:01:02)《改行有》
43. MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間
《ネタバレ》 マイルス・デイヴィスが引退した1975年から数年。
健康状態の悪化により入退院を繰り返しているうちに、コカインやアルコールなどに
溺れて生活は荒み切っていたという。
それでも、音楽に対する情熱は冷めずにいて、ひっそりとスタジオ入りして
セッションを行った事もあるらしい。
本作はそんな「幻のセッション音源」をめぐる騒動を主軸に、現在と過去を行き来しながら
マイルス・デイヴィスという偉大なるミュージシャンの姿を描く。
個人的に気に入ったのは、ありがちな伝記物語になってないところ。
類まれなる才能ゆえに早くから頭角を現し、時代の寵児になって、でもドラッグに溺れて、
愛する女性に支えらえ&愛想つかされ、そんな彼の晩年は悲しい色やねん~的な。
ぜんぜん、そういうのと違いますー。
レコード会社や野心家のプロデューサーらがこぞって狙う「幻のテープ」。
これがマクガフィンとなって映画を転がし、ユアン・マクレガー扮する音楽ライター
(見た目ふかわりょう)とのコンビが、バディムービー調でちょっと弾む。
「スケッチ・オブ・スペイン」のジャケットが飾られたレコード会社のエレベーターの中から
するっと過去に移動したり、転んで床に倒れこむ人物のマッチカットで現在に戻ったりする
映画のマジックが楽しい演出も個人的に好き。
演奏シーンと回想シーンのつなぎ方や、時間と場所の飛ばし方なども手際がよくて、
編集もイイと思いますね。
あとは、とにもかくにも音楽です。演奏シーンはマイルスの音源を使っているのが殆どで、
聞き惚れてしまう。特に彼のファンでもなかった自分でも思わず身体が揺れる(笑)。
特にラストのライブ・シーンのカッコ良さったら!!
もしやと思ってエンド・クレジットを確認したら、やっぱりハービー・ハンコックと
ウェイン・ショーターが参加していました(泣)。
ドン・チードルも嗄声のボソボソ喋りで役作りを頑張ってた感じ。
最後のステージなんて、すごいサマになってて震えます。
音楽ファンの方にはオススメ。[DVD(字幕)] 7点(2017-07-22 23:20:40)《改行有》
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