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【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
61. CUBE 《ネタバレ》 知的好奇心が満たされ、ひたすら面白い。 登場人物わずか7人、1.5個の立方体のセットだけで、スケールの大きいSFが出来るとは。 回想や外界の描写もなく、謎を残したまま終わるストイックな映画だが、 一から十まで説明して幻滅するよりはスマートな割り切り方だと言える。 町工場のネジがスペースシャトルに使われるように、末端の集合体が複雑な現代社会を形成している。 見えない巨悪に陰謀論を掲げようが、真実を知るすべのない不条理。 しかし、サヴァン症候群の精神障害者によって出口を見つけられたように、 必要とされていない人間などこの世にいない、という微かな可能性も提示されている。[DVD(字幕)] 8点(2016-03-22 21:10:30)《改行有》 62. フォロウィング 時系列操作しなければ、案外と平凡なノワール作品なのは『メメント』と同じ。記憶障害という理由付けがあり、法則性もある『メメント』と違い、こちらはただ組み換えただけで無意味に複雑になっただけ。スタイリッシュな雰囲気に未来の鬼才の風格を見た。[DVD(字幕)] 4点(2016-03-22 20:58:43) 63. π(パイ) 《ネタバレ》 数字に翻弄されて破滅していく、スタイリッシュな『イレイザーヘッド』みたいな。独り善がりで理詰めになりすぎる感はあるが、それが追い詰められていく主人公とシンクロして、若さ故の勢いとしての味がある。足元にある平穏な幸せでは満足できず、もう行くところまで行くしかない、って感じがアロノフスキー監督らしい。[DVD(字幕)] 6点(2016-03-22 20:56:08) 64. 踊る大捜査線 THE MOVIE こういうのを映画とは呼びたくない。『天国と地獄』『羊たちの沈黙』を意識したオマージュは、まるで三文芝居のような安っぽさでむしろ冒涜にも思えるほど。主人公が撃たれる等で感傷に走らせる展開は、テレビドラマの映画化ではお約束なのかというくらい見るに堪えない。これが興行成績160億円の大ヒットなんだからネームバリューが生んだ賜物というべきか。記録に残っても記憶に残らない。[地上波(邦画)] 1点(2016-03-22 20:43:18)(良:1票) 65. トイ・ストーリー 多くのことは語らない。世界初の長編フルCGアニメでありながら、画・脚本のクオリティの高さにより、CGアニメ全体のハードルを一気に上げてしまった罪な作品でもある。つまるところ、滅茶苦茶面白かった。[DVD(字幕)] 8点(2016-02-23 21:09:16) 66. ナチュラル・ボーン・キラーズ タランティーノ激怒も納得の内容。MTVやコメディドラマを思わせるくどすぎる演出の数々が、作品のテーマ及び純粋で無軌道な暴力を薄っぺらい物にさせてしまった。狙ってやっているとは思うが、インテリぶって拗らせるとこうなる、という一例。タランティーノとストーンでは水と油みたいにベクトルが違いすぎたのだろう。元の脚本がどうかは知らないが、もう一つのエンディングの方を採用してくれたらまだ救われたか。[DVD(字幕)] 4点(2016-02-23 20:54:54) 67. アルマゲドン(1998) 日本では感動大作/欧米ではおバカ映画。 映画を観る人の成熟度と感性において御国柄で大きく左右されるものだと実感させられる。 マンガチックでリアリティの無い展開に感動のゴリ押しと仰々しい画面の洪水。 もはやギャグとしか言いようがなく、それでいてちっとも笑えないのは致命的。 横並びでシャトルに向かうショットだけは良かったです。[地上波(吹替)] 2点(2015-12-31 01:49:38)《改行有》 68. タイタニック(1997) 二人の愛を盛り上げるために豪華客船が沈没するだけの映画。時代考証にしても科学的にしてもかなりリアルな映画には間違いないが、ラブストーリーとしての舞台装置に過ぎないところが大きく足を引っ張っている。ジャックとローズの悲恋よりも、脇に追いやられた乗客の運命の方がずっと感情移入できる。商業的に考えれば仕方ないかもしれないが、犠牲者に捧げるものに達していないように見えるのは自分だけかな。脚本賞にノミネートすらされていない凡庸なストーリーの地点で御察し。外観が壮麗なだけのお粗末な超大作とどこが違うというのか?[地上波(吹替)] 3点(2015-12-31 01:45:59) 69. L.A.コンフィデンシャル 《ネタバレ》 原作小説は貸出時間切れで途中で投げ出してしまったが、映画版の大胆な脚色でこの完成度の高さと濃厚さは稀なケースではないか。それだけこの映画は素晴らしい。暗く血生臭い内容であるにも関わらず、爽やかな後味を残す。巨悪を追うタイプの違う三人の刑事は決して潔癖ではないが、それぞれの信念と正義を持ち、そして人間臭い。だからこそ、一つ一つの台詞が伏線となって、鮮やかに決まったときのカタルシスに打ち震える。特に「ロロ・トマシ」と「更生のない悪人を背後から撃つことが出来るか」には痺れた。カッコいい。これに作品賞と監督賞をあげないとは、アカデミー賞最大の汚点として恥じるべきだろう。[DVD(字幕)] 9点(2015-12-31 01:32:43) 70. シャイン 《ネタバレ》 ヘルフゴットの家族から暴露本(日本語版未訳)が出版されており、デヴィットは占星術師の妻に利用されているとのこと。レストランの仕事は実姉の紹介であり、暴君として描かれている父親とは比較的仲が良かった等、事実と大きく剥離していることを訴えていた。これを知るか知らないかで映画の評価は大きく変わる。音楽家という職業はテクニックと同等にメンタルの強さも問われ、脱落していく人は数知れず。その中で復帰できたのは奇跡であり、映画としてはドラマチックな題材だろう。音源はデヴィット本人のものだが、代役なしの演奏をこなしたジェフリー・ラッシュの熱演は称賛されるべきである。この映画でラフマニノフの第3を知った人は少なくないはず。その功績が大きいからこそ、スタッフには夫妻のみの情報に頼らず、多方面にアンテナを張っていれば、我々のこの映画に対する受け取り方も違っていたかもしれないのに。[DVD(字幕)] 7点(2015-12-23 00:12:37) 71. ジャッキー・ブラウン 語り口と演出は今まで以上に洗練され、成熟した味わい。バイオレンス描写はタランティーノの中では一番控えめなので観やすい。しかし、登場人物をじっくり描き込んでの155分なのだが、1つのエピソードで引っ張るのはかなり厳しいかと。B級黒人映画へのオマージュが強いとは言え、良くも悪くも優等生的で突き抜けてない感じが否めない(正攻法も撮れることは後の作品でも証明済)。『レザボア~』『パルプ~』以降のプレッシャーと反動か。[DVD(字幕)] 6点(2015-12-07 20:17:13) 72. リトルトウキョー殺人課 監修する日本人はいなかったのか。親分役でも口を出せなかったのか。あまりにぶっ飛んだトンデモ日本文化が逆にカルチャーショック。本人たちは大真面目なのだが、『キル・ビル』、『ラスト・サムライ』を経て、日本を取り扱った外国映画はこれと比べて随分マシになったものだ。短い上映時間と程良いアクション要素がアレすぎる日本文化の緩衝材になり、異文化コメディとして見るなら軽く楽しめるかと。[DVD(字幕)] 5点(2015-12-07 19:05:54) 73. トゥルー・ロマンス 《ネタバレ》 今やオスカー女優のパトリシア・アークエットの代表作ということで、芯の通った強いヒロインにタランティーノ作品に通じる名残を感じさせる。トニー・スコットの演出は冴え渡っており、過激な暴力描写を一歩手前で押しとどめ、タランティーノの個性を殺さず、万人向けに見られる娯楽作に仕上げるあたりは流石。偶然手に入れた大量の麻薬を売り捌こうとしている地点でバッドエンドに転がり込んでも仕方ないけど、大集結した警察・マフィアが全滅って疫病神なカップルだな(父さん殺されたし)。その大きい代償を経て、ラストのハッピーエンドの平穏さが愛おしく堪らない。[DVD(字幕)] 7点(2015-11-05 18:40:51) 74. シンドラーのリスト 《ネタバレ》 派手にやられていくハリウッド映画において、淡々と行われる銃殺の描写に初めて衝撃を受けた。糸が切れたように崩れる人々、色の失われた世界で唯一着色された赤い服の少女、タイプライターで明記された名前、そこにはいつ零れ落ちるか分からない"命"が眼前に横たわっている。シンドラーは金儲けしか考えていない俗物だったが、だからと言って普通の人々が何の疑問を持たずに虐殺に手を貸す、その違いはどこにあったのか。見返りも一切なく、裏切り者として殺されるかもしれない、"偽善"と呼ばれても自分は救えるのかと聞かれると自信はない。ただ、結果的に1100人を救ったのは事実で、そこには打算などない。「お金があればもっと救えたのに」とシンドラーの懺悔とも言える台詞が最も胸に迫る。このシーンからの展開は、今思えば感動に走ってやり過ぎと感じなくもないが。暗いトンネルから抜け出したような青い空があまりにも眩しくて、鮮烈だ。[DVD(字幕)] 9点(2015-09-24 00:20:44) 75. ボーイズ・ドント・クライ 《ネタバレ》 冒頭から地味でつまらない映画だと思っていたが、後半・・・ごめんなさい、甘く見てましたとしか言いようがありません。「見なければ良かった」と思う一方で、こういう偏見と差別が今でもあるのだろう。製作年から6年前に起こったばかりの事件なのが衝撃。現在、トランスジェンダーや同性愛が大半に理解され、同性婚が認められた国が増え始めたのは救いだと思うが、行き過ぎれば逆差別になり、閉鎖的で保守的な地域とその人々とは永遠に相容れることはないだろう。従兄の警告を聞き入れ、サンフランシスコやニューヨークといった大都会に出ていれば、別の結末もあったかもしれない。ヒラリー・スワンクは男性的で命を燃やすような役柄が似合っているね。[DVD(字幕)] 8点(2015-09-12 20:00:21) 76. 永遠と一日 《ネタバレ》 政治的要素はあまりなく、2時間強の長さのため、アンゲロプロスの中では取っつき易い方。それでも初見時は長回しや難解な台詞の数々でしんどかった。エレニ・カラインドルーの音楽と時空を跳躍した撮り方が頭から離れず、数年後再見したら秀作と再評価。妻に先立たれ、自らも死を目前にした老詩人の魂の彷徨。アルバニア難民の少年の強かさと未来への眼差し。交錯する生と死。"永遠"になった過去と新しい"一日"を刻み始める現在。難しく考える必要はない。これは新しく生まれ変わった詩人の物語だ。[地上波(字幕)] 8点(2015-09-06 15:33:02) 77. アンダーグラウンド(1995) 《ネタバレ》 陽気なジプシーブラスと哀愁漂うチャールダーシュの対比、 歴史的事実に織り込まれた寓話が程よく溶け込んだ、唯一無二の世界観とグルーヴ感は一度見たら絶対に忘れられない。 ユーゴスラビアの歴史をよく知らないと厳しい部分があり、結婚式のシーンはややしんどいので2時間半でまとめられた。 あの世で踊り続ける、今は亡きユーゴスラビアの民への鎮魂歌。 この物語は終わらない。 そして、歴史の中で生き続ける。 昔々、とある国があったことを。[DVD(字幕)] 7点(2015-09-06 15:23:33)(良:2票) 《改行有》 78. ユリシーズの瞳 《ネタバレ》 採点不能に近い。ハリウッド俳優のハーベイ・カイテルを主演に据えているものの、3時間近い上映時間に長回しと政治的要素が強いため、映画館で観ていたら確実に寝ていた(本来のアンゲロプロスはこんな感じだろうが)。しかし、映像に目を見張るものがあるのは事実で、白黒からカラーに移り変わる際に現れる青い船、ワンカットで捉えた数年に亘る元旦、運河を渡る巨大なレーニン像、雪のサラエボ市街の交響曲と霧の中の虐殺が目に焼きつく。映画の歴史とは常に真実の記録と表現の闘いの歴史であって、独裁国家であったギリシャや旧ユーゴとは無関係ではないはず。1995年のカンヌ映画祭では、クストリッツァの『アンダーグラウンド』が最高賞、本作が次点であると見るに、当時の旧ユーゴ内戦の関心度の高さが伺える。[ビデオ(字幕)] 5点(2015-09-01 20:32:13)(良:1票) 79. マグノリア 《ネタバレ》 PTAの早熟なまでのキャリアの頂点と言える。冒頭で語られる3つの"思いがけない出来事"を象徴するが如く、「こんなはずじゃなかった・・・」と上手くいかず、途方に暮れて、誰かが口ずさんでいるかもしれない歌により一つの物語に紡がれていく。これは映画でしかできない希有な体験だった。そろそろ飽きてきたときに、"思いがけない出来事"をガツンとぶつけられたときの衝撃は計り知れない。アレに出会ったことによって、新しく自分を始められるきっかけになるかもしれないし、変化もなく堂々巡りで終わるのかもしれない。たとえ意見が割れる結果になったとしても、そのワンダーは登場人物と同じく現実のものとして記憶に残る。[DVD(字幕)] 8点(2015-08-05 21:06:47) 80. ブギーナイツ 《ネタバレ》 弱冠26歳でハードコア・ポルノを題材としながらも濃密な人間ドラマを撮り上げたP.T.アンダーソン監督は凄い。 幾度となく多用される長回しは技巧をひけらかすような幼稚なものではなく、 登場人物の背景と当時の空気を的確に捉えている。 業界で成功するも驕り高ぶる青年、作品の質を重視したい職人肌の監督、 親権を奪われドラッグに溺れる女優、家族に愛されなかったウェイトレス… 表社会から偏見にさらされ、その世界から抜け出せられなかった彼らは疑似家族として、 傷を舐め合うようにかつての栄光を演じ続ける。 一時的に楽しまれては忘れ去られていく消耗品。 それでも必要とされていた時代があったことに想いを馳せる。 絶対的な自信はあったかは知らないが、もう少し短くできた。[DVD(字幕)] 6点(2015-08-05 21:04:32)《改行有》
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