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861.  裸のキッス 開巻と同時にまさに襲い掛かるバイオレンスの唐突性と、タイトルバックでコンスタンス・タワーズが鬘を直すカメラ目線のインパクトがもたらす不穏な感覚に一気に引き込まれる。 撮影スタンリー・コルテスによる夢幻的で美しい画調と、露悪的な主題提示のギャップも強烈に倒錯的である。 特に絶妙な光加減が醸しだす夜間場面の妖しいまでの艶かしさは比類ない。その対象を輝かせるキーライトの強さは逆に表情の側面に落とされた暗い影の強さをも際立たせ、人物の後ろ暗い一面を暗示的に浮きあがらせるようでもある。 最後の俯瞰ショットで、陽光を受けながら出所する彼女に対し、取り巻く街の住民たちが建物の影の中に配置されているのは偶然だろうか。 子供たちの縄跳び遊びやレコード・録音テープ等の回転運動、合唱、クロースアップ。これらの反復がニュアンスを変えながらクライマックスに収束していく絶妙な語り口が素晴らしい。[DVD(字幕)] 9点(2009-08-30 16:04:45)《改行有》

862.  3時10分、決断のとき 50年遡るオリジナルと比較して、明らかな退行。上映時間の肥大と完全に反比例したワンショットの短さと、役者の表情演技に頼んだ単調なクロースアップの貧困さのみ印象に残る。画面深度と構図を駆使し、ワンショット内に複数のアクションを同時進行させ、複雑で豊かな情感と意味を付与した傑作オリジナルには及ばない。傍目には派手さを増したリメイク版の「アクション」は、旧作でヴァン・へフリンが若者を一瞬の速度で殴り倒す優れたワンショットにはまるで敵わず、二度と会わないであろう男女の別れを俯瞰ロングで捉えたワンショットの豊かな抒情は微塵もない。旧作の酒場のセットで襟を直すグレン・フォードと髪を整えるフェリシア・ファーのさり気ないツーショット、続く二人のショットサイズの変化のみで両者の関係を簡潔にして雄弁に語りきった省略の美質とのあまりの差異。アクションや情感を実らせるのは、必ずしもエピソードやアップショットや台詞の物量ではない。[映画館(字幕)] 5点(2009-08-25 23:07:03)

863.  ラ・マルセイエーズ 平民側、宮廷側の双方からフランス革命を描く。群像劇らしく、モブシーンにおいても個々の人間それぞれに焦点を当てるかのように、クレーン移動の多用によってエキストラ一人一人を丁寧に映し出していくキャメラが素晴らしい。義勇軍のマルセイユ出発時、パリ到着時、宮殿突入前の整列場面のスケール感に満ちた長大な俯瞰ショットや、木漏れ日の中を行軍する隊列のショット等は単なるスペクタクルに留まらない人間味と悲喜の感情に溢れた名場面である。平民側の主役というべきボミエが義勇軍に志願する場面での、家族とのやりとりの淡々とした切なさ。ルノワール映画の刻印ともいえる特徴の一つ、窓を介して彼が小さく走り去っていくのを捉えた素晴らしいショットが忘れがたい。一方の国王側の描写もまた一面的になることはない。ユーモアを交えた食事場面などによって、国王・王妃らの等身大の人間性が描きこまれており魅力的である。演出、役者の好演のみならず、まさにルノワールの人間観の表出の賜物といえる。[DVD(字幕)] 8点(2009-08-14 23:15:54)

864.  アマルフィ 女神の報酬 商業映画、特に『~記念大作』の類の必然として各俳優やロケ地のサービスショットなり、タイアップなりのしがらみに満ちた「企業の映画」たらざるを得ない中、画面にはそれに甘んじきらないスタッフの自己主張が随所に感じられて頼もしい。 何よりも主流ヒット作に顕著ないわゆる「万人受けの法則」つまり感傷場面の引き伸ばしに対して極めて自制的である。 主演二人のベランダの場面から、翌朝へのドライな繋ぎ。クライマックスから後日談への唐突でぶっきら棒な暗転。背中で隠したラストの「きれいな海」等はいかにも批評的で面白い。 出自やら来歴の説明を確信的に省いた風来坊のキャラクターも実に映画的で正しい。 無言を貫く主演二人の一連の動作と視線によって興味を引かせる導入部。これが終盤に活きてくる。渋滞の喧騒の中、二人は互いの言葉を聞き取れない。二人があくまで言葉によらずアイコンタクトのみによって意志を疎通させる展開の映画性。 また、空港の場面で戸田―スリの男―織田―天海親子、といった具合に人物の出し入れを(さりげない伏線の導入を含め)的確な流れで捌いた画面連鎖の見事さ。 これら、主要人物からエキストラまで複数の人物の頻繁な出入りが一貫して画面に活力を与えており、監視カメラ画像の連鎖を含めた引き、寄りのバランス感覚も悪くない。 クライマックスで織田裕二と佐藤浩市が一瞬交錯し、すれ違うショットの画面処理も的確で、二人の相容れない行路を明確に可視化している。 結果的に、類似した主題ながら台詞過多と画面の停滞で後半失速した東宝映画『誘拐』(1997)の愚を回避している。[映画館(邦画)] 8点(2009-08-13 19:21:37)《改行有》

865.  カトリーヌ ジャン・ルノワールとアルベール・デュードネの共同監督名義という、曰くつきの作品。様々なバージョンがあり、両者の関与の程度についても様々に議論があってややこしいが、ルノワール作品らしい瑞々しいショットに満ちている。同時に、随所に見出されるグリフィスへの傾倒も非常に感慨深い。放浪する「孤児」であり、「小間使い」である少女の薄幸のイメージ。照明とフォーカス効果、クロースアップを最大限に活かして、主役カトリーヌ・エスランの容貌を美しく印象付ける配慮。群衆が乱舞するニースのカーニヴァルのスペクタクル性と、屋内・屋外のダンスを「円」で繋ぐカットバック。さりげなく物語に機能する「椅子」。そしてラストのクロス・カッティングを駆使した「列車と自動車」による怒涛の一大救出劇。あまりに率直で直截なオマージュからは、初作品を通しての映画への思いが伝わるようだ。特に迫力に溢れたクライマックスの路面電車の暴走は圧巻である。後の『獣人』で鮮烈な印象を残す列車疾走の先駆けともいうべき圧倒的な画力に圧倒される。車両を背後から捉えるカメラは振動でぶれ、木立は流線となって後景を飛び去っていく。位置関係の整合性、スピードの一貫性を無視した荒々しい編集が却って無方向的なエネルギッシュさを発散させて『イントレランス』にも引けをとらない感動を生んでいる。[DVD(字幕)] 9点(2009-08-11 20:58:40)

866.  世界大戦争 経済的要請から、他社に先駆けて早々と軍部と結託し 数多くの軍事教育映画・戦意高揚映画を作り上げ、 多大な利益を挙げてきた東宝撮影所。 まさに戦争とはまずもって経済行為。 局地紛争勃発の報道に際して、主人公が戦争関連株の取引に躍起になるように、 戦争とは理性的な金儲けの道具に他ならない事をこの映画はしっかりと露呈させる。 自分の身にふりかかる全面的核兵器戦はイヤだが、 自分の利益になるどこか遠くの通常兵器戦は大歓迎という、 条件付の浅ましいご都合主義的反戦論である。 61年という時代設定からして紛れもなく戦中世代であるはずの主人公の、 戦争に対する無反省と「東宝」的日和見主義。 他国の戦争を踏み台にした特需に対する認識も疚しさも一切無く、 「国民が働いたから」と自賛する欺瞞的な平和と繁栄の図。 ゆえに、大仰な伴奏音楽で露骨なまでに強調される彼の悲憤慷慨も 何一つ共感・同情を呼ばない。 ナイーブでエモーショナルな、つまりは反理性的な反戦メッセージは 退行でしかない上、随所に挿入し過ぎの戦闘描写はそれ自体、 製作側の意図に関わらずいくらでも「反・反戦」的ニュアンスを含み得てしまうことへの無自覚が明白である。 戦争自体が多義的かつ多面的ゆえ、その映像は悲惨のみならず、 悲壮美や魅惑的スペクタクル、爽快なアクション性をも併せ持つ宿命だが、 この映画の円谷特撮場面の数々がまさにそうだ。 東宝特撮技術もまた第二次大戦の中で培われてきた映像技術、 つまり戦争の恩恵なのであり、だからこそこの映画は安易な反戦には落ち着かせない。 無線交信場面のあまりに直截的で無粋なショット、字幕のタイミング、 編集、音楽処理は全くダメだと思う。 [DVD(邦画)] 4点(2009-08-08 20:50:10)《改行有》

867.  殺人捜査線 あらゆるカットにパースペクティブが活かされており、その構図取りの卓越した感覚が素晴らしい。冒頭から数多くのエキストラや車両を画面手前と奥に行き交わせ、深い被写界深度によて臨場感と世界の重層化を演出する。また、サウナ室の蒸気や、水族館の光の揺れ、スケート場や展望室のモブ(群衆)など、遠景には動きを取り入れる工夫が様々に凝らされており、活力ある空間が連続する。カットにはまるで無駄が無く、初っ端のスピーディなカーアクションから、クライマックスのスクリーン・プロセスと実景を見事に組み合わせ奥行きを活かした逃走アクションまでタイトに纏まり全くテンションが途切れない。特に最後の追跡劇は、ハイウェイの奇抜なロケーション、水平と垂直のパースペクティブ感覚、スピード感の演出が総合し傑出した活劇となっている。[CS・衛星(字幕)] 10点(2009-08-02 16:55:25)

868.  ボディ・スナッチャー/恐怖の街 回想形式でのスタートだが、救急病院を示す屋外のファーストショットから流れるような移動で院内の主人公が回想に突入するまでほんの数分、ショット数にしてわずか4というスムーズな語り口があまりに見事である。この4ショットの間に、主人公に関する必要な情報のみ簡潔かつ的確に提示し物語に引き込む手際の良さ。日中はロケーション主体の写実的なタッチ、夜間はノワール的な照明設計(低位置のライティングよる陰影の拡大、闇を強調した夜間撮影など)、ここに階段や丘道による高低差・坑道や地下室の暗い閉塞空間を効果的に織り交ぜ、不気味なムードとサスペンス感を一段と増幅してみせる傑出した技能は低予算作品で培われた職人技といって良いだろう。要所で限定的に用いられるひずんだクロースアップの効果も絶大である。ここには大スターも大掛かりな美術セットも特殊効果もないが、全編が豊かなスペクタクルに満ちている。(モノクロームならではの、夜の路地の妖しい美しさといったらない。)これぞB級の美質。[ビデオ(字幕)] 9点(2009-07-29 21:38:27)

869.  あらくれ(1957) キャストに限らず、全編が見どころに溢れ充実している。●つなぎの面白さ。中盤の場面転換で、海辺を歩く男女のショットが不意に登場する。一体何かと思うと、実は高峰秀子と森雅之が見ている映画内映画『金色夜叉』の一場面で、そこでは貫一が宮に蹴りを入れ始める。(言うまでも無く、加東大介らを蹴りつける高峰の暴力的なキャラクター造型に対応している。)これを見る彼女の表情がまた絶妙で、さりげないユーモアが利いている。(仏壇、さらには墓地への唐突なつなぎ等もいい。)●大正期の街並みと風俗を精緻に再現した、河東安英によるオープンセットの見事さ。活気に満ちた東京の路地の情景、行き交う物売りの担ぐ荷車、人力車まで凝りに凝った美術が素晴らしい。●雨、雪、風。終盤の雨はもちろん、山村の旅館に積もった雪の質感と情感も驚異的である。(高峰と森の絡みの場面で、雪塊が氷柱のはった屋根から一気に雪崩れ落ちる、その構図とアクセントの見事さ。)また、風物や音声を駆使して木目細かく表現される四季の移り変わり。短いはずの撮影期間内で、折々の光を玉井正夫が繊細に掬い取っている。[映画館(邦画)] 9点(2009-07-27 20:03:00)

870.  のらくら兵 中盤の兵舎内でのドタバタも面白いが、なんと言っても後半のパーティシーンの乱痴気ぶりが圧巻。大らかさ、楽しさを通り越して、パワフルで凄まじい。『女優ナナ』に続く滑稽な宙吊りアクション、回転する花火の火花、放水の激しい水しぶきと右往左往する観客たちが入り乱れる画面の圧倒的な活力。多様なポジションから即興風に捉える手持ちカメラは画面が少々ぶれようが焦点がぼやけようがお構いなし。場の活気と狂乱に同期し一体化するかのような鮮度感に満ちた画面で映画を盛り上げる。エピローグの簡潔にしてスマートな大団円も幸福感と愛嬌に溢れ素敵だ。[DVD(字幕)] 9点(2009-07-25 20:21:02)

871.  まごころ(1939) 題材とも合致した、鈴木博の本領といえる軟らかな画調が滋味深い。 少女たちが泣きじゃくる校庭のベンチの上で揺れる木立、小川のせせらぎと川面の光の揺れ、風に揺れる畑のとうもろこしや小川に沿った並木道の道端に咲く野花など等。 郷愁に満ちた生活空間の風情はロケ地選びや画面構成の力量だけでなく、ソフトなタッチを活かした珠玉の撮影あってこそのものである。 二人の少女の画面映えも素晴らしい。(団扇から顔半分覗かせる加藤照子のショットが絶品。) 映画研究塾の成瀬論を応用するならば、「背負い歩き」、「振り返り」、「顔のふれあい」、「びっこ引き」といった豊かな具象的イメージがまず監督にあり、それらを導き出すものとして水浴中の怪我のエピソードが逆算的に設定されたのはまず間違いない。 その上で、親同士の再会という説話的流れも並行して違和感なく発展させてしまうのだから見事だ。 小川、児童、おんぶ、縦構図の一本道と、同時期の清水宏の画面と何気なしに響きあう点も感慨深い。[映画館(邦画)] 9点(2009-07-20 19:00:02)《改行有》

872.  トウキョウソナタ 映画の基調色となる緑が印象深い。ハローワークの階段の壁に貼られた無機質な表示や小泉今日子を拘束するガムテープ、清掃する香川照之の前で子供がこぼすメロンソーダらしき液体、井之脇海が拘置される警察署地下のホラー風アクセント照明、あるいは小柳友が仲間とチラシを投げ捨てる橋のライティングなど等、闇や陰影が控えめとなった替わりに多様なグリーンが画面を彩る。香川と小泉の断絶の提示が画面上で決定的になるのは、居間とダイニングの段差がもたらす立位置のみならず二間を分けるグリーンとオレンジの照明の分断にもよるだろう。地平線に立つ女性主人公を照らす光と大気と風と、時刻の変化が示す奇跡的な瞬間の感動は、個人的にはロメールの『緑の光線』や『レネットとミラベルの四つの冒険』の一遍(『青い時間』)に通じる映画感覚である。随所に散りばめられた色彩効果によって、最期の演奏場面のシンプルな白い光線の揺れが一層引き立ち、輝きを増している。[映画館(邦画)] 9点(2009-07-19 16:08:59)

873.  限りなき舗道 ウエイトレス仲間である主人公の親友(香取千代子)は表情豊か。茶目っ気に満ちた身振りで枕やリンゴを放り投げ、拾った空っぽの財布を投げ捨て、部屋の中で軽やかに飛び跳ねる活発なアクションを担う。対照的な主人公(忍節子)は清楚で奥ゆかしく動作は控えめ。うつむく、振り向く、首をかしげる、とアクションは小さく慎ましい。自動車事故でベッドに横になった彼女はさらに身動きを制約されてしまうという具合だが、その中で健気に首を起こし親友たちの見舞いに応える小さな所作こそ優れて情感的なアクションとして際立つ。同時に、これらの小さな屈曲を主体とした半円的な身体運動の数々は、終盤の決意の場面で唯一用いられる彼女の自立的な表情への直線的なトラックアップの強度を一層引き立ててもいる。 ●この作品では成瀬映画おなじみのモチーフともいえる交通事故が二度も登場。後期の『ひき逃げ』以上に直截的な描写であるのが興味深い。 ●同じく特徴的である、スムーズな場面転換術も随所で効果を発揮。(デザートグラスからウイスキーグラスへ、手鏡から鏡台へ、花瓶の花から観葉植物へといったドラマ的な対象物同士によるつなぎの妙。ドアの多用。結婚後すぐの場面に登場する鳥かごのさりげない暗示性など。)[CS・衛星(邦画)] 9点(2009-07-18 22:33:31)《改行有》

874.  アメリカン・ビューティー 《ネタバレ》 作劇自体は、あまりに理詰め過ぎで人工的。人物同士の関係性を画面内配置と明暗のコントラストで的確に示す手際や、窓枠・鏡・PCモニター・柱といったフレーム内フレームをさりげなく駆使して主人公の閉塞感と開放感を視覚的に演出する構図感覚なども理が勝ちすぎの印象がある。一方で、光と闇に対する繊細な感性と意識も細やかだ。コンラッド・L・ホールによる濃い陰影が、少ない光量の中に映える人物の表情、雨垂れの光を本作でも十二分に活かしきっている。3人家族の食卓で主に中央の主人公の娘(ゾーラ・バーチ)に注ぐ照明の具合、また彼女と隣家の少年が薄暗い室内でビデオを見る場面で、彼女の瞳に小さく揺らめく光の美しさ、あるいはクライマックスとなる雨の夜のシークエンスにおける照明と撮影は何れも絶品である。ケヴィン・スペイシーとミーナ・スヴァーリが見詰め合う窓際の逆光と流れる水滴の美しさ、そこに順光のスポットで浮かび上がる赤いバラの鮮烈さ。それら暗目のトーンが、シニカルな主題を際立たせる。[映画館(字幕)] 7点(2009-07-12 16:45:17)

875.  真夏のオリオン 《ネタバレ》 ファンタジー映画に考証ミスなどはどうでも良いとして、劇構成・脚本がかなり幼稚。過剰なファンサービスであろう主演タレントのクロースアップ過多の画面には、潜水艦映画の演出とは違う意味で窒息感が充満していた。麗しいロマンスから専門用語羅列に頼んだ似非アクションまで、戦争をダシに「売りの要素」を節操無く八方美人的に詰め込んだ「水増し大作主義」の散漫さはこの映画のというよりシネコン興業システム自体の問題とは思うが。回想形式の作劇自体の不味さがサスペンスを損なわせ、回想の回想が何度もドラマの流れを阻害するという、これはやはり「水増し」の弊害にもよるのだろう。その割に人物像の掘り下げのない、何とも浅薄な二時間である。 [映画館(邦画)] 2点(2009-06-27 19:27:36)《改行有》

876.  草の上の昼食(1959) まずは、人工授精に関するニュースを伝えるテレビ番組のモノクロ画面。続いてそれが置かれた研究室も白を基調とした寒色系の画面である。これら巻頭に提示された無機質な人工物の色彩が、映画の中で語られる科学と自然の視覚的対比として南仏カーニュの緑豊かな情景の美しさを一層際立たせる。絵画『コレット荘』そのままの陽光あふれるのどかな風情、ヒロイン(カトリーヌ・ルーヴェル)の水浴場面の瑞々しさ、縦移動で捉えられた疾走するバイクの爽快感・ライブ感、性愛表現としての水草のうねりの官能性等〃。いずれもロケーションを活かした光と風の感覚が素晴らしい。今回のDVD版では従来のビデオ版よりも明度がさらにあがり、特にヒロインの衣装の赤がより鮮烈なイメージとなって彼女の陽性の魅力が一段と引き立っている。華やかな色彩の乱舞する最後のモブシーンも圧巻だ。[DVD(字幕)] 10点(2009-06-01 22:30:28)

877.  ワイルド・フラワーズ 主演:鈴木美妃の存在感が光る。 新人俳優らしい序盤の垢抜けない硬さがあってこそ、リング上の立居や表情や本格的なレスリング技が次第に様になっていく姿が劇中の成長物語と通じ合い映画後半の盛り上がりを生んでいる。 タッグを組むこととなる石川美津穂、ライバルの東城えみ&キューティー鈴木といった実質的なプロたちに交じりながら、終盤には彼女たちの凄味、貫禄、技の切れとスピードに対し全く引けをとらない渾身のファイトぶりが素晴らしい。 クライマックスのタッグ試合でひたすら四人の身体がぶつかり合う迫真性は日本版『カリフォルニア・ドールズ』の趣だ。 また粗末なガレージ内の練習場、地味で狭い選手寮、寂れたキャバレー内に設営された試合会場といった真実味のある美術もまた王道的なスポーツドラマに納得性を与えている。[DVD(邦画)] 7点(2009-05-18 21:45:42)《改行有》

878.  街の野獣(1950) 実景による街の俯瞰ショットは、人間の矮小さをも際立たす。冒頭で闇の街中を逃げ回るリチャード・ウィドマークの人影もその卑小さを強く印象付け、続くジーン・ティアニーのアパート階段上から彼を捉えるカメラアングルもまた、その勾配がもたらす遠近法によってその孤立を駄目押しするかのようだ。一方の屋内空間では、極端なパースを活かした構図や仰角画面によって顔面はいびつにデフォルメされ、空間の狭さが強調される。これら「見晴らしの悪い夜の屋外実景」と「窮屈な屋内セット」の二段活用は、何処へも「逃げ出せない」という主題と、物語の結末の暗示ともなる。終盤の逃走場面に登場する工事現場内の狭いらせん階段の歪曲と闇がもたらす切迫感、レスリング場面の張り詰めた重量感と迫真性も非情に見事である。[DVD(字幕)] 9点(2009-05-09 22:11:47)

879.  銀河鉄道999 スタッフの熱意の伝わる、東映動画最盛期の傑作。 ●椋尾篁の黒を多用した精緻な背景美術の美しさとスケール感。ここでは劇場版を意識した大判の背景画が用いられ、実写でいうところの移動撮影やズーミング(市川的)で空間の広がりと奥行きを表現している。 ●金田伊功原画によるパースペクティブとデフォルメを活かしたダイナミックなアクションの素晴らしさ。 その大胆なパースもまた画面に深度を与えている。 彼の主に担当したクライマックスの惑星崩壊・炎上の圧倒的な描写はふんだんな透過光の効果と相俟って特に傑出した映画美となっている。 (繋いだ手の感動的ストップモーション。) ●東映動画初期から実務経験を積んだりんたろうならではのアニメーションの醍醐味として、さらには映画の主題としての疾走へのこだわり。 主人公は全編、それこそラストカットまでひたすら走り続け、画面を躍動させる。 ●優れた映画の一条件といっても良いかもしれない、風の表現。 特に、別れの駅の場面に吹く風の見事さ。 二人の間を吹き抜ける静かな風の強弱を表現したアニメーション感覚が絶妙であり、 映画の情感を一段と高めている。 ●ヒロインへの紗のかけ方、ショックシーンの編集等もいかにも市川崑的だ。[映画館(邦画)] 9点(2009-04-21 23:20:30)《改行有》

880.  シックス・センス 奇しくも、死者との交流と癒しを描いた美しい日本映画『学校の怪談4』(1999)と同年公開である。こちらも子供の視点とアングルを多用した静謐で丁寧な作風が非常に好ましい。微かな音楽、あるいは無音を活かした世界構築と共に、全編にわたり無駄な台詞を極力切り詰めた優れた脚本が本作の静謐さを生む美質のひとつである。一例として挙げれば、亡くなった少女の家庭の状況を、部屋の中を移動する1ショットの合間に、遺族たちの最小限のささやき声と壁の写真のみで十二分に語りきってしまう卓越した手腕。大幅な省略ゆえに、逆に個々の台詞が重み、深みを湛える。または画面の美点。印象的ならせん階段に浮かぶ赤い風船、扉、ドアノブやテントに用いられる赤い配色は余計な宗教的意味合いなどに還元されずとも純粋にワンポイントカラーとして美しく、妖しく映画を彩っている。そしてこれはフィラデルフィアの映画、歴史に埋もれた被迫害者たちの慰霊の映画として忘れ難い。[映画館(字幕)] 9点(2009-04-17 20:59:51)

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