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プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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81.  ソルジャーズ・アイランド 《ネタバレ》  この映画、結構好きです。  好きなんだけど……それを差し引いても欠点の多さが気になっちゃいましたね。  金持ち連中が自慢のタネを得る為、節税の為にレジャー感覚で軍隊に参加するという「富豪部隊」の設定は面白いのに、それを活かし切れていない。  例えば冒頭、如何にも「普通の戦争映画っぽい場面」から始まって、それがあんまり面白くなかったりするもんだから、気勢を削がれる形になっているんです。  しかも、後に映画のラスボスとなる相手が冒頭にて主人公に一度倒されていたりするもんだから、緊迫感も失せてしまうという形。  これなら冒頭の部分はカットして、主人公が「富豪部隊」の護衛役に雇われる場面から始めた方が良かったんじゃないかな、って思えます。  主人公が「伝説の軍人」って割には「弾を避ける為に、ジグザグに走って逃げるべき」ってアドバイスを武器商人からされたり、内通者がいると分かっているのに基地を移動させようとしなかったりと、その能力に疑問符が付いてしまう辺りも残念。  物語を面白くする要因なはずの「内通者の正体」に関しても、どうも扱いが下手だった気がしちゃうんですよね。  作中で特にヒントも出していないから「犯人探し」を楽しむ事も出来ないし、犯人のキャラ付けに関しても「嫌味な金持ちその1」という没個性的な代物でしかなかったので「良い奴だと思っていたのに、裏切り者だったのか……」という意外性も無し。  そんな裏切り者を殺す際に「クソ銀行屋め」と言わせたりするのも、如何にもって感じがして、ノリ切れませんでしたね。  この手の「皆もサブプライムローン問題には怒ってるでしょ? だから映画の中で銀行屋を懲らしめておいたよ」というパターンは流石に食傷気味で、ちょっと興醒めしちゃったくらいです。  そんな欠点の多さに比べると、良かった部分を探すのは大変だったりするのですが……その数少ない「良かった部分」が、かなり自分好みなんですよね。  主人公が戦友と交わす会話「国のために戦ったのに報われない」「金のために戦おう」にはグッと来ちゃったし「今はトレーラーハウス暮らしの無精髭な主人公が、実は伝説の軍人だった」って設定も、男の浪漫をくすぐるものがあります。  ナイフを用いての決闘で、敵にトドメを刺すシーンも恰好良く決まっていたし、水上バイク同士を衝突させて爆発させるとか、アクション映画として見栄えの良い場面がしっかり詰まっているのは、文句無しで長所だと思いますね。  ラストシーンにて、花火を打ち上げたり、争いの種となっているレアメタルを海に投げ捨てたり、水鉄砲で子供達と遊んだりしている光景を描き「島を独裁者の手から解放した」喜びを感じさせて終わる辺りも、ハッピーエンド感があって良かったです。  そういった具合に、確かな魅力も秘めている映画であるだけに(ここは、もっとこうすれば良かったのに……)って、歯痒くなっちゃいますね。  せめて「富豪部隊」の面々が善意に目覚めていく流れだけは、もうちょっと丁寧に描いて欲しかったです。  例えば、事前に島民の子供との交流を描き、この子達を救いたいと思って金持ち連中が立ち上がるとか、そういう展開にしておけば、もっと感動出来たろうし、胸を張って「隠れた傑作」と言えた気がします。  「クリスチャン・スレイターが主演で、彼の恰好良い場面がちゃんとある」というだけでも、自分にとっては「良い映画」なのですが……中々他人には薦めにくい一品でありました。[DVD(字幕)] 6点(2018-12-04 14:43:17)《改行有》

82.  コップ・カー 《ネタバレ》  観終わった後に上映時間を確認し(えっ、88分しかなかったの?)と思ってしまった事が印象深い。  体感としては二時間越えの映画に思えた訳ですが、中身が濃かったというよりも「一時間以内に片付けられるストーリーを、無理矢理引き延ばした」感があったりしたのが辛いですね。  とにかく演出の「間」が長くって(早く次の展開に移ってくれないかなぁ……)って、じれったい気持ちになる場面が多かったです。  それが最高潮に達するのが、ケヴィン・ベーコン演じる警官が車泥棒する場面であり、ここは本当に観ていてキツかったですね。  窓の隙間から靴紐の輪っかを通して、それで車内のロックを解除しようとする流れなんだけど、観客を焦らすように繰り返し失敗したりするもんだから、やりきれない気分になっちゃいました。  それだけ時間を掛けた訳だから、成功の際の達成感も大きくなる……って訳でも無くて、成功の寸前にカメラが切り替わり、次の瞬間には靴紐の輪っかが不自然に小さくなっていたりしたもんだから(あっ、ズルしたな)と思えて、作り手の不誠実さに幻滅しちゃったくらい。  この場面に関しては、もうちょっと上手く撮って欲しかったです。  少年達が家出した理由を「義理の父親」「お婆ちゃん子」などの断片的な情報だけで片付けたり、警官達が具体的にどういう理由で殺し合ったのかが謎だったり、終いには負傷した少年の生死も曖昧なままエンディングを迎えたりと、やたら説明不足なのも気になりますね。  この辺りは「無駄な説明を削ぎ落とした、スタイリッシュな話作り」「観客の想像力に訴えかけ、余韻を残す終わり方」と褒める事も出来そうなんだけど、自分としては「投げっぱなし」って印象の方が強かったです。  ……とはいえ、良かった部分も色々あって、一概に「嫌いな映画」とも言えないんだから、全くもって困り物。  主人公となる少年二人が「悪ガキなんだけど、愛嬌があって憎めないタイプ」だった訳だけど、この映画も丁度そんな感じだったりするんですよね。  自分としては「間延びした演出」「説明不足なストーリー」は明らかに欠点だと思うんですが、それを補うだけの長所も備え持っているという形。  何と言っても「男の子達がパトカーを手に入れて、好き勝手に乗り回す」という楽しさを、きちんと描いている点が良かったと思います。  映画でこういう展開があっても、すぐに大人に見つかって止められたりするものなんですが、本作はたっぷりと尺を取って「子供がパトカーを使って遊びまくる」場面を描いているんですよね。  何せ二人きりの「子供の時間」が破られ、トランクの中から大人の男が出てくるのが88分中48分を過ぎてからというんだから、凄い話です。  作り手側にとっても、後半の銃撃戦やら何やらは余戯に過ぎず「子供がパトカーで遊ぶ」場面の方をメインにしたかったんじゃないかなぁ、と思えてきます。  少々ブラックな内容ではありますが、ある意味では「子供の夢を叶えてくれる映画」と呼ぶ事も出来そうな感じですね。  敵役のはずの警官に関しても、演者であるベーコンの力量ゆえか、妙な魅力があったりして、これまた憎めない。  身の破滅を悟り、自宅に隠しておいた金塊やら何やらを掻き集めて逃げ出そうとする件なんて、特に好きですね。  この場面では、つい彼を応援しちゃって、無事に逃げ延びて欲しいなと思わされたくらいです。  中盤「そんな風に銃で遊んでいたら危ないぞ」と観客に思わせておき、終盤にて「それみた事か」とばかりに、少年達の片方が弾を受けて負傷する展開になるのも、上手い伏線回収の仕方でしたね。  ラストシーンに関しても「友達を救おうとしてパトカーを運転し、それまで出せなかった速度を出してみせる」「大人に背を向けて家出した少年が、無線に応答して、今後は大人と話し合っていく未来を示唆する」といった感じの演出が行われており、投げっぱなしな終わり方ではありますが「独特の味わい深さ」のようなものは、確かにあったかと。  総評としては、才能ある若手監督の作品に相応しい「粗削りで欠点も目立つが、光るものを秘めた映画」って感じになるでしょうか。  正直「楽しかった」「面白かった」って印象は然程残っていないんですが、忘れ難い魅力を秘めた、記憶に残る一品ではあったと思います。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2018-12-02 09:47:38)《改行有》

83.  ジャックとジル 《ネタバレ》  映画に関するジンクスの一つとして「ゴールデンラズベリー賞を取った映画は、意外と面白い」というものがあるのですが、これもそんな一本。  とはいえ「傑作」と断言出来る程ではなく「意外と面白い」の範疇に止まってしまうのが寂しいですね。  下品なギャグが多いし「おたのしみ箱」やアル・パチーノ(本人役)といったキャラの言動が不自然に感じられるしで、もうちょっと脚本を煮詰めてから映画化した方が良かったんじゃないかなーと思ってしまうのも事実です。  でも、ちゃんと面白かった部分もあって、自分としては結構満足。  マッチョな男性陣が苦労して上げていたバーベルを、ジルが簡単に持ち上げちゃう件なんかは、ベタだけど微笑ましいギャグだったし、本物のジルを女装したジャックと勘違いして胸を触った男が、豪快に殴られちゃう場面なんかも良い。  養子の少年も良い味出していたし、ドン・キホーテに扮したパチーノが風車ならぬ天井のファンを怪物と勘違いして、戦いを挑むシーンも好きですね。  最後は家族愛に着地して、ハッピーエンドで終わってくれるし、後味も爽やか。 「そりゃあ好きだけど、離れている時はもっと好き」 「君を愛しているのは間違いないが、死の間際に気付く愛だ」  等々、心に残る台詞が散りばめられている辺りも良かったです。  それと、自分はクルーズ旅行の描写がお気に入りだったので、あそこをもっと尺を取ってやって欲しかったという想いもあるんですが……まぁ、コレは我が侭というものでしょうか。  欠点を論ったらいくらでもあるんだけど、なんとなく本作に関しては「好きな部分」をメインに語りたくなる。  憎みきれない、愛嬌のある映画でした。[DVD(吹替)] 6点(2018-09-23 20:48:55)(良:1票) 《改行有》

84.  SAFE/セイフ 《ネタバレ》  「パソコンは何を記憶させても探り出されてしまう」という台詞が印象的。  ハッキングやら何やらを警戒する余り「大切な情報は、記憶力の良い人間に憶えさせておくのが一番安心」という時代錯誤な結論に行き着くのが、実に皮肉が効いていましたね。  そんな「記憶力の良い人間」が幼い少女というのは非常に漫画的だけど、あんまり美少女過ぎない子役を起用しているのが、適度なリアリティを生み出していたと思います。  ちょっと目が細過ぎて、典型的な「欧米人から見たアジア人」ってルックスの子なんですけど、笑うと愛嬌があって可愛らしいし、映画を観終わる頃にはかなり好きになっていました。  こういったストーリーの映画である以上、子供の事を「守ってあげたくなるような存在」として描くのは大切だと思うし、それは成功していたんじゃないかと。  それと、本作は彼女の養父となるチャンを演じるレジー・リーも、凄く良い味を出していましたね。  悪人だし、ボスの命令には逆らえないんだけど、養女のメイの事は彼なりに大切に思っているというバランスが、実に魅力的。  彼がメイに対し「きっといい父親になってみせる」と語り掛け、笑ってみせる場面は、本作の白眉であったように思えます。  不器用ながらも愛情を示して、彼女の為に少しでも「良い人間」になろうとした事が伝わって来て、好きな場面です。  それだけに、その後すぐ彼が殺されてしまう展開になるのがもう、残念で仕方ないんですが……  やはり、この辺りは「一度でも娘を殺そうとした奴が、本当の父親になんかなれる訳が無い」って事なんでしょうか。  「怖いものから、目を背けたりするな」という彼の教えを、メイが守ってみせて「彼とメイが過ごした時間は、無駄じゃなかった」という落としどころになっただけでも、良しとすべきなのかも。  その一方で、ジェイソン・ステイサム演じるルークに関しては「タフガイ」「アウトロー」の王道を行く主人公となっており、安心して観賞する事が出来ましたね。  浮浪者として生活しなければいけない悲壮感、靴を譲った相手すらも「ルークと関わったから」という理由で悪人達に殺されてしまうという「誰とも親しくなれない」という孤独感が、ひしひし伝わって来て(やっぱりステイサムって良い役者さんだなぁ……)と、惚れ惚れさせられました。  ただ、そんなルークがメイを必死に守ろうとする動機が弱いようにも思えて、そこはもっと説得力が欲しかったですね。  自殺を止めるキッカケになってくれた恩返しというなら「たまたま目が合ったお蔭で、思い止まれた」という展開ではなく、もっと積極的にメイが彼の命を救ってみせた展開にしても良かったんじゃないでしょうか。  あるいは、冒頭にて殺されたのが「ルークの妻」ではなく娘だったという事にして、娘と同じ年頃の子だから助けずにはいられなかったとか、そんな形にしても良かった気がします。  一番悪どい存在に思えた中国マフィアのハンおじさんが、結局大したダメージを受けず「尻尾を巻いて中国に帰る」くらいで終わっちゃう事。  そして、黒幕のアレックス刑事とルークとの素手のタイマンが始まるかというところで、メイが銃でアレックスを撃ち、決着を付けちゃう事なんかも、欠点と言えそうですね。  そこは、もっとスッキリする形で〆て欲しかったです。  観賞前に期待していた「ジェイソン・ステイサムの骨太なアクション」は充分に堪能出来たし、ルークとメイが「父娘」ではない「友達」になるハッピーエンドは良かったしで、決して嫌いな映画じゃないんですけどね。  気になる点も多くて「そこそこ満足」くらいの感じで観終わってしまった……  そんな一品でありました。[DVD(字幕)] 6点(2018-07-04 11:02:09)(良:1票) 《改行有》

85.  アイス・クエイク<TVM> 《ネタバレ》  ポール・ジラー監督作の中では、本作が一番好きです。  脚本にツッコミどころが多いとか、低予算な作りなのを全く隠しきれていないとか、欠点と呼べそうな部分は色々あるけど、長所も同じくらい備わっていると思います。  主人公一家のキャラ造形も非常に自分好みであり、それだけでも大分ハードルが下がっちゃいましたね。  父親と母親は、演者さんのルックスも中身も典型的な「主人公」と「ヒロイン」って感じで、安心して観ていられたし、子供達二人も可愛らしい。  この子達が「まだ幼く、無邪気にパパに懐いている息子」と「思春期を迎え、少し反抗的なお年頃の娘」っていう王道な組み合わせの時点で、もう自分としては白旗を上げちゃうというか、全面的に主人公のパパさんに感情移入しちゃうんですよね。  飼い犬も含め、一家から死者が出る事無くハッピーエンドを迎える辺りも「そうこなくっちゃ!」という感じ。  クリスマス用のツリーという小道具を活用して「無事に助かった」という安堵感だけでなく「当初の目的であるツリーもゲット出来た」という達成感を与えて終わる辺りも、中々上手かったんじゃないかと。  ビジュアル的にも「超低温ガスが地割れから噴き出し、それを浴びた男が凍死してしまう」なんていうシュールな映像があったりして、忘れ難い味がありましたね。  こういったTVMならではの「潤沢な予算のある映画では拝めないような、独特の映像」が見つかるのは、立派な長所だと思います。  プラスティックの瓶に雪を詰めてから、それを懐に仕舞いこみ、体温で溶かして水を作る場面なんかも印象深い。  主人公は冷たいのを我慢して水を作り、それを子供達に飲ませる訳ですが、そんな「自己犠牲」を「子供達の為なら当然の行いだ」とばかりに、サラッと描いちゃうのが良いんですよね。  そんな優しいパパさんだからこそ、ハッピーエンドを迎えても嫌味じゃないし、むしろ祝福したくなる訳なのだから「主人公の優しさ、良い奴っぷり」を示す場面として、非常に価値があったと思います。  欠点も多い為、手放しで絶賛する事は出来ませんが……自分としては「好きな映画」と言える一本でした。[DVD(吹替)] 6点(2018-04-18 02:34:24)(良:1票) 《改行有》

86.  みんな私に恋をする 《ネタバレ》  大好きな俳優のダックス・シェパードとジョン・ヘダーの共演作という事で、これはチェックしておかねばと手に取った一本。  いざ観賞してみると、二人以外にも見知った顔が色々と出演しており、嬉しかったですね。  好きな俳優さん達が、撃たれたり殺されたりする心配も無く、平和なラブコメ映画の中で楽しそうに笑っているのだから、それだけでも、ある程度は満足。  軽快な音楽に「画面の切り替え」によるギャグ演出なども上手く決まっており、誰が見ても最低限の満足度は得られるタイプの映画じゃないかな、と思いました。  魔法によってヒロインに恋する五人組の中で、ルックスでは一番見劣りする中年禿げ親父が、中身は意外と男前というギャップも面白い。  ジョン・ヘダー演じる奇人変人マジシャンも、間違いなく一番オイシイ役どころでしたね。  彼だけが唯一特定の相手が見つからなかった為(=禿げ親父はヒロインの上司と、モデルと画家はそれぞれ同性で結ばれる事が示唆されている)ちょっと可哀想だったけど、自分としては「ハートを投げたお嬢さん」辺りと、ちゃっかり後日談で結ばれているのを期待したいです。  小さな車で渋滞をすり抜けていくシーンも、小気味良い快感がありましたし、マジックでドアを開けてみせる件なんかは「嘘っ!?」と声が漏れちゃうくらいの意外性があって、かなり好き。  魔法が解けて、四人の男達がヒロインに別れを告げる際に、恨み言は口にせず「コインのお蔭で、恋が出来て良かった」と満足気な様子だったのも、凄く良かったです。  ヒロインのせいで色々迷惑を被った形な訳だから、ちょっと女性に都合が良過ぎると感じないでもないけれど、ここは「失恋した男の恰好良さ」みたいなのも感じられるし、良い落としどころだったんじゃないかと。  ラストに皆で集まり、楽しく踊ってハッピーエンドというのも、気持ち良い終わり方でしたね。  で、不満点としては……彼氏を運命の相手と感じたキッカケが「借金を調べる間もない」という台詞なのは、ちょっと浪漫に欠けるかな、という事。  それと、個性豊かな男性陣が、それぞれペアルックやら壁画やらでアピールする様が破天荒で面白かっただけに、本命の彼氏との恋が育まれていくパートは、真面目で地味で、観ていて面白くなかったとか、その辺りが挙げられるでしょうか。  結果的に、映画の中では一番つまんなくて魅力に欠ける男をヒロインが選んだように思え、どうも二人の仲を祝福する気になれなかったんですよね。  かなり早い段階で(あぁ、この男と結ばれるんだな)と分かる作りになっている為、五人いる男性陣の中で、ヒロインは誰を選ぶのかってドキドキが全く無いのも、ちょっと勿体無い。  ポーカー云々の台詞により、チップのコインの持ち主が神父である事は大体分かるように出来ていると思うし、結婚式でも神父の言動が怪し過ぎるしで、その辺りの種明かしの仕方も下手だった気がします。  (いや、神父のコインなんだろ? もう分かってるよ……)と、観ていてじれったくなるし、最後の最後で「助手のフアン」が出てきて終わりというのも(だから何?)と思えちゃうしで、オチが弱い印象です。  後、これは自分がダックス・シェパード好きだからこそ気になる部分かも知れませんが、五人組の中で、彼が演じるモデルの扱いだけが極端に悪いというのも、如何なものかと。  他の面々は「移動する事を提案」「車を運転」「ドアを開いてみせる」と、クライマックスで活躍しているのに、彼だけ活躍しておらず、別にいなくても良かった形になっているんですよね。  「モデルやるくらいルックスが良くても、どれだけ筋肉を鍛えていても、恋愛では何の役にも立たない」というメッセージなのかも知れませんが、ちょっと受け入れ難いです。  ヒロインからも「あなたとの別れは楽」なんて言われちゃうしで、流石に可哀想。  そんな彼が、実生活では主演のクリスティン・ベルとラブラブであるという現実とのギャップを踏まえたギャグなのかも知れませんが、映画の中は映画の中で、きちんと彼にも見せ場を与えて欲しかったところです。  ……それと、これは完全に余談になってしまうのですが、現段階で投稿されているレビュワーが、日頃から(この人のレビューは面白い)と認識し、すっかり名前を憶えている二人であるという偶然にも、ちょっと吃驚。  贔屓の俳優さん達が出演している事も併せ、映画のクオリティ以上に忘れ難い、印象深い一品になりそうです。[DVD(字幕)] 6点(2018-01-26 11:12:41)(良:2票) 《改行有》

87.  Mr.ズーキーパーの婚活動物園 《ネタバレ》  当初ヒロインかと思われたステファニーの言動が酷過ぎる為、早い段階で(こりゃあ別の女性と結ばれるな)と読めてしまう事が難点ですね。  どうせ結ばれない、結ばれない方が良いと思ってしまうのに、作中の主人公は「ステファニーと結ばれたい」という一心で行動しているものだから、どうしても感情移入出来ないし、その恋を応援する事も出来ないという形。  同僚のケイトに頼み「ステファニーにヤキモチを妬かせる為、恋人のフリをする作戦」を敢行する辺りからは(これはケイトと結ばれるオチか)と分かり、王道なラブコメとして楽しめましたが……ちょっと尺のバランスが悪かった気がします。  冒頭でプロポーズを断られた主人公が、今度はステファニーの方からプロポーズされて、それを断る流れなどは痛快なものがあったし、冒頭と同じようにバンドが再び現れて、陽気に唄い出すのも可笑しかったしで、終盤の展開は本当に良いんですけどね。  動物園の飼育員である主人公が、人間不信のゴリラと少しずつ友情を深めていく流れも面白かったです。  ゴリラに服を着せて店に連れて行き、そこで楽しく騒いだり、腕時計をプレゼントしてみせたりする辺りなんかは、本作の白眉かと。  その他、不満点としては、ゴリラにスポットが当たり過ぎているせいか、他の動物が殆ど目立たず、主人公の恋を叶える上で活躍していないように思えちゃった事。  そして、カラスが他の動物から仲間外れにされるネタを繰り返した以上は、最後に「カラスも動物園の仲間だ」と、しっかり皆から認められるシーンが欲しかったとか、その辺りが挙げられそうですね。  エンドロールでのNG集も楽しかったんですけど「動物虐待している訳では無い」とばかりに、主人公がダチョウに乗ろうとして転ぶシーンは「CGによる合成だった」と種明かしする件があったのは、凄く残念。  自分がお気に入りだった主人公とゴリラが絡むシーンも、大半は合成だったんだろうなぁ……なんて思えてしまい、大いに白けちゃったんですよね。  そこは何というか「気付かせて欲しくなかった」という想いが強いです。  それと、原語では凄く豪華な面々が動物達の吹き替えをやっている訳だし、どうせなら「ニック・ノルティ」「アダム・サンドラー」「シルヴェスター・スタローン」の三人が、ちらっとでも出演してくれていたら、もっと面白くなったかも知れませんね。  そんな具合に、色々と気になる点もあったけど、基本的には安心して楽しめる作品でしたし、後味も悪くない。  及第点以上のラブコメ映画だったと思います。[DVD(吹替)] 6点(2017-11-28 21:16:00)(良:1票) 《改行有》

88.  シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア 《ネタバレ》  観賞中「何故撮影者は危害を加えられないの?」「撮影者は人間じゃないの?」などの疑問が、頭の中を渦巻く事になる本作品。  一応「十字架を身に付けている」「取材対象から保護も受けている」と説明されているんですが「狼男やゾンビには十字架なんて関係ないじゃん」「撮影者も人間なら襲われているはずじゃん」といった具合に、次々と矛盾点が浮かんで来ちゃうんですよね。  それらを黙って飲み込むか、あるいは笑ってツッコんでみせるか、どちらかが出来る人じゃないと、この映画は肌に合わない気がします。  ……で、自分としてはツッコみつつ観賞するスタイルを選んだのですが、これが正解。  変に真面目ぶらず、リラックスして楽しむ事が出来ました。  比重としては「吸血鬼達の生態を捉えたモキュメンタリー映画」という以上に「若者達の同居生活を描いた青春映画」としての側面が強い内容になっているのも、嬉しいバランス。  何せ同居人同士で喧嘩する理由が「皿を使った後は自分で洗え」だったりしますからね。  そういった些細な事が原因で衝突するのは、人間も吸血鬼も変わらないんだなぁ……なんて、ほのぼのしちゃいました。  串刺し公ヴラドというビッグネームが主人公グループの中にいて、まるで「昔はやんちゃしていた」みたいなノリで「昔は憂さ晴らしに拷問していた」とインタビューで語っちゃう辺りも、ブラックだけど面白い。  こういう「若気の至り」理論で過去の悪事をサラッと語っちゃう人、結構いますからね。  架空の存在であるはずの吸血鬼が、現実の存在である人間をパロっているという図式。  「鏡に映らない」「招かれないと建物に入れない」「銀を身に着けると肌が焼ける」などの吸血鬼の弱点を、しっかりコメディ仕立てで描いている辺りも良かったです。  (こういう作風なら、そこは押さえておいてもらわないと困る)って部分を、しっかり押さえてくれているという安心感。  高い場所を掃除する時や、ビリヤードで難しい球を突いたりする時に、フワッと宙に浮いてみせて(あっ、やっぱり空を飛べるって便利だな……)と感じさせてくれるのも良い。  獲物を誘い込む為に考え抜いたファッションで夜の街に出掛けたら、ゲイに間違われちゃうオチなんかも好きですね。  前者は吸血鬼だからこそのユーモア、後者は人間の若者達でも有り得そうなユーモアって感じで、両者がバランス良く盛り込まれていたと思います。  幼い頃に吸血鬼になった女の子は、幼い姿のままなのでロリコン男を誘って血を吸うというのには(なるほど……夜遊びしている子供は少ないだろうし、大人を狙うのが正解だな)と納得させられたし、その一方で(じゃあ少年吸血鬼はどうするんだ? ショタコン男を誘うのか?)という疑問も湧いて来たりして、そんな感じでアレコレ考えさせられるのも楽しかったですね。  この辺りは、端的で不完全な描写をサラリと見せるからこその長所、空想の余地を与えてくれる世界観って感じでした。  そんな「ロリコン」がラストの伏線になっており、主人公格である吸血鬼のヴィアゴ(=見た目は好青年)が九十六歳の老婆(=見た目と年齢が同じ)と結ばれて「僕の方が四倍も年齢が上」「ロリコンって言われたって良い」と誇らしげな笑顔で語ってみせるのも(そう来たか!)と思えて楽しかったです。  ここの展開に関しては、正直ちょっと伏線が足りないというか「彼女に告白出来ずに迷っていたヴィアゴの背中を、友人が後押しする」的なシーンが欲しいという不満もあるんですが、視覚的な面白さがそれを補ってくれた気がしますね。  作中、唯一の人間の仲間としてシチュが登場する訳だけど、そんな彼が劇中で言われている通り「本当に血の気が良くて、吸血鬼目線だと凄く美味しそう」なルックスをしている辺りも、これまた説得力があって良かったです。  シチュの親友であるニックが「吸血鬼になった事」を彼に告白し「ダチの血は吸わない」と宣言してみせて、人間と吸血鬼との友情を描いている辺りも好きですね。  ここの場面が一番「青春映画」って感じがしました。  棺の中でマスターベーションする場面とか、血の嘔吐を繰り返す場面とか、微妙に感じる部分もあったし「自分も人間から吸血鬼になりたくて、下僕として彼らに尽くす女性」の扱いや顛末に関しては(本当にそれで良いの?)と思う部分もあったりして、絶賛するのは難しいんですけど「好きなタイプの作品」である事は、間違いないです。  エンドロール後には吸血鬼の特技「催眠術」によって、観客にこの映画の内容を忘れさせるというオチが付く訳だけど、そのまま素直に忘れちゃうには、少々勿体無い品でありました。[DVD(吹替)] 6点(2017-11-14 11:45:12)(良:2票) 《改行有》

89.  SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁<TVM> 《ネタバレ》  数あるホームズ物の中でも、一番好きな本シリーズ。  舞台を現代に置き換えたアレンジが絶妙だった本編に対し、あえて原作と同じヴィクトリア時代を舞台にした番外編的な作りに、大いに期待が膨らんだのですが……結局は劇中の飛行機よろしく「現代の物語に着地した」感じなのが残念でしたね。  これは、あくまでも全十三話あるドラマの中の一話に過ぎず、さほど特別な話でもないし、これ単品で楽しめるような代物でも無かった、という形。  二十一世紀で活躍する主人公シャーロックが、薬物の作用によって垣間見た「一種の妄想オチ」となっており、それゆえに何でも有り過ぎて、観ていて興醒めしちゃうんですよね。  劇中で女装したモリアーティが「真面目にやれよ」「馬鹿々々しい」とツッコんでいるから、スタッフは確信犯的にやっているんでしょうけど、ちょっとノリ切れなかったです。  せめて「忌まわしき花嫁」事件だけは、キチっと十九世紀の世界で決着を付けて欲しかったですね。  トリックやら犯人やらは明かされているんだから、そのまま素直に事件解決として、その後に現代に視点を移した方が良かった気がします。  ……それでも、流石は「SHERLOCK/シャーロック」とでも言うべきか、魅力的な部分も一杯あって、どうにも憎めなかったりするものだから、困りもの。  「現実に存在するホームズは困った奴なのに、小説では紳士的なヒーローとして書いている」とか「私も挿絵に合わせて髭を生やした」とか、ワトソンがボヤく姿だけでも、面白くって仕方ないんですよね。  (へぇ、こっちの世界のモリーは男性なのか……)と思ったら、実は女性で男装しているオチだった辺りも、良かったです。  「本編に対する番外編なので、性別が違っている事も有り得る」という思い込みを、上手く利用された感じ。  小間使いの少年やメイドなど、十九世紀ならではの人物が登場する辺りも、本作だけの特別な魅力と言えそうですね。  それと、オールバック姿のホームズを演じてみせたカンバーバッチについては、当初こそ(ジェレミー・ブレットに匹敵するくらい素晴らしい!)と思えたのですが……途中で現代のシャーロックに視点が切り替わると(あっ、やっぱり普段の髪型の方が良いな)と思えたりもして、評価が難しかったです。  原作のホームズのルックスに近いのは十九世紀版の方なんでしょうけど、やはり自分としては、二十一世紀のシャーロックの方が好きみたい。  最後の台詞にて「僕は時代を越える男だから」と語られていた通り「現代に甦ったシャーロック・ホームズ」という本シリーズの主人公が、如何に魅力的であるかを、十九世紀の世界を通して再認識させられる。  そんな「第十話」でありました。[DVD(吹替)] 6点(2017-10-24 22:50:44)《改行有》

90.  赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター 《ネタバレ》  見渡す限りの大海原で、船が転覆。  いずれ船は完全に沈んでしまう為、助かりたければサメがいる海を泳ぎ、陸を目指すしかない……  その、陸地までの距離が16から20キロという設定なのが絶妙でしたね。  これが10キロなら迷わず決断出来たと思うし、100キロなら多分諦めて船に残って救援されるのを待っただろうなと思える、程好い塩梅。  実際には20キロ以上の距離があったらしく「やっぱり船に残っていれば良かった」とグループ内で言い争いに発展する辺りも、非常にドロドロしていて良かったです。  そんな中で、陸地を見つけた時の安堵感といったらもう、観ているこちらまでホッと息を吐いちゃうぐらい。  実話ネタという事もあってか、主人公達の装備が貧弱であり、食糧も武器も殆ど持ち合わせてないから、心細さが半端無いんですよね。  だからこそ「サメと戦う」という選択肢は有り得ず、ひたすらゴールの陸地を目指すしかない。  それはともすれば「退屈さ」にも繋がっちゃいますし、実際自分も中盤で(なんか飽きてきた……)という考えが頭をよぎったりもしたんですが、終わってみれば、その手法は正解だったように思えます。  とにかく、余計な可能性を与えたりしない。  唯一にして絶対のゴール目指して、ひたすら泳ぐしかない。  勝利条件、助かる方法は「陸地に辿り着く」事しか無いんだという、この単純明快さこそが、本作の特長であったかと。  最後の最後でヒロインは無事に陸地に辿り着き、生き延びるも、未だ海中にいたルークは引き上げられる直前で殺されるという辺りも、その「陸地に辿り着けば大丈夫」という価値観に則してるんですよね。  だから「主人公格のルークが殺される」という終わり方にも拘らず、理不尽さを感じさせない。  この辺りは、本当に上手かったです。  「地味」「堅実」「単調で退屈」「シンプルで力強い」と、貶す事も褒める事も簡単に出来そうな本作品。  自分としては「生存ハッピーエンド」ならぬ「一人だけ生き残ってしまったバッドエンド」とも言うべき、重苦しい終わり方まで含め、なんだかんだで楽しめた一品でした。[DVD(吹替)] 6点(2017-08-17 01:11:24)(良:1票) 《改行有》

91.  ダブルヘッド・ジョーズ<OV> 《ネタバレ》  双頭の鮫が二人の美女を同時に食い殺すショッキングな導入部で「掴みはOK」といった感じ。  こうして文章にしてみると残酷な印象も受けますが、実際に観てみれば「双頭」という非現実性が程好く作用している為か、あまり血生臭い映画ではありませんでしたね。  勿論、海が血で赤く染まる表現なんかは中々ドキドキさせられましたが、目を背けたくなるような人体破壊の描写は控えめという、程好いバランス。  どこかコミカルな雰囲気が漂っており、笑いに繋がってしまう場面もあったくらいです。  その最たるものが終盤の「ヒロインが双頭の間に挟まっているお蔭で食われずに済んだシーン」で、これにはテンションが上がりましたね。  (あぁ、確かに鮫からすると盲点だなぁ……)という感じで、説得力と意外性、可笑しさと馬鹿々々しさを備え持った展開であったと思います。  この手の映画だと「中々姿を見せようとしない鮫」に苛々させられたりもするのですが、ほぼ全編に亘って出ずっぱりで、その双頭フォルムを見せ付けてくれる辺りも気持ち良い。  籠城する舞台となるのが無人島(=正確には環礁)というのも新鮮でしたね。  何も考えず、画面に映る水着姿のお姉さん達を眺めているだけでも眼福であり、楽しい気分に浸れました。  勿論、ツッコミどころは多いです。  お約束の「俺達の事は良いから先に行け!」展開の際には(いや、確かに道にヒビは入っているけど……普通に通れるのでは?)と困惑しちゃったし「皆とはぐれて二人きりになる」→「二人同時に食い殺されてしまう」という展開を、終盤に立て続けに行ったのは、流石にやり過ぎだったと思います。  でも、そういう部分にツッコむ楽しさも含めて、自分としては満足度は高めでしたね。  ラストに生き残った二人も「一番頭が良く、優しい感じの兄ちゃん」「卑怯者でも見捨てず助けようとするような、気丈な金髪美女」という組み合わせで、ハッピーエンド色を高めてくれます。  あえて言うなら、折角の「ダブルヘッド・ジョーズ」な訳だから、鮫を左右真っ二つに両断するなどの、独特の倒し方で決着を付けても良かったかも。  とはいえ「最後は爆発させて倒す」というのが鮫映画のお約束でもある為、本作もそれに倣ったのは、致し方無いところなんでしょうか。  観賞前のハードルが低めだったからかも知れないけど、とりあえずそれは飛び越えてくれた一品でした。[DVD(吹替)] 6点(2017-07-19 09:56:08)(良:1票) 《改行有》

92.  恋愛だけじゃダメかしら? 《ネタバレ》  妊娠を主題としている為か、序盤にて嘔吐ネタが繰り返される事には、少々ゲンナリ。  演出も冴えていないというか、正直ちょっと好みじゃないなと感じる部分もあったりしましたね。  でも、総合的には良い映画だったと思います。  養子を迎えようとする夫婦、流産を経験するカップルなど、群像劇ならではの個性が感じられましたし、それによって様々なエピソード、様々なメッセージを描く事に成功しているのですよね。  妊娠による体調不良を「体内で奇跡が起きてる証拠」と美化する一方で「妊娠は最悪」「ニキビも出来る。歩けばアソコが痛む。オナラも出ちゃう」と、生々しく表現したりもしている。  基本的には「子を産むことの素晴らしさ」を声高に主張している映画なのだけど、そういう現実的な側面もキチンと描いている為、あまり偏った印象は受けず、素直に楽しむ事が出来たように思えます。  くしゃみと同時に軽く出産しちゃう女性もいれば、激痛に叫びながら出産する女性もいるという対比も面白かったし「血の繋がらぬ子を養子として迎え入れる場面」を、出産に負けず劣らず感動的に描いていたのも、何だか嬉しかったです。  劇中の人物同様に、世の中には子供を産みたくても産めない女性が存在する訳で、そういった人々への優しさというか「出産を経ずとも人は母親になれる、父親になれる」というメッセージが伝わって来て、とても温かい気持ちに浸れました。  ラストにて、子育てパパ軍団が、冷たい缶ビールをベビーベッドの下から取り出し、仲間にパスするシーンなんかも、妙にお気に入り。  筋トレマニアで、常に公園を走って身体を鍛え上げ、派手に女遊びしていた独身男がパパになると同時に「もう走るな、歩くんだ」と男友達から諭される件も、色々と象徴的に思えて良かったです。  そんな彼が、当初はタッチを拒んでいた相手と、仲良くタッチを交わして「パパ」の仲間入りを果たして映画が終わるという構成も、凄く後味爽やか。  大人達が主役であり、子供にスポットが当てられていない為、肝心の「子供を持つ喜び」が伝わってこない点など、色々と気になる部分もあるのですが「あぁ、良いなぁ……」と思える場面の方が多くて、帳消しにしてくれたという感じですね。  こういう映画、嫌いじゃないです。[DVD(字幕)] 6点(2017-07-04 13:52:03)(良:1票) 《改行有》

93.  ラン・オブ・ザ・デッド 《ネタバレ》  「ゾンビ」+「パルクール」という組み合わせの、一発ネタのような映画かと思いきや、さにあらず。  予想以上に真面目に作られており、驚かされましたね。  とはいえ「パルクールゾンビならではの魅力」という意味では、序盤の「壁蹴り階段降りシーン」くらいでしかそれを感じられなかったし……そういう意味では、期待外れとも言えちゃいそう。  人間ドラマが中心となっており、ゾンビは障害の一つに過ぎないという扱いなんですよね。 ・主人公のコールはウイルスに感染済みであり、薬を使っても十八時間後には発症してしまう。 ・時間切れになる前に、唯一抗体を持ってる可能性があるアンジェラを見つけ出し、無事に保護しなければいけない。  という構造になっており、非常にゲーム的な作りなんです。  この辺りは「安っぽい」「薄っぺらい」と感じる人もいるかも知れませんが、自分としては、分かり易くて好印象でした。  それと、メイン主人公のコールだけでなく、サブ主人公としてアンジェラの元彼であるジョーが用意されている辺りも良かったです。  (ははぁん、コールは死んじゃうからジョーをもう一人の主人公として生存させるって訳か……)  とばかり思っていたのに、まさかの両者死亡エンドでしたからね。  これには、本当に吃驚しました。  でも、バッドエンドという訳ではなく、二人とも「無事にアンジェラを逃がす事が出来た」という満足感を抱いて死んでいくので、後味も決して悪くないんですよね。  それぞれ「大手製薬会社に雇われて、汚れ仕事を色々とやってきた始末屋」「麻薬中毒の少年を誤って射殺してしまった元警官」という暗い過去を背負っており「アンジェラを救い、人類を救う事」が「贖罪」であるという風に描かれている。  基本的に主人公が死ぬ映画ってのは好みじゃないのですが、これは冒頭の時点でコールの死が示唆されている事も含め、あまり抵抗を感じず楽しむ事が出来ました。  その他、難点としては、低予算なのが画面から伝わって来てしまう作りな事。  そして、主人公二人は罪悪感を抱いて鬱屈としているし、アンジェラは受け身なお姫様ポジションだし、その他の人物も自分勝手な言動が目立つしで、登場人物に感情移入しきれなかった事が挙げられそうですね。  総合すると、自信を持ってオススメ出来る……という程ではありませんが「意外とイケるよ」という意味で、ゾンビ映画好きには、こっそりと推薦したくなる。  そんな一品でありました。[DVD(吹替)] 6点(2017-06-12 06:49:56)(良:1票) 《改行有》

94.  塔の上のラプンツェル 《ネタバレ》  基本的には女性向けのストーリーなのですが、所謂「王子様」役のフリンを語り部に配し、男性でも抵抗無く観られるバランスとしている事に感心。  名作童話が原作である為、どうしても「古き良きテイスト」を重視しそうなものなのに、演出から若々しい感性が伝わってくるのも良かったですね。  序盤にラプンツェルが唄う場面はスタイリッシュな魅力があったし、とうとう外に出た後に「はしゃぐ」→「落ち込む」を繰り返すギャグも分かり易く、好印象。  ラプンツェルの長髪をアクションの道具として活用している辺りも上手かったし、動きだけでなく「四十五回勝負」「三回勝負」という形で言葉の笑いも取り入れているし、感動的な自己犠牲もあるしで、本当に色んな面白さが詰め込まれているのですよね。  「女性客」「男性客」「恋愛が見たい人」「アクションが見たい人」「笑いたい人」「泣きたい人」と、幅広い観客層を意識して作られた、丁寧な品であると感じました。  中でも自分のお気に入りは、酒場で盗賊達が唄い出すシーン。 「命奪うより心奪いたい」 「こんな暮らししていても、夢見る心は未だ無くしてない」  といった具合に、歌詞も素敵でしたし、何より一見すると悪人にしか思えない盗賊が、実は良い人というか「悪人でも夢を持っている」という意外性を秘めていたのが、本当に好みでしたね。  劇中でも一番の名場面じゃないかな、と思います。  その一方で、終盤の展開は少し不満というか、予定調和過ぎるように感じたので、そこは残念。  上述の盗賊達が、それぞれ夢を叶えてくれるハッピーエンドだったのは、文句無しで素晴らしいと思うのですが、その直前の「フリンの自己犠牲がラプンツェルの涙によって覆される」「結局、ゴーデルは単なる悪人であり、育ての親としての情など無かった」という展開のせいで、興醒めしてしまったんですよね。  ここら辺を、もうちょっと自然に仕上げてくれたら、皆笑顔でハッピーエンドを迎える結末を、更に楽しむ事が出来たかも。  そんな具合に「本質的には女性向け」「終盤の展開が好みではない」などの要因があるにも拘らず、しっかり面白かったのだから、やはり質の高い作品なのでしょうね。  世の中には、色んな客層を意識し過ぎて、色々と盛り込み過ぎて、破綻してしまう映画もありますが……  本作は、そういった類の中でも成功例としてカウントされそうです。[DVD(吹替)] 6点(2017-05-15 07:07:10)(良:3票) 《改行有》

95.  借りぐらしのアリエッティ 《ネタバレ》  こういった設定の映画である以上「小人から見た世界」が面白く描かれていれば問題無いと考えながら視聴した為、まず満足。  部屋に飾られている大きな時計が人間の腕時計だったり、お茶を淹れる際にも水滴が大きかったり、猫や狸が巨大な獣だったりと、色々楽しかったですね。  逆さに伏せられた硝子のコップを、物珍しい美術品のように眺めるアリエッティというシーンも印象深い。  ……ただ、虫が巨大なサイズで気持ち悪かったのは難点かも。  ダンゴムシをボール代わりにして弄んだりする描写なんかは、ちょっと引いちゃうものがありました。  タイトルになっている「借りぐらし」に関しては、いくら作中で「人間から借りているだけ」と主張されても、明らかに泥棒だよなぁ……と思えてしまい、ノリ切れず。  もうちょっと小人なりに人間の生活に貢献しているとか、借りた分を些細なお手伝いなどで返してみせる描写があれば納得出来たのでしょうが、小人はひたすら人間を恐れて隠れつつ盗みを働いているだけですからね。  ただ単に「借り」と「狩り」のダブルミーニングにしたかっただけでは? と感じられました。  ドールハウスと小人の寸法がピッタリ同じというのは、ご都合主義だとばかり思っていたのに「実は小人の為に作らせた代物」だったと判明する辺りなんかは、上手い脚本だなと感心。  アリエッティの母親救出の件で、さながらスパイ物めいた音楽と演出になったり、窓を開ける際に「人間には出来ない事でも小人なら出来る」と示す流れになったりするのも良かったですね。  原作の元ネタと思しき「秘密の花園」を読んでいるシーンなんかも、思わずニヤリ。  「秘密の花園」→「床下の小人たち」→「借りぐらしのアリエッティ」の三作品には、それぞれ四十年以上の間隔が空いている事を思うと、魅力的なストーリーラインは時を越えて受け継がれるのだと、しみじみ実感させられます。  そして、事前に調べなくても「ヒロインの描き方が全然ロリコンっぽくない」という時点で宮崎監督作じゃないと気付いた本作なのですが、これも結果的には良い作用を齎したんじゃないかと思えます。  小人の美少女なんて、如何にもフェチ心をくすぐる題材だし、やりようによっては幾らでもエロティックに出来たのでしょうけど、そちらは極めて薄味な作り。  それが物足りない人もいるのでしょうが、自分としては好みなバランスでした。  むしろ脚本と監督の溝というか、作中の台詞と全体の流れが噛み合っていないのでは? という点が気になりましたね。  脚本を書いた人がビッグネームな時に起こりやすい現象なのですが、監督さんが脚本に気を使って、書かれていた台詞をそのまま採用してしまったがゆえに生じる違和感のようなものがありました。  その最たるものが「君は僕の心臓の一部だ」というクライマックスの台詞であり、確かに感動的なのですが、それまでの流れを考えると、どうしても(そこまで言う程の深い交流があったかな?)なんて思っちゃうのですよね。  死にゆく病人と滅びゆく種族とで、シンパシーを感じたのだろうけど、長年連れ添った恋人同士じゃあるまいし……なんて、ついつい意地悪く考えてしまいました。  別れのシーンは、台詞だけでなく、音楽や演出も悪くなくて、グッと来るものがあっただけに、そこが凄く残念。  それと、中盤に母娘で針仕事をしながら「この大きな袋は何なの?」と娘が尋ねるも、母親は答えないというシーンがあるんですよね。  ここ、てっきり気球かヨットの帆を作っていて、それが引っ越しの際に役立つのではと予想していたのですが、見事に外れました。  こちらは、ちょびっとだけ残念。  でも、本作には「薬缶に乗って河を移動する、静かなエンディング」の方が似合っていたようにも思えますね。  希望の象徴と言うべき海のポスターを効果的に活用し、単なる悲劇では終わらせず、より良い明日に向けての「旅立ち」を感じさせる終わり方であった点も含め、中々に心地良い映画でありました。[DVD(邦画)] 6点(2017-05-10 10:18:04)(良:1票) 《改行有》

96.  ツーリスト 《ネタバレ》  こういった旅行気分を味わえる映画って好きですね。  列車に、船に、豪華なホテルと、観ているだけで楽しくなっちゃいます。  男性ならアンジェリーナ・ジョリーと、女性ならジョニー・デップとのロマンスを疑似体験出来るようにも作られており「恋」と「旅」とを求めて観賞するなら、まず満足出来る一品かと。  その一方で、サスペンスとしての魅力は薄めであり、あんまりハラハラドキドキはしなかったのですが、本作の場合、このくらい緩めの緊迫感が丁度良かったように思えますね。  なまじ血が飛び出したり、身の毛もよだつような恐ろしいシーンがあったりしたら、せっかくの「程好いバランス」が崩れてしまっていた気がします。  主人公カップルが出会った際に、ジョニー・デップ側が「ごめんなさい」と謝っており、それが後の伏線になっていたりする辺りも上手い。  所謂「主人公こそが犯人だった」オチな訳ですが、犯人といっても悪党から金を盗んだ義賊に近い立場である為、受け入れ易い形になっているのですよね。  また、アンジェリーナ・ジョリー側も「実は警官だった」という事が中盤にて明らかになる為「一方的に彼女を騙して、酷い男だ」という印象には繋がらず、自然な仕上がりになっていたと思います。  目立った難点としては、数学教師という設定が活かされていない事。  そして、金庫を開けて正体をバラすシーンにて、周りに警官が一人も残っていなかったのが、都合良過ぎるように思えた事でしょうか。  前者に関しては、金庫の暗証番号を数学の知識を駆使して解き明かす(つまりは、ヒロインと警察に最初から暗証番号を知っていた訳ではないと思わせる為に演技する)展開にしても良かったんじゃないか……なんて思いましたね。  この手の騙し騙されモノとしては珍しく、後味爽やかなハッピーエンドであった点については、凄く好み。  緩くて温めなロマンス旅行映画として、しっかり楽しめた一品でした。[DVD(吹替)] 6点(2017-04-19 18:55:08)(良:1票) 《改行有》

97.  僕達急行 A列車で行こう 《ネタバレ》  優しい映画ですね。  登場人物は善人ばかりだし、失恋というテーマを扱っていながらも暗くなり過ぎる事は無く、仕事での成功や友情など、明るく幸福な要素の方が色濃く描かれているように感じました。  森田監督の遺作という事で、最後に「ありがとう」という文字が浮かび上がる演出も、じんわりと胸に沁みるものがあります。  それだけに、全面的に作品を褒めたくなるような気持ちも強いのですが……正直に言うと、退屈に思えたシーンも多かったです。  「融資してくれーっ!」や「いちごミルク」の件なんかも、あと一歩で感動出来そうだったのに、ちょっとわざとらしく思えてしまい、ノリ切れない。  ゲームの話で盛り上がり、効果音付きで戯れてみせる件も、どうにもオタクっぽ過ぎるというか、観ていて痛々しく感じちゃいましたね。  監督さんに悪意は無いんだろうけど「鉄道の話で盛り上がるシーン」は非常に夢がある感じに描かれているのに「ゲームの話で盛り上がるシーン」はギャグで済まされており、そこに違和感が生じてしまった気がします。  その一方で、やはり主題となる「鉄道」に関する描写は力が入っているというか「模型」や「駅弁」など、押さえるべき点はキチッと押さえている感じがして、非常に好ましかったです。  自動車ではなく、電車を用いての移動ならば、恋人同士で話したり触れ合ったりする事に集中出来るし、お酒だって飲めるんだと示す辺りも上手い。  主人公が二人いる事を活かし「音楽を聴きながら窓に流れる風景を眺める」「電車が立てる駆動音や車輪の音に耳を傾ける」というタイプの異なる楽しみ方について、お互いに語らせる辺りも良かったですね。  それがラストの鉄道旅行における伏線となっており、音楽否定派だった方が笑顔で音楽を聴いている姿に繋がっていたりするんだから、実に微笑ましい話。  趣味を持つというのは如何に楽しい事か、友達がいる事は如何に素晴らしいかと教えてくれる、そんな一品でありました。[DVD(邦画)] 6点(2017-04-10 19:44:44)《改行有》

98.  冷たい熱帯魚 《ネタバレ》  てっきり主人公が「連続殺人の主犯」だと思っていたのですが、さにあらず「傍観者」「共犯者」という立場の人であった事に驚かされました。  で、そんな彼も次々に人を殺していくようになる終盤の展開は圧巻だったのですが……何故でしょう? 同監督作の「愛のむきだし」や「地獄でなぜ悪い」程の衝撃は無かったように思えましたね。  単純に、自分がこの手の衝撃に慣れてしまったというのが大きいのかも知れませんが (実録犯罪物路線かと思ったけど、結局は何時もの園子温映画になるのか……)  と、達観するような思いで画面を眺めていた気がします。  勿論、そんな「何時もの園子温映画」は好きなんですけど、本作に関しては最後まで実録風に纏めて欲しかったという気持ちが強いですね。  監督さんも「主人公が疑似的な父親である村田を刺す場面」で終わらせても良かったかも知れないとインタビューで語っておられるみたいで、自分としてもそちらの方が自然な仕上がりになったんじゃないかと思えました。  序盤「冷凍食品をレンジで温めるだけの妻」「食事中でも平気で携帯電話を使い、途中で抜け出す娘」「妻の喫煙を見て見ぬ振りをする主人公」などの印象的なシーンによって、家庭が崩壊している事を端的に示してみせる手腕は、お見事。  でんでん演じる村田も存在感があって良かったし、吹越満演じる社本の善良さと臆病さが入り交じった感じも秀逸でしたね。  先程の発言に反するような形となりますが、終盤の主人公の変貌っぷりというか、眼鏡を捨ててからの吹っ切れっぷりは痛快なものがあり、こういう姿を恰好良く演じられる辺りには、役者さんの凄みを感じます。  監督さんも何だかんだで終盤の展開をカットせず採用したのは、主演俳優の熱演に「これを切り捨てるのは惜しい」と思われたから、なのかも知れませんね。  ラストシーンに関しては、父親の死体を蹴り続ける娘の感情が「本心から父親の死を喜んでいる」「実は内心では死を悲しんでおり、起き上がって欲しいと願っている」「その両方」と、大まかに三通りに分けて解釈出来るようになっており、これに関しては(上手いなぁ)という思いと(ズルいなぁ)という思いとが混在。  元々この手の「観客に判断を委ねる」ような結末って好みではない事が多いのですが、本作に関しては主人公の自殺で幕を下ろす形でもある為、どうしても「逃げた」という印象が強かったりしたんですよね。  「人生ってのは痛い」と主人公が説教するのは結構だけど、その後に自殺されたんじゃあ「人生は痛い。だから死にます」という敗北にしか思えない訳で、そんな後ろ向きな終わり方されても困るよ……というのが正直な感想。  最後に「丸く、青い地球」を映し出して終わるというのも「地球は単なる岩だ」という劇中の台詞に照らし合わせると、現実逃避の象徴であるように思えてしまいます。  とかく園子温監督の作品はパワーがある為、それが自分好みの方向に進んでくれた時は凄まじい傑作に思えるのですが、好みから外れてしまうと、何ともコメントに困る品が出来上がる……そんな事を再確認させてくれた一品でした。[DVD(邦画)] 6点(2017-04-06 17:10:31)(良:1票) 《改行有》

99.  アナザー プラネット 《ネタバレ》  様々な寓意を感じ取る事が出来ました。  主人公がトイレの落書きを懸命に消そうとする姿は、己の過去の罪を消したいという気持ちの表れなのだろうし、ラストにて出会った「もう一人の自分」が一歩前に踏み出して終わるのは「罪から逃げずに前を向いて歩き出す」事を示唆したハッピーエンドなのだと思われます。  気になったのは「何故ジョンではなく、もう一人の自分と出会ったのか?」という点ですね。  彼女達が全く同じ存在であるなら、もう一人の自分もジョンにチケットを譲っており、自分同士が出会う事は無いはずです。  単に視覚的な効果を重視したという可能性もありますが、恐らく両者は全く同じような過程を経るも「ジョンにチケットを受け取ってもらえたか否か」という決定的な差があるのではないでしょうか。  あるいは、もっと皮肉に「もう一人の自分はジョンに交通事故で家族を殺されたので、ジョンからチケットを譲られてやってきた」という可能性だってあるかも。  途中まで「これは二つの地球で起こった出来事を交互に描いているのか?」とも考えましたが、それが確定する描写が存在していないので(例えば、目も耳も不自由になり入院してしまったはずの同僚が、元気に通勤している姿を背景で見せるなど、いくらでもやりようはあります)推測の域を出ませんね。  そもそも、あんな近くに地球と同等の星が存在するのは重力の観点からして有り得ないので、あの星は彼女の生み出した妄想とか、何とでも言い張る事が出来そう。  作り手としても、あえて明確な答えは示さずに、受け手次第で色んな解釈が出来るように仕上げてみせたように思えます。  こういった「考えさせる映画」って、観客の「気付き」が要求されるというか、ともすれば「この映画の良さを発見出来た自分は優秀であり、この映画を高く評価出来ない人は発見する力が足りなかっただけである」という選民思想のようなものに繋がりかねないので、ちょっと苦手だったりもしますね。  でも、観賞後に誰かと「あの映画って、どう思う?」と語りたくなる魅力を秘めているのも確かです。  自分としては、総じて楽しめた時間の方が長かったし、ラストシーンからは前向きな解釈を得られたので、一応は満足。  どんな映画であれ「観客次第で名作にも駄作にも成り得る」ものなのでしょうが、本作はそんな具合に、作り手が受け手の感性に頼った面が大きい一品であるように感じられました。[DVD(吹替)] 6点(2017-02-06 14:48:57)《改行有》

100.  クライムダウン 《ネタバレ》  映画「エラゴン」で主演を務めたエド・スペリーアスの数年後の姿を拝めるという、非常に貴重な一品。  自分としては、劇中で彼がどんな活躍をしてくれるのかに期待していたのですが……良い役とは言い難いものがありましたね。  一応、副主人公に近いポジションなのですが、どうにも憎まれ役というか「主人公の好感度を下げない為に、マイナスな言動を代わりに行うキャラクター」って感じなのです。  最後も(えっ? 死んだの?)って戸惑うくらいにアッサリ撃たれて退場するし……  何だか凄く不憫で、応援したくなりますね、エドさん。  それで映画本編の方はといえば、これが中々面白い佳作。  登山を楽しむ主人公達が、地中に女の子が埋められている事に気が付き、慌てて掘り起こして木箱を開けるシーンのドキドキ感なんて、凄く良かったですね。  その後に少しずつ謎が解き明かされていくのかと思いきや、かなり早い展開で「彼女は誘拐され、ここに閉じ込められていた」「誘拐犯の二人組は、すぐ近くにいて、銃を手に主人公達を追跡している」と分かるので、これにも吃驚。  謎解きを放棄した、追いかけっこに特化した作りだったとは、完全に予想外でした。  舞台が山の為か、危険な崖を降りるシーンもあるのですが、そこに関しては「急がなければいけないのに、危険だから慎重に、ゆっくり降りなければいけない」というのが何だかチグハグで、緊迫感を削いでいたように思えて、残念。  そんな崖のパートを過ぎて、河の急流に差し掛かる辺りからは、ようやく演出もスピーディーになり、以降はノンストップで楽しめたように思えます。  「追ってくる奴らの狙いは、その子だけだ」と言い出し、女の子を犠牲にして助かろうとするかと思われた男が、自ら囮になって他の皆を逃がしてあげる展開なんかも(そう来たか!)という感じで、実に好み。  誘拐犯の一人が「以前、人質の男の子と仲良くなってしまった事がある」と語り出し、その子が苦しまないように後ろから頭を撃ち抜いてやったと話す件なんかも、彼の恐ろしさと人間味を同時に感じられて、良い場面だったと思います。  最終的には、主人公と女の子の二人は何とか助かるので、ハッピーエンドと呼ぶ事も出来そうな本作品。  でも「実は女の子の父親が悪どい権力者であり、誘拐犯は彼の手によって無残に殺される」というオチまで付いているのは、ちょっと蛇足に感じられましたね。  誘拐された側が絶対的な正義ではない、という深みを持たせたかったのでしょうが(後味が悪くなっただけじゃない?)というのが正直な感想。  どちらかといえば、楽しめた場面の方が多いのですが(ここ、もうちょっと何とかなったらなぁ……)と細部が気になってしまう。  そんな映画でありました。[DVD(吹替)] 6点(2017-01-31 13:20:15)(良:1票) 《改行有》

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