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1041. 熱いトタン屋根の猫 明朗快活に見えるアメリカの表層の下にうごめく心の闇に光を当てるテネシー・ウィリアムズの戯曲を心の闇を描かずに映画化してしまっている。自殺した親友に対する同性愛的感情から生まれる葛藤という心の闇を描かずに。当時は当然タブーだったんだろうから仕方ないんだけど。親友の死のショックと親友と自分の妻に何かあったのではという嫉妬に置き換えてなんとなくまとめているがちょいとムリがある。ムリがあるんだけどそこはなんとかしなくちゃいけなく、親子の問題、兄弟の問題、夫婦の問題をからめて筋が通るようにしているのは苦肉の策としては合格点なのだろう。兄嫁のあんまりなキャラに辟易しつつもエリザベス・テイラーのもうなんて言ったらいいのか、要するに色っぽいというかいや全然セクシーなことしてないんだけど内からにじみ出るような若妻臭というんでしょうか、ってそう書いちゃうとものすごくエロいけど、そうじゃなくてもっとこうなんちゅうか、、、、たまらんね。[CS・衛星(字幕)] 6点(2009-09-09 17:36:18)(良:1票) 1042. 相続人(1998) 《ネタバレ》 邦題がネタバレになっちゃってるんですけど、まあばれててもいいというか、どっちにしろすぐばれるというか・・。だいたい離婚した弁護士、しかも女たらし、で敏腕、しかも強引なやり口で警察を敵に、となると大まかな流れも予想できようってもの。実際今あげたものは全て伏線となっている。しまいには「ジンジャーブレッドマン」の童話(うまくやってると思ってたら最後に裏切られるお話)。そしてクライマックスに向けて接近するハリケーン。結末でドッキリではなく結末を必然とするための伏線を楽しむ映画。遊んどるがな。というのは言いすぎにしても少なくともアルトマンは観客を煙にまこうとかびっくりさせようなんて考えていない。[DVD(字幕)] 6点(2009-09-08 13:42:35) 1043. DEMONLOVER デーモンラヴァー 《ネタバレ》 アサイヤスとの出会いは『レディ・アサシン』というまるでアメリカのB級アクションのようなタイトルの映画だったのだがこれが凄かった。それよりも5年も前に製作された『DEMONLOVER デーモンラヴァー』をさらなる期待を持って見てしまったために衝撃を受けるまでには至らなかったが、それでも短いカットでも計算しつくされているのだろうと思わせるカメラの動きに見惚れ、かと思うと緊張が画面にへばりついたような長いワンシーンにぞくぞくさせられた。ソニックユースが作り出すノイズミュージックも緊張を煽る。産業スパイというどこか作り話的なものがビジネスの世界という現実的描写で描かれる前半から一気に映画が動くのが「人が死ぬ」シーンだ。その唐突さがいい。突如として転がり込む「死」のどこか虚構じみた感覚が怖い。勿体無いのがそこから先が長いこと。長いとまた形勢逆転という展開を期待してしまうのだが、それがないから後味悪し。[DVD(字幕)] 6点(2009-08-20 18:00:58) 1044. カンパニー・マン 《ネタバレ》 オープニング・・・顔を映さずに近未来をうかがわせるブルーとシルバーを基調とした涼しげな映像にスッとキャスト、スタッフの名前が入る。センスいいなあ。手の込んだ洒落たタイトルロールと言えばヒッチコックの『北北西に進路を取れ』。物語後半にあきらかにこの『北北西に進路を取れ』を意識したシーンが登場する。なるほど全体の流れもまたヒッチコックお得意の「巻き込まれ型サスペンス」だ。もしかして原題の「CYPHER」が「PSYCHO」と似ているのはお遊びか?しかしヒッチコック映画のようにぐいぐいと引きつける力がない。少々のトリックでは驚かない現代の観客を相手にするというハンデを克服するための二転三転の展開がかえって映画を退屈にしてしまっている。二転三転の展開が早すぎて先読みしながら見るのが面倒くさくなってくるのだ。しかしまあ、よくがんばってると思う。オチがイマイチ不評なようだが私は好きだ。たしかに誰が誰だったとかという展開そのものはどんでん返しとしては弱いんだけど、(超ネタバレ→)謎の女に助けてもらってばかりの主人公の行動が実は全て女のためだったって、それまでの妙にシステマチックな、それこそ『キューブ』的展開から一気にメロドラマ、とまではいかないまでも人間味に溢れててホッとするというか、映画の世界観がごろっと変わっちゃうところにどんでん返しの極みを見たというか。良かったよ。あのオチは。[DVD(字幕)] 6点(2009-08-17 15:05:53)(良:1票) 1045. 4Dマン 《ネタバレ》 とんでもない発明をしてしまうのは物理学者の弟である。職にあぶれて女もいない。一方科学者の兄は立派な研究所の主任で将来有望、なおかつ美人の恋人がいる。それでも狂ってゆくのは兄の方という意外性。そして兄だからこそという丁寧な理由付け。さらには弟の発明が招いた事件を兄の発明したもので締めるという構成の巧さ。いやなかなか面白かった。途中から葛藤やら怨みつらみやらが置いてきぼり状態で兄はただの化け物と化してしまって物語的には面白みがなくなってくるのだが、4次元に生きているんだからたしかに無敵の化け物だ。かといってモンスターものとしては弱い。派手さもなければ怖さもない。科学の暴走の末の悲劇という王道に放射能の潜在的恐怖を加味したこの時代特有のSFホラー。[映画館(字幕)] 6点(2009-08-12 14:16:57) 1046. TOKKO―特攻― 日系アメリカ人が撮ったからどうのといったことはあまり感じられなかったけども、特攻隊の生存者だけでなく特攻を受けた戦艦の生存者の証言映像があるのはインタビュー形式のドキュメンタリーとしての強度を得ている。はたして特攻隊とはなんだったのか。そこに狂気はなかったのか。特攻隊の生存者の一人が言う。天皇がもう少し早く降伏してくれてたらと。今だから言えるのかもしれないし、そう感じる人だからこそ生きて帰ってきたとも言えるかもしれない。つまり、生存者の証言では特攻に狂信めいたものはないのだが、特攻で命を落とした者もそうとは言い切れないってこと。私の祖父は戦死している。私の父は、内心では天皇なんかくそくらえ!と思っていると母から聞いたことがある(ここで言う天皇とは個人ではなく、戦時の概念としての)。でもそれは今生きている父が思うのであって祖父がどう思って死んでいったのかはわからないってこと。だから何もかもがこの映画でわかるわけじゃない。もしかしたら偏った伝え方になっているかもしれない。でも少なくとも証言者は「死にたくない」と思っていた特攻隊員だったのだ。別の生存者が映画終了間際に言う。語り継がなければいけないが、謙虚にしゃべらなきゃならないと。重い言葉だと思った。[DVD(邦画)] 6点(2009-08-06 15:00:50) 1047. ホタル(2001) 昭和天皇崩御の後に戦友の自殺。夏目漱石の「こころ」の明治天皇崩御と乃木大将の殉死と先生の決断の関係によく似ている。昭和天皇に対する思いと明治天皇に対する思いはおそらく全く違うものだろうけど、ひとつの時代の終焉とともにその時代の象徴するものに殉死するという意味で同じだと思う。この映画は「特攻隊」を題材にしているが、主題は過ぎ去ってゆく時間の中で過去とどう向き合ってゆくのか、どう落とし前をつけてゆくのかということだと思う。「二人でひとつ」という理想的な夫婦のカタチを見せてくれる二人にとっての落とし前のひとつが妻の初恋の人の遺品を家族の元に届けること。21世紀の訪れとともに夫婦の結晶とも言うべき漁船を燃やすのもまた一つの時代の終焉に伴う落とし前。「戦争」や「特攻隊」は向き合うべき過去のひとつに過ぎない。でも、遠い昔にあったらしいことと割り切れちゃいそうな「過去に起こったこと」を描いているのではなく「過去と向き合う今」を描いているからこそ立派な反戦映画にもなっているのだと思う。戦争を語り継ぐのに映画は最適な媒体の一つだと実感する。[DVD(邦画)] 6点(2009-08-05 19:06:57) 1048. 人間椅子(1997) 「倒錯した性癖」が描かれた乱歩「人間椅子」に、「性の倒錯」をモチーフとしたオリジナルストーリーを加えた脚色が巧い。送られた原稿に書かれた内容を知りたいという欲求、送り主は誰なのか知りたいという欲求、倒錯の世界に足を踏み入れた女流作家の行く末を見たいという欲求、、、観客の興味を持続させながらもどうもそんな単純なお話でもなさそうだと思わせる主人の謎めいた動向の差し込み方がまた巧い。だから腹話術だったのか!というカラクリの妙!まさしく乱歩の世界であった。後から考えれば少々ムリのあるお話なのかもしれないが、見事なまでの乱歩的ストーリーに脱帽。残念なのはエロス。裸を見せろとかそういうことじゃない。直接的な描写はむしろ無い方がいい。でも、もっとソソルものが欲しい。「性の倒錯」はお話の上ではあったが画面の上では乏しかった。[DVD(邦画)] 6点(2009-07-30 15:32:56) 1049. 江戸川乱歩の陰獣 乱歩の作品は大きく2種類に分けられる。元々自身が書きたかった本格推理小説と、なぜだか世間に高評価で受け入れられた変格推理小説に。「陰獣」は性的倒錯や猟奇的犯罪という「変格」的なものを取り入れた本格推理小説である。つまりトリックとトリックが解かれる過程に面白さが詰まっているということ。それがどういうことかというと、映画化に不向きな作品ってこと。それでもこれは面白い。両者共がおそらくは乱歩の分身であろう本格推理小説家と変格推理小説家の対決という構図そのものの面白さをうまく見せている。「変格」的世界観にありがちな薄っぺらさ、安っぽさといったものも、ローアングルと、被写体の手前にモノを置く加藤泰印によって深みを得ている。ムリにインビなる雰囲気を作ろうとしてないのがいい。本格推理小説家をいかにも優等生顔のあおい輝彦としたのは適格だったと思うが、もう少しハードボイルド系にしてみても面白かったかも。[ビデオ(邦画)] 6点(2009-07-29 14:17:32) 1050. D坂の殺人事件(1998) 乱歩の「D坂の殺人事件」と「心理試験」の合わせ技ではあるがこの作品において殺す者も殺される者も原作二作には登場しない。「D坂の殺人事件」からは団子坂の古本屋で殺人事件があったこと、古本屋の向かいが喫茶店であること、古本屋の並びに蕎麦屋があること、登場人物のSM趣味、ぐらいが抜き出されているだけでストーリーじたいはオリジナルと「心理試験」を巧みに融合させたものである。このオリジナルの部分に名前だけ登場する責め絵師「大江春泥」は乱歩「陰獣」に登場する人物の名を借りたもので、これは乱歩ファンへのサービスでしょうか。本作同様に嶋田久作が明智を務めた前作『屋根裏の散歩者』のアパートの住人も責め絵を描いていましたが、絵は本物の裸よりも艶かしく、とくに本作における真田広之によって描かれる贋作作りの過程は圧巻と言えるほどの艶かしさ。真田は前作の三上同様に怪しい色香を発散しており、このシリーズのキャスティングはなかなかに巧いなと思った。一番怪しさ満開なのは最後にちょっとだけ登場する三輪ひとみの小林少年だが。前作のような無駄なエロシーンや怪しい世界観のための過剰な演出が抑えられているのも好印象。[ビデオ(邦画)] 6点(2009-07-28 14:07:27) 1051. ユメ十夜 10人の監督がまさしく十人十色に漱石「夢十夜」を描く。 ■「第一夜」顔を極端に暗くする一方で空間を目一杯眩しい光で満たす。斜め構図も幻想世界の構築に貢献している。なんてったって先頭バッターですからこれぐらいの突飛さはあってしかるべしなんだけど、世界観の構築だけで終わってるような。 ■「第二夜」市川崑はモダンなモノクロをベースにサイレント、細かいカット、ストップモーション、パートカラーと手が込んでいる。大御所が「一」「二」と続くんだけど、作品は全く大御所っぽくない。何やったって安定感だけはあるんだけど。 ■「第三夜」夢そのものだけでなく、漱石がその夢を書くところを入れることでオムニバスの一編に終わらない一本の作品として成り立たせている。この夢は元々清水崇監督と相性ぴったし。 ■「第四夜」えらいドラマチック。長く感じた。 ■「第五夜」スプラッターアクションだ。一番強烈な印象を残す。 ■「第六夜」みんな自分流に好き勝手にアレンジしまくってんだけど、ぶっ飛び具合が最も激しいのがコレ。だけど内容は最も忠実だったりする。ワロター! ■「第七夜」アーティスティックなアニメーション。このアーティスティックな部分が鼻につくかつかないかで好みが割れそう。 ■「第八夜」なっ、なんのこっちゃ!こんな話あったか?どえらく改変されてんだろうな。原作読み直したくなってきた。 ■「第九夜」前が前だけにものすごくふつう。ふつうなんだけどなんかやってくれそうなオーラが緒川たまきから発散されている。そこがミステリアス。 ■「第十夜」最後にこれかよ!くだらん!マンガチックにアレンジは全然かまわないがオフザケが過ぎる。 ◆<総評> 監督の順番変えて欲しい。 でもまあ、個性的な監督が一同に介する企画ものは好きです。甘甘の6点。[DVD(邦画)] 6点(2009-07-24 19:33:54)《改行有》 1052. 坊っちゃん(1977) アップ多用なんだけどマンガチックとも言えるキャラクターの魅力こそがキーとなる本作にあっては成功法と言えるかもしれない。「赤シャツ」と「野だいこ」はあまりにハマリすぎ。というか松坂慶子=「マドンナ」にも言えるんだけど、キャラクターと役者の一致はもしかしてこの作品を昔テレビで見たのが印象として残っているだけかも。と、思ってしまうほどにキャスティングは「鉄板」だと思う。松山弁って言うのかな?「ぞなもし」っての。いなかっぺ大将のにゃんこ先生の使ってた方言といっしょですかね。いいなあ。とくに女の人が言うと。でも「ぞなもし」が語尾についてるだけで標準語イントネーションなんだけど、実際はどうなんでしょ。オーソドックスながら原作のユーモア性をよりクローズアップさせた楽しい作品でした。 [ビデオ(邦画)] 6点(2009-07-23 13:16:29)《改行有》 1053. それから(1985) 藤谷美和子は一番良いときの藤谷美和子で演技じたいは下手っぴなんだけど雰囲気があっていい。小林薫は一生懸命に嫌な男を演じていることが前面に出すぎている。あのロボットみたいなわざとらしい動きはどうにかならんか。松田優作は原作とはイメージがずいぶん違うが作品の世界には合っている。役柄上のおさえた演技も藤谷美和子同様にいい雰囲気を出している。社会の常識だとか倫理といった社会通念から外れることの弊害があっても自分の心に正直に生きようとする主人公に私自身を見る、なんて言うとかっこつけすぎですが、原作は漱石の小説の中で最も大好きな小説です。原作ではその社会通念に押しつぶされようとする圧巻のラストシーンが市電を舞台としていたので、この映画で途中に挟まれる市電内の奇妙な描写はてっきりラストシーンへ向けた伏線とばかり思っていたのですが、そうではなかったことがちょっと残念。「自分に正直に生きる」ことよりも「激しくもしとやかな恋愛」がメインに描かれているような気もするが映画としては正解かもしれない。[ビデオ(邦画)] 6点(2009-07-22 14:42:01) 1054. こころ(1955) 原作に関して同性愛小説ととらえる向きが(とくに海外で)あるらしいのですが、私自身が読んだかぎりでは全く感ずるところはなかったのですが映像にしてみるとなるほど、たしかにそんな解釈もありだなと思った。主人公と先生の出会いのシーンが最も顕著で、半裸の男が映し出されるというだけでなんとなくそんな空気を感じてしまった。しかしどうもたんに映像の力だけではなく、この映画自体がそっちの思考で作られているっぽいような気もする。先生の回想シーンでも先生と友人の関係は同性愛的描写はなくとも男同士の友情とは一線を画した何かを感じずにはおれない。作品に漂う鬱屈した空気はまるで本人が自分の中に目覚めた気持ちに気付いていないゆえの息苦しさのようだ。最初、原作にはないラストシーンは蛇足にしか思えなかったのだが、同性愛的なものが心の奥底にあったのなら何にも置いて一人蚊帳の外であった妻を最後に登場させたこのラストシーンはなかなかキョーレツな味わいを持っているではないか。ううむ、新藤兼人版も見てみたい。[DVD(邦画)] 6点(2009-07-21 17:09:40) 1055. クジラの島の少女 《ネタバレ》 何人かの方が触れられていますが、私も『風の谷のナウシカ』を想起しました。伝説の再現という現象もさることながら画的にもそっくり。・・・伝統を守り続けるということは伝統を継承するということであり、伝統とは生活、習慣、行事、全てに伝統はあるわけで、族長は男でなければならないというのはその一部にすぎない。それでもそこに拘る族長はえらく保守的とも思えるが、必要以上に保守的にさせているのが欧米生活の急激な進出とその合理性が持つ力への警戒心なのだろう。男尊女卑的にも見える慣わしではあるが族長自身の孫にあたる主人公の少女に対する愛情の深さはそんじょそこらのおじいちゃんには負けない。この二人の関係が目立たず、しかししっかりと描かれているから少女がおじいちゃんの意思を継ぎたいと思い、無理を承知で懸命に族長を目指す展開に信憑性を持たせている。同時に作品の持つ小難しいメッセージ性よりも癒し系の色合いを濃くしていて好感が持てる。クライマックスのいわゆるナウシカなファンタジーは先進文明下では起こりえない現象としてアリだと思うし、美しい画づらともども感動的でもあったのだが、その後が駆け足にすぎる。ラストの画が映るまでに病院シーンのしんみりした余韻をもう少し味わいたかった。[DVD(字幕)] 6点(2009-07-17 17:27:44) 1056. 神経衰弱ぎりぎりの女たち 吹き替えアフレコの声によってすでに家を出てしまった男との擬似掛け合いをしながら気持ちの高ぶりを抑えきれなくなる女。あるいはテレビから流れるその吹き替えられた声に正気を取り戻した元愛人。映画、演劇を作品内に潜り込ませるというアルモドバル的展開はこの初期作品でも存分に取り入れられている。現実と虚構の倒錯をコミカルに味付けしてゆく。男の身勝手さによって神経衰弱となり復讐心にとりつかれた元愛人の姿に自分を見る。そこから男に依存しない自分を見出してゆく。ドタバタ喜劇の様相のなかにはっきりと「女の自立」が描かれるのもまたアルモドバル映画の真髄と言えよう。ただこのドタバタの部分が人間関係のこんがらがり具合も相まって、頭の中で整理しながら見なくてはいけない(それほど大層なことでもないが)のに、意外とドタバタが本筋とかけ離れすぎているような気がする。[DVD(字幕)] 6点(2009-07-16 10:59:48) 1057. プレイス・イン・ザ・ハート 《ネタバレ》 突然の不幸によって路頭に迷う子持ち女が断固として譲れないのが家を売ること。まるで『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラのように家と土地に執着を見せる。そういえば舞台も同じ南部だ。これが南部の女なのか。とにかくなんのアテもない絶体絶命の状況をこの南部魂としか言いようのない根拠なき自信をもって乗り越えようとする。そこにおよそこの南部では助けにもならない黒人と障害者が女の南部魂に感化されてか、手に手をとってなんとか乗り越えてみせるのである。大恐慌の時代、南部における黒人、そして障害者、はたまたハリケーン襲来という困難等々と、あまりに揃いすぎの感は拭えず、また予定調和にも過ぎる気がしないでもないのだが、ラストシーンの寓話的な描写によって映画全体が理想郷だったのではと思えて、そうなるとかえって、これは現実ではないよ、現実はこんなに甘くないよと言われているような苦味を感じたりもする。広大な綿畑での作業風景が素晴らしく、朝昼夕の光、そして電灯の下と光への細やかな配慮が効いている。[CS・衛星(字幕)] 6点(2009-07-15 14:25:19) 1058. スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい 《ネタバレ》 けっこう面白かったス。出てくる人間、どいつもこいつも主役になれそう、というか誰が主役かわからんのは確信犯か。誰もが映画の中で我を張りながら殺される駒としての可能性を秘めているのがこの映画の面白いところであり怖いところである。映画はそのことをまずベン・アフレックを使って宣言するのだ。あとはかっこいい女二人組に感情を移入させようが、非情な殺し屋が最後まで残るというお約束を信じようが、いやいやFBIもなかなか見せてくれるような展開だとか思ってみたところで、どこか疑わしくもあり、そしてやっぱり微妙に裏切ってくれるのである。漫画チックにすら見えるかっこいい構図も荒唐無稽なストーリーによく合っている。惜しむらくは狙われているご本人が影が薄く作品内の駒として一人だけ蚊帳の外にいること。それとオチ。カラクリはまあアレでよいとしてもダラダラと描きすぎ。[DVD(字幕)] 6点(2009-07-09 14:23:30)(良:2票) 1059. HAZARD 眠い日本。眠れない日本。だからアメリカへ。だからニューヨークへ。危険な場所へ。園子温の思想が映像と化す。出てくるやつらはめちゃくちゃだ。めちゃくちゃすぎる。でもそこを突っ込むのはナンセンス。思想の映像化なんだから。「危険」を画面に残すためのニューヨークロケとハンディカメラ風の画像。全体的に光が乏しいのも長回しをするのもおそらくは現場からあふれ出ている「危険」を画面に残すためだろう。自由と引き換えに死の危険がそこにはある。というのがよく出ていると思う。ざらついた映像は映像そのものを暴力的に感じさせる。生きることを実感したいなら死を近くに置いとけばいい。若いなら無茶しろや!そういうことなんだと思うんだけど最後の日本のシーンはちょいとわかりやすすぎないか。でもこのシーンがあるから園子温の映画なんだよね。[DVD(字幕)] 6点(2009-06-15 17:08:53) 1060. 群衆(1941) いきなりとある新聞社のプレートが外されるシーンから始まり、社員が次々とジェスチャーでもってクビを宣告され、宣告された一人の女性が上役にかけあい懇願し落胆し憤慨するその傍らで、その間中新たなネームをドアに書き入れる職人が邪魔に邪魔され続ける様の流れるような見せ方が実にスムーズで且つ面白い。キャプラの楽しい映画が始まる。しかし思いっきりコメディな冒頭部から徐々に社会派色が色濃くなってゆく。それでも男が群衆に祭り上げられてゆく展開そのものはコメディそのものだし、随所にユーモアを散りばめた演出もあって傑作の臭いまで漂ってきたのだけど、終盤はえらくブラックな展開が待ち受けており、社会派は残ったままコメディは消え去り重く暗いヒューマンドラマで締めくくる。重い暗いと言ってもそれがダメなんじゃなくてむしろ群衆にバッシングされるシーンの雨の中の孤立無援ぶりの凄まじさは強烈な画として印象深くすごくいいと思う。ただ、最後の最後。感動的なのはいいのだが、その重さ暗さをひきずってるのがどうも。なんとか笑ってお終いにしてほしかった。[DVD(字幕)] 6点(2009-06-11 17:21:23)
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