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プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順123456789
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101.  予告犯 《ネタバレ》  この映画、面白いです。  面白いんですけど……序盤の拷問シーンで「悪趣味だなぁ」と思い、終盤の感動シーンで再び同じ感想を抱いてしまったので、どうも手放しでは褒められない内容。  「良い話にしようとしているのは分かるけど、無理あるよね?」という思いが浮かんで来てしまい、中々それが消え去ってくれなかったのです。  結局のところ、本作を楽しむ上でのキーポイントは「外国人の友達が死んでしまった」→「彼は死ぬ前に父親に会いたいと願っていた」→「自分達で探しても父親は見つからない」→「日本で一番捜査力が高いのは警察。死んだ友人の名前を騙って事件を起こし、彼らを動員して父親を探させよう」という、犯人達の行動を受け入れられるかどうかに尽きるのではないでしょうか。  自分としては「死んだ友人の名前を騙って」の部分が、ちょっと受け入れられなくて、本当に友達想いの奴なら、そんな事はしないだろうと白けてしまい、残念でしたね。  作中のテーマとしては「理由があって、頑張れない奴もいる」という、社会的弱者の存在を肯定するような意図があったのだと思われます。  けれど、就職活動はともかく、父親探しにおいて主人公達が「頑張れない」理由がハッキリしなくて、真っ当な方法では探せないと諦めて、死んだ友達に犯罪者の汚名を着せるのを承知の上で、楽な手段を選んだだけとしか思えないのです。  せめて「何年もかけて自力で探したけど手掛かりすら掴めなくて、止むを得ず最後の手段を選んだ」という形なら納得も出来るのですが、そういった過程を経ていないので、主人公達が努力を放棄したようにしか見えない。  酷く典型的な台詞になってしまうのですが「そんなやり方を、本当に生前の友人は望んでいたのか?」という疑問も浮かんできます。  それらの罪を償う為の自殺オチだったのでしょうが、終盤やたらと主人公を賛美する展開になっているものだから、どうも作り手との価値観のズレを感じました。  主人公と対峙し、その思想を否定する立場だった美人女刑事にまで「全てを予告し、やり遂げた」と嬉しそうに言わせたりしたのは、ちょっとやり過ぎだったんじゃないかなと。  生き残った犯人グループの仲間が、罪を全部主人公に被せて自分達だけ助かる件も、シニカルに描くのではなく「主人公の自己犠牲の美しさ」を強調するような演出だったりするものだから(えっ、そこで感動させようとするの?)と驚いてしまったくらい。  その他、主人公が会社での陰口に気が付く件なんかも、あまりにも非現実的な「周りの人間は皆、嫌な奴」過ぎて(これ、現実なの? それとも主人公がそういう被害妄想を抱いているって描写なの?)と戸惑ってしまったし、女刑事と犯人の追跡シーンでも(どうして応援を呼ばないんだ? 刑事なら何らかの連絡手段は確保しておくべきでは?)と集中力が削がれてしまった形でしたね。  そういった諸々が伏線なのかと思いきや、全然そんな事は無かったという意味も含めて、終盤の展開が本当に残念。  「作中で明かされた真相に納得がいかなかった」というパターンの為、ついつい文句を並べてしまいましたが、以下は良かった点を。  まず、導入部から展開がスピーディーで「異常な犯人、シンブンシの目的は何か?」と観客にも推理させていく流れは、とても楽しかったですね。  映画の構成としては、序盤は刑事側の目線で事件を追いかけていく形であり、中盤以降に主人公=犯人へと視線転換して、その背景が明かされる訳ですが、順番が逆だったら冗長な話になっていたでしょうし、この導入部には「掴みが上手い」と感心。  主演の生田斗真の力によって、新聞紙で覆面をして犯行予告するシーンでも、ダークヒーロー的な恰好良さが醸し出されており、作中で彼らの賛同者が生まれていく展開に、さほど不自然さを感じさせなかった辺りも有難かったです。  ここのハードルをクリアしてくれないと、作中の世界観が根底から崩れかねないので。  犯人グループが仲良くなっていく過程も、短いながらも丁寧に描かれており、青春ドラマとしての魅力も備えている形。  主人公の「友達が欲しい」という夢が叶っていたのを示す、和気藹々としたやり取りを、最後の最後に持って来て、カタルシスを与えて終わらせた辺りも、上手かったですね。  ここで「良い友達を持つ事が出来て、幸せだ」などと口に出しては言わせず、主人公の表情や音楽などで伝えてみせる演出は、本当に好み。  決してハッピーエンドではないはずなのに、それに近い味わいがありました。  色々と気になる点は多かったのですが、それらを差し引いても面白かったし、良い映画だったと思います。[DVD(邦画)] 6点(2016-12-28 12:09:22)(良:1票) 《改行有》

102.  サイド・エフェクト 《ネタバレ》  「女は小さい頃から演技を学ぶの」「多分、男が嘘を学ぶのと同じ頃に」という台詞が心に残ります。  映画が終わった後も、女は精神病院から解放される為に演技し続けなければいけないし、対する男が勝利出来たのは、嘘を吐いた御蔭。  医療問題、薬物依存をテーマに扱った社会派映画かと思いきや、騙し騙されのサスペンス映画であったという、この作品を象徴するような台詞でしたね。  序盤は重苦しい雰囲気で、これは苦手なタイプの映画かと警戒していたのですが、中盤から俄然面白くなり、以降は画面に釘付け。  エミリーが夫を刺殺したシーンの衝撃は凄かったですし、彼女が真実を告白する件も良かったと思います。  これは少々アンフェアで、人によっては不愉快に感じてしまう部分かも知れませんが、最初から視点を主人公のジョナサンに定めず、さながらエミリーの方が主人公であるかのように描いていたのが、巧妙な目眩ましとなっていましたね。  これによって、観客は彼女に自然と感情移入する形となり、騙されやすくなってしまう効果があったと思います。  自分としては、序盤の彼女の描き方が俯瞰に徹していたというか、内面描写にまでは踏み込んでいなかった点を考慮して、ギリギリセーフかと判定する次第。  そんな具合に「気持ち良く騙された!」「これは傑作だ」と大いに褒め称えたくなる一品なのですが、終盤の展開には不満もあり、残念でしたね。  幾ら何でも黒幕の女性がペラペラと喋り過ぎというか「証券詐欺に、殺人の共謀容疑」なんて丁寧に罪状まで言わせちゃって、それを逮捕の決め手にしちゃうだなんて、本当にガッカリ。  自白させる展開自体が間違っているとは思いませんが、もう少し時間を掛けるか(安易だなぁ……)と思わせない工夫が欲しかったところです。  せめて警官に「殺人の共謀容疑と証券詐欺で起訴します」と復唱させるのを止めるだけでも、少しは印象が違っていたのではないでしょうか。  結局、エミリーも精神病院に収監されて元の状態に戻っただけなので(何らかの手段でそこから脱出してしまうかも?)(主人公が復讐されてしまうかも?)と思うと、今一つ落ち着かなくて、ハッピーエンド色が薄いように感じられた辺りも残念。  失いかけた家族を取り戻す主人公の姿についても、詳しい過程が語られず「無事に元に戻りましたよ」と結果だけが示される形だったので、どうにもカタルシスを得られず仕舞いでした。  ソダーバーグ監督らしく、展開がスピーディーなのは長所でしょうし、種明かしを済ませた後は、スパッと短く終わらせるのも正解だとは思います。  それでも、もっと丁寧に描いて欲しかったなぁ……と、ついつい感じてしまった映画でありました。[DVD(吹替)] 6点(2016-12-15 07:35:04)(良:1票) 《改行有》

103.  あしたのジョー(2010) 《ネタバレ》  観賞中「えっ? ウルフ金串戦もやるの?」「力石の死後まで描くの?」と二度吃驚。  おまけに映画オリジナルのエピソードとして「ドヤ街に憎しみを抱く白木葉子」なども追加しているものだから、実にボリューム満点。  それを二時間ほどに纏めてみせて、これ一本だけでもキチンと完結している品に仕上げた手腕は見事だと思うのですが、やはり駆け足な印象も受けてしまい、評価の難しいところですね。  自分としては、如何に魅力的だとしても「ダブル&トリプルクロスカウンター」の存在共々ウルフ戦はカットし、もっとジョーと力石に焦点を合わせた作りの方が良かったのでは……と考える次第。  恐らくはアニメ版のリスペクトと思しきスローモーション演出を「力石との初戦」→「ウルフ戦」→「力石との再戦」と立ち続けに見せられる形となっているので、どうしても単調な印象を受けてしまうのですよね。  後述の減量シーンに関しても、もっと尺を取って描き、普段は紳士的に振る舞っていた力石がマナーを無視して果実に齧り付く場面なども再現してくれていたら、更に感動出来たかも。  役者陣に関しては、主役二人の見事な肉体改造っぷりも併せて、ほぼ文句無し。  丹下段平のルックスだけは、あまりにも漫画チックで浮いているような印象は受けましたが、それを打ち消すほどの迫力が力石から感じられましたね。  減量中に我を失い、水を求めて彷徨うシーンなんて「台詞回しは原作漫画の方が詩的で良かったかな……」と頭の片隅では冷静に思っているはずなのに、目線は画面に釘付けという、不思議な感覚を味わう事が出来ました。  特に嬉しかったのが、力石の死因となったであろう「後頭部をロープで強打してしまう場面」が、より印象的になっていた事。  原作漫画では少しインパクトが弱かった気もしただけに(もしかして死ぬんじゃないか?)と初見でも思えるような仕上がりになっているのは衝撃でしたし、それはひとえに、力石を演じた伊勢谷友介の力が大きかったのではないでしょうか。  生きている俳優が「この人は、もうすぐ死んでしまうんだ……」と観客に思い込ませるのは、とても大変な事でしょうが、本作ではそれを見事に成し遂げてみせたように思えます。  終盤にて「ジョーが如何にして力石の死の衝撃から立ち直ったか」を描く尺が足りず、観客の想像に委ねる「空白の一年からの帰還」で済ませてしまったのは非常に残念でしたが、リングの中に力石の幻影が現れる場面は、とても良かったですね。  ここって、一歩間違えれば「ジョーもリングで死なせようとして誘っている死神」としての力石にしか見えなくなってしまうはずなのに、全くそれを感じさせない笑顔で「二人の友情の証としてのボクシング」の魅力、楽しさや面白さを伝えてくれているのです。  力石の死をクライマックスに据える以上、後味の良いハッピーエンドにするのは難しいと思っていただけに、それを裏切ってくれた事が、実に痛快。  原作の最終回におけるジョーの生死は未だに議論の的となっていますが、少なくとも本作におけるジョーはリングで死を迎える事なく、引退後もボクシングに関わりながらドヤ街で生き続けたのではないかな、と思えました。[DVD(邦画)] 6点(2016-10-16 11:58:54)《改行有》

104.  中学生円山 《ネタバレ》  これはつまり、正義の変身ヒーロー「中学生円山」が誕生するまでを描いた映画であった訳ですね。  彼はマスクを装着すると身体が柔らかくなり、さながら体操選手のような動きが出来るようになるという、何とも地味な能力の持ち主なのですが 「自らの性器を口に含んで自慰をしたい一心で、柔軟運動を続けてきた」  という背景を背負っていたりもして、一応は努力型のヒーローと呼ぶ事が出来そう。  その他「妄想を現実に変えてしまう」という便利な能力も備わっているみたいですが、こちらに関しては効力が曖昧で、何もかも自分の思い描いた通りに叶えてみせる事は出来ないみたいです。  構成としては「主人公円山の妄想」と「現実」が入り乱れる形となっており、観客によって「ここまでが現実」「ここからは妄想」といった具合に、解釈が分かれそうな感じ。  作中で起きる最も非現実的な出来事が「主人公が超人的な動きで弾丸を避けた事」ではなく「体育館で皆が主人公の自慰行為を応援してくれた事」だったりする辺りがユーモラスですが、恐らくは後者の体育館の件から、主人公の理解者である下井が撃たれて死ぬ件までが「妄想である」と解釈する人が、一番多いのではないでしょうか。  ご丁寧に「現実に負けるな」「妄想と向き合え」という台詞を重ね合わせる演出であった為、作り手側としても、それを想定していたのではないかな、と思えます。  ただ「下井が武器としている、ベビーカーを変形させた銃」が異様にスタイリッシュで、円山が妄想してきたレトロで分かり易いヒーローや悪役達と比べ、明らかに異質感があった辺りは気になりますね。  そもそも映画前半における、妄想の中で襲って来た「殺し屋下井」は、使用する銃のデザインもコロコロ変わるような適当さだったし、あの銃だけが浮いているというか「円山が妄想した代物にしては不自然」という意味で、妙に現実感がありました。  あれは円山ではなく下井の妄想の産物か、あるいは現実に作った代物なのか? と思えたりもして「もしかしたら終盤の戦いは、全て現実だったのかも知れない」という可能性を与えてくれる、良いアクセントになっていました。  個人的に残念だったのは、上述の体育館の件が非現実的過ぎて冷めてしまった事と「中学生円山」に初めて変身した時のデザインが、どう見ても単なる覆面レスラーみたいで、今一つ好みではなかった事。  下井の死後に届いたプレゼントのマスクは、ちゃんと恰好良かったので、意図的に「プロトタイプのマスク」として見劣りするデザインにしたのかも知れませんが、出来ればラストの「青い服に、赤いマスクとマフラー」という恰好で戦って欲しかったなぁ……と思わされましたね。  落ちぶれた韓国人俳優と、韓国ドラマに夢中になる人妻との不倫関係。  そして、老人の男性と小学生の女性との恋模様など、主人公の家族にまつわるエピソードも、しっかり面白かった辺りは、流石という感じ。  同じ宮藤官九郎脚本の「ゼブラーマン」と比べても、何処となくオシャレな感じが漂っていたのは、この二本のエピソードにて、色恋沙汰を扱っている事が大きかったように思えますね。  下井と円山の最後のやり取り「おめでとう」「ありがとう」には、感動を誘うものがありましたし 「正義っていうのは、人を殺しちゃいけない理由を、ちゃんと知ってる人の事だ」  という台詞も良かったです。  そして極め付けは「まだ早いって言われた」「もう遅いって言われた」「最初のキス」「最後のキス」の対比であり、年齢差のあり過ぎるカップルの悲恋が、何とも切ない余韻を与えてくれました。  主人公の円山だけでなく、その母親と、妹も 「韓国ドラマに夢中になっている」→「そのドラマに出演している俳優と出会う」 「同い年の男の子には興味ないけど彼氏が欲しい」→「素敵な老人の彼氏が出来る」  といった具合に、都合の良過ぎる出来事が起こっている為 (もしかしたら、この一家全員に妄想を現実に変える力があるの?)  とも思えるのですが、そんな中で、唯一妄想をしない父親の存在が、何とも良い味を出していましたね。  家族の中で、彼だけは現実に満足して、幸福を感じている為、妄想する必要が無いという形。  実に羨ましくなるし、それって、とても素晴らしい事なんじゃないかと思えます。 「何があっても、お父さんお前の味方だからな」  と言って、悩み多き息子を抱き締めてみせる姿なんかも、コミカルな演出なのに、妙に恰好良い。  妄想に耽る事の魅力だけでなく、きちんと現実と向き合って生きる事の魅力も感じられた、バランスの良い一品でした。[DVD(邦画)] 6点(2016-09-20 22:57:14)(良:1票) 《改行有》

105.  清須会議 《ネタバレ》  冒頭、本能寺における信長の描き方によって「あっ、これコメディだ……」と気付かせてもらえた為、早い段階から史実云々とは切り離して楽しむ事が出来ました。  何といっても、大泉洋演じる秀吉のキャラクターが良かったですね。  猿にも鼠にも見えるという、その風貌の時点で素晴らしい。  おちゃらけていても、積極的に政略を張り巡らせる「働き者」っぷりも良かったですし、庶民からの成り上がり者である事を過度に美化したりせず、家族からは「百姓の心、失うとる」と非難され、白い目で見られるパートを挟むバランス感覚も、お見事です。  中でも特にお気に入りなのは、妻のねねが「今の暮らしでも、うちは十分幸せ」と優しく話しかけても「ここまで這い上がって来たんだで、途中で降りる訳にはいかん」と、その貪欲さを垣間見せる場面。  天下人となる秀吉の器の大きさが感じられる一方で、強過ぎる欲望ゆえの危うさ、陽性の狂気とも言うべき本性が窺えたように思えて、ゾクリとさせられましたね。  長年の友人である前田利家に刃を向けられた際「儂を斬れば、戦の世は後百年続く」と言い放つ姿なんかも、格好良かったです。  今まで色んな秀吉像を見てきましたが、本作の秀吉は、そんな中でも際立って魅力的であったように思えます。  丹羽長秀(信長派)と柴田勝家(信勝派)を長年の友人として描いている辺りも「ほほう、そう来たか」といった感じがして、面白かったですね。  黒田官兵衛も「頭の良い補佐役であるが、お茶目な一面もある」という描かれ方をしており、吹き矢の件や、三法師をあやそうとして盛大に泣かれてしまう場面など、親しみのある笑いを提供してくれている。  官兵衛に関しては「鼻持ちならない天才軍師」という描かれ方も多い人物であるだけに、本作の扱いは嬉しかったです。  遅参した滝川一益をあしらう場面で、硬質な有能さを示す一方、愛嬌のある間抜けな姿も見せてくれている訳で、変幻自在の水の如き魅力を感じられました。  そんな本作の不満点としては……映画全体で見ると、少々バランスが悪かった点が挙げられるでしょうか。  まず、肝心の清須会議が始まるまでが長い。  根回しの場面こそが重要なのは分かるのですが、実際に会議が行われる場面まで一時間以上掛かるとあっては「まだ始まらないの?」と、観ていて焦れてきちゃいますからね。  その対策として「旗取り大会」を挟んだのでしょうが、これに関しては完全に現在のバラエティ番組なノリとなっており、異質感が否めなかったです。  恐らくは秀吉が信雄に見切りを付けるキッカケの場面なのでしょうが、そんな事をしなくても散々「うつけ」っぷりを見せられた後であっただけに、今一つ必然性を感じられませんでした。  その後の「三法師こそが正しい後継者である」と秀吉が論じる展開についても、ちょっと違和感がありましたね。  観客に歴史の知識が無い場合、議論の場で唐突に「信長は生前、既に信忠に家督を譲っていた。つまり清須会議とは信長の跡継ぎではなく、信忠の跡継ぎを決める場である」という真実が明かされる形となっているので、これは如何にも不親切。  会議を始める前の段階で、絶対に説明しておかなければいけない情報ではないか、と思えます。  また、道化役の信雄こそが「この世は、生き残ったもん勝ちだ」という作中の台詞に当てはまる存在である事を、映画を観ただけでは把握出来ない辺りも、実に勿体無い。  この辺りは、作り手側に歴史の知識が備わっているからこその「皆、そのくらいは知っているでしょう?」という、無意識の怠慢に思えてしまいました。  更にキツかったのが、会議が終わった後の尺も長い事。   上述の秀吉と利家との会話なんかは凄く好きなのですが、それと同じように「男同士の友情」を示す場面として、丹羽と柴田の会話も描かれているので、何だか食傷気味に感じられるのです。  おまけに「歴史を動かす女の意地、女の怖さ」も市と松とで連続して描写されているので、どうしても「もういいよ……」と嘆息してしまいました。  相乗効果、あるいは対比の効果を狙ったのかも知れませんが、これに関しては「男の友情」「女の怖さ」で、それぞれ一つずつに絞って描いてくれた方が、好みでしたね。  それでも最後は、秀吉の力強い天下取り宣言で終わっている為、綺麗に纏まっている形なのは、何やら救われた思い。  確かな魅力を秘めている一方で、ちょっと豪華過ぎて、贅沢過ぎた辺りが、玉に瑕な映画でありました。[DVD(邦画)] 6点(2016-08-28 22:26:00)(良:1票) 《改行有》

106.  少年H 《ネタバレ》  冒頭、平和な時代にて楽しく絵を描く主人公の姿から始まって、戦中では鬼教官に「絵や音楽は戦争の訳には立たん」と言わせてしまう構成が、実に意地悪で、実に効果的。  「御国の為に」なんて言っていた近所の大人連中が、戦後は進駐軍に英語で話しかけて媚を売る姿なんかも、非常に嫌らしく描いているのですよね。  こういった「子供目線による悪役としての大人」を表現するのが、とても上手かったように思えます。  その一方で、主人公に好意的な大人達には、小栗旬や佐々木蔵之介といった「良い奴」イメージの強い有名所を起用しているのだから、バランスも良く、観ていて安心感がありました。  主人公の父親が極めて聡明で、寛大で、日本の情勢に対する先見の明まで持ち合わせているのは、ちょっとやり過ぎな気もしましたが、幼い主人公を導く役目、そして当時の情勢に疎い観客に対する「解説役」も兼ねているのだと思えば、何とか納得出来る範疇ですね。  演じているのが水谷豊というのも、非常にポイントが高い。  その知的な物言い、柔らかな物腰が、ハイスペックなキャラクターに説得力を与えていたように思えます。  特に印象深いのが、教室の机に「スパイ」と書かれた事を怒る息子に対し、冷静に、筋道を立てて説得してみせる場面ですね。  「アンタまで、やな人間になってしまうで」という言葉からは、面倒を避けようとする大人の配慮などではなく、本当に我が子を思いやり「息子には良い人間であって欲しい」と願っているからこその優しさが窺えて、胸に迫るものがありました。    そんな頼れる父との別れ、家族からの自立をクライマックスに配した気持ちは分かるのですが、結果的に「さぁ、これから主人公はどうやって生きて、成長していくのか?」という矢先に、映画が唐突に終わってしまった印象も受けてしまい、そこは残念。  恐らくは、演じている子役が幼過ぎて、社会人として自活している姿を濃密には描けなかったものと推測しますが、あそこはもうちょっと描写が欲しかったところです。  家族の中から死者が出ていなかったせいか、あまり陰鬱な展開にはならず、日本の復興を予期させる前向きなハッピーエンドであった事は、とても好み。  戦争が齎す不幸だけでなく、そこから立ち上がる人間の逞しさ、力強い美しさの片鱗を感じさせてもらいました。[DVD(邦画)] 6点(2016-08-17 06:54:46)《改行有》

107.  ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金 《ネタバレ》  「これでもまだ実話」のテロップには参りました。  笑ったら不謹慎なのでしょうが、ついつい頬が緩んでしまいましたね。  マイケル・ベイ監督作としては、非常に異質な内容である本作。  豪華な出演陣と、シニカルなストーリーのギャップにも、ちょっと戸惑うものがありましたが、何処か作り手が楽しんでいるというか 「こんな馬鹿げた事件があったんだよ。どう? 笑えない?」  と問い掛けているような雰囲気が漂っており、あまり深刻にならず、リラックスした状態で観賞する事が出来ました。  「悪人だけど、どこか憎めない」というタイプの主人公達だったのですが、やっている事は凶悪極まりない為、最後まで感情移入は出来ず。  書類にサインさせる為に、被害者を拷問している場面もキツかったのですが、個人的に一番落胆させられたのは、終盤の貸金庫の件。  その中身が、思い出の写真、そして子供時代の靴の型である事に怒って「金は無いのか」と怒り出す主人公の姿は、本当に見苦しいの一言でしたね。  ここで決定的に愛想が尽きたところで、映画が終局を迎える構成となっているのは上手かったです。  また、被害者の豊胸パックを取り出さなかったばかりに、それが決定的な証拠となってしまう辺りにも「そこかよ!」と思わずツッコミ。  指紋については気を遣っていただけに、その間抜けな見落としには、乾いた笑いを感じられましたね。  主人公達が筋トレに病的に固執している点や、理想的なボディと現実の経済事情とのギャップに耐え切れず犯行に至ったと思しき点など、色々と分析してみるのも楽しそう。  けれど、それよりは、もっと肩の力を抜いて、実話である事も意図的に忘れてみせて、のんびりと観賞するのが最適な映画であるように思えました。[DVD(吹替)] 6点(2016-07-11 18:05:00)《改行有》

108.  みなさん、さようなら(2012) 《ネタバレ》  作中にて「そういう嘘は虚しくなるだけだぞ」という台詞がありますが、正に虚しくなる嘘のような映画。  それは何も主人公が劇的に喧嘩が強い事とか、常に女性と絡む人生を送っているとか、そんな些末な部分ではなくて、もっと根本的なキッカケの部分。  主人公が団地の中に引き籠る理由が「小学校の教室で殺傷事件に巻き込まれたから」というのが、どうしても受け入れられなかったのですよね。  作中にて、何度も「俺が団地の皆を守る」と言っているのだから、団地の中で事件が発生したというのなら「離れた隙に事件が起こらないように」という事で、まだ納得出来るのです。  でも、この主人公に対しては「学校で事件が起こり、クラスメイトが殺されたんだから、皆を守りたいなら学校に行くベきだろう?」と思ってしまう。  逆に、恐怖ゆえのトラウマだというなら「学校に行けなくなった」までは納得出来るけど、それは「団地を離れられない」という固執には繋がらない。  これなら、学校から離れられなくなり、用務員として住み込みで働く事になった主人公という話の方が、まだ自然だったかと。  実際の精神的な病状だって、そういうもんなんだよって事なのかも知れませんが、これは実話ネタではありませんし、フィクションだからこそ必要なリアリティが欠けていたように思えます。  恐らくは、実際に起こった校内侵入事件やら何やらと関連付けようとした結果、こんなチグハグな図式になってしまったのだと推測。  そういった現実と虚構とのシンクロによって、ストーリーに真実味が増す事も多いのは確かですが、本作に関しては失敗しているように感じられました。  そんな風に、大前提の時点で興醒めしてしまい、あまり熱中出来なかった本作品。  けれど、ディテールの演出が非常に丁寧であり、退屈さは覚えなかったのだから、これは作り手さんの凄さなのでしょうね。  特に好きなのが「私、普通が良い」という理由で婚約者の女性に振られた後、男三人で集まって、慰めパーティーを開いてもらう件。  それまでは、あまり優しい印象は無かったりしたケーキ屋の店長が、ここで凄く親身になって言葉を掛けてくれるのです。  「主人公が団地から巣立つ」という結末以外は有り得ない作風なのに「団地の中で一生を終える。広い世の中、そんな奴が一人ぐらいいたって、面白ぇじゃねぇか」と言い放つ姿は、意外性もあって、本当に良かったと思います。  船の中で生まれ、ずっと船から出ないで死んだ男の映画なんかも連想したりしましたね。  「普通じゃない」という理由で拒否される事が嫌いな人間としては、この「普通じゃなくても良い」という肯定の台詞には、大いに心慰められるものがありました。  パーティーに参加してくれた、もう一人。  男友達の顛末に関しては、何とも後味が悪くて、実に残念。  恐らくは同性愛者であるがゆえに悩んで精神を病んでしまったのでしょうが、彼が健常であれば、宅配サービスも兼ねたケーキ屋さんとして、団地の中で暮らし続ける事も可能だったように思えるのですよね。  それだけに、その発狂が「主人公を団地の中で安住させない為の無理矢理な措置」と感じられたりして、ちょっと受け入れ難いものがありました。  トラウマを乗り越える為、刃物を持った悪漢に立ち向かい、見事に倒してみせる主人公というクライマックスに関しては、非常に分かり易く、かつ爽快感もあって、好印象。  そして母親との死別が、主人公の旅立ちのキッカケとなる訳ですが、その前段階。  団地の中と外を結ぶ架け橋として、象徴的に描かれていた階段を、母親を心配する主人公が一気に駆け下りていくシークエンスに関しては、大いに評価したいところです。  ここは安易に「母親の死」→「初めて主人公が階段を降り切ってエンド」としてしまいそうなところなのに、その前に「階段を降りる」という儀式を済ませておく。  母が死んで、もう生活出来なくなったから仕方なく階段を降りるのではなく、母を想う愛情が長年の障壁を突破させたという形にしてくれたのは、本当に嬉しかったですね。  母の遺骨を故郷の海に撒く為に、一時的に団地を離れた訳ではなく、きちんと巣立って戻ってこない事を「団地に残っている卒業生=0人」という形で表現してみせた思い切りの良さにも感心。  最後の最後で「逃げ」の姿勢を見せず、きちんと答えを出してみせる、作り手の真摯さが窺えました。  観賞後「ちゃんと団地の外でも暮らしていけるの?」と不安になるような気持ちは全く無くて、劇中の母親さながらに「この主人公ならば、きっと大丈夫」と確信させられたのだから、そこを考えると、やはり凄い映画なのかと思えます。[DVD(邦画)] 6点(2016-07-06 04:09:29)《改行有》

109.  パレード 《ネタバレ》  これは久々に「怖い」と思わされた映画です。  正直に言うと、終盤までは退屈で仕方ない。  夜の遊園地にて、女性が子供時代のトラウマを語るシーンの演出なんかはベタベタで、話の途中で相手の男が目を瞑っているのに気が付き「何だ、寝ちゃったのか」と呟く件なんて、もう観ているコッチが恥ずかしくなるくらい。  だた、このシーンにて「途中で寝ちゃった」はずの男性が、そっと目を開き、寝た振りをしていた事が明かされるのですよね。  (出会って間もないのに、いきなりヘビーな話されて困ったから、聞かなかった事にしたのかな……)と、軽く受け流していたのですが、まさかそれがラストの伏線とは、恐れ入りました。  連続通り魔の犯人が、ルームシェアしている若者達四人の中にいる事は、大体予見出来る範囲内だと思います。  その正体が、藤原竜也演じる直輝であったという点についても「一人だけ夜中に出歩いていて、アリバイが無い」という事を鑑みれば、意外とは言えない。  衝撃的な犯行シーンに差し掛かっても、観客であるこちらとしては(まぁ、そうだろうなぁ)という感じで、然程驚きは無かったのですが、そんな風に心が緩んだ隙を突くようにして、映画は「本当に怖い」ラストシーンに流れ込むのです。  偶々犯行を目撃してしまった、新たな入居者のサトル。  諦めきった表情で「警察に突き出される事」「自分を慕っていた同居人の皆にも犯行がバレてしまう事」を覚悟する直輝に対し、サトルは事も無げに、こう言い放ってみせる。 「もう、みんな知ってんじゃないの?」  この一言にはもう、完全に直輝と心境がシンクロしてしまって、心底から吃驚。  そして、何故知っているのに止めなかったのか、その理由が既に作中で明かされていた事に気付いて、二度驚く訳です。  恐らく彼らは「重い話を聞く事」が「面倒臭い」のだと思います。  だからトラウマを抱えた女性を相手にしても、寝た振りをしてやり過ごす。  同情したり、慰めたり、励ましたり、怒ったり、一緒に泣いてみせたりするのは、疲れるし、やりたくない。  同居人が殺人犯じゃないかと勘付いても、それが確定してしまったら面倒なので、踏み込まない。  観客が知りたいと願う「犯行の動機」に関しても、一切詮索したりはしない。  自分にとって「都合の良い人物」「皆の頼れる最年長者」でありさえすればいいという、怠惰な利己主義。  作中で長い時間を掛けて、彼らは「問題を抱えているけど、基本的には良い奴ら」として描かれていただけに、その衝撃は凄かったですね。  そんな人間関係の中で、直輝だけが一方的に「重い話を打ち明けられる事」が多い。  しかし、直輝にとっての悩みである「自分が殺人犯である事」は、誰にも打ち明けられない。  信頼出来る人格者として扱われている為、仲間から打ち明けられた秘密を、他の仲間に話す事も無い。  あまりにも便利な相談役。  だからこそ、他の住人にとっては直輝が必要だったのでしょう。  ラストシーンにて、泣き崩れる直輝に「皆で旅行に出掛けよう」と誘う一同の、冷たい表情。  そこからは、親しみに見せかけた究極の無関心というか「大切なのはアンタがどういう人間なのかじゃなくて、アンタが私の仲間として役に立ってくれるかどうかだ」という要求が窺い知れて、本当に背筋が寒くなりました。  日常にて何気なく使われる「空気を読めよ」という言葉なんかも、本質的には彼らの要求と同じではないかと思えたりして、何ともやりきれない。  全編に亘って楽しめる内容とは言い難いのですが、とにかくラストの衝撃に関しては、折り紙付き。  こういった事が起こり得るからこそ、途中まで退屈な映画でも、最後まで諦めずに観なきゃいけないんだな……と、再確認させてくれました。[DVD(邦画)] 6点(2016-07-03 07:34:31)(良:1票) 《改行有》

110.  アフロ田中 《ネタバレ》  原作漫画は未読なのですが、何十巻も刊行済みの御話を 「高校を中退してしまった」 「友人の結婚式に出席しなければいけない」  という二つの事柄を主軸に据えて、上手くまとめているように思えました。  一見するとメインテーマのように描かれている「彼女を作る」という行為は「結婚式に彼女を同伴すると約束したから」という理由での、オマケに過ぎない形ですよね。  それゆえに、ラストにて主人公が振られる事となっても、全くバッドエンドの香りがしない。  むしろ、その「本当は彼女なんて必要ない」という図式を活かして、明るいハッピーエンドに繋げてみせているのだから、脚本の巧みさが窺えます。  でも、振られる件に関しては、少し引っ張り過ぎたようにも思えましたね。  友人達との関係性を考えれば「他の皆は振られたのに、主人公だけが彼女と結ばれて終わり」なんて事は有り得ないはずなので、勿体ぶった告白シーンの演出には「いや、もう結果は分かっているよ」と、醒めた目線になってしまいました。  ただでさえ、その直前の結婚式にて、同じようなブラフの演出を、たっぷり時間を掛けて行われたばかりでしたからね。  二連続でやられてしまうと、流石に食傷気味。  こういうのは一度くらいに留めておいた方が「結果は分かっていても、やっぱり嬉しい予定調和」として、楽しめるんじゃないかなと思いました。  特に、この映画の場合はスピーチの場面が「ダメかと思ったら結果オーライだった」であり、告白シーンが「イケるかと思ったらダメだった」という順番なので、余計に辛い。  上述の不満点を考慮した上で判断するに、この映画のクライマックスは「主人公と男友達との絆が回復した瞬間」にあるのではないかな、と思う次第です。  それまで高校を中退した事に対し、後悔の念らしきものを窺わせなかった主人公が、初めて「高校卒業していれば良かった」という想いを口にする。  その理由が、学歴がどうこうといった話ではなく「そうすれば、卒業まで皆と一緒にいられたから」という辺りは、本当に良かったですね。  それまでの劇中にて、常に主人公の心情をモノローグで語る演出を取っていただけに、この「告白」には(そんな風に考えていたのか!)という意外性もあったりして、不意を突かれた形。  スピーチの場面では感動的な演出にするのだろうなと察して、ちゃんと身構えていたはずなのに、その予測を上回る感動を与えてもらいました。  劇中でアフロを貫く理由が今一つ分からないとか、友達と険悪になる流れが不自然だとか、気になる箇所は色々あったりもするのですが、楽しめる場面の方が多かったですね。  特に「女の子に送るメールの文面で悩む件」には、とても共感させられましたし「無断欠勤を社長に謝る件」なんかも、観ていて緊張感を抱かされ、社長が鷹揚な対応をしてくれた時には、心底からホッとさせられました。  基本的に作中人物が善人ばかりで、優しい世界を形成しているから、観ていて心地良い。  「失恋の傷なんて、友達同士で集まって騒げば、笑い話に過ぎなくなる」というメッセージが感じられるエンディングも、とても好みでした。[DVD(邦画)] 6点(2016-06-30 08:22:19)(良:2票) 《改行有》

111.  バレット(2012) 《ネタバレ》  「女子供は殺さない」「義理人情に篤い殺し屋」というキャラクターを主人公に据える前時代的な潔さが、もう天晴。  とにかく勧善懲悪が徹底していて、敵を次々に殺しまくり「死んでも誰も悲しまない悪党が死んだだけ」と堂々と語ってみせるのだから、これは凄い事です。  上記の台詞に関しては、正直ちょっと引いてしまったりもしたのですが(きっと、この映画の世界では本当にそうなんだろうな……)と、納得させられる力強さがありましたね。  往年の名匠ウォルター・ヒルだからこそ、出来た事なのかも知れません。  そして、とっくに承知の上なはずだったのですが、それでもシルヴェスター・スタローンの風格と肉体美には、改めて惚れ惚れ。  主演俳優を格好良く撮るという意味合いにおいては、文句無しで合格だったかと思う次第です。  その一方で残念なのは、スタローンにばかり比重が偏り過ぎて、相棒となる刑事の影が薄く、バディムービーとしての魅力には欠けるように思えてしまった点でしょうか。  何せ一番印象に残る活躍が、携帯電話で警察のデータベースから情報収集するという、刑事なら誰でも出来そうな事だったりするのだから、何とも寂しい限り。  ラスボスとなる殺し屋を撃ってスタローンを救ってみせる場面も、あるにはあるのですが、正直そこに関しては「元相棒の形見であるナイフを首に突き刺す」という形で、復讐のカタルシスと共に終わらせておいた方が良かったんじゃないか、と思えてしまいました。  途中、クリスチャン・スレーターがアッサリ殺される展開に関しても(まぁ、スレーターだしなぁ……)と、彼を好きなはずの自分ですら納得してしまうような予定調和の中にあるのに、相棒の刑事は心底から吃驚して「何故殺した?」と動揺していたりするものだから、ちょっと感情移入出来なかったです。  そんな本作の価値を大いに高めているのは、斧を武器とした武骨なラストバトルでしょうね。  相手役となるジェイソン・モモアも雰囲気たっぷりで、非常に重量感のあるアクションとなっています。  ぶつかり合う斧の刃先からではなく、互いの筋肉から火花が飛び散っているかのような迫力には、大いに興奮させられました。  スタローンが相棒の肩を撃って、彼の無実を証明してみせた後に、悠然と立ち去っていく後姿なんかも、これまた素敵。  色々細かな不満はあったりしても、その格好良過ぎる背中を見つめるだけで、もう満足させられちゃうのですよね。  何とも罪作りな背中でありました。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-24 07:31:06)《改行有》

112.  ものすごくうるさくて、ありえないほど近い 《ネタバレ》  愛する肉親の死と向き合って、それを乗り越えていくまでを描いた成長譚。  主人公の少年にアスペルガー症候群の兆候があると判明した瞬間、それまでの彼の言動に納得させられた一方で(じゃあ母親が放任主義を取っているのは不自然じゃないか?)との疑念が湧いていたのですが、それを終盤にて吹き飛ばしてくれる脚本が見事でしたね。  「あのビルにいたのが、ママなら良かった」などの痛烈な台詞が盛り込まれていただけに、最後は母子が和解出来た事に、心底から安堵させられました。  ナイーブな少年を主役とした映画という事で、何処か既視感のある作風だなと思っていたのですが「リトル・ダンサー」と同じ監督さんだと知って納得。  エキセントリックな表現が散見される中、作品全体に不思議な上品さが漂っている辺りなんかも共通していましたね。  上述のように「本当は息子を見放していた訳ではなく、ずっと見守っていたのだ」と分かる母親の件は、凄く良かったのですが、その分、途中で離脱する形となった祖父の扱いには不満も残ります。  また、ラストシーンに関しても、主人公がブランコから飛ぶ姿で終わるのかと思いきや、父親に言われた通りに「ジャンプはしない」形で終わった点に関しても、どこか興醒めするものがありましたね。 (子役に実際に飛ばせたりしたら危ないので、作中で父親に「飛ぶ必要は無い」と言わせたのではないか?)  なんていう疑念が頭に浮かんで来てしまい、最後の最後で現実に引き戻されてしまった形。  勿論、観客である自分の疑い深さが悪いだけなのですが「飛ばなくていい理由」が「危険だから」というのは、如何にも寂しいのですよね。  それならば父親が飛んでみせる必要は無かったと思うし「飛んだ瞬間、鳥になった気がした」という台詞も不要。  飛ばずにブランコを漕ぐだけで父親と同じ気分を味わうというエンディングは、中途半端に思えてしまいます。  主人公がブランコに乗った時点で終わらせるなり、揺れるブランコの音と着地の音だけで飛んでみせた事を表現するなりしてもらった方が、好みだったかも。  作中で嘘をつく度に回数を数えてみせたり、父親の死を太陽の消失に喩えてみせたりする主人公の姿は、とても良かったですね。  純真で、それゆえに何処か大袈裟で、他者に理解される事を無意識に拒んでみせているかのような、少年らしい魅力が感じられました。  世の中には、主演の少女を観賞して愛でる為の映画も存在しますが、それと同じような楽しみ方も出来る映画かと思う次第です。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-23 12:10:41)(良:1票) 《改行有》

113.  ホーボー・ウィズ・ショットガン 《ネタバレ》  ショットガンという武器は好きです。  映画に登場するありとあらゆる武器の中で、どれか一種類を選べと言われたら、数多の非現実的な武器を押し退けて、ショットガンを選んでしまいそうなくらいに好き。  そんな魅惑の武器を引っ提げて、ルトガー・ハウアーが大暴れしてくれるというだけでも満足させられる一品ですね。  主人公が芝刈り機という心の癒しではなく、ショットガンという武器を選んだ気持ちも、実に良く分かる。  やたらと血飛沫が飛び散ったり、敵が本当に胸糞悪い悪党だったり、ラストが尻切れ蜻蛉に思えたりする辺りは、如何にもグラインドハウス的なノリで、少々苦手だったりもしたのですが、そんな不快感も吹き飛ばす程の勢いがありました。  冒頭、穏やかで牧歌的な風景と音楽から始まって、主人公が無法都市へと迷い込み、残虐な私刑現場を目にするという流れの早さ、急転直下っぷりには呆気に取られましたが、どこかそれが突き抜けていて、気持ち良いんですよね。  プラスの感情とマイナスの感情、両方を刺激してくれる作風なのですが、ギリギリで前者の方が上回っているというバランス。  例えば、中盤にて悪役がスクールバスをジャックし、火炎放射器で子供達を焼き殺す場面なんかは、この映画にしては珍しく直接的な殺害シーンを描いていない。  それが中途半端で格好悪いというか(何だよ、結局子供には遠慮するのかよ)という白けた想いに繋がる面も、あるにはあるのですが、やっぱり観客を心底から不快にさせない為には、そうするのが正解だったのだろうと思えます。  何にも考えずに好き勝手に撮ったように見えても、そういった見極めというか、匙加減が、きちんと出来ている印象ですね。  終盤にてヒロインが行う 「浮浪者はホームレスでは無い。ストリートをホームとしているのだから、彼らにはホームを掃除する権利がある」  という演説も、妙に説得力が感じられたりして、印象深い。  穿った見方をすれば、銃による自衛を積極的に肯定している、如何にも米国的な作品だと定義付ける事も、可能だとは思います。  でも、それよりは単なる娯楽作品として観賞し、素直に楽しんだ方が、ずっとお得だと思えるような映画でありました。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-22 07:35:14)《改行有》

114.  ファーナス/訣別の朝 《ネタバレ》  クリスチャン・ベールが髭を蓄えた姿に、最初は違和感も覚えたのですが、すぐに慣れる事が出来て、一安心。  これはこれでワイルドな魅力があって良いんじゃないかと思えましたね。  特にお気に入りなのは「弟を思いやって、密かに借金を肩代わりしてみせる場面」と「別れた恋人の妊娠を祝福してみせる場面」の二つ。  主人公の優しさ、人の良さ、利己的になれない善人ゆえのもどかしさなどを丁寧に演じられており、相変わらず素晴らしい役者さんだなと、再認識させられました。  映画の内容はというと、往年のアメリカン・ニューシネマを彷彿とさせる作りとなっており、全体的に陰鬱な雰囲気が漂っているのが特徴。  鹿狩りが印象的に描かれている点などは「ディア・ハンター」へのオマージュではないかとも思わされましたね。  脇を固める俳優陣も非常に豪華であり、彼らの演技合戦を眺めているだけでも楽しかったです。  ただ、冒頭にてウディ・ハレルソン演じる悪役が、北村龍平監督の「ミッドナイト・ミート・トレイン」を観賞中に喧嘩を始めるシーンの意味は、少し分かり難くて困惑しました。  後にキーパーソンとなるキャラクターを、事前に紹介しておく事が目的だったのでしょうか。  上映作品のチョイスに関しても引っ掛かるものがあり、ともすれば映画がつまらないせいで作中人物が退屈して暴れ出したのかと邪推出来たりもするのですが……  まぁ、監督さんがあの映画を好きだから選んだのだろうなと、好意的に解釈したいところです。  基本的なストーリーラインとしては、弟を殺された兄が復讐する形となっているのですが、どうもそれだけでないような印象も受けましたね。  それというのも、主人公の境遇が余りにも悲惨過ぎて、弟の死さえもがその「不幸な要素」の中の一つにしか思えなかったのです。  老後は病に侵される事が約束されているような製鉄所での仕事。  交通事故によって人を死なせてしまった罪悪感。  刑務所で暴力に晒される日々。  愛する女性との別れ。  父親の病死。  これらの事件が次々に起こり、主人公は鬱憤を溜め込んでいた訳なのだから、弟の死はそれを爆発させた引鉄に過ぎなかったのではないかな、と。  勿論「数々の不幸に対しても感情を露わにしなかった主人公が、弟の死に対してだけは本気で怒った」訳なのだから、それだけ弟を愛していたのだと解釈する事も可能だとは思います。  けれど、その場合はラストにて悪役に「お前の弟はタフだった」と言わせた事に、疑問符が残るのです。  本当に弟への愛情だけが動機であったのならば、そんな弟の凄さを認めてもらった事に対し、主人公のリアクションを描いて然るべきだと思うのですが、彼は超然とした態度のまま相手を殺してしまう。  そして、復讐を止めようとした保安官が、主人公の元カノを妊娠させた男であるとなると……  一連の行いには「保安官への当てつけ」という意図もあったんじゃないかと、そんな風に感じちゃいました。  単なる復讐譚としての映画であれば、ラストシーンの主人公は満足感や達成感を抱いていてもおかしくないのに、その顔に浮かぶのは、どちらかといえば「やってしまった」「これで終わった」という諦観の念。  長く、深く吐息をつく姿には、未来を捨て去った人間だけが得られる、一種の解放感のようなものが漂っていたようにも思えましたね  積み重なった悲劇が更なる悲劇に繋がるという、一種の悲惨美。  そして、全てを台無しにしてしまったからこそ得られる、後ろ向きなカタルシスを描いた映画であるように感じられました。[DVD(字幕)] 6点(2016-06-19 04:21:51)《改行有》

115.  探検隊の栄光 《ネタバレ》  あらすじを知って「これは絶対に面白いだろう!」と意気込んで観賞したのですが……何とも判断に困る代物でした。  まず、決して嫌いな作品ではないです。  むしろ好きな映画と言えそう。  コンセプトも良かったと思うし、主演の藤原竜也も熱演してくれていました。  全編に亘って漂う「真面目に馬鹿をやっている」感は、正に望んでいた通りの作風。  それでも語る際に言葉を濁らせてしまうというか、胸を張って好きだと言えないようなもどかしさがありますね。  理由を分析してみたのですが、こういった作品の場合、映画の中における「現実」と、劇中カメラが映し出す「虚構」とに、もっとギャップが必要だったと思うのです。  例えば主人公がワニと格闘するシーンは、現実ではショボいのに、カメラ越しの映像では意外と本物っぽく見える……という視覚的なバランスにして欲しかったなぁ、と。  それはピラニアが食い散らかした人骨も然り、作り物のヤーガも然り、ですね。  本作の場合、現実と虚構に明確な差が窺えない為「人々を楽しませる為に壮大な嘘をついている」という主人公達の恰好良さが、今一つ伝わってこないように感じられました。  中盤に主人公が行う「俺達が作っている番組は無意味なんかじゃない」という演説についても、長年こういった番組に携わっている立場の者ではなく、今回が初参加の人間が言う事なので、今一つ重みを感じられなかったのも難点。  このシーンは普段いい加減な言動の監督さん辺りに言わせて、それに感銘を受けて主人公も本気になる流れでも良かった気がします。  そんな風に不満点も多い品なのですが、眩しいような魅力が備わっているのも確かですね。  序盤、ゴミの不法投棄に怒っているだけのオジサンを「ヤーガの恐ろしさを身振り手振りで伝えてみせる村人」という設定にして、勝手にアテレコしてみせる場面は、本作で一番の笑い所かと。  「やらせ」を完遂しようとするスタッフに対し、大自然が嘲笑うかのように、あるいはご褒美を与えてあげるかのように「本物のヤーガ」がチラリと姿を見せる展開なんかも、ニヤリとさせられました。  終盤に遭遇する反政府ゲリラ達と絆を育む事となり、別れの際には互いに友情が生まれていたというオチも、凄く良かったと思います。  ヤーガが実在したという衝撃よりも、こちらの「現地人と心を通わせ合った事だけは本当だった」という場面の方が、じんわり胸に沁みるものがありました。  主演の藤原竜也に関しては、元々好きな俳優さんだったのですが、こういった映画でも頑張っている姿を見ると、ますます応援したくなりますね。  本人は続編も希望しているとの事なので、楽しみに待ちたいものです。[DVD(邦画)] 6点(2016-06-07 20:29:25)(良:2票) 《改行有》

116.  スティーヴ・オースティン 復讐者<OV> 《ネタバレ》  主人公にスティーヴ・オースティン、悪役にダニー・トレホを配すれば、それだけで一本の映画が出来上がる事を証明してみせたような作品ですね。  特に終盤の殴り合いは、両者のファンならば必見かと。  ストーリーに関しては、ヒロインが主人公を庇ってくれる理由が今一つ分からない事など、気になる点も多いのですが、そういった諸々に対してツッコミを入れながら楽しむ事も可能な作品だと思います。  やたらと爆発シーンが派手だったりもして、作り手側の「どうぞ楽しんで下さい」というサービス精神が窺える為、欠点があっても憎めない。  復讐を遂げた主人公が、車に乗って町を去っていくラストシーンは、素直に格好良いなぁと感じられました。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-06 03:43:14)《改行有》

117.  ワン・デイ 23年のラブストーリー 《ネタバレ》  何シーズンにも亘って描かれるTVドラマを総集編として映画化したもの……という印象を受けました。  デクスターの母親や、エマの「小説家志望」設定など、尺が足りなくて描き切れなかったと思える要素が多く、もっと長めの上映時間が欲しかったところ。  毎年の七月十五日を舞台としたラブストーリーという発想は、とても面白いと思います。  けれど、それによって互いの感情が地続きになっていないというか「ある七月十五日に仲が進展したかと思ったら、次の七月十五日にはもう曖昧な関係に戻っている」という、数分毎に一種のリセットボタンが押されているかのような印象を受けてしまったのが残念でしたね。  「とうとう二人が結ばれた夜」「突然の彼女の死」などのイベントが発生しても、その前後が直接描かれていないのが、非常にもどかしい。  こういった斬新な設定は歓迎したいところなのですが、本作に関しては「普通の時間進行で観てみたかったな」と、ついつい思ってしまいました。  アン・ハサウェイは好きな女優さんなので、彼女と二人で旅行する1992年の場面なんかは、胸がときめくものがありましたね。  この映画を観た人達と「どの年の七月十五日が一番好き?」という話題で盛り上がれたりもしそうで、そう考えると、やはり素敵な設定なのかなとも思えてきます。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-05 15:51:55)《改行有》

118.  エベレスト 3D 《ネタバレ》  「実話もの」であるのだから、最後は何だかんだで主人公は助かるのだろうな……と考えながら観賞していたもので、まさかの展開には本当に驚かされました。  全滅では無かった事が「救い」を感じさせてくれますが、やはりコレはハッピーエンドとは言い難いでしょうね。  雪原に倒れ込んだままの死体の描写や、凍傷の表現なども衝撃的で、中々頭から離れない。  観賞後は、非常に重苦しい気分を味わう事となりました。  中盤にて登頂に成功したシーンで盛り上げて、その後に遭難してしまうという展開の緩急などは、映画としての巧みさもを感じさせてくれます。  その一方で「実話だから仕方ない」とばかりに、ベックのキャンプ地への生還に明確な理由付けが窺えない辺りは、気になってしまいましたね。  実話を題材にしていたとしても、映画として観る以上「何故、彼は助かったのか?」という根拠を求めてしまう訳で、それが明かされないまま結末を迎えた事は、どうにも消化不良に思えてなりませんでした。  物語ではなく、再現映像による一種のドキュメンタリーとして観賞するのが正しい品なのかも知れません。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-05 01:11:31)《改行有》

119.  ブロークンシティ 《ネタバレ》  マーク・ウォールバーグとラッセル・クロウの共演という事で、楽しみにしていた本作。  始まってすぐに 「あれ? これってもしかしてラッセル・クロウは悪役?」  と気付いてしまうような構成だったのは残念でしたが、それを補って余りある魅力的な演技を見せてくれたと思います。  悪役としての貫録もたっぷりだったし、逮捕後の見苦しい捨て台詞も最高。  むしろ主人公よりもオイシイ役だったかも知れません。  「アルコール中毒」「恋人との不仲」に関しては、中盤以降あまり必要性が感じられず、残念でしたね。  むしろコレらの設定がある事によって 「どうせなら逮捕されて刑務所で酒断ちし、彼女とも別れた方がスッキリするんじゃないか」  と思えてしまい、主人公の最後の選択における「自己犠牲」的な意味合いが薄まっているようにも感じられました。    そんな中で癒しとなっているのは、主人公の助手であるケイティの存在。  大物俳優が多い作品の中で、彼女は初めて見る顔だったという事もあってか、とても新鮮な印象を受けましたね。  可愛らしい彼女と、出所後の主人公が無事に再会出来た事を願いたいものです。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-04 16:26:09)(良:1票) 《改行有》

120.  ラブ & ドラッグ 《ネタバレ》  ほほう、バイアグラ販売員の映画なのか……と思っていた序盤から一転、所謂「難病モノ」な内容にシフトする構成には驚かされました。  こういったテーマを描く際、女性側は「余命僅かな不治の病」というパターンが多いのですが、本作においては「病気と闘いながら生きていかなければならない」という形だったのが新鮮でしたね。  彼女を愛するならば、一時の悲劇で済ます訳にはいかない。  パーキンソン病という障害を背負った彼女と、長い「余命」を共に生きて行かなければならない。  徐々に変貌していく彼女を、本当に愛し続けていく事が出来るだろうか?  と問い掛けてくるかのような内容には、大いに考えさせられるものがありました。  ただ、そういった深いテーマが盛り込まれた映画のはずなのに、作風としては非常にライトなノリなのですよね。  このギャップというか、落差をプラスと捉えられるか否かによって、この映画の評価が変わってきそう。  自分としては、それなりに面白かったのですが、今一つハマりきれないものもあったりして、少し残念です。  理由としては、主役二人に対して「病気に負けず頑張って生きて欲しい」と思えるような印象が乏しかった事も挙げられるでしょうか。  主人公の男性は、道徳的に善人とは言い難い軟派男だったりするし、ヒロインも第一印象が余り良くなかったもので、どうしても距離を取って眺める形になってしまった気がします。  とはいえ、二人とも悪人という訳ではないのだし、ハッピーエンドだった事にはホッとさせられましたね。  アン・ハサウェイは好きな女優さんなので、彼女のヌードが飛び出すシーンには、恥ずかしながら興奮したりなんかも。  作中、あまり彼女の病状が進展しない内に「綺麗なまま」映画が終わってしまった件に関しては 「いやいや、そこから先が大変なんでしょう?」  と、納得出来ない気持ちもあるんですが…… 「主人公の強い決意を描いた以上、二人はずっと一緒なのだから、ここから先はあえて描く必要は無いのだ」  という作り手からのメッセージなのだと解釈したいところですね。  元ネタである自伝「涙と笑いの奮闘記 全米セールスNo.1に輝いた"バイアグラ"セールスマン」の作者は、この本はラブストーリーではないと語っているみたいですが、映画の方は立派にラブストーリーとして成立していたと思います。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-01 18:02:52)(良:2票) 《改行有》

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