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プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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101.  モンスター・トーナメント 世界最強怪物決定戦 《ネタバレ》  プロレス映画だなぁ、というのが率直な感想。  一応、ゾンビが肉を食い千切ったり、サイクロプスが目からビームを出したりもする訳ですが、そういった非現実的な描写はオマケという感じで、あくまで「モンスター達にリング上でプロレスをやってもらう」というのが目的だったみたいですね。  基本的な戦い方も、トップロープから飛び掛かったり、ドロップキックをかましたりで、如何にもプロレス的。  それを象徴しているのがウィッチ・ビッチの扱いで、魔術の類は使わずに素手で戦い、ようやく道具を使ったかと思えば包丁だったりして「魔女である必要ないじゃん!」とツッコませてくれます。  試合前にトレーナーから「魔女として虐げられ続けた怒りをぶつけろ」「呪いも黒魔術も全て忘れて戦士になれ」と言われ、素手で戦う特訓を続けてきた訳だから、魔術を使わないのは納得なのですが、それなら包丁も使わないで欲しかったし、何だか中途半端なのですよね。  優勝者となったフランケンシュタインの扱いに関しても同じ事が言えて、彼のストーリーとしては「父と呼び慕っていたイゴール博士が殺されてしまい、その仇であるクロックシャンク大佐と戦う事になる」という流れな訳ですが、その博士が殺された理由も「セコンドであるにも関わらず、乱入してフランケンシュタインを助けるという反則を行ったから」なので「それって博士が悪いのでは?」と思えてしまい、どうも筋が通っていない感じ。  にも拘らずフランケンシュタインが殺された博士に手を伸ばす描写は、如何にも同情を誘うような描き方だし、オマケにフランケンシュタインVS大佐が始まるところで映画が終わってしまうしで、最後まで消化不良。  世界中からモンスターを集めて、誰が一番強いのかリングで決めるという浪漫溢れる設定に関しては、文句無しで好きです。  その馬鹿々々しいノリならではの面白さは伝わってきたし「放送事故」の演出や「ハデス、次はお前だ!」という台詞には、クスッとさせられるものがあったのも確か。  それでも、全体的には退屈に感じる時間の方が長かったので……  多分、もっとプロレスを愛する人こそが観賞すべき映画だったのでしょうね。[DVD(吹替)] 4点(2019-01-01 04:15:08)(良:2票) 《改行有》

102.  アイス・クエイク<TVM> 《ネタバレ》  ポール・ジラー監督作の中では、本作が一番好きです。  脚本にツッコミどころが多いとか、低予算な作りなのを全く隠しきれていないとか、欠点と呼べそうな部分は色々あるけど、長所も同じくらい備わっていると思います。  主人公一家のキャラ造形も非常に自分好みであり、それだけでも大分ハードルが下がっちゃいましたね。  父親と母親は、演者さんのルックスも中身も典型的な「主人公」と「ヒロイン」って感じで、安心して観ていられたし、子供達二人も可愛らしい。  この子達が「まだ幼く、無邪気にパパに懐いている息子」と「思春期を迎え、少し反抗的なお年頃の娘」っていう王道な組み合わせの時点で、もう自分としては白旗を上げちゃうというか、全面的に主人公のパパさんに感情移入しちゃうんですよね。  飼い犬も含め、一家から死者が出る事無くハッピーエンドを迎える辺りも「そうこなくっちゃ!」という感じ。  クリスマス用のツリーという小道具を活用して「無事に助かった」という安堵感だけでなく「当初の目的であるツリーもゲット出来た」という達成感を与えて終わる辺りも、中々上手かったんじゃないかと。  ビジュアル的にも「超低温ガスが地割れから噴き出し、それを浴びた男が凍死してしまう」なんていうシュールな映像があったりして、忘れ難い味がありましたね。  こういったTVMならではの「潤沢な予算のある映画では拝めないような、独特の映像」が見つかるのは、立派な長所だと思います。  プラスティックの瓶に雪を詰めてから、それを懐に仕舞いこみ、体温で溶かして水を作る場面なんかも印象深い。  主人公は冷たいのを我慢して水を作り、それを子供達に飲ませる訳ですが、そんな「自己犠牲」を「子供達の為なら当然の行いだ」とばかりに、サラッと描いちゃうのが良いんですよね。  そんな優しいパパさんだからこそ、ハッピーエンドを迎えても嫌味じゃないし、むしろ祝福したくなる訳なのだから「主人公の優しさ、良い奴っぷり」を示す場面として、非常に価値があったと思います。  欠点も多い為、手放しで絶賛する事は出来ませんが……自分としては「好きな映画」と言える一本でした。[DVD(吹替)] 6点(2018-12-05 21:46:01)(良:1票) 《改行有》

103.  ソルジャーズ・アイランド 《ネタバレ》  この映画、結構好きです。  好きなんだけど……それを差し引いても欠点の多さが気になっちゃいましたね。  金持ち連中が自慢のタネを得る為、節税の為にレジャー感覚で軍隊に参加するという「富豪部隊」の設定は面白いのに、それを活かし切れていない。  例えば冒頭、如何にも「普通の戦争映画っぽい場面」から始まって、それがあんまり面白くなかったりするもんだから、気勢を削がれる形になっているんです。  しかも、後に映画のラスボスとなる相手が冒頭にて主人公に一度倒されていたりするもんだから、緊迫感も失せてしまうという形。  これなら冒頭の部分はカットして、主人公が「富豪部隊」の護衛役に雇われる場面から始めた方が良かったんじゃないかな、って思えます。  主人公が「伝説の軍人」って割には「弾を避ける為に、ジグザグに走って逃げるべき」ってアドバイスを武器商人からされたり、内通者がいると分かっているのに基地を移動させようとしなかったりと、その能力に疑問符が付いてしまう辺りも残念。  物語を面白くする要因なはずの「内通者の正体」に関しても、どうも扱いが下手だった気がしちゃうんですよね。  作中で特にヒントも出していないから「犯人探し」を楽しむ事も出来ないし、犯人のキャラ付けに関しても「嫌味な金持ちその1」という没個性的な代物でしかなかったので「良い奴だと思っていたのに、裏切り者だったのか……」という意外性も無し。  そんな裏切り者を殺す際に「クソ銀行屋め」と言わせたりするのも、如何にもって感じがして、ノリ切れませんでしたね。  この手の「皆もサブプライムローン問題には怒ってるでしょ? だから映画の中で銀行屋を懲らしめておいたよ」というパターンは流石に食傷気味で、ちょっと興醒めしちゃったくらいです。  そんな欠点の多さに比べると、良かった部分を探すのは大変だったりするのですが……その数少ない「良かった部分」が、かなり自分好みなんですよね。  主人公が戦友と交わす会話「国のために戦ったのに報われない」「金のために戦おう」にはグッと来ちゃったし「今はトレーラーハウス暮らしの無精髭な主人公が、実は伝説の軍人だった」って設定も、男の浪漫をくすぐるものがあります。  ナイフを用いての決闘で、敵にトドメを刺すシーンも恰好良く決まっていたし、水上バイク同士を衝突させて爆発させるとか、アクション映画として見栄えの良い場面がしっかり詰まっているのは、文句無しで長所だと思いますね。  ラストシーンにて、花火を打ち上げたり、争いの種となっているレアメタルを海に投げ捨てたり、水鉄砲で子供達と遊んだりしている光景を描き「島を独裁者の手から解放した」喜びを感じさせて終わる辺りも、ハッピーエンド感があって良かったです。  そういった具合に、確かな魅力も秘めている映画であるだけに(ここは、もっとこうすれば良かったのに……)って、歯痒くなっちゃいますね。  せめて「富豪部隊」の面々が善意に目覚めていく流れだけは、もうちょっと丁寧に描いて欲しかったです。  例えば、事前に島民の子供との交流を描き、この子達を救いたいと思って金持ち連中が立ち上がるとか、そういう展開にしておけば、もっと感動出来たろうし、胸を張って「隠れた傑作」と言えた気がします。  「クリスチャン・スレイターが主演で、彼の恰好良い場面がちゃんとある」というだけでも、自分にとっては「良い映画」なのですが……中々他人には薦めにくい一品でありました。[DVD(字幕)] 6点(2018-12-05 21:39:05)《改行有》

104.  もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 《ネタバレ》  高校野球を題材にした映画としては、良く出来ていると思います。  才能はあるけど問題児なエース、苦労性で縁の下の力持ちな正捕手、足だけが取り得の代走屋、少女のように華奢で小柄な遊撃手と、漫画的で分かり易いキャラクターが揃っているし、マネージャー三人も「元気な子」「内気な子」「病弱な子」と色分けされている形。  ブラスバンドの演奏にはテンション上がるものがあるし、九回裏に先頭打者が凡退して悔しがる姿なども、きちんと描いている。  試合前に円陣を組み「程高、勝つぞぉっ!」と皆で叫ぶ場面も、気持ち良かったですね。  投球フォームやら何やらに違和感があるし、ヒロインが重そうに金属バッドを振っているのに「フォンッ」と鋭く空を切る音が聞こえちゃう場面なんかは頂けないけど、まぁ仕方ないかと納得出来る範疇でした。  でも、根本的な問題があって……  そういった「王道な高校野球もの」としての部分は面白い反面「ドラッカーのマネジメントを読んで、それを高校野球に活用する」部分が微妙という、困った事になっているんですよね。  タイトルに関しても偽りありというか、これなら「もし高校野球の女子マネージャーが余命幾ばくもない病気だったら」の方が正確だったんじゃないかと。  そのくらい「病弱な子」の存在感が強く、ヒロインの陰が薄かったように思えます。  作中で行われる「イノベーション」の内容についても、どうにも疑問符が多いんですよね。  「部内でチーム分けを行い、競争意識を高める」「吹奏楽部に演奏を頑張ってもらう」などについては(それ、当たり前の事じゃないの?)と思えちゃうし、ノーバント作戦はともかくノーボール作戦に関しては、ちょっと説得力が足りていなかった気がします。  多分、ノーコンで悩んでいた石井一久が「全球ストライクゾーンに投げろ」と言われてから活躍するようになった逸話を踏まえての事なのでしょうし、エースの慶一郎が150キロ左腕なら可能かも知れませんが、そんな怪物投手という訳じゃないみたいですからね。  もうちょっと「この投手なら、全球ストライクで勝負しても抑えられる」と思えるような場面が欲しかったところ。 ・エースの慶一郎=「病弱なマネージャーと良い雰囲気になる」→「仲間を信頼し、最終回のマウンドを他の選手に託す」 ・キャッチャーの次郎=「ヒロインと良い雰囲気になる」→「病弱なマネージャーの為に本塁打を放つ」 ・遊撃手の祐之助=「エースとの間に確執がある」→「ヒロインの話を参考にしてサヨナラ打を放つ」  という形になっているのも、何だかチグハグに思えましたね。  チーム内で色んな人間関係があるのは結構な事ですが、本作の場合は「エースと遊撃手」の二人「キャッチャーと病弱なマネージャー」の二人というグループに分けた方が自然だった気がします。  そうすれば…… ・「エラーを巡って喧嘩していた慶一郎と祐之助が、和解する」→「慶一郎は仲間を信頼するようになり、マウンドを他の選手に託す」→「その心意気に応える為、祐之助がサヨナラ打を放つ」  ・「次郎は幼馴染である病弱なマネージャーと良い雰囲気になる」→「彼女の為に本塁打を放つ」  となるし、後はヒロイン格を「病弱なマネージャー」ひとりに絞りさえすれば、綺麗に纏まったんじゃないかと。  そんな具合に、不満点も多いんですが「仲間にマウンドを託す場面」と「ベンチに置かれた麦わら帽子に手を触れてから打席に向かい、本塁打を放つ場面」の演出は、凄く好きなんですよね。  同監督の作品「うた魂♪」もそうでしたが「観ていて恥ずかしくなるくらいベタな演出なんだけど、やっぱり良い」と思わせるような魅力がある。  最後にセーフティーバントを敢行し「ノーバント」作戦を破る流れについても「そもそも禁止されたのは自己犠牲を目的としたバントなので、問題無い」あるいは「拘りを捨ててでも勝ちたいという強い気持ちがある」と解釈出来て、良かったと思います。  後は……「今年も一回戦負けなので、背番号が全然汚れない」というマネージャーの台詞があったので、決勝戦では「汚れた背番号を誇らしげに見つめるマネージャー」という場面に繋がるのかと思ったら、全然そんな事は無くて拍子抜けしちゃったとか、気になるのはそれくらいですね。  エンディング曲の歌詞は野球と全然関係無かったけど、まぁそれは「熱闘甲子園」などにも言える事だし、明るく爽やかな青春ソングなので、違和感も無かったです。  この後の程高野球部が、甲子園でどこまで勝ち進むのかも観てみたくなるような……劇中のチームに愛着が湧いてくる、良い映画でした。[DVD(邦画)] 7点(2018-12-03 07:32:16)(良:1票) 《改行有》

105.  コップ・カー 《ネタバレ》  観終わった後に上映時間を確認し(えっ、88分しかなかったの?)と思ってしまった事が印象深い。  体感としては二時間越えの映画に思えた訳ですが、中身が濃かったというよりも「一時間以内に片付けられるストーリーを、無理矢理引き延ばした」感があったりしたのが辛いですね。  とにかく演出の「間」が長くって(早く次の展開に移ってくれないかなぁ……)って、じれったい気持ちになる場面が多かったです。  それが最高潮に達するのが、ケヴィン・ベーコン演じる警官が車泥棒する場面であり、ここは本当に観ていてキツかったですね。  窓の隙間から靴紐の輪っかを通して、それで車内のロックを解除しようとする流れなんだけど、観客を焦らすように繰り返し失敗したりするもんだから、やりきれない気分になっちゃいました。  それだけ時間を掛けた訳だから、成功の際の達成感も大きくなる……って訳でも無くて、成功の寸前にカメラが切り替わり、次の瞬間には靴紐の輪っかが不自然に小さくなっていたりしたもんだから(あっ、ズルしたな)と思えて、作り手の不誠実さに幻滅しちゃったくらい。  この場面に関しては、もうちょっと上手く撮って欲しかったです。  少年達が家出した理由を「義理の父親」「お婆ちゃん子」などの断片的な情報だけで片付けたり、警官達が具体的にどういう理由で殺し合ったのかが謎だったり、終いには負傷した少年の生死も曖昧なままエンディングを迎えたりと、やたら説明不足なのも気になりますね。  この辺りは「無駄な説明を削ぎ落とした、スタイリッシュな話作り」「観客の想像力に訴えかけ、余韻を残す終わり方」と褒める事も出来そうなんだけど、自分としては「投げっぱなし」って印象の方が強かったです。  ……とはいえ、良かった部分も色々あって、一概に「嫌いな映画」とも言えないんだから、全くもって困り物。  主人公となる少年二人が「悪ガキなんだけど、愛嬌があって憎めないタイプ」だった訳だけど、この映画も丁度そんな感じだったりするんですよね。  自分としては「間延びした演出」「説明不足なストーリー」は明らかに欠点だと思うんですが、それを補うだけの長所も備え持っているという形。  何と言っても「男の子達がパトカーを手に入れて、好き勝手に乗り回す」という楽しさを、きちんと描いている点が良かったと思います。  映画でこういう展開があっても、すぐに大人に見つかって止められたりするものなんですが、本作はたっぷりと尺を取って「子供がパトカーを使って遊びまくる」場面を描いているんですよね。  何せ二人きりの「子供の時間」が破られ、トランクの中から大人の男が出てくるのが88分中48分を過ぎてからというんだから、凄い話です。  作り手側にとっても、後半の銃撃戦やら何やらは余戯に過ぎず「子供がパトカーで遊ぶ」場面の方をメインにしたかったんじゃないかなぁ、と思えてきます。  少々ブラックな内容ではありますが、ある意味では「子供の夢を叶えてくれる映画」と呼ぶ事も出来そうな感じですね。  敵役のはずの警官に関しても、演者であるベーコンの力量ゆえか、妙な魅力があったりして、これまた憎めない。  身の破滅を悟り、自宅に隠しておいた金塊やら何やらを掻き集めて逃げ出そうとする件なんて、特に好きですね。  この場面では、つい彼を応援しちゃって、無事に逃げ延びて欲しいなと思わされたくらいです。  中盤「そんな風に銃で遊んでいたら危ないぞ」と観客に思わせておき、終盤にて「それみた事か」とばかりに、少年達の片方が弾を受けて負傷する展開になるのも、上手い伏線回収の仕方でしたね。  ラストシーンに関しても「友達を救おうとしてパトカーを運転し、それまで出せなかった速度を出してみせる」「大人に背を向けて家出した少年が、無線に応答して、今後は大人と話し合っていく未来を示唆する」といった感じの演出が行われており、投げっぱなしな終わり方ではありますが「独特の味わい深さ」のようなものは、確かにあったかと。  総評としては、才能ある若手監督の作品に相応しい「粗削りで欠点も目立つが、光るものを秘めた映画」って感じになるでしょうか。  正直「楽しかった」「面白かった」って印象は然程残っていないんですが、忘れ難い魅力を秘めた、記憶に残る一品ではあったと思います。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2018-12-02 10:21:07)《改行有》

106.  恋愛だけじゃダメかしら? 《ネタバレ》  妊娠を主題としている為か、序盤にて嘔吐ネタが繰り返される事には、少々ゲンナリ。  演出も冴えていないというか、正直ちょっと好みじゃないなと感じる部分もあったりしましたね。  でも、総合的には良い映画だったと思います。  養子を迎えようとする夫婦、流産を経験するカップルなど、群像劇ならではの個性が感じられましたし、それによって様々なエピソード、様々なメッセージを描く事に成功しているのですよね。  妊娠による体調不良を「体内で奇跡が起きてる証拠」と美化する一方で「妊娠は最悪」「ニキビも出来る。歩けばアソコが痛む。オナラも出ちゃう」と、生々しく表現したりもしている。  基本的には「子を産むことの素晴らしさ」を声高に主張している映画なのだけど、そういう現実的な側面もキチンと描いている為、あまり偏った印象は受けず、素直に楽しむ事が出来たように思えます。  くしゃみと同時に軽く出産しちゃう女性もいれば、激痛に叫びながら出産する女性もいるという対比も面白かったし「血の繋がらぬ子を養子として迎え入れる場面」を、出産に負けず劣らず感動的に描いていたのも、何だか嬉しかったです。  劇中の人物同様に、世の中には子供を産みたくても産めない女性が存在する訳で、そういった人々への優しさというか「出産を経ずとも人は母親になれる、父親になれる」というメッセージが伝わって来て、とても温かい気持ちに浸れました。  ラストにて、子育てパパ軍団が、冷たい缶ビールをベビーベッドの下から取り出し、仲間にパスするシーンなんかも、妙にお気に入り。  筋トレマニアで、常に公園を走って身体を鍛え上げ、派手に女遊びしていた独身男がパパになると同時に「もう走るな、歩くんだ」と男友達から諭される件も、色々と象徴的に思えて良かったです。  そんな彼が、当初はタッチを拒んでいた相手と、仲良くタッチを交わして「パパ」の仲間入りを果たして映画が終わるという構成も、凄く後味爽やか。  大人達が主役であり、子供にスポットが当てられていない為、肝心の「子供を持つ喜び」が伝わってこない点など、色々と気になる部分もあるのですが「あぁ、良いなぁ……」と思える場面の方が多くて、帳消しにしてくれたという感じですね。  こういう映画、嫌いじゃないです。[DVD(字幕)] 6点(2018-09-27 19:55:58)(良:1票) 《改行有》

107.  ジャックとジル 《ネタバレ》  映画に関するジンクスの一つとして「ゴールデンラズベリー賞を取った映画は、意外と面白い」というものがあるのですが、これもそんな一本。  とはいえ「傑作」と断言出来る程ではなく「意外と面白い」の範疇に止まってしまうのが寂しいですね。  下品なギャグが多いし「おたのしみ箱」やアル・パチーノ(本人役)といったキャラの言動が不自然に感じられるしで、もうちょっと脚本を煮詰めてから映画化した方が良かったんじゃないかなーと思ってしまうのも事実です。  でも、ちゃんと面白かった部分もあって、自分としては結構満足。  マッチョな男性陣が苦労して上げていたバーベルを、ジルが簡単に持ち上げちゃう件なんかは、ベタだけど微笑ましいギャグだったし、本物のジルを女装したジャックと勘違いして胸を触った男が、豪快に殴られちゃう場面なんかも良い。  養子の少年も良い味出していたし、ドン・キホーテに扮したパチーノが風車ならぬ天井のファンを怪物と勘違いして、戦いを挑むシーンも好きですね。  最後は家族愛に着地して、ハッピーエンドで終わってくれるし、後味も爽やか。 「そりゃあ好きだけど、離れている時はもっと好き」 「君を愛しているのは間違いないが、死の間際に気付く愛だ」  等々、心に残る台詞が散りばめられている辺りも良かったです。  それと、自分はクルーズ旅行の描写がお気に入りだったので、あそこをもっと尺を取ってやって欲しかったという想いもあるんですが……まぁ、コレは我が侭というものでしょうか。  欠点を論ったらいくらでもあるんだけど、なんとなく本作に関しては「好きな部分」をメインに語りたくなる。  憎みきれない、愛嬌のある映画でした。[DVD(吹替)] 6点(2018-09-26 20:20:29)(良:1票) 《改行有》

108.  パレード 《ネタバレ》  これは久々に「怖い」と思わされた映画です。  正直に言うと、終盤までは退屈で仕方ない。  夜の遊園地にて、女性が子供時代のトラウマを語るシーンの演出なんかはベタベタで、話の途中で相手の男が目を瞑っているのに気が付き「何だ、寝ちゃったのか」と呟く件なんて、もう観ているコッチが恥ずかしくなるくらい。  だた、このシーンにて「途中で寝ちゃった」はずの男性が、そっと目を開き、寝た振りをしていた事が明かされるのですよね。  (出会って間もないのに、いきなりヘビーな話されて困ったから、聞かなかった事にしたのかな……)と、軽く受け流していたのですが、まさかそれがラストの伏線とは、恐れ入りました。  連続通り魔の犯人が、ルームシェアしている若者達四人の中にいる事は、大体予見出来る範囲内だと思います。  その正体が、藤原竜也演じる直輝であったという点についても「一人だけ夜中に出歩いていて、アリバイが無い」という事を鑑みれば、意外とは言えない。  衝撃的な犯行シーンに差し掛かっても、観客であるこちらとしては(まぁ、そうだろうなぁ)という感じで、然程驚きは無かったのですが、そんな風に心が緩んだ隙を突くようにして、映画は「本当に怖い」ラストシーンに流れ込むのです。  偶々犯行を目撃してしまった、新たな入居者のサトル。  諦めきった表情で「警察に突き出される事」「自分を慕っていた同居人の皆にも犯行がバレてしまう事」を覚悟する直輝に対し、サトルは事も無げに、こう言い放ってみせる。 「もう、みんな知ってんじゃないの?」  この一言にはもう、完全に直輝と心境がシンクロしてしまって、心底から吃驚。  そして、何故知っているのに止めなかったのか、その理由が既に作中で明かされていた事に気付いて、二度驚く訳です。  恐らく彼らは「重い話を聞く事」が「面倒臭い」のだと思います。  だからトラウマを抱えた女性を相手にしても、寝た振りをしてやり過ごす。  同情したり、慰めたり、励ましたり、怒ったり、一緒に泣いてみせたりするのは、疲れるし、やりたくない。  同居人が殺人犯じゃないかと勘付いても、それが確定してしまったら面倒なので、踏み込まない。  観客が知りたいと願う「犯行の動機」に関しても、一切詮索したりはしない。  自分にとって「都合の良い人物」「皆の頼れる最年長者」でありさえすればいいという、怠惰な利己主義。  作中で長い時間を掛けて、彼らは「問題を抱えているけど、基本的には良い奴ら」として描かれていただけに、その衝撃は凄かったですね。  そんな人間関係の中で、直輝だけが一方的に「重い話を打ち明けられる事」が多い。  しかし、直輝にとっての悩みである「自分が殺人犯である事」は、誰にも打ち明けられない。  信頼出来る人格者として扱われている為、仲間から打ち明けられた秘密を、他の仲間に話す事も無い。  あまりにも便利な相談役。  だからこそ、他の住人にとっては直輝が必要だったのでしょう。  ラストシーンにて、泣き崩れる直輝に「皆で旅行に出掛けよう」と誘う一同の、冷たい表情。  そこからは、親しみに見せかけた究極の無関心というか「大切なのはアンタがどういう人間なのかじゃなくて、アンタが私の仲間として役に立ってくれるかどうかだ」という要求が窺い知れて、本当に背筋が寒くなりました。  日常にて何気なく使われる「空気を読めよ」という言葉なんかも、本質的には彼らの要求と同じではないかと思えたりして、何ともやりきれない。  全編に亘って楽しめる内容とは言い難いのですが、とにかくラストの衝撃に関しては、折り紙付き。  こういった事が起こり得るからこそ、途中まで退屈な映画でも、最後まで諦めずに観なきゃいけないんだな……と、再確認させてくれました。[DVD(邦画)] 6点(2018-09-25 14:39:50)(良:1票) 《改行有》

109.  矢島美容室 THE MOVIE ~夢をつかまネバダ~ 《ネタバレ》  新年一発目の映画という事で、楽しい気分に浸れそうな作品をチョイス。  元々とんねるずが大好きという事も相まってか、充分に満足のいく内容でしたね。  これまでレビューしてきたタイトルの中には「クオリティが高いのは分かるけど、どうも好きになれない」というタイプの品もありましたが、これはその逆をいく一品。  どう見ても安っぽい「アニメ的な世界観を実写で大真面目に演じてしまう作品」のはずなのに、それが妙に面白かったりしたんです。  理由は色々あると思うのですが、その一つとして「内輪ネタ」が挙げられて「細かすぎて伝わらないモノマネ」でお馴染みの方が端役が出演していたり、ノリダーとチビノリダーとのやり取りが描かれていたりするのが、元ネタを知っている身としては、もう嬉しくって仕方なかったのですよね。  こういう「分かる人には分かるネタ」って、興醒めになったり、疎外感を抱かされたりする事も多いのでしょうが、自分としては正にドストライク。  「間違いなく、この映画の世界観を共有している」「観ている自分も、この映画の仲間なんだ」という感覚に浸らせてくれました。  全体的にはコント調の作風の為、ちょっと中弛みするというか、九十八分は長過ぎたようにも思えましたが、終盤にて「ソフトボールの試合」という山場をキチンと用意してくれている為、全体としては綺麗に纏まっていたんじゃないかな、と思えます。  「友情より恋愛が大事」「だって、恋愛はすぐに壊れちゃう。大切にしなきゃ」「友情は永遠。滅多な事じゃ壊れない」という台詞の数々も、非常に好みでしたね。  燃えるボールを燃えるバットで打ち返すというベタな演出も良かったし、最後は元気良く皆で唄って、笑顔で終わるのも気持ち良い。  父親との再会は描かれなかった事や「この借りはパート2で必ず返す」という台詞など、続編が存在しないのが寂しくなってしまう部分もありましたが……まぁ、それらも「ネタ、ギャグの一種」と受け止められるような大らかさ、笑い飛ばせるような馬鹿々々しさが備わっていたのではないかな、と。  期待通りの、楽しい映画でありました。[DVD(邦画)] 7点(2018-09-15 04:51:40)(良:1票) 《改行有》

110.  SAFE/セイフ 《ネタバレ》  「パソコンは何を記憶させても探り出されてしまう」という台詞が印象的。  ハッキングやら何やらを警戒する余り「大切な情報は、記憶力の良い人間に憶えさせておくのが一番安心」という時代錯誤な結論に行き着くのが、実に皮肉が効いていましたね。  そんな「記憶力の良い人間」が幼い少女というのは非常に漫画的だけど、あんまり美少女過ぎない子役を起用しているのが、適度なリアリティを生み出していたと思います。  ちょっと目が細過ぎて、典型的な「欧米人から見たアジア人」ってルックスの子なんですけど、笑うと愛嬌があって可愛らしいし、映画を観終わる頃にはかなり好きになっていました。  こういったストーリーの映画である以上、子供の事を「守ってあげたくなるような存在」として描くのは大切だと思うし、それは成功していたんじゃないかと。  それと、本作は彼女の養父となるチャンを演じるレジー・リーも、凄く良い味を出していましたね。  悪人だし、ボスの命令には逆らえないんだけど、養女のメイの事は彼なりに大切に思っているというバランスが、実に魅力的。  彼がメイに対し「きっといい父親になってみせる」と語り掛け、笑ってみせる場面は、本作の白眉であったように思えます。  不器用ながらも愛情を示して、彼女の為に少しでも「良い人間」になろうとした事が伝わって来て、好きな場面です。  それだけに、その後すぐ彼が殺されてしまう展開になるのがもう、残念で仕方ないんですが……  やはり、この辺りは「一度でも娘を殺そうとした奴が、本当の父親になんかなれる訳が無い」って事なんでしょうか。  「怖いものから、目を背けたりするな」という彼の教えを、メイが守ってみせて「彼とメイが過ごした時間は、無駄じゃなかった」という落としどころになっただけでも、良しとすべきなのかも。  その一方で、ジェイソン・ステイサム演じるルークに関しては「タフガイ」「アウトロー」の王道を行く主人公となっており、安心して観賞する事が出来ましたね。  浮浪者として生活しなければいけない悲壮感、靴を譲った相手すらも「ルークと関わったから」という理由で悪人達に殺されてしまうという「誰とも親しくなれない」という孤独感が、ひしひし伝わって来て(やっぱりステイサムって良い役者さんだなぁ……)と、惚れ惚れさせられました。  ただ、そんなルークがメイを必死に守ろうとする動機が弱いようにも思えて、そこはもっと説得力が欲しかったですね。  自殺を止めるキッカケになってくれた恩返しというなら「たまたま目が合ったお蔭で、思い止まれた」という展開ではなく、もっと積極的にメイが彼の命を救ってみせた展開にしても良かったんじゃないでしょうか。  あるいは、冒頭にて殺されたのが「ルークの妻」ではなく娘だったという事にして、娘と同じ年頃の子だから助けずにはいられなかったとか、そんな形にしても良かった気がします。  一番悪どい存在に思えた中国マフィアのハンおじさんが、結局大したダメージを受けず「尻尾を巻いて中国に帰る」くらいで終わっちゃう事。  そして、黒幕のアレックス刑事とルークとの素手のタイマンが始まるかというところで、メイが銃でアレックスを撃ち、決着を付けちゃう事なんかも、欠点と言えそうですね。  そこは、もっとスッキリする形で〆て欲しかったです。  観賞前に期待していた「ジェイソン・ステイサムの骨太なアクション」は充分に堪能出来たし、ルークとメイが「父娘」ではない「友達」になるハッピーエンドは良かったしで、決して嫌いな映画じゃないんですけどね。  気になる点も多くて「そこそこ満足」くらいの感じで観終わってしまった……  そんな一品でありました。[DVD(字幕)] 6点(2018-07-23 05:31:01)(良:1票) 《改行有》

111.  あしたのジョー(2010) 《ネタバレ》  観賞中「えっ? ウルフ金串戦もやるの?」「力石の死後まで描くの?」と二度吃驚。  おまけに映画オリジナルのエピソードとして「ドヤ街に憎しみを抱く白木葉子」なども追加しているものだから、実にボリューム満点。  それを二時間ほどに纏めてみせて、これ一本だけでもキチンと完結している品に仕上げた手腕は見事だと思うのですが、やはり駆け足な印象も受けてしまい、評価の難しいところですね。  自分としては、如何に魅力的だとしても「ダブル&トリプルクロスカウンター」の存在共々ウルフ戦はカットし、もっとジョーと力石に焦点を合わせた作りの方が良かったのでは……と考える次第。  恐らくはアニメ版のリスペクトと思しきスローモーション演出を「力石との初戦」→「ウルフ戦」→「力石との再戦」と立ち続けに見せられる形となっているので、どうしても単調な印象を受けてしまうのですよね。  後述の減量シーンに関しても、もっと尺を取って描き、普段は紳士的に振る舞っていた力石がマナーを無視して果実に齧り付く場面なども再現してくれていたら、更に感動出来たかも。  役者陣に関しては、主役二人の見事な肉体改造っぷりも併せて、ほぼ文句無し。  丹下段平のルックスだけは、あまりにも漫画チックで浮いているような印象は受けましたが、それを打ち消すほどの迫力が力石から感じられましたね。  減量中に我を失い、水を求めて彷徨うシーンなんて「台詞回しは原作漫画の方が詩的で良かったかな……」と頭の片隅では冷静に思っているはずなのに、目線は画面に釘付けという、不思議な感覚を味わう事が出来ました。  特に嬉しかったのが、力石の死因となったであろう「後頭部をロープで強打してしまう場面」が、より印象的になっていた事。  原作漫画では少しインパクトが弱かった気もしただけに(もしかして死ぬんじゃないか?)と初見でも思えるような仕上がりになっているのは衝撃でしたし、それはひとえに、力石を演じた伊勢谷友介の力が大きかったのではないでしょうか。  生きている俳優が「この人は、もうすぐ死んでしまうんだ……」と観客に思い込ませるのは、とても大変な事でしょうが、本作ではそれを見事に成し遂げてみせたように思えます。  終盤にて「ジョーが如何にして力石の死の衝撃から立ち直ったか」を描く尺が足りず、観客の想像に委ねる「空白の一年からの帰還」で済ませてしまったのは非常に残念でしたが、リングの中に力石の幻影が現れる場面は、とても良かったですね。  ここって、一歩間違えれば「ジョーもリングで死なせようとして誘っている死神」としての力石にしか見えなくなってしまうはずなのに、全くそれを感じさせない笑顔で「二人の友情の証としてのボクシング」の魅力、楽しさや面白さを伝えてくれているのです。  力石の死をクライマックスに据える以上、後味の良いハッピーエンドにするのは難しいと思っていただけに、それを裏切ってくれた事が、実に痛快。  原作の最終回におけるジョーの生死は未だに議論の的となっていますが、少なくとも本作におけるジョーはリングで死を迎える事なく、引退後もボクシングに関わりながらドヤ街で生き続けたのではないかな、と思えました。[DVD(邦画)] 6点(2018-06-28 21:37:33)《改行有》

112.  Dearダニー 君へのうた 《ネタバレ》  「ジョン・レノンからの手紙」というと、何だかそれだけを主題にして一本の映画が作れそうな魅力を感じますが、本作に関しては、決して彼からの手紙だけで終わる映画ではありませんでしたね。  手紙は確かに劇的な効果を齎してくれますが、それはあくまでも主人公ダニーの意識を変えて、行動を起こさせてくれたキッカケに過ぎないというバランス。とても好みでした。  それにしてもまぁ、アル・パチーノという人は本当に演技が上手いなぁ、としみじみ実感。  往年のロックスターだが、若い妻は浮気しているし、息子との関係は断絶中。  麻薬も手放せなくて、もう何十年も曲を書かずに、往年のヒット曲「ベイビードール」をツアーで歌い続ける日々を送っている男。  こんな具合に文章で列挙してみれば、幾つもの要素が絡み合った複雑な役柄のはずなのに、非常にシンプルな人間であると感じさせるほど、スッキリと演じきっています。  序盤に、ジョンからの手紙を読んで衝撃を受ける件も良かったですし、妻とその愛人とに別れを告げて、豪邸を後にする姿も、何だか妙に格好良い。  宿泊先のホテルにて、若い従業員達と小粋なジョークを交えた会話を繰り広げたり、お堅い女性従業員を口説いてみせたりする様が、観ているだけで楽しい気分にさせられるのですよね。  確かなスターのオーラを感じます。  終盤にて、苦労の末に完成させた新曲のバラードを歌おうとするも、客に要求されるのはいつもの「ベイビードール」。  迷った末に、寂しげな笑みを浮かべながらも「分かってる。皆が聴きたいのは、この曲だよね」と、望まれた通りの曲を歌い出す姿には、実に深い人間味を感じられました。  この主人公の選択に関しては、作中でハッキリと否定的に描かれており、実際に後になってから、新曲を楽しみにしていた女性従業員に非難されたりもしています。  それでも、何処となく「自分の理想を追い求めるよりも、客が望むものに素直に応えてみせたプロとしての姿」という切なさ、悲しさのようなものを感じさせてくれたのが、パチーノの演技が生み出す深みというものなのかも知れません。  その後の、長年の友人であるマネージャーが「ダニーは凄く良い奴だ」と彼の息子に語り掛けるシーンも素晴らしかったですし、ラストシーンにて、吉報を表すジンクスの「やぁ、トム」という息子の名前を呼びかける台詞で終わる構成も、凄く気持ちが良い。  実話を元にしたがゆえか、色々と煮え切らない部分もあり、主人公が一度は辞めたはずの麻薬に再び手を染める展開など、少し劇中との距離を感じてしまう瞬間もありましたが、総じて満足度高めの時間を過ごせましたね。  冷たい現実を内包しながらも、なお温かい映画だと思います。[DVD(吹替)] 7点(2018-06-21 18:47:21)《改行有》

113.  みんな私に恋をする 《ネタバレ》  大好きな俳優のダックス・シェパードとジョン・ヘダーの共演作という事で、これはチェックしておかねばと手に取った一本。  いざ観賞してみると、二人以外にも見知った顔が色々と出演しており、嬉しかったですね。  好きな俳優さん達が、撃たれたり殺されたりする心配も無く、平和なラブコメ映画の中で楽しそうに笑っているのだから、それだけでも、ある程度は満足。  軽快な音楽に「画面の切り替え」によるギャグ演出なども上手く決まっており、誰が見ても最低限の満足度は得られるタイプの映画じゃないかな、と思いました。  魔法によってヒロインに恋する五人組の中で、ルックスでは一番見劣りする中年禿げ親父が、中身は意外と男前というギャップも面白い。  ジョン・ヘダー演じる奇人変人マジシャンも、間違いなく一番オイシイ役どころでしたね。  彼だけが唯一特定の相手が見つからなかった為(=禿げ親父はヒロインの上司と、モデルと画家はそれぞれ同性で結ばれる事が示唆されている)ちょっと可哀想だったけど、自分としては「ハートを投げたお嬢さん」辺りと、ちゃっかり後日談で結ばれているのを期待したいです。  小さな車で渋滞をすり抜けていくシーンも、小気味良い快感がありましたし、マジックでドアを開けてみせる件なんかは「嘘っ!?」と声が漏れちゃうくらいの意外性があって、かなり好き。  魔法が解けて、四人の男達がヒロインに別れを告げる際に、恨み言は口にせず「コインのお蔭で、恋が出来て良かった」と満足気な様子だったのも、凄く良かったです。  ヒロインのせいで色々迷惑を被った形な訳だから、ちょっと女性に都合が良過ぎると感じないでもないけれど、ここは「失恋した男の恰好良さ」みたいなのも感じられるし、良い落としどころだったんじゃないかと。  ラストに皆で集まり、楽しく踊ってハッピーエンドというのも、気持ち良い終わり方でしたね。  で、不満点としては……彼氏を運命の相手と感じたキッカケが「借金を調べる間もない」という台詞なのは、ちょっと浪漫に欠けるかな、という事。  それと、個性豊かな男性陣が、それぞれペアルックやら壁画やらでアピールする様が破天荒で面白かっただけに、本命の彼氏との恋が育まれていくパートは、真面目で地味で、観ていて面白くなかったとか、その辺りが挙げられるでしょうか。  結果的に、映画の中では一番つまんなくて魅力に欠ける男をヒロインが選んだように思え、どうも二人の仲を祝福する気になれなかったんですよね。  かなり早い段階で(あぁ、この男と結ばれるんだな)と分かる作りになっている為、五人いる男性陣の中で、ヒロインは誰を選ぶのかってドキドキが全く無いのも、ちょっと勿体無い。  ポーカー云々の台詞により、チップのコインの持ち主が神父である事は大体分かるように出来ていると思うし、結婚式でも神父の言動が怪し過ぎるしで、その辺りの種明かしの仕方も下手だった気がします。  (いや、神父のコインなんだろ? もう分かってるよ……)と、観ていてじれったくなるし、最後の最後で「助手のフアン」が出てきて終わりというのも(だから何?)と思えちゃうしで、オチが弱い印象です。  後、これは自分がダックス・シェパード好きだからこそ気になる部分かも知れませんが、五人組の中で、彼が演じるモデルの扱いだけが極端に悪いというのも、如何なものかと。  他の面々は「移動する事を提案」「車を運転」「ドアを開いてみせる」と、クライマックスで活躍しているのに、彼だけ活躍しておらず、別にいなくても良かった形になっているんですよね。  「モデルやるくらいルックスが良くても、どれだけ筋肉を鍛えていても、恋愛では何の役にも立たない」というメッセージなのかも知れませんが、ちょっと受け入れ難いです。  ヒロインからも「あなたとの別れは楽」なんて言われちゃうしで、流石に可哀想。  そんな彼が、実生活では主演のクリスティン・ベルとラブラブであるという現実とのギャップを踏まえたギャグなのかも知れませんが、映画の中は映画の中で、きちんと彼にも見せ場を与えて欲しかったところです。  ……それと、これは完全に余談になってしまうのですが、現段階で投稿されているレビュワーが、日頃から(この人のレビューは面白い)と認識し、すっかり名前を憶えている二人であるという偶然にも、ちょっと吃驚。  贔屓の俳優さん達が出演している事も併せ、映画のクオリティ以上に忘れ難い、印象深い一品になりそうです。[DVD(字幕)] 6点(2018-06-16 18:24:11)(良:2票) 《改行有》

114.  デンジャラス・バディ 《ネタバレ》  女性警官同士のバディ・ムービーというのは初めてだったので、新鮮な気持ちで観賞する事が出来ました。  都会のエリートであるアッシュバーンと、田舎の乱暴者なマリンズ。  前者が後者に迷惑をかけられる事が多かった二人の関係性が、段々と逆転していき「あれ? これってもしかしてアッシュバーンの方がダメな女性?」と感じさせられていく流れが面白かったですね。  作中で「車が爆発するんじゃないか」と思ったら、本当に爆発しちゃった場面なんかも印象深い。  とはいえ、全体的にキツめのブラックジョークが多く、アッシュバーンが応急処置に失敗して相手を血まみれにしてしまうシーンや、マリンズが病院内での電話を看護婦に咎められるも銃を突き付けて黙らせるシーンなどは、ちょっと受け入れがたいものがあったかも。  最初は嫌っていたはずの相棒を認めて、周りに対して彼女を弁護してみせる件など、こういった映画における王道の魅力を忘れず備えてくれているのは、嬉しい限り。  特に「仕事で失敗してしまった後に酒場へ足を運び、飲み明かして憂さを晴らす」流れなどは、この設定ならではの「女の友情」を感じ取れて良かったですね。  ラストシーンにおける「アッシュバーンが飼っていたはずの猫」の件も、本来は傍迷惑な話なのですが、どこか微笑ましいものがあり、後味も良かったです。  そのまま内緒で飼ってしまうのではなく、ちゃんと猫を本来の飼い主に送り返す事を受け入れてくれたのが、ギリギリのバランスを保ってくれた感じですね。  嘘を見破ったマリンズの「全くコイツは……」と呆れながらも、彼女を見離せない事が伝わってくる雰囲気が、実に良い。  里子として育てられ、これまで家族が一人もいなかったアッシュボーン。  実の弟を刑務所送りにした事を、家族から責められ続けているマリンズ。  そんな二人が、共に過ごした時間を通して「姉妹」になっていく。  皮肉な笑いの中にも、微かな温かさを感じられる映画でした。[DVD(字幕)] 6点(2018-05-08 14:46:33)(良:2票) 《改行有》

115.  ブロークンシティ 《ネタバレ》  マーク・ウォールバーグとラッセル・クロウの共演という事で、楽しみにしていた本作。  始まってすぐに 「あれ? これってもしかしてラッセル・クロウは悪役?」  と気付いてしまうような構成だったのは残念でしたが、それを補って余りある魅力的な演技を見せてくれたと思います。  悪役としての貫録もたっぷりだったし、逮捕後の見苦しい捨て台詞も最高。  むしろ主人公よりもオイシイ役だったかも知れません。  「アルコール中毒」「恋人との不仲」に関しては、中盤以降あまり必要性が感じられず、残念でしたね。  むしろコレらの設定がある事によって 「どうせなら逮捕されて刑務所で酒断ちし、彼女とも別れた方がスッキリするんじゃないか」  と思えてしまい、主人公の最後の選択における「自己犠牲」的な意味合いが薄まっているようにも感じられました。    そんな中で癒しとなっているのは、主人公の助手であるケイティの存在。  大物俳優が多い作品の中で、彼女は初めて見る顔だったという事もあってか、とても新鮮な印象を受けましたね。  可愛らしい彼女と、出所後の主人公が無事に再会出来た事を願いたいものです。[DVD(吹替)] 6点(2018-04-24 09:30:53)(良:1票) 《改行有》

116.  ラブ & ドラッグ 《ネタバレ》  ほほう、バイアグラ販売員の映画なのか……と思っていた序盤から一転、所謂「難病モノ」な内容にシフトする構成には驚かされました。  こういったテーマを描く際、女性側は「余命僅かな不治の病」というパターンが多いのですが、本作においては「病気と闘いながら生きていかなければならない」という形だったのが新鮮でしたね。  彼女を愛するならば、一時の悲劇で済ます訳にはいかない。  パーキンソン病という障害を背負った彼女と、長い「余命」を共に生きて行かなければならない。  徐々に変貌していく彼女を、本当に愛し続けていく事が出来るだろうか?  と問い掛けてくるかのような内容には、大いに考えさせられるものがありました。  ただ、そういった深いテーマが盛り込まれた映画のはずなのに、作風としては非常にライトなノリなのですよね。  このギャップというか、落差をプラスと捉えられるか否かによって、この映画の評価が変わってきそう。  自分としては、それなりに面白かったのですが、今一つハマりきれないものもあったりして、少し残念です。  理由としては、主役二人に対して「病気に負けず頑張って生きて欲しい」と思えるような印象が乏しかった事も挙げられるでしょうか。  主人公の男性は、道徳的に善人とは言い難い軟派男だったりするし、ヒロインも第一印象が余り良くなかったもので、どうしても距離を取って眺める形になってしまった気がします。  とはいえ、二人とも悪人という訳ではないのだし、ハッピーエンドだった事にはホッとさせられましたね。  アン・ハサウェイは好きな女優さんなので、彼女のヌードが飛び出すシーンには、恥ずかしながら興奮したりなんかも。  作中、あまり彼女の病状が進展しない内に「綺麗なまま」映画が終わってしまった件に関しては 「いやいや、そこから先が大変なんでしょう?」  と、納得出来ない気持ちもあるんですが…… 「主人公の強い決意を描いた以上、二人はずっと一緒なのだから、ここから先はあえて描く必要は無いのだ」  という作り手からのメッセージなのだと解釈したいところですね。  元ネタである自伝「涙と笑いの奮闘記 全米セールスNo.1に輝いた"バイアグラ"セールスマン」の作者は、この本はラブストーリーではないと語っているみたいですが、映画の方は立派にラブストーリーとして成立していたと思います。[DVD(吹替)] 6点(2018-04-18 03:25:14)(良:2票) 《改行有》

117.  映画ドラえもん のび太の宝島 《ネタバレ》  初代アニメ版ドラえもんを盛大にリスペクトした「奇跡の島」に続いて、二代目アニメ版、所謂「大山ドラ」をリスペクトした内容となっている本作。  とはいえ「野沢雅子が主役級のキャラとして復帰」というほどの衝撃は無く、リスペクト度合いとしては低めに感じられましたね。  一応、キャラデザには「大山ドラ」調のテイストも取り入れられており、特に主人公のび太とドラえもんの造形が前作までとは異なっている為 (せっかく2006年から原作通りのキャラデザになったのに……)  という抵抗も大きかったのですが、脚本や声優陣はキチンと「現行アニメ版」の空気を保持している為、安心して観賞する事が出来ました。  ちょっとメタ的な分析をすれば 「フロックは新世代ファンの象徴」 「ジョンは旧世代ファンの象徴」  であり、この映画はそんな両者の和解を描いている……なんて事も言えそうなのですが、そんな事よりも何よりも、純粋に娯楽映画として「面白い!」と言える作品であった事が、嬉しかったですね。  上述の通り、脚本や声優陣の力も大きかったのですが、何と言っても、これが映画デビュー作である今井監督の演出が素晴らしい!  特に、クライマックスの流れは、本当に手に汗握るものがありましたね。  ドラえもんが地球を守る為に奮闘し、スーパー手袋やタケコプターが壊れていく中でも、身一つで頑張り続け、とうとう意識を失う。  それを受けて、のび太が怯える我が身を勇気でもって抑え込み、危険を顧みず奈落の底に飛び込んでみせる。  どちらも非常に熱い演出であり、普段のテレビ放送回にて今井監督が見せている切れ味を、映画という舞台でも如何なく発揮してくれた事が、心底嬉しかったです。  単なる「可愛いマスコット枠」かと思われたミニドラが、のび太達を救ってみせる際の、絶望の中に光を差し込ませる演出も良いんですよね~  船で旅をする魅力、皆で外泊する魅力、美味しそうな食事シーンの魅力と「ドラえもん映画なら、ここは押さえておいて欲しい」と思える要素が、きちんと揃っている辺りも良い。  挿入歌「ここにいないあなたへ」の使い方も上手くて、その曲が流れる親子の和解場面では、涙で画面が滲んでしまった程です。  そんな具合に、褒めだすといくらでも褒められる映画なのですが……欠点というか、気になる部分も多かったですね。  まず、主題歌の「ドラえもん」に関しては、ドラえもんという作品そのものをテーマにした曲である為「映画宝島の主題歌」という感じがせず、ラストに流れても今一つピンと来なかった事。  名曲「夢をかなえてドラえもん」が流れなかった事。  「ここは俺達に任せて、先に行け」という場面が二つ存在し、最初のジャイアンとスネ夫の方は凄く熱くなれたのに、二回目になるマリアさん達の場面では(それ、さっき同じ展開やったばっかりじゃん)と思えてしまい、白けてしまった事。  そして、静香ちゃんとセーラが瓜二つである理由について、説明が為されていない事が挙げられるでしょうか。  最後の点に関しては、過去作の「奇跡の島」において「のび太とダッケが瓜二つである理由」を、タイムマシンを絡めて劇的に説明してみせた前例があるだけに、実にもどかしい。  恐らく「人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことのできる人」という劇中の台詞からすると、フロックもセーラもジョンも、のび太と静香ちゃんの子孫なんだよって事だとは思うんですが、そこはもっと断定的に表現して欲しかったです。  この描写だと、観賞中に(これって多分、のび太達の子孫って事だよな……いや、深読みし過ぎか?)とアレコレ考えてしまい、せっかく感動しているのに、気が散る形になっているんですよね。  ここでハッキリと「のび太とフロック達は血が繋がっている」と確信させてくれる描写さえあれば、思う存分映画に没頭して、より感動出来ていた気がします。  総評としては、前作の南極が「完成度の高い傑作」であったのとは対照的に「欠点も目立つけど、長所がそれを補って余りある傑作」であるように思えましたね。  ラストに金貨を手に取り、冒険の日々を思い出して笑顔になるのび太達という「本当の宝物は、金貨じゃなくて、そこに込められた思い出だった」と示す終わり方も、凄く良かったです。  ……そして、来年は八鍬監督による「異説クラブメンバーズバッジ」を題材にしたオリジナル映画であるらしく、こちらにも大いに期待!  予告映像からすると、再びキャラデザも原作準拠な形に戻るようですし、心から楽しみに待ちたいと思います。[映画館(邦画)] 8点(2018-03-04 07:03:59)(良:1票) 《改行有》

118.  探検隊の栄光 《ネタバレ》  あらすじを知って「これは絶対に面白いだろう!」と意気込んで観賞したのですが……何とも判断に困る代物でした。  まず、決して嫌いな作品ではないです。  むしろ好きな映画と言えそう。  コンセプトも良かったと思うし、主演の藤原竜也も熱演してくれていました。  全編に亘って漂う「真面目に馬鹿をやっている」感は、正に望んでいた通りの作風。  それでも語る際に言葉を濁らせてしまうというか、胸を張って好きだと言えないようなもどかしさがありますね。  理由を分析してみたのですが、こういった作品の場合、映画の中における「現実」と、劇中カメラが映し出す「虚構」とに、もっとギャップが必要だったと思うのです。  例えば主人公がワニと格闘するシーンは、現実ではショボいのに、カメラ越しの映像では意外と本物っぽく見える……という視覚的なバランスにして欲しかったなぁ、と。  それはピラニアが食い散らかした人骨も然り、作り物のヤーガも然り、ですね。  本作の場合、現実と虚構に明確な差が窺えない為「人々を楽しませる為に壮大な嘘をついている」という主人公達の恰好良さが、今一つ伝わってこないように感じられました。  中盤に主人公が行う「俺達が作っている番組は無意味なんかじゃない」という演説についても、長年こういった番組に携わっている立場の者ではなく、今回が初参加の人間が言う事なので、今一つ重みを感じられなかったのも難点。  このシーンは普段いい加減な言動の監督さん辺りに言わせて、それに感銘を受けて主人公も本気になる流れでも良かった気がします。  そんな風に不満点も多い品なのですが、眩しいような魅力が備わっているのも確かですね。  序盤、ゴミの不法投棄に怒っているだけのオジサンを「ヤーガの恐ろしさを身振り手振りで伝えてみせる村人」という設定にして、勝手にアテレコしてみせる場面は、本作で一番の笑い所かと。  「やらせ」を完遂しようとするスタッフに対し、大自然が嘲笑うかのように、あるいはご褒美を与えてあげるかのように「本物のヤーガ」がチラリと姿を見せる展開なんかも、ニヤリとさせられました。  終盤に遭遇する反政府ゲリラ達と絆を育む事となり、別れの際には互いに友情が生まれていたというオチも、凄く良かったと思います。  ヤーガが実在したという衝撃よりも、こちらの「現地人と心を通わせ合った事だけは本当だった」という場面の方が、じんわり胸に沁みるものがありました。  主演の藤原竜也に関しては、元々好きな俳優さんだったのですが、こういった映画でも頑張っている姿を見ると、ますます応援したくなりますね。  本人は続編も希望しているとの事なので、楽しみに待ちたいものです。[DVD(邦画)] 6点(2018-02-19 05:10:53)(良:2票) 《改行有》

119.  IAM A HERO アイアムアヒーロー 《ネタバレ》  とうとう日本にもゾンビ映画の傑作が誕生したんだなぁ……と、感無量。  邦画にも面白い作品は沢山あるけれど、その中で「ゾンビ映画」というジャンルは非常に頼りなく、胸を張って「面白い」と言える作品は、これまで無かったように思えますからね。 「火葬の風習がある日本では、死者蘇生がイメージし難い」 「銃器が身近に存在しない」  等々、ゾンビ映画を作る上では不利なお国柄なのに、そんなハンデを乗り越え、これほど面白く仕上げてみせたのだから、もう天晴です。  二時間という尺の都合上、どうしても原作漫画の要素は色々と切り捨てられてしまう訳だけど、その取捨選択も見事でしたね。  原作においては、丸々一巻分かけて「売れない漫画家の鬱屈とした日常を描いた漫画」と思わせておいて「実はゾンビ漫画だった」と一巻ラストにて種明かしするという、非常に面白い構成となっているのですが、これを再現するのは潔く諦め、十五分程で「ゾンビ物ですよ」と種明かし。  謎の存在「来栖」や妄想の産物「矢島」も登場させず「主人公の英雄」「ヒロインである比呂美と小田」の三人を中心とした作りにして、分かり易く纏めてある。  英雄の恋人である徹子の描写が大幅に削られており、彼女を殺してしまった事への葛藤すらも失われているのは気になりましたが……まぁ仕方ないかなと、納得出来る範囲内でした。  そもそも原作においては作者自身が「作中に散りばめられた謎を解く事」を放棄したフシがあり「適当にそれっぽい言葉を並べておけば、信者が勝手に深読みしてくれる」と、作中人物に嘯かせているくらいですからね。  よって、原作における「来栖とは何なのか?」「ZQNとは何なのか?」という謎解き部分を徹底的に排除したのは、もう大正解だったかと。  日常がゾンビの発生によって崩壊する様も、真に迫って描かれていましたし「日本」という身近な世界が舞台になっている分だけ、その臨場感も倍増。  ここの辺りのスピーディーさ、動きを伴うからこその迫力は、漫画には出せない、映画ならではの魅力だったと思います。  ロレックスの伏線が三重、四重になっている脚本にも、非常に感心。  「原作では準主役格だったりする中田コロリ先生が、ロレックスを付けている」→「それを気にしていた英雄が、文明崩壊後の世界では簡単にロレックスを拾える事に拍子抜けする」と、ここで伏線の回収が済まされたと油断していたところで「英雄がロレックスを大量に装備し、それが腕のガードになっていたお蔭で、噛まれても助かる事になる」「最終的には、我が身を守る虚栄心の象徴のようなロレックスを外して、射撃に専念する」ってオチに繋げてみせたのには、もう脱帽です。  ボス格の敵キャラとして「高跳びゾンビ」をチョイスするセンスも良いし、そして何といっても……終盤のショットガン描写が、素晴らしい!  それまで発砲する事が出来ず、躊躇い、怯えていた英雄が、ヒロイン達を守る為、ラスト二十分程で、とうとう引き金をひいてみせるんだから、本当に痺れちゃいましたね。  溜めて、溜めて、解き放つというカタルシスがある。  連射系の武器ではない、一撃の威力が大きいショットガンと、非常に相性の良い演出だったと思います。  襲い来る大量のゾンビに対し、素早くリロードしながら迎え撃つ英雄の姿も恰好良かったし、最後は「弾切れの銃で、敵の頭部にフルスイング」という倒し方なのも、実に痛快で良い。  原作においては「富士山に行けば助かるというのは、ガセネタだった」「実は英雄も感染していた」などの情報が明かされ、この後どんどん絶望の匂いが濃くなっていく訳ですが、本作においては「富士山に行けば、何とかなるかも知れない」「比呂美の存在によって、ワクチンが作れるかも知れない」という希望を残した段階で完結しており、その点でも好みでしたね。  最後の台詞通り「ただのヒーロー」になった英雄なら、きっと彼女達を守り抜けるだろうなと思える。  良い終わり方の、良い映画でした。[DVD(邦画)] 8点(2018-02-02 19:52:26)(良:2票) 《改行有》

120.  白鯨との闘い 《ネタバレ》  白鯨の襲撃を受けて、船が瞬く間に破壊されるシーンは、迫力満点。  想像していた以上に「漂流」のパートが長く (あんまり白鯨とは闘わないんだなぁ……)  と下がり気味だったテンションを、一気に高めてくれるだけの衝撃がありました。  序盤は「分かり易い悪役」であったポラード船長が、徐々に成長した姿を見せてくれる展開なんかも好み。  当初は対立していたオーウェン航海士と、少しずつ認め合い、再会時には喜びを見せる辺りも良かったですね。  鯨油を採る為に命懸けで船旅をしていたトーマスの口から「地面を掘ったら油が出てきた話」が語られる際の、何とも言えない笑みなんかも、非常に味わい深い。  もう危険な航海で油を集める必要もない、石油の時代への移り変わりを象徴する台詞。  とても雄大な気分に浸らせてくれると同時に、一抹の切なさも感じられました。  作中で最大の禁忌として扱われているカニバリズムに関しては、それを扱った品を既に何作も観賞済みなせいか、あまり大事には思えなかったりして、残念。  如何にも勿体ぶって描かれていた分だけ、こちらとしては少々白ける気持ちを抱いたりもしましたね。  結末では「全部を書く必要は無い」と、その禁忌をあえて秘した上で小説「白鯨」が書かれたという形になっており、作者であるハーマン・メルヴィルの優しさが示されています。  その一方で、本作品は「せっかくメルヴィルが気遣って隠しておいた秘密を暴く」ストーリーとなっている訳であり、そのチグハグさも気になるところ。  良い話として纏めているけれど、この映画の存在自体が「あえて全てを書かなかった」配慮と真っ向から反しているのではないかと、最後の最後で疑問符が残りました。  告白者であるトーマスの妻が、毅然として言い放った 「初めて会った時に、その話を聞いたとしても、私はずっと貴方の妻でいたでしょう」  という台詞が印象深いだけに、真実の秘匿を肯定的に描く形にはして欲しくなかったなぁ……というのが、正直な気持ちです。  そんな本作のクライマックス。  白鯨と目が合ってしまい、銛を突く手を止めてしまうシーンは、実に素晴らしかったですね。  とにかくもう「視覚的なメッセージ」の力が圧倒的で「何故、殺さなかった?」という作中の台詞に対しても、こんなに美しいものを殺せる訳が無いじゃないか……という気持ちにさせられます。  傷口を映し出す演出、そして白鯨が攻撃を加えずに去っていった事からするに 「白鯨と航海士との間には、闘いを通じて奇妙な友情が芽生えていたのだ」  と解釈する事も出来そうな感じ。  でも自分としては、白鯨があまりにも美しかったから見惚れてしまい、それを壊す事など出来なかったのだと思いたいところです。[DVD(吹替)] 7点(2018-01-11 11:36:34)《改行有》

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