みんなのシネマレビュー |
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1322. 座頭市果し状 《ネタバレ》 いつも通りの量産型大映時代劇(これは決して悪い意味ではないのです)の雰囲気ではありますが、志村喬がいて、待田京介とか、それこそ小松方正なんかもいたりするゴチャマゼ感、多彩な顔触れが楽しいところ。 座頭市が志村喬演じる医者と一緒に居てるんだなーと思ってたら、今回の敵の一味には手裏剣や銃といった飛び道具を使うヤツがいて、そんな奴らを相手にしてはさすがの座頭市も危ういのではないかと思っていたら案の定、銃で撃たれて深手を負ってしまう。ああ、だからそもそも志村喬が医者役だったんだな、と妙に納得。だけどここで、待ってましたとばかり志村喬が治療する場面になる訳ではなく、あえてその前に、座頭市が自分の刀で自ら弾丸を摘出するシーンを入れてくるのが、意表をついているというか、ちょっとした変化になっていて、上手いんですねえ。 中盤、勝新が、手元を見ずにお猪口に酒をピタリと注いでみせる、こういうでの場面のスゴミが、盲人である座頭市が飛び道具を操る一味と互角に渡り合うスゴミや得体の知れなさとも繋がり、そしてクライマックスにおいて血塗れのまま敵地に向かう座頭市の姿の凄まじさにも繋がっていく。そこで展開される殺陣もこれまた凄まじく、まさに大殺戮。東映の任侠映画みたいでもあり、こういう点でもゴチャマゼ感覚があり、いや、楽しいではないですか。[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-12-02 16:16:53)《改行有》 1323. ラ・ブーム こういう何の変哲もない映画が、なぜか国内外で大ヒットしてしまう。世の中何が起こるかわからないもの。主演にソフィー・マルソーが起用されてなかったら、知られざる無数の映画の一本となっていたのでしょうが。 私などはソフィー・マルソーと石野真子の区別もつかないので(ウソ)、あの当時のラ・ブーム・ブームというのは(そういう言い方あるのかどうか)ピンとこなかったんですが、そういえば、親父役のヒトと芦屋小雁の区別もつかないんです(ウソ?)。 物語も何だか有るような無いような、印象としてはソフィー・マルソーの恋愛モドキが映画の2~3割、両親の浮気騒動が4~5割といった感じ。足しても10割になってませんね、ははは。 ところどころ場面が省略される面白さがあって、例えば、ソフィー・マルソーが親父と車に乗った筈の場面、次のシーンで彼女の横で車を運転しているのがバアサンだったりする。 だけど全体的にはテンポがいい訳でもなく、むしろやや長いかなあ、と。このダラダラ感が、「青春」というものなのかも知れませんが。[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-11-26 09:23:52)《改行有》 1324. プリデスティネーション 時間旅行ネタの合わせ技一本。よくもまあ、こういうこと考えるねえ、と感心しつつも・・・。 一人の人物が、物語の進行に伴い男性に見えたり女性に見えたりする、まるでだまし絵のような面白さがあるのですが、それだったらいっそ、時系列が入り乱れる中で、各場面そのものが物語の進行によって様々な意味を孕むような、映画自体がだまし絵の構成になってたら、さぞかし面白くなってただろうに、などと思ってしまいます。だけどなかなかそうはいかない。物語を複雑にしてしまった分、構成までも複雑にするわけにいかず、なるべくわかりやすく物語を提示しようとしてしまう制約。だもんで、段取りよく背景が解き明かされてゆき、多分そうなるだろう、ああやっぱりそうなるね、といった感じの繰り返し。意外な物語であるハズなのに、意外なほど、意外性が無いのです。 一本の映画に仕上げるにあたって、物語を「膨らませた」というより「引き延ばした」印象を受けてしまう、というのも、いただけません。冒頭、バーで二人が会話を交わす場面なども、物語の単なる助走部分に過ぎないような空疎な感じがしてしまって。 劇中何度も、タバコとその煙が登場するのが、危ういバランスの上に成立しているこの物語の不安を象徴しているようでもありますが・・・。[DVD(字幕)] 6点(2017-11-26 08:49:44)《改行有》 1325. 何がジェーンに起ったか? 「二大女優競演!」ともなると、此処までやらにゃいかんのだ、という悪しき前例を作ってしまった映画、とも思えるのですが、もうとにかくこれが、コワくてイヤらしくてエゲツないんです。 ベティ・デイヴィスの特殊メイク顔(??)も十分にコワいんですけど、物事の裏側を浮き彫りにして不穏な空気を演出するローアングルのカメラが、これまたコワくてイヤらしくてエゲツない。 ラスト、どこまで引っ張るのだろうと思っていると、「かつて何がジェーンに起きたのか」「そして今ジェーンに何が起きているのか」というところに繋がって行って、実は意味深なタイトルであったのだなあ、と。 それにしても、残酷描写に頼らなくったってこれだけ怖い映画を作ることはできるのであって、昨今の映画は残酷描写に頼り過ぎなのでは、とも思えてくるのですが、これもまあ、時代の流れというか、いったんソチラに踏み込んでしまうと簡単には戻れない訳で、致し方ない面もあるのかなあ、などと思いつつ。[CS・衛星(字幕)] 9点(2017-11-21 08:20:44)(良:1票) 《改行有》 1326. シャロンの屠殺者 冒頭、「三人組」が登場して、さらにこの「三人組」と先住民と騎兵隊、という三つ巴の関係がある。さらには、「三人組」のひとりである主人公が大佐の妻に手を出して三角関係が展開されて。 それがどうした、と言われればそうなんだけど、これらの「三」の関係が物語を支えるモチーフになってて、こういう統一感があるかないかで、納得感も大きく変わってくるもんです。先住民との戦い、上官との対立、許されぬ恋、こういった要素が見事にまとめられ、どこか運命的なものも感じさせる。物語は最後、それなりに収まるところに収まるかも知れないけれど、その一方で冒頭の「三人組」はバラバラの運命を辿っていく、というところに、一筋縄でいかないものがあります。 そんでもって、クライマックスの戦闘シーンのスゴいこと。砦の門ごしに見える激しい戦い、立体感を伴った迫力が漲っています。[CS・衛星(字幕)] 9点(2017-11-19 08:04:43)《改行有》 1327. トランス・ミッション デンマーク産の安そうな映画ですが、これがまた、何だかやけに面白い。世の中、どこにアタリが潜んでいるか、わからんもんです。 ストリップのバイトをしてる娘のもとに、親父から届いた郵便物。封を切ってみると中には、名画「黒い聖母」が。親父の一味が盗み出した上、仲間を裏切り親父はトンズラ、絵の隠し場所として娘のところに送ってきたらしい。一方、親父はマフィアにとっ捕まり、絵画を渡すことを要求される。かくして、マフィアのもとに絵を運ぶ娘、なぜかそれについてきてしまう休職刑事の珍道中が始まる。絵を取り戻そうと彼らを追いかける親父の元仲間に、さらにはマフィアが送り出す刺客も現れて。 何と言っても、主人公であるこの娘、無鉄砲で飄々としているのがいいんですね。突拍子もない行動を繰り返し、映画の辻褄なんて何のその。彼女が物語をハチャメチャにかき回せば、あり得ないような事も平気で起こり、同行する刑事も我々も、振り回され続ける、この楽しさ。 ちゃんとハラハラさせてくれて、でもあくまで陽気にブッ飛んでる。登場人物それぞれが個性的で魅力的。ラストのオチも気が利いてて、大いに楽しませていただきました。[CS・衛星(字幕)] 9点(2017-11-18 08:47:12)《改行有》 1328. カンニング・モンキー/天中拳 とてつもなくバカバカしい内容、ってのは座頭市やポパイのパロディを見てもわかる通りですが、とにかくジャッキーが弱い。フザケてばかりで、ひたすら弱い。なのにラストでは、奥義書をナナメ読みしながら戦い、強くなっちゃう。何だか、空手を「通信教育」でやってた、という岡八郎の往年のギャグを思い出しますが。 そんでもって、オハナシはとにかくデタラメで、もう何がいいたいのやら何を描きたいのかサッパリ、なんですが、中盤、とっ散らかすように登場させまくったキャラたちが、クライマックスでは何故だかちゃんとそろい踏みしていて、何故だかちゃんとスピーディなアクションを繰り広げてみせてくれる。なんと強引な。でもこういう「一見存在しないかと思われた起承転結が、実はちゃんと存在している」ってのは、いいもんです。 それにしても、実にデタラメですが。[地上波(吹替)] 7点(2017-11-07 22:45:03)《改行有》 1329. ヘラクレス(2014) ヘラクラスが本当は人間なんだとか、プロレスラーだって生身の人間なんだとか、それ「だけ」が言いたいんだったら、もうどうでもいい訳で。 それを踏まえた上で、その先に何があるのか、あるいは何もない、ありきたりな陰謀劇しかないのか。 肉体美以外にたいして魅力の無いヘラクレスに、これまた魅力の無い仲間たち。 大勢の軍隊をそれなりにロングショットで捉えるのは、それなりにスペクタル感を出そうとしているのだろうけれど、いざ戦闘が始まれば、これまたありきたりなゴチャゴチャした乱闘シーンが、判で押したように繰り返される。 退屈でした。[CS・衛星(邦画)] 3点(2017-11-04 14:10:55)《改行有》 1330. 下宿人(1926) 《ネタバレ》 連続殺人鬼を扱った一種のサイコ・スリラー。ロンドンに現れた、「アヴェンジャー」を名乗る謎の殺人鬼。被害者は決まって、金髪の女性。と来りゃ、その後のヒッチコックを知る我々にしてみればコレ、犯人はきっと、監督さん自身じゃないの~と思っちゃうのですが。いや実際、きっとそうだと思う。 ともかく本作、サスペンス映画という、物語性の強い作品でありながら、多くの場面で字幕セリフの使用が抑制されていて、しっかりと「見せる」映画になってます。冒頭、女性が悲鳴を上げる顔に始まり、次にはもう死体となっている、という断片的な怪しさ(この描写は中盤でも繰り返される)。そこに現れる、謎の下宿人。その挙動を事細かに描く怪しさ。殺人鬼の正体は果たして彼なのか? 二階を歩き回る姿を、床を透かして階下から眺める、なんていう有名なシーンを始めとした、二重露出のもたらす怪しさ。 まあでも、一番アヤシイのは、クライマックスで主人公が群衆に追い詰められる場面ですかね。この場面、正直、なーんか変です(笑)。しかしここも、セリフを挟むことなく、主人公をいたぶるように、いくつものショットを執拗に連ねていく。 で、唐突に大団円。え~うそ~、まさか、そのまま終わっちゃうの~と思っちゃう我々は、昨今のヘンな映画に毒されてしまってるのかどうなのか。当然のように期待してしまうのは、「事件を通じて、殺人への衝動に目覚めてしまった主人公」というラストなんですが、ねえ。[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-11-03 03:13:26)《改行有》 1331. ジョン・ウィック だいぶ「総合格闘技」からヘンな影響を受けてしまった感のあるアクションですが、それが何とも小気味よいというのも事実。昨今、格闘シーンが細切れで撮影されることへのアテツケなのか何なのか、異常なまでに長回しの格闘シーンが映画に取り入れられることがあり、観てるとこちらも緊張してしまうというか、やらされてる俳優さんが気の毒になってくるというか、あまりやり過ぎるとかえって、自己目的化した「長回し」そのものが気になってしまいかねません。その点、本作は、いいバランス保ってるんじゃないでしょうか。高度な身体アクションを見せるためにこそ存在する、見事な長回し。ホントにキアヌ・リーブスが強そうに見えるではないですか。 本作、復讐譚の体裁をとっているのですが、「飼い犬が殺されたこと」がキッカケになっている、というのが何とも思い切った設定。これも場合によっちゃ「そんな大袈裟な」と言われかねないところですが、まずそれ以前にこの映画を支配する雰囲気を見れば、実は「キッカケ」なんていうのはどうでもいいんだなあ、と(愛犬家にとっては、どうでもよくないかも知れませんが)。むしろ、これがあくまで「キッカケ」に過ぎないからこそ、主人公が闇と暴力の世界へと向かって行く流れも、より強く、より避けがたいものとなる・・・。[CS・衛星(吹替)] 8点(2017-10-29 15:27:48)《改行有》 1332. 座頭市逆手斬り ニセ座頭市登場の巻。って、TVの水戸黄門じゃあるまいし。 この憎めない男を演じているのが寛美さんで、どうしてもこういう人が映画に出てしまうと、少々浮いた感じにはなってしまうのですが、とは言え、これも一種の映画史における奇跡でも言いますか、二人の名優が噛み合わない演技をぶつけ合う、なかなか貴重な光景ですから、それも含めて何だか憎めないんですね。それにしても寛美さんが大映に出演、どういう背景なのでしょうか。ちなみに同年の次作(地獄旅)には、今度は子役で直美さんが出演してたりするのですが。 本作、海辺に佇み、見えない目で海を「見よう」とする座頭市、なんていうちょっとポエムなシーンもあるけれど、百叩きの刑を受けながら涼しい顔をしていたり、本人がそばにいると知らずに自分の悪口を言ってる連中に、わざわざイヤガラセをしてみたり、だいぶお茶目な座頭市が登場します。なのに、いざ殺陣となると、まー斬るわ斬るわ。クライマックスの斬り合いでは、もはや収拾がつかなくなってしまった印象のまま、早々に映画が終わってしまいます。早っ。[CS・衛星(邦画)] 6点(2017-10-29 14:52:32)《改行有》 1333. 大冒険 ニセ札犯人と間違われて警察に追われる主人公が、誘拐された恋人(?)を奪還しようと奮闘する。と聞けば、真っ当なサスペンス映画のようですが、なにせクレージーキャッツ映画、主演が植木等。ハチャメチャで奇想天外な内容で、中盤以降はどうでもいいような追跡劇がどこまでも続いていきます。しかしスゴイのは植木等。見たところ、かなりのスタントを自らこなしています。しかも、ノリはいつものスーダラ節。必死さは皆無で、何かと言えば高笑い。アクション映画の主人公が必死になってみせるのもいいけれど、こうやって、どんな危険な目にあっても涼しい顔で高笑いし続けるというのもまた、実に頼もしく見えるものです。 高所を舞台にした場面では、一体どこからカメラを構えているんだろう、というシーンもあり、また終盤には大掛かりなセットも登場してハチャメチャ度もスケールアップ。 ホント、よくやるよね~、と、感心します。[CS・衛星(邦画)] 7点(2017-10-22 08:12:04)《改行有》 1334. タクシードライバー(1976) ご多分に漏れず、私も学生の頃とかには、この映画にハマったもんです。カッコいい、あまりにカッコいい狂気。ああ、こんな映画を考え出すなんて、ホント、世の中には頭のいい人がいるもんだ、なんてね。 で、今見ると、何だか懐かしく、そして何だかちょっと恥ずかしい。過去の自分の青臭さと向き合う恥ずかしさ、ってのも当然あるんですけれど、それだけじゃなくって、映画自体が少々薄っぺらいような、やっぱりコレじゃあダメなんじゃないの、という気持ちも。トラヴィスという特異なキャラに寄りかかり過ぎていて、思い付きの一発ネタで作られた作品、という感じがしてくるんですね。で、「俺は誰にも理解されねえ!」「理解されなくて結構!」という映画を作ることによって、結果的に、世界の若者からの共感を得る、ってのも、何だか、ねえ。ラストの修羅場も、いささか露悪趣味が見え透いていて。 でもでもやっぱり、コレじゃあダメということはなくって、コレでいいんだよなあ、と思い直す(本作観て、大統領暗殺未遂みたいな暴走事件を起こさなければ、ですが)。単なる思い付きだろうと一発ネタだろうと、いいじゃないの。それで、映画がこんなにも光ってるんだから。カッコいいんだから。芸術作品のすべてがすべて、「老成」していなければいけない、などという事は無い訳で。今日もまた世界のどこかで、この映画にハマった若者がいるんだろうし、明日もまた、誰かが新たにこの映画にシビレるんだろう、そういう映画を、使い捨てのごとく悪く言う気には、なれないのです。さあみんな、一度はハマってよ、と言いたいのです。だからやっぱり私はこの映画を支持するのです。[CS・衛星(字幕)] 10点(2017-10-15 23:06:06)(良:1票) 《改行有》 1335. 荒野の復讐 80年代に入って、まだマカロニやってるのかよ、などと言うなかれ。いや、言ってもいいけど。でも本作、ただのマカロニ・ウェスタンじゃない、なんと「3D」というギミックを備えた珍品であります。と言っても、別に私も3Dで観た訳じゃないんですけどね、でも、観ればコレ、3Dとして作られたことは一目瞭然。何せ、弓矢やらダーツやら、飛んでくるものはすべてコチラに向いて飛んでくる。尖ったものはすべてコチラを向いている。落ちるモノはことごとく、下から構えたカメラに向かって落とされる。しまいにゃ、赤ちゃんのお尻までコチラに向かって突き出され、いくら何でもそこまでやるか、と。 内容はと言うと、悪党たちに花嫁を奪われた主人公が、妻を奪還すべく戦いを挑む、ってなオハナシですが、主演(かつプロデューサー)のトニー・アンソニーが、フニャフニャしてるばかりで凄みも何もあったもんじゃない。何だか情けなく見えるばかりで、ちっとも魅力が感じられません。そうなると、物語もまるで引き締まらないのですが、一方で、本作には独特の情緒を感じさせるものもあって、これは、3Dを別にしても、パートカラーがあったりパートモノクロがあったり、スローモーションが多用されたり、妙なコダワリが独特のマッタリ感を出しているんですね。あと、コウモリが襲ってきたり(ハリボテだけど)、ネズミが襲ってきたり(これは本物)、といったあたりは、ちょっとオカルトテイストも感じさせます。要するに、雰囲気重視で策に溺れて、中身が無くなっちゃった、という感じ(「狩人の夜」みたいに、指の背に書いた「LOVE」の文字を見せたりするのも、雰囲気作りの一環、のつもりですかね)。 でもこの雰囲気、『シン・シティ』なんかが好きな人なら、結構、楽しめるかも[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-10-15 12:13:53)《改行有》 1336. 座頭市千両首 やはり柱となるのは、若山富三郎と勝新太郎の兄弟対決、ってことになるのでしょうが、それにしてもまあ、それ以外のエピソードがサッパリ伸びなくって。とある墓の前に座頭市がやってくる冒頭からして、いかにも因縁話っぽいニオイを漂わせるけれど、それは結構どうでもよかったりして、オハナシは千両箱強奪事件へと。 さらには島田正吾演じる国定忠治が登場するも、これがどうにも貧乏臭くって。いやこれはそういう役柄なんだからしょうがないんですけれども、存在感自体が薄くって。他の登場人物も同様で、何しに出てきたのかよくわからないキャラが多いんです。 だから、話が伸びない。広がらない。 で、しょうがないので否応なく、兄弟対決となる訳ですが、これはさすがに気合が入ってる。体を張っている。弟・勝新が馬に引きずられてみせれば、兄・若富は(それとも城健と呼ぶべきか?)馬から真っ逆さまに転落してみせる(←顔が鮮明に写ってるわけじゃないけど多分、代役じゃなくて本人っぽい)。いや、さすが。 見せ場と言えば、野山のロングショットに巨大な雲の影が広がっていったり(こりゃほとんどインデペンデンス・デイですな)、闇の中に無数の提灯行列がうごめいたり。と、印象的な場面もいろいろあって、そういう意味では、座頭市を取り囲み罵倒し小突き回す村人たち、なんてのは、印象に残るシーンであり、存在感ある脇役、ともいえるでしょう。[CS・衛星(邦画)] 6点(2017-10-14 15:32:48)《改行有》 1337. すてきな片想い 私もかつては「モリー・リングウォルド=美形」と思ってた時期が確かにあったハズなのですが、本作を観てると、あの思い込みは一体何だったのかと。いや、まあ、コレはコレで、いいのですが。 姉の結婚式を迎え、自分の誕生日を家族に忘れられた少女が主人公。学校の上級生に憧れているけれど、その上級生にはグラマーな彼女がいて・・・で、だからどうというワケではなく、妙なドタバタばかりが続いていくのですが、主人公もサエないし、彼女が憧れる上級生も、何だかイケすかない。ましてやそれ以外の登場人物なんて、謎の留学生とか(こうやってすぐ東洋人を笑いものにするのもどうか、と思わんでもないけど)、例によって例のごとくアンソニー・マイケル・ホールとか、ほとんど妖怪みたいな連中ばかり。で、まあ、バカバカしい割に、そんなにオモシロくもないのですが、ひたすらとっ散らかしていく(ストーリー面だけでなく画面上も)この雰囲気、要するに「青春」ってキレイなもんでも何でもなくって、要するにこの感じ、なんだよな~、と。 登場人物たちの誰ひとりとして、積極的な好感は持てないけれど、誰もが何となく、憎めない。で、こういう町があって、こういう家族がいて、そんな中で、人間関係が微妙に変わっていく、人が成長するって、そういうもんだよね、という軽いタッチで、やっぱり映画自体もまた、何となく憎めないのです。[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-10-09 15:36:18)《改行有》 1338. ロスト・イン・トランスレーション ビル・マーレイってこんなにデカい人だったんだね~。大きな図体で、飄々としていて。どこまで本気なのかわからない軽口をたたいて見せるけれど、でも決して陽気というわけじゃない。むしろどこか寂しげ。 この人、普段からこんな感じなのかなー。出演する人みな、そんな風に「素」を感じさせるものがあって(あ、藤井隆以外、ね)、映画自体に、作り込み過ぎない、即興的な印象があります。映画は、新しいもの古いもの何でもゴチャマゼになった街、東京を、さまざまな面から切り取り、そっけない感じで並べてみせる。その中で、物語の中心となる男と女も、何となく揺らいでいて、遠くアメリカにいる妻子、自分よりも仕事に夢中の夫、そして言葉の通じない、目新しく奇妙な、今の自分を取り巻く環境、それらに対し、微妙な距離感を感じている。どうしても映画で描写される日本がデフォルメされてしまう部分はありますが、主人公の受ける「印象」というものを映像に反映させて描くとなれば、これは要するに「主人公には、こう、見えた」ということなんでしょう。その描写とて飾らない素っ気なさがあり、一方でビル・マーレイのトボけた味わいがあり、そこから生まれるユーモアが、この作品の大きな魅力になってます。 何でもゴチャマゼ、何でもアリアリの、この日本という国は、主人公の前に様々な側面を見せ、それがしばしば主人公の揺らぐ気持ちとも呼応する。そのたゆたいが、何だか、心地いい。やっぱり、日本に生まれ育った我々って、結構、貴重な経験してるんじゃないのかなあ、なんて。[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-10-07 14:52:15)《改行有》 1339. ラスト・ショー 《ネタバレ》 どこぞの田舎町を舞台にした人間模様が描かれていて、ストーリーらしいストーリーもないんですが、独特の映像と、赤裸々でありながら微妙な人間関係が、我々を映画に引きこんでくれます。若い人たちがいて、かつて若かった人たちがいて、何だか大してロクなこともしてなくって、田舎町ではずっと前からこういうのが続いていて今後も続いていくんだろうな、と思いつつも、どうやらそうではなくって。劇中、何人かの人物が姿を消していき、そして、決して「町の中心」という程の存在感を主張している訳ではないんだけど、映画館がひっそりと最後を迎えて、この作品も終わりを迎える。静かであるが故に引き返せない流れを、しっかりフィルムに焼き付けておこうとするかのような、そんな切なさを感じさせる映画でもあります。[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-10-01 12:27:06) 1340. 裏切りの荒野 《ネタバレ》 邦題からするといかにもマカロニウェスタンなんですけど、実際にはサッパリ西部劇じゃなくって、雰囲気は何だか、なんちゃってアート系のお色気映画。だけど濡れ場が無くって(もう一息でそっち方面に行きそうなんだけど・・・)その代わりに中盤にちょっとしたアクションシーンを加えてみました、ってな感じ。マカロニ的な期待感を持って見ると、どうも物足りないんですが、それでも崖を爆破したりしてみせるのはなかなかに大胆です。 で、男の名前がホセ、女の名前がカルメン、そんでもって冒頭からのこの展開、とくると、まさかこれは「カルメン」なのか、とイヤな予感が。そういやたまにオペラ「カルメン」の一節を思わせる音楽も挿入されるし。たしか出演者の中にクラキンの名前があったけど、中盤までなかなか登場しないし、まさかまさか、クラキンがエスカミーリョ役なのか。そんなバカな。⇒と思ってると、さすがにそんな事は無くってホッとします。もっとも、何しに登場したのかよくわかりませんが。 「カルメン」を下敷きにしつつ、物語はどんどん離れていって、オモシロくなる方向ならいくらでも離れてくれて結構なんですが、ツマラナイ方向にどんどん離れていっちゃう。一体この先どこまでツマラナくなるのか、と思うと、逆に何だか楽しくなってきたりして。 終盤、突然、闘牛シーンが登場し、製作側もこれが「カルメン」だったことを急に思い出したかのような。だいじょうぶ、我々はちゃんと覚えてますから。だから、わかりきったラストをわざわざ見せてくれなくてもいいんです。ラストのやりとりがいちいち、クドくてしょうがない。その埋め合わせなのか何なのか、ホセも波打ち際で絶命してみせてくれるのだけど、私の横で観ていた子供が冷たい声で「全然死んでないやん。お腹動いてるやん」。ネロさんしっかりしてくれ。死ぬシーンで息を止めるのは、基本です。[CS・衛星(字幕)] 4点(2017-10-01 11:49:13)《改行有》
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