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121.  バニー・レークは行方不明 ムルナウの『最後の人』に匹敵するくらい、ほぼ全編が「ドア」やそれに類する開閉装置(門、窓、トランク)のショットに満たされ、そのいずれもが見事に活用されている。(オープニングとエンディングも黒地画面の開閉である。) ドアを介した人物の頻繁な出入りと縦横の移動撮影を組み合わせたショット接続は映画の運動感を高め、また舞台となる保育所、屋敷、病院、人形ショップなどの家屋構造を立体的に表現する機能を発揮している。 人形の並ぶショップ地下室の不気味なムード、キャロル・リンレイが夜の病院を脱出するシークエンスから犯人との対決までの緊迫感の持続はこの優れた空間提示の賜物だ。 尚且つ、ドアをめぐるアクションはその鍵の用法や所作によって主要キャラクターの心理を表象化し、内/外の分断というドラマ上の伏線としても機能する重要なアイテムといえる。 まさに「ドア」の映画。序盤から持続するサスペンス感覚が、ブランコの揺り戻し運動を高所から捉える不安定なカメラによって視覚的にも極大となっていく展開も見事。[CS・衛星(字幕)] 9点(2009-10-27 20:35:55)《改行有》

122.  牝犬(1930) 『坊やに下剤を』に続く、ルノワールのトーキー第二作。ここでも夜の街路に響く靴音、酒場の喧騒、音楽、時計の時報など、聴覚を意識した演出が駆使されている。同時録音によって掬い取られた屋外実景の生活音と、さらに縦移動まで組み込んだ動的な撮影の効果もあって、生き生きした映画空間が形作られている。物語上もっとも緊張度の高まるクライマックスの場面は、撮影・録音・編集技術的にも圧巻というべき見せ場だ。特徴的なパンフォーカス。ミシェル・シモンとジャニー・マレーズの二者が相対する緊迫感。ナイフのショット。修羅場となる瞬間、不意に窓外の位置に切り替わるカメラ。アパート下での対位的なシャンソンの歌声。牧歌的な人だかりから静かに上昇するカメラの緊張感。再び、窓越しに捉えた部屋内のショット。その一連のショット繋ぎが非常に絶妙である。ラストは『素晴らしき放浪者』の予告ともいえようか。同じ原作でも、F・ラングによるノワール風のリメイク『スカーレット・ストリート』(これも傑作。)とは趣が異なり、悲喜劇の混交具合にいかにもルノワールらしい大らかさが顕れている。それぞれの映画作家の個性が楽しめるのは、原作の豊かさにもよるのだろう。[DVD(字幕)] 9点(2009-09-27 20:04:30)

123.  アパートの鍵貸します アレクサンドル・トローネによる秀逸な美術セットと、ドラマとを効果的に組み合わせた構図と撮影が実に巧妙だ。ワイルダーの真骨頂ともいえるパースペクティブを存分に利かせたシネスコ画面のレイアウトによって、広いオフィスはより広く、狭いエレベーター内はより狭く見えるような緻密な空間設計が為されている。広い空間ではエキストラの雑踏を自在に捌き(パーティシーンのスペクタクル、)、閉所では人物の所作、表情、小道具によってそれぞれ画面を活気づける(主演二人の手の動作、割れたコンパクト、ラケット、トランプ)。鋭角的で無機的なオフィスの造型は企業の殺伐とした序列社会を視覚的に具現し、ジャック・レモンのアパートの玄関セットが生む凹凸と遠近と陰影は彼をその暗がりに小さく押し込め「卑小さ」を際立たせ、夜の公園の異様に長いベンチはその奥行きが彼の哀愁の深さを伝えるメタファーとしても機能する。写実と誇張の絶妙なバランス感覚に立った画作りがドラマの中でうまく活きている。また、当時普及してきたテレビに対する映画人としての対抗意識(CM批判や「アンタッチャブル」人気)を仄めかすギャグや洒落た台詞を随所に散りばめたユーモア感覚もさすが。シャーリー・「マクレーン」の台詞「the wrong guy in the wrong place at the wrong time」は『ダイ・ハード』シリーズ中の台詞の元ネタだろう。[DVD(字幕)] 9点(2009-09-09 22:21:59)

124.  裸のキッス 開巻と同時にまさに襲い掛かるバイオレンスの唐突性と、タイトルバックでコンスタンス・タワーズが鬘を直すカメラ目線のインパクトがもたらす不穏な感覚に一気に引き込まれる。 撮影スタンリー・コルテスによる夢幻的で美しい画調と、露悪的な主題提示のギャップも強烈に倒錯的である。 特に絶妙な光加減が醸しだす夜間場面の妖しいまでの艶かしさは比類ない。その対象を輝かせるキーライトの強さは逆に表情の側面に落とされた暗い影の強さをも際立たせ、人物の後ろ暗い一面を暗示的に浮きあがらせるようでもある。 最後の俯瞰ショットで、陽光を受けながら出所する彼女に対し、取り巻く街の住民たちが建物の影の中に配置されているのは偶然だろうか。 子供たちの縄跳び遊びやレコード・録音テープ等の回転運動、合唱、クロースアップ。これらの反復がニュアンスを変えながらクライマックスに収束していく絶妙な語り口が素晴らしい。[DVD(字幕)] 9点(2009-08-30 16:04:45)《改行有》

125.  カトリーヌ ジャン・ルノワールとアルベール・デュードネの共同監督名義という、曰くつきの作品。様々なバージョンがあり、両者の関与の程度についても様々に議論があってややこしいが、ルノワール作品らしい瑞々しいショットに満ちている。同時に、随所に見出されるグリフィスへの傾倒も非常に感慨深い。放浪する「孤児」であり、「小間使い」である少女の薄幸のイメージ。照明とフォーカス効果、クロースアップを最大限に活かして、主役カトリーヌ・エスランの容貌を美しく印象付ける配慮。群衆が乱舞するニースのカーニヴァルのスペクタクル性と、屋内・屋外のダンスを「円」で繋ぐカットバック。さりげなく物語に機能する「椅子」。そしてラストのクロス・カッティングを駆使した「列車と自動車」による怒涛の一大救出劇。あまりに率直で直截なオマージュからは、初作品を通しての映画への思いが伝わるようだ。特に迫力に溢れたクライマックスの路面電車の暴走は圧巻である。後の『獣人』で鮮烈な印象を残す列車疾走の先駆けともいうべき圧倒的な画力に圧倒される。車両を背後から捉えるカメラは振動でぶれ、木立は流線となって後景を飛び去っていく。位置関係の整合性、スピードの一貫性を無視した荒々しい編集が却って無方向的なエネルギッシュさを発散させて『イントレランス』にも引けをとらない感動を生んでいる。[DVD(字幕)] 9点(2009-08-11 20:58:40)

126.  ボディ・スナッチャー/恐怖の街 回想形式でのスタートだが、救急病院を示す屋外のファーストショットから流れるような移動で院内の主人公が回想に突入するまでほんの数分、ショット数にしてわずか4というスムーズな語り口があまりに見事である。この4ショットの間に、主人公に関する必要な情報のみ簡潔かつ的確に提示し物語に引き込む手際の良さ。日中はロケーション主体の写実的なタッチ、夜間はノワール的な照明設計(低位置のライティングよる陰影の拡大、闇を強調した夜間撮影など)、ここに階段や丘道による高低差・坑道や地下室の暗い閉塞空間を効果的に織り交ぜ、不気味なムードとサスペンス感を一段と増幅してみせる傑出した技能は低予算作品で培われた職人技といって良いだろう。要所で限定的に用いられるひずんだクロースアップの効果も絶大である。ここには大スターも大掛かりな美術セットも特殊効果もないが、全編が豊かなスペクタクルに満ちている。(モノクロームならではの、夜の路地の妖しい美しさといったらない。)これぞB級の美質。[ビデオ(字幕)] 9点(2009-07-29 21:38:27)

127.  あらくれ(1957) キャストに限らず、全編が見どころに溢れ充実している。●つなぎの面白さ。中盤の場面転換で、海辺を歩く男女のショットが不意に登場する。一体何かと思うと、実は高峰秀子と森雅之が見ている映画内映画『金色夜叉』の一場面で、そこでは貫一が宮に蹴りを入れ始める。(言うまでも無く、加東大介らを蹴りつける高峰の暴力的なキャラクター造型に対応している。)これを見る彼女の表情がまた絶妙で、さりげないユーモアが利いている。(仏壇、さらには墓地への唐突なつなぎ等もいい。)●大正期の街並みと風俗を精緻に再現した、河東安英によるオープンセットの見事さ。活気に満ちた東京の路地の情景、行き交う物売りの担ぐ荷車、人力車まで凝りに凝った美術が素晴らしい。●雨、雪、風。終盤の雨はもちろん、山村の旅館に積もった雪の質感と情感も驚異的である。(高峰と森の絡みの場面で、雪塊が氷柱のはった屋根から一気に雪崩れ落ちる、その構図とアクセントの見事さ。)また、風物や音声を駆使して木目細かく表現される四季の移り変わり。短いはずの撮影期間内で、折々の光を玉井正夫が繊細に掬い取っている。[映画館(邦画)] 9点(2009-07-27 20:03:00)

128.  のらくら兵 中盤の兵舎内でのドタバタも面白いが、なんと言っても後半のパーティシーンの乱痴気ぶりが圧巻。大らかさ、楽しさを通り越して、パワフルで凄まじい。『女優ナナ』に続く滑稽な宙吊りアクション、回転する花火の火花、放水の激しい水しぶきと右往左往する観客たちが入り乱れる画面の圧倒的な活力。多様なポジションから即興風に捉える手持ちカメラは画面が少々ぶれようが焦点がぼやけようがお構いなし。場の活気と狂乱に同期し一体化するかのような鮮度感に満ちた画面で映画を盛り上げる。エピローグの簡潔にしてスマートな大団円も幸福感と愛嬌に溢れ素敵だ。[DVD(字幕)] 9点(2009-07-25 20:21:02)

129.  まごころ(1939) 題材とも合致した、鈴木博の本領といえる軟らかな画調が滋味深い。 少女たちが泣きじゃくる校庭のベンチの上で揺れる木立、小川のせせらぎと川面の光の揺れ、風に揺れる畑のとうもろこしや小川に沿った並木道の道端に咲く野花など等。 郷愁に満ちた生活空間の風情はロケ地選びや画面構成の力量だけでなく、ソフトなタッチを活かした珠玉の撮影あってこそのものである。 二人の少女の画面映えも素晴らしい。(団扇から顔半分覗かせる加藤照子のショットが絶品。) 映画研究塾の成瀬論を応用するならば、「背負い歩き」、「振り返り」、「顔のふれあい」、「びっこ引き」といった豊かな具象的イメージがまず監督にあり、それらを導き出すものとして水浴中の怪我のエピソードが逆算的に設定されたのはまず間違いない。 その上で、親同士の再会という説話的流れも並行して違和感なく発展させてしまうのだから見事だ。 小川、児童、おんぶ、縦構図の一本道と、同時期の清水宏の画面と何気なしに響きあう点も感慨深い。[映画館(邦画)] 9点(2009-07-20 19:00:02)《改行有》

130.  トウキョウソナタ 映画の基調色となる緑が印象深い。ハローワークの階段の壁に貼られた無機質な表示や小泉今日子を拘束するガムテープ、清掃する香川照之の前で子供がこぼすメロンソーダらしき液体、井之脇海が拘置される警察署地下のホラー風アクセント照明、あるいは小柳友が仲間とチラシを投げ捨てる橋のライティングなど等、闇や陰影が控えめとなった替わりに多様なグリーンが画面を彩る。香川と小泉の断絶の提示が画面上で決定的になるのは、居間とダイニングの段差がもたらす立位置のみならず二間を分けるグリーンとオレンジの照明の分断にもよるだろう。地平線に立つ女性主人公を照らす光と大気と風と、時刻の変化が示す奇跡的な瞬間の感動は、個人的にはロメールの『緑の光線』や『レネットとミラベルの四つの冒険』の一遍(『青い時間』)に通じる映画感覚である。随所に散りばめられた色彩効果によって、最期の演奏場面のシンプルな白い光線の揺れが一層引き立ち、輝きを増している。[映画館(邦画)] 9点(2009-07-19 16:08:59)

131.  限りなき舗道 ウエイトレス仲間である主人公の親友(香取千代子)は表情豊か。茶目っ気に満ちた身振りで枕やリンゴを放り投げ、拾った空っぽの財布を投げ捨て、部屋の中で軽やかに飛び跳ねる活発なアクションを担う。対照的な主人公(忍節子)は清楚で奥ゆかしく動作は控えめ。うつむく、振り向く、首をかしげる、とアクションは小さく慎ましい。自動車事故でベッドに横になった彼女はさらに身動きを制約されてしまうという具合だが、その中で健気に首を起こし親友たちの見舞いに応える小さな所作こそ優れて情感的なアクションとして際立つ。同時に、これらの小さな屈曲を主体とした半円的な身体運動の数々は、終盤の決意の場面で唯一用いられる彼女の自立的な表情への直線的なトラックアップの強度を一層引き立ててもいる。 ●この作品では成瀬映画おなじみのモチーフともいえる交通事故が二度も登場。後期の『ひき逃げ』以上に直截的な描写であるのが興味深い。 ●同じく特徴的である、スムーズな場面転換術も随所で効果を発揮。(デザートグラスからウイスキーグラスへ、手鏡から鏡台へ、花瓶の花から観葉植物へといったドラマ的な対象物同士によるつなぎの妙。ドアの多用。結婚後すぐの場面に登場する鳥かごのさりげない暗示性など。)[CS・衛星(邦画)] 9点(2009-07-18 22:33:31)《改行有》

132.  街の野獣(1950) 実景による街の俯瞰ショットは、人間の矮小さをも際立たす。冒頭で闇の街中を逃げ回るリチャード・ウィドマークの人影もその卑小さを強く印象付け、続くジーン・ティアニーのアパート階段上から彼を捉えるカメラアングルもまた、その勾配がもたらす遠近法によってその孤立を駄目押しするかのようだ。一方の屋内空間では、極端なパースを活かした構図や仰角画面によって顔面はいびつにデフォルメされ、空間の狭さが強調される。これら「見晴らしの悪い夜の屋外実景」と「窮屈な屋内セット」の二段活用は、何処へも「逃げ出せない」という主題と、物語の結末の暗示ともなる。終盤の逃走場面に登場する工事現場内の狭いらせん階段の歪曲と闇がもたらす切迫感、レスリング場面の張り詰めた重量感と迫真性も非情に見事である。[DVD(字幕)] 9点(2009-05-09 22:11:47)

133.  銀河鉄道999 スタッフの熱意の伝わる、東映動画最盛期の傑作。 ●椋尾篁の黒を多用した精緻な背景美術の美しさとスケール感。ここでは劇場版を意識した大判の背景画が用いられ、実写でいうところの移動撮影やズーミング(市川的)で空間の広がりと奥行きを表現している。 ●金田伊功原画によるパースペクティブとデフォルメを活かしたダイナミックなアクションの素晴らしさ。 その大胆なパースもまた画面に深度を与えている。 彼の主に担当したクライマックスの惑星崩壊・炎上の圧倒的な描写はふんだんな透過光の効果と相俟って特に傑出した映画美となっている。 (繋いだ手の感動的ストップモーション。) ●東映動画初期から実務経験を積んだりんたろうならではのアニメーションの醍醐味として、さらには映画の主題としての疾走へのこだわり。 主人公は全編、それこそラストカットまでひたすら走り続け、画面を躍動させる。 ●優れた映画の一条件といっても良いかもしれない、風の表現。 特に、別れの駅の場面に吹く風の見事さ。 二人の間を吹き抜ける静かな風の強弱を表現したアニメーション感覚が絶妙であり、 映画の情感を一段と高めている。 ●ヒロインへの紗のかけ方、ショックシーンの編集等もいかにも市川崑的だ。[映画館(邦画)] 9点(2009-04-21 23:20:30)《改行有》

134.  シックス・センス 奇しくも、死者との交流と癒しを描いた美しい日本映画『学校の怪談4』(1999)と同年公開である。こちらも子供の視点とアングルを多用した静謐で丁寧な作風が非常に好ましい。微かな音楽、あるいは無音を活かした世界構築と共に、全編にわたり無駄な台詞を極力切り詰めた優れた脚本が本作の静謐さを生む美質のひとつである。一例として挙げれば、亡くなった少女の家庭の状況を、部屋の中を移動する1ショットの合間に、遺族たちの最小限のささやき声と壁の写真のみで十二分に語りきってしまう卓越した手腕。大幅な省略ゆえに、逆に個々の台詞が重み、深みを湛える。または画面の美点。印象的ならせん階段に浮かぶ赤い風船、扉、ドアノブやテントに用いられる赤い配色は余計な宗教的意味合いなどに還元されずとも純粋にワンポイントカラーとして美しく、妖しく映画を彩っている。そしてこれはフィラデルフィアの映画、歴史に埋もれた被迫害者たちの慰霊の映画として忘れ難い。[映画館(字幕)] 9点(2009-04-17 20:59:51)

135.  過去を逃れて 特に夜間場面におけるモノクローム撮影術の見事さは、『キャット・ピープル』のジャック・ターナー&ニコラス・ムスルカのコンビならではのもの。人物のシルエット、シェードランプやカーテンの揺れが十分に使いこなされ官能的ムードに満ちた屋内撮影はノワール様式の充実ぶりを示す。一方で、黒塗り車の光沢が醸しだす夜の街路の妖しさやアカプルコ~タホ湖近辺の自然景観など、屋外ロケの充実も作品世界をより豊かにしている。ロバート・ミッチャムの一貫して動じない物腰とポーカーフェイスの魅力、ジェーン・グリアのミステリアスな美貌。さらに不敵なカーク・ダグラスも絡んだ駆引きのサスペンスと展開の圧倒的スピード感によって、最後までドラマの緊張が途切れない。さらに注目すべきは、夜の山小屋でのスピーディな殴り合いの迫力。作中ほぼ唯一の身体アクションの場面だが、これほどのスピード感に満ちた拳闘アクションはなかなか見られない。[DVD(字幕)] 9点(2009-04-11 23:00:08)

136.  拳銃魔(1949) 走るキャデラックの後部座席に据え置かれたカメラがフロントガラス越しに進行方向の市街路と前席の主役二人の対話を捉える。路肩に駐車すると、運転席の男は右手の建物に素知らぬ風に入っていく。奥の角から警官が現れ、助手席の女は慌てて車を降り世間話で彼の気を引く。突然、男がドアから飛び出し、女は素早く警官を一撃する。警報が鳴る中、車を急発進させ逃走する二人、、。屋外の一ショットで銀行強盗の一部始終を捉えきった長廻しショットが実に圧巻である。人工照明のない即興風の画面感覚と、同時録音の臨場感によって描写はひたすら生々しい。長廻しによる静的な空間が警報によって一変し、主役二者の機敏な連携アクションが突発的に起動する。カメラは定位置のまま二人の主観に同調するようにフロントの光景が荒々しく流れすぎていく、その緩急の感覚と迫真性が素晴らしい。この後に展開する逃避行の場面はいずれもそのラフな疾走感がただならない迫力を生んでいる。広角クロースアップでひずんだ不安定な構図が合間合間に短く差し挟まれ、二人の顔面を狭いフレームの中に押し込める形の画面処理がまさに追い詰められていく二人の息詰まる閉塞状況を的確に印象づけていく。冒頭の過剰な雨と、それに対応するラストの過剰な朝靄の視覚的インパクト、一旦は別方向に別れた二人が車をターンさせ一台に乗り込むシーンの自然光線の鮮烈さと二人の表情なども忘れがたい。[DVD(字幕)] 9点(2009-04-09 22:23:15)

137.  婦系図(1942) 石灯籠が並ぶ月夜の湯島天神境内の風情が麗しい。夜霧の漂う中、軟らかなライティングで梅の花の白が美しく滲んでいる。ここで主税(長谷川一夫)がお蔦(山田五十鈴)に別れ話を切り出すのだが、梅の木の幹に沿った上昇~下降~寄りの滑らかなクレーン撮影が醸しだす情感が二人の芝居とシンクロし、絶品である。これと同じ移動撮影が第二部後半同じセットで反復されるが、全く同様のカメラワークが今度は逆に舞い散る枯葉と寒々しい風音といった差異を際立たせ、彼女の孤独をより強調する効果をあげている。また美術的見どころとして第一部クライマックスである新橋駅の場面も素晴らしい。駅全景から改札そしてホームの人込みまでを延々と横移動で捉えた美術セットのスケール感、エキストラの規模は実景ロケと見紛うほどであり、別れの場面を細かいモンタージュを駆使して最高潮に盛り上げる演出も圧巻である。映画版の独創であるラストも優れた照明技術によって情緒に満ちた名場面だ。[映画館(邦画)] 9点(2009-04-05 23:04:36)

138.  春琴物語 同原作では島津版に続いて2度目の映画化。こちらは軟らかなローキーのタッチが特徴的である。春琴(京マチ子)の視覚に同調するように極度に明度に落としながら、その中で舞い散る桜や枯葉、雪、驟雨を美しく浮き立たせ、あるいは終盤の暗闇の中で絶妙の配光で針を鈍く輝かせるといった繊細な照明設計が為されているのがわかる。序盤での暗い廊下の奥から玄関口を臨む構図で捉えられた二人の初めての出会いと、後日談として付加されたラストの佐助の故郷における明るく開放的な入江の光景との対比。それは二人の開眼した心象を示すものだろうか。『忠治旅日記』での極めて情緒的な1ショットのごとく、触れ合う手と手のアップも印象深い。佐助と目の不自由な春琴が手をとり合うショットは度々反復されるが、二人の微妙な心情の機微と変化がその重なる手のアクションの微細な変化として捉えられていく様が見どころである。実演としか見えない京マチ子の琴の演奏も素晴らしい。[映画館(邦画)] 9点(2009-04-02 23:12:40)

139.  くちづけ(1955) 第一話『くちづけ』… いかにも石坂洋次郎原作らしいユニークなボキャブラリーと気取った台詞回しが楽しい。会話の中に『IT(あれ)』なんて単語が出てくるのも映画ファンにとっては一興。青山京子と太刀川洋一が教授(笠智衆)の前でホールドアップする身振りのコミカルさなどは『石中先生行状記』の杉葉子の一場面を連想させる。 第二話『霧の中の少女』…あぜ道、橋の上、温泉街、そして駅のホームを、次女(中原ひとみ)が風のように走りまわる。その軽やかな走り・躍動感がこの挿話最大の魅力といって良い。彼女を始めとする一家の屈託無い笑顔も素晴らしい。小泉博を迎えた夕飯の席、あるいは山の温泉で祖母(飯田蝶子)と姉妹たちが横並びになって「小原庄助さん」を歌うショットの和やかな幸福感。 まるでホークス映画のジャムセッションのような充実感。 第三話『女同士』…キャスティングはいわずもがな。短編ながら、自転車・チンドン屋といったお馴染みの意匠の数々が成瀬映画の刻印として登場する。表玄関を入ると一本廊下、診療室と並んで中村メイ子の下宿部屋といった特徴的な家屋構造もまた然り。 冒頭ではパッとしない彼女だが、自室でくちずさむ鼻歌を上原謙らに何気なく隣室で聞き流され、勝手口での八百屋の青年(小林桂樹)との会話を高峰秀子に廊下で立ち聞きされ、あるいは高峰秀子に日記を読まれるという、空間共有の劇を経ていくことで最後には不思議なほど魅力的なキャラクターへと変貌していく。 嫁入りのために表戸を駆け出していく彼女の姿が非常に感動的だ。 さらに最後。見事に「振り返」って作品を締める八千草薫も実に可愛らしい。 [映画館(邦画)] 9点(2009-03-06 21:30:42)《改行有》

140.  鉄腕ジム J・フォードと共に、いわゆる「男性派」監督として並び称されるラオール・ウォルシュもやはりアイルランド系。この映画での初期ボクシング、家族愛、喧嘩、お祭り騒ぎ、仲間同志の連帯感といった要素はいずれも映画では馴染み深い典型的アイリッシュのアイデンティティである。これらのモチーフは一見、固有の民族像を描出しながらも、その人間関係の奥底から醸される叙情性は幅広い普遍性を獲得している。会う度に反目し、喧嘩してしまうエロール・フリンとアレクシス・スミスだが、最後には二人の恋愛が成就するであろうことを誰も疑わないだろう。ライバルとなるチャンピオンとの挑発合戦も同様、最後には胸の熱くなる和解の場面が用意され、原題である『紳士ジム』のキャラクターに深みを与えている。(二者を重層化する大鏡の演出が秀逸。)アイリッシュ的要素の数々は同時に映画的活劇性にも満ちており、特に港の桟橋を舞台とした拳闘試合の喧騒が大いに映画を盛り上げていている。[DVD(字幕)] 9点(2009-02-01 20:28:58)

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