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プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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141.  僕達急行 A列車で行こう 《ネタバレ》  優しい映画ですね。  登場人物は善人ばかりだし、失恋というテーマを扱っていながらも暗くなり過ぎる事は無く、仕事での成功や友情など、明るく幸福な要素の方が色濃く描かれているように感じました。  森田監督の遺作という事で、最後に「ありがとう」という文字が浮かび上がる演出も、じんわりと胸に沁みるものがあります。  それだけに、全面的に作品を褒めたくなるような気持ちも強いのですが……正直に言うと、退屈に思えたシーンも多かったです。  「融資してくれーっ!」や「いちごミルク」の件なんかも、あと一歩で感動出来そうだったのに、ちょっとわざとらしく思えてしまい、ノリ切れない。  ゲームの話で盛り上がり、効果音付きで戯れてみせる件も、どうにもオタクっぽ過ぎるというか、観ていて痛々しく感じちゃいましたね。  監督さんに悪意は無いんだろうけど「鉄道の話で盛り上がるシーン」は非常に夢がある感じに描かれているのに「ゲームの話で盛り上がるシーン」はギャグで済まされており、そこに違和感が生じてしまった気がします。  その一方で、やはり主題となる「鉄道」に関する描写は力が入っているというか「模型」や「駅弁」など、押さえるべき点はキチッと押さえている感じがして、非常に好ましかったです。  自動車ではなく、電車を用いての移動ならば、恋人同士で話したり触れ合ったりする事に集中出来るし、お酒だって飲めるんだと示す辺りも上手い。  主人公が二人いる事を活かし「音楽を聴きながら窓に流れる風景を眺める」「電車が立てる駆動音や車輪の音に耳を傾ける」というタイプの異なる楽しみ方について、お互いに語らせる辺りも良かったですね。  それがラストの鉄道旅行における伏線となっており、音楽否定派だった方が笑顔で音楽を聴いている姿に繋がっていたりするんだから、実に微笑ましい話。  趣味を持つというのは如何に楽しい事か、友達がいる事は如何に素晴らしいかと教えてくれる、そんな一品でありました。[DVD(邦画)] 6点(2017-04-10 19:44:44)《改行有》

142.  映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険 《ネタバレ》  昨年の「新・日本誕生」が歴代ドラ映画でも三本の指に入るほどの名作であった為、大いに期待を込めて観賞。  結論から言うと、流石に前作を越えるほどの衝撃は味わえませんでしたが、まず満足出来る一品でしたね。  所謂「F原作大長編」の存在しないアニメオリジナルの作品としては「ひみつ道具博物館」に次ぐ出来栄えではないかな、と思います。  何といっても、脚本が良い。  これほど見事に「タイムトラベル」ならではの妙味を劇中の核に取り入れた作品は、ちょっと過去作品には無かったのではないでしょうか。  思えば十数年前、子供時代の自分は某ドラ映画を観賞し「何じゃそりゃ!」と盛大にツッコんで、時間軸が矛盾している脚本に呆れ返り「やっぱりアニメのドラえもんは原作漫画には敵わない」という偏見を抱くに至った経緯があったりしたのです。  それを、現代のドラえもん映画が汚名返上してくれた形なのだから、実に愉快痛快。  偏見を取り払い「アニメでも原作漫画より面白くする事は出来る」と教えてくれたのは「恐竜2006」でしたが、そこから更に十年以上の月日を経て「アニメオリジナルでも、複雑な時間軸を扱った面白い映画が作れる」と証明してくれたのは、本当に嬉しかったです。  伊藤つばさと星野スミレが背景で顔見せしたり、かき氷のシロップに「からあげ味」「かつどん味」があったり、ヒャッコイ博士が「ジャングル黒べえ」そっくりの仮面を被ったりと、遊び心に満ちているので、そういった小ネタを見つける喜びがある辺りも良いですね。  「氷細工ごて」を使って氷を溶かしながら移動するシーンは視覚的にも楽しいし、テントが強風で飛ばされてしまい、止むを得ずその場に穴を掘ってビバークするなどの「冒険」「探検」ならではのワクワクする展開がある辺りも嬉しい。  「南極でオーロラに見惚れながらカップ麺を啜ろうとしたら、すっかり凍ってしまっている」という場面が「翻訳コンニャクを食べようとしたら凍っている」という場面に繋がっている辺りも面白かったです。  また、全体的に演出がスピーディーであり、名曲「夢をかなえてドラえもん」によるオープニングの中で「氷の遊園地作り」「ジャイアン、スネ夫、静香を仲間に誘う件」を片付けてしまう辺りなんかは、大いに感心。  「南極での探検」「遺跡内での冒険」の中でもダイジェスト調にして手早く片付ける場面があり、自分としては好印象でしたが、ここは「ダイジェストになる場面が二回もあるのは、流石に如何なものか」と感じる人もいそうですね。  その他、あえて不満点を述べるとすれば「ゲストキャラであるカーラとの別れが、ややアッサリめ」だった事が該当するでしょうか。  エンディングの一枚絵にて「のび太との思い出のカキ氷機を大事にしている」と示されている為、それなりに余韻はあると思うのですが、ちょっと物足りなかったです。  前作において「ククルとの別れ」「ペガ達との別れ」と連続して描いたばかりという事もあり、今作においても別れのシーンを濃密に描いては流石に食傷気味になる……という判断だったのかも知れませんが、せめて一分くらいは尺を取って欲しかったなぁ、と。  クライマックスであるブリザーガとの戦いは「人間VS怪獣」という趣きがあり、実に自分好みで嬉しかったですね。  夢幻三剣士のシズカールに先駆けてドラえもんが「取り寄せバックで大量の水を取り寄せる」という作戦を披露しているのもニヤリとしたし「非力な人間達が知恵を働かせて、強大な怪獣を見事打ち倒す」という、心地良いカタルシスを味わう事が出来ました。  ラストにて「十万光年先のヒョーガヒョーガ星」を天体望遠鏡で観察し、十万年前に星が救われていた事を確認する演出なんかも(オシャレだなぁ)と、しみじみ感じ入りましたね。  二つの星と、十万年という時間、それらの壮大なスケールの話が、野比家にある望遠鏡のレンズの中で収束し、完結するという形。  子供の頃、原作漫画からしか感じ取る事が出来なかった「すこし」「不思議」な感覚をスクリーン越しに感じ取る事が出来た、素敵な映画でありました。  ……そして、来年はどうも「南海の大冒険」を再映画化するらしく(旧アニメ版の「南海大冒険」とは別物になるの?)なんて事も気になっていたりする訳ですが、それよりも何よりも監督候補が今井一暁さんなので、自分としては大いに期待しちゃいますね。  同氏が担当されている「最強! ころばし屋Z」や「巌流島ちょっと前の戦い」は文句無しの名作である為、映画ではどんな手腕を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方ありません。  今後も観客に夢を与えてくれるような、素敵な映画を作り続けて欲しいものです。[映画館(邦画)] 8点(2017-03-04 14:16:22)《改行有》

143.  アナザー プラネット 《ネタバレ》  様々な寓意を感じ取る事が出来ました。  主人公がトイレの落書きを懸命に消そうとする姿は、己の過去の罪を消したいという気持ちの表れなのだろうし、ラストにて出会った「もう一人の自分」が一歩前に踏み出して終わるのは「罪から逃げずに前を向いて歩き出す」事を示唆したハッピーエンドなのだと思われます。  気になったのは「何故ジョンではなく、もう一人の自分と出会ったのか?」という点ですね。  彼女達が全く同じ存在であるなら、もう一人の自分もジョンにチケットを譲っており、自分同士が出会う事は無いはずです。  単に視覚的な効果を重視したという可能性もありますが、恐らく両者は全く同じような過程を経るも「ジョンにチケットを受け取ってもらえたか否か」という決定的な差があるのではないでしょうか。  あるいは、もっと皮肉に「もう一人の自分はジョンに交通事故で家族を殺されたので、ジョンからチケットを譲られてやってきた」という可能性だってあるかも。  途中まで「これは二つの地球で起こった出来事を交互に描いているのか?」とも考えましたが、それが確定する描写が存在していないので(例えば、目も耳も不自由になり入院してしまったはずの同僚が、元気に通勤している姿を背景で見せるなど、いくらでもやりようはあります)推測の域を出ませんね。  そもそも、あんな近くに地球と同等の星が存在するのは重力の観点からして有り得ないので、あの星は彼女の生み出した妄想とか、何とでも言い張る事が出来そう。  作り手としても、あえて明確な答えは示さずに、受け手次第で色んな解釈が出来るように仕上げてみせたように思えます。  こういった「考えさせる映画」って、観客の「気付き」が要求されるというか、ともすれば「この映画の良さを発見出来た自分は優秀であり、この映画を高く評価出来ない人は発見する力が足りなかっただけである」という選民思想のようなものに繋がりかねないので、ちょっと苦手だったりもしますね。  でも、観賞後に誰かと「あの映画って、どう思う?」と語りたくなる魅力を秘めているのも確かです。  自分としては、総じて楽しめた時間の方が長かったし、ラストシーンからは前向きな解釈を得られたので、一応は満足。  どんな映画であれ「観客次第で名作にも駄作にも成り得る」ものなのでしょうが、本作はそんな具合に、作り手が受け手の感性に頼った面が大きい一品であるように感じられました。[DVD(吹替)] 6点(2017-02-06 14:48:57)《改行有》

144.  サイド・エフェクト 《ネタバレ》  「女は小さい頃から演技を学ぶの」「多分、男が嘘を学ぶのと同じ頃に」という台詞が心に残ります。  映画が終わった後も、女は精神病院から解放される為に演技し続けなければいけないし、対する男が勝利出来たのは、嘘を吐いた御蔭。  医療問題、薬物依存をテーマに扱った社会派映画かと思いきや、騙し騙されのサスペンス映画であったという、この作品を象徴するような台詞でしたね。  序盤は重苦しい雰囲気で、これは苦手なタイプの映画かと警戒していたのですが、中盤から俄然面白くなり、以降は画面に釘付け。  エミリーが夫を刺殺したシーンの衝撃は凄かったですし、彼女が真実を告白する件も良かったと思います。  これは少々アンフェアで、人によっては不愉快に感じてしまう部分かも知れませんが、最初から視点を主人公のジョナサンに定めず、さながらエミリーの方が主人公であるかのように描いていたのが、巧妙な目眩ましとなっていましたね。  これによって、観客は彼女に自然と感情移入する形となり、騙されやすくなってしまう効果があったと思います。  自分としては、序盤の彼女の描き方が俯瞰に徹していたというか、内面描写にまでは踏み込んでいなかった点を考慮して、ギリギリセーフかと判定する次第。  そんな具合に「気持ち良く騙された!」「これは傑作だ」と大いに褒め称えたくなる一品なのですが、終盤の展開には不満もあり、残念でしたね。  幾ら何でも黒幕の女性がペラペラと喋り過ぎというか「証券詐欺に、殺人の共謀容疑」なんて丁寧に罪状まで言わせちゃって、それを逮捕の決め手にしちゃうだなんて、本当にガッカリ。  自白させる展開自体が間違っているとは思いませんが、もう少し時間を掛けるか(安易だなぁ……)と思わせない工夫が欲しかったところです。  せめて警官に「殺人の共謀容疑と証券詐欺で起訴します」と復唱させるのを止めるだけでも、少しは印象が違っていたのではないでしょうか。  結局、エミリーも精神病院に収監されて元の状態に戻っただけなので(何らかの手段でそこから脱出してしまうかも?)(主人公が復讐されてしまうかも?)と思うと、今一つ落ち着かなくて、ハッピーエンド色が薄いように感じられた辺りも残念。  失いかけた家族を取り戻す主人公の姿についても、詳しい過程が語られず「無事に元に戻りましたよ」と結果だけが示される形だったので、どうにもカタルシスを得られず仕舞いでした。  ソダーバーグ監督らしく、展開がスピーディーなのは長所でしょうし、種明かしを済ませた後は、スパッと短く終わらせるのも正解だとは思います。  それでも、もっと丁寧に描いて欲しかったなぁ……と、ついつい感じてしまった映画でありました。[DVD(吹替)] 6点(2016-12-15 07:38:26)(良:1票) 《改行有》

145.  ロボコップ(2014) 《ネタバレ》  黒いロボコップが恰好良いという、それだけで満足してしまいそうになる一品。  フェイスオープンの状態から、バイザーが下りると同時に赤い目が光り、戦闘開始となるシーンなんてもう、痺れちゃいましたね。  正面玄関からバイクでビルの中に突っ込み、着地するより先に飛び降りて、その勢いのまま膝蹴りを敵のED209に見舞うアクションなんかも、これまた最高!  その後、左腕がED209の亡骸に挟まって身動き取れなくなったら、自ら左腕を切断して窮地を脱する展開なんかも、実に良かったです。  ここは、痛みを感じない「ロボコップ」だからこそ成立するシーンであり、キャラクター性を活かしたアクション演出として、大いに評価したいところ。  黒人の相棒警官が、黒いスーツを纏った主人公に対し「これで色も相棒だ」と笑顔で軽口を叩いてみせるも、別れた後に、その「黒い背中」を悲しげに見つめる表情なんかも、味わい深いものがありました。  「最高のヒーローは?」「死んだヒーロー」という会話も、独特の皮肉が利いていましたし、ゲイリー・オールドマン演じる博士が、一旦は敵に買収された振りをして、その後にロボコップを助けようと奔走する姿も良かったですね。  特に後者に関しては、中盤にて「命令には逆らえない小心者」だと示すシークエンスがあっただけに、越えてはならぬ一線だけは越えずに踏み止まってくれた事が、本当に嬉しい。  主人公がロボコップとなった後、機械ではない「生身」の部分が、どれだけ残っているのかを見せ付けられるシーンも、非常に衝撃的。  もう決して元の「人間」には戻れない。  「ロボコップ」として生きるしかない……と思い知らせる効果があり、そういった布石があるからこそ、ラストの「機械ではなく人間である事を証明する」シーンの感動が、一際大きくなっているのだと思います。  勿論、過去作における銀色のボディもレトロで、メカメカしくて味があったのですが、自分としては如何にも「戦闘用」という趣きがある今作の黒ボディの方が好み。  それだけに、黒ボディが破損した後のエンディングでは、銀色のボディに変わってしまっているのが、実に残念。  「人間としての感情を取り戻した明るい笑顔」には銀色の方が相応しいし、元々「没デザインとなった銀色ボディも存在する」という伏線が張られていた以上、壊れたボディの代理として使われるのは自然な事なのでしょうが、出来るなら最後まで黒で通して欲しかったところです。  また、ニュース番組にて激昂するサミュエル・L・ジャクソンを映し出し、ブラックユーモアを叩き付けるように終わる手法も、決して嫌いではなかったのですが……どちらかといえば、家族の再会で綺麗に終わらせてくれた方が、より好みだったかも知れません。  いずれにせよ、旧三部作においても2の妻との対面シーンが一番好きだったりした自分としては、家族愛を中心に据えて作られている事が、非常に嬉しかったですね。  結局は命令に逆らえず機械のまま生き続ける1987年版とは全く違った、人間としての自分を取り戻し、家族とも再び一緒になるという、掛け値なしのハッピーエンド。  こういう「ロボコップ」が観たかったんだと、胸を張って言える作品でありました。[DVD(字幕)] 7点(2016-12-02 18:56:46)《改行有》

146.  ハミングバード 《ネタバレ》  まさかジェイソン・ステイサム主演の恋愛映画を拝める日が来るとは思っておらず、驚かされましたね。  互いに心の傷を抱えた者同士の、束の間の交流。  二人の心情が、とても丁寧に描かれている作品だと感じました。  そこかしこにアクション映画としての要素が含まれている事に関しては、嬉しくもあったのですが、やや焦点がズレているようにも思えて、少し残念。  主人公が精神的な病を抱えているという設定も、ちょっと感情移入しにくいものがありましたね。  終盤にて「見えるか? ハミングバードだ」と言われても、今一つ共感出来なくて、どうしても距離を置いてしまいます。  一番の難点は、ヒロインがドレス姿に着替えて会いに来てくれたシーンにて、主人公ほどの衝撃と喜びを味わえなかった事でしょうか。  非常にマニアックな発言で申し訳ないのですが、彼女に関しては「眼鏡をかけたシスター」としての普段の姿の方が好みだったもので、着飾った姿には(なんか……普通の美人のお姉ちゃんだなぁ)と、あんまりテンションが上がらなかったりしたのですよね。  ラストも微かな救いはあるけれど、ハッピーエンドとも言い難いものがあり、これも好みではありません。  けれど「人並みに生きられたこの夏を、君と過ごせて良かった」という告白に対しては、胸を打たれるものがあったし、悲劇的であるがゆえの美しさのようなものは感じられましたね。  子供時代に性的虐待を行っていた大人を殺傷したというヒロインの過去には同情出来たのに対し、戦場で仲間を殺された腹いせに無関係な民間人を殺したという主人公の過去には流石に同情出来ない点がマイナスだと思っていたのですが、それに関しても(あぁ、だからヒロインと違って主人公は自殺のような末路を辿るのか……)と、一応は納得。  ビターな味わいの、大人の映画でありました。[DVD(吹替)] 5点(2016-11-04 08:03:10)(良:1票) 《改行有》

147.  永遠の0 《ネタバレ》  「上手い」と感じる部分と「ズルい」と感じる部分とが混在しており、評価が難しい一品ですね。  まず、本作はフィクションであるはずです。  にも拘らず、さながら事実をそのまま映像化したような印象を与えてしまう。  これは創作物として非常に優れた点であると同時に「現実と虚構の区別をつかなくさせる」作用も大きく、純粋に「映画」として楽しむ事を妨げているようにも思えました。  実質的な主人公である宮部久蔵というキャラクターは、非常に魅力的ですね。  軍人でありながら命を惜しみ、誰にでも敬語で礼儀正しく接して、端正な顔立ちの二枚目。  大人しくて卑屈な性格かと思いきや、仲間の尊厳が踏み躙られた時には上官に反抗だってしてみせるという、正にフィクションだからこそ許される存在。  この映画のタイトルに「実録」なんて付いていようものなら(これ、絶対美化しているよね?)と疑ってしまうのは避けられなかったはずです。  積極的に戦争に参加していないくせに、実は凄腕のパイロットであるという矛盾した一面も良い。  同僚と「模擬空戦」を行い、瞬時に相手の背後を取って、鋭い眼光で睨み付けている時の姿なんて、とても格好良かったです。  上述の「ズルい」部分に該当する話でもあるのですが、この映画って「戦争は良くない」という基本スタンスでありながら、空戦シーンは非常に面白く撮っていたりするのですよね。  主人公が零戦を宙返りさせる姿にも、思わず見惚れてしまうような魅力があり、そういった意味においては「軍人に憧れる子供」を生み出してしまう可能性はあるかも。  その一方で「上手い」と感じたのは、作中において大きな謎である「何故、命を惜しんでいたはずの宮部が特攻したのか」に対して、明確な答えを出さなかったという事。  作中の情報から推測する限りでは、教え子達が次々に特攻して死んでいくのに、自分だけが生き延びるという罪悪感に耐えられなかったからだと思えます。  ただ、自分としては、この「理由を知りたいのに決して知る事が出来ない」という現象が「何故なら、その人は死んでしまったから、訊きたくても教えてもらえないのだ」という答えに繋がっているようにも感じられたのですよね。  恐らくは戦争行為における最大の喪失であろう「人の死」が「決して明かされる事のない謎」を生み出してしまったという、何とも悲しい結末。  だからこそ、特攻していく宮部の姿を最後までは描かず、不思議な笑みを浮かべさせたまま、戦死の直前で終わらせたのだと思われます。  一度死んで0になってしまったものは、永遠に0のまま、1には戻らない訳です。  面白いというか、少々意地悪なユーモアを感じられたのは、現代パートにおいて宮部の孫が「特攻と自爆テロの違い」について語る場面。  ここは作中の流れを踏まえて考えれば「特攻は無差別に民間人を狙ったりしない。空母だけを狙うのだから、自爆テロとは違う」という結論で終わらせても良かったはずなのです。  けれど、本作においては議論の相手から「昔の日本軍を美化して考えるのは、今現在の自分に不満があるがゆえの逃避行動だ」という指摘が行われており、結局それに対して宮部の孫は反論出来ず、大声で怒ってから逃げ帰るというストーリーにしている。  この「特攻を美化して話す人間の格好悪さ」を、意図的に描いているような辺りは、良いバランスだなと思えました。  山崎貴監督は、基本的には好きな監督さんですし、本作においても家族愛を軸に据えて、万人が感動出来るような形に仕上げてみせたのは、実に見事だと思います。  ただ、どうも演出過剰な面もあり、ラストに零戦の幻影を見るシーンなんかは、それが悪い方向に作用してしまった気もしますね。  あそこは、もう少し静かに余韻を残して、平和になった現代の姿を映し出すだけでも良かったかも。  その一方で、過剰だからこそ良いと思えたのは、宮部の戦友である景浦が感情を発露させる場面。 「特攻がどんなものか、見ていますよね?」 「殆ど敵艦に辿り着けていないって!」 「殆ど無駄死にだって!」  と訴える姿には、大いに心を揺さ振られるものがありました。  もし、この映画に何らかのメッセージが込められているとしたら、それはこの叫びに尽きるのではないかな、と思う次第です。[DVD(邦画)] 7点(2016-08-11 20:41:14)(良:1票) 《改行有》

148.  映画 ビリギャル 《ネタバレ》  あらすじを知って(やれば出来る、の見本のような話だな……)と思っていただけに、劇中にて塾の講師が「やれば出来る、という言葉は良くない」と言い出した時には、驚かされました。  その後に「やっても出来なかった時に、挫折感を味わってしまうから」と説明してもらう形となっており「なるほど」と大いに得心。    実話が元ネタで無ければ「有り得ない」「大学受験を馬鹿にしている」と批判も受けてしまいそうな非現実的ストーリーゆえか、登場人物もステレオタイプな描き方。  塾の講師と、学校の先生の描き分けなんて、正に善と悪。  理想の教師と最低の教師という対比となっており(ここまでやっても良いの?)と最初こそ戸惑いましたが、結果的には思いっ切り極端化させた事が、成功に繋がっていたように思えますね。  主人公同様に、観客も余計な懸念は捨て去って、講師を全面的に信頼し、純粋に受験を応援する気持ちになれたかと。  また、上述の「最低の教師」を後半あまり登場させず「嫌な奴を見返してみせた」という陰湿な復讐の快感をズルズル引っ張らなかった事によって、終盤の爽やかな成長物語に繋げた辺りも、お見事でした。  母親が苦労して塾の費用を工面した件では(これは何としても頑張ってあげないと!)と思わされたし、父親の「野球馬鹿親父」っぷりなんかも、説得力があって良かったです。  私的な事ではあるのですが、身近にあの親父さんに良く似たタイプの人がいるもので、確信を持って「こういう人、いるよ」と言えたりするのですよね。  その父親も完璧な悪役にする事は無く、ちゃんと良い部分(困った人は見捨てられずに人助けする場面)も見せる辺りなんかは、不器用なやり方でしたが、何だか凄く嬉しかったです。  この作品に関しては、全体的に「実話ネタである」事が上手く作用していたみたいで、恋愛要素が極めて薄い辺りなんかも好印象でしたね。  これが完全な創作であれば、先生なり同じ塾の生徒なりと恋に落ちていたかも知れませんが、そういった要素は取っ払い、受験のみに専念してくれたので、安心して楽しむ事が出来ました。    野球映画を観た後に、キャッチボールをやりたくなる。  音楽映画を観た後に、歌い出したくなる。  それと同じように「ビリギャル」を観た後は、勉強してみたくなったのだから、間違いなく良い映画なのだと思います。[DVD(邦画)] 7点(2016-08-11 18:24:12)《改行有》

149.  くちびるに歌を 《ネタバレ》  合唱のシーンは、素晴らしいの一言。  ただ唄うだけではなくて、スポーツと同じように身体を鍛える必要もあると示す練習シーンを、事前に積み重ねておいた辺りも上手かったですね。  皆の努力の成果である歌声に、純粋に感動する事が出来ました。  その他にも、色々と「泣かせる」要素の多い映画であり、それに対して感心すると同時に「ちょっと、詰め込み過ぎたんじゃないか?」と思えたりもして、そこは残念。  特に気になったのが「柏木先生がピアノを弾けなくなった理由」で、どうも納得出来ない。  「私のピアノは誰も幸せにしない」って、誰かを幸せにする為じゃないとピアノを弾きたくないの? と思えてしまったのですよね。  終盤、その台詞が伏線となり「出産が無事に済む」=「音楽は誰かを幸せにする力がある」という形で昇華される訳ですが、ちょっとその辺りの流れも唐突。  世間話の中で「実は先生は心臓が弱い」という情報が明らかになってから、僅か三分程度で容態が急変する展開ですからね。  これには流石に「無理矢理過ぎるよ……」と気持ちが醒めてしまいました。  「マイバラード」を他の学校の合唱部まで唄い出すというのも、場所やら何やらを考えると、少し不自然かと。  個人的には、音楽というものは存在自体が美しくて素晴らしいのだから「音楽は素晴らしい」だけで完結させずに「……何故なら、人の命を救うから」という実利的な面を付け足すような真似は、必要無かったんじゃないかな、と思う次第です。  終盤の合唱シーンは、ただそれだけでも感動させる力があったと思うので、もっと歌本来の力を信じて、シンプルな演出にしてもらいたかったところ。  主人公を複数用意し、群像劇として描いているのは、とても良かったですね。  合唱というテーマとの相性の良さを感じさせてくれました。  特に印象深いのが、自閉症の兄を持つ少年の存在。  彼が「天使の歌声」の持ち主である事が判明する場面では「才能を発見する喜び」を味わえましたし、内気な彼が少しずつクラスメイトと仲良くなっていく姿も、実に微笑ましかったです。  「兄が自閉症だったお蔭で、僕は生まれてくる事が出来た」という独白も、強烈なインパクトを備えており、色々と考えさせられるものがありました。  欲を言えば「アンタもおって良かった」という優しい言葉を、彼にも聞かせてあげて欲しかったですね。  ストーリーを彩る長崎弁は、耳に心地良く、のどかな島の風景と併せて、何だか懐かしい気分に浸らせてくれます。  細かな部分が気になったりもしたけれど、それを差し引いても「良い映画だった」と、しみじみ思える一品でした。[DVD(邦画)] 7点(2016-07-21 06:48:28)(良:2票) 《改行有》

150.  ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金 《ネタバレ》  「これでもまだ実話」のテロップには参りました。  笑ったら不謹慎なのでしょうが、ついつい頬が緩んでしまいましたね。  マイケル・ベイ監督作としては、非常に異質な内容である本作。  豪華な出演陣と、シニカルなストーリーのギャップにも、ちょっと戸惑うものがありましたが、何処か作り手が楽しんでいるというか 「こんな馬鹿げた事件があったんだよ。どう? 笑えない?」  と問い掛けているような雰囲気が漂っており、あまり深刻にならず、リラックスした状態で観賞する事が出来ました。  「悪人だけど、どこか憎めない」というタイプの主人公達だったのですが、やっている事は凶悪極まりない為、最後まで感情移入は出来ず。  書類にサインさせる為に、被害者を拷問している場面もキツかったのですが、個人的に一番落胆させられたのは、終盤の貸金庫の件。  その中身が、思い出の写真、そして子供時代の靴の型である事に怒って「金は無いのか」と怒り出す主人公の姿は、本当に見苦しいの一言でしたね。  ここで決定的に愛想が尽きたところで、映画が終局を迎える構成となっているのは上手かったです。  また、被害者の豊胸パックを取り出さなかったばかりに、それが決定的な証拠となってしまう辺りにも「そこかよ!」と思わずツッコミ。  指紋については気を遣っていただけに、その間抜けな見落としには、乾いた笑いを感じられましたね。  主人公達が筋トレに病的に固執している点や、理想的なボディと現実の経済事情とのギャップに耐え切れず犯行に至ったと思しき点など、色々と分析してみるのも楽しそう。  けれど、それよりは、もっと肩の力を抜いて、実話である事も意図的に忘れてみせて、のんびりと観賞するのが最適な映画であるように思えました。[DVD(吹替)] 6点(2016-07-11 18:05:00)《改行有》

151.  ラブ&ピース 《ネタバレ》  二十五年以上前、まだ無名であった監督自身が書き上げた脚本を基に「夢見る若者」について描いた一品。  序盤に関しては、ハッキリ言って、観ているのが辛い内容。  主人公は「冴えない若者」どころの話じゃなくて、さながら精神的な病でも抱えているかのような、酷い描かれ方をしているのですよね。  トイレの個室の落書きが、そのまま主人公の強迫観念を描き出している演出と「炬燵に隠れる主人公の姿」が「亀」を連想させる演出などには、クスっとさせられましたが、精々それくらい。  怪獣みたいで良い名前だ、という理由でペットの亀に「ピカドン」と名付けるシーン。  そして、そんなピカドンに、人生ゲームのマップや、野球盤の上を歩かせて遊ぶシーンにて(おぉ、怪獣映画みたい!)と思わされた辺りから、ようやく面白くなってきて、後は右肩上がり。  いくら会社で揶揄われたのが原因とはいえ、ピカドンを主人公が自らトイレに流してしまう展開には疑問も残りましたが「皆に笑われて、自ら夢を諦めてしまった若者」を暗示している描写の為、仕方なかったのだろうなと、何とか納得出来る範疇でした。  その後に、ピカドンを想って作った曲を路上で熱唱し、主人公がスター街道を駆け上っていく展開は、本当に痛快で面白かったですね。  映画「地獄でなぜ悪い」の劇中曲が、本作で使われているファンサービスにも、思わずニヤリ。  また、サイドストーリーも秀逸であり、視点が主人公から離れる場面でも、全く飽きさせない作りとなっていましたね。  謎の老人の正体が判明する件には「サンタクロースだったの!?」と本当に吃驚。  作中にて彼に浴びせられる「どうせ来年も、アンタの配った夢が、ここに戻ってくるんだ……」という台詞にも、独特の情感があって、非常に良かったです。  サンタさんは皆に夢を与えている訳ではなく、皆が捨てた夢を配り直しているだけなのだという、哀しい世界観。  それが、実に味わい深い魅力を、作品に与えてくれていました。  予見していた通り、怪獣映画そのものなクライマックスが訪れた瞬間には、もう大興奮。  そして主人公が「過去の自分」「恥ずかしい夢を抱えていた頃の自分そのもの」であるピカドンと向き合い、耐え切れずに、震え出してしまう件では、こちらも固唾を飲んで、画面を見つめる事になりました。  誰だって、他人に知られたら恥ずかしいような夢を抱いていた事はあるはずですが、この映画は、そんな過去の自分を、否応無く思い出させてくれる。  そして、夢を叶えてみせたはずの主人公が、段々と嫌な奴へと化してしまった事も併せて描き「夢を抱く事って、そんなに素晴らしいか? 夢を叶えたら幸せになれるのか?」という、極めて難しい問いかけを投げかけてくるのです。  ピカドンが消えたのを目にし、呆然としたまま元いた家に帰っていく主人公の姿に、RCサクセションの「スローバラード」が重なる演出に関しては、もう反則。  名曲というだけでなく、非常に思い入れ深い曲でもあったりする為に、それだけで満点を付けたい気持ちに襲われました。  ただ、最後の最後、主人公がピカドンと再会して「カメ」と呼んだ事に関しては、大いに不満。  「スローバラード」曲中にて「カメ」と言っているように聞こえる部分があるからと、無理やり重ねたように思えてしまい「空耳アワーかよ!」とツッコんでしまいましたね。  「僕ら、夢を見たのさ」「とっても、良く似た夢を……」というフレーズに関しては、主人公とピカドンに似合っていただけに、そこだけが残念で仕方ない。  他にも、家具をそのままにしておいたという発言など「最終的に主人公は、この家に帰ってくる」伏線が分かり易過ぎた辺りは、欠点と言えそうです。  監督の特色である血みどろバイオレス描写、フェティッシュな性描写が無くとも、しっかり面白かった辺りは、嬉しかったですね。  上述の「夢」に関する問い掛けについても 「夢を抱く姿は滑稽で、馬鹿にされたりするかも知れないが、きっと分かってくれる人がいる」 「夢を叶える為に自分を見失うくらいなら、叶わなくても構わない」  という、優しい答えが示されているように思えて、じんわり胸が温かくなりました。  結局、この作品のラストにて主人公は、夢が叶う前の、ピカドンに夢を語り聞かせていた頃の、恥ずかしい自分に戻ってしまいます。  何の進歩もしていないと、馬鹿にして笑い飛ばす事だって出来てしまいそうな、寂しいエンディング。  だけど、今度こそは自分を見失わないまま、ピカドンを見失わないままで、夢を叶えてみせて欲しいと、全力で応援したくなる。  そんな、素敵な映画でした。[DVD(邦画)] 8点(2016-07-08 08:03:22)《改行有》

152.  はじまりのみち 《ネタバレ》  アニメ畑の出身である人が監督した作品にしては、あまり非現実的な内容でない辺りは嬉しかったですね。  ちゃんと、こういう人情劇も撮れるんだぞ、と証明してもらったような感覚。  木下恵介監督の作品は「カルメン故郷に帰る」「楢山節考」「二十四の瞳」くらいしか観賞していないのですが、劇中にて主人公が後の創作のアイディアとなったであろう場面と遭遇する流れでは(おっ……)と思わされました。  正直、それまでは(別に木下恵介が主役じゃなくても良いよなぁ)と思っていただけに、失望が喜びへと変わる瞬間を味わえたという形。  終盤にて、上述の経験から生み出された木下映画の数々が、延々十分以上もダイジェストで流れる演出なのですが、それを踏まえて考えると、事前知識が一切無い方が(あぁっ、あれって伏線だったのか!)と感動出来そうな感じですね。  最後の1コマでは、原監督お気に入りの「青空侍」を連想させるような演出もあったりして、彼のファンならば作中の木下恵介を原恵一と重ね合わせて楽しむ事も出来るかも。  難点としては、原恵一監督が木下恵介を尊敬するがゆえなのか、作中人物が全員「木下監督の作品は素晴らしい」と主張する立場で固められており、少々胡散臭いというか、創作者にとって優し過ぎる世界だな、と感じられた事でしょうか。  結局、この映画の中で主人公に批判的な人物は、顔も見えず声も聞こえない「検閲を行う軍部」しか存在しておらず、映画会社も、家族も、庶民代表のような便利屋さえもが、全て主人公の映画を絶賛して、応援してくれているのです。  にも拘わらず作中では「不遇の天才」であるかのように主人公を同情的に描いているのだから、何とも妙なバランス。  主人公が不貞腐れる事になる冒頭のシーンでは「特攻隊の映画を撮ろうと思ったら中止になった」という障害しか発生していない訳で、可哀想は可哀想だけど大袈裟に嘆く程でもないよな……と感じられるのです。  監督をクビになった訳でもないし、映画会社の人は別の映画を撮ろうと優しく提案してくれているにも拘わらず、自分の映画に文句を付けられたのが気に食わなくて癇癪を起こしたかのように田舎に帰ってしまう。  そりゃあ自由に映画を撮らせてもらえないのが嫌なのは分かるけど、そのくらいの躓きで映画作りを諦めて監督辞めると言い出すだなんて、それは芸術家としての美点ではなく欠点ではないかと。 「木下恵介って人は、そんなに映画作りの情熱に欠けた人だったの?」 「周りが皆揃って自分の作品を絶賛して応援してくれないと映画を撮れない人なの?」  なんて思えてしまうのだから、伝記映画としては、ちょっと頂けない内容でした。  母親の顔をハンカチで拭う件など、感動的な場面でやたらと大袈裟なBGMが流れるのも気になるところ。  ここも、監督さんとしては「木下恵介の母想いな優しさ」を強調したいという、善意ゆえの演出だったのかも知れませんが、少々押し付けがましく感じられて、残念。  漬物屋で育ち、大の漬物嫌い。黒澤明とのライバル関係。同性愛疑惑があってスタッフに美青年を採用していた等々の、エキセントリックな要素は「故人の名声を傷付ける」とばかりに排して、優等生的に仕上げたのだとしたら、何とも寂しい限りですね。  作り手の誠意は伝わってくるだけに、何だか心苦しいのですが、自分としては違和感の大きい映画でした。[DVD(邦画)] 3点(2016-07-03 01:51:26)《改行有》

153.  ヤング≒アダルト 《ネタバレ》  序盤にて(うわぁ、嫌な女だなぁ……)とゲンナリ。  中盤辺りで(あぁ、でも結構可哀想だな。彼女なりに幸せになろうと頑張っているんだな)と同情。  そして終盤にて頭を抱え込まされるという、良くも悪くも、観賞中ずっと主人公に釘付けになってしまった映画ですね。  基本的には暗い作風なのですが、何処か軽快でオシャレな匂いも感じさせる辺りは、この監督さんの持ち味なのだと思います。  過去作の「JUNO/ジュノ」に比べると、どうにも主人公の成長を感じられない内容だったりするので、それが意図的なのかどうかも気になるところ。  印象的な場面は幾つもあるのですが、特に「離婚した旦那との写真が、実家に今でも飾られている」件なんかは、本当に上手いなと感心させられましたね。  その一事だけでも、主人公が実家に帰るのを忌避する理由が把握出来たし「失敗した結婚なんだから、何時までも飾っておくのは止めて」と訴える気持ちも分かります。  帰省する車内にて、楽しそうに聴いていた「元カレとの思い出の曲」を、彼の奥さんが歌ってみせるのを目の当たりにして、呆然とするシーンなんかも良い。  それらの積み重ねがあるからこそ、主人公が単なる「嫌な女」で終わらずに、感情移入出来る存在となっているし、無茶苦茶な行動を取っても、何処か納得させられる説得力があるのですよね。  主人公が元カレの家に乗り込んで、二人で駆け落ちしようと迫るも、当然のように断られてしまう件なんかは、本当に痛々しくて目を背けたくなりましたが、彼女が何故そんな行動を取るのか理解出来ないという事は無く、混乱せずに見守る事が出来るのだから、凄い脚本なのだと思います。  ただ、彼女の最大のトラウマが「流産した事」というのは、少々安易に思えてしまって残念。  それほど独創的なネタでもないでしょうし、それなら終盤にて、さも驚きの真実のように告白させる形ではなく、もっと前の段階で分からせていても良かったんじゃないかな、と感じられました。  元カレに固執する理由が「一番良い時の私を知っているから」というのは、過去に囚われた彼女を表す台詞として、非常に良かったと思いますね。  その後、友人の妹から「この町は最低。都会で暮らす貴方が羨ましい」と言われて元気を取り戻す事になるのですが、正直そこに関しては、どうしても賛同する気持ちになれず、カタルシスを得られませんでした。  「相手の男を放ったらかしにして、一人だけベッドから抜け出す彼女」というシーンを、序盤と終盤とに挟む事によって、彼女が成長していない事を描いてみせる表現技法などには感心させられるのですが、それが感動にまでは結び付かない。  事故で傷ついた車のまま走り出すラストシーンなんかも「傷付きながらも生きていく女性の力強さ」を象徴しているようで、爽快ではあるのですが(結局、彼女って他人を思いやる優しさを持たないまま終わっているよなぁ……)と、ついつい考えてしまいます。  最後の最後で主人公を救う解決法が「他者を否定する事によって自己を肯定する」という形であった以上、どうしても後味が悪かったですね。  丁寧に作られた、クオリティの高い品である事は、疑う余地が無いと思います。  だからこそ、ラストシーンの主人公に共感出来ない事が、勿体無く感じられる映画でした。[DVD(吹替)] 4点(2016-06-24 07:39:40)(良:1票) 《改行有》

154.  ものすごくうるさくて、ありえないほど近い 《ネタバレ》  愛する肉親の死と向き合って、それを乗り越えていくまでを描いた成長譚。  主人公の少年にアスペルガー症候群の兆候があると判明した瞬間、それまでの彼の言動に納得させられた一方で(じゃあ母親が放任主義を取っているのは不自然じゃないか?)との疑念が湧いていたのですが、それを終盤にて吹き飛ばしてくれる脚本が見事でしたね。  「あのビルにいたのが、ママなら良かった」などの痛烈な台詞が盛り込まれていただけに、最後は母子が和解出来た事に、心底から安堵させられました。  ナイーブな少年を主役とした映画という事で、何処か既視感のある作風だなと思っていたのですが「リトル・ダンサー」と同じ監督さんだと知って納得。  エキセントリックな表現が散見される中、作品全体に不思議な上品さが漂っている辺りなんかも共通していましたね。  上述のように「本当は息子を見放していた訳ではなく、ずっと見守っていたのだ」と分かる母親の件は、凄く良かったのですが、その分、途中で離脱する形となった祖父の扱いには不満も残ります。  また、ラストシーンに関しても、主人公がブランコから飛ぶ姿で終わるのかと思いきや、父親に言われた通りに「ジャンプはしない」形で終わった点に関しても、どこか興醒めするものがありましたね。 (子役に実際に飛ばせたりしたら危ないので、作中で父親に「飛ぶ必要は無い」と言わせたのではないか?)  なんていう疑念が頭に浮かんで来てしまい、最後の最後で現実に引き戻されてしまった形。  勿論、観客である自分の疑い深さが悪いだけなのですが「飛ばなくていい理由」が「危険だから」というのは、如何にも寂しいのですよね。  それならば父親が飛んでみせる必要は無かったと思うし「飛んだ瞬間、鳥になった気がした」という台詞も不要。  飛ばずにブランコを漕ぐだけで父親と同じ気分を味わうというエンディングは、中途半端に思えてしまいます。  主人公がブランコに乗った時点で終わらせるなり、揺れるブランコの音と着地の音だけで飛んでみせた事を表現するなりしてもらった方が、好みだったかも。  作中で嘘をつく度に回数を数えてみせたり、父親の死を太陽の消失に喩えてみせたりする主人公の姿は、とても良かったですね。  純真で、それゆえに何処か大袈裟で、他者に理解される事を無意識に拒んでみせているかのような、少年らしい魅力が感じられました。  世の中には、主演の少女を観賞して愛でる為の映画も存在しますが、それと同じような楽しみ方も出来る映画かと思う次第です。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-23 12:34:18)(良:1票) 《改行有》

155.  ホーボー・ウィズ・ショットガン 《ネタバレ》  ショットガンという武器は好きです。  映画に登場するありとあらゆる武器の中で、どれか一種類を選べと言われたら、数多の非現実的な武器を押し退けて、ショットガンを選んでしまいそうなくらいに好き。  そんな魅惑の武器を引っ提げて、ルトガー・ハウアーが大暴れしてくれるというだけでも満足させられる一品ですね。  主人公が芝刈り機という心の癒しではなく、ショットガンという武器を選んだ気持ちも、実に良く分かる。  やたらと血飛沫が飛び散ったり、敵が本当に胸糞悪い悪党だったり、ラストが尻切れ蜻蛉に思えたりする辺りは、如何にもグラインドハウス的なノリで、少々苦手だったりもしたのですが、そんな不快感も吹き飛ばす程の勢いがありました。  冒頭、穏やかで牧歌的な風景と音楽から始まって、主人公が無法都市へと迷い込み、残虐な私刑現場を目にするという流れの早さ、急転直下っぷりには呆気に取られましたが、どこかそれが突き抜けていて、気持ち良いんですよね。  プラスの感情とマイナスの感情、両方を刺激してくれる作風なのですが、ギリギリで前者の方が上回っているというバランス。  例えば、中盤にて悪役がスクールバスをジャックし、火炎放射器で子供達を焼き殺す場面なんかは、この映画にしては珍しく直接的な殺害シーンを描いていない。  それが中途半端で格好悪いというか(何だよ、結局子供には遠慮するのかよ)という白けた想いに繋がる面も、あるにはあるのですが、やっぱり観客を心底から不快にさせない為には、そうするのが正解だったのだろうと思えます。  何にも考えずに好き勝手に撮ったように見えても、そういった見極めというか、匙加減が、きちんと出来ている印象ですね。  終盤にてヒロインが行う 「浮浪者はホームレスでは無い。ストリートをホームとしているのだから、彼らにはホームを掃除する権利がある」  という演説も、妙に説得力が感じられたりして、印象深い。  穿った見方をすれば、銃による自衛を積極的に肯定している、如何にも米国的な作品だと定義付ける事も、可能だとは思います。  でも、それよりは単なる娯楽作品として観賞し、素直に楽しんだ方が、ずっとお得だと思えるような映画でありました。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-22 07:35:14)《改行有》

156.  ミリオンダラー・アーム 《ネタバレ》  ストーリーの概要を知った段階で「これは好みの映画のはず!」と予測していたのですが、それが当たっていて嬉しかったですね。  人物間の絆が育まれるまでの過程にて、さほど劇的なイベントは起こらない点。  そして、目標が「プロで活躍してみせる事」ではなく「プロになる事」に設定されている点など、実話ネタゆえの物足りなさのようなものは感じましたが、それ以上に胸をときめかされるものが多かったです。  涙腺を刺激された場面も幾つかあって、特に印象深いのは、父と子の別れの件。  母国インドを離れ、アメリカで野球に挑戦すると息子に告げられた父親が「お前なら、きっとやれる」と、強く抱き締めて送り出してあげる。  当初は息子の野球挑戦に反対していた、頑固者の親父さんとして描かれていただけに、この展開には「えっ、認めてくれるの!?」という意外性も内包されていて、凄く良かったと思います。  それは裏を返せば「何故、急に息子の事を認めて応援してくれたのか、描写が不足している」とも言えるのですが、少なくとも自分は全然気になりませんでした。  それまでは父親の言いなりになって生きてきた、内気な息子であった事が示唆されていただけに、はっきりと目を見て意思表示してくれた姿が、親父さんとしては嬉しかったのだろうな、と推測します。  上述のシーンが凄く良かったもので、そこが本作のクライマックスかなと思っていたら、それを裏切ってくれた辺りも素敵。  ラストのプロテストの場面。  「君達が成功する事は、インドの子供達に夢を与える事に繋がる」という通訳の言葉には、本当に感動させられましたね。  それによって勇気を与えられ、見事にプロ選手になってみせた二人。  そしてエンディングでは、彼らを真似して野球に興じるインドの子供達が描かれるとあっては、もう脱帽。大満足です。  良い映画だったと、確信を持って言える一品でした。[DVD(吹替)] 8点(2016-06-19 10:09:45)(良:1票) 《改行有》

157.  恋と愛の測り方 《ネタバレ》  明るいラブコメ映画は好きだけど、こういう真面目な恋愛映画は苦手だなぁ……と、自分の嗜好を再確認させられましたね。  丁寧に作られているし、主人公の感情の機微を描いたという意味においては質の高い作品なのでしょうが、どうにも好みの内容とは違っていた為、楽しむ事が出来ませんでした。  男女の浮気の違いを描いている点は興味深いのですが、どうも女性贔屓な目線であるように思えてしまった点も、マイナスポイント。  夫は妻を愛しているのに、一時の欲情に流されて同僚の女性と浮気してしまう。  そして妻の方はといえば、夫と同じくらい愛している元浮気相手の男性と心を通わせ合うも、最後の一線は越えていない。  しかも、夫の浮気相手となる女性には殆ど好意的な描写が無かったのに、妻の浮気相手である男性の方は如何にも同情的に描かれているものだから、やりきれません。  「性欲に駆られた夫の浮気は醜い」「それに比べて妻の浮気は悲劇的で美しい」という対比が窺えてしまい、どうしても賛同する事が出来ませんでした。  観賞後に調べてみたら、監督さんは女性であったらしく、何だか妙に納得。  男性贔屓な内容の映画を観て、女性が呆れてしまうのと同じような現象が、今回我が身に起こってしまったみたいです。  そんな風に、今一つ魅力が分からなかった品なのですが、そんな自分でもハッとさせられる場面も盛り込まれており、作り手の力量を感じさせてくれましたね。  特にラストシーン。外出用のハイヒールが投げ出されているのを映し出し、その後の夫婦の衝突を予感させる終わり方には、素直に「上手いなぁ」と感心。  「あの後、どうなったと思う?」「やっぱり旦那に浮気バレたよね」「最後の吐息からするに、奥さんの方から告白しそうな気がする……」  などといった具合に、観賞後にアレコレ話し合う楽しみも与えてくれる映画でありました。[DVD(吹替)] 4点(2016-06-17 08:54:42)《改行有》

158.  欲望のバージニア 《ネタバレ》  どうやら史実を基としたお話であるらしく、お酒をガソリン代わりに使って車を動かしたシーンなど、何処か微笑ましさを感じられましたね。  完全にフィクションであった場合、もう少しコミカルさを抑えた陰鬱なストーリーになりそうだっただけに、そういった「隙のある、ちょっぴり緩い感じ」が好ましく思えました。  主演のシャイア・ラブーフに関しては「トランスフォーマー」や「イーグル・アイ」で馴染みの顔なのですが、本作は少々感情移入しにくい役柄だったかと。  元々頼りないキャラクターを演じる事が多い俳優さんなのですが、今回は肝心な場面で兄の名前を出して難を逃れようとしたりして「虎の威を借る狐」感が強かったりしたのですよね。  クライマックスにて、そんな頼りない弟が兄に代わって敵役に銃弾を撃ち込むシーンに関しては、確かにカタルシスもあるのだけど、ちょっとそれまでが情けなさ過ぎて「最後だけ唐突に活躍した」という印象を受けてしまいました。  何せ、その数分前に「敵地に勇ましく乗り込んだかと思ったら、あっさり撃たれて倒れた」という、少々情けないシーンがあった直後の話でしたからね。   もう少し段階を踏んで、主人公が成長していくのをじっくり描いてくれていたら、ラストにも感動出来たかも。  監督さんは「ザ・ロード」と同じ人という事もあり、こちらにもガイ・ピアースが出演しているのには、何だかニヤリとさせられます。  他にもトム・ハーディにゲイリー・オールドマンと、脇を固める俳優陣も非常に豪華で、魅力的。  主人公とヒロインの恋模様なども描かれており、犯罪映画というよりは、若者を主役に据えた青春映画という印象の一品でした。[DVD(吹替)] 4点(2016-06-08 22:45:03)《改行有》

159.  スティーヴ・オースティン 復讐者<OV> 《ネタバレ》  主人公にスティーヴ・オースティン、悪役にダニー・トレホを配すれば、それだけで一本の映画が出来上がる事を証明してみせたような作品ですね。  特に終盤の殴り合いは、両者のファンならば必見かと。  ストーリーに関しては、ヒロインが主人公を庇ってくれる理由が今一つ分からない事など、気になる点も多いのですが、そういった諸々に対してツッコミを入れながら楽しむ事も可能な作品だと思います。  やたらと爆発シーンが派手だったりもして、作り手側の「どうぞ楽しんで下さい」というサービス精神が窺える為、欠点があっても憎めない。  復讐を遂げた主人公が、車に乗って町を去っていくラストシーンは、素直に格好良いなぁと感じられました。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-06 03:43:14)《改行有》

160.  ワン・デイ 23年のラブストーリー 《ネタバレ》  何シーズンにも亘って描かれるTVドラマを総集編として映画化したもの……という印象を受けました。  デクスターの母親や、エマの「小説家志望」設定など、尺が足りなくて描き切れなかったと思える要素が多く、もっと長めの上映時間が欲しかったところ。  毎年の七月十五日を舞台としたラブストーリーという発想は、とても面白いと思います。  けれど、それによって互いの感情が地続きになっていないというか「ある七月十五日に仲が進展したかと思ったら、次の七月十五日にはもう曖昧な関係に戻っている」という、数分毎に一種のリセットボタンが押されているかのような印象を受けてしまったのが残念でしたね。  「とうとう二人が結ばれた夜」「突然の彼女の死」などのイベントが発生しても、その前後が直接描かれていないのが、非常にもどかしい。  こういった斬新な設定は歓迎したいところなのですが、本作に関しては「普通の時間進行で観てみたかったな」と、ついつい思ってしまいました。  アン・ハサウェイは好きな女優さんなので、彼女と二人で旅行する1992年の場面なんかは、胸がときめくものがありましたね。  この映画を観た人達と「どの年の七月十五日が一番好き?」という話題で盛り上がれたりもしそうで、そう考えると、やはり素敵な設定なのかなとも思えてきます。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-05 15:51:55)《改行有》

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