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【製作年 : 1970年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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2. カッコーの巣の上で 《ネタバレ》 カッコーはモズやホオジロなどの巣に托卵する。巣の主はそれを自分の子として世話する。 カッコーの習性を、人間の倫理は他力本願で怠惰な行為と位置づける。まぎれもない大自然の一部をも、ともすれば私達は自分の尺で計ってしまう。私達には、自らに都合の良いルールを決められる知恵があるからだ。 その知恵がない者「精神病棟の住人たち」に、人間社会のルールは通用しない。だからこそ私達は彼らを持て余し、私達の生活を脅かさない場所に押し込める。社会がマイノリティを犠牲にして総意を得ていることを、私達は暗黙で了解しているのだ。 カッコーの子供であるマクマーフィは、親鳥である病院によって抹殺されてしまった。人間というものは、モズやホオジロよりも了見が狭い生き物なのだ。しかしまんまと正体を隠し通したチーフは巣立っていった。私達の手の中にはまだ希望が残されている。 9点(2004-01-10 20:05:44)《改行有》 3. ソドムの市(1975) 監督のピエル・パオロ・パゾリーニはこの映画を撮り終えた後、亡くなっている。しかも映画の出演者の一人に殺されたという噂もある。 この映画を観ていると、私は映画の中に入って行ってファシストを全員撃ち殺したくなります。登場人物の誰かがそれをやってくれたらさぞ爽快ですが、それは起こらない。この映画に類似する出来事が現実の世界にあった、と考えるとどんな気持ちがするか。パゾリーニ監督が何を伝えたかったかはわからない、しかしこの映画が観る者に与える負のパワーは強烈だ。6点(2004-01-10 14:28:06)《改行有》 4. タクシードライバー(1976) 《ネタバレ》 けたたましいパーカッションと共に、煙の中から立ち上がるタクシー。 フロントウィンドウに浮かび上がる、とろけるようなネオンサイン。 トラビスは言う「俺にもわからない」。 自分の中に満ちている苛立ちの正体。持て余すエネルギーを向ける先。 ニューヨークの街をタクシーで流しながら、自分と同じ孤独の香りを探し求める。 しかし世界はいつも彼の向こう側に立つ。トラビスはそんな世界を憎悪する。 「イカレてるのは俺じゃない、向こうだ」 銃を手に入れ、体を鍛え直し、完全武装を開始する。 シークレットサービスをからかい、鏡の前で勝利の妄想に酔う。 トラビスの行動は、子供じみたヒロイズムと利己的な正義感を糧に加速する。 少女の救出劇をカモフラージュに、自らの最後を飾る戦場を作り上げた。 血まみれのトラビスは救った少女に目もくれず、自分の顎に銃口を定める。 こめかみに指を突き立て、自らに引導を渡した。 この世界から逃れられないのなら、どうにか上手く付き合っていくしかないのだ。 10点(2004-01-10 00:14:22)(良:1票) 《改行有》
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