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1. 鍵泥棒のメソッド
この映画に出てくるのは、みなどこかしらダメな人たちである。演技が下手な俳優、恋愛に計画性を必要とする真面目な仕事人、詰めのあまいヤクザ。善良なだけの人も、極悪なだけの人も出てこない。しかしこの映画には、散らばった事象が時間とともに集束し、一つの結末に至る過程の美しさが横溢している。完璧な人間はいなくとも、欠けた人間たちの織り成す物語は完璧でありうる。見事な人間賛歌ではないか! 個人的には、広末涼子演じる雑誌編集長が運転するプリウスの映画的存在感に感服した。プリウスは、あの静かなエンジン音のせいで、「すっ」とスクリーンに映りこんでくる。その静けさを、「あたたかな」、「こっそりと」などのイメージとリンクさせながら撮りきった作品を、僕はまだ他に知らない。整合性のなかに散漫さを入れ込むという、この監督さんの追い続けているテーマが結実した素晴らしい作品になっていると思う。[映画館(邦画)] 8点(2013-02-09 18:10:15)
2. SP 野望篇
《ネタバレ》 岡田君の超絶技巧だけがクローズアップされていて、ひとつひとつのアクションは楽しめる。しかし、敵とのかけひきみたいな部分がないので、娯楽作としては消化不良。話が展開するだろう次回作に期待したい。[映画館(邦画)] 6点(2011-02-01 23:18:22)
3. アンストッパブル(2010)
『デジャヴ』と同じ主演デンゼル・ワシントン、監督トニー・スコットコンビの作品。監督お得意のたたみかける演出は健在。娯楽作としては水準をクリアした一本気な佳作であろう。『デジャヴ』に比べると脚本のひねりが弱いのが残念。見入ってしまってあっという間に見終わったのだが、後味の空虚さも想像以上であった。テンポの速い濃い演出と、演出に比べると素直すぎるショット割りによって、この映画はものすごく虚ろな味わいをたたえている。[映画館(字幕)] 7点(2011-02-01 23:06:19)
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