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プロフィール
コメント数 67
性別 男性
年齢 38歳
自己紹介 最近、映画の評価基準はこんな感じです。

 ①ストーリー、演出、設定の妙、自分に影響を与えたかを考慮する。

 ②それらを含めた上で「映画を通してでしか表現できない作品である」といえるかどうか。

 という感じで見ています。

 スタッフロールが終わり、スクリーンに拍手を送りたくなるような映画に出会えることを願っています。

◆最近グッと来た映画◆

 
 『ショーガール』
 『colorful』(原恵一)
 『ヒーローショー』
 『ゴッドファーザー』

 ポール・ヴァーホーベンが最近好きなんだと気がつき始めました。あとは山田洋次と井筒和幸がご存命の監督の中では好きです。
 

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1.  おおかみこどもの雨と雪 《ネタバレ》 ◆映画の中で描かれない部分を自分で勝手に補完しだしたら、それはハマっている証拠だと映画批評で有名なラッパーがおっしゃっていましたが、もう映画の冒頭からどんどん補完しちゃいました。◆まず、あの旦那さんの性格。「団地って言ってもいろんな家があるんだ。子どもがいっぱいだったり、ひとりぐらしのおじいちゃんの家だったり・・・(うろ覚え)。」と花に説明する。(この人は、楽しみを見つけて感動できる人なんだろう。それぞれ訪れた一軒一軒に深い愛着をもって仕事をしているんだろう。そして感受性がとても豊かで優しい人なんだろう。いい人だな。)とか思ってしまい、この二人が出会えた幸せに涙してしまいました。その後はカール爺さんばりの幸せの回想シーン。多幸感に包まれて涙が止まりません。◆続いて、雪が転校生を傷つけたところ。相手の親からの詰問に、花は声を荒げるわけでもなく、雪に謝罪を促す。その後、駐車場にとめた車内で雪が心情を吐露するシーンになるが、あれは駐車場に車を止めてからこのシーンが始まるまでに、相当長い間沈黙があったと思う。その間、「どうしてあんなことしたの!」とか花は多分言っていない。花は雪の心に寄り添って黙っていた。だから、さっきまで黙っていた雪は心情を吐露したのだと思う。◆このことに関連するが、この映画で秀逸なのは花が子どもをほとんど叱らないところだと思う。おそらく、叱ったのは、前述した謝罪を促すシーンと、森に行こうとする雨を引き止めるときだけである。これは凄い。本当に凄いことだと思う。「これからどう生きていきたい?」と雨と雪に尋ねる花のスタンスは、彼らの意思を尊重してほとんど叱らない所に一貫してある。◆あとはもう人のつながりが生まれる過程を、じっくりと優しい視点で描かれたらもう泣くしかないです。心の隙間をあそこまで埋められたらぐうの音も出ないです。すばらしい。◆ひとつ気になったのが、花があれほど農作業したのにほとんど日焼けしていない所と、農作業するのにあの格好なのかーという点ですが、まあ些細なことです。至極の子育て映画!最高です![映画館(邦画)] 10点(2012-07-30 23:45:48)(良:2票)

2.  ロンゲスト・ヤード(1974) 《ネタバレ》 ◆囚人VS看守という対立構造がまず良い。そして、囚人チームのメンバーを集める過程が『七人の侍』を髣髴とさせるキャラ立ちの良さ。さらに、受付嬢とHしても良いって分かったときの主人公の「おおぅ」と漏らすため息と表情のリアリズムがとても良い。◆でも何に一番心揺さぶられたかというと、30年間刑務所にいるというおじいさんの、見る側にとっての印象が、最初と最後で180度変わるという壮絶などんでん返しを体験させてくれることだとおもう。主人公は男の決断、すなわち、刑期が延びようとも仲間とともに権力から勝利を勝ち取る、という選択をしたが、その選択をおじいさんは30年も前に行っていたということが分かったあの瞬間、「後悔はしてない」というあのおじさんの表情!!それが分かった瞬間涙が出た。◆おそらく主人公にとっては未来は明るいものではないとは思うが、その結論が、より今の勝利することの輝きをよりいっそう際立たせており、ニューシネマ的なのだが大団円でもある、ラストとしては『ロッキー』を超える最高の部類の後味を見せている。そして、おじさんと主人公の肩を組んだバックショットで、私は画面に拍手を送っていた。最高の映画です。[DVD(字幕)] 10点(2011-03-03 23:18:21)(良:1票)

3.  ショーガール 《ネタバレ》 ◆なぜこの作品がラジー賞なのか全く理解できません。評価を下したやつらは、この作品をしっかり見たのかと疑っています。この傑作のどこがラジー賞に値するのでしょうか。ここで書くのは不謹慎なことかもしれませんが、評価は人それぞれだと分かっていてもマジでムカついています。◆本作は設定は奇抜ですが、内容は王道の青春スポコンもので、ライバル、親友、恋人、嫉妬、努力、挫折、ハプニング、ユーモアといった青春スポコンものに欠かせない要素が全て詰まってしかも丁寧に描かれている傑作だと思います。本作がラジー賞なら、日本で大量生産されているテレビ局主導の青春スポコンジャンル映画(カーリングものとかラップものとか書道もの)はフィルムを燃やしたほうが良いレベルだと思います。女優がここまで体当たりの演技をして、全てをさらけ出して、最初と最後でまったく表情が違う映画が日本においてあるでしょうか。それは日米の映画制作の体制の違いとか資金額の違いとかそういう問題を超えたところにあるものです。つまり、この映画のようにストリップやエロに対して真っ向から向き合い、良質な青春スポコンジャンル映画にする気概があるのかってことです。私が把握している限り、最近の作品でこの作品に近い所まで行っているのは『愛のむきだし』ですが、それでもこの映画にはまだまだ及んでいない。『恋空』のレイプシーンにいたっては、レイプと綺麗なお花をオーバーラップさせるという超絶的な逃げを展開している。◆なぜか邦画との比較ばかりになってしまったけれど、本作のダンスシーンの迫力やストリップシーンのリアルさ、登場人物の作りこまれた描写やライバルがしっかりライバルしている点や、夢を一途に追うものと夢を持てど行動が伴わないものの対比などしっかり撮られていると思う。加えて、ストリップの色物的存在のあのおばさんの存在など、ストリップを丹念に調べていなければ絶対に生まれない存在だと思う。そういった意味で非常に誠実に撮られた極上のエンターテインメントだと思います。ラジー賞の権威がどの程度のものなのかも教えてくれた本作は、間違いなく僕にとって大切な作品となると思います。[DVD(字幕)] 10点(2010-10-06 02:34:41)(良:1票)

4.  ヒーローショー 《ネタバレ》 ◆現在の邦画界には、綺麗な部分を強調する映画、汚い部分を強調する映画の二種類が存在すると思う。そしてそれらは何らかの形で落ちがつき、観客にカタルシスをもたらす。観客にとって、映画の内容はカタルシスによって完結し、映画館の外に出た瞬間に消化される。◆そんな昨今の映画の内容どころか、映画の風潮、ひいては現代の風潮に挑戦した作品が本作であると思う。劇的に感動的なシーンや、最高にカッコイイ主人公のシーン、涙が溢れ出て止まらないシーンはこの映画にはあまり見られない。しかし、現状に対する鬱屈とした感情を登場人物の誰もが持っており、観客はそれを追体験する。友人の死を看過するどころか、逆に手を貸してしまったり、M-1の賞金目当てに親の金で養成所に入った挙句寒いギャグしか言えなかったり、成り行きで知り合った人の家族事情を知り、手を貸すと思いきや次では裏切ったりする主人公は、今までの映画には中々居ない存在でありながら、現実には腐るほど存在するし、自分もまたその一人であったりする。◆映画は現実を忘れ、カタルシスを得るためにあるものだという考え方は当たり前で、もっともである。しかし、現実を浮き彫りにし、見つめなおすきっかけとなる映画もまたあってしかるべきである。(井筒監督が最高のカタルシスを観客に与えることができる監督であることは、『パッチギ!』で証明済みであると思う。それなのにあえてこの映画を撮った所の意味を私は考えたい。)◆この映画は、何年か経って見返したときに、映画館で感じた体験を追体験することができる現代を表現するにおいて最も適した作品である。[映画館(邦画)] 10点(2010-05-30 00:31:07)(良:4票)

5.  パッチギ! 《ネタバレ》 ◆前評判をちらと見た限りでは、わりとありがちな、在日の人が差別をうけながらもイムジン河を歌って、つらい日々に耐えていく、そんな映画なのだろうなと思っていました。そしてその予想は見事に裏切られました。冒頭のシーンで女の子が墨(?)をかけられたのをみたときには、「ああ、やっぱり」と思っていましたがその後が凄かった。もうバスは倒すわ、レーンを滑るわ、セメントかけるわですき放題やってました。しかし、ただの青春不良映画じゃない、一見普通に生活しているように見えても差別の影がチラホラ見える。それは主人公の母親がキョンジャをみる時の怪訝そうな目だったり、棺おけの入らないぐらいの小さな戸だったり、そして葬式でのお坊さん(?)の言葉だったり。自由奔放な生活の中にそんな影がチラと見えると、ぎゃくに押し付けがましくなく在日の人たちの辛さが伝わってきました。◆それから、曲も良かったです。本当に音楽が効果的に使われているように感じました。あまりに良かったので僕もカラオケに一人で行って『イムジン河』を熱唱しました。◆見終わった後に爽快感と、考え深い問題をくれたこの映画に、そしてとなりの女子高生に白い目で見られながらもランキングの上位を『イムジン河』で独占した僕に10点を献上したいと思います。 [DVD(字幕)] 10点(2005-11-02 19:32:28)(良:1票) 《改行有》

6.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 《ネタバレ》 ◆今回、Qのために復習としてみたのですが、やっぱり面白かった。何度見ても鑑賞に堪えうるだけのポテンシャルを持った作品だと思います。なぜ、繰り返し観ることができるのかと考えました。◆まず、圧倒的に戦闘シーンが緻密で、動きまくって、カッコいいということがあげられます。使途を受け止めるためにダッシュする時の速さがやばすぎて、衝撃波で車が吹っ飛ぶとか、刺された後に血がブシャーとか、様式美というか、いよ!待ってました!と叫びたくなるというか、観客のつぼを押さえた感じがとてもいいんですよね。◆次に、エヴァ作品において観客が初めて公式にガス抜きを許してもらえた、ということがあります。基本的に映画は観客がカタルシスを得るために作られているわけですが、アニメ版ではそれを逆手にとって、ほとんどカタルシスを得られない作りにしてありました。その鬱屈としたものが、細かい作品内容を分析する原動力になりましたが、それを昇華できるのは限られた人だけで、大多数はもやもやしてました。それで、鬱屈としたものが長年蓄積されていた観客は、突如この作品でガス抜きを許されたわけです。それは、他の映画のカタルシスを得る仕組みと基本構造は同じでも、快感がやばいわけです。見方を変えれば、どれだけエヴァでモヤモヤしていたかによって、その快感の大きさが違うのだと思います。◆あとは、人間の内面と外的事象が交差的に描かれることが多いので、そこら辺のリテラシーをあいまいにしながら見ると案外すんなり見れます。最後の、綾波を救うシーンは、一人の人間に踏み込むことについてどれだけ監督が苦労したかよくわかりました。すごく楽しい作品です![DVD(邦画)] 9点(2012-11-15 12:23:29)

7.  恋の罪 《ネタバレ》 ◆園子温の映画には人間の成長、すなわちアイデンティティの確立に焦点を当てている映画が多い。世間を気にせず素直に生きることが良いことである、という価値観はとても良いと思う。本作はその過激さに目を奪われがちだが、主人公の女性が立ちんぼの人と出会い、さまざまな「淫らな」経験を通してアイデンティティを確立させるというものだと僕は解釈します。そして、今回の主人公は女性である。僕は、女性の成長は出産によって劇的に促進されると考えている。◆そう考えると、非常にすごいと思うシーンがある。それは最後の廃墟でお婆さんが仕切り、男性が手を持ち、女性が相手の首を絞めるシーンである。あの場面が主人公にとっての出産であり、成長なのではなかろうか(「生」と「死」が逆転しているところが皮肉っぽくてまた良い。)。そして、園監督の持ち味でもある、『紀子』の血まみれで食卓を囲むシーンでも感じた、狂気と日常が混ざり合ったなんとも不思議な場面でもあり素直に感服した。◆最後の廃墟を目の前に刑事が発した一言は、刑事もまた児島に対する依存から脱却し成長したことの表れであると思う。◆やっぱり、園監督にはヴァーホーベンの『ショーガール』を観たときに感じた正直さを感じます。自分の奥さんだからといって一切容赦せずおしっこさせたり、男にフルボッコにさせたりするところにも誠実さを感じます。[映画館(邦画)] 9点(2011-12-05 00:06:23)

8.  鉄コン筋クリート 《ネタバレ》 ◆これはクロの成長物語だと解釈しました。◆本作では形式上の二項対立が多用されています。クロとシロ、仁義と開発、善と悪など、一瞥するとわかり易い物語に見えてしまい、その分ストーリーの難解さに肩透かしを食らうのではないかと思う。しかし、二項対立を克服し、両面が並存していいんだと認めること=大人になること、なのだというのが本作の主張であると僕は受け止めました。◆クロは一見すると悪であるが、シロの面倒を見るやさしい一面を持つ。シロは、ああ見えて、人にガソリンをぶっ掛けて殺す残酷さを持ち合わせている。シロは善と悪が共存している大人な存在である。逆に、クロは、シロがいなければ善を施しえない子供である。◆そんなクロはシロと別離することによって、自分の本来持ち合わせていた善の施しの行き場を失い、同時に純粋な悪の心と向き合わざるを得なくなる。その存在が「イタチ」である。クロは純粋な悪の心と対峙し、自分がシロによって善の心を持ち合わせていたこと、純粋な悪にはなりきれないことを自覚し、あらためてシロとともに生きることに希望を見出す。クロの手に刻まれた傷は、そのものずばり、心に純粋な悪が潜んでいることを自覚した上でどう生きていくのか、という少年が大人になるための過程を描いているのだと思う。◆誰にでも悪の心はあるのだけれど、それを単なる道徳律で押し込めて無反省に生きているのは寂しい。そんなことを考えさせてくれる映画だった。[DVD(邦画)] 9点(2011-10-01 00:16:03)

9.  カーズ 《ネタバレ》 ◆人生における価値とは何か?それは仲間への思いやりと、年長者への尊敬の念、そして戦に負けても自分の信念を貫いて勝負に勝つことである、とこの映画は答えている。そして、僕自身もそれは間違いないと思っている。ゆえに、泣いた。◆人生は順調に行くときよりもちょっと寄り道をしたりしたほうが成長できる。効率や合理性だけを優先しても、他者からの評価だけを優先するようでは、人生は砂漠地帯のような乾燥したものになる。大切なのは、自分の価値観で、自分の本当に守りたいと思うものを、絶対に貫き通す信念である。それは、決して高邁な目標でなくてよい。道路を最後まで補修するとか、仲間の気持ちを裏切らないとか、目上の人を敬うとか、そんなことでも大切に思って貫き通すことで人は成長できる。◆世間で言われている道徳律を当たり前だと思い込んで、「仲間を大切にする」ことが普通だと思う人にとって見れば、この作品は「薄っぺらい」・「普通」のストーリーなのかもしれませんね。[DVD(字幕)] 9点(2011-08-17 11:31:56)

10.  暗くなるまで待って 《ネタバレ》 ◆『暗くなるまで待って』は、確実に映画館で見るべき映画だなと思いました。映画館で鑑賞する場合、劇場が真っ暗なため、スクリーンが真っ暗になると劇場全体も真っ暗になる。そこで聞こえてくる杖の音、床の軋む音、時折マッチの灯りのもとに浮かぶスージーの鬼気迫る顔、さぞ、当時映画館で鑑賞された方は恐ろしかっただろうと思います。◆観客の視覚を一時的に停止させることによって、スージーの恐怖感とロートの恐怖感を同時に観客に味合わせ、自分がその場にいるかのような錯覚を観客に覚えさせる本作は、映画という媒体を通してでなければ伝えられない表現を確立していると思います。◆脚本も秀逸で(細かい論理の矛盾はドラマを展開させるものであってこの映画の評価を下げるものではないと思います。)、映画という媒体を生かしきって演出がなされている映画だといえる。[CS・衛星(字幕)] 9点(2009-05-06 02:05:04)(良:1票)

11.  おくりびと 《ネタバレ》 ◆見終わった後、本気でスクリーンに拍手を送りたくなりました。◆まず、この映画には解説がほとんど存在しないという所が凄い。どんな作品でも、観客にとって初めてのものを見せるときには解説が必要です。なぜなら、どんなに凄いことをやっていようと、見る側が理解しなければその凄さが分からないからです。解説は、見る側の知識を補填する役割を果たすという意味で重要です。ましてや、納棺師というテーマは観客にとって未知の世界であるため一層解説が必要になるはずです。◆しかし、この作品は見ただけで納棺師の誇りが伝わってくる。納棺における主人公の一つひとつの所作や遺体の着物が刷れる音、そこに漂う独特の緊張感からそれが伝わってくるのです。映像だけで納棺師の誇りを表現しきっているという所に感動します。◆さらに、ストーリーにおいても「どんな仕事にも喜び、苦しみ、そして誇りがある。」というテーマが一貫している。ストーリー自体はシンプルで分かりやすいけれど、一貫したテーマのもとに成り立っているため、どんなに分析的に見ても入り込めるのです。◆キャストも味のある役者を揃えている。本木雅弘は役に本当に忠実に演じており、山崎努は熟練の納棺師の誇りを体現していた。笹野高史の醸す哀愁は、スクリーンから少し漏れていた。それぞれがそれぞれの味を存分に出しているけれど、ひとつの作品として融合している。◆このような映画を、しかも愛すべき邦画を映画館で生で見られたことが純粋にうれしい。この作品は、映画でしかなしえない、「映画」と呼べる作品だと思う。[映画館(邦画)] 9点(2008-09-28 01:08:53)

12.  ダンサー・イン・ザ・ダーク 《ネタバレ》 ◆久しぶりに、胸がしくしくと痛んで、もう二度と見たくないと思える映画を見ました。◆この映画のいい点は、映画の中での事実とセルマの空想とをしっかりと区別しているところだと思います。セルマに起こる悲劇的な事実は、色を抑え目にして手持ちカメラで撮影しているのに対して、セルマの空想は色をはっきりと使い、固定のカメラで撮っています。それによって事実と空想との区別をはっきりとつけています。◆その区別が生きてくるのは、後半です。セルマが独房に閉じ込められ、無音の中で刑の執行延期の連絡を待つシーン。セルマにとって空想をかきたてるような音は聞こえてきません。彼女はその中で自ら独房の中で音を出し、空想の世界に無理やり浸ろうとします。しかし、死刑への不安と、独房の静けさによって、彼女は自ら歌うことによって空想に浸らなければならなくなってしまいます。この時、撮影手法と色の明るさとが不安定になります。そして、不安に駆られながら『My Favorite Things 』が歌われます。これほど、この歌の持っている雰囲気と現実とのギャップを感じ、また、これほど歌の内容と事実とが調和していることを感じたことはありませんでした。◆このシーンを見れただけでも、この映画は十分に主張していると思います。◆そして最後の刑執行のシーン。現実の中で彼女は歌います。事実と空想とがカオスとなって、彼女の最後から二番目の曲が中断されます。その後はただ事実だけが淡々と続いていく。◆正直、二度と見たくない映画の一つとなりましたが、無駄なシーンが無く、撮影手法も練りこまれており、ストーリーも最後まで飽きさせませんでした。[DVD(字幕)] 9点(2008-01-04 06:37:51)

13.  ニュー・シネマ・パラダイス 《ネタバレ》 ◆映画好きの主人公トトと映写技師のアルフレードとの一生涯の関係を描いたヒューマンドラマです。◆映画しか娯楽のないところでは、映画館は、人々が泣いたり笑ったり怒ったりしながら時間を共有する場だったのですね。そして、その中で映写技師は人々の感情を動かすことができる、映画という力を持った重大な存在だったのです。映画館に入れないお客さんのために、民家の壁に映画を映すシーン(大好きなシーン)は、当時の映写技師の技術がいかにお客さんを感動させることに必要だったのかわかります。◆アルフレードが文句をいいながらも映写技師を続けていたのは自分が映画を上映することによって、人々が喜んでくれることが嬉しかったのでしょう。ただし、人々を喜ばせるのは映画自体であって、映写ではありません。本当に人々を喜ばせたいのなら、映画を作るしかないのです。アルフレードは映写ではなく、映画を作りたかったのではないでしょうか。自分の映写で喜んでくれる人たちを見て、これが自分の映画だったらと悩んだのだと思います。◆だからこそ、アルフレードはトトに夢を託した。映写によって人々を喜ばす、という非現実から目覚めて欲しかったのだと思います。◆映画監督になったトトは、現実の世界から、非現実の世界へと戻ってきます。思い出を残しながらも原型を留めていないものたちがトトを迎え入れます。そこでトトは現実の世界に自分を押し出してくれたアルフレードの優しさに気がつくのです。そして、最後のシーン。トトはアルフレードが、映写技師の持てる技術を駆使して作った、稚拙ながらも作者の思いがふんだんに詰まった作品を見て涙を流すのです。 ◆9点を献上させていただきたい。[DVD(字幕)] 9点(2007-11-10 11:09:42)

14.  17歳のカルテ 《ネタバレ》 ◆『カッコーの巣の上で』と主題が同じということもあり、本作にかなりかぶるところもありました。ただ、『カッコーの』は救いようのない終わり方だったのに対して、こちらは逆に未来を感じさせる終わりかたをしています。◆どちらのほうが好きかと聞かれれば、ぼくは本作のほうをとります。『カッコーの』は世の中の不条理さとか、不自由さといったものに絶望していますが、本作ではその不条理さや不自由さを認めたうえで、それらとどう共存していくかといったことまで描かれています。広げた風呂敷はけして小さくはなかったのですが、それを畳みきった本作はすごい。◆また、演出面でも色の使い方や、猫の映し方、ホラー的なシーンの映し方などを意図的に変えていて、映画というメディアを使いこなしています。◆さらにはキャスト面でも、主演とその脇を固める人々のレベルが高く、唯一のミスキャストと思われたウーピー・ゴールドバーグも最終的には彼女でなければだめだと思わせられました。[DVD(字幕)] 9点(2006-03-19 02:07:55)

15.  ゴッドファーザー PART Ⅱ 《ネタバレ》 ◆正直言いますと、最初見たときには何がなんだかよく分からないまま終わってしまった、という感じで、今回もう一度ちゃんと見直してみました。そしたらストーリーは理解できました。◆やはり気が付くと、ビト(マーロン・ブランド)とマイケルとの比較、という視点で映画を見ている自分がいました。マイケルはビトに比べて、平気で人を殺すし、人情よりも金を大切にする。その割には、ファミリーをも大切にしたいという。そして空回りしていく。◆これは、マイケルの力量が足りないことに問題があると思いがちですが・・・これは仕方ないんですよね。劇中にもありますが、時代が違うんです。◆プロレスを例に挙げますと、今、新日本プロレスは、必死になって猪木や闘魂三銃士のようなカリスマ性を持ったレスラーを輩出しようとしています。そしてそれが見事に空回りしている。年々観客は減っている。でも、空回りしているのは、努力が足りないからじゃない。むしろ、技の技術、展開の仕方、演出面は過去に比べて数段上である。にもかかわらず、人気がでない。これはね、時代なんですよ。時代を包んでいた雰囲気やプロレスを見る観客の温かい目なんです。◆ビトの頃にはまだ金ではない、温かい雰囲気があったんです。そしてマイケルの時代、問題は以前にもまして複雑になり、金が物を言わす時代になった。にもかかわらず、マイケルは父親と自分を比較する。しかし、比較したところで時代という基準がまるで違う、そこに気付かずただただ、自分が小さく見えてくる。そんな抜け出すことのできない、ネガティブスパイラルにマイケルは、はまっていったのだと思う。◆そんなマイケルの気持ちが痛いほど伝わってきたので9点を献上させていただきたい。 [DVD(字幕)] 9点(2006-02-07 14:00:55)(良:1票) 《改行有》

16.  招かれざる客(1967) ◆体裁上はリベラリストでも中身は保守的な人なんてのはたくさんいて、そういうひとたちは、実際に自分がマイノリティーの立場に立つとコロッと意見を変える。本人達のためだ、とかいって結局自分が面倒なことに巻き込まれたくないのが本音。そんな心境をうまく描いていると思います。◆その気持ちも仕方がないとは思う。アメリカの南部にいたっては、黒人と白人が一緒に歩いていたら命の危険すらありうるのだから。◆作品のなかでは、だんだんとその気持ちが変わっていく。神父の言葉、母親の言葉、そして父と対決する息子。それぞれ話し合うことによって、その心が瓦解していく。◆差別と闘っていくには、並大抵の決意では駄目で、本当にお互い信じあっていかなければならない。差別している人たちを無知だとあざ笑っても本当の解決にはならない。その人たちと対話していかなければならない。◆日本にも、さまざまなマイノリティーがいて、差別がある。そんな差別にぶつかったときどうするのか、どうやってその差別と闘って行くのか。その一つの方法は「対話すること」なんだと教えられました。いい作品でした。9点を献上させていただきたい。[地上波(吹替)] 9点(2006-01-31 15:43:59)

17.  もののけ姫 ◆「もののけ達」と「タタラ場の住人」という二項対立の間に、大和から迫害され続けてきた蝦夷の一族、アシタカが介入してきて、その争いを「曇りなき眼で見定める」というお話です。◆アシタカという中立の視点を通して、それぞれの言い分を実に丁寧に描いていてとても面白いです。見ようによっては、「アシタカはどっちつかず」の印象を受ける人もいるでしょうが、じゃあ自分だったらどのような結論を下すだろうか?と考えてみるのも悪くないとおもいます。物語は必ず明確な結論を出さなければいけない、というルールはないわけで、あの終わり方も一つのパターンでしょう。もし、安易にエボシを殺して、タタラ場がなくなってしまえば説教くさくなりかねないし、そこで問題は完結してしまう。見る側に「私だったらこんな解決手段をとるなあ」と考えさせることが、この映画の最大の目的なのだと思います。◆アシタカは凛としていて、落ち着きがあって僕の理想像ですが、気がつくとサンの腰に手を回したり、カヤの小刀をあげちゃったりと、ここはさすがにいただけない。なので1点引いて9点を献上させていただきたい。[DVD(吹替)] 9点(2005-12-14 00:03:34)(良:3票)

18.  白雪姫 ◆長編アニメの基礎を作り上げた作品であり、後のアニメにとっての大きな壁でもあるこの作品。井戸に波紋が立つシーンを見ましたけれど、・・・いや・・ねえ・・そりゃ戦争にも負けますよ。1937年ですよ。どんだけリアルなんですか?目を疑いますよ。CGでしょう?◆それから、なんですかあの動物の使い方、どんだけキャラがたってるんですか?最後に、なんですかあのパイの切れ端の使い方、なに文字書いてるんですか?普通切れ端で文字を書こうと思いますか?もう、アイディアがおかしいです。[DVD(吹替)] 9点(2005-12-12 22:33:17)

19.  市民ケーン 《ネタバレ》  影の使い方が印象的だった。オペラ歌手の妻が「もう歌いたくない」と泣きついたのに対してケーンは「君はただ歌っていればいいんだ」というシーンがある。まるで彼女を押さえ込むかのようにケーンの影が彼女に覆いかぶさっていた。彼女はケーンをしっかり見つめながら、顔を影からゆっくりと出す。ケーンの権力とそこから抜け出したい彼女の心理がそのシーンから伝わってきた。  映画の見方を教えられた作品だった。[映画館(字幕)] 9点(2005-10-25 21:08:09)《改行有》

20.  ランド・オブ・プレンティ ◆うーん、考えさせられました。◆ぼくは、マイケルムーアの番組が好きでよく見るのですが、彼は大局的にアメリカ国家を見ているので、アメリカの抱える社会問題に対して「国家の言い分に沿いつつ、ひねくれた自分の主張を表現する」という、いわばアメリカ国家の土俵に上がって、社会問題を批判しています。◆ところがこの映画は、イスラエルから来た女性、愛国者の男性から見える事象、つまり局地的な視点を中心に話が進んでいきます。◆その視点からは、ロスは飢餓の中心地であり、アラブ人は温和であり、グラウンドゼロは工事現場でしかない。◆アメリカ国家の言い分という色眼鏡をかけずに、全ての事象を淡々と映していきます。僕は特に、「アラブ人=テロリスト」という方程式に疑問を投げかけた点が素晴らしいと思う。あの温和なお兄さん、それからハッサンの生活実態、それを知ることによってその方程式はあっという間に崩れ去る。人の優しさを映すことが、そのまま一つの主張となる点がとてもよかった。◆僕はこのようなマイケルムーアとまったく違う色合いが出せたのも、監督が徹底的にローアングルにこだわったことに理由があるのではないかと思います。目線を人物に置くことで「個人から見たアメリカ国家」というものをうまく映せたのではないかと思います。シンプルですが、重要な映し方ですね。◆いい作品でした。ただ、若干冗長ぎみであることと、主張がいまいち絞れていなかったことから-2点で8点を献上させていただきたい。[DVD(字幕)] 8点(2006-11-15 01:46:11)

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