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1. ガタカ
《ネタバレ》 偽装の手法などについては、他のレビュアーさんも指摘の通り、ツッコミどころ満載と思うが、これはそういった“SF”主眼の映画ではないだろう。
人の「生」についてのすぐれて倫理的な問いをふくんだ映画だと思う。
印象的なのが、遺伝子設計されて生まれてきた弟と、自然出産の兄(主人公)との、遠泳競争シーン。遠くまで、はるか遠くまで、泳いでいけたほうが勝ち。
この受精の際の精子の競争の象徴シーンで、初めて勝ちを収めた時に主人公は転身を遂げる。そして後での兄弟対決のときにも同じシーンが繰り返される。
ひとは「優れていたから」ではなく、「どうしても生きたい(行きたい)」と思ったがゆえに、卵子へまでたどりつき、この世に生をうけたのではないだろうか?
そんなことを暗示するシーンだと思う。
そして、「母なる」宇宙への道もまた、「優れているゆえに」ではなく、「どうしても行きたい(生きたい)」と心から思う者に開かれていて、いいはずだろう。
「宇宙飛行士になりたい」という主人公の切なる思いはラストで報われ、宇宙という海へと泳ぎ出していく(ロケット打ち上げも、遠い卵子を目指してゆく精子の旅の暗喩か)。
人は生きる。切なる願いを果たすために。
けれどその同じ時、主人公とコインの裏表の関係のような「適格者」ジェロームは、主人公と同じく「遠い旅」に出る。自死する。主人公の切なる願いを守るために。
でもそれは、誰に設計されたわけでもない、彼自身の心から生まれた願いだった。
人が生まれてくること、生きることについて、たくさん考えさせられた。素晴らしい作品だったとおもう。
[DVD(吹替)] 8点(2011-01-10 03:13:39)(良:4票) 《改行有》
2. ヌードの夜
話は単調、長回しが冗長。だが、役者陣の存在感がすごい。
主演の余貴美子は言うまでもなく、竹中直人、椎名桔平が強烈な印象を残す。特に竹中直人が演じる「さえない中年」像がまたいい。ラストシーンも含めて、見終わったあと、「後をひく」映画だと思う。[DVD(邦画)] 8点(2007-07-31 00:46:08)《改行有》
3. 夜がまた来る
夏川の綺麗な脚を活かした撮り方だった。ただ夏川の幼稚な声が、強烈なはずのヒロイン像をダメにしている。体当たりの「演技」というより、ただ喚くだけ。
演出として、この内容で1時間40分は長すぎる。最後の戦闘などダルくて仕方ない。自分の撮りたい映像を優先しただけで、作劇として「見せる」考えが足りないように思う。
[DVD(邦画)] 4点(2007-07-31 00:40:00)《改行有》
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