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【製作年 : 1930年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. バルカン超特急(1938) 《ネタバレ》 ヒッチコック監督作品で1本選べと言われたら、私なら迷わずこれ。私がミステリに必要不可欠な要素だと思っている「ユーモア」がふんだんに盛り込まれ、なんとも楽しい作になっています。特にイギリス人2人の使い方が良く、ちょっと自虐的な描き方にも思えますが、最後のオチまで愉快です。あと、暗号が歌になっているという秘密自体おかしいのですが、銃撃戦を横目にその歌を教えているあたりは爆笑もの。実にトボケた情景で、製作者側の余裕を感じられます。ほか、窓に書いた文字や紅茶の包み紙も、視覚に訴える文字通り「見(魅)せる」名シーンでしょう。 最初に見たときは、序盤のホテルのパートがつまらなかったのですが、再見すると主要人物をうまく紹介していることがわかります。ただ、主人公が誰なのかわかりにくいため、面白みが感じられないのでしょう。あと、弁護士とその愛人はユーモラスな部分がなくちょっと浮いた存在ですが、この弁護士が白旗を揚げながら撃たれるあたり、当時の情勢を反映しているようです。 そういう部分もあるものの、基本はお気楽に楽しめる娯楽作です。テンポがのんびりしていることもあって、古き佳き時代のサスペンスと言えるでしょう。(レビュー1000本目)[CS・衛星(字幕)] 10点(2020-04-29 20:20:06)《改行有》 2. 新婚道中記 《ネタバレ》 いわゆる「スクリューボール・コメディ」の代表にも挙げられるようで、ドタバタの行動と洒落た会話の落差が面白い。特にアルマンとジェリーが鉢合わせするところは爆笑。結局元の鞘に戻るというのは予想できるので、どういう展開になるのかがポイントですが、男女の心理の綾もうまく描写されていて、ただのコメディでは終わっていません。ちょっとドタバタすぎて(?)終盤ダレ気味なのが残念。しかし最後までサービス満点で、十分楽しめました。[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-04-21 22:14:00) 3. ロビンフッドの冒険 《ネタバレ》 80年も前の映画ですが、今見ても楽しめる。いわば古典の楽しさ。ロビン・フッドなので当然弓も使いますが、クライマックスは剣での斬り合い。チャンバラ映画というか、剣戟映画のようでした。王様も登場するので、終盤水戸黄門風の流れになっていたのも興味深い。明朗快活な冒険活劇で、難しく考えずに楽しめる娯楽作でした。[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-08-16 10:26:11) 4. モホークの太鼓 「アメリカ人の・アメリカ人による・アメリカ人のための映画」って感じ。アメリカ人(非インディアン)が喜べばそれでいいような気がするので、日本人には受けなくてもいいんでしょう。ジョン・フォードらしいユーモアがそこここに見られますが、それが本筋の戦いなどとかみ合っていないようにも思われます。一応退屈はしませんでしたし、カラーは奇麗でしたが。[CS・衛星(字幕)] 6点(2016-02-22 20:26:51) 5. 駅馬車(1939) 《ネタバレ》 普通に面白い。映画技法的には製作当時としては新しかったのでしょうが、今見るとそういうところは当たり前になったのか、よくわかりません。ストーリーとしては主役2人を中心としつつ、群像劇の要素も取り入れているのですが、そのバランスが適切。道中いろいろあって人物関係が微妙に変わってくるあたりが面白く、見ものでした。特にダラスとルーシーの女性2人がよかったです。ブーン先生もなかなか格好いい。しかしそのためか、最後の決闘がオマケに思えてしまうのはご愛敬。西部劇にはああいう場面が必要とされていたのですね。ユーモラスなところも多く、重厚さはありませんが、軽いタッチの娯楽作として楽しめました。[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-02-15 19:41:44) 6. 鴛鴦歌合戦 《ネタバレ》 いきなり歌いまくりで本当にオペラのようになるのかと思いましたが、適宜セリフも入っています。この作品が楽しい最大の理由はオペレッタ形式だからではなく、純粋にお話が面白いからでしょう。モテモテ浪人礼三郎をめぐる恋のさや当てに、骨董マニアの困った親父と娘の情愛。それにご無体な殿様がからんで、ある種パターンながら愉快な物語を紡いでいます。それも各人物のキャラクターがしっかりしているからでしょう。中盤礼三郎がかっさらわれて姿を消すのも、なかなか効果的。志村・香川・お春・藤尾・お富と、演じる役者さんの名前から役名を拝借しているのも、とぼけた感じてけっこうです。歌は市川春代さんがちょっと苦しいですが、それ以外はかなり聞きものでした。文句なしの逸品。[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-09-07 20:14:21) 7. モダン・タイムス 《ネタバレ》 やはり、序盤での大量生産工場の非人間性を風刺した部分が圧倒的に面白い。肝心の娘が登場してからは少々失速気味。というか、せっかく夜警の仕事を手に入れたのに、デパートでのんきに過ごすってどうよ。今から見ると、あまりにもお気楽すぎて現実味に欠け、共感できません。しょせんは夢物語。もうちょっとそれらしい展開なら、喜んで見られたと思いますが。「ティティナ」のシーンは文句なくすばらしいです(あれはイタリア語に聞こえましたが……?)。[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-08-01 21:53:12) 8. 街の灯(1931) 《ネタバレ》 盲目の娘との「感動物語」よりも、金持ちのいいかげんで酷薄なところへの風刺や、拳闘試合でのおかしみが印象深いです。正直、少女との話は定番的すぎて面白味は少ないのです。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-07-31 22:10:28) 9. 望郷(1937) 《ネタバレ》 これは「世界名画劇場」以来で、けっこう忘れている部分がありました。全体的には、記憶にある通りの作品でしたが。ペペが元パリジャンらしく、おしゃれなところは新発見でした。内容的には人物のキャラクターが今ひとつで、物語が平板になっているのはそのあたりが原因でしょうか。もっと癖を持たせた方がよかったと思います。いかにもな悪党にせず、わりと普通の人たちに描いていたのは、狙ったのかもしれませんが。演出的にも面白いところはありましたが、全体としてはそれほどでも。最終的には、望郷の念というか自由に対するあこがれを捨てきれず逮捕されたペペですが、それと犯罪ものとギャビーへの恋慕がごたまぜになり、どれにも的を絞りきれなかったためか、散漫な印象を受けました。最後に自殺したのも「自由の身」になれないためかもしれませんが、そのあたりのペペの心情をもっと掘り下げたら、また変わってきたのではないかと思います。[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-06-12 20:02:50) 10. 有りがたうさん 《ネタバレ》 実にのんびりしたお話で、時代がよく表れていると思います。バスの停車場で毎回一服というのも、今では考えられません。バスの車内でもタバコを吸っていましたし(笑)。しかしそのため、途中でちょっとだれてしまったのは残念。 お話としては、売られてゆく娘を中心にすえつつ、色々なエピソードで楽しめました。特に桑野通子と石山龍嗣の応酬が楽しい。しかしその桑野通子も、最後の語りで、ああこの人はもう帰ってこないんだろうなと思わせる。売られずにすんだ娘との対比も生きて、なかなか重みのある結末でした。重みといえば、コメディタッチで笑わせながら、要所要所で問題意識を投げかけるあたりもバランスがよくてけっこうでした。[CS・衛星(邦画)] 7点(2013-04-29 17:55:36)《改行有》 11. 大人の見る絵本 生れてはみたけれど 《ネタバレ》 「ユーモアとペーソス」という言葉はこの映画のためにあるんじゃないか、というような内容でした。子供の世界も大人の縮図でしかない、というところがミソでしょうね。生まれた限りはそれから逃れられないという。しかもそれをあえて拒否せず、受け入れてしまうところがすごい。そうした懐の深さがあるからこそ、最後はさわやかな気分にさせられるのでしょう。幼い兄弟が登場するコメディという点では、同じ監督の『お早よう』と共通していますが、こちらの方が見ごたえがありました。 それにしても、今では「偉いことが必ずしもいいとは限らない」という価値観もありますし、いい意味で時代を感じさせます。兄弟が軍人になりたいというのも、当時をよく現していますね。[CS・衛星(邦画)] 8点(2013-03-03 17:49:34)《改行有》 12. マダムと女房 《ネタバレ》 話としてはありがちですが、けっこう笑えました。なんだかんだとうるさいけど、しっかりヤキモチを焼く妻の田中絹代がかわいい。それに対する夫の渡辺篤もいい感じ。なにより、スピード時代に感化されて執筆のスピードも上がったというのが面白いです。ネズミとネコをめぐるエピソードも、単純だが楽しい。トーキー初期なので音を生かしているのはもちろんですが、表情で気持ちを語らせたり、伊達里子のチラリズムでサービス(?)するなど、画で語らせるところも忘れてはいません。そのあたりもよかったです。 世界初のトーキー映画は『ジャス・シンガー』だそうですが、本作でジャズがフィーチャーされているのは、その影響なのかどうか。いずれにせよ、両作品にジャズが登場するというのは興味深いことです。[CS・衛星(邦画)] 6点(2013-03-02 20:17:10)《改行有》 13. 間諜X27 《ネタバレ》 マレーネ・ディートリッヒは、あいかわらずかっこよくてなおかつ素敵。序盤の娼婦より、ロシアに潜入した時の掃除婦姿が特に魅力的です。スタインバーグ監督も、彼女をいかにすばらしく見せるかに力を入れているようです。そのためか、お話の方はいまいち。「愛に殉ずる女スパイ」というのは、メロドラマとしては格好の材料でしょうが、肝心のX27とロシア軍大佐がどうやって惹かれあったかが、わかりづらい。おそらく当時の観客にとっては、ディートリッヒというだけで、恋に落ちる話は問題なかったのでしょう。しかしX27がどこに惚れたのか、よくわかりません。結局、後半の展開は説得力がなくなってしまいました。[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-08-13 20:28:03) 14. エノケンのちゃっきり金太 《ネタバレ》 開始早々流麗なローマ字で「Enoken」と出たあと、のぞきからくりの似顔絵で出演者を紹介する、粋で楽しい演出です。内容的にも幕末の話なのに、現代の歌がバンバン登場するナンセンスぶりは楽しめます。エノケンはやはり動きがすごいですね~。逃げるところなんか、本当に足が4本に見えます。岡っ引き中村是好との、息のあった名コンビも見もの。しかしやはり総集編であるために話がつながらず、隔靴掻痒の感があるのは何ともなりません。最後のドタバタもかなり省略されているようで、なんだかよくわからないうちに終わってしまいました。ああもったいない。[CS・衛星(邦画)] 6点(2012-08-03 13:53:45)(良:1票) 15. ボー・ジェスト(1939) 《ネタバレ》 こりゃ面白い。ジャンルとしては一応冒険ものに分類されるのでしょうが、むしろミステリーとしての側面が強い。冒頭、いきなり不可解な事態が続出してこちらを引きつけ、ひとつの言葉を軸に過去へ戻る展開がうまい。そこでも宝石消失事件が起き、「誰が盗ったのか?」という興味でつなぎます。ここからは3兄弟が外人部隊に入って冒険色が強くなるのですが、軍曹とのやりとりなど見ていて飽きません。一応兄弟の絆も描かれていますが、味付け程度で基本的に娯楽作として作っているのがいいです。冒頭へとつながる終盤は目が釘づけになりますし、それで終わって無事帰宅したと思ったら、最後の最後に意外な真実が。ちゃんと伏線も利いているし(ボーはたしかに宝石を持っていなかった!)堪能させられました。傑作。[CS・衛星(字幕)] 9点(2012-06-16 22:11:13)(良:1票) 16. スミス都へ行く 《ネタバレ》 それなりに面白かったですが、最大の欠点は、スミスが結局秘書の言いなりで動いていたこと。「操り人形」であることに変わりはないでしょう。[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-06-10 11:08:21) 17. グランド・ホテル 《ネタバレ》 「グランド・ホテル形式」の元祖として有名なので、ストーリーが追えるか心配だったのですが、見れば全く心配なし。前半は人物紹介でややつまらないものの、それぞれのドラマが用意されているていいです。後半への伏線にもなっていますし。次第に主要人物が重なってくるので、全体として大きな流れとなってきます。最終的には「男爵」を軸に5人をまとめたシナリオで、なかなかうまく作っていると思いました。必ずしもハッピーエンドでないのも現実的です。意外性もあって堪能しました。[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-06-09 20:48:10) 18. 風の中の子供 家族の映画としては心あたたまる内容ですが、優等生すぎるかな? 音声がよく聞き取れないこともあって、それほどいいとは思いませんでした。[CS・衛星(邦画)] 6点(2012-05-14 20:52:37) 19. 祇園の姉妹(1936) 《ネタバレ》 まずは、テーマ曲のモダンさに度肝を抜かれた。続いて冒頭の横移動長回しにびっくり。なかなかすごいです。一方お話はというと、おもちゃに共感できません。男に対抗しようとして男と同じことをする。フェミニストと称する方たちが、「男女同権」を叫んで同じことを主張していました。しかしそれこそが、「世の中は男中心である」という前提に立っているのではないかと思われます。結局おもちゃは、「女には持てない、男ならではのもの」によって報復を受けるわけですが、それは男の猿真似をした報いではないかと感じました。 さて最後、一見すると芸者批判というか、こうした職業に対する問題提起をしているようですが、少なくとも本作では、そういうことでまとめていいものかどうか。梅吉が捨てられたのも、古沢本人は梅吉のためを思って離れていったのに、梅吉が未練たらしくしたという経緯があるだけに、素直に同情できません。それは芸妓ということに関係ない、男女間の問題を含んでいると思います。ですが、本作でそれが意識されたかどうかは、疑問が残ります。 ということで不満はありますが、溝口監督の演出テクニックは見ごたえがありました。[CS・衛星(邦画)] 7点(2012-04-16 21:40:28)《改行有》 20. モロッコ 《ネタバレ》 主役2人がとにかく格好よすぎ。ハンサムなディートリヒにやられてしまいました。しかし、リンゴを売るというのは笑っちゃいますね……。大男のクーパーも、キザなところがたまりません。お話はたわいないといえばたわいないのですが、各人物が相手をいたわり合う心情がよく出ていたと思います。とはいえ、基本的にはクーパー/ディートリヒのカップルを鑑賞する映画でしょう。ただ、ラストはやられた。パラマウントのロゴに“The End”の文字がかぶさってもなお、音楽と風の音が鳴り続けている。粋なこの映画にふさわしいラストでした。[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-03-30 11:47:48)(良:1票)
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