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1. セブン
《ネタバレ》 これは『ブレード・ランナー』へのオマージュという話だが、モーガン・フリーマンの苦渋に満ちた演技がよかった。一方、“七つの大罪”うんぬんの犯罪シーンはまあネタで、この作品で意外と古びるのはここらへんからかな、という気がする。
映像はさすがなもので、特に終結部の郊外(変電所?)の風景は俊逸だ。こういう荒涼とした絵を邦画ではあまり見ない。ダイナミックさが足りないのである。その意味では大風呂敷の七つの犯罪シーンにしても、ちゃんと絵にできるという自負があるからやったわけで、おそらく日本映画でこれを撮ったら目も当てられないことになったろう。日本人は大人しい草食なのである。
[DVD(字幕)] 7点(2011-06-17 01:16:00)《改行有》
2. CURE キュア
時期的に「セヴン」とか「羊たちの沈黙」などのサイコスリラーが出ていた頃ではなかろうか。邦画の水準としてはかなり上質というか、日本映画の良い意味での丹念さもあり、観ていて安心感があった。
安心感とはいっても、決して居心地のいい映画ではない。萩原聖人演じる間宮は、観ていて苛々するほどだし(その意味では成功しているわけだが)、各俳優も大して存在感があるわけでもない。ある意味日本映画というのはこれほど存在感の薄い俳優達によって演じられてきたわけだ。
黒沢清はそういうハンディを意識しつつ、それを逆手にとって映画の画面を構築しているように見える。職人的な監督さんだと思う。少なくともこの時期の、「CURE」のあたりが彼の最も充実した頃なのではなかろうか。
たとえば遠景から間宮が最初に登場する浜辺のショットは俊逸なもので、このあたりで本作がただの思わせぶりなホラーではないということがわかった。つまり職人的な丁重さで作られているなということである。その意味で安心して映画に浸れるという気がした。
しかし上述のアメリカ映画ほどには、残念ながら画面に華がない。ダイナミックさで、どうしても負けるのだ。それは終末部の、病院の廊下の一劃で高部の妻(だと思う)が縛られた異様な姿で映されるシーンなどで、やはり造作のチープさをカバーするためにいささか映す時間が短か過ぎたりとかしている。このような細部を、細かく観ればアラが判然としているあたりが邦画の貧しさとでも言おうか、黒沢清のレベルですらこうなのである。
「CURE」はしかし邦画的水準では高いものだと思う。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2011-01-10 09:28:15)(良:1票) 《改行有》
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