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1. いとこ同志
《ネタバレ》 先日亡くなられたクロード・シャブロル監督に哀悼の意を表して、この名作の感想を書きたく思います。
勉強熱心だが何事もうまく進まない主人公と、その原因を作った張本人である自由奔放で不真面目な、しかし親戚の主人公を大事に思ういとこ。この男とその仲間の自堕落な生活に影響されて主人公の勉強も捗らなくなるが、そこで描かれる退廃っぷりは見事の一言。この一年後にイタリアで製作されるフェリーニの「甘い生活」やその翌年のアントニオーニの「夜」と似たようなものがあり、当時の富裕層がどのような暮らしをしていたのかが見てとれる。そして遂に試験に落ちてしまう主人公とは裏腹に、カンニングをしてなんとか試験に受かるいとこの対比。ここに表される不条理さ。これまたカミュの名作「異邦人」を髣髴とさせるものがあり、見ていてなんともいえない思いにさせられる。果ては突然訪れる衝撃のラスト。不意の事故でいとこに殺される主人公。これにはとてつもなく重い気分にさせられる。しかしながらも忘れられない驚きのイメージの数々を見せてくれたこの映画は、珠玉の逸品と言わざるを得ない代物である。[DVD(字幕)] 9点(2010-09-14 09:27:56)《改行有》
2. 大地のうた
サタジット・レイ監督が、会社に勤めながら約三年かけて完成させた初監督作品。
しかしながらそのような制約があったとは思えないほどに洗練されたその映像は、かの溝口健二の作品を髣髴させるものがあり、思わず見とれてしまう。特に今でも語り草となっている有名な列車のシーンの美しさは圧巻で、映画という芸術の生み出す映像美の極と言えよう。
そんな完成度の高い作品を、デビューしたてながら手掛けたサタジット・レイ監督は、名実共に世界有数の名監督だと改めて感じる。[ビデオ(字幕)] 8点(2010-07-26 14:26:57)《改行有》
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