みんなのシネマレビュー |
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2. 静かなる男 《ネタバレ》 まあ単純に楽しめばいいのだろう、歌あり踊りありのインド映画のようにロマンティックに。ロマンティックとはこの場合、それが束の間のことであっても、近代的個人が共同体との和合を回復し、孤独を解消するようなことである(ジョン・フォードにとっての「故郷」アイルランドへの帰還)。が、敢えて無粋を承知で言うなれば、これはまさにホモソーシャルな三角形の見本のような映画。「女性の交換」をめぐり、女性としてみずから瑕疵のない交換物たろうとして持参金にプライドをかけて固執する花嫁、この花嫁を挟んで対立する花嫁の兄と花婿。やがて、マッチョな「暴力」を介した男同士の相互承認関係で「ハッピーエンド」。あくまで男社会の支配なのだな。[DVD(字幕)] 6点(2025-06-16 21:39:07)★《更新》★ 3. コット、はじまりの夏 《ネタバレ》 原題が The Quiet Girl、明らかに、同じくアイルランドを舞台にしているフォードの有名作『静かなる男 (The Quiet Man)』に因んでいるのだろうから、『静かなる少女』という邦題でいけただろう。満点の映画だが、このザンネンな邦題と、ラストシーンが事の重大な成り行きを敢えて放置していることで、一点減点。キャメラが美しく無駄なく(多い省略も有効)、俳優陣も瑕瑾なし。主演の少女のまさに抑制の効いた演技には、濱口竜介ふう演出の良きものを感じる。本当にいい映画だ、あの乱暴な『静かなる男』なんかより遥かに。[DVD(字幕)] 9点(2025-06-15 21:26:03)★《更新》★ 4. トップ・ハット 《ネタバレ》 あの『マダムと女房』の如く、冒頭から、サイレンスの要求とそれに対する騒音(タップの!)の挑発というかたちで、もはや遅ればせながらもトーキー化を高らかに宣しているのであろうか。何にも縛られない「自由」を口にしながら気ままに踊り出すアステアの音(タップと音楽)と共にある身体は、トーキー映画の意欲的な前途そのものを告げる。[DVD(字幕)] 8点(2025-06-15 09:52:17) 5. 晴れて今宵は(1942) 《ネタバレ》 鎧姿が一瞬出てきて、極めて当たり前ながら、それとは逆のミュージカルのしなやかな身体性を浮き彫りにする。この身体性と音(音楽)のコラボが、かつてトーキー化の必然性の後押しをしたのだった。リタ・ヘイワース、頑張ってるなぁ。踊れるフィルム・ノワールの女、なのである。[DVD(字幕)] 8点(2025-06-13 21:51:51) 6. 嘆きのテレーズ 《ネタバレ》 作り手はじっくりと説得的に描き込む、それを受け手もじっくり堪能する、というフランス映画だ。ハリウッド調とは異なった、バッド・エンドのアイロニーなんかもいい。[ビデオ(字幕)] 8点(2025-06-11 10:56:00) 7. 埋れた青春 《ネタバレ》 究極のバッド・エンド。映画館へ行って、この不条理なエンディングを観たいか、である。落ち込んでいるときに観たら帰路の電車がシンパイかも(笑)。しかし、映画観客が、「現在」の持続たる映像を乗り越えてゆく欲望に憑かれた存在ならば、バッドエンドもまた、地道に説得的に語られる「現在」の苦悩をついに「過去」へと送り込むのであるから、それは観客の「欲望」に合致するのである・・・などとあらためて確認したくなる映画。[DVD(字幕)] 8点(2025-06-11 10:23:24)★《更新》★ 8. 素晴らしきかな、人生(2016) 作品を制作する上での脚本の手直しやらの情景が浮かんでくるような映画ではないか。ハリウッドらしい「無い設定、無い話」をどう入れるかの。この「無い話」はやはり「無い」ので、拍子抜け。見慣れた有名俳優たちの抑えめの演技だけをそれなりに愉しんで見ている感じ。[DVD(字幕)] 5点(2025-06-10 23:18:33) 9. ぼんち 宮川一夫のキャメラが炸裂する、実に凝り倒した素晴らしい画面だ。精神的内容は決して高尚でもなんでもない、が、映画の場合、形式そのものが「内容」なのである。この意味での「内容」をひたすら愉しむことができた。ほんの一例として、このシネマスコープの横広画面に仕掛けられた横の運動を、愉しむこと。[DVD(邦画)] 9点(2025-06-07 22:03:39) 10. 赤線地帯 《ネタバレ》 溝口の中でもこれはあんまり好きではない。流麗な動きのはずの宮川一夫キャメラも、この陋屋に閉じ込められている感じ。若尾文子と京マチ子がそれぞれ活発な役柄で浮いているのは、それで構わないのだが、やはり嘘っぽさが残る。[DVD(字幕)] 7点(2025-06-06 21:08:00) 11. 我が至上の愛 ~アストレとセラドン~ 《ネタバレ》 何かに到達するとは厳密な否定を経て、それを乗り越えてこそであるということなのだ、ロメール映画において。その厳密な否定に、パラドックスやアイロニーなどの通常のロメール味が付随する、ということが今わかる。あの、ピリピリ神経質になっている二人に最後に訪れる、彼女の口から「命令」としての愛の言葉が「自発的に」湧き出ずるのも、パラドックス。[DVD(字幕)] 7点(2025-06-05 21:44:58) 12. 瞳の奥の秘密 《ネタバレ》 これはミステリーとしてはメリハリに欠けるし、人間ドラマとしてもとくべつ同一化できるようなものではなかった。ただあのちょっと倍賞美津子似の知的な上司は魅力的な役柄ではある。[DVD(字幕)] 5点(2025-06-04 22:30:09) 13. 暗い日曜日 《ネタバレ》 途中まではルビッチ『生活の設計』のオドロキの肯定的な成り行きを彷彿とさせるような三角関係映画だが、ナチの話題となったところで『シンドラーのリスト』をネガティブに捉え直したものでもあろうことが判明する。収容所行きの見殺しシーンの理由が説明されないのをなんとなくナチの気まぐれな残酷さということで了解してしまいそうだが、あれは嫉妬なのである。憧れの女性の寵愛を受けている果報者に対する、愛されざる者(卑劣にも交換条件で同衾を手に入れるだけの)の嫉妬。この嫉妬という理解の点でもナチという「巨悪」の「凡庸さ」が説明されうる(ハンナ・アーレントふうに)、つまりナチだけのことではなく、誰のものでもある普遍的な問題であるというように。そんな嫉妬を生むくらいの魅力である、エリカ・マロジャーンというこの女優さん。たくさんの名画に出ていそうだが検索した範囲では意外にそうではないようだ。[DVD(字幕)] 8点(2025-06-03 21:42:05)★《更新》★ 14. きっと、うまくいく 《ネタバレ》 かつてブームの時に観た多くのインド映画を彷彿とさせるのはもちろんだ(ダンスシーンは本当にすごい)が、ウェス・アンダーソン的なものも感じた、表面性のカメラワークと肯定感に。とにかく、これでもかと作り込んでいる、きっとうまくいくオプティミズムで。[DVD(字幕)] 8点(2025-06-03 14:40:12) 15. 極楽特急 素晴らしいが、惜しむらくは機知のスピードと高度さについていくのがやっと。こころを使わない詐欺師が恋に落ちたところで作品に深みが生まれて(この深みが大切)三角関係だ。翌年の『生活の設計』こそ見事な三角関係映画となり、ミリアム・ホプキンスがまた大活躍なのである。[DVD(字幕)] 7点(2025-06-01 22:29:24) 16. 恐怖の岬 《ネタバレ》 通常は探偵役のミッチャムが犯人役で、敵にまわしたらまことに厄介な存在となるということか。攻撃してくるミッチャムの姿をもっと見せ隠しするとホラー的な怖さが増しただろうが、そういう狙いではなかったようだ、作り手は。むしろ二人の男の真っ向勝負といった方向に近い。[DVD(字幕)] 6点(2025-05-31 22:50:55) 17. エドワールとキャロリーヌ 《ネタバレ》 一度も戸外には出ないが、長回しで、よく動き回っている感じの名作。実際にダニエル・ジェランが弾くかの如くのピアノの音色が素晴らしい。盛り沢山の演奏会シーンも充実している(「妻思い」のエドワールを支えようとしてピエロを演じる羽目になってしまう貴婦人のエピソードなど捨てがたい)し、主役カップルの諍いのありよう(ショボイ日常の退屈な持続に我慢ならない彼女)もメリハリが利いている。[DVD(字幕)] 8点(2025-05-30 23:11:27)★《更新》★ 18. 友だちの恋人 《ネタバレ》 『緑の光線』同様、恋の相手選びにいろいろと迷う、当たり前だが。その厳密な高いハードルを超えたところにいちおう確実なものがありそうだ、それは映像で納得できる。[DVD(字幕)] 7点(2025-05-28 22:51:41) 19. 木と市長と文化会館/または七つの偶然 《ネタバレ》 時事問題的な議論を細かく調査して、いかにも作り物の浅いレヴェルを脱して、実質的な充実感のあるものにこしらえあげている。[DVD(字幕)] 7点(2025-05-26 22:08:09) 20. モード家の一夜 《ネタバレ》 人と恋愛関係に入るには、情欲の宗教的・哲学的位置付けが必要であるかのように始まる。キリスト教やらパスカルやらの話題、さらに表面的には何も起こらないモードのところでの一夜なのだが、お互いの他者性の探り合いはスリリングである。後半のお目当ての女性との絡みに移って俄然面白くなる。[DVD(字幕)] 7点(2025-05-25 23:07:10)
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