|
1. 秒速5センチメートル(2007)
ネタバレとは言えない程度に最初のシーンを紹介すると、ヒロインが突然主人公を誘うように走り出し、踏切ごしにブリッ子的ポーズをとりながらブリッ子的声でこう言う。
「来年も一緒に桜…みれるといいね」
…ウゲー、と思った。このクッサいシーンを白けた顔で見ながら私はこの映画のすべてが分かったような気がした。そして我慢しつつ視聴して、この予感が当たっていた事を確信した。例えるなら自作の黒歴史ポエムをウットリしながら朗読してる人を見たような気分。顔を背けたくなるような恥ずかしいシーンとセリフのオンパレード。加えて背景見せたげに無意味にポンポン切り替わるカメラ、死んだ魚のような目をしたキャラクター達、気持ち悪い声優の演技にうんざり。思い出語り的進行とはいえ心情を口で説明しすぎてるのも☓。見所として挙げられる背景も確かに綺麗なのだが、配色と光を誇張してリアリティがなく、綺麗に描きすぎていると思った。正直シネマレビューで酷評する気マンマンで見ていた。
が。観終わった後に妙な感情が湧いてきた。学生時代の事を思い出しながら自分もあんなだったなあと、ちょっとした感傷に浸った。綺麗なだけに見えた背景も、そういや思い出の中の風景ってあんなだよなあと評価が変わった。内容にしろ風景にしろ、自分の思い出とリンクして、何かいいものを観たような気がするのである。不思議だなと思った。
が、やはり観てる間苦痛だったのは間違いないので、この点数にした。大変惜しい映画だと思う。どっかで見聞きしたような表面的で薄っぺらい「カッコイイ」「キレイ」「感動的」な表現を捨て、真正面からモノを捉えて映画を撮って欲しい。[DVD(邦画)] 5点(2011-07-06 10:01:15)(良:1票) 《改行有》
2. サマーウォーズ
《ネタバレ》 ひとつの仮想空間がクラックされただけで世界危機に陥る設定、簡単に解けるパスワード、米軍が関わるお決まりのパターンというのはマイナスではあるが、個人的にさしたる問題ではない。問題はキャラクター。侘助のプログラムによって愛する祖母が死んだ事に関して、寿命で死んだとか実行したのは米軍だとか言ってたがフォローになってない。死ぬほど後悔し、あまりの狼狽ぶりに「アンタのせいじゃないよ」と周りの人間から同情され、一生かけて償うと決心してやっと許されるレベル。それからスーパーコンピュータの暴走を引き起こした翔太に関して。祖母のためとは言え一生懸命準備していた人間の努力を無駄にし、世界危機に陥れた代償がグーパンチひとつで反省もしていない。これにはストレスを感じた。他にもウジウジした主人公に終始イライラしっぱなしだったし、主人公に当たり前のように荷物を持たせて侘助が来たら主人公をほっぽり出すヒロインは好きになれない。負けるとメソメソ泣く佳主馬。ウザいだけで可愛くない子供たち。花札前まで役に立たない女たち。キーとなるバアちゃんも感動の最終兵器たる死をもってしても心を動かされるようなものがなかった。キャラデザも個性がなくて薄っぺらく、人物を描写する気がない。リア充的雰囲気もカンに障る。
「キャラクターの行動に納得できない」「キャラが好きになれない」 というのは時かけの時にも言われていたはずだ。細田守の致命的な弱点はキャラクターだ。これを意識し改善しない限り次世代を担うアニメ監督にはなれないだろう。[DVD(邦画)] 4点(2011-07-03 11:29:04)(良:2票) 《改行有》
|