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プロフィール
コメント数 1960
性別 男性
年齢 49歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  ブルー きみは大丈夫 《ネタバレ》 彼らの名は、IF。かつて想像力豊かな子供たちによって生み出された、自分にしか見えない友達たちだ。姿形もみんなバラバラ、性格だって個性豊か、そして各々が持つ特殊能力も火を吐いたり空を飛んだりスパイ活動が得意だったりと誰もがみなオンリーワン。でも、彼らが存在出来るのは子供たちが彼らを必要としている間だけ。みんな大人になると自らが生み出したはずのそんな存在を忘れてしまう。そして、子供たちが彼らの存在を完全に忘れるとIFはこの世から消滅してしまう運命にある。そう、彼らは子供たちが生み出した「イマジナリーフレンド(IF)」なのだ――。母親を病で亡くし心を閉ざしてしまった12歳の少女ビー。だが今回、父にも新たな病が見つかり、入院して手術することに。ビーは父の手術が終わるまで、お祖母ちゃんのマンションで暮らすことになる。優しいお祖母ちゃんとともに毎日、父が入院する病院へとお見舞いに通うビー。不安で押しつぶされそうになっていたそんなある日、彼女はマンションの上階で、モフモフもさもさのモンスター、ブルーと出会うのだった。驚きつつもすぐに仲良くなってゆくビーとブルー。新たな友達が見つからなければ消滅してしまうというブルーのために、ビーはIFの世話人のような存在のカルとともに街を奔走し始める……。まぁ完全に子供向けの内容なのですが、IFたちのCGがけっこうハイクオリティだったし主人公の女の子も魅力的だったしでぼちぼち楽しめました。なにより声優陣が超豪華!!マッド・デイモンやらエミリー・ブラントやらジョージ・クルーニーやらブラッド・ピットやら、ハリウッドのビックネームがてんこ盛り!!とは言え、英語が得意じゃない自分としては誰が誰だか分かんなかったんですけどね(笑)。んで肝心の内容の方なのですが、これが超ベタベタで最後まで1ミリたりとも驚きと言うものがない超超薄味作品でございました。まず肝心のIFたち。これが『モンスターズインク』や『トイストーリー』と言ったピクサー作品に出てきたキャラクターにだいぶ影響を受けてるというか、もはやほぼパクリなんじゃないかってくらい既視感満載。メインキャラのブルーなんて完全にモンスターズインクのアイツじゃん…。お話の方もいたってフツー。ばかりか難病&親子ネタで無理やり泣かせようとする感じが若干ハナにつく感じも。ま、それでも画がキレイだったので暇潰しで観る分には良いんじゃないでしょうか。[DVD(字幕)] 6点(2025-06-08 13:01:48)
《更新》


2.  パスト ライブス/再会 《ネタバレ》 午前4時のニューヨーク。ここは朝までやっている静かなバー。アジア系の中年男性がカウンターで酒を飲んでいる。隣には同年代のアジア系女性。そしてその隣には浮かない顔の白人男性。3人の間には何処か他人行儀な空気が漂っている。会話もそんなに弾んでいない。どうやら仲の良い友人同士と言うわけではなさそうだ。彼らはどうして今夜、ここで酒を酌み交わすことになったのか――。24年前、韓国のソウルの下町で暮らす少女ナヨンと少年ヘソンは、幼い頃からの幼馴染。家が近所だったこともあり、学校の帰り道はいつも一緒。いつしか2人はこれまでとは違う感情でお互いを意識するようになっていた。だが、ある日、ナヨンの両親がカナダに移住することになり、2人は離れ離れとなってしまうのだった――。12年後、今はノラと名を変え、ニューヨークで暮らしているナヨンは作家を目指して下積み生活を続けていた。彼女はふとした思い付きでSNSでヘソンの名を検索してみる。すると、自分のことをずっと捜していた彼のことを知るのだった。懐かしさから友達申請を送るノラ。そこからネットを介して繋がってゆく2人。頻繁にやり取りを重ね、やがて子供の頃の特別な感情を甦らせてゆくノラとヘソン。だが、ソウルとニューヨーク、そして12年の月日はあまりに遠く、2人の想いは徐々に擦れ違ってゆく……。アカデミー作品賞ノミネートと世間の評判がすこぶる良かったので今回鑑賞。確かに評価される作品であることは分かるし、こんなに淡々としたシンプルな物語にも関わらず最後まで人を惹き付ける魅力に溢れた作品であることも認めるのですが、自分は正直、まったく好きになれませんでした。なぜなら、この主要登場人物3人にいっさい好感を抱けなかったから。むしろ3人ともみんな嫌いと言っていいかも知れません。まず主人公である女性ノラ。旦那もいて安定した生活を送ってるのに、昔の初恋の相手がニューヨークに来るからってわざわざ2人で会いにいくなよ!しかも旦那も交えて飲みに行くとか無神経にも程がある!自分が旦那だったら、「もー充分やろ!」ってキレて連れ帰るわ。んで幼馴染の男ヘソン。今の彼女にフラれたからって、わざわざ昔好きだった既婚の女に会いに行くなよ!しかも13時間も飛行機に揺られて。まかり間違ったらストーカーですよ、これ。しかも旦那には分からん韓国語で会話して、こそこそ口説くとかけっこうサイテー。んで今の旦那アーサー。そんな無神経な嫁と男に素直に振り回されてんじゃねー!つーか、家に来させて一緒に飯食う?俺だったら、「何、人の嫁に色目使ってくれてんねん!」ってキレて追い返してるわ(と言ってる自分はまだ独り身なんですけどね!笑)。と言うわけで、自分はこーゆー過去の恋愛をうじうじ引き摺ってる人たちのお話が大嫌いだと再認識させてもらいました。終始落ち着いた大人の雰囲気などは良いと思うんですけどね。※後半、思わず感情的になってしまったことをお詫びいたします。[DVD(字幕)] 5点(2025-06-04 10:21:25)

3.  アイアンクロー 《ネタバレ》 80年代に活躍した伝説的なプロレスファミリー。その名も、フォン・エリック一家。父は、相手の頭をその万力のような剛腕で締め上げる〝アイアンクロー(鉄の爪)〟と言う必殺技で一世を風靡したプロレスラー、フリッツ・フォン・エリック。そんな父から厳しい英才教育を受けて育てられたのはケビン、デビッド、ケリー、マイクの4兄妹だ。しばらく地方でドサ回りを続けていた兄弟だったが、世界ヘビー級王座への挑戦権を手にするとそこから華々しく活躍してゆくことに。だが、予想だにしなかった悲劇が兄弟たちを襲うのだった――。三男のデビッドが過剰なプロテイン接種により日本での巡業中に急死。その意思を次いでチャンピオンとなった次男ケリーはその直後にバイク事故により片足を失ってまう。そして、オリンピック選手を目指していた末っ子のマイクもプロレス界に参戦すると試合中の事故により昏睡状態に陥ってしまう……。いつしか「呪われた一家」と呼ばれるようになったそんなプロレスラー家族の悲劇的な運命を描いたヒューマン・ドラマ。これが実話と言うこともあり、全編を覆うこの重苦しい雰囲気はなかなか見応えがあった。周りから見れば、あくまで仲の良い成功した家族のように見えるがその内幕は、それぞれの思いがぶつかりあうどろどろの愛憎劇。父親はいつも家族のことを第一に考えているように見えて実は自分の成功のことしか興味がないモラハラ親父、母親もそんな横柄な夫に従順につき従うしかない典型的な昔の女。機能不全を起こしたそんな家族の中で徐々におかしくなってゆく兄弟たちの運命をただじっと見守るしかなかった長男の目線で物語は進んでゆく。彼らがそれぞれ迎える悲劇はあまりに理不尽。華々しいプロレス業界で、重圧に押しつぶされたりトラブルに巻き込まれ、最後はみな悲惨極まりない最期を迎えてしまう。最後、長男以外の子供を全て亡くしもはや壊れてしまった母親の姿など見ていられない。これをただ理不尽な悲劇として終わらせていいのだろうか――。やはりここまでの悲劇を招いてしまったのは、父親の存在が大きいと思う。息子たちに幼いうちからひたすら過酷なトレーニングを強要し、プロレスラーとなってチャンピオンになることを強制、無理がたたって壊れそうになってもろくに相談を聴こうともしない。ここまで来ると毒親を通り越してもはやサイコパスなのではないかとすら思えてくる。家庭と言う外からは見えにくい密室で徐々に壊れてゆく子供たちをどうすれば救えたのだろうかと考えざるを得ない。ただ、本作の惜しい点は、そんな父親の狂気性への踏み込みが甘いところだ。子供たちをここまで妄信させる、狂気にも似た父親の執念にもっと切り込むべきだった。そうすればより心に残る物語となっていたであろうに。後で調べたところによると本作では描かれなかった、同じく自殺したもう一人の末っ子クリスの存在があったことを知った。彼の存在をばっさりカットしてしまったのも何か釈然としないものが残る。[DVD(字幕)] 6点(2025-06-04 09:38:37)

4.  落下の解剖学 《ネタバレ》 本当に妻は夫を殺したのか――。フランスの人里離れた雪山に佇む一軒の山荘。暮らしているのは、家族とともに最近ここに越してきたばかりの作家、サンドラだ。教師である夫はこの山荘を改修し近い将来、民宿を開くことを計画している。幼い頃に事故に遭い、今はまったく目が見えない11歳の一人息子は自宅学習をしながら平穏に暮らしている。色んな事情を抱えながらもそれなりに満たされた生活を送っているそんな家族。だが、ある朝、とある事件が起こる。夫がベランダから突然転落死してしまったのだ――。当初は事故と思われていたが、警察の捜査が進むと幾つかの不審な点が明らかとなる。遺体近くに残っていた不自然な血痕、何度も変遷する息子の証言、そして夫のパソコンには事件の前夜、激しく口論する夫婦の録音データが。容疑者として逮捕され、裁判を受けることとなったサンドラ。友人である弁護士とともに公判に臨んだ彼女だったが、次々と不利な証拠が明らかにされ……。カンヌ映画祭でパルムドールを受賞し、アカデミー作品賞ノミネートということで今回鑑賞。まず印象的なのは、音楽の使い方が物凄く独特だったこと。冒頭、主人公の夫が転落死するシーン。そこにかなり大音量でノリのいい音楽が流されているところからなんとも不穏な空気が漂っている。どうやら上階で山荘の改修をしている夫が流しているらしいのだが、階下では何事もないかのように妻が取材を受けている。目が見えないはずの息子は、何故か一人で険しい山道に犬の散歩へ出かけてしまう。もうここから、この夫婦の秘められた事情が暗示されているようで、この監督の独自のセンスに惹き込まれてしまった。気を紛らわせるために息子が何度も弾くピアノの早弾きも観客の不安感をこれでもかと煽ってくる。音楽ばかりではない。事件の舞台となる雪深い山荘や、長い伝統を感じさせる裁判所の重厚な雰囲気など隅々にまで監督の映像への拘りが感じられ、素直に感嘆させられる。そうして紡がれる物語。一見仲の良さそうな夫婦がそれぞれに抱え込んでいた心の闇。かつては好き同士で一緒になったはずなのに小さな擦れ違いからここまで壊れてしまうという事実が、リアルかつ丁寧に描かれている。特に裁判所で流される生々しい夫婦喧嘩の録音テープは、まさに最悪な夫婦の姿を見せつけられたようでなんとも暗澹たる気持ちにさせられてしまった。それでも両親のため、なるだけ気丈に振る舞おうとする息子の姿が切ない。かなり暗い気持ちにさせられる映画なのだが、それでも一時たりとも目が離せないのはこの監督の優れたストーリーテリングによるものなのだろう。息子のために必死で頑張ってきた母親が後半、息子に拒絶されるシーンには胸が張り裂けそうになってしまった。惜しいのは最後の展開。敢えてなのだろうが、ことの真相をうやむやのまま終わらせてしまったのはやはり不満が残る。ここは物語として何らかのカタルシスを与えてほしかった。それでも、平凡な女性が些細なことから人生の落とし穴へと落下してゆく過程をつぶさに解剖してみせることで、生きる意味を改めて問い直そうという本作のテーマは充分見応えのあるものだった。なかなかの秀作と言っていい。[DVD(字幕)] 7点(2025-06-04 08:02:31)

5.  最悪な子どもたち 《ネタバレ》 治安があまり良くないフランスの地方都市で、演技未経験の子供たちを対象にしたオーディションが行われる。目的は、この土地を舞台にした映画を撮るため。選ばれたのは、貧しい母子家庭に育つ少年やクラスでイジメられている少女、少年院から出所したばかりの青年と言った、さまざまな訳アリの子供たち。彼ら自身をモデルに書かれたという脚本を基に撮影が始まるのだが、当然、ド素人の彼らを相手にスムーズに進むはずもない。子供たち同士で諍いが起こったりスタッフと揉めたり、途中で辞めたいと言い出す子が現れたり……。果たして撮影の行方は?と言うメタフィクションな手法で撮られた実験作。まぁやりたいことは分かるんだけど、それが成功したかと問われると、正直、ド失敗していると言わざるを得ない内容でした。撮ってる側からしたら大変だったかもしれませんが、こんな内輪ネタの楽屋オチみたいなものを延々見せられた観客からしたら「時間と金返せ!!」としか思えませんって。映画オタクたちがその場のノリで撮ったような自主製作映画に毛が生えた程度の内容でありました。[DVD(字幕)] 3点(2025-06-01 19:09:25)

6.  プリシラ(2023) 《ネタバレ》 もはや伝説と化した世界的ロックスター、エルヴィス・プレスリー。14歳にして彼に見初められ、のちに妻となるプリシラの自伝をガールズムービーの巨匠ソフィア・コッポラが映画化!彼女の長年のファンとしては、期待に胸を高鳴らせながらこの度鑑賞。いやー、この人のキュート&ポップな世界観は相変わらず健在ですね。60年代アメリカという時代背景を存分に使った、カワイイの波状攻撃に自分はかなりやられてしまいました。原色を多用したカラフルなドレスに盛りに盛った巻き髪、もはや目の上で一周しそうになってるつけまつ毛、家の中に置かれた家電や家具もみなレトロでノスタルジックなデザインのものばかり、主人公を演じたケイリー・スピーニーのロリポップな魅力も相俟ってもはや自分はこの世界にノックアウト寸前!ソフィア・コッポラのマジカルなセンスはいまだ衰え知らずですなぁ。まぁ中身のなさも相変わらずでしたけど(笑)。こーゆー画を撮りたいという思いが先行するあまり、肝心の夫婦の描写は表面をなぞってるだけで彼らの秘められた真実に迫ってるとは到底言い難い。最後の尻切れトンボ感も酷い。とは言え、自分はこの人のセンスとは昔から相性が良く、このポップな世界観には充分浸れましたので満足度は高め。強引に政治的主張をブッ込んでくるどこぞのフェミニズムな女性監督よりよっぽどいい。世界的大スターの彼女になって自分も周りからチヤホヤされたい!何不自由ない完璧な家庭で大好きな人から一番大事にされたい!でもそんな羨ましい他力本願な女は最後にとことんしっぺ返しを喰らってほしい!と言う、世の多くの女性たちが夢見る世界をセンスあふれる映像で綴った、なかなかの佳品でございました。以下余談。最後の方に登場する長女のリサちゃん。まだ3歳くらいの小さな女の子でしたが、この子がのちにマイケル・ジャクソンやニコラス・ケイジの元嫁になるのかと思うと感慨深いものがありました。まぁ映画では子役が演じてるだけなんですけどね(笑)。[DVD(字幕)] 7点(2025-05-30 09:05:10)

7.  探偵マーロウ 《ネタバレ》 「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」の名台詞で有名なハードボイルド名探偵の代名詞、フィリップ・マーロウ。今回彼が挑むのは、1939年のハリウッドを舞台に悪徳プロデューサーや麻薬ブローカーが蠢く闇のビジネス。果たして彼は無事に事件を解決できるのか?レイモンド・チャンドラーが創造した名探偵マーロウが現代に復活。と思ったら、正確にはチャンドラーの死後に別の作家が書きついだ続編が原作だそうです。今回マーロウを演じるのは、あの中年の域に達して突如アクション俳優として覚醒してしまったリーアム・ニーソンさん。自分、フィリップ・マーロウの映画はどれも未見でかろうじて昔、原作小説を1、2冊読んだ程度。そんな自分がいうのもなんですが、今回のニーソンさんのキャスティングはなかなか嵌まってたんじゃないでしょうか。常に冷静沈着、クールなようでいながら悪や不正は絶対に許さず、悪党には容赦がないが半面女性には優しい。そんなまさにハードボイルドを地でゆく渋い男をいい感じに演じております。途中でバディを組む黒人ドライバーとの飄々とした掛け合いも見ていて楽しい。とは言え、お話としてはいたってフツー。遥か昔の小説を映画化しただけあって、良くも悪くもオーソドックス過ぎるんですよね~~。訳アリ女優から死んだはずの男を探してくれと言う依頼を受けたら、実は男が生きていてバックには裏社会の大物とハリウッドの成金たちが絡んでいたというお話。事前に予想した通りのお話を微塵も裏切ることなく最後までそこそこのクオリティで終わってゆきました。欲を言えば、もう少し現代的な視点や見せ方が欲しかったところかな。でもまぁ70近いというのにリーアム・ニーソンさんは相変わらず渋くてかっこいいし、クラシカルな雰囲気も味があったし、暇つぶしで観る分にはそこそこ楽しめるんじゃないでしょうか。[DVD(字幕)] 6点(2025-05-28 08:14:20)

8.  君たちはどう生きるか(2023) 《ネタバレ》 言わずと知れた日本アニメ界の巨匠、宮崎駿監督の最新作。もちろん気にはなってましたが、世間のあまりの賛否両論ぶりといかにも説教臭そうなタイトルに気が引け、何となく今まで敬遠しておりました。それがこの度、地上波で初放送ということで無事鑑賞。うーん、どーなんですかね、これ。自分の超個人的な感想としては、なんか村上春樹の同じく問題作と言われている『ねじまき鳥クロニクル』を読み終えたときと同じような印象かな。どちらも鳥がモチーフだし、意味があるのかないのか分からないエピソードがひたすら繰り返されるところも舞台転換が唐突過ぎて全くついていけないところも同じ。村上春樹は基本的に好きなのに『ねじまき鳥~』だけは個人的に嫌いな本。同じく宮崎駿も充分リスペクトしてるんだけど、本作は全編に独り善がりなナルシズムを感じて自分はいまいち好きになれませんでした。登場人物誰にも魅力を感じなかったし、特にあのアオサギの中に入ってるハゲジジイのビジュアルはだいぶ気持ち悪かった……。それでもイマジネーションの極北をゆくような独創的な映像はさすが宮崎駿!って感じで、そこだけは見応えありました。[地上波(邦画)] 5点(2025-05-17 10:35:51)

9.  キリエのうた 《ネタバレ》 彼女の名は、キリエ。何処からやってきたのか、誰も知らない。普段はほとんど喋ることは出来ず、人とコミュニケーションはもっぱら筆談。常に何かに怯えたような彼女は、現在住む家もなく、路上やビジネスホテルを渡り歩いている。だが、ひとたびギターを手に歌いだすと、その魂から絞りだしたかのような歌声は聴く者を圧倒し、そして深い感動を生み出すのだった――。2011年、大阪。まだ幼い少女だったキリエは、学校にも行かず、公園で寝泊まりしながら教会が提供してくれる食事だけを頼りに生活している。そんな彼女の存在を知った一人の女教師は、キリエを助けようとするのだが。2018年、帯広。17歳になったキリエは、高校生として普通に学校に通っていた。その声と内向的な性格のせいで友達もおらずずっと一人で過ごしていた彼女のことを知った同級生の真緒里。謎に満ちた彼女に何故か惹かれるものを感じた真緒里は、ある日図書館で声を掛ける。キリエの兄だという青年とともに次第に仲良くなってゆく2人。だが、キリエは心に深い秘密を抱えていて。2023年、東京。何もかもを捨て、あてもなく路上を彷徨っていたキリエ。そんな彼女が出逢ったのは、高校卒業以来、まったく連絡を取っていなかった今はイッコと名乗る真緒里だった。キリエの歌声に心を鷲掴みにされたイッコは、自分がマネージャーとなってあなたを有名にしてあげると約束する……。日本映画界の中で僕がその新作を心待ちにする天才映像作家、岩井俊二。待ちに待った彼の最新作を今回鑑賞してみました。美しい映像と気品に満ちた音楽、3つの時代を頻繁に行き来し様々な登場人物が幾重にも交錯する複雑なお話なのにそれをまったく感じさせない卓越した編集力、なによりキリエをはじめとする個性豊かな少女たちのいまにも壊れてしまいそうな儚さなど、岩井俊二らしい美質はもはや匠の技。特に、真っ白な雪の中で横たわる2人の少女がともに小田和正の名曲を口ずさむシーンは、鳥肌立つほど美しかったです。ただ、それらの美点は認めながらも一つの映画として、僕はそこまで評価できませんでした。理由は、後半の展開。それまで謎だらけだったキリエの過去が徐々に明らかとなるのですが、それがかなり強引過ぎるうえに少々詰め込み過ぎな感が否めず。キリエのお姉さんの悲劇、親友であるイッコの正体、少女時代のキリエを保護した女性教師、彼女をデビューさせようと奔走する仲間たち、そしてキリエと浅からぬ関係にある夏彦、彼らの物語が最後まで一向に纏まっていきません。なんなら破綻しているようにすら感じてしまいました。イッコが辿る悲劇的な結末は取ってつけたような印象だし、特にキリエがイッコのせいでレイプされそうになるシーンはあまりに執拗で自分は嫌悪感の方が上回ってしまいます。そして、東日本大震災の描写もあまりに浅すぎて自分は首をひねらざるを得なせん。震災が襲ってきたシーン、何故、キリエはずっと下着姿でなければならなかったのか?まったく必然性を感じられず、なんならある種の下品さすら感じてしまいました。岩井俊二、日本映画界のなかでも数少ない大好きな監督さんだけになんとも残念。次作に期待したいと思います。[DVD(邦画)] 5点(2025-04-14 12:12:57)

10.  バーナデット ママは行方不明 《ネタバレ》 彼女の名は、バーナデット・フォックス。一流企業に勤める夫と年頃の一人娘とともに暮らす、何処にもいるような専業主婦だ。建築家だった過去の経験から自宅の改修に精を出し、娘のビーともまるで友達のようなフランクな関係、近々ビーの卒業旅行も兼ねて家族で南極に行くことも決定している。ただ、彼女には一つ大きな問題が――。それは極度に偏屈な性格で隣人や親戚たちはもちろん、何処に行ってもトラブルばかり引き起こす困った人だということ。ママ友たちとも些細な行き違いで喧嘩してばかり、ネットの怪しげな情報を信じて危険なクスリを手に入れようとしてみたり、とにかく周りは気が休まる暇もない。さらにはロシアの違法サイトにアクセスしていたせいでFBIから目をつけられていることも判明するのだった。「もう限界だ。君を精神科に強制入院させることにした」――。夫からのまさかのそんな宣告に何もかも嫌気がさしてしまったバーナデッドは、そのまま誰にも行き先を知らせず失踪してしまう。果たして彼女の人生に光は差すのか?監督は、僕とは昔からあまり相性のよくないリチャード・リンクレイター。なのであんまり観る気はなかったんですけど、主人公を演じたのが名女優ケイト・ブランシェットだったので今回鑑賞してみました。結果は……、やはり今回も見事に嵌まりませんでした。何が嫌かって、とにかくこの主人公!!終始悪態ばかりついて、何か嫌なことが起こると途端にヒステリーを起こして泣き喚き、悪いのは全部周りのせい、天才建築家ともてはやされた過去の栄光をいまだ引き摺って周りの人間を全員見下しているようなお人。そんなに人間が嫌いなら、もう山奥でも絶海の孤島でも何処でも一人でいきゃぁいいじゃん!!って言うね。精神的な問題があったとしても、自分はこーゆー人とは一生関わりたくない。もちろんそう思わせるのは、ケイト・ブランシェットさんがあまりにも巧いからなんでしょうけどね。また、この監督お得意の終始軽ーい演出も自分にはまったく合わず。物語の中盤、この主人公がたった一人、南極へと強行旅行へと行ってしまいそれを娘と旦那が追いかけるという展開になるのですが、それをなんか家族のほんわかエピソードみたいに纏めちゃうのってどーなんですか。いや、これやってること犯罪ですやん。自分は正直、そんな家族の問題に周りを巻き込むなよ!!てすんごくイライラしちゃいました。こればっかりは好みの問題なので如何ともしがたい。メンヘラおばさんをリアルに演じたケイト・ブランシェットのさすがの貫禄に+1点![DVD(字幕)] 5点(2025-04-12 11:01:04)

11.  クライムズ・オブ・ザ・フューチャー 《ネタバレ》 舞台は近未来。体内で新たな臓器が生成されるという謎の奇病を患った男がそれを逆手に取り、自らの体内からそんな新たな臓器を摘出する手術を公開するショーを開催していた。刺激を求める観客たちに次第に熱狂的に受け入れられてゆく男。事態を重くみた政府は、秘密捜査官を彼の元へと派遣する。そんな彼らの元に、生まれつきプラスティックを消化できる器官を備えた少年の遺体が持ち込まれ……。監督は、グロ映画界の巨匠デビッド・クローネンバーグ。もはや80近いのに虚心坦懐、実直に我が道をゆく彼のグロテスクワールドは相変わらず健在。内臓ぶちまけたり男女2人で血だらけになってエッチしたり少年の遺体を解剖するとこをショーにして見せたりと、昨今幅を利かすポリコレなど爽快に無視しちゃってる彼独自の世界観には素直に賛辞を送りたいところ。グチャグチャどろどろ、変なところに変な突起のある機械の中でエッチしちゃうヴィゴ・モーテンセンとレア・セドゥとか、日本の某触手系アニメを髣髴させて大変グッド!!ただ、それに対してお話の方は何ともビミョー。え、この主人公は結局何がしたいの?彼を熱狂的に支持する人たちは単なる変態集団ってだけ?それにプラスティックを食べていた少年はいったい何の意味があったの?そこら辺、分かったような分からないようなで僕は途中から、もうどーでもいいわ!となっちゃいました。こーゆーグロい画を撮りたいという熱い想いが先行するあまり、肝心のお話の方がおろそかになっちゃったパターンなんじゃないですかね?他の追随を許さないグロテスク世界観は相変わらず良かっただけに、もう少しストーリーの方でも魅せてほしかった。残念![DVD(字幕)] 5点(2025-04-08 12:33:51)

12.  私がやりました 《ネタバレ》 有名映画プロデューサーが殺された――。豪華な自宅で無残な射殺体となって発見された男。容疑者として逮捕されたのは、売れない若手女優マドレーヌだった。同居人で駆け出しの弁護士であるポーリーヌとともに裁判闘争を開始した彼女は、自分は正当防衛であるという主張を打ち出すのだった。役者志望である自分に大きな役を与えるという餌をちらつかせ、肉体関係を迫ってきた彼を誤って射殺したのがことの真相だというのだ。目撃証言も決定的な証拠もほとんどなかったが、世論を味方につけたマドレーヌたちは瞬く間に無罪を勝ち取ってしまう。そればかりかこの裁判をきっかけに、マドレーヌは一躍人気女優に、ポーリーヌは新進気鋭の若手弁護士としての地位まで手に入れるのだった――。途端に有頂天となる2人。だが、そんな彼女たちの前に真犯人を名乗る旬を過ぎた大物女優が現れる。プロデューサーを殺したのは自分で、無罪を勝ち取り本来有名になるはずだったのは自分だと。地位と名声のために自分が真犯人だと主張する彼女たちのどろどろの戦いが幕をあげる。果たして事件の真相とは?という、ミュージカル映画の名作『シカゴ』をフランスでリメイクしたかのような内容の本作、これがいかにもおフランスって感じのウィットとエスプリに富んだオッシャレ~な内容に仕上がってましたね。ここら辺がアメリカとフランスの文化の違いって感じなんでしょうか。パステル調の色調も何処か舞台のような画作りも飄々と進むスラップスティックなストーリーも、とにかくおしゃれ!何処か百合っぽい主人公女性2人の関係性も見ていて微笑ましい限り(2人でお風呂に入ってるシーンなんてなんともキュートで大変グッド!)。ただ可愛いだけのそんな2人の前に現れる、酸いも甘いも嚙み分けたベテラン女優イザベル・ユペールもさすがの貫禄で見応え充分(てかこれって演技じゃなくて地だったり?笑)。とは言えストーリーに特段驚きのようなものもなく、最後まであまりに軽すぎるしで個人的にそこまで嵌まらなかったですが、なかなか楽しいお話でございました。[DVD(字幕)] 6点(2025-04-08 11:21:56)

13.  シミュラント 反乱者たち 《ネタバレ》 科学技術が高度に発達した近未来。人類は高性能AIを搭載した人型アンドロイド「シミュラント」に頼り切った生活を送っていた。主人である人間の命令には絶対服従、一言も文句を言わず、家事や育児、その他さまざまな仕事をこなす彼らはまさに人間の叡智の結晶のような存在だった。だが最近、そんなシミュラントの中に何故か独自に行動し持ち場から逃走する事例が多発する。彼らを追い捕獲する任務を担うケスラー捜査官は、ある一人のシミュラントを追う過程の中で驚くべき事実に気づくのだった。何者かがそんなシミュラントの安全プログラムを破り、人間に反乱するよう仕向けている――。ケスラー捜査官は事件の重要な鍵となるエバンという名のシミュラントを執拗に追い始めるのだが……。と言う、これまで何度も何度も制作されてきた、よくある近未来SF作品。こーゆーのってやはり決め手となるのは、このハードSFな世界観に如何に観客を惹き込ませるかだと思うんですけど、本作はそこら辺の設定の詰めが非常に甘く、正直ちっとも面白くありませんでした。このアンドロイドたちがどのように生み出されどんな工場で大量生産されているのか、また一民間企業がその製造とメンテナンスを一手に引き受けてるらしいんですけどこの大企業がどのような存在なのか、また政府との関係は?等々、観客がもっとも知りたいそれらの情報を一切スルーしたままどんどんとお話だけが進行してゆくので観客は途中から置いてけぼりを喰らったような感じになっちゃうんですよね。また、そのストーリーの方もよくあるお話なのに、無駄に哲学的要素をぶっこんでくるものだから極端にテンポが悪く、僕はもう序盤からあくびが止まんなかったんですけど!監督は、きっと押井守の実写版みたいなことをやりたかったんでしょう。けど、基本となる世界観の創り込みが甘すぎてもはや見られたもんじゃありませんでした。正直、凡作と言わざるをえません。[DVD(字幕)] 3点(2025-04-08 10:36:24)

14.  ジグソウ:ソウ・レガシー 《ネタバレ》 狙った人間を次々に拉致し、手を変え品を変えひたすら殺人ゲームを仕掛けて殺しまくる猟奇殺人鬼ジグソウを描いたソリッドシチュエーションスリラー『ソウ』。その容赦ない血みどろ描写で世界中に熱狂的ファンを持つこの人気シリーズが待望?の復活だそうで。とはいっても僕は、まだ無名だったころのジェームズ・ワンが世に出るきっかけとなった一作目こそ楽しめたものの、その後はひたすらグログロ映像を見せたいだけの同じような内容に3くらいでもういいやとなって全く追っかけてませんでした。ところが今回、前作で一応完結したシリーズが新章突入ということと、最近エンタメホラーの分野でめきめきと頭角を表しているスピエリッグ兄弟が監督と言うことで鑑賞。結果は……、まぁ正直普通の出来でしたね、これ。切れ味鋭いスタイリッシュな描写やサクサク進むテンポの良いストーリーなどはぼちぼち面白かったものの、やってることはほとんどおんなじ。薄汚い廃農場に集められた人たちが生き残るためのデスゲームに無理やり参加させられて、各ゲームごとに一人また一人と脱落してゆくだけ。その死に方がノコギリカッターで切り刻まれたり毒薬注射を打たれたり頭上から様々な刃物を落とされたりとバラエティに富んでたのは大変刺激的で、そこは良かったかな。特に最後の顔面崩壊はナイスグログロ!とはいえそれだけの内容なので、1週間もすれば完全に記憶から消え去りそうな映画なのは間違いない。そーゆー映画だと割り切って観ればボチボチ楽しめるんじゃないでしょーか。[DVD(字幕)] 6点(2025-04-06 09:44:39)

15.  ポトフ 美食家と料理人 《ネタバレ》 19世紀末のフランスを舞台に、ひたすらストイックに料理に向き合う一人の美食家と料理人である彼の妻との静かな生活を淡々と描いたヒューマンドラマ。最後までまったく音楽を流さず、主要登場人物も3、4人だけ、映画のほぼ7割くらいは自宅でひたすら料理を作っているか食しているだけという、なかなかに挑戦的な内容なのにも関わらず、最後まで淡々と見せ切るこの監督の手腕はさすがと言うしかない。小鳥の囀りや虫の鳴き声、そよ風に揺れる森の樹木が奏でる葉音、そして食材を切ったり煮込んだりする調理音の中で交わされる知的でウィットに富んだ会話劇。出来上がってくる料理がどれも馴染みがないにもかかわらず、全て美味しそうに見えるのもこの監督のセンスがなせる技なのだろう。20年の時を経て、晴れて夫婦となった主人公2人を襲う悲劇も必要以上にドラマティックに描かなかったところも好印象だ。ただその反面、最後まであまりに淡々と綴られるこの2人の物語にはおそらく賛否が分かれるだろう。自分は少々退屈に感じてしまった。ユーラシア皇太子からの依頼にフランスの代表的庶民料理であるポトフで勝負するという最後の重要な場面が、何故か曖昧なまま終わってしまったのもいかがなものか。全編に漂う気品に満ちた雰囲気やストイックなまでに料理に拘った画作りなどはすこぶる良かっただけに、惜しい。[DVD(字幕)] 6点(2025-03-29 19:32:31)

16.  コット、はじまりの夏 《ネタバレ》 自然豊かなのどかな田舎町で家族とともに過ごす9歳の女の子、コット。その大人しい性格のせいで学校や家庭でも孤立しがちな彼女は、いつも一人で過ごしている。牧場を営む両親は牛の世話や農作業に追われ、娘のことなどほったらかし。そんななか、現在妊娠中の母親の出産予定日が近いということでコットは親戚の老夫婦の家へと預けられることに――。僅かな荷物だけを手に、同じく牧場を営むというその老夫婦の元へと連れてこられたコット。慣れない生活と人見知りのせいで当初は固く心を閉ざしていた彼女だったが、夫婦のさりげない優しさや気遣いにふれ、次第に打ち解けてゆくのだった。そんなある日、老夫婦もまた、哀しい過去を背負っていることを知ったコットは……。アイルランドののどかな田舎町を舞台に、人とは違う多感な少女と老夫婦のひと夏の交流を瑞々しく描いたヒューマンドラマ。正直、この映画に新しい部分は一切ない。これまで何度となく描かれてきた、親戚の家に預けられる大人しい女の子というお話。昔の名作小説や、世界名作劇場のようなアニメで何度も観てきたような内容でとにかく既視感しかない。主人公を迎え入れる老夫婦なんて、もはやスタジオジブリの実写化なのかなと思えるくらいだ。でも……、ここまで丁寧に演出されるとテーマが普遍的であるがゆえ、やはり心に響くものがある。横柄で男尊女卑な昔ながらの父親が支配する家から逃れ、自由で優しい世界を初めて知ったコットが次第に心を開いてゆく一連のシーンは流れが自然なこともあり、気づいたらこのコットという少女を応援せずにはいられなかった。アイロンがけや料理など丁寧に家事を教えてくれるおばあさんや、寡黙で一見怖そうだけどたまにお菓子を置いていってくれるおじいさんなど、さりげない描写の数々が光る。緑豊かな田舎町の美しさも相俟って、この詩情溢れる世界にいつまでも浸っていたいと思わせるのはこの映画の力なのだろう。やがて明かされる老夫婦の哀しい過去。コットが、最初は男の子の服ばかり着させられていたことや井戸には気を付けてと何度も言われたこと、勝手にいなくなったら物凄く怒られたことなどが思い起こされ、何とも切ない気持ちにさせられる。コットを演じた、これがデビュー作とは思えない少女の繊細な演技がとにかく素晴らしかった。そしてやってくる別れのとき……。このひと夏の経験は、コットのこれからの長い人生できっと忘れられない思い出になった。人生の終盤を迎えた老夫婦から、これからはじまりを迎える少女へと受け継がれる物語のバトン。新味は一切ないが、人生のきらめきを詩情豊かに切り取ったこのクラシカルな物語を僕はいつまでも忘れることはないだろう。[DVD(字幕)] 7点(2025-03-29 14:11:35)

17.  マッドマックス:フュリオサ 《ネタバレ》 あのフュリオサが帰ってきた!!行って帰ってくるだけというシンプルイズベストに程があるほどシンプルな内容なのに、その最後まで衰えぬ謎のテンションの高さや完全にとち狂った世界観、そして一周回ってジェンダー問題を扱ったもしかしたら深い内容なのかもとも思わせるストーリーで観るものを圧倒したあの『マッドマックス/怒りのデスロード』。その中に登場した、もはや主人公マックスを完全に喰っていた片腕の女運転手フュリオサをフューチャーした、待望の続編と言うかスピンオフというか前日譚。もちろん期待値マッドマックスで今回鑑賞。うーん、期待値が高すぎたのか、ちょっと自分は前作ほどには嵌まれなかったかな、これ。確かに、相変わらずド迫力なカーチェイスシーンは見応え充分だし、イモータン・ジョ―軍団のイカレっぷりもサイコーだったんですけど、なんか全体的に大人しめと言うかもっとイキ切った世界観を期待してた自分としてはちょっと消化不良。やぱ、マッドマックスと言えばあのなんの意味があるのか皆目分からない、謎の吊り下げギタリストだと思うので今回あの人たちが見られなかったのも残念。あと、話がややこしー!いや、普通の映画と比べたらこれでもシンプルなんですけど、それでもマッドマックスならストーリーはもっとシンプルで良かったかも。んで、これは前日譚の宿命でもあるんですけど、ストーリーがある程度分かっちゃうのも残念。あのフュリオサが右腕を失うエピソードも、きっと故郷の地をタトゥーで彫られてるのでそれを敵から隠すために自ら右手を潰すんだろうなと思ったら、まさかの逃げ出すためだけかーい!と、いろいろ言いましたがそれでもこの圧倒的な熱量が画面の隅々まで横溢する謎のテンションの高さはやぱ見応え充分!シャーリーズ・セロンに負けず劣らず存在感を発揮したアニヤ・テイラー=ジョイもカッコ良かったしね!次作に期待を込めて、7点!![DVD(字幕)] 7点(2025-03-25 12:02:16)

18.  コヴェナント 約束の救出 《ネタバレ》 対テロ戦争真っ只中のアフガニスタンを舞台に、自分を助けてくれたアフガン人通訳を決死の思いで救い出そうともがくアメリカ軍将校を描いたヒューマンドラマ。監督は、これまで軽いノリのエンタメ映画を量産してきたガイ・リッチー。彼の長いキャリアで恐らく初めてだろう、けっこう重ためのテーマに挑んだ作品ということで今回鑑賞。幾つもの大ヒット映画を手掛けてきただけあって、リアルな戦場描写やツボを押さえたアクションシーンは相変わらず迫力満点。敵がいたるところにうじゃうじゃいる戦地で、ひたすら逃避行を続ける主人公とその相棒通訳には素直にハラハラドキドキ。画的にちょっと地味なとこが難点ではあったけれどそこは充分楽しめました。ただ、中盤、ジェイク・ギレンホール演じる主人公が一人助け出されるも相棒の通訳は現地にほったらかし、何とか帰ってきたアメリカの自宅で彼が罪悪感に悶え苦しむシーンから徐々に冷めていく自分がいました。気持ちは分かるけれど、自宅を抵当に入れさらには愛する家族まで投げうって単身一人で現地に舞い戻るというのはさすがにやり過ぎじゃないですかね。せっかくここまでリアルに拘って作ってたのに、ここらへんから一気にランボーみたいなエンタメ映画のノリになっちゃってなんか違うなって思っちゃいました。最初は反対していた奥さんも知らん間にあっさり許しちゃってるし。別にそーゆーノリのエンタメ映画もありなんですけど、それなら前半の真面目なシーンとの繋がりが悪いし、あくまでリアルに徹するならアメリカでもっとやりようがあったと思うんですよね。例えば、動画配信でより多くのアメリカ国民に事実を知らせるだとか、署名活動を行うだとか、マスコミや有名政治家に働きかけるなどなど……。そーゆ―ことを一気にすっ飛ばして自ら現地に乗り込むって、あんたさすがに無謀すぎでっせ、てね。エンタメ映画ならもっとド迫力なアクションやテンポのいいストーリーで楽しませてほしかったし、ヒューマンドラマなら2人の関係性をもっと深掘りして見せてほしかった。全体的に、なんとも中途半端な印象でございました。[DVD(字幕)] 6点(2025-03-25 11:06:31)

19.  ガール・ピクチャー 《ネタバレ》 子供の頃から続けてきたフィギアスケートの大会を間近に控え、 寝る間も惜しんで練習に打ち込む高校生エマ。良い結果が出せずプレッシャーに押しつぶされそうになっていた彼女はある日、気分転換にと訪れた友達のホームパーティーで〝その人〟に出逢ってしまうのだった。魅惑的な目で自分を見つめてくる彼女の名は、ミンミ。一瞬で恋に落ちたエマはそのまま2人でパーティーを抜け出し、一週間後には世界で一番幸せな恋人同士となっていた。重圧も忘れ次第に心が癒されてゆくエマ。だが、練習ではますます失敗が増えてゆくのだった。一方、恋人のミンミもまた誰も知らない家族の問題を抱えていて――。そんな2人を暖かく見守る、ミンミの親友ロンコ。恋愛やセックスに興味津々の彼女は、とにかく運命の出会いを求めて様々なパーティーに出かけてゆくのだが、空気の読めない自分の言動のせいでいつも失敗してばかり。果たして3人の恋と青春の行方は?そんなシンプルなストーリーに全編を彩るノリのいい音楽、そして色彩感覚豊かな映像と、一言で言うならこれまで幾度となく作られてきたセンス系リリカル映画の王道。さすがにベタすぎて新味なさすぎじゃないとも思ったけど、主要登場人物であるこの3人の女の子たちがなんとも魅力的で大変グッド!初めて付き合った恋人といつも一緒にいたい、私の人生の全て!なんて思ってしまう彼女たちの初々しさは、普遍的であるがゆえにやっぱり切ない。その後、あんなに永遠だと信じていた2人も次第に擦れ違ってゆく。ここら辺の心理描写もかなり繊細で、この哀しみはどんな性自認を持った人でも関係ないというメッセージにもいたく共感。とは言え、やはりシンプル過ぎてこれまでさんざん作られてきた百合萌え映画と何が違うねんと言われると弱いところ。でも、本作の新しいところはそんな2人の親友であるロンコの存在にある。恋愛にもセックスにも物凄く興味があるのに、頭でっかちになり過ぎていつも失敗してしまう彼女。そんな彼女の前に運命の出会いかも知れない男の子が現れる。でも、結局上手くいかなくて、最後、彼女は自分がアセクシャルかもしれないことに気づく。正直、エマとミンミの2人だけの物語として完結していたら、自分もよくある百合映画として特に印象に残らなかったかも知れない。でも、そんな彼女の存在が物語に違う深みを与えている。ピンクを多用したフルーツパーラーでちょこんと座る2人の女の子や夜の公園でダンスを踊る少女たちというキュートな画も良いセンスしている。この監督の感性の豊かさには要注目ですね。最後、それぞれの道を歩みだした3人が笑顔で語らうパーティーのシーンも心地良い余韻を残してくれます。うん、良質のガールズピクチャーでありました。このそのまんまの超ダサい邦題以外は![DVD(字幕)] 8点(2025-03-06 11:01:21)

20.  ポッド・ジェネレーション 《ネタバレ》 様々な科学技術が発展した近未来。大手企業でバリバリと働くキャリアウーマン、レイチェルは植物学者である夫とともに充実した日々を送っていた。仕事も順調、豪華な高層マンションでの暮らしも快適、夫との関係も良好。でも最近、彼女は何か物足りないものを感じていた。そろそろ子供をつくるべきなんじゃないか――。不意にそう思い立つレイチェル。だが、今の仕事から離れたくはない。そんな折、彼女はベンチャー企業が新しくはじめた画期的なサービスを知るのだった。それは、体外受精した胎児を卵型のポットの中で10ヵ月間育てるというもの。これなら産休も取らなくてすむし、出産のリスクを負わなくてもいい。さっそく話を聴きにいくレイチェル。でも、豊かな自然を愛する植物学者の夫はそんな出産は摂理に反すると反対してきて……。卵型のハイテクポッドの中で胎児を育て出産することを決意したある夫婦の葛藤の日々を軽妙に描いたSFコメディ。アイデアはなかなか良かったと思うんですよ、これ。近い将来、本当にこんなサービスが出来るんじゃないかと言うリアルな部分に目をつけたところがなかなか秀逸。出産のリスクや面倒を何故女ばかりが負わなきゃならないの?というフェミニズムな視点もそこまで押しつけがましくなくて好印象。目玉をモチーフにしたAIなど一見シュールなのにどこまでもポップな描写も、この監督の品の良いセンスが感じられて大変グッド。ただ、問題は肝心のお話の方。アイデアは良かったのに、それがアイデアのまま終わってしまってるんですよね~、残念ながら。普通、こーゆー画期的なアイデアを基に脚本を書くなら、そこから起こるであろう様々な問題や展開を拡げてお話をどんどん面白くしてゆくもの。例えば、胎児の取り違えが起こったり、人身売買など闇組織に利用されたり、生まれてきた子供に愛情が芽生えないなどの副作用が発覚したり……。でも、この映画はそーならない。ただ、ハイテクポッドで子供をつくって産みましたってだけ。最後、何故かハイテク企業の手を逃れ自分たちだけで胎児をとり上げようとする主人公夫婦もその理由付けが弱く、いまいち盛り上がりに欠ける。かといって前述したフェミニズムなテーマもサラっと流してるだけで深みはなく、アート系映画としても弱い。なんかもっと面白くなりそうなのに、すごく勿体ないなぁという感想を僕は持ってしまいました。洗練されたポップな映像やマジカルな世界観はけっこう良かっただけに、残念![DVD(字幕)] 5点(2025-03-06 09:57:31)(良:1票)

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