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1. 三つ数えろ
《ネタバレ》 関係の映画。複雑な人間の関係の網目をボガートが冷静な頭脳とタフな精神・肉体でもって辿っていく。途中明らかに本筋とは関わりのない女性が二人、さも主要人物であるかのように登場する。しかし出番は一度きりで、思わせぶりな言動は沈黙に終わる。この部分こそ映画の肝であると私は信じる。ただでさえ入り組んだ関係性の中に二人の魅力的な女性を配置させる。つまりは無関係を関係させることにより、映画内世界に奥行きを持たせることに成功している。似た映画としてはジャームッシュのブロークンフラワーズが挙げられる。中々の秀作であるから、三つ数えろが大好きな方なら観て損はないと思う。[DVD(字幕)] 6点(2012-12-05 17:37:37)
2. 飾窓の女
《ネタバレ》 罪を犯してしまい追われる身となる悪夢を、皆さんも一度は見たことがあるのではないだろうか。そのような悪夢がこのフィルム上に、夢の曖昧性を排除した形で鮮明に焼き付けられている。初めて観賞した時、そのスリルに見ているのが辛くなるほどだった(個人的にサスペンスものに弱いということもあって)。主人公の残した犯罪の痕跡の数々が調べ上げられていく緊張感は見事なものだった。そして最後、それが夢だとわかった時の安堵。覚めない悪夢を冷徹に撮りきる映画も好きだが、観客を安心させつつ警告めいた余韻を残すこの映画も大好きだ。私は一度目よりも二度目の方がより楽しく観賞することができた。それはスリルが苦手ということもあるが、フリッツ・ラングの丁寧で上品な映画作りのゆえに生まれる奥深い味わいにこそ大きな理由があるのだろう。[DVD(字幕)] 6点(2012-12-05 17:21:01)
3. 脱出(1944)
《ネタバレ》 バコールの魅力に尽きる。鋼鉄を想起させる冷たく強固なシルエットと表情。それがラストシーンで無邪気な愛の笑顔へと溶解する。デビュー作ということで緊張していたらしいが、その緊張は彼女の容姿にとって相性のいいものだったのだろう。クリケットのピアノ弾き語りも要所を盛り上げてくれたし(香港がどうのという歌がすごく良かった。有名な曲なのかな?)、ボガートとウォルター・ブレナンとの絡みもホークス映画らしくて楽しい。しかし映画を通してやや退屈な印象を受けた。バコールの登場しないシーンたちが少し褪せて見えるせいかもしれない。[DVD(字幕)] 5点(2012-12-05 17:06:53)
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