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プロフィール
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自己紹介 ハリウッドのブロックバスター映画からヨーロッパのアート映画まで何でも見ています。
「完璧な映画は存在しない」と考えているので、10点はまずないと思いますが、思い入れの強い映画ほど10点付けるかも。
映画の完成度より自分の嗜好で高得点を付けるタイプです。
目指せ1000本!

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【製作年 : 2020年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  EO イーオー 《ネタバレ》 人間たちのモノサシによって、様々な"役"として組み込まれたロバは、 サーカス団の一員として、牧場の荷役として、サッカーチームの幸福の女神として、 流されるままに渡り歩き、待ち受ける不条理をただ受け入れているように見えた。 動物愛護団体が主人公のためにサーカスを潰しても、一方的な独善でしかない。 「ペットは家族の一員だ」と言われても、自由に外出はできず、意思とは無関係に去勢・避妊手術を受ける。 屠畜されている動物に目を背けながら、ペットを可愛がっているヒトの姿はグロテスクでさえある。 最後まで対等な関係にならず、人間の都合で常に生かされている。 その不条理の中で、サーカス団の娘からの愛情だけが微かな心の糧。 時折、差し込まれる赤い映像は鮮血のように見え、「生」と「死」が表裏一体であることを指し示す。 たとえ最後は悲劇だとしても、果たしてそれは悲劇なのか? 善とは?悪とは? そういうのは人間の作り出した思い込み、モノサシでしかない。 この物語もまた、そういう思い込みで観客が勝手に作っているのではないか?と訊かれているようである。 動物の根源である、ただ「生きる」ことを描いた作品。[インターネット(字幕)] 5点(2025-05-29 22:50:34)
《新規》
《改行有》

2.  サブスタンス 《ネタバレ》 力作で、問題作で、怪作。 暴力的なまでに痛快で、滑稽で、恐ろしく、哀しい。 キューブリックとクローネンバーグへのオマージュを盛り込みつつ、 最後はロバート・ロドリゲスばりの悪ノリが炸裂。 ルッキズムの大量消費と底の見えない承認欲求へのツケが、 ショービス業界に、スクリーンの観客に大量の鮮血として返ってくる。 どんな歳でも彼女を想っている同窓生がいたのにも関わらず、 化粧でも抗えない老いを受け入れられなかった、優柔不断の彼女の運命を決定づけた。 その果てで、理想の象徴であるスーは、現実のエリザベスを受け入れることができず、殺してしまった。 誰にも見向きされなくなっても、最後に味方になってくれるのは自分自身ただ一人。 "This is Me"で前向きに生きたいものだが、勝者が作り出した価値観に人間そう単純に捨て切れない。 140分の長尺をものともしない、スタイリッシュな演出の手札の多さと力業で捻じ伏せる。 過去の人だったデミ・ムーアが若手のマイキー・マディソンにオスカーを奪われて初めて本作は完成したと言っても良い。 サブスクになったらもう一度見たい。[映画館(字幕)] 8点(2025-05-23 23:59:41)(良:1票) 《改行有》

3.  To Leslie トゥ・レスリー 《ネタバレ》 でも、周りを見てごらん。 ここが本当にいたい場所なのかな? 中盤の酒場で流れるカントリー曲の歌詞の一節だ。 19万ドル(日本円で約2,600万円)の宝くじが当たるも全て酒代に消え、 住み家も家族も友人も失った女性はこの曲を聴いて何を感じたのだろうか? 酒を飲まないと約束しても、金をくすねて結局酒に使ってしまい、一人息子からも絶縁される。 かつての知り合いからも嘲笑され、救いようのない主人公に呆れながらもなぜか目が離せない。 100万ドル以下の低予算映画で大きな事件が起きることもないのに。 それは愚行だらけの中にまだ完全に諦めていない光を芯に宿している、アンドレア・ライズボローの説得力があってこそ。 あの夜から彼女は、与えられた居場所に胡坐をかくことなく、 幾度か酒に手を出しそうな危うさを秘めつつも、必死に自分自身を取り戻そうとする。 下手したら陳腐で嘘臭いメロドラマに陥りそうなものだが、終始乾いたタッチで最後まで惹きつけられる。 主人公の孤独にシンパシーを感じるモーテルの管理人が出過ぎない絶妙な立ち位置で、 彼女を信じ続ける監督の優しい視線と重なる。 己の弱さを受け入れ、真に切望しているものを、回り道しながらついに辿り着く。 もしかしたら振出しに戻るかもしれないと思いながらも、微かな光を見出す結末が尊い。 宝くじの大金を当初の生産的で利他的な方向に使っていれば、彼女の人生はまた違ったものになったかもしれないが、 失ったからこそ見えてくるもの、再び失ってはいけない大事な居場所がある。[インターネット(字幕)] 8点(2025-05-22 23:08:45)《改行有》

4.  北極百貨店のコンシェルジュさん 《ネタバレ》 接客業は大変。 常に臨機応変に対応しなければならず、気苦労が絶えない。 それも相手客が絶滅種を含むあらゆる種類の動物たちなら尚更だ。 高級百貨店の新人コンシェルジュの奮闘ものであるものの、 物語が舞台から出ることは決してない。 私生活が描写されることもなく、世界観の全容が明らかにされることもなく、 目の前の問題に対して、主人公はただただ最善を尽くそうとする。 やっていることが空回りして失敗続きで、リストラされかけることがあっても、 常に綱渡りでお客様に感謝されたときの喜びはひとしおだろう。 基本ハートウォーミングな物語であるが、絶滅種を丁重にもてなす接客にはすべて人間が担当しており、 大量消費による人間のエゴと業が集約されている。 ネットの通販で誰にも会わずワンクリックで完結する現代だからこそ、 直接面と面で向かい合うことで、感謝の気持ちと相手を喜ばせる気持ちはずっと残り続ける。 そこに北極百貨店が存在する意味があり、贖罪から共存共栄への想いが直に伝わる。 あそこはこの世とあの世の中間みたいな世界なのだろうか。 少女時代にコンシェルジュに憧れた主人公が一皮剥けて、 今度は新たな少女を温かく迎える円環の構成が余韻を生む。 北極百貨店のテーマソングが耳に残るような懐かしさ。[インターネット(字幕)] 7点(2025-05-18 20:37:37)《改行有》

5.  キー・トゥ・ザ・ハート 《ネタバレ》 フィリピン映画は珍しい。 近年では寓話的なラヴ・ディアスと社会派のブリランテ・メンドーサが日本でも知られるようになったが、 それでも日本公開作は果てしなく少ない。 そんな中、ネットフリックスでひっそり配信されていた本作は、先述の二人のような敷居の高さは感じられない。 いわゆる"キング・オブ・ベタ"を地で行くような感動的なメロドラマだからだ。 幼少期から孤独で職を追われた元ボクサー、生き別れで余命いくばくもない母親、 重度の自閉症を抱えながら絶対音感で天才的なピアノ演奏能力を持つ異父弟、 同居することになったチグハグな3人の家族愛と再生と奮起劇を、分かり切ったハッピーエンド一直線で突っ走る潔さ。 同時に自閉症を取り巻くトラブルに当事者には身近に感じられたし、 主人公の暗い過去とどん詰まりっぷりにフィリピンならではのリアリティがあるものの、 徐々に増えていく応援してくれる善意ある人々に救われる。 審査会の「熊蜂の飛行」の演奏で周囲の空気が変わっていく様はまんま『シャイン』だったけど。 弟役の熱演には見入ったし、『逆転のトライアングル』のシーンスティラーだったドリー・デ・レオンも安定感たっぷりの好演。 イ・ビョンホン主演のオリジナルの素地が良かったかもしれないが、100分のコンパクトさで気軽に見られる佳作だ。[インターネット(字幕)] 7点(2025-04-29 23:57:21)《改行有》

6.  マインクラフト/ザ・ムービー ステーキ割引券の期限が明日で切れる名目で、隣の映画館にて本作を鑑賞(スケジュールの兼ね合いで日本語吹替版)。 マインクラフトは少し聞いたことがある程度、それを見越してか世界観を分かりやすく説明してくれる箇所が多くて有難い。 一昨年公開して大ヒットした『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の再来と言っても良い内容で、 完全にファミリー向け、異世界転移もの、そして良くも悪くも"幼稚"であることも共通している。 ただ、観客が求めているものを最適解で惜しげもなく出しており、 一部の評論家に忖度した思想の押し付けで歴史的惨敗した某作と比べれば、本当に清々しいアトラクション映画に仕上がっていた。 '80年代を彷彿とさせるノリと勢いで、その当時を象徴する楽曲の数々、みんなが求めているのはコレなんだなと再認識。 他人の批判をものともせず、「自分の作りたいものを作れ」というクリエイティブ魂に共感。 オタク少年の成長譚であり、子供の心を持ち続ける大人たちへの熱いエールが伝わってくる。 映画の完成度が高いわけではなく、欠点も少なくないが、ジャック・ブラックとジェイソン・モモアの濃ゆい存在感で中和した形だ。 マインクラフトをよく知らないと楽しめない小ネタも多く、見た後何も残らない? 別にそれでも良いじゃないかという嘘偽りのない陽気さに+1点追加です。[映画館(吹替)] 6点(2025-04-29 23:24:07)《改行有》

7.  ツイスターズ 前作は未見でありながら、竜巻以外の要素はほぼ皆無のため、完全新作として見れる。 CG技術が完全に飽和を迎えてしまった現在、ともなると人間ドラマに舵を切ったのは正解だ。 リー・アイザック・チョン監督の作劇は巧みで、大自然を捉えた抒情的とも取れる映像美は本作でも健在だが、 アート表現は控え目であくまで職人監督に徹する姿勢に好感が持てる。 大自然の驚異に無力感がひしひし伝わるも、あとは好みの問題かな。 頭空っぽで見れても、甘さ控えめでもう少し何かが欲しいと思わざるを得ない。[インターネット(字幕)] 6点(2025-04-26 23:10:31)《改行有》

8.  月(2023) 《ネタバレ》 「タブーに向き合った」「問題作」と評されれば製作陣もご満悦だろうが、 問題提起と言いながら、"ヒーロー"になりたかったタダの人殺しを喧伝しているだけ。 ベースになった事件で犯人は自己愛性パーソナリティー障害と診断されており、 負担の大きい向いてない仕事に無理に留まらないで逃げれば良かったものの。 他のレビューでも書かれていた通り、多かれ少なかれ誰にでも差別意識はある。 暴れて言葉は通じない、糞尿を垂れ流して異常行動の数々を引き起こす。 もうこれ以上、面倒見切れない家族と職員の心の悲鳴。 綺麗事ではなく、対価がなければ善人ですらそんなものだろう。 だが、「それがどうした?」としか言いようがない。 そもそもホラー映画風の照明の少ない暗めの画作りで、フラットでもない両極端な価値観で職員たちを描いており、 そのテーマの先にあるものがないため、「みんな大変だね」「考えさせられるね」で終わってしまう。 2時間半近くかけて、変な使命感を持った幼稚な思考で凶行に及んでも大きなお世話で、 実際に事件が起こっても社会は何も変わらなかったことが答え。 職員も入所者も待遇は変わらないまま、年一で事件を風化させないアピールして、あとは蓋をするだけ。 重い障害とは無縁の裕福な家庭にとって、どん詰まりで起こった他人事の事件に過ぎない。 YouTubeで入居施設の待機者が大勢いることが取り上げられ、予算削減で「地域の皆さんで頑張ってください」な状態。 きっとこの先も施設に預けられず家族が手に掛ける、無理心中を起こす事件が増え、 それすらも日常になって、政治家も、行政も、一般庶民も、社会全体も事件の風化を待つだけだろう。 だからこそ、子供を亡くした主人公夫婦の再起を描いたパートが作品の焦点をぼかしており、 結局何が言いたかったのか、何を視聴者に伝えたいのかが理解できなかった。 表面だけフワッとなぞった中途半端な本作では、啓蒙にもならないのは当然と言える。[インターネット(字幕)] 4点(2025-04-26 10:34:55)《改行有》

9.  リンダはチキンがたべたい! 《ネタバレ》 抽象絵画風のタッチで描かれる、ニワトリを巡る大騒動。 登場人物が鮮やかな一色で塗り分けられた思い切りに、様々な国のルーツを持つフランスの多民族性を象徴する。 デモやストライキが当たり前のように描かれているのもこの国らしい。 父親を亡くし、集合住宅での暮らしはカツカツ、娘は多感な時期で、母親も常に余裕がない。 思い出の大切な指輪を失くした件で理不尽に娘に当たってしまった母親が罪滅ぼしで、 家族の思い出の料理であるパプリカチキンを作ることを約束するも、 どこもここもストライキで閉店して、追い詰められた母はニワトリを盗んでしまい…。 15分あたりから話にギアが入って、大人も子供もわちゃわちゃするも、フランスらしいほろ苦さと翳りが見える。 誰もが自分のことで手一杯で何とか折り合いをつけて生きているのだから。 死と黒色は忘却の中に置き去りにされていくものであり、その中にカラフルが差し込まれて、 思い出として生き続けていくミュージカルにホロリとさせられる。 何だかんだで大団円でご近所さんと一緒にパプリカチキンを食べられて良かったね(ニワトリはお気の毒)。 フランスの倫理観や民度はどうよ?と思いつつも、主人公と同じ歳の時に自分自身を出せたらと羨ましくもあった。[インターネット(字幕)] 6点(2025-04-25 23:07:06)(良:1票) 《改行有》

10.  新幹線大爆破(2025) 《ネタバレ》 オリジナルは未見。 可能な限り、予告編以外の情報はシャットアウトした状態で見た。 50年前の事件が幾度か言及されている通り、本作は続編寄りのリブートということになる。 SNSやスマホ、人気YouTuberによるクラウドファンディング身代金の要素は令和ならではと同時に、 清潔感がありながら上辺だけの虚無的な空気が感じられる。 その象徴が爆弾を仕掛けた犯人で、自らの手柄を吹聴している元警察官の父から虐待されていた女子高生だった。 爆弾の製作を教えた男も前作の犯人の息子というあたり、面子を保つための美談に走る偽善に満ちた現代社会への復讐。 登場人物の悪意ある言動がちらほら見えるも、そのフワッとした犯行動機にリアリティが一気に消失してしまう。 劇場版名探偵コナンではないんだから…… 後半の犯人バレから展開がダレていくのは残念だ。 不倫した女性政治家が、重大死亡事故を引き起こした観光会社の社長が、引率の女性教師が役割を終えてただの背景と化す。 殺さなければ爆弾が解除されないという、『ダークナイト』ばりの究極の選択を迫られるもそんなことをする勇気もなく、 「お客様の安全を第一に守る」という主人公のモットーと、鉄道仲間のプロフェッショナルな仕事ぶりに、 困難に立ち向かう乗員乗客が一致団結する美徳が全編に強調されるため、 JR東日本の特別協力と引き換えに思い切った展開にできず、"お行儀の良い映画"のまま終わってしまった。 本作の死亡者が別件の元警察官だけというのもね……大怪我した後輩が最後まで生きていたのが不思議なレベル。 ツッコミどころ満載はともかく、全員助かるご都合主義の塊が作品の緊張感を削いでしまった感がある。 だからこそ、当時の国鉄から協力を断られた故の制約で、ぶっ飛んだ話を作れたオリジナルに倣って欲しかった。 物語をその日の数時間に絞って、余計なドラマを最小限に抑えたことは評価したい。 前半7点、後半3点と言ったところで、間を取って5点です。[インターネット(字幕)] 5点(2025-04-23 23:16:37)(良:2票) 《改行有》

11.  教皇選挙 《ネタバレ》 ノーマークであったが、本作の評判を目に映画館へ。 混戦状態だった賞レースで作品賞サプライズ受賞の可能性もあっただけに、 本作も例に漏れず多様性を象徴していた。 前半にあまり乗れなかったものの、有力候補が次々と脱落していく権謀術数を巡らせる後半の展開に唸る。 もしかしたら主人公が後を継ぐのかと予想していたけど、新教皇の正体に唖然とした。 亡くなった前教皇はそれを知っており、当選率を上げるため、 選挙は主人公の行動も計算した上で全て彼の手の上で踊らされていたわけ。 ただ、新教皇が"手術"を受けなかったのは予想できなかったようだ。 信仰とは異なる存在への赦しと寛容である。 確信を持ってしまえば、変化も内なる疑念を抱くことも困難になる。 その象徴として、生粋のイタリア人で保守派のテデスコ枢機卿の、横柄な態度と終盤の台詞に、 ドナルド・トランプとダブってしまったのは自分だけか。 もしテロで枢機卿に死者が出てしまったら、テデスコが新教皇になる可能性があった。 トップを選ぶということは運命の悪戯で、社会を良くも悪くも変容させてしまう。 ラストシーンに伝統を重んじ閉鎖的なバチカンであることに変わりがないが、 僅かに光が差すような新たな時代の幕開けを感じさせた。[映画館(字幕)] 7点(2025-04-05 16:54:06)《改行有》

12.  侍タイムスリッパー 《ネタバレ》 時とともに失われ、忘れ去られていく時代劇への敬意と郷愁。 誰もが考えるベタすぎる設定ながらも、観客の裏をかく脚本がお見事。 30年のラグで同様に未来に飛ばされていた"宿敵"との緊張感あふれる関係、 侍としての誇りと流れてゆく時代の無常さを感じながらも一つの区切りと情念を映画に残していく。 斬られ役の舞台裏を知ることができ、時折コメディ要素を絶妙なタイミングで挿入しているのもあり、 シリアスになりすぎないバランス感覚で明るく見終えられるのが良い。[インターネット(邦画)] 8点(2025-04-02 23:08:20)《改行有》

13.  ミッキー17 《ネタバレ》 ポン・ジュノの本当に撮りたかった映画はこれだったのか? 搾取される側が体制に反旗を繰り返す話と言えば、過去作の『スノーピアサー』を思い出す。 格差というテーマは本作でも登場するが、そこに生命倫理が入ってくる。 というのも、先代の記憶を受け継いだクローンが主人公だ。 "使い捨て"として幾度か死んで甦るも、それは自分自身という"他者"の記憶を共有しているに過ぎない。 そのことを色んな人に聞かれても、「気分は最悪」としか言いようがないだろう。 搾取されるということは人間扱いされていないのと同義。 氷の惑星のクマムシみたいな生命体もそこに含まれる。 何で主人公を助けたのか、そこの掘り下げが欲しい。 権力者の都合で平然と尊厳を踏みにじる夫婦がマンガみたいに分かり易い悪役で如何にもと言ったところで、 主人公と同じく借金取りから命からがら逃げた友人のティモも平然と裏切るクズの小悪党。 搾取の階層が浮き上がる構図ながらその設定が上手く活かされていない。 なんせダメ人間のはずのミッキーがエリートなヒロインのナーシャと恋に落ちるのが不自然で、 裏があると思ったらそうでもなかったし、カイからもモテモテだけど彼女の出番はそのくらい。 もっと膨らませることのできる展開がいくつもあったのに全てが尻すぼみで終わってしまうのだ。 過去作みたいにもっとシニカルで居心地の悪いラストを期待していただけに普通に大団円風なのも頂けない。 これでは大ヒットは望めないだろう。 次回作は『殺人の追憶』や『母なる証明』のような現実的なサスペンスものを期待したい。[映画館(字幕)] 5点(2025-03-29 01:35:24)《改行有》

14.  エミリア・ペレス 《ネタバレ》 日本公開前から主演のトランスジェンダー女優のSNSでの差別発言が掘り起こされ、 賞レースに影響を及ぼすなどネガティブな話題ばかりが取り沙汰されていたが、 実際に本作を見ても先入観が覆されることはなかった。 "多様性"という一部の意識高い系映画評論家が持ち上げているだけで内容がまるで伴っていない。 正直、本年度のアカデミー賞で最多部門候補に挙がるほどかと。 事実、米配給のネットフリックスでも人気がまるでなく、ロッテントマトでも観客の評価は最低、 舞台のメキシコでも不評だらけだ。 そりゃそうだ。 日本に例えれば、日本のことをよく知らない外国人監督が、性転換するヤクザの話を描こう、 それで主演俳優陣が片言日本語だらけのアジア系俳優ばかりなら、この映画の違和感が分かるはずだ。 自分らしく生きたい、好きなように生きたいと歌っても、そこには責任が伴う。 性転換前は凶悪な麻薬カルテルのボスとして悪逆非道を働いた性同一性障害の男が、 "女"に生まれ変わって、行方不明者の捜索と遺族への支援といった慈善団体を立ち上げるも、 どこか凄い虫が良すぎるのではないか。 死を偽装しながらも、子供には会いたいと叔母として招くあたりもそう。 元妻も子供そっちのけで元カレと遊びまくり、 演じる俳優陣の素性もあって、身勝手すぎて感情移入できるわけないでしょ。 ギャング映画としても、社会派映画としても、ミュージカル映画としても中途半端。 単に"多様性"で誤魔化しているだけで、オーディアールのベストでもない。 グダグダな展開が続いて、エミリアが誘拐される事件が終盤起きるも、 発端が正体バレではなく、子供の"親権争い"と元妻の身代金目当てだから下世話すぎて… 取って付けたような悲劇的なラストも、自分からしたら因果応報にしか見えなかった。 もし、カマラ・ハリスが大統領になって、主演女優の炎上発言がなければ作品賞受賞の可能性があった。 観客不在であり、政治発言の場所ではない。 今後、トランプの"テコ入れ"前に方向転換するか、屈服を拒絶してDEIを推し続けるか、 映画産業は大きな転換点を迎えている。 クリエイターには本当に描きたいものは何か、その原点に立ち返って欲しい。 劇中でも現実でも振り回されたゾーイ・サルダナはもはや主演と言っても良いくらいの熱演で、 彼女のために3点献上します。[映画館(字幕)] 3点(2025-03-29 00:44:17)《改行有》

15.  Flow 《ネタバレ》 なぜ人類は文明を残して滅んだのか、そして大洪水が引き起こされたのかは最後まで明らかにされない。 なぜなら高度な思考も言葉も持たない動物たちが主役だから。 台詞はなく、擬人化も最低限で、映像がより雄弁に語り、没入感を深化させる。 数多くの余白に想像を掻き立てられ、語りたくなる。 異なる存在に目もくれない自分勝手な同胞よりも、辛苦を共にした異なる種族の仲間の大切さに気付かされる。 この先、再び洪水が訪れて、終着点のない旅路を流れ続けることを匂わせつつも、 今までいつも一匹だった黒猫はもう孤独ではない。[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2025-03-14 23:58:06)《改行有》

16.  逆転のトライアングル 《ネタバレ》 全編にわたって寄せてしまう"眉間のシワ"。 原題は美容外科用語から来ている。 監督の前作『ザ・スクエア』は視聴済み。 2作連続でカンヌパルムドール受賞の快挙らしいが、他に相応しい作品はあったのではないか? 格差社会を描いたテーマは過去にもたくさんあれど、 本作はその対象物(男性と女性、富裕層と労働階級、白人と非白人、健常者と障害者、資本主義と共産主義)を広げすぎてしまい、 ブラックコメディとしての切れ味がイマイチだった。 居心地の悪さと気まずい空気を生み出す巧さは相変わらずだが。 割り勘を巡り、インフルエンサーの彼女と長々と揉める立場の低いモデル男性の卑小なプライド。 「スタッフを休ませなきゃ」という思いつきで無理矢理泳がせるセレブばあさんの偽善。 ファーストフードも高級ディナーも口に入れば、吐瀉物も排泄物もみんな一緒。 無人島漂着時、セレブ全員にサバイバルスキルがないために、唯一持っている女性清掃員が女王に君臨するグダグダな一幕。 どこかで見たことのあるような展開で、いくら皮肉たっぷりに金持ちも貧乏人も全方位的にコケにしたって、 前者からしたら免罪符、後者からしたらガス抜きにしか見えない。 今の資本主義社会の権力者の横柄に"ノブレスオブリージュ"は必要だが本作を見て襟を正す人はいるのか(財○省とかね)。 金で買える"安全な場所"がある限り、ヒエラルキーの頂点に立つ者はどこまでも無礼になれる。 無人島がリゾート地だと判明した瞬間、女性清掃員にはその金がないし、いつまでも平穏は存在しない。 社会構造が転覆しようが、これからもずっと誰かが割を喰らい続ける。[インターネット(字幕)] 4点(2025-03-11 23:46:31)《改行有》

17.  アンラッキー・セックス またはイカれたポルノ 《ネタバレ》 日本で劇場公開された監督〈自己検閲〉版ではなく、映画配信サイトJAIHOで配信されたオリジナル版で視聴。 本当に行為をしているのではないかという生々しい性描写がノーモザイクで繰り広げられ、 ハリウッドのR18指定映画がディズニー映画に見えるレベル。 舞台はコロナ禍のブカレスト。 夫との痴態を撮影したプライベートビデオがネットに流出し、その後始末に追われる名門学校の女教師の話。 品もなく、悪趣味かつ前衛的に描くことでマスクに隠された人間の偽善や差別意識を炙り出し、 一周回って社会風刺をさぞや高尚に見せているようで実は中身などない。 '70年代にヨーロッパで流行った悪趣味映画を、コロナウイルスの脅威に曝される時事ネタに差し替えただけだ。 かつてのチャウシェスク政権によるルーマニアの負の遺産? だから何だと言うのだ。 そんなものはどの先進国にもある事象でしかない。 第1章はコロナ禍のブカレストをただ撮っているだけ、第2章はゴダールみたいなアーカイブ映像と画像のコラージュ、 第3章は学校で保護者相手に説明する絶体絶命のピンチを迎えるさまを、3つのマルチエンディングで。 エンディング3番目は主人公がヒーローに変身して大人の玩具で懲らしめるジョークみたいな終わり方だが、 裏を返せば「こんな映画に本気になってどうすんの?」と嘲笑しながらも監督が逃走しているように見えなくもない。 ベルリン映画祭で金熊賞を受賞したらしいが、本作を評価できるほどインテリジェンスはありません。[インターネット(字幕)] 2点(2025-03-11 00:34:38)《改行有》

18.  TATAMI 《ネタバレ》 2023年の東京国際映画祭で本作が紹介されており、劇場公開を期待していた。 イラン政府の家族や立場を人質に取ってでも棄権を強要するやり口には憤りを覚えるし、 柔道の指針である「心・技・体」の精神に背いていて、国家としての参加資格はないだろう。 スポーツと政治は別物のようでいて表裏一体。 歴史上、国威発揚と言いながらプロパガンダの道具にされたことなど数知れず、現在でも変わらない。 工作員が大会の観客として、スタッフとして紛れ込み、揺さぶりをかけてくる。 信頼していたコーチからも同じチームの選手からも孤立し、 人生を賭けた試合で肉体もメンタルも限界の中、レイラはどう勝ち上がっていくのか。 同時に訳ありなコーチの葛藤や心の機微も綿密に描写しており、もう一人の主人公と言っても良い。 モノクロでスタンダード比率の画面が映像を引き締め、閉塞感を強調する。 (低予算で観客のエキストラを呼べない、チープさを誤魔化したいのもあるが)。 己の立場や面子より試合を続けさせるためにレイラを守ろうとする柔道協会のスタッフの奔走、 一度はレイラを裏切ったコーチが「負けるな!」と応援する展開が熱い。 スポーツにはフェアネスがあり、尊厳があってこそ成り立つものだと認識する。 それでもレイラは準決勝で負けてしまうのだが、もしイスラエルの選手と戦っていたら、 優勝する展開があったら、リアルで大問題になってしまうからか、フィクションとは言えあえて出し惜しみしたのかな。 政府の意向に背いたコーチは拉致されかけるが逃走、柔道協会に助けを求める。 そしてレイラに涙を流しながら自分の嘘を告白し和解する。 国家に利用されるだけの嘘だらけの人生に別れを告げ、一年後、亡命先のパリで難民代表として再スタートを切る二人。 イランに限らず、母国から亡命した人々が祖国に戻れるように、 良い国だと誇れるように少しでもマシな未来になってほしいものである。[映画館(字幕)] 7点(2025-03-01 22:10:19)《改行有》

19.  ANORA アノーラ 《ネタバレ》 大人だからこそ、若さがあるからこそ、大きな困難を乗り越えられると思っていた。 だが、いくら大金を得られてもヒエラルキーからは逃れられない。 そして強大な権力によってどうしようもない厳しい現実に打ちのめされる。 NYのストリッパーで時折性的なサービスも請け負っていたアノーラが求めていたのはお金だったのか、 それとも自分自身を受け入れてくれる代わりの利かない愛情だったのか。 最初で最後かもしれないチャンスに彼女は必死にしがみつく、必死に抵抗する。 大富豪の部下たちの脅しには汚い言葉で打ち負かし暴れまくる。 決して折れまいと毅然とした態度で立ち向かうマイキー・マディソンのパフォーマンスに圧倒された。 ポールダンスからロシア語まで完璧にこなし、アノーラというキャラクターに現実味を与える。 本作では愚かな人間しか登場しない。 勢いでアノーラと結婚した大富豪の息子のイヴァンですら、彼女を置いて逃走して、NYのクラブで泥酔しまくるし、 自分という核がなく流されるがままの幼稚で無責任な青年。 両親を見ても「この親にして、この子あり」な横柄さでロシアという国家そのもの。 その中で寡黙な用心棒のイゴールだけはアノーラに対して距離を置きながらも、彼女を気遣い、見守っていた。 婚約解消のシーンで部外者ながらイヴァンを謝罪させるべきだと進言したのも彼だった。 ある意味、彼だけはファンタジーの住人だ。 当たり役を好演したユーリー・ボリソフに肩入れしたくなる。 夢から醒めたように現実に叩き戻されるラスト。 朝から白い雪が降り続く灰色の世界に、車内にはワイパー音だけが響いている。 自分に良くしてくれたイゴールへの厚意を性行為でしか示せない悲しさに今まで張り詰めていた糸が切れ、 アノーラは"一人の女の子"として泣き崩れる。 イゴールもやんわり拒否しながらも無言で、 「もうこれ以上、自分を傷つけなくていいんだ、頑張ったよ」と彼女を慰めているように見えた。 アノーラのこれからの物語はどうなるのだろうか? きっと、二人は恋人同士になれなくても、お互いに信頼し合える存在として支え合いながら強く生きていくと思う。 なんたってアノーラはロシア語で"光"を意味するのだから。[映画館(字幕)] 7点(2025-03-01 21:18:50)《改行有》

20.  タバコは咳の原因になる 《ネタバレ》 タバコに含まれる5種類の有害物質で悪の軍団と戦う「タバコ戦隊」は今回も敵を退治するも、 地球滅亡を企むラスボスのトカーゲに立ち向かうには結束力が足りない。 そこでネズミ司令官の命令で湖畔の基地で合宿を行うのだが…。 日本の戦隊ものをリスペクトしているのか、茶化しているのかよく分からないゆる~い空気に、 本筋とはかけ離れた怪談話ばかりして、時折牙を剥くグロ描写。 ダニエルズとは別のベクトルのシュール&ナンセンスさに戸惑いを感じてしまう。 5人ともほぼ同じスーツで色さえ分けてくれたら少しは楽しめたかも。 本作の本質とはズバリ"恐怖"。 合宿先で特殊なトレーニングを受けることもせず、ヒーローものとは無関係な怪談話に花を咲かせる。 しかもどれもこれも中途半端でオチがない、ただ消費されるだけ。 つまるところ、自分たちが負けたら地球が滅亡するという本筋=最悪の恐怖から逃げているとも言える。 だから、トカーゲの計画が前倒しになったとき、狼狽して何もできないので新たなサポートロボットに頼る。 ところが、その最後も脱力したくなる展開で、トカーゲは夕食で妻子に毒を盛られて死ぬことになり計画は中止、 サポートロボットの時代逆行機能も一向に起動することなく、前のロボットの方が有能だったという。 今までの話は、怪談話はいったい何だったのか…… 戦隊5人でタバコを吸いまくり、プカァーって煙を浮かべるラストシーンに哀愁が漂って笑える。 喫煙で頭がボーッとしていって、後ろ向きな脆い絆とひたすら現実逃避し続ける人間の弱さがそこにあった。[インターネット(字幕)] 4点(2025-02-28 22:50:13)《改行有》

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