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プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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【製作年 : 1960年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  大脱走 《ネタバレ》  全員主役の群像劇ってイメージが強かったんですが……  改めて観返してみると、完全にスティーヴ・マックィーン主演の映画ですね。  「独房王」のヒルツは冒頭から出てくるし、見せ場も一番多いしで、間違い無く彼が主人公なんです。  後は精々「調達屋」のヘンドリーが副主人公と呼べそうなくらいであり、原作小説では一番存在感があった「ビッグX」ことバートレットも、三番手くらいのポジションに思えました。  では、何故「全員主役」ってイメージを抱いてしまったのだろうと考えると、やはりそれだけ脇役達が光ってたからなんですよね。  自分としてはダニーとウィリーの「トンネル王」コンビが好きというか、印象としては、この二人こそ「主人公、あるいは副主人公と呼べる存在」と思っていたくらい。  再見して、意外と出番が少なかった事には驚かされたけど、それでもこの二人が無事に逃げ延びる結末には、心底ホッとさせられました。  本作ってバッドエンドに近い結末なんですが、不思議と爽やかな後味となっているのは、飄々と生き延びた主人公ヒルツの存在だけでなく「脱走に成功する」という、決定的な勝利を収めた二人の存在が大きかった気がします。  そんな二人だけでなく「製造屋」のルイスも逃げ延びるのに成功したって辺りも、何だか興味深いですね。  列車から飛び降りたり、バイクで柵を越えたりした派手な連中は捕まって、自転車や手漕ぎボートというノンビリした逃走手段を選んだら成功しちゃうという展開に、不思議なユーモアを感じます。  それは「情報屋」マックが捕まってしまう場面も、また然り。  「引っ掛かるな、初歩的なワナだ」と味方を諭してたマックが、その初歩的なワナに引っ掛かり、正体がバレてしまうって展開でしたからね。  当人達は命懸けの脱出作戦を繰り広げてるんだけど、緊迫した状況下でも、どこかユーモアがあって、それがこの映画の得難い「愛嬌」になってる。  ひたすら陰鬱でシリアスなだけの内容だったら、こうまでも「愛される映画」にはならなかったでしょうし、適度に「皮肉な笑い」「ほのぼのとした空気」を挟んだのは、もう大成功だったんじゃないかと思います。  他にも、誰もが知ってる終盤のバイクアクションに、盲目のコリンが死んでしまう場面の物悲しさなど「この映画の、ここが好き」って事を語り出したら、止まらなくなっちゃうくらいですね。  BGMも秀逸であり、この映画が「コメディ」としても楽しめるのは、あの惚けた魅力の曲あってこそと思えます。  自分としては、ヒルツが初めて独房に入れられる際の「兵士から盗んだ鍵を返す場面」の音楽とのシンクロっぷりが、特に好き。  堂々と胸を張ってヒルツが連行される場面では勇壮な音楽が流れ、扉が閉まり、独房の中を映す場面では悲壮な音楽に変わるという、その変幻自在な様も、お見事でした。  ヒルツの相棒であり、中盤で無謀な脱走を企てるアイブスに関しても、独房の中で座り込む姿と音楽だけで「彼は精神的に限界」って事が伝わってきたし、本当に音楽の使い方が上手かったと思います。  後の脱獄物で頻繁に模倣されてる「土の捨て方」が描かれる場面でもテンションが上がったし、この映画って後世に与えた影響が大きいから、そういう「元ネタになってる場面」を鑑賞するだけでも、知的な興奮が味わえるんですよね。  パッと思い付く限りでは、洋画の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(2019年)でも本作は「主人公のリックが主演していたかも知れない映画」として、眩しい存在として扱われていますし、邦画の「波の数だけ抱きしめて」(1991年)でも、さり気なく本作のクライマックスがオマージュされていたりするんです。  勿論、本作より昔の映画を観て(あっ、ここが「大脱走」の元ネタになっているのか)と気付いた瞬間なんかも、凄く嬉しくなっちゃいます。  「大脱走」は偉大な映画であり、単品として観るだけでも充分に面白いのですが……  この映画を観ておけば、他の映画も更に楽しくなるという意味でも、オススメの一本です。[DVD(吹替)] 9点(2022-11-30 12:55:35)(良:3票) 《改行有》

2.  大巨獣ガッパ 《ネタバレ》  ストーリー展開が「怪獣ゴルゴ」そのままな訳ですが、それを差し引いても「ガッパという怪獣だからこその魅力」をあまり感じられない内容だったのが寂しいですね。  熱線を吐いて戦車を爆発させる描写、翼から生じる風圧で瓦が剥がれていく描写なども、ゴジラとラドンの良いとこ取りを狙ったんでしょうけど、それが結果的に個性を削ぐ形になっていたと思います。  そんな中、忘れられないインパクトを与えてくれるのは主題歌の存在。  最初に聴いた時こそ(なんじゃこりゃ)とズッコけたけど、二度、三度と聴く内に(あれ……案外良い曲かも)と思えてくるんだから、全くもって不思議。  牧歌的で、如何にも昭和特撮ソングってノリなのが、映画の内容とも良く合っていた気がします。  現代の観点からすると特撮がチャチだとか、島の原住民がどう見ても肌を黒塗りしているだけの日本人だとか、欠点と呼べそうな部分は多々あるんですが、まぁ御愛嬌。  河童というより鳥みたいな外見だなぁと思ったら、本当に劇中で「鳥に近い生態を持っている」という研究結果が出るのは面白かったし、人間側に「仕事にかまけ、娘に素っ気ない父親」を配置し、家族の事だけを考えて行動する怪獣側と対比させているのも良かったです。  「女性は仕事を頑張るよりも、家庭に帰ろう」というメッセージが提示されているのも、当時の世相が窺えて興味深い。  ただ、ガッパが蛸を咥えているシーンに関しては、特典の解説によると「我が子に食べさせようと蛸を持参する親の優しさ」を表しているそうなのですが、ここはもう少し分かり易く、映画単体を観ただけでも伝わってくるように描いて欲しかったですね。  解説されないと(なんで蛸?)と戸惑っちゃうし、解説を踏まえた上で観れば良いシーンだと思えるだけに、実に勿体無い。  後は……クライマックスにて、親が子に飛び方を教える流れも感動的で良かったんですけど、空港のセットが簡素過ぎて、せっかくの感動が冷めちゃう辺りも「勿体無い」「惜しい」って思える部分。  城や都市部のセットは結構頑張っていたのに、よりにもよって最後の最後で一番力の入っていない空港のセットが舞台となっている訳で、なんかチグハグなんですよね。  背景の書き割り感も凄いし、地面には滑走路に見えるようマットを敷いているだけって丸分かりだしで、せっかくの感動的な音楽や、ガッパの涙が台無しになっている形。  これって「中盤のセットは稚拙だが、クライマックスでは流石に気合いが入っている」という形なら、大分印象が違っていたでしょうし、本当に(もっと上手くやればいいのに……)って、じれったくなっちゃいます。  本来は畑違いの日活が、当時のブームに乗って怪獣映画に手を出してみた一本、という事で、やはりその辺りの「手探り感」「ノウハウの無さ」は、如何ともしがたいものがあったのでしょうね。  そういった背景の諸々も含め、色々考えながら観る分には楽しめたけど、純粋に娯楽作品として考えると、ちょっと厳しいかも。  ともあれ、怪獣映画好きであるならば、押さえておいた方が良い一本だと思います。[DVD(邦画)] 5点(2018-04-09 12:42:26)(良:1票) 《改行有》

3.  いつも2人で 《ネタバレ》  時間軸をバラバラにした構成での恋愛物という、今観ても目新しさを感じさせる一品。 ・同じ旅先での「食事」や「海水浴」の風景でも、若い恋人時代と倦怠期の夫婦時代とでは、こんなに違っている。 ・かつて目撃した「二人でいるのに、ずっと押し黙っている夫婦」に、自分達がなってしまっている。  等々、この構成ならではの巧みな対比、スムーズな場面転換の手法には、本当に感心させられましたね。  これは公開当時には、今以上に斬新で、御洒落なセンス漂う映画だったんじゃないかな、と思えました。  それと同時に、先駆的な作品ゆえの「未成熟さ」「手本が乏しいゆえの手探りな感じ」も伝わってきてしまい、そこは残念。  現代の観点からすると、こういった構成であれば「幸せだった恋人時代」「不幸な倦怠期」は、もっと極端に対比させても良かったと思うんですよね。  本作は「この夫婦は、若い頃から何も変わっていない」という結論ありきな為か、全編に亘って「夫婦喧嘩」「皮肉屋な男と、それに気分を害す女」を観賞させられる形となっており、少々ゲンナリしてしまうんです。  一応、若い恋人時代の方が「あの頃は貧しい旅行でも幸せだった」「トラブルがあっても笑い飛ばす事が出来た」と感じさせるような作りになってはいるですが、それが徹底していない。  例えば、プロポーズすら喧嘩中の勢いに任せて行っている訳であり、それは如何にもこの夫婦らしいエピソードなんだけど「結局、若い頃から喧嘩してばっかりじゃん。そんなの見せられても楽しくない」という印象を強める結果にもなっています。  早回しのギャグ演出には(流石に古臭いなぁ)とテンションが下がったし、両者とも浮気しているのに、男側はサラッと流されて、女側だけやたらと非難がましく描かれているのも、実に居心地が悪い。  最後のオチが「若い頃と同じようにパスポートを無くしてしまった夫と、それを見付けてあげる妻」というのも、ちょっと弱いんじゃないかなと思えました。  そんな年代差を感じさせる諸々に対し、普遍的な魅力を感じさせるのは、作中の台詞の数々。  「女は夢が叶うと傲慢になる」という一言には、思わず頷きたくなるものがあったし「愛してる?」と問われ「拷問中の自白は無効」と答えるやり取りなんかも、ユーモアがあって良かったですね。  交通整理の機械(?)の真似をしてみせるヒロインも、とびきり愛らしくて素敵。  ここが一番「オードリー・ヘプバーン主演だからこその魅力」を味わえた場面だったかと。  ホテルのルームサービスは高値で手が出ないからと、果物や缶詰をこっそり買い込んで来て、部屋で食べるシーンなんかも好きですね。  この映画を知っている女性と出会い、恋に落ちる事があったなら、是非とも一緒に真似してみたくなる。  そんな名場面を備えた、良い恋愛映画だったと思います。[DVD(字幕)] 6点(2018-02-14 12:27:51)(良:1票) 《改行有》

4.  吸血鬼ゴケミドロ 《ネタバレ》  とにかくもう、展開が早い早い。  映画が始まって十分も経っていないのに「旅客機がハイジャックされる」→「不時着する」までを描き、その間にも「血の海のように赤い空」「その中を泳ぐように飛ぶ旅客機」「窓に激突して血みどろになる鳥」と、印象的な場面をバンバン盛り込んできますからね。  「爆弾魔は誰か?」「狙撃犯は誰か?」といった作中の謎も、手早く解き明かし「人間VSゴケミドロ」「人間VS人間」という対立劇に移行する。  その潔さ、割り切りの良さ、実に天晴です。  本作は国内外でカルト的な人気を誇っており、あのタランティーノ監督もお気に入りとの事ですが、その理由の一つは、この「早さ」が心地良いからじゃないかな? と思えました。  作品のテイストとしては、自分の大好きな「マタンゴ」に近いものがあり、ゴケミドロなんかよりも、人間の方がよっぽど恐ろしいと思える作りになっているのも特徴ですね。  日頃恨みを抱いている相手に、喉が焼けて苦しくなると承知の上で、水ではなくウィスキーを飲ませる件なんて、特に印象深い。  また、如何にもな悪徳政治家とその手下だけでなく、金髪美人のニールさんまでエゴを剥き出しにする辺りも、意外性があって良かったです。  ヒロインと並んで「善人側」であると思っていた彼女が、銃を手にして主人公に発砲し、自分だけでも助かろうと足掻く姿を見せてくる訳ですからね。  これは、本当にショッキングでした。  楠侑子演じる法子さんがゴケミドロに操られ「人類の滅亡は目前に迫っている」と語った後、笑って崖から身を投げるシーンも、忘れ難い味があります。  干からびてミイラになり、恐ろしい姿になっていた、その死体よりも何よりも(もしや、最後の笑いと自殺に関しては、操られての事ではなく、自らの意思だったのでは?)と思える辺りが怖いんですよね。  それは人間の意思がゴケミドロに敗北してしまった事の証明、狂気に負けてしまう人間の弱さの証明に他ならず、深い絶望感を与えてくれます。  そんな風に「テンポの良さ」「随所に盛り込まれる衝撃的な場面」などの長所がある為、細かな脚本の粗は気にならない……と言いたいのですが、ちょっと粗が多過ぎて、流石に気になっちゃう辺りが、玉に瑕。  まず、高英男演じる殺し屋は素晴らしい存在感があり、ゴケミドロに寄生されて襲い掛かって来る姿もインパクトがあって良いんですが、これって脚本的に考えると、凄く変なんですよね。  だって彼、最初から主人公達と敵対している殺し屋であり、別に寄生なんてされなくても、元々が銃を使って争っていた相手なんです。  にも拘らず寄生されてからはゾンビや吸血鬼よろしく、ゆっくりと動いて襲い掛かって来るのだから「見た目が怖くなっただけで、むしろ敵としての危険度は下がっている」訳であり、これは明らかにチグハグ。  ベタかも知れませんが、こういった寄生型の場合「本来なら敵対するような間柄じゃなかった相手に襲われてしまう」「善良だった人物が化け物に変わってしまう」という形の方が、よりショッキングだったんじゃないかなと。  もしかしたら「ゴケミドロよりも人間の方が恐ろしい。だからこそ寄生される前の方が危険な存在だった」というメッセージを意図的に盛り込んだのかも知れませんが、それならゴケミドロなんか襲来しなくても人類が勝手に自滅したという結末の方が相応しい訳で、やっぱりチグハグ。  脚本上の難点は他にも色々とあるのですが、自分としては、そこが一番気になっちゃいました。  ただ、バッドエンドが苦手な自分でも、本作の「人類滅亡エンド」に関しては、不思議と受け入れられるものがありましたね。  最後まで善良さを保っていた主人公とヒロインが、直接死亡する描写が無い事。  「宇宙の生物は、人間が下らん戦争に明け暮れている隙を狙って攻撃しようとしている」との言葉通り、戦争批判が根底にある事。  そして何より「人類が戦争を続けていると、何時かこうなっちゃうかも知れないよ」という反面教師的なメッセージが込められているからこそ、観ていて嫌な気持ちにならなかったのだと思われます。  そういった具合に、歪だけど不思議と整っていて、もしかしたら凄い映画なんじゃないか……と錯覚しそうになる。  そんな絶妙な、しかして危ういバランスこそが、本作最大の魅力なのかも知れません。[DVD(邦画)] 7点(2017-10-28 06:41:00)(良:3票) 《改行有》

5.  人類SOS! 《ネタバレ》 「病院で目覚めたら、世界が破滅していた」 「自分以外の人々が盲目になっている世界」  という要素を抜き出すだけでも、後世に与えた影響の大きさが窺い知れる一本。  勿論、原作小説ありきの発想なのですが「人がいなくなり、乗り捨てられた車だけが残る街を彷徨う主人公」という視覚的なイメージなどは、映画という媒体だからこそ生み出せた代物だと思います。  こういった「元ネタ映画」というものは、それだけでも功績があるというか、高得点を付けたくなるものなのですが……正直、映画として面白かったかといえば微妙でしたね。  1960年代の映画という事もあってか、現代の目線だと「飛行機が墜落する場面」「トリフィドの毒を受けて顔が緑色になる場面」の特撮も稚拙だし、演出も全体的に緩慢なんです。  例えば、最初にトリフィドが動き出し、人を襲う場面なんかも、時間を掛け過ぎるせいで(もう植物が動くのは分かったよ……)(どうせこの人が襲われるんだろう? 早くしてくれ)って感じに、焦れてしまう。  主人公達が車に乗って、迫りくるトリフィドから逃げようとする場面もキツかったですね。  車輪が窪みに嵌って空回りし、ピンチのはずなのに、登場人物が妙に落ち着いているせいで、全然緊迫感が無い。  当時の観客なら、そんな演出の数々も自然と受け入れられたのかも知れませんが、自分としては戸惑いが大きかったです。  その一方で 「目の見えなくなった男が(恐らくは利用する為に)目が見える女の子を誘拐しようとする」 「元から目が見えなかった女性が、新たに盲目となった人に歩き方を教えてみせる」  といった感じに「もしも、世界中の人々が盲目になったら……」という思考実験の答えを示すようなシーンも数々盛り込まれており、こちらは中々興味深く、面白かったです。  (植物が相手なら燃やして倒すんだろうな……)という観客の期待に応えるように、クライマックスでは主人公が火炎放射器を持ち出し、トリフィドの大群を燃やしてみせる辺りも嬉しい。  トリフィドの弱点が「(地球に幾らでもある)海水」という意外性も、良かったと思います。  ……ただ、最後のナレーションにて「トリフィドの弱点が分かったお蔭で、人類は救われた」というオチが付くのは、ちょっと無理がある気がしましたね。  作中で文明が崩壊したのは「トリフィド」ではなく「失明」が原因なのだから、トリフィドの撃退法が判明したとしても、そこまで大きな意味は無いはずなんです。  どうしても「人類が救われるハッピーエンド」に仕上げたかったなら「トリフィドの撃退法」なんかより「失明を治す方法」を明らかにすべきだったんじゃないでしょうか。  そもそも本作は「病院で目覚め、女の子と一緒に文明崩壊後の世界を彷徨う主人公」以外にも「灯台で暮らしている夫婦」という別個の軸が用意されており、しかもそれら二つが交わる事無く映画が完結を迎えるという、トンデモない構成になっているのですよね。  これは明らかにマズいと思うし、自分のように(何時この二組が合流するんだろう?)と考えていた観客には、物凄い肩透かし感を与える形になっています。  聞くところによると「灯台関連のシーンは、試写会での不評を受けて無理矢理ハッピーエンドにする為に付け足したもの」らしいのですが、真相や如何に。  自分としては、追加された灯台絡みの話は全部カットして「主人公達が火炎放射器でトリフィドの猛攻を凌ぎ、何とか逃げ出すのに成功して、明日に希望を見出そうとする話」で纏めてくれた方が、好みだったように思えますね。  そうしていたら、胸を張って「古き良き映画」「これぞ隠れた傑作」と褒める事が出来た気がします。[DVD(字幕)] 5点(2017-10-02 13:33:20)(良:1票) 《改行有》

6.  兵隊やくざ 《ネタバレ》  冒頭にて「荒野に孤立した巨大な刑務所」という言葉が出てきますが、実際に刑務所映画に近いテイストを感じられましたね。  主人公の一人である大宮は極道だし、囚人同士の争いの代わりに日本兵同士で争うし、最後は脱走劇で終わるしで、非常に似通っていたと思います。  「兵隊の話は、もう御免」「カーキ色を見る度に胸糞が悪くなる」なんて独白から始まる以上、軍隊批判というテーマも込められていたのでしょうが、自分としては上述の通り「刑務所映画の軍隊版」という印象のまま観賞した為、重苦しい気分にはならず、娯楽作品として楽しむ事が出来ました。  とにかく上官が部下を殴る蹴るを繰り返し、胸糞が悪くなったところで、主人公の大宮と有田とが力と知恵を駆使してやり返してくれる訳だから、非常に痛快。  軍隊は階級が全てだとばかり思っていたら、さにあらず、実は勤務年数も力関係に大きく作用しているという辺りも、非常に興味深いものがありましたね。  喧嘩する相手が二年兵だと分かった途端に態度を豹変させ、上官であるはずの伍長に遠慮なく殴り返し、対等の条件での決闘に持ち込む件なんてもう、痺れちゃいました。  頭の良い兄貴分と、腕っぷしが強い弟分。  そんな凸凹コンビの二人が、様々な苦難を乗り越え、絆を深める姿を見せてくれる為、観ているこちらとしても微笑ましく、心地良い気分に浸れるのですよね。  それでも最後の最後「国家の命令」という強大な力には逆らえないのか……と思わされたところで、見事に逃げ出してみせるという流れも良かったです。  ただ、取り残された他の兵達は一年後に全員戦死したと語られている為、ちょっと影を落とす形となっており、爽快さに欠けるものがあったのは残念。  状況を考えれば仕方ないのだけど、主人公達だけが逃げて、残された皆は死んでしまったという形だから、罪悪感が伴うんですね。  戦争だから人が死ぬのは当たり前だし、軍隊に所属した以上は殺されたって不思議じゃないのでしょうが、それでもその重苦しい語り口と、直後の脱走劇の明るい描き方は、ミスマッチであるように感じられました。  ここの部分を、もうちょっと受け入れやすく描かれていたら、戦争映画ならぬ兵隊映画の傑作として、大絶賛出来た気がします。  それと、大宮を演じる勝新太郎が刃物を用いてチャンバラを披露するシーンがある訳だけど、それが原作小説にもある要素なのか、映画特有の「勝新ならチャンバラも見せなきゃ」というサービスなのかも、気になるところですね。  もし後者であったとすれば嬉しいのですが、真相や如何に。[DVD(邦画)] 6点(2017-04-13 22:21:04)《改行有》

7.  忠臣蔵 花の巻・雪の巻(1962) 《ネタバレ》  正統派の「忠臣蔵」映画としては、これまで観てきた中でも五指に入る出来栄えではないかと思われます。 (ちなみに、正統派ではない変化球で真っ先に思い付くのは1990年のドラマ版です)  とにかく、余計な事をしていないというか、必要なエッセンスだけを抽出した感じがして、観ていて安心させられるものがありましたね。  基本的には1954年版の同名映画のリメイクと言って良い内容なのですが、あちらが当時としては斬新な演出や解釈を色々と盛り込んでいるのに対し、こちらは旧来通りというか、真っ当な娯楽映画に仕上げてみせたという印象です。  岡野金右衛門が大工の娘と恋仲になる件の尺が長いのと、三船敏郎演じる俵星玄蕃の存在感が強過ぎて浮いているように感じる辺りは難点でしたが、きちんと作中のクライマックスを「討ち入り」に定めている為、全体のバランスとしては整っているように思えました。  特に感心させられたのが、吉良上野介の描き方。  冒頭にて「前々から浅野には怨みがあった事」「上司から浅野への復讐を促されていた事」などが語られている為、何故わざわざ意地悪をしたのかと、観客に疑問を抱かせない形になっているのですよね。  そういった情報を前もって提示する事で吉良側の動機を補強しつつ、浅野に対する場面では存分に「嫌味、吝嗇、欲深な爺様」っぷりを披露して(こりゃあ浅野が怒るのも分かるわ……)と思わせてくれるのだから見事。  作り手としては、恐らくそんな意図は無く、吉良の悪役っぷりを際立たせる為の台詞だったと思われますが「臆病と言われれば、それはいっそ儂には自慢になる」と言い放つ姿なんかも、妙に人間臭くて、自分としては好感を抱きました。  加山雄三が内匠頭を演じるというのは驚きでしたが、生真面目で、気が強くて、病的なくらいにプライドが高いという、難儀な人物を見事に演じており(こういう役も出来るんだなぁ)と感心させられましたね。  刃傷を起こした後、乱心したという事にすれば罪も軽くなるのに、それを潔しとしなかった堅物っぷりにも、説得力があったと思います。  内匠頭を描く上でネックとなるのは「自分の行いによって家臣達が路頭に迷うとは思わなかったのか? 本当に名君なのか?」という点なのですが、本作においては「賄賂が横行する現在の政治は間違っている」という正義感が動機の一つとなっている為、一応浅野側の言い分も理解出来ます。  松の廊下の件でも「先に手を出したのは吉良」という形になっており、浅野側が正しいという作中の価値観に対し、反感を抱かずに済むようになっていますね。  討ち入りの場面に関しても、二十分ほど掛けて丁寧に描いており、充分に納得のいく出来栄え。  雪を踏む足音に合わせるように流れる伊福部音楽は、最初こそ「ゴジラかよ!」とツッコませてくれますが、慣れれば「忠臣蔵らしい、重厚な迫力がある」と思えました。  暗い屋敷内に、侵入者側が蝋燭を配置していく流れなんかも面白くて、堂々とした合戦ではなく「夜陰に乗じて寡兵で攻め込んだ奇襲戦」である事を実感させてくれます。  また、吉良を殺害する場面を直接描かない事、事件後の切腹の様子をナレーションだけで済ませた事も、効果的でしたね。  それによってネガティブな印象が薄れ、本作は「主君の仇討ちを果たした赤穂浪士が、誇らしげに町を歩く姿」という、鮮やかな印象のまま完結を迎える形となっており、若干の苦みを含みつつも、後味は爽やか。  自分が忠臣蔵モノで何か一つ薦めるとしたら、上述の1990年のドラマ版なのですが、そういった変化球作品を楽しむ為には、やはり本作のような真っ当な魅力の「忠臣蔵」も味わっておくのが望ましいのでしょうね。  久々に、王道の魅力を堪能させてもらえた一品でした。[DVD(邦画)] 7点(2016-12-05 18:23:50)《改行有》

8.  キングコングの逆襲 《ネタバレ》  「ゴジラ対メカゴジラ」(1974年)に先駆けて、劇中で「キングコング対メカニコング」を行っている事。  そして1976年版の「キングコング」に先駆けて「コングに同情的なヒロイン」を描いている事は、特筆に値しますね。  それらの要素は日米合作のテレビアニメ版(1967年)を基にしている為、単なる二番煎じとも言えそうなんですが……  見方を変えれば「アニメだからこそ許されるような展開を、実写でもやってみせた」という訳だし、本作の存在意義は大きかったように思えます。  個人的にお気に入りなのが、中盤におけるコングと恐竜との戦いの場面。  これは勿論、1933年版の展開をなぞっている訳なのですが「恐竜を倒した後に、顎をパカパカするシーンが無い」という違いがあったのです。 (あそこを再現するかと思ったのに、やらないんだなぁ……)  と寂しく思っていたところで、死んだのを確認しなかった報いとばかりに、実は生きていた恐竜がコングに噛み付く展開となり、これには (そうきたか!)  と嬉しくなっちゃいましたね。  倒された恐竜が泡を吹いてみせる姿は、現代目線だと間抜けに思えたりもするのですが、この辺りは古き良き特撮映画の愛嬌として、あたたかい目で見守ってあげたいところ。  クライマックスとなる東京タワー上での戦いも良かったですし、これまた1933年版の展開を逆手に取ったような「コングではなく、メカニコングが高所から落下する」という脚本でもってして、主役のコングを死なせずに、ハッピーエンドで終わらせた辺りも見事でした。  怪獣映画としては珍しく、人間ドラマの部分も退屈させないものとなっており、天本英世が演じるドクター・フーなんて、実に良い悪役っぷりだったと思います。  終盤、悪人であったはずのマダム・ピラニアが裏切って、味方になってくれる辺りは少し説得力に欠けますが、元々が謎の多い女性であった為「実は良い人だったんだ」と考えれば、何とか許容範囲内。  その他、当時の特撮邦画のお約束として、別の映画からの使い回し場面などもあり、色々と粗も見つかってしまう映画なのですが……  愛嬌の方が目立っていて、あまり気になりませんでしたね。  海を渡って故郷へと帰っていくコングの背中に「終」の字が重なって幕を引く演出にも、渋いなぁと唸らされました。  「キングコング」が愛される理由としては、ラストにてコングが死んでしまう悲劇性が大きいと思うのですが、それに対し本作では「コングが死なないハッピーエンドでも、これだけ面白い映画が撮れるんだぞ」と証明してみせた形になっており、大いに満足。  楽しい時間を過ごせた一本でした。[DVD(邦画)] 7点(2016-09-23 01:19:12)(良:1票) 《改行有》

9.  秋刀魚の味(1962) 《ネタバレ》  小津監督作品というと、どうも肌に合わない印象が強かったりしたのですが、これは良かったですね。  序盤の部分に関しては、正直退屈。  でも、主人公の親父さんだけでなく、長男夫婦の日常も並行して描かれる辺りから、段々と面白くなってくる。  「ゴルフクラブを買いたいのに、妻が許してくれない」という悩みを抱える会社員が、購入を認めてもらった時の嬉しそうな様子なんて、実に微笑ましかったです。  また、途中で戦争批判と思しき箇所もあったりするのですが、そのやり取りも重苦しくはならず「負けて良かった」「馬鹿な野郎が威張らなくなった」なんて具合に、酒の席で上司に対する愚痴を零す時みたいな、軽いノリで描いてみせた辺りも好印象。  「娘の結婚問題」で、初老の主人公がアレコレと苦労しつつも何とか縁談を纏めようとする後半部分も面白かったのですが、惜しむらくは、終盤の「娘が嫁入りしてしまった後の寂寥感」を描くパートが、ちょっと長過ぎたように思えた事でしょうか。  あそこは「育てがいの、ないもんだ」「結局、人生は一人ぼっち」という台詞の後に、スパッと短く終わらせておいた方が、余韻が残って良かったんじゃないかな、と。  ただ、そこで「主人公の死」を連想させる演出が挟まれるのですが、安易に「酒に酔って交通事故に遭う」などの展開にはせず、まだまだ人生が続く事を示して終わってくれたのは、嬉しかったですね。  娘の嫁入りという、めでたくも寂しい出来事の後に「身体、大事にしてくれよな」「まだ死んじゃ困るぜ」と言ってくれる息子の存在には、救われる思いがしました。  タイトルの意味についても、作中で明確に言及されていない為、色々と推測する楽しみがありますね。  単純に晩年の三作を「秋」というワードで繋げてみせただけという可能性もありますが、それはちょっと作品単体への思い入れが感じられず、寂しい。  やはり「人生の味は秋刀魚に似たり」という意味ではないか、と思えるのですが、真相や如何に。  これが監督の遺作となった事も併せて、非常に味わい深い映画でありました。[DVD(邦画)] 6点(2016-08-09 19:09:48)《改行有》

10.  黒蜥蜴(1968) 《ネタバレ》  美輪明宏こと丸山明宏の妖艶さに酔いしれる映画ですね。  とはいえ、あくまでも「女装した男性の美しさ」といった感じであり、劇中では純粋に女性として描かれている事に、多少の違和感もあるのですが、それでも文章にすれば「主演女優」「彼女」という表現が自然と飛び出してくるのだから、我ながら驚かされます。  そんな彼女と「人形」とのキスシーンにも「三島先生、何やってるの!?」と吃驚。  著作を読む限りでは、結構お堅い芸術家肌の人というイメージがあったのですが、こんな剽軽な一面もあったんだなと、妙に感心させられました。  脇役である松岡きっこも、主演女優とは正反対の、まだ初々しい純情な美しさがあり、画面に彩を添えている形。  その一方で、探偵の明智役には、もっと美男子を配しても良かったのでは? と思ったりもしたのですが……この物語において黒蜥蜴が惹かれたのは「明智小五郎の容貌」ではないのだから、知的さを漂わせる木村功で正解だったのでしょうね。  落ち付いた声音の魅力を、長椅子越しに黒蜥蜴と対話するシーンなどで、じっくり堪能する事が出来ました。  ラストシーンの耽美さも勿論素晴らしかったのですが、個人的に最も心惹かれたのは、黒蜥蜴が男装した姿を鏡に映し出し、その「もう一人の自分」に語り掛ける場面。  「返事をしないのね。それなら良いわ」  「また明日、別の鏡に映る、別の私に訊くとしましょう」  という台詞回しには、本当に痺れちゃいましたね。  本作における黒蜥蜴は、普段の姿は「女装した男」にしか思えず、そしてこの場面においては「男装した女」にしか思えないという、実に倒錯性を秘めたキャラクターなのです。  それゆえに「本当の私なんてない」という台詞も切なく聞こえ「男に生まれてしまった女の悲劇」あるいは「女に生まれてしまった男の悲劇」を感じさせてくれます。  存在自体が罪深く、哀しくも美しい人物として、観賞後も、何時までも心の中に残ってくれる。  そんな素敵なヒロイン、素敵な女優と出会えた、魅惑の八十六分でありました。[ビデオ(邦画)] 7点(2016-08-07 08:32:28)《改行有》

11.  地上最大の脱出作戦 《ネタバレ》  「平和な戦争映画」という、何ともユーモラスな一品。  冒頭のシーンでは生真面目に殺し合いしている姿が描かれているだけに、どんどん「普通の戦争」から離れていってしまう姿が、愉快痛快。  「お祭りの方が戦争なんかよりも大事」という主張が窺えて、それを不真面目だと怒る人もいるかも知れませんが、自分としては大いに賛成したいところです。  上層部の目を誤魔化す為に、互いに死傷者ゼロの「戦争ごっこ」を演じてみせる馬鹿々々しさも、実に滑稽で面白い。  戦争というテーマを扱う事により、作中でどんなに不謹慎な行いがあったとしても「実際に殺し合いするよりはマシじゃないか」という痛烈な皮肉に繋げてみせる辺りが上手かったですね。  純粋にコメディ映画として観た場合、現代の目線からは演出が冗長に感じられたりもするのですが「戦時に若く、美人で、色っぽいとは何事だ」などの台詞回しのセンスは、充分に面白い。  軍人達が懸命に「殺し合いの振り」をする横で、洗濯物を干してみせるオバちゃんの姿なんかも、思わず頬が緩むものがありました。  最後には、生真面目であったキャッシュ大尉までもが「お祭り」を戦争行為よりも優先してみせるようになったというオチも、予定調和な安心感があって、実に良かったです。  物語としての主人公は、ジェームズ・コバーン演じるクリスチャン少尉よりも、むしろ彼の方であったように思えました。[DVD(字幕)] 6点(2016-07-22 17:57:53)(良:1票) 《改行有》

12.  ぼんち 《ネタバレ》  「しきたり」「世間体」という言葉が出てくる度に、ちょっとした違和感というか、浮世離れした感覚を味わえましたね。  主な舞台となるのは戦前の日本なのですが、どこかもっと遠い国、遠い昔の出来事であるようにも感じられました。  何せ「妾を持つ事」ではなく「妾を養わない事」が世間からの非難の対象となるというのだから、現代の一般庶民からすると、眩暈がするようなお話。  お妾さんを何人も囲って、何人も孕ませて、主人公は良い身分だなぁ……と皮肉げに感じる一方、男性の本能としては羨ましく思えたりもして、何だか複雑でした。    終盤、戦争によって主人公は没落していく訳ですが、その尺が二十分程度しかなく、ちょっとバランスが悪いようにも感じられましたね。  もう少し苦労した事を示す描写が多かった方が、ラストの「まだまだ一旗あげてみせる」と気骨を失っていない主人公の姿を、素直に応援する事が出来たかも。  監督と主演俳優の名前を挙げるまでもなく、作り手の力量が確かなのは疑う余地が無いのですが、正直、少し物足りなさを感じる内容だったりもして、残念。  オチとして衝撃的に描かれている「男に囲われているだけと思われた女たちが、実は男よりもずっと強かだった」というメッセージに対しても(そんなの、もう分かり切った事だしなぁ……)と思えてしまい、今一つ盛り上がれない。  撮影技術が云々ではなく、こういった感性というか、価値観の違いによって、昔の作品である事を実感させられてしまった形ですね。  軽妙な関西弁での会話を聞いているだけで楽しくて、退屈するという事は全く無かったのですが、もう一押し何か欲しかったなと、勿体無く感じてしまう映画でした。[DVD(邦画)] 5点(2016-07-20 19:46:12)《改行有》

13.  ひとり狼 《ネタバレ》  市川雷蔵、良いですねぇ。  正直に告白すると、これまで観賞してきた彼の主演作にはあまり「当たり」が無かったりもしたのですが、これは間違いなく「面白かった」と言える一品。  主演俳優のカリスマ性の高さに、映画全体のクオリティが追い付いているように感じられました。  オープニング曲で映画のあらすじを語ってみせるかのような手法からして、何だか愛嬌があって憎めないのですが、本作の一番面白いところは「理想的な博徒とは、こういうものだよ」と、懇切丁寧に描いてみせた点にあるのでしょうね。  賭場で儲けても、勝ち逃げはしないで、最後はキッチリ負けてみせて相手方の面目を立たせる。  出された食事は、魚の骨に至るまで全て頂き、おかわりなどは望まない。  たとえ殺し合っている最中でも、出入りが片付いたと聞かされれば「無駄働きはしない」とばかりに、刀を収めてみせる。  一つ一つを抜き出せば、それほど衝撃的な事柄でも無かったりするのですが、映画全体に亘って、この「博徒の作法」とも言うべき美意識が徹底して描かれている為、そういうものなんだろうなと、思わず納得させられてしまうのです。  数少ない不満点は、主人公の伊三蔵が「卒塔婆が云々」と、声に出して呟いてしまう演出くらいですね。  これには流石に(気障だなぁ……)と、少々距離を感じてしまいました。  その他、ヒロイン格であるはずの由乃の言動が、ちょっと酷いんじゃないかなとも思いますが、まぁ武家の娘なら仕方ないかと、ギリギリで納得出来る範囲内。    そんな由乃から、手切れ金のように小判を渡され、一人で逃げるようにと伝えられる場面。  そこで、雨の中に小判を投げ捨て、啖呵を切って走り去る主人公の姿なんかも、妙に恰好良かったりして、痺れちゃいましたね。  たとえ本心では無かったとしても、ここで自棄になって「堕胎」を仄めかしてしまったからこそ、最後まで伊三蔵は我が子から「おじちゃん」呼ばわりされるまま、親子として向き合う事は出来なかったのだな……と思えば、何とも切ない。  「父上は亡くなられた」「立派なお侍だった」と語る我が子を見つめる際の、寂し気な笑顔のような表情も、実に味わい深いものがありました。  そして、それらの因縁が積み重なった末に発せられる「これが人間の屑のするこった」「しっかりと見ているんだぞ」からの立ち回りは、本当に息を飲む凄さ。  同時期の俳優、勝新太郎などに比べると、市川雷蔵の殺陣の動きは、少々見劣りする印象もあったりしたのですが、それを逆手に取るように「傷付いた身体で、みっともなく足掻きながら敵と戦う主人公の、泥臭い格好良さ」を描いているのですよね。  その姿は、傷一つ負わない無敵の剣客なんかよりも、ずっと気高く美しいものであるように感じられました。   終局にて発せられる「縁と命があったら、また会おうぜ」という別れの台詞も、完璧なまでの格好良さ。  市川雷蔵ここにあり! と歓声をあげたくなるような、見事な映画でありました。[DVD(邦画)] 8点(2016-07-20 01:21:28)《改行有》

14.  ティファニーで朝食を 《ネタバレ》  冒頭、ヒロインがティファニーの展示品を眺めながら朝食を取るシーンは凄く良いですね。  さぁ、これからどんな映画が始まるのだろうと大いに期待させられたのですが……終わってみれば、そこが最も印象的な一幕だったというオチでした。  全体的に「オシャレ」な雰囲気が漂っており、主人公達の住んでいる部屋の内装や、街並みを眺めているだけでも結構楽しかったりするのですが、肝心のストーリーが凡庸な恋愛モノといった印象で、観賞中は退屈さを覚えてしまったのも事実。  オードリー・ヘプバーンは流石の可愛らしさだし、清楚なルックスとは正反対の役柄を演じてみせたギャップも、意外と悪くないと思えただけに、話にノリ切れなかった事が残念でした。  当初の予定では、ヒロインを演じるのはマリリン・モンローのはずだったとの事ですが、もしそちらの配役で撮られていたら、どんな形に仕上がっていたのかも気になるところです。  上述のように、色々と物足りない内容ではあるのですが、古き良き映画として、その時代の雰囲気を楽しむ事は出来ましたし 「あの朝食のシーン、素敵だね」  と会話のネタが一つ増えるという意味でも、観る価値はあった映画だと思います。[DVD(字幕)] 5点(2016-06-16 10:44:27)《改行有》

15.  好色一代男 《ネタバレ》  こういったタイプの映画なのだから、性的倫理観は一時的にオフにしておこう……と覚悟を決めて観賞に挑んだのですが、予想を上回る衝撃を受けてしまいました。  といっても、性的にインモラルという意味での衝撃では無かったのですよね。  予備知識として仕入れておいた原作小説の「人妻との密通」「少年愛」などは、劇中では全く描かれていません。  その代わりのように、主人公の独特の価値観、奔放な生き様が濃密に描かれていたのですが、それがどうにも面食らってしまう代物だったのです。  他人の恋路を叶えてあげる為に、千両も払ってみせる姿は、そこだけ見れば確かに格好良い。  けれども、そのお金は主人公が働いて稼いだ訳ではなく、父親を騙して持ち出した代物だったりするのだから、大いに興醒め。  勘当された後に、何処か他所で一山当てて凱旋し、父親に借金を返してみせるストーリーなのかなと思ったら、それも全然違っていたのですよね。  父親が病気で死に掛けていると知るや「しめた!」と喜び、ちゃっかり実家に戻って遺産だけ受け取り、再び女遊びに耽るような主人公には、流石に肩入れする事は出来ません。  作中で「飯よりも女子が好き」と言いつつ、食欲に負けて愛する女を一人にしてしまい、不幸な結果を招いたりと、どうも一貫性が感じられない辺りも気になりました。  そういった訳で、自分としては、あまり好感が持てないタイプだった主人公の世之助。  それでも作中にて、彼と関わったお蔭で幸せになれた女性もいた事は、喜ぶべきなのでしょうね。  最後の「船出」で終わる場面も、現実逃避というより、ずっと前向きな 「もっと沢山の女子と出会って、彼女らを幸せにしてあげたい」  という主人公の願いが感じ取れる辺りは、好みの結末でした。[DVD(邦画)] 3点(2016-05-22 08:51:55)《改行有》

16.  死霊の盆踊り 《ネタバレ》  エド・ウッド絡みの作品としては「プラン9・フロム・アウタースペース」「グレンとグレンダ」に続いて観賞した形となる本作。  さぁ、これぞ本命! とばかりに期待しつつ再生ボタンを押したのですが……何だか肩透かしな印象を受ける事になってしまいましたね。  それというのも、この作品からは上記二作品にあったような、監督の熱意というか、誠意があまり感じられなかったのです。  どんなに予算が少なくても、どんなに作りが雑であったとしても、監督本人は真面目に「面白い映画」を撮ろうとしていたんだな、という事が伝わって来て、それがこの監督の愛される理由なのかと納得させられた二本に比べると、何とも寂しい作りでした。  そもそも本作においてエド・ウッドは原作と脚本担当に留まっており、監督している訳ではなかったりするので、同列に考えていた自分が愚かだったのですが、どうしても「期待外れな映画」と思えてしまい、非常に残念。  実際は監督であるA・C・スティーヴン氏にも、決して熱意が欠けていた訳ではなく、何とこの映画の続編すら考えていたそうなのですが、どうしても画面からそれが伝わって来なかったのですよね。  ちょっと凝った趣向のストリップショーにて、踊っているダンサーさん達を延々映し出しているだけ……という印象を受けてしまいました。  場面が夜になったり昼になったりする出鱈目な導入部は、何だかんだでツッコミを入れながら楽しく観る事が出来ましたし、夜の帝王の間抜けな死に様などは思い出し笑いを誘ったりもするのですが、一時間以上も裸踊りを見せられた退屈さの方が、どうしても色濃く記憶に残ってしまう。  そんな、残念な映画でした。[DVD(字幕)] 1点(2016-05-12 08:17:35)《改行有》

17.  野生のエルザ (これはフィクションなのか? それともドキュメントなのか?)  と戸惑ってしまうシーンが多く、最後まで集中する事が出来ませんでした。  こういった題材では、その「線引き」が非常に難しいですし、どちらとも受け取れるような演出にする事がプラスに働く例もあると思いますが、どうも自分には合わなかったみたいです。  それでも、雄大な自然の風景を眺めているだけで楽しい、と思える品だったのは確かですね。  人間と動物の関係性、動物を保護するという事、飼うという事について、色々と考えさせられました。[DVD(字幕)] 4点(2016-04-08 10:53:31)《改行有》

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