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プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  グリーンブック 《ネタバレ》  ピーター・ファレリー監督が、こんな真面目な映画を撮ったのかぁ……と、その事に吃驚。  「白人」「黒人」「差別」といった属性を備えた品なんだけど、単純に「白人が黒人を救う物語」って訳でもないのが面白いですね。  主人公のトニーは白人だけどイタリア系であり、劇中にて「イタ公」と差別される側でもあるんです。  そもそも黒人のドクはトニーの雇い主であり、困窮してたトニーを雇って救ってあげた側という大前提があるんだから、非常にバランスが良い。  史実では単なる雇用関係に過ぎなかった二人を、無二の親友になったかのように描く事への批判もあるようですが……  映画の観客に過ぎない自分としては、この両者のキャラ設定は絶妙だったと思います。  その他にも「二人が旅立つまでが長い」とか「ドクが同性愛者であるという要素は、あまり活かせてない」とか、欠点らしき物も幾つか思い浮かぶんだけど「主人公であるトニーの境遇を説明する為には、止むを得ない」「実話ネタなんだから、同性愛者と示しておく必要があった」と、ちゃんと疑問に対する答えは見つかる為、さほど気になりませんでしたね。  むしろ、他のファレリー監督作の映画と比べても欠点は少ない方だと思うし、非常に出来の良い、優等生的な映画だと感じました。  そんな本作の中でも特に好きなのは、トニーが初めてドクのピアノ演奏を聴いて、虜になる場面。  実際に演奏が見事だったから、観客の自分としてもトニーの感動とシンクロ出来たし、その後すぐドク当人に「感動したよ」って伝えたりする訳ではなく、家族への手紙で「ドクは天才だ」と絶賛してるという、その遠回しな表現が、また心地良いんですよね。  そういった積み重ねがあるからこそ、本人に直接「アンタのピアノは凄ぇんだよ、アンタにしか弾けない」とトニーが訴える場面も、より感動的に響くという形。  他にも、コンサートスタッフに「クロなら、どんなピアノでも弾ける」と言われ、トニーが激昂する場面。  運転中、二人で音楽談義する場面。  ドクが初めてフライドチキンを食べて、二人で笑顔になる場面も素晴らしいし、二人が親友になるまでが、非常に丁寧に、説得力を持って描かれていたと思います。  脚本や演出の上手さという意味では「拳銃」の使い方も、本当に見事。  「銃を持ってるというハッタリ」の伏線が「本当に銃を持ってる」という形で回収される鮮やかさときたら、もう脱帽するしかないです。  この拳銃の発砲シーンって「酒場で札束を見せたがゆえに、ドクが殺されてしまうバッドエンド」を予感させておき、そんな悲劇を銃声で吹き飛ばす形にもなってるのが、実に痛快なんですよね。  ともすれば一方的な「黒人って可哀想」映画になりかねない中で、ドクを襲おうとした黒人達って場面を挟む事により「黒人は常に被害者という訳ではなく、加害者とも成り得る」と示す効果まであるんだから、二重三重に意味のある、忘れ難い名場面です。  それはその後の、親切な警官に助けてもらう場面も、また然り。  「南部にも良い人はいる」「警官にも良い人はいる」という、当たり前の事を当たり前に描いてくれる配慮が、本作を万人が楽しめる傑作たらしめていると感じました。  本来ドクにとっては屈辱なはずの「黒人が白人の為に車を運転する」という行いで、トニーを助けてあげる終盤の展開も良かったし……  最後に、トニーの妻には「手紙」の秘密がバレていたと示す終わり方も、非常に御洒落でしたね。  それまで出番は少なめだった「トニーの妻」というキャラクターが「素敵な手紙をありがとう」という一言により、一気に魅力的になったんだから凄い。  良質な脚本と、良質な演出を味わえる好例として、映画好きな人だけでなく、映画作りをする人達にも、是非観て欲しいって思えるような……  そんな、素敵な一本でありました。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2024-02-17 13:21:33)(良:2票) 《改行有》

2.  メイズ・ランナー 最期の迷宮 《ネタバレ》  やっぱりゾンビ映画。  2の時点で分かってた事ではあるんだけど、3では更にゾンビ濃度が高まってるんですよね。  それも、ただ単に「ゾンビ好きに媚びる為にゾンビを出しました」って訳でもなく、その要素を劇中で活かし「主人公の親友ニュートがゾンビ化してしまい、殺してくれと訴えてくる」って展開になるんだから、お見事です。  物語としては本作が一番盛り上がるし、最終章に相応しい内容だったと思います。  冒頭から「走行中の列車を襲撃し、仲間を救出しようとする主人公達」って見せ場が用意されているのも、嬉しい限り。  他にも「高所からプールにダイブ」とか「バスをクレーンで釣り上げる」とか、要所要所で見せ場があるし、作り手の誠意を感じます。  これに関しては、単純に観ていて面白いっていうよりは(あぁ、ちゃんと観客を楽しませようとしてるんだな……)と思えてきて、安心させられるって類の長所ですね。  「そんなのは、娯楽映画として当たり前の事だ」って考える人もいるでしょうけど、それが出来ていない映画だって沢山ある訳だし、自分としては評価したいです。  そんな訳で、1→2→3と順当に成長してきた、シリーズ最高傑作と称えたい気持ちもあるんですが……  素直に褒めきれない部分も多かったりして、そこは残念。  まず、上述のニュートに関しても、3単体では「主人公の相棒であり、大切な親友」として描かれてるけど、1と2では全然そんな事は無くて「仲間その1」でしかなかった訳だから、ちょっと唐突なんですよね。  3で急に仲良くなったような形ではなく、1から親友として描いていたら、その劇的な死も更に盛り上がったはずなので、実に惜しい。  これに関しては「1のチャックに比べたら、3のニュートの方が退場のさせ方は上手くなってる」と褒める事も出来そうだし、判断が難しいです。  あとは「実は生きていたギャリー」って展開で、これはもう、申し訳無いけど失敗してると思います。  そりゃあギャリーのファンなら嬉しいかも知れないけど、どう考えても「死んだと思ってたキャラが、実は生きていた」というサプライズ展開やりたかっただけって感じであり、必然性も無いし、ギャリーという存在を活かしきれてもいないんですよね。  宿敵だった主人公のトーマスにも「頑張れ」と声かけたりして、いつのまにか普通に信頼出来る仲間みたいになってるし、劇的な和解イベントも無し。  ギャリーを串刺しにした張本人のミンホに対しても「誰にでも間違いはある」で済ませちゃうんだから、大いに拍子抜け。  これならギャリーではなく、本作から登場した新キャラって事にしても、充分成立したと思います。  他にも「ヒロインのテレサまで、ニュートのおまけみたいに死んじゃうのが可哀想」とか「結局、世界がウイルスから救われたかどうかも分からない」っていう曖昧さとか、欠点を論えばキリが無いんだけど……  「友達でいてくれて、ありがとう」という最後のニュートの手紙は、中々グッと来るものがあったし、三部作を完走して良かったと、そう思えましたね。  またトーマスやニュート達に会いたくなったら、1から3まで観返したくなる。  なんだかんだで愛着が湧いちゃう、憎めない友達のような映画でした。[DVD(吹替)] 5点(2023-11-28 18:55:38)(良:1票) 《改行有》

3.  メイズ・ランナー2 砂漠の迷宮 《ネタバレ》  まさかのゾンビ映画。  一本の映画の中で「実はホラー映画でした」と中盤で判明する例なら、これまでにも何度か体験済みですが「三部作の2からゾンビ映画になる」ってパターンは、流石に初体験です。  これ、前作のファンにとっては辛いというか「ゾンビなんて良いから、迷路で探検して欲しい」って気持ちになって、失望しちゃったかも知れませんね。  でも、自分みたいに「ゾンビ映画が好き」「そもそも1の時点で、迷路が主体の映画ではなかったと思う」ってタイプにとっては、このサプライズ展開、かなり良かったです。  「近未来が舞台の、ティーンズゾンビ映画」って時点で貴重だと思うし、そういうものだと割り切って観れば、中々目新しい魅力があるんですよね。  序盤にて、主人公達が収容施設から逃げ出す展開になるのも、脱獄物としての面白さがあって、これまた自分好み。  廃墟と化した都市の描写なども、低予算映画では中々拝めないような絵面で良かったです。  三部作を一気見して気付いた事なんですが、このシリーズって「全体の完成度はイマイチだけど、ちゃんと観客を喜ばせるような見せ場は用意してある」って特徴があり、本作も例外ではなかったって辺りも、嬉しいポイント。  特に「ゾンビと争ってる最中に、ガラスの床を割って高所から落として倒す」って場面は、かなりお気に入りですね。  これまで色んなゾンビ映画を観てきたけど、こういう倒し方もあるんだなぁって感心しちゃいました。  仲間内で最も強くて頼もしい存在だったミンホが、最後に連れ去られ「囚われのお姫様」ポジションになってしまう事。  そして、影の薄いヒロインのテレサが敵組織の内通者となる事も、程好いサプライズ展開って感じであり、良かったと思います。  序盤にて(施設内に監視カメラとか無いの?)と思っていたら、脱走した後に各所に監視カメラがあると発覚し(いや、主人公達の部屋にも設置しとけよ)とツッコまされたりとか、作り込みの甘さは否めないけど……  そういった諸々込みで、割と楽しめちゃいましたね。  シリーズ中でも異端の品であり、真っ当なファンなら反発しちゃうかも知れない、本作品。  だけど、天邪鬼な自分としては、こういう映画って結構好きです。[DVD(吹替)] 6点(2023-11-28 18:50:40)(良:2票) 《改行有》

4.  メイズ・ランナー 《ネタバレ》  三部作を完走した上で、再鑑賞。  2以降の展開に「迷路、関係無いじゃん」とツッコまされた訳ですが、実は1の途中から既に関係無くなってるんですよね、これ。  そもそも主人公のトーマスが「ランナー」になった時には、既に迷路は全体図を把握されており、閉じ込められた皆に希望を持たせる為に、リーダー達が「まだ踏破していない」と他の面々を騙してただけと判明するんだから、もう吃驚です。  若者達が迷路に閉じ込められた理由も、結局は「実験の為」という在来な代物だったし、新薬開発の為に本当にこんな大仕掛けが必要だったのかと、甚だ疑問が残るし……  正直、あまり褒められた出来栄えの映画ではないと思います。  ただ、原作小説は人気シリーズとの事で、言われてみれば本作って「人気のある原作を映画化した結果、微妙な出来栄えになってしまった」っていう典型のような品なんですよね。  登場人物も、それぞれにファンが生まれていそうな魅力は感じられたのですが、いかんせん映画の尺の中では描写が足りず、中途半端に終わってしまったという印象。  例えば、金髪のニュートなんかは如何にも良い奴っぽくて、これは主人公の相棒になって活躍するんだろうなと思わせる存在感があったのに、目立った活躍なんか全くしないで「仲間その1」っていうポジションのまま終わってしまうんです。  ヒロインのテレサも、典型的な「紅一点が必要だから用意してみました」というだけの存在であり、見せ場なんて皆無。  ニュートにせよテレサにせよ、2以降では役目が与えられているキャラだけに、この1での扱いの悪さは勿体無かったです。  ラストにて、憎まれ役のギャリーが涙ながらに「迷路はオレの家だ、皆の家だ」と訴えても、そんな愛着を抱くに至る経緯が描かれてないから、心に響かないし……  最年少のチャックの死をクライマックスに据えるなら、事前に主人公とチャックの交流を濃い目に描いておくべきだったと思うしで、やはり全体的に拙いというか、未熟な印象が強いです。  一応、良かった点も挙げておくなら「狭い迷路の中で、化け物に襲われる恐ろしさ」というホラー映画な魅力は、しっかり描けている事。  「迷路の道が閉じるって特性を活かして、化け物を倒す」「手近な位置から順番に仕舞っていく扉に追いつくように走り、窮地を脱する」などの、迷路という舞台設定を活かしたアクションが描かれていた事は、評価に値すると思います。  後は、病に犯され正気を失った仲間を迷路に押し込む件なんかは「蠅の王」的な狂気を感じさせて、中々良かったんじゃないかと。  個人的には、ヒロインのテレサをもっと活かし「男だけの園に女の子が送られてきた事により、奪い合いになる」っていう「アナタハンの女王」的な展開にしても良かったんじゃないかって、初見の際には、そう思えたんですが……  そんな道は選ばず、健全な雰囲気で纏めた辺りも、今となっては長所に感じられますね。  適度な怖さ、適度なエグさを楽しめるという意味では、ティーンズ向け映画として成功してるのかも知れません。[DVD(吹替)] 5点(2023-11-28 18:42:40)(良:1票) 《改行有》

5.  スリーデイズ 《ネタバレ》  久し振りに再見し、細かい部分まで「すべて彼女のために」(2008年)をそのまま再現してるんだと感心させられた一方で、物語の根幹に関わる部分を大きく改変してるって事にも気が付き、驚かされましたね。  自分は最初に本作を鑑賞し、その何年後かに「すべて彼女のために」を観賞し、此度感想を書く為に二本連続で観てみたという形なのですが……  最初に観た時より衝撃が大きかったし、それに伴って、本作に対する評価も更に高まったように思えます。  何せ本作ってば、主人公が妻への疑いを捨て切れていないんです。  一応台詞では「妻を信じる」というスタンスだし、疑いを持ってるだなんて、それこそ自分の邪推に過ぎないのかも知れませんが、一途に妻を信じていた「すべて彼女のために」の主人公に比べると、見るからに様子が違うんですよね。  でも、それによって妻への愛が弱々しく感じられるなんて事は無く「たとえ妻が殺人を犯したとしても、それでも妻を愛する」という意思の強さが感じられる形になっているんだから、本当に見事。  「すべて彼女のために」は「妻を一途に信じ抜く男」を描いたのに対し、本作では「妻に疑惑を抱きつつも、それでも愛する男」を描いたのかな、と思えました。  だからこそ、同じストーリーの映画なのに「違った味わい」「独自の魅力」が生み出されている訳で、この辺りは本当に上手い。  「ドン・キホーテ」から影響を受けて「理性を捨てた方が人は強くなれる」と言い出す場面とか「狂人となっても、絶望に生きるよりはマシ」と覚悟を決める場面とか、この主人公は愛ゆえに狂気の暴走を果たす事になると、序盤の段階で示してるのも良いですね。  「すべて彼女のために」では、中盤以降の主人公の暴走っぷりに驚かされ、多少引いちゃう気持ちになったりもしたんだけど……  その点、本作は主人公に肩入れし易いし、過激な選択に至るまでの説得力も増していた気がします。  物語の途中で出会う「ママ友」ならぬ「親友(おやとも)」な女性の活かし方も上手い。  「すべて彼女のために」では主人公とのロマンスを予感させ「その気になれば他の女性と幸せになる事も出来るが、それでも妻を選ぶ主人公」って示すだけの存在だったと思うんですが、本作は彼女に他の役目も与えているんですよね。  いざという時に備え、息子のルークを預ける場面を挟み、主人公の「もしかしたら、自分は助からないかも知れない」という悲壮感を高めるのに成功してる。  こういうリメイク映画における「既存の人物の重要性を高める改変」っていうのは、観ていて本当に嬉しくなっちゃうし、もう大好物です。  他にも「あえて偽の証拠を残しておき、警察の捜査を欺く」という罠を用いる事によって、主人公の有能さが増している事。  妻に嫌疑が掛かった殺人事件の真犯人が誰か、観客に教えてくれる事なんかも、嬉しい改変。  これらの改変部分に関しては「余計な事をした」「何でもかんでも説明し過ぎて、野暮な作りになった」と感じる人もいるんでしょうけど、自分としては正解だったと思いますね。  あれだけ用意周到に計画を立てていた主人公が、証拠を燃やしもせずにゴミ箱に捨てて警察に見つかっちゃうってのは違和感あったし、殺人事件の真相についても、明確に描いておいた方が、スッキリとした後味になるんじゃないかと。  そんな具合に、色々と改変している一方で「すべて彼女のために」でも印象的だった、不仲だった父との別れ際のハグについては、ほぼそのまま情感たっぷりに描いてくれてるのも、実に嬉しい配慮。  主人公の妻は美女で、息子は美少年っていう辺りも、殆どそのまま再現しており、感心させられましたね。  そのままの方が良い箇所に関しては、そのまま。  そして変えるべき箇所に関しては、思い切って変えるという采配が絶妙でした。  本作「スリーデイズ」は傑作であり、これ単品で鑑賞しても、文句無しに楽しめるのですが……  「すべて彼女のために」とセットで鑑賞すれば「リメイクの妙味」「新たに映画を作り直すという意義」についても感じ取る事が出来るんじゃないかって、そんな風に思えましたね。  娯楽作品としても、リメイク映画の理想形としても、オススメしたい一本です。[DVD(吹替)] 8点(2023-09-28 21:29:31)(良:3票) 《改行有》

6.  ダブル・ミッション 《ネタバレ》  「アジアの鷹」シリーズの一本……という訳ではなさそうですね、残念ながら。  冒頭にて往年のジャッキー作品の映像が流れるし、中でも「プロジェクト・イーグル」(1991年)の映像が数多く引用されている為、つい続編かと考えたくなるんですが、主人公の性格が違い過ぎるし「ライジング・ドラゴン」(2012年)とも繋がらない。  じゃあ「タキシード」(2002年)の続編なのかといえば、これまた無理があるし、ちゃんと独立した作品なのだと思われます。  そんな訳で「前作では○○だったのに、今作では××になってる」なんて思う事も無く、純粋に一本の映画として評価出来る品なのですが……  「面白いかどうか」で言うと、ちょっと厳しいです。  まず、クライマックスの戦いを自宅の中で済ませてるのがスケール小さくて拍子抜けだし、長女のファレンが父親について「絶対戻ってくる」「このまま放っとくはずない」と言っていたのに、その父親が結局登場しないまま終わったりで、作り込みが甘いんですよね。  ヒロイン(?)のジリアンに関しても、芸術家設定が全然活かされていないし、主人公がスパイと知った後の態度が冷た過ぎて、最後にアッサリ復縁するのが不自然なんです。  「物語の中で必要じゃないのに、面白そうだと思った属性をアレもコレもと詰め込み過ぎてしまった」という形であり、悪い意味でアマチュアっぽい作風だったと思います。  でも「好きか嫌いか」で考えれば、間違いなく好きな映画だったりするので……  褒めようと思えば、いくらでも褒められちゃうんですよね、これ。  凄腕のスパイが、普通の主婦が毎日こなしてる「子育て」に翻弄されちゃうって基本軸も、ベタだけど王道な魅力がありますし。  それに何といっても、主人公と交流して懐いていく、三人の子供達が可愛らしい。  思春期で反抗しがちな長女のファレンに、やんちゃ少年なイアン、幼く純真無垢なノーラと、三人ともキャラが立ってるんですよね。  ファレンと「屋根友」になる場面、イアンがスパイに憧れて家出する場面、ノーラが砂糖を食べて暴れ回る場面といった具合に、それぞれに印象的な見せ場があるのも良い。  母親であるジリアンの影が薄い事も併せて考えると、本作は、あくまでも「主人公と三人の子供達の物語」って事なんだと思います。  梯子に自転車など、道具を駆使したアクションが随所で挟まれるのもジャッキー映画らしい魅力があったし「作中でプールが出てきたら、ちゃんとそこに人が落ちる」って作りなのも、安心感がありましたね。  ファッションに拘るラスボスに向かって、イアンが「だっさい服だな」と言い放ちムッとさせる場面とか、悪役にも程好い愛嬌が備わってるのも良い。  憎たらしい悪役を倒してスカッとする、勧善懲悪な魅力を目指すのではなく、悪役でも憎めないような、優しい世界を崩さないバランスに仕上げてあり、観ていて心地良かったです。  面白い映画っていうよりは、優しい映画という……  そんな言葉が似合いそうな一品でした。[DVD(吹替)] 6点(2023-09-06 10:08:44)(良:1票) 《改行有》

7.  チェイサー(2017) 《ネタバレ》  ノンストップな追跡劇が面白い……と言いたいとこなんだけど、ちょっと微妙でしたね。  奇を衒った作りではなく「誘拐犯を追いかけ、子供を取り戻す主人公」というシンプルなストーリーだし、時間も94分と短めに纏まっているし、主演はハリー・ベリーだしで、褒めたくなる要素は一杯なんだけど、肝心の「映画としての面白さ」が足りてない。  どうして楽しめなかったんだろうと考えてみたんですが、本作に関しては「骨太でシンプルな作り」という、本来なら長所となるべき部分が、仇となってしまったのかも知れません。  誘拐犯の正体は驚きのあの人とか、実は深い目的があったとか、そういう訳でもないし、本当に「主人公VS誘拐犯」ってだけの話ですからね。  序盤に主人公がウェイトレスとして働く場面を、結構な尺を取って描いており、これは伏線なのかな(揉めてた客が再登場して主人公を助けてくれるとか、あるいは誘拐犯の一味とか)と思っていたら、全然関係無かったっていうのも、観ていてズッコけちゃいましたし。  中盤にて、主人公の車が燃料切れを起こしちゃうのも、何だか象徴的。  「ネタが無いので、仕方無く燃料切れにして引き延ばしました」としか思えない展開であり、そこで車だけじゃなく、映画自体も息切れしちゃってた気がします。  尺稼ぎが露骨というか、この映画には、94分でも長過ぎたんじゃないかと。  とはいえ最初に述べた通り、自分としては「褒めたくなる」「好きなタイプ」の品だったので、以下は良かった点を。  まず、冒頭で「息子の成長を見守る母」の姿を描き、母子の絆をしっかり感じさせるのは嬉しかったですね。  こういう映画である以上、そういう描写は必要不可欠だし、やって当たり前だろって話ではあるんですが……  「当たり前の事を、ちゃんとやってくれてる安心感」が得られるっていうのは、立派な長所だと思います。  警察が全然活躍しないで、主人公が孤軍奮闘して息子を救うって展開に、しっかり説得力があったのも良い。  この場合の説得力っていうのは「警察に任せた方が息子が助かる確率は高いのに、自力で何とかしちゃうのは説得力に欠ける」とか、そういう現実的な代物ではなく、作劇として「主人公は警察に任せておけずに、自力で息子を救おうとする」っていう、主人公の心の描き方としての説得力ですね。  警察署にて、行方不明になったまま帰らない子供達のポスターを見つめ「我が子は決して、こんな風にはさせない」「何もせず待ってるだけなんて、耐えられない」と考える流れには、自然に感情移入出来ましたし。  正しい道じゃないかも知れないけど、観客として「それで良い」「そうするのが正解」「頑張って欲しい」と思える道を選ぶ主人公っていうのは、やっぱり魅力的です。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2023-08-22 00:43:15)(良:1票) 《改行有》

8.  パワーレンジャー(2017) 《ネタバレ》  「パワーレンジャー」(1995年)「パワーレンジャーターボ/誕生! ターボパワー」(1997年)と併せて、三作連続で鑑賞したのですが……  前二作はテレビシリーズの劇場版という趣が強い為、予備知識無しで楽しめたのは本作のみでしたね。  単純に出来栄えとしても、三作品の中では一番良かったんじゃないかと思います。  ただ、それは「シリーズの中では一番面白い」というだけであり、純粋にコレ単品で評価するとなると……結構厳しいです。  学園物なテイストを盛り込んだのは悪くないと思うし、ちゃんと巨大ロボットも登場して「戦隊物に必要な事」は最低限やってくれているんですが、どうも物足りない。  映像のクオリティも高くて「本気でリブートする」「続編を何本も作れるような、人気シリーズにしてみせる」という心意気は伝わってきたんですが……残念ながら、その熱意が面白さに繋がっていないんですよね。  ちょっと酷な言い方をするなら「熱意は感じるけど、センスは感じない映画」って事になっちゃうと思います。  いや本当、悪い映画って訳じゃないんですけどね。  元々自分が特撮ヒーロー物を好きってのを差し引いても、一定のクオリティは有って、娯楽映画として及第点に達してると思いますし。  超人的な力を手に入れて喜ぶ姿とか、皆で焚火を囲んで絆を深める場面とか、若者達が主役ならではの「青春映画」としての魅力も描けてたと思います。  でもやっぱり、作り手にセンスが欠けてるというか……  例えば、絶体絶命の場面でブルー(元いじめられっ子)が主人公のレッドに「友達になってくれて、ありがとう」と伝える場面とか、演出次第で、もっと感動的に出来たはずなんです。  なのに本作は(えっ、何で?)と戸惑うくらい、そういうオイシイ場面をアッサリ流してしまう。  それはレッドが父親を助ける場面も然りであり「父親がレッドの正体に気付く」とか「喧嘩しがちだった二人が和解する」とか、いくらでも面白い展開に出来たはずなのに、ただ助けるだけで終わっちゃうんですよね。  本当に勿体無くて、観ていて焦れったい。  エピローグにて「新たな戦士」の登場を示唆する一方で、倒しそびれた敵などが存在しない辺りは「観客にモヤモヤを残さない、誠実な作り」と褒める事も出来そうなんですけど……  何か、さっきから「作り手の誠意」ばかり褒める形になっていて「映画の面白さ」を褒められないのが、寂しい限りです。  「好きな映画」とも「面白い映画」とも言えそうにない。  でも、絶妙に嫌いになれないという、不思議な感じ。  粗が有るのは分かってるけど、何とか肯定してあげたくなる。  「ヒロインや女怪人が可愛いってだけでも充分じゃん」とか、そういう軽いノリでフォローしたくなる。  まだ半人前だけど、頑張って戦ってるヒーローを応援したくなるような……  そういう「応援したくなる映画」っていうのが、一番的確な評かも知れません。[インターネット(吹替)] 5点(2023-07-19 19:27:16)《改行有》

9.  アダルトボーイズ青春白書 《ネタバレ》  大人の夏休み感が味わえる一本。  「日々の疲れを癒したい」「アウトドアを追体験したい」って願いを叶えてくれる作りになってるし、娯楽映画としての完成度は高かったと思います。  自然の中で、大人も子供も笑顔ではしゃぐ様が描かれているし、皆にとって「楽しい夏の思い出」になったんだろうなと、ほのぼのさせられました。  ともすれば「最近の子供はけしからん、俺達が子供の頃はそうじゃなかった」「残酷なテレビゲームばかりやってないで、もっと健全な遊びをやりなさい」という説教臭い内容になりそうなストーリーだし、実際そういうメッセージ性も込められてた気はしますが……  観ていて違和感を覚えるほどじゃなかったし、あまり押し付けがましくないバランスにしてるのも良かったですね。  子供達を外に連れ出す場面も「せっかくアウトドアが楽しめる環境なのだから、自宅では出来ない遊びをしよう」って雰囲気だったし、この辺りのバランス感覚は上手かったと思います。  ただ、どうも波長が合わないというか……  登場人物に対する印象が「悪い奴らではないんだろうけど、友達になりたいとは思えない」みたいな感じだったりするのが、非常に残念。  例として挙げるなら「甲高い声のマッチョマンを笑いものにする場面」「皆が並んでるのにズルして横入りする場面」などがそれであり、ちょっと主人公達が「嫌な奴ら」に思えちゃうんです。  クライマックスのバスケの試合にて、主人公が故意にシュートを外して負けるのを美談みたいに描いてるのも、納得出来ないものがあります。  「主人公は大人になった」「この世には、勝敗より大切なものがある」って言いたいんでしょうけど、どう考えても対戦相手に失礼というか……  精神的な成長というより、単に主人公が自己満足の為に他者を利用して「わざと負けてあげた」という優越感に浸ってるだけに思えちゃったんですよね。  ベタな言い方かも知れないけど、そこは相手に対する礼儀として真剣勝負を行って欲しかったです。  とはいえ、その辺りに関しても「本作はスポーツではなく、休暇が主題だから」と考えれば、決定的な瑕とは言えないだろうし……  基本的には楽しい内容だったので、それなりに満足。  また何時か、夏休み気分を味わいたい時に再見したら、もっと好きになれる映画かも知れません。[DVD(吹替)] 5点(2023-07-18 09:07:12)《改行有》

10.  ELI イーライ 《ネタバレ》  「おかしいのは周りじゃなく、主人公の方だった」という、実にありがちな御話なのですが……  意外や意外、中々面白かったです。  この手の「実は主人公が異常者だった」オチの場合、大抵は「超常現象かと思わせて、実は精神の病だった」ってなりがちなんですが、本作は逆なんですよね。  「現実的な病気かと思わせて、実は悪魔の子だった」という形であり、これには吃驚。  息子に対し、盲目的な愛情を注ぐ母親と、どこか距離がある父親という対比が、程好い伏線となっているのも良かったです。  後は、やっぱり主人公が幼い子供っていうのも大きいんでしょうね。  多分、これが高校生くらいの年頃だったとしても「ありがち」って印象になってたと思うし、自分にとって「子供は純真無垢」「子供は善」「子供は被害者」っていうイメージは、やっぱり根強いんだなと、再確認させられた形。  「オーメン」(1976年)を父親ではなく、子供側の目線で描いた物語と解釈する事も出来そうです。  「人々が逆さ十字のまま宙に浮かび、回転する場面」とか「イーライの足跡が炎になる場面」とか、視覚的に「この子は悪魔だ」と納得させるだけの描写が、しっかり備わっていた辺りも嬉しい。  悪魔の手先となって主人公を惑わす存在が、可愛らしい少女っていうのも(そう来たか!)っていう意外性と(美少年のイーライの姉妹なんだから、良く考えたら当たり前か)って思える説得力があって、良かったですね。  自分の場合(多分、この子が幽霊で、イーライは超能力者か何かだろうな)とボンヤリ予想していただけに「二人とも悪魔でした」ってオチには、素直に脱帽させられました。  ただ、二人の正体が明かされた後の終わり方に関しては……ちょっと微妙でしたね。  母親生存エンドとなったのは「観客が感情移入出来る存在を、最後まで生かしておく」という配慮があったんでしょうけど、どうも中途半端になってしまった気がします。  コレは、自分が男だからそう思うのかも知れませんが、母親だけ生き延びて父親はアッサリ殺されて終わりっていうのが、何かスッキリしないんですよね。  せめて父親は傷を負いながらも生き延びるとか、イーライはイーライで「パパはパパなりにボクを愛してくれてたから、どうしても殺せない」って、命だけは奪えずに見逃すとか、そういう展開でも良かった気がします。  それなら「人間は我が子が悪魔というだけで殺そうとするが、悪魔は父親が人間でも殺したりはしない」という対比が際立って、より自分好みな映画になってたかも知れません。[インターネット(吹替)] 6点(2023-07-13 02:36:21)《改行有》

11.  スペイン一家監禁事件 《ネタバレ》  「助かると思った? やっぱり殺すよ」というオチありきというか、それがやりたかっただけとしか思えない映画。  原題の「Secuestrados」は「誘拐された」という意味らしく、邦題ともども「殺人」という要素は含まれていないのもポイントですね。  だから観客としても「監禁」されるだけと思い込んでしまうし、まさかの被害者全滅エンドとは予測出来ない。  こういう陰鬱な終わり方は好きじゃないので、あまり褒める気持ちにはなれませんが、やり方としては上手かったと思います。  それは冒頭、顔に袋を被せられてた男が電話する場面も然りであり、この件って本筋とは直接関係無いんですが「人質に袋を被せる」「父親と妻や娘を引き離す」という手法からすると、冒頭の事件と本筋の事件って同一犯な可能性が高いんですよね。  つまり、その冒頭場面によって「ママが撃たれた」「でも父親と娘は助かってる」という情報を提示している為「人質は撃たれて殺される事もある」という緊張感を与える事に成功しているし、その一方で「全員殺される事は無い」というミスリードを誘う効果もあったんだから、これまた上手い。  冒頭、被害者家族が喧嘩している描写も「悲劇を乗り越え、家族の絆が強まるオチ」を連想させるし、この手の犯罪映画を色々と研究した上で、それを逆手に取った作りにしてるのが伝わってきました。  犯人の正体が引っ越し業者とか、序盤に出てきた卵の置物が武器になるとか、諸々の伏線も丁寧でしたし……  後は何と言っても、分割画面(スプリットスクリーン)の使い方が見事。  離れ離れになってる人質二組を同時に映し、それぞれが犯人に反撃して、窮地を脱した二組が合流すると同時に、二つの画面が一つになる。  「再会の喜び」を示す上で、とても効果的な手法ですし、本作のクライマックスは間違い無く、この「二つが一つに戻る場面」だったと思います。  「三人組の犯人グループの内、凶悪だった二人は反撃を受けて殺され、唯一良心が残ってた男は金を持ち逃げする事に成功する」っていうのも、良い決着の付け方だったんですが……  そこで終わっておけば良いのに、余計な付け足しというか「実は生きていた犯人の一人に、家族皆殺しにされる」ってオチに雪崩れ込んでしまうのが、本当に残念。  所謂「最後で台無し」系の映画って事になるんですけど、それでも「最後の手前までは凄く良かった」って事も確かな訳で、こういうのって、評価が難しいですね。  自分の心の中にある、映画の本棚。  その端っこにある「どうしても好きになれないけど、これは凄いと認めざるをえない映画」って枠の中に、本作も加わる事になりそうです。[DVD(吹替)] 6点(2023-07-11 10:27:04)(良:1票) 《改行有》

12.  11ミリオン・ジョブ 《ネタバレ》  劇中、一番気になったのは警備員の主人公クリスが「俺は、ちゃんと応戦しましたよ」と上司に話す場面。  実際には、強盗に襲われた際に応戦したのは同僚のトニーであり、クリスは怯えて蹲ってただけなんだと、映画本編にて描かれているんですよね。  つい見栄を張ってしまったという事なのかも知れませんが、何だか「この映画自体、クリスの証言を元に作ってるんだから、当てにならないよ」という、作り手からのメッセージにも思えました。  そもそも本作では「真面目な青年だったクリスが、犯罪に手を染めてしまい悲劇的な末路を辿る」ってストーリーが描かれてる訳だけど、映画本編が終わった後に流れるクリス・ポタミティス本人へのインタビュー映像は、それまでと丸っきり毛色が違っているんです。  明るく笑って犯罪を後悔してる様子なんて無いし、それどころか盗んだ金を隠し持ったままである事を示唆してインタビューが終わるんだから、もう吃驚。  今まで観てきた映画は、あの涙ながらに逮捕された主人公の姿は何だったんだと、映画の終わりに「現実」から冷や水を浴びせられた気分です。  死んだと思われた犬が生きててホッとしてたら「同じように撃たれて死んだと思われたジミーも、実は生きてた」という展開になったりとか、脚本は上手かったし、演者さん達の力量も確かだったんですけどね。  実際は稚拙極まる犯行だったのに、刑事達が勝手に「犯人は頭が良い」「巨大組織の犯行」なんて過大評価しちゃう流れも面白いし、クリス達が逮捕される場面では、金を隠した石像が目の前にあるのに警官達は全く気付かないっていうのも、皮肉なユーモアがあって良い。  刑事目線ではない、犯人目線の映画ならではの魅力が、しっかり描けてたと思います。  だからこそ、もっと堂々とした悪党の主人公として、開き直って描くべきだったというか……  「主人公を悲劇のヒーローみたいに描くのに無理があった」という、前提を間違えたせいで全てが台無しになっちゃったパターンなんでしょうね。  実話を映画にする難しさを感じた一本でした。[DVD(吹替)] 5点(2023-07-11 01:52:20)《改行有》

13.  MEG ザ・モンスター 《ネタバレ》  毎年恒例、夏のサメ映画鑑賞。  ジェイソン・ステイサム主演という看板に偽り無しであり、冒頭から最後まで彼が出てくるし、サメの出番も多いしで、勿体ぶった感じが無いのが良いですね。  予算に恵まれた大作に相応しいクオリティだなって、嬉しくなっちゃいます。  この辺り、普通の映画好きなら(何故、そんな当たり前の事が加点対象に?)と戸惑うかも知れませんが……  色んなサメ映画を観てきた身としては「大物俳優の名前で釣ってるけど、実はメインじゃなくゲスト出演程度」「拙い造形なのを誤魔化す為、サメの出番は極力減らしてる」って例に当てはまらないだけでも、凄い事だって思えちゃうんです。  特に終盤、サメがビーチを襲撃する場面は圧巻であり、ここまでエキストラの多いサメ映画って、本当に珍しい。  カラフルな浮き輪の群れが、巨大ザメから逃げ惑うのを上空から捉えたカットなど、ちゃんと「予算が有るからこそ撮れる場面」を見せてくれてるんですよね。  サメ映画といえば低予算な品が多いですし、本作は「きちんと金を掛けて、面白いサメ映画を撮ってる」という、それだけでも評価に値すると思います。  勿論、欠点も多いというか……  前半と後半で、まるで違った趣の映画である事には、正直(んっ?)と戸惑いましたね。  「深海に取り残された人々を救出するという、真面目でシリアスな映画」から「お馬鹿なサメ映画」に変わったという形であり、自分としては後者が好きだから受け入れられたけど、前者が好きで観ていた人は「何だコレ」と、茫然としちゃうかも。  中盤、嫌味な金持ちキャラが間一髪助かったと思いきや、やっぱり食べられちゃう場面なんて「これぞサメ映画」って感じだし、あそこをキッカケに映画の雰囲気が一変するので、その変化を受け入れられるかどうかで、評価も変わってくると思います。  映画の完成度、作風の統一感という意味では、決して褒められない出来なのは確かです。  でもまぁ、自分としては「サメ映画っぽくないと思ってたら、ちゃんとサメ映画だった」という形なので、全然OKでしたね。  ヒロインの「少しだけ」を示すジェスチャーは真似したくなる魅力があったし、慎重派の味方キャラが「今日は海釣り日和だ」という言い方で協力を申し出る場面もグッと来たしで、主人公以外の人物が、ちゃんと魅力的だった点も良い。  ヒロインの娘であるメイインも可愛らしく、主人公との交流には、大いに和むものがありました。  ラストシーンにて「ママも誘っちゃう?」とメイインに言われた際に、主人公が目を見開いて笑う場面なんてもう、愛嬌たっぷり。  強面なステイサムだからこそ出せる、ギャップの魅力が素晴らしかったです。  黄色い潜水艇も恰好良かったので、それに乗って巨大ザメと一騎打ちするってクライマックスにも、大いに興奮。  最後は、その潜水艇も乗り捨て「主人公が単身、巨大ザメと戦う」というデタラメな展開になるんだけど(ステイサムなら、それも有り)って思えるんだから、本当に凄いですよね。  主演俳優の偉大さというか、役者としてのパワーを感じます。  そういった諸々を踏まえて考えると、本作は「サメ映画」ではなく「ステイサム映画」に分類すべきなのかも知れませんが……  いずれにせよ、しっかり楽しめる映画であった事は、間違い無いです。  サメ映画好きにも、ジェイソン・ステイサム好きにも、安心してオススメ出来る一本だと思います。[DVD(吹替)] 7点(2023-07-06 20:09:22)(良:2票) 《改行有》

14.  アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲 《ネタバレ》  前作の主人公カップルの娘が主人公という、正統派な続編。  とはいえ、方向性としては明後日の方に向かってるというか……  「無理やり作ってみました」感が凄かったですね。  まず、前作の女性大統領が「実は人類の絶滅を目論んだ恐竜人である」という設定になってるんだけど、そんな伏線なんて一切無かったはずなんです。  でもって「前作で死んだはずの元月面総統は、実は生きてた」「しかも彼は、ヒトラーの弟だった」「異星人であり、人類の創始者でもあった」なんていう真相が次々に明かされるんだから、ここまで来ると驚くより先に、呆れちゃいます。  (スケールを大きくすれば面白くなるってもんじゃないよ……)と、笑いながらではなく、真顔でツッコんじゃいましたね。  この「笑いながら」と「真顔で」の差が大きいというか、荒唐無稽な馬鹿映画でも「笑いながらツッコんで楽しめる」のであれば、全然問題無いと思うんです。  事実、前作に関してはギリギリで「笑いながら」ツッコめる範疇に収まってたし、楽しい映画と言える出来栄えでしたからね。  それが続編にて「真顔で」のラインに踏み込んでしまったという形であり、実に残念。  そもそも本作は「満を持してヒトラーが登場する」という内容であり、前作にて「ヒトラーが出てこないのが惜しい」という評価を下した自分にとっては、凄く褒め易い映画のはずなんです。  にも拘わらず、その低いハードルを越えてくれなかったというか……飛び越えずに、蹴倒してみせたような内容だったんだから、困っちゃいます。  だって本作のヒトラーときたら、単なる宇宙人を「実はヒトラーです。ヒトラーは宇宙人だったのです」って設定にしただけであり、ヒトラーである必然性なんて皆無ですからね。  ユダヤ人を特別嫌ってるって訳でもなく、ゲルマン民族の優位性を信じてる訳でもなく、人類全てを憎んで滅ぼそうとしてる異星人であり、ただ見た目がチョビ髭のオジさんというだけ。  唯一ヒトラーっぽいのが「絵を描くのが上手い」というワンシーンのみであり、これならヒトラーじゃなくチャップリンでも成立したじゃないかと、投げ槍にツッコむ他無かったです。  「核戦争で地球を汚染し、人類を滅亡寸前まで追いやった張本人」という、どう考えても一番憎むべき存在な女性大統領が、中盤で雑に退場しちゃうのも肩透かしだし……  ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を模した画面作りにして、キリストに相当する位置にヒトラーを置くとか、そういうシニカルな描写も、何かズレてる感じでしたね。  そりゃあ敬虔なキリスト教徒ならショッキングに思えたかも知れないけど、そうでない自分には全然ピンと来なかったし、歴史上の偉人や権力者などが「実は人間じゃなく恐竜人」って言われても(……だから何?)としか思えない。  Facebookの創始者であるザッカーバーグも恐竜人って事にされ「人類のオツムを空っぽにした功労者」であると皮肉気に描かれてるんだけど、Facebookが理由で馬鹿になるというなら、この映画を観る方が余程知能に悪影響なのではと、意地悪く考えちゃったくらいです。  一応、良かった点も挙げておくなら……  「ジョブズ教」に関してはラスボスを倒す伏線にもなってるし、ちゃんと意義のある設定だなと思えた事。  「頭は弱いけど、気の良い力持ち」っていうマルコムは、中々魅力的なキャラだった事。  それと、前作のヒロインであるレナーテが、聖杯の力を得てスーパーガールみたいに超人化し、恐竜を素手で倒しちゃう馬鹿々々しさは好きとか、そのくらいになりそうですね。  最後は「月にナチスが移住していたように、火星にはソ連が移住済み」ってオチになってましたし、続編も作る気満々なのが窺えるんですが……  2023年現在「アイアン・スカイ:ジ・アーク」の製作は難航中で、続編を拝める可能性は、かなり低いみたいです。  それを踏まえて考えると、本作に関しては「一本の映画として完成している」というだけでも、御の字なのかも知れません。[ブルーレイ(吹替)] 4点(2023-04-26 00:43:55)《改行有》

15.  抱きたいカンケイ 《ネタバレ》  セックスフレンドが恋人同士になるという、非常にシンプルなラブコメ。  主演は大好きなアシュトン・カッチャーとナタリー・ポートマンだし、これは面白そうと期待値を高めて鑑賞したのですが……  結果としては(思ってた程には、楽しめなかった)という感じであり、残念でしたね。  この辺りは、同年公開で似たようなテーマを扱っていた「ステイ・フレンズ」(2011年)に対し(全然期待してなかったのに、面白かった)という印象を抱いたのとは好対照であり、何だか興味深いです。  上述の通り、主演の二人は大好きなので、彼らが動いて喋ってるのを見てるだけでも楽しいって気持ちはあるんですが、脚本が肌に合わなかったんですよね。  大前提として「主人公達は二人とも、父親絡みのトラウマが原因で恋に臆病になってる」「だから恋人にならず、セックスフレンドのままであり続けようとしてる」っていう設定がある訳なんだけど、それに説得力を感じなかったんです。  (別に恋人になったら、それはそれで良いじゃん)と思えちゃうし、二人が恋愛恐怖症みたいになってるのが不自然。  「愛する人を失う悲しみが大きかったからこそ、誰かを愛するのを恐れるようになった」というのであれば、その事を、もっと丁寧に描いて欲しかったです。  ラブコメお約束の「二人が結ばれる直前に喧嘩する場面」でも、大きなイベントというか、劇的な誤解や擦れ違いがあった訳でもなく、本当に意地張って痴話喧嘩してるだけなので、盛り上がらない。  恋のかませ犬にされた脇役達が、エンディングにて他の人物と結ばれてるのも唐突だったし……  全体的に話作りが拙かったように思えます。  あと、これは男目線の偏った意見かも知れませんが、本作のヒロインであるエマに魅力を感じなかったんですよね。  「急にいなくならないで」「だって、君がそうしろって……」「言うこと聞かないでよ」のやり取りなんかは、流石にワガママ過ぎて呆れちゃいましたし。  そんなに悪い子じゃないかと思われた元カレのヴァネッサが、終盤にて「最低な女」っぷりを見せ付け、その後に「それに比べて、エマは優しい」みたいな展開になるのも「周りの人物を貶め、相対的にヒロインを持ち上げてる」って感じであり、ちょっと姑息。  好きな女優さんが演じてるという前提が無かったら、かなりキツかった気がします。  一応、良かった部分も挙げておくなら 「劇中劇の学園ドラマが面白そう」 「撮影現場で役者が煙草吸ってるのを女性スタッフが注意する様が、本当の生徒と先生みたいで愉快」 「エマがパターゴルフをやって、ホールインワンを連発する場面は痛快」  と、そのくらいになるでしょうか。  あとは、ラストにて「恋人らしく寄り添って眠る二人」で終わる形なのも、直球なハッピーエンドって感じであり、好きですね。  中盤にて、何時の間にか恋人みたいに寄り添って寝入ってた事に気付き、起きぬけに「これじゃ純愛みたい……最悪」と嘆くヒロインの姿があったからこそ、幸せそうな寝顔を祝福する事が出来たし、後味は良かったです。  思えば、その中盤の時点で「いっそ、本当に純愛しちゃおうか?」なんて提案されて、二人が結ばれるオチでも、全然問題無かったような気もするし……  とにかく「相思相愛な二人が結ばれない理由」が希薄過ぎて、観ていてもどかしかったですね。  「馬鹿な意地張ってないで、さっさとクッ付けよ」という、ラブコメ主人公の友達みたいな気分を味わえるという意味では、貴重な一本かも知れません。[DVD(吹替)] 5点(2023-04-11 07:36:56)(良:2票) 《改行有》

16.  ステイ・フレンズ 《ネタバレ》  映画オタクの思考とは不思議なもので、時に「世間の評価が高く、きっと感動出来るであろう名作」よりも「評価がイマイチで、程々の満足感しか得られないであろう凡作」を観たくなる事があります。  そんな訳で、本作も「凡作」目当てに鑑賞したという、期待値の低い一本だったのですが……  これがもう、意外なくらいに面白くって、吃驚しちゃいましたね。  序盤にて「それぞれ他の相手と電話してるのに、まるで二人がデートしてるかのように話が合ってる」っていう主人公カップルの場面で、もう心奪われたし、そこから先も中弛みを感じる事無く、最後まで楽しく完走出来たんだから凄い。  本当、何でこんなに面白かったんだろうと考えてみたんですが……  まず、主人公の設定が良かったと思います。  主人公のディランって、社会的に成功してる若きエリートで、普通ならとても感情移入出来ない存在なのに、不思議なくらい「等身大の若者」としての魅力が有ったんです。  それは演者さんの力も大きいんだろうけど、個人的には彼を「初めてニューヨークを訪れ、ヒロインに案内してもらう若者」として描いてたのが、大きかったように思えます。  「新天地を訪れた、何も知らない存在」という主人公だからこそ、観ている側としても、まるで自分がニューヨークを案内されてるかのような気持ちになれた訳だし、自然な形で観客と主人公を一体化させてるのが上手い。  物語が進むにつれ、完璧なエリートと思われたディランが、意外と弱点が多くて憎めない奴なんだって分かる流れも、良かったです。  この辺りは、もしかしたら女性の観客からすると「カッコいいと思ってたのに、幻滅」って感じちゃうかも知れませんが、彼を恋愛対象ではなく、感情移入の対象として捉えていた自分としては、大いに共感。  ヒロインのジェイミーも、お姫様願望が強くて、色々と「重い」タイプだったりするんだけど、ちゃんと可愛く思えたし……  こういう「欠点が愛嬌に感じられる描き方」って、とても大切ですよね。  認知症の父という存在も、明るく楽しい物語の中で、不協和音にならない程度の「シリアスな現実」として、良いアクセントになってたと思います。  特に終盤、空港で父に倣い、ディランも一緒にズボンを脱いで話す場面は、何かもう、凄くグッと来ちゃったんですよね。  この映画って、その場面までは「普通のラブコメ」「ありきたりな展開」でしかなかったのに、ここで主人公が「普通である事」を奪われてしまった父親と向き合い、当たり前にあると思っていた「普通」が、何時かは失われる事を説かれるんです。  主人公が親しい人に説得されて、ヒロインに告白するというラブコメお約束の流れでしかないはずなのに、この「人生は短い。だから、愛する彼女と共に過ごしたい」と主人公が悟る場面は、本当に秀逸であり、魅せ方次第でこんなに印象が変わるのかって、感心しちゃったくらい。  その後に訪れる、これまたお約束な「主人公からヒロインへの告白場面」も、良かったですね。  ジェイミーが「映画のヒロインになってみたい」と呟いていた事を踏まえての「映画のヒロインにしてあげる」という告白の仕方が、本当にロマンティック。  (うわぁ……良いなぁ、これ)(すっごく良い映画だな)って、しみじみ感じちゃいました。  改めて振り返ってみても、あらすじというか、全体の流れは「王道」「普通」なラブコメ映画でしかないのに「お約束の場面」をセンス抜群な演出で決めてくれてる御蔭で、特別な映画になってると感じられましたね。  その他にも、ディランの同僚に、ジェイミーの母親といった脇役陣も良い味を出していたし、劇中で流れる曲も好みだったしで、もう文句無し。   「ラブコメ映画のエンディングで流れるNG集を観て、幸せそうに笑う二人」で終わるという、現実と虚構が二重構造になってるハッピーエンドも、とても良かったです。  109分という時間を、映画と共に楽しく過ごせました。[DVD(吹替)] 8点(2023-04-11 07:32:06)(良:1票) 《改行有》

17.  アウターマン 《ネタバレ》  (悪役にしては恰好良いデザイン)(ヒーローにしては悪そうな顔)なんて思っていたら、それが伏線というか、正しい認識だったと明かされる展開が気持ち良いですね。  悪者なはずのシルビー星人が正義の味方になり、正義の味方なはずのアウターマンが悪者だったと判明する。  下手に扱えば「捻り過ぎ」「王道の逆をやりたいだけ」って印象になってしまいそうなストーリーラインなのに、しっかり面白く仕上がっていたんだから、お見事でした。  シルヴィ・バルタンに因んで、バルタン星人もどきの名前がシルビー星人っていうのもニヤリとさせるし、特撮好きの為の「オタク映画」としての魅力が、きちんと備わっていたのも良いですね。  作中に出てくる特撮オタク達が「平成版のアウターマンには興味無い」「やっぱり昭和のアナログな特撮が良い」的な主張をするのも、如何にもって感じだし「オタク向けな映画なんだけど、オタクを美化し過ぎていない」ってバランスなのが、これまた絶妙。  本作の主軸となるのは「シルビー星人のタルバと、浩少年との絆」であり、特撮オタク達は脇役というか、単なる添え物に過ぎないんです。  それが物足りないって人もいるだろうけど、個人的には好みのバランスでした。  (これ途中でタルバが死んじゃって、仇討ち展開になるのかな……タルバ良い奴だから、それは止めて欲しいなぁ)なんて考えていたら、ちゃんと「タルバは生きていた」ってオチになるのも、嬉しくなっちゃいましたね。  本来はヒーローではなく、宇宙の放浪者に過ぎないタルバが、地球を守る事には興味無いと言い放ち、仲良くなった浩少年との約束を守る為だけに戦うというのも、凄く熱い展開。  最後はアウターマンを倒して大団円を迎え「狙われた街」(1967年)をオマージュしたナレーションで〆るっていうのも、良い終わり方だったと思います。    そんな具合に「隠れた傑作」と呼べそうなだけの魅力を秘めた一品なんですが……  全体的な完成度としては、ちょっと作りの粗さも目立ちましたね。  脚本に関しても、どうも話が繋がってない感じがするし(何時の間にか特撮オタク達までシルビー星人に肩入れしている、など)そもそもタルバが平成アウターマンの役者達と合体して戦うって展開も、必然性に欠けていた気がします。  「役者が本当のヒーローになるという『ギャラクシー・クエスト』(1999年)のオマージュをやりたかった」あるいは「実際に特撮経験のある俳優を色々出したかった」などが理由かとも思えますが、個人的には「地球の為ではなく、浩少年の為だけに戦うタルバ」って時点で充分に感動出来たので、合体は必要無かったんじゃないかと。  決着が付いた後、浩少年だけじゃなく、周りの人達までシルビー星人に声援を送るっていうのも不自然だったし……  ここは「アウターマンが人を殺すのを見て正体を悟る」とか「凶器攻撃などの卑怯な戦い方に反感を抱き、正々堂々と戦うシルビー星人を応援し出す」とか、そういう流れにして欲しかったですね。  20億3千万のアウター星人が引き上げていった理由が謎のまま終わるのもスッキリしないし、終盤に不満点の多い形になってるのが、非常に残念でした。  でもまぁ、鑑賞前の「ウルトラマンを悪役にしてみたっていう、一発ネタだけの映画」という印象に比べたら、ずっと誠実で真面目な作りでしたし、素直に面白かったです。  最後に主人公のタルバは行方不明となり、特撮番組「宇宙星人シルビー」が放映されるって形で、画面越しに浩少年と再会する訳だけど……  その後ちゃんと二人で会って、少年との約束を守れた事を、誇らし気に報告して欲しいな、って思えました。[DVD(邦画)] 6点(2023-03-15 23:15:15)(良:1票) 《改行有》

18.  パパはわるものチャンピオン 《ネタバレ》  あらすじを読んだ限りでは「お父さんのバックドロップ」(2004年)を彷彿とさせる映画なのですが……  終盤で上手い具合に着地して、一味違った魅力を出してるのが見事でしたね。  「わるもの」であるヒールレスラーにスポットを当てた内容であり、単なる格闘技ではないプロレスの魅力を、きっちり描いてる。  勝ち負けよりも「相手の強さを引き出して、試合を盛り上げる事」が大切なんだと教えてるかのような内容であり、観ていて(そうだ、そうだよなぁ……)と、何度も頷いちゃいました。  本物のプロレスラーが多数出演している為、プロレス物としての説得力が段違いに高い点も、これまた素晴らしい。  自分は然程プロレスに詳しい訳じゃないけど、それでも「棚橋弘至vsオカダ・カズチカ」というビッグネーム同士の対決には心躍るものがあったし、他にも有名所が色々出演しているんですよね。  棚橋の「フライ・ハイ」の迫力や、オカダの打点の高いドロップキックにも惚れ惚れしましたし、もし彼らを知らない状態で観たとしても(この二人、凄ぇな)と魅了され、興味を抱くキッカケになってたと思います。  「オールスター的な華やかさがあって、マニアも満足」そして「新たなファンを開拓するのにも適した内容」って訳であり、完成度が高い。  勿論、子役の寺田心の可愛さを満喫する事も可能だし、とっても欲張りな映画でしたね。  主演の棚橋と併せて「レスラーなのに、演技が上手いな」「子役なのに、演技が上手いな」と感心させられたし……  何ていうか「本職ではない」「まだ幼い」というハンデを背負ってるにも拘わらず、立派に好演してみせる姿が、作中の「膝の爆弾というハンデを抱えつつ頑張る主人公」の姿と重なるものがあり、ストーリーと演者のシンクロ率が高かった事も、評価に値すると思います。  心くんが嫌いになった悪役マスクマンの正体が、実は自分の父だと判明する流れも切なかったし……  最後の試合が終わった後、声援を送らずに罵声を浴びせる事で、ヒールとしての父の心意気に応える展開も良かったです。  結局、後半で主人公は二連敗を喫する訳だけど「本物のチャンピオンベルトより、更に価値のあるものを手に入れた」って結末なので、ビターではない、甘いハッピーエンドを迎えている辺りも、嬉しくなりましたね。  「試合には負けたけど、ハッピーエンドだよ」って事に、これだけの説得力があったという一点だけでも凄い。  難点としては……  唐突に挟まれる「トランキーロ」とか、知識が無いと意味が分からない小ネタがあるのは、ちょっと残念。  知ってる自分でも(内藤哲也の出し方、無理矢理だなぁ)と思えて白けちゃったし、ノイズになってた気がします。  小ネタにしても「石橋憲武」なんかは由来を知らなければ気にならず、分かった人だけクスッと出来る感じなので、そのくらいの見せ方の方が良かったんじゃないかと。  その他「心くんが机を叩いてクラスメイトを振り返らせる場面は、音が小さ過ぎて振り返るのが不自然」ってのも気になるし、そこかしこで作り込みの甘さが目立ちます。  総合的に判断すると、冒頭に挙げた「お父さんのバックドロップ」と同じくらい楽しめたけど、あちらは個人的に大好きなスネオヘアーが主題歌担当、神木隆之介が主演っていう強みがあった訳だし……  純粋に物語として評価するなら、こちらの方が上かも知れませんね。  プロレスが好きな人、興味がある人ならば、必見だと思います。[DVD(邦画)] 7点(2023-03-02 06:06:29)《改行有》

19.  決算!忠臣蔵 《ネタバレ》  関西弁で話す赤穂浪士と、やたら柄の悪い大石内蔵助。  それらに対し、最初は戸惑いが大きかったのですが……  (要するにコレは、ヤクザ映画なんだ)と気付いてからは、問題無く楽しめましたね。  現代人が忠臣蔵を観賞する際にネックとなる「浅野は加害者で吉良は被害者であり、赤穂浪士は逆恨みしてるだけ」って部分に関しても「親分の死後、残った組員が面子を守る為に復讐した」と考えれば、分かり易い。  「よう見とけ、赤穂の浪人共がする事を」と大石が静かに呟く場面も印象的であり、この映画では主人公達を立派な「赤穂義士」ではなく、庶民的なヤクザとしての「赤穂の浪人共」として描いているんです。  極端に美化された忠臣蔵より、ずっと感情移入し易い作りになってるし、この路線で仕上げたのは、正解だったんじゃないかと。  それだけでなく「経済的に見た忠臣蔵」という魅力が、しっかり描かれているのも良い。  「籠城すべきか否か」を、退職金の多寡で決める序盤の時点で、もう面白かったし、最初に軍資金が幾らあるかを分かり易く現代の価値換算で示し、それが徐々に減っていく様を数字で見せる演出にしたのも、上手かったですね。  地元と江戸を行き来するだけでも旅費が掛かるのに、何度も無駄足を重ねてる様とかもう、本当に観ていて「無駄遣いすんなよ!」って気持ちにさせられる。  そんな観客の想いを、勘定方の面々が代弁し、劇中で実際に文句を言ってくれるんだから、非常に痛快。  我らは戦の担当だからと言い訳し、勘定方を見下す同僚に対し「戦なんぞ、一度もした事無いやろが!」と大野九郎兵衛が啖呵を切る場面なんかは、特に良かったですね。  観客の喜ばせ方を知ってるなと、嬉しくなっちゃいました。  そんな勘定方の代表である矢頭長助の死を、中盤の山場として用意してあるから観ていてダレないし、吉良邸への討ち入り場面を省略し「討ち入り前の、予算内に収まるかどうかの葛藤」をクライマックスに据えたのも、結果的には良かったかと。  一応、演習として討ち入る姿を大石達が思い浮かべる形になっており、観客としても「どんな風に討ち入ったのか」を、自然と想像出来るバランスになっていましたからね。  この辺り「太鼓じゃなく銅鑼を叩くのか」と落胆しちゃう大石を描いたりして「討ち入りの際には、太鼓を叩く大石内蔵助」を期待していた観客と、主人公の心情とをシンクロさせていたのも上手い。  確実に勝利する為「一向二離(一人が相手と向き合ってる隙に、他の二人が回り込んで相手を仕留める)」の兵法を用いる事に対し「それは卑怯では?」と問う者に対し「これは戦や」と返す場面なんかも「忠臣蔵」(1990年)が大好きな自分としては、嬉しくなっちゃう部分。  赤い着物ではなく、火消し用の着物を選ぶ場面とか「経費を節約出来た時の快感」を描いているのも良いですね。  限られた予算が減っていくという、マイナスの焦燥感だけでなく、プラスの充足感も味わえる作りにしたのは、本当に上手い。  そんな節約が「討ち入り後の、残された者達を救う工作資金」に繋がるというのも、ハッピーエンド色を強める効果があって、お見事でした。   難点としては……  コメディ色が強い作りゆえか、ピー音を連発する場面なんかは、ちょっと雰囲気を壊してる感じがして、微妙に思えた事。  良い味を出していた矢頭長助が、死後は回想シーンなどでも一切姿を見せないので、寂しく思えちゃう事。  そして、忠臣蔵を代表する人気者の堀部安兵衛が、徹底的に情けなくて、良い所も無く終わっちゃうのが残念とか、そのくらいになるでしょうか。  幸い、それらの点を自分は「決定的な傷」とは思わなかった訳だけど、これを駄作と断ずる人の気持ちも、分かるような気がします。  でもまぁ、2019年にもなって「面白い忠臣蔵」を撮ってくれたという、その事に対する感謝の方が、ずっと大きいですね。  忠臣蔵という鉱脈は、まだまだ掘れるんだ、面白く出来るんだって事を証明してみせたという意味でも、非常に価値ある一本だと思います。[DVD(邦画)] 7点(2023-02-02 13:50:35)(良:3票) 《改行有》

20.  ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 《ネタバレ》  実際に起きた悲劇をハッピーエンドに変えた映画としては「ザ・チェイス」(1994年)などの先例がありましたが、そういったジャンルの決定版とも言うべき品ですね。  何せ(これは、あの事件が元ネタなのでは?)と観客に想像させるだけでなく、思いっ切り「シャロン・テート」って人名を出しているんだから、恐れ入ります。  現実では悲痛な死を遂げた彼女を、映画の中で救ってみせた形であり、そんな「優しい作り話」を、元ネタを知らない観客でも楽しめるように仕上げてるんだから、本当に見事でした。    上述の通り「シャロン・テート」という存在ありきの内容ではあるんですが、この映画って「主人公のリックとクリフ、二人の友情の物語」としても、綺麗に成立しているんですよね。  離れ離れになってしまうかと思われた二人が「これからも、ずっと一緒だ」「友情は不滅だ」と感じさせる結末を迎えてくれるんだから、もう嬉しくって仕方無い。  作中で「兄弟以上、夫婦未満」なんて言葉が出てくるけど、事件後の描写からすると、この二人の絆は夫婦以上としか思えなかったくらいです。  ……で、ココがこの映画の上手いところなんですが、そういった「友情の映画」としての側面もあるからこそ、本作は「分かる人だけが分かれば良いという、独り善がりな映画」ではなく「色んな人が楽しめるような、立派な娯楽映画」になってるんですよね。  例の事件を知っている身であれば(良かった、シャロン・テートが殺されずに済んだ……)とホッと出来る訳だけど、知らない人からすれば、そういうカタルシスは得られ難い。  そんな弱点を補うように、誰もが理解出来る要素として「主人公二人の友情」を追加したのは、本当に上手かったと思います。     自分としては、ブラッド・ピット演じるクリフに肩入れする気持ちが強かったんですが、ディカプリオ演じるリックも魅力的だったし、二大スターの見せ場のバランスも良かったですね。  中盤でリックが見事な演技を披露し、監督や子役に称賛される場面には感動しちゃったし「落ち目の俳優が、意地を見せて業界にしがみ付く物語」としても、充分に楽しめる出来栄え。  アル・パチーノやカート・ラッセルまで出てくるし、かつての映画小僧タランティーノが「何時か、こんな映画を撮ってみたい」と夢見ていた品を、そのまま形にしたようであり、豪華な出演陣にワクワクするという以上に、ほのぼのしちゃいました。  この映画の世界では、チャールズ・マンソンが「悪のカリスマ」と持て囃される未来も訪れず「単なる犯罪者」という、至極真っ当な扱いを受けるんだろうなと思えるような、皮肉なユーモアが備わってる点も面白い。  犯人の一味が「俺は悪魔だ。悪魔の仕事をしに来た」という有名な台詞を吐いた後、クリフに倒されちゃう展開とか、実に痛快でしたからね。  ただ、ちょっとクリフが強過ぎるというか……  敵側の戦力が少な過ぎて(こんな奴ら、リックとクリフなら返り討ちにするだろ)と展開を予想出来ちゃったのは、少し残念。  映画本編の情報だけだと、彼らが事前に殺人を犯していた事も明かされていないし、クリフ達に痛めつけられる姿が、可哀想に思えてくるのも難点ですね。  この辺りは「マンソン・ファミリーが殺されて当然の連中だって事くらい、観客は分かってるはず」という、慢心のようなものがあった気がします。  もっと分かり易く「こいつらは極悪人なんだよ」と、事前に説明しておいてくれたら、より強いカタルシスを得られたかも。  恐らくは映画オリジナルの台詞で「みんな、テレビを観て育つよね」「アイ・ラブ・ルーシー以外、全部殺人の話だよ」「殺しを教えた連中を殺そう」っていう、犯行動機のようなものが語られているのも、興味深いものがありましたね。  そんな事を言ってた連中が、映画やドラマを作る側であるリック達に一蹴される展開な訳だし「テレビから影響を受けて人を殺した」と主張するような輩に「馬鹿言ってんじゃねぇよ」と、作り手側がメッセージを送ってるようにも思えました。  そんな具合に、シンプルに観ても面白いし、色々深読みしても楽しいという、贅沢な一本。  「シャロン・テート事件を扱った映画の中で、一番好き」「昔の作品をパロってみせてる、オタク気質な部分が好き」「男二人の友情映画として、凄く好き」って感じに、色んな観客の、色んな形の「好き」を受け入れてくれそうな……  懐の広い映画でありました。[DVD(字幕)] 7点(2022-11-24 07:56:40)(良:2票) 《改行有》

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