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タイトル名 |
ケイコ 目を澄ませて |
レビュワー |
ちゃかさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2025-07-10 15:49:40 |
変更日時 |
2025-07-10 15:50:21 |
レビュー内容 |
主人公が聴覚障害で話さないので、こっちも観ながらずっと「感じよう」とする。岸井ゆきのが複雑な感情を複雑な表情で表現していた。 ジムの会長の事を本当に信頼していて、でも閉めちゃうから辛くて、納得いかなくて、もがいてる感じが良かった。 自分の居場所がなくなる。単に環境が変わるだけではなくて、自分の存在の危機まで感じる。 いつも不機嫌で投げやりな感じだけど、日記には真面目な所がうかがえて微笑ましい。 ケイコはハンディキャップにも負けず、ボクシングして、プロにもなって、自立してて、周りの人から「強い人間」と思われてるけど、全然強くなんかない、普通の女の子。 実際はあの小さな体に、言葉にできない不安や孤独や、誰かにすがりたいという気持ちが詰まっているんだ。でもそれを表現して、周りのイメージを覆す術を知らないから、とにかく戦うしかないって思ってるのが切ない。 そしてコロナ禍であったという状況。 ケイコのような人たちは私たち以上に苦労してたんだなという事を、この作品を通して初めて知った。 コロナ禍でマスク。思えば嫌な時期だった。耳が聞こえててもマスク越しの接客など、お客様と店員とのやり取りは難しく、誤解を招いたり、声が聞き取りにくく互いの笑顔は伝わらない。気まずい空気が流れ、それこそ孤独感、閉塞感を生み出してしまった。まさに人と人との関係を断ち切るような孤独な時間だったなって、今振り返ると辛かった想いが蘇る。 だから本作があの時代を背景にしたことは、単なる時代設定じゃなくて、人と繋がることの難しさをより一層表していたんだと思う。 分かってもらえないもどかしさ、家族との距離、何かを辞めざるを得ない時の喪失感などがコロナ禍という現実と重なる。 ラストシーン、試合に負けた相手が挨拶してきて、ケイコがすごく複雑な表情をしていたが、あれは、こんな気持ちだろうな、と読み取るより、そのまま「複雑な気持ち」だったんだろう。悔しさ、納得、敬意、混乱、そして少しの清々しさみkたいな、まさに感情のハイブリッド。 みんなが抱える複雑な感情。セリフがない分、それが何だか伝わってきた。 |
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