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タイトル名 |
サン・セバスチャンへ、ようこそ |
レビュワー |
onomichiさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2025-06-08 21:09:55 |
変更日時 |
2025-06-08 21:09:55 |
レビュー内容 |
ウディ・アレンの2020年製作(2024年1月日本公開)の作品をU-NEXTでようやく観る。なんというか、ウディ流に言えば、「人生は無意味だと分かること、それが味わい深く、美しくもある」。その言葉の切実さをひとつのドラマとして感じた。 映画の最後に主人公のリフキンが死神と対話する。リフキンも死神も当然ながらウディ・アレンその人で、その対話がとても印象深い。
リフキン:今までの人生を振り返ってみて気づいた。間違った決断ばかり。
死神:例えば?
リフキン:たぶん僕は俗物だった。皆を不快にさせてきた。いわゆる"高尚な趣味"をひけらかして。妻と別れて人生が空っぽになったよ。
死神:空っぽ(empty)ではない。"無意味"(meaningless)だ。混同するな。無意味だが空っぽとは違う。人間は人生を満たせる。
リフキン:どうやって?
死神:いろいろある。仕事、家族、愛。くだらんが効果的だ。(usually bullshit、but it's reasonably effective.)失敗しても挑戦する価値はある。「シーシュポスの神話」を?
リフキン:読んだよ。そして悪夢にうなされた。何度も大きな岩を山に押し上げて、この度に転がり落ちる。ようやく頂上に着いたら何があったと思う?山の頂には一個の大きな岩。
死神:気が滅入ってくる。
『ハンナとその姉妹』の終盤に、主人公がマルクス兄弟の『我輩はカモである』を見て「なぜ自殺を考えたのか。愚かなことだ。あの画面の連中を見ろ。ほんとにこっけいで、何の悩みもない」と生きる希望を見出すシーンがある。私の大好きなエピソードなのだけど、改めてウディ・アレンは40年前から変わっていないなぁと感じる。一貫している。 |
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