|
タイトル名 |
砂の器 |
レビュワー |
やしきさん |
点数 |
10点 |
投稿日時 |
2025-02-21 23:06:41 |
変更日時 |
2025-05-20 19:53:21 |
レビュー内容 |
公開時は未見。なんせ9才だったから。翌年?にテレビ放送すると知った8歳上の姉が、家族に「砂の器、テレビでやるよ!」と騒ぎ始める。いつそんな映画見てたの?という母のツッコミも「とにかくいい映画だから見て」といつもと違う圧を感じた家族はテレビの前に。そして鑑賞…家族全員打ちのめされました。
時は変わり、私も大学生。親しかった友人が未見と知り、感動する友人の顔を見たさに我が家に招き鑑賞スタート。友人の観賞を邪魔しないようにやや背後に位置取りして黙っていました。友人の後ろ姿を見ながら、そろそろコンサートシーンが始まる…と期待していたところ、いつの間にか友人の存在を忘れ画面に見入ってしまい、友人の前で嗚咽していました。
さらに時は流れ、めでたく結婚し娘が生まれたころ、テレビでまたも「砂の器」。それまでにも何度見たことかわかりません。しかし、その時の感動が以前とは違っていました。私の目線は秀夫の父・千代吉(加藤嘉)でした。病を患いやむなくとはいえ幼い子供を辛く厳しい逃避の旅に道連れにしてしまった悔恨、ささやかな食事を嬉しそうに食べる息子の笑顔に癒されるひととき、心を鬼にして息子との別離、一時も再会を望まない日はないなかで、容疑者として息子の面影を見せられたときの絶望感… もちろん、過去の観賞でもそれは十分に時感じていたつもりでしたが、現実に子供を授かったときは、その千代吉の思いが逆流して押し寄せてきました。 私にとって「砂の器」は、見るたびに感動ポイントが変わるのではなく、増幅される映画でした。
そして私にとって譲れないポイント。亀嵩のとある神社。騒ぐ子供たちに促され石段を駆け上がり、走り去る薄汚れた着物の子供(秀夫)の後を追う三木。拝殿裏に逃げ込み親であろう浮浪者(千代吉)に抱きつく子供。覗き込む三木に、千代吉が顔を向ける。その顔を見たときの三木…シナリオ上では「思わず息をのむ」と書いてありますが、その時の緒形拳の表情が素晴らしい! 緒形拳さん史上(そんなもんないか)最高と断言したい。 単なる行き倒れの親子と察知したのもつかの間、千代吉の顔を見て、この親子の味わった苦難が一気に押し寄せ圧倒される…。三木がなぜ職務以上に親子を想い気遣ったのかがこの表情ですべて表現されている。 名脚本、名監督、名音楽、そして名優そのすべてがこの作品を傑作にしたといつも感じています。 |
|
やしき さんの 最近のクチコミ・感想
砂の器のレビュー一覧を見る
|