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タイトル名 |
マイ・フェア・レディ |
レビュワー |
S&Sさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2025-07-03 22:25:11 |
変更日時 |
2025-07-03 22:25:11 |
レビュー内容 |
初めてスクリーンで観たミュージカル映画が、リバイバルされたリプリント版でした。もう豪華さに圧倒されて映画館を出たときはなんか頭がボウッとなってましたよ。初めて見たミュージカルが本作で本当に良かったなと、しみじみ思います。私の中では今でも“I Could Have Danced All Night”がミュージカル楽曲の最高峰の位置づけです。 ブロードウェイのヒット・ミュージカルの映画化ですけど、映画としては当時主流になりつつあったダンスを前面にフューチャーしたミュージカルが主流になりつつある中で、ダンスシーンがほぼ皆無で楽曲で勝負するという、あえて時代に逆行するような舞台を意識した王道回帰だったと言えるかもしれません。舞台版の鉄板主演女優だったジュリー・アンドリュースを使わずオードリー・ヘップバーンを起用した経緯はけっこう有名ですが、個人的にはヘップバーンの歌が吹き替えだったと知った時には、ちょっとショックでした。『ウエスト・サイド物語』の時のナタリー・ウッドほどじゃ無かったけど、やっぱヘップバーンもカチンと来たみたいですね。まあこれは事前に了解をとっていないというのが問題で、今じゃ到底あり得ないことです。この歌唱の吹き替えという手法は今や絶滅したと思いますが、現在のハリウッド・スターたちは吹き替えが必要ない芸達者が多くなっているのは感慨深いです。おかげでヘップバーンはオスカー主演女優賞にはノミネートすらされませんでしたが、本作での彼女の弾けたようなコメディ演技はもっと評価されるべきだったと思います。それにしても、舞踏会に登場するときの彼女の神々しさは凄かったな、撮影現場でもスタッフは思わずみな拍手したそうです。 このストーリーは、『フランケンシュタイン』のプロットをミュージカルにしたものだと良く言われます。ヒギンズ教授がイライザに上流階級の話し方を教えて人間改造しモンスターを産み出した、という論法なのですが階級が違うと話す英語も体格も違ってくるという独特の事情を風刺しているとも捉えられます。しかし、極端に傲慢でミソジニストなブリカス紳士であるヒギンズを、逆にイライザが改心させて真人間に近づけるという、いわば“逆フランケンシュタイン”的な二重のストーリーになっているとも言えるんじゃないでしょうか。そういう視点からは、フェミニストが観れば激怒間違いなしのレックス・ハリソンの演技が素晴らしかったことは、忘れてはいけませんね。もっとも実際のハリソンも、ヒギンズ教授に似通った個性の持ち主だったそうですけどね(笑)。 |
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