|
タイトル名 |
カサンドラ・クロス |
レビュワー |
S&Sさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2025-06-27 22:54:40 |
変更日時 |
2025-06-27 22:57:45 |
レビュー内容 |
この映画は今も昔もパニック映画ジャンルに分類されていますが、どうみてもポリティカル・スリラーと呼んだほうがしっくりします。キャスティングはそれなりに豪華ですがハリウッド映画ではなく、プロデューサーはカルロ・ポンティ(ソフィア・ローレンの旦那さん)でイタリア・西独資本で製作されたヨーロッパ映画です。 けっこう雑な脚本だけどストーリーは起伏に跳んでいて細かいことを言わなければまあまあ楽しめるんじゃないでしょうか。WHOを襲撃したテロリストが米軍が秘密裏に研究していた細菌に感染し、この男が逃げ込んだジュネーヴ発の国際列車が舞台になるパンデミック・スリラーという感じでしょうか。新型コロナのパンデミックを経験した現代の眼からすると、この映画の感染症感染に関する描写は、50年前の製作ということは判っているけど甘いとしか言いようがないですね。この映画の真の恐怖は、未知のウイルスじゃなくて政治的な陰謀なんだということはお判りいただけるでしょう。かつて強制収容所で妻子を殺されたユダヤ人=リー・ストラスバーグが登場するように、この列車の存在自体とその行き先からこれがホロコーストの暗喩になっていることが理解できます。こういう捻ったプロットの映画は、当時のハリウッドでは製作は難しかったんじゃないかと思います。当初オファーがあったカーク・ダグラスが役を譲った盟友バート・ランカスター=マッケンジー大佐は、決して良心の呵責が無いわけじゃないけどそれを押し殺して任務遂行に励む軍人を、観ていて息苦しくなる好演だったんじゃないかな。どう見たって神父には見えないO・J・シンプソンや、まるで70年代のリーアム・ニーソンといった感じで活躍する高名な医学者らしさが皆無のリチャード・ハリスなど、『タワーリング・インフェルノ』を彷彿させる様な豪華スターの使い方だったとおもいます。まだ若々しかったころのマーティン・シーンも、善玉側として活躍する展開になるかと思いきや、あっさり退場させられるけっきょくはヘタレキャラでした。ラストの鉄橋崩壊はけっこうチャチな特撮でしたが、管理の数の乗客が悲惨な死に方をして川面に死体が浮いているシーンはやっぱ強烈、こういうところはいかにもヨーロッパ映画らしいところです。実際のところ、アメリカでは、このあたりのシーンはカットされてソフト化されたそうです。 初見のときにも感じた疑問がまたリピートしてしまいました。この列車はジュネーヴ発ストックホルム行きという設定なんですが、途中を鉄道フェリーなどでバルト海を横断しない限り、冷戦下の東欧諸国だけじゃなくソ連領内を通過してやっとたどり着つことになるんですけどね。冷戦真っ最中にそんなことが可能だったのか非常に疑問です。 |
|
S&S さんの 最近のクチコミ・感想
カサンドラ・クロスのレビュー一覧を見る
|